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成人在宅医および訪問看護師向け小児在宅医療支援講習会

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(1)公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2017 年度(前期)指定公募 「成人の在宅医・看護師に対する小児在宅医療講習への助成」 完了報告書. 「在成人在宅医および訪問看護師向け小児在宅医療支援講習会」. 申請者:加部一彦 所属機関:埼玉医科大学総合医療センター、小児科・新生児部門 提出年月日:平成 30 年 2 月 23 日.

(2) . 成人在宅医と訪問看護師向け小児在宅医療講習会開催の目的. 埼玉医科大学総合医療センター小児科では、これまでに日本小児科学会、日本小児在宅医 療研究会による 10 回開催された小児在宅医療支援実技講習会のうち、3 回を主体となって 運営してきた。参加者の中に成人在宅医が毎回 5~7%みられ、今後の小児在宅医療を広く、 また多くの医療者に理解を得つつ推進するためには、成人在宅医と訪問看護師を対象とし た小児在宅医療講習会の開催が必須と考え、2016 年1月に全国に先駆けてさいたま市で第 1回を勇美記念財団研究支援により開催し、 「成人在宅医向け小児在宅医療講習会テキスト ブック」を作成し報告した。この講習会では参加者の意見交換、交流を深めるためにも課 題への参加型ワークショップ形式を採用し、小児在宅医療の実際と、成人在宅医療の違い を理解するために極めて有用であったと評価を受けることができた。 現在在宅医療を必要とする小児の訪問診療は、小児科診療所医師や地域病院小児科医師 中心であったが、緊急時の受け入れ先となる病院主治医との連携のもと、成人在宅医から の理解のもとタイアップした形での運用が少しずつ行われるようになってきている。 多くの小児科診療所は、日常の外来診療や、乳児健診、予防接種や学校医、園医などの 小児保健業務に忙殺され、医療依存度の高い小児在宅患者の訪問診療までは困難な現状も このような変化を来している要因の1つと考えられる。 このように、これからの小児在宅医療にとっては、成人対象の在宅療養診療所医師や訪 問看護師の協力が不可欠で、小児在宅医療に参画するために必要な知識や参画を困難にし ている成人と小児の成長発達などの違いへの理解を、これまで開催されてきた成人在宅医 向け小児在宅医療講習会に学び、ニーズに即した小児在宅医療講習会を行うことにより得 られる成果はさらに大きいと考えらえる。 成人対象の医療者に小児在宅医療への理解を促し、協力を得ることによって小児在宅医 療患者の訪問診療の担い手を拡充することを目的に、本財団からの助成と、日本小児在宅 医療支援研究会の後援のもと平成 30 年1月 21 日、ウェスタ川越多目的ホール(埼玉県川 越市)にて「成人在宅医および訪問看護師向け小児在宅医療講習会」を全国への募集のも と開催した。 . 参加者募集と事前アンケート. 参加者募集は、小児在宅医療支援研究会ホームページ(http://www.happy-at-home.org/)、 成人在宅医ネットワーク、日本新生児成育医学会ホームページ、これまでに開催された成 人在宅医向け小児在宅医療講習会参加者などへ、ポスターと参加申し込み、申込み時アン ケートを送付し、FAX 等による受付とした。事前アンケート内容は図1の如くであった。. 1.

(3) 図 1:成人在宅医事前アンケート項目 参加者は成人在宅医師と訪問看護師の他に薬剤師から参加希望があり、今後小児在宅医療 で注目されている職種でもあり、本講習会へは北海道、東京、埼玉、長野、岐阜、大阪、 広島、熊本の 8 都道府県から応募があり、職種は医師 7 名、訪問看護師 7 名、薬剤師 2 名 の内訳であった。事前アンケート結果図 2 に示す。. 図2:事前アンケート結果(n=16) 講習会内容では、講義、実技ともに期待が寄せられた。. 2.

(4) . 講習会進行プロフラム. 開催企画では、成人在宅医で小児在宅医療実施者を交え、講義とワークショップ形式によ る参加型の講習会とした。このため参加者を3グループに分け、医師、訪問看護師、薬剤 師と、講習会運営スタッフが課題についてのファシリテータとして参加し、グループプロ ダクト作成に助力する形式をとった。 ======================================== 「第 3 回成人の在宅医療に関わる医師向け 会期:平成 30 年 1 月 21 日(日曜日). 9:50-10:00. 小児在宅医療講習会」. ウエスタ川越(多目的ルーム). 9:50-17:00. 側島久典 開会挨拶. 10:00-10:30. 側島久典 小児在宅医療、現在の問題点(30 分). 10:30-11:30. 紅谷浩之 成人在宅医が小児在宅に期待されている役割 小児と成人の違い(60 分). 11:30-12:15. 側島久典 ワークショップとは・KJ法案内. (10 分). グループワーク1(症例 1 )・課題発表 質疑応答 12:15-12:45. 大山昇一 診療報酬について(ランチョンセミナー). 12:45-13:00. ========= 休憩 15 分 =========. 13:00-13:30. 田中総一郎. 13:30-14:30. 側島、紅谷、梶原. 小児在宅医療とリハビリテーション. 知ってよかったことトップ 30(やり取りトーク) 14:30-14:40 14:40-15:30. ========= 休憩 10 分 ========= 紅谷、高田. グループワーク2(小児症例2、VTR視聴) 講義(高田) 小児症例2質疑応答. 15:50-16:10 16:10-16:15. 16:15-16:45. 全体質疑応答(20 分) 側島久典 コメント、今後の小児在宅医療支援に向けて 田村正徳. 閉会あいさつ. 実技(希望者). 気管切開チューブ交換, 胃瘻(長谷川). ======================================== 表1:講習会プログラム . 講習会運営スタッフおよび講師 加部一彦 側島久典 田村正徳 高田栄子 大山昇一 梶原厚子. 埼玉医科大学総合医療センター小児科 埼玉医科大学総合医療センター小児科 埼玉医科大学総合医療センター小児科 埼玉医科大学総合医療センター小児科 済生会川口総合病院小児科 あおぞら診療所墨田. 紅谷浩之. オレンジホームケアクリニック. 田中総一郎. あおぞら診療所 ほっこり仙台. 3.

(5) 奈須康子 長谷川朝彦 山崎和子 奈倉道明 當麻美奈代 吉田竜彦. かるがもの家 かるがもの家 埼玉医科大学総合医療センター小児科 埼玉医科大学総合医療センター小児科 埼玉医科大学総合医療センター小児科 MA 埼玉医科大学総合医療センター小児科 MA. 表2 本講習会は、小児在宅医療に携わる小児科医、医療型重心施設医師、訪問看護師、メディ カルアシスタントで構成された。 講義では、小児在宅医療の現在の問題点について、周産期医療での新生児救急の実態と、 NICU で行われている医療の進歩と共に、長期入院児の全国調査から、救命率の向上に伴 って、人工呼吸器を装着した自宅への退院が増加している詳細を述べた。NICU から小児 在宅医療に移行する際、近年は地域保健師、MSWと連携をとりながら、退院調整会議を 開催し、一旦小児科病棟を経由してからの退院が多くの施設で計画されていることも講義 内容に示した。一旦 NICU を退院すると、感染症などでの再入院は NICU ではなく、小児 科病棟で行われることも説明を加えた。 (資料別添) 小児在宅医療対象児は 6~7 割が周産期施設からの移行であり、残りは中途障害と呼ばれ る溺水などの事故、虐待、脳炎後などの小児救急からの移行となっている。これら事情を 踏まえて、紅谷浩之氏に、 「成人在宅医が小児在宅に期待されている役割」というタイトル で、実際に成人在宅医療をする中、小児在宅医療を行ってこられた立場から、現在進めて いる実際を紹介いただいた。在宅医療を行っている子供たちへのスタッフの関わりかた、 家族を交え、子どもの成長を引き出そうとする試みに、共感を得る内容で、参加者からの 高い評価が得られた。 (資料別添、講義内容 DVD 編集). 図3 会場講義時の記録 . クループワーキング. 今回は、3職種(医師、訪問看護師、薬剤師)が参加となり、それぞれがどのように子ど もと家族に取組むことができるのか、代表的な2症例を提示し、成人在宅医療を進める中 で以下の3点を中心に、まとめプロダクト作成を行った。昨年から小児在宅医療支援研究 会では、訪問薬剤師の活動が注目されている中、本講習会への強い参加希望があり、今後 の本講習会活動に必要な職種と考え、運営スタッフ間でも認識され、受け入れを決定した。 4.

(6) 講義演者、本講習会運営スタッフである小児科医、小児在宅に関わる訪問看護師などがフ ァシリテータとして、グループワークに参加した。 これまで、第 1 回、第 2 回の成人在宅医向け小児在宅医療講習会では、KJ 法を取りいれた ワークショップ形式によるプロダクト作成は効率的で、今回も同様の手順とした。ワーク ショップ方式の紹介を行い、司会、発表、記録担当を決めて議論をすすめた。多人数で問 題を解決する方法の1つとして、人類学者、川北二郎氏が考按した KJ 法による進め方を説 明し、文殊カードの代わりにポストイットを利用して模造紙の上でグループの意見をまと める方式とした(図5)。 提示症例について、児のプロフィールを説明、各グループテーブルに詳細を配布した。 (図 4)成人在宅医の立場から、提示症例に対して以下の3点について、KJ法を利用して各 グループの意見をまとめ、発表した後、全体討論を行った。 ① 自分たちでもできること、できそうなこと、 ② 他職種にお願いすると介入が更に円滑にできると考えられること。 ③ わからないこと 1例目は、中途障害児を取り上げ、2例目では NICU から退院する新生児仮死後の長期 入院児が対象であった。続いて2例目では、前田班で作成された、退院調整会議の VTR を 小児在宅医療の1モデルとして提供した。. 図4:症例1プロフィール. 5.

(7) 図5. KJ 法を用いてのグループワーキング. グループワークでは、以下の内容が共通に明らかになってきた。 中途障害を想定した症 例提示(図4)であったが、以下の様な共通点が明らかになった。. 図6 各グループの症例1プロダクト(KJ 法) ① 気切、胃瘻の管理は抵抗なく受け入れられ、小児、成人とくに支障はないとの意見 が多く出た。病院主治医と連絡後、リハビリと訪問看護の連携、訪問栄養指導の後 のペースト食への移行、訪問薬剤指導、発熱時の対応も可能であり、成人在宅を行 っているので、母への話し相手、同居家族で高齢者、祖父母との繋がりを促すこと ができるなどの意見が出された。 ② 他職種に依頼したい内容としては、 学校、母・家族の精神的サポート、母のネットワーク構築などであった。訪問ン看 護師が加わってのグループワークでは、成人在宅医師だけて開催された過去 2 回に 比較して、他職種の依頼範囲が大きく広がったと感じられた。 ③ わからないこと 小児の発達、とくに成人に比較して痙性が強い小児の障害では、 成長をどのように評価できるのか、難しい課題と共通した意見であった。 もう1 点は、母の精神的支援、疲労度評価が難しく、患児から目を離せない生活が定着す る中でまったくわからないという意見が多く出された。 グループ討議は特色がよくみられ、医師による対応、医師・薬剤師による対応、リハビリ、 福祉関係の職種に分けた上で、症例に対する①~③の課題を、ポストイットの色で識別し て発表するという、三次元的な構成で議論を進めたクループもあり、注目を引いた。 . 診療報酬(講義). ランチョンセミナーとして、小児在宅医療における診療報酬のポイントを解説。(資料当日 講習会ファイルとして)川口済生会病院小児科、大山昇一先生により解説 6.

(8) . 小児在宅とリハビリテーション(講義) 終了後のセッションでの症例2への検討でもファシリテータとしてグループワーキング. に加わっていただいた田中総一郎先生は、小児訪問診療を行っている「あおぞら診療所ほ っこり仙台」で小児在宅医療でのリハビリテーションとくに、呼吸理学療法でのリハのポ イントである、喀痰排出へのテクニックを教示していただいた。 ボランティアモデルとともに、肺呼吸における肩甲骨と肋骨の動きを捉え、リハビリテ ーションに生かしながら、患児の排痰に向けてどのようなポジションをとると良いのかな ど、実技を交えての幅広い講演に、その臨床的応用価値は高いと考えられた。 . グループワーキング:症例2(図7). 症例1が中途障害による障害であったのに対し、NICU での長期入院を経て地域に帰り、 在宅医療を受けようとする症例を取り挙げて検討した。 厚労省研究班(前田班)作成の退院調整会議ビデオを約 20 分間供覧し、各グループワーキ ングテーブルに症例のプロフィールには、喘息発作のある兄を抱える家族という設定があ り、地域での 24 時間を考えながら、どのような支援が可能かを検討していただいた. 図 7:症例2概要 退院調整会議ビデオでは、在宅移行する際に、6 歳の兄の喘息発作への対応、症例の今後の 成長、発達、予防接種などが焦点となり、グループワーキングでは、症例1とはかなり設 定が違っており、ファシリテータの役割は貴重で有用と思われた。 小グループ討論での作業は、症例1同様に以下の3点について全体討論でまとめて発表す る形式をとった。以下に各グループ討論をもとに発表された内容を記載する。 ① できること: A:呼吸器設定管理、訪問薬剤管理指導、排泄ケア、定期訪問往診 家族ケアでは、 外出時のMちゃんのための留守番、兄の喘息の診察 B:・医療ケアについて:病院受診日のアセスメントはできる。ED チューブが抜 けた時の対応、カニューレ交換、注入に使用する栄養剤の検討。剤形、用法変更へ の提案(薬剤師)呼吸器管理、予防接種 7. ・家族ケアについて、兄の喘息管理、.

(9) 母の想いを聴く C:カニューレ交換、病院1回ならOK、経鼻胃管交換、特別児童手当申請は成人 在宅医でも可能である。 日常安定時の医療処置対応、退院前から関わることも可能という発言もみられた ② 他職種にお願いしたいこと A:呼吸リハ、栄養管理、社会制度や月額どのくらいかかるかなどの費用について の説明、レスパイト入院、ショートステイ B:急変時の入院対応、吸引の補助、栄養剤の検討 ・家族ケアでは、父親へのか かわり、レスパイトへの対応など。 ③ わからないこと: A:入浴介助方法、排便のコントロール、他職種間の情報共有の方法 B:母がどの程度医療的ケアができるのか。起こりうる急変の内容予想、 ・家族 ケア 母、家族の不安の程度、経済的負担の程度 C:ずっと経鼻胃管が必要なのかどうかが不明。吸引回数は減らせないのか 夜間 のトラブルは病院で対応できるのかどうか。注入回数が多いので調整が必要、呼吸 器に使用する生理食塩水を配達してくれるところがあるのかが不明、緊急時の対応 も不明。緊急時蘇生を家族が希望されており、救急車、医師が到着するまでの家族 にできることを指導されているのかどうか。予防接種では 30 分観察が必要とされて いるが、実際にはどのように対応されているのか。. 図 8 症例2でのグループプロダクト(Cは口頭発表) . 「小児在宅医療:知ってよかったことトップ 30」 (参加者とのフリートーク形式) 第1回成人在宅医向け小児在宅医療講習会(2016 年1月、勇美財団研究助成)開催時 に作成し、参加者からの評価が高かったセッションは、その後日本小児科学会小児在 宅マニュアルへの公開に向けて検討を重ね、若干の改訂をくわえ、引用文献を添えて 作成中である。小児在宅医療を行うことで知ることができた項目を、医学的、心理的、 8.

(10) 社会的各側面に分け、診療報酬を含む4分野、31 項目を、小児在宅医療を行っている 成人在宅医を含む研究協力者間で検討、 「小児在宅医療知ってよかったことトップ 30」 として解説と参加者からの質問に対応した。(表3) Psycho・心理的側面 2 18. 本人の同意は成人と同様重要であるが、表現が難しいので見過ごされやすい。 19. 障害の認識がうすいことが多い。 Social・社会的側面 9 20. 家族の中での葛藤(離婚、兄弟間の問題)は起こることがあるが保健師さんや、学校の 先生と相談する。 21. 出生時障害/中途障害の場合には、「健康な我が子を失った」という家族の悲しみを癒 やす必要がある。 22. 総合支援法を使う。 23. 母親同士が知り合いになっていてネットワークがある。 24. 母親が主治医となってさまざまなことを行ってくれる。 25. 母親が、子どもの行く末を常に心配している / 考えたくないという気持ちがある。 26. 「呼吸器不可」など医療的なケアのある人の制限がある。 27. 虐待などがあれば児童相談所に相談する。 28. 働くこと、人生を見通したビジョンが必要である。(その人らしさはこれから創るもの) 29. 発達段階は要素によって凸凹があるので、知的・身体的な成長を個別に考える必要が ある。 【診療報酬】 2 30. 経管栄養の栄養剤は、小児の場合には指定がない。(在宅小児経管栄養法) 31. 超重症児・準超重症児の適応になればサービスを増やすことができる。. 表3:小児在宅医療知ってよかったトップ 30 【Bio・医学的側面】 1. 酸素飽和度の違いとして目標が 93%となっている。 在宅児の SpO2 管理は 100%になるまで酸素を使う必要はない。93%でも安定していれば そのままの維持で。成人よりも低い SpO2 値で管理できることはあまり知らなかったという 意見が多く寄せられている。連続モニター記録では中央値を 95%を目安にする報告、モデ ル的に定期に医師に送信可能な装置を利用して管理している報告がある 1)。 2. 小児では喉頭気管分離が適応となる。 喉頭気管分離は、 成人ではまれ。小児では考慮する機会が多い。誤嚥性肺炎の予防のた めに、以下の様に考えて適応される。家族は声を大切にするが、小児科医からは、喉頭気 管分離を行う必要がある病態では、誤嚥性肺炎を発症する可能性が最も高いと考えられ、 本術式を適応するにあたっては、小児外科、摂食機能の専門家を交えた討論を行い、対象 となる児にとって最も快適と考えられる状況を選択することになる。この話し合いには、 家族の心情的な一面も考慮し具体的な意見を探るのに臨床心理士が間に入ることもあり、 適応には十分な内容検討がなされるべきである。このような討論の後に適応することがあ る。胃ろうや喉頭気管分離術などにより状態が落ち着くと、 体重が増加する例がしばしば あるとの報告がある 2) 。唾液の垂れ込みへの対処方法として、 喉頭気管分離、 口腔内低 圧持続吸引、 スピーチバルブ装着があるとの報告もある 3)。 3. 胃ろう・気切チューブのサイズアップは病院が考えてくれる。 気切チューブのサイズアップ:レントゲン検査の後、専門医と協議の上で決めましょう。 児の吸気努力が強いかどうかが1つのポイントとなる。予備の気切チューブを常に準備し ておこう。 胃ろう:食物が入るルートである。誤嚥性肺炎の防止を考慮している。病院との情報交換 が重要。. 9.

(11) 4. いざというときに小さい気切チューブを用意しておく。 気切後1か月以内に在宅医療となって家庭に移行する児がいるが、このように気切を行 った時からの経過日数が早いと、入れ替えた時に気切孔が縮小して新しい気切チューブが 挿入困難になることがある。早期に病院から在宅移行した児ではそのような配慮が必要で ある。もしサイズが大きくなっていたら、それより1サイズ小さいものを準備しておく必 要がある。 . ガーゼを気切孔のまわりにあてがい、覆ってしまうために、抜管してしまった場合で もわからないことが往々にしてある。気切孔の視覚による管理は非常に大切である。. 5. 抗ヒスタミン薬は痙攣を誘発しやすいので使わない。 抗ヒスタミン剤の処方はけいれん誘発作用が報じられ、注意を要し、感冒薬としての処 方は近年減少している。発熱時は控えることが多い。てんかん児への抗アレルギー剤処方 も控えることが増えている。 6. キシロカインゼリーはアレルギーが出やすいのでなるべく使用しない。 アレルギーが出やすい。子どもでは違和感を訴えることがある。気管挿管には本ゼリー は使用しない。市販商品の潤滑ゼリー(自費購入をお願いしている)がある。量が多いと 気道が狭くなり咳を誘発することがある。 7. 薬は体重や、相互作用が出やすいので薬剤師さんのチェックをしてもらうと良い。 小児では疾患、病態によって専門性が分かれ、総合的にまとめていただける医師が少な いのが現状。腎疾患は小児泌尿器科、慢性肺疾患があれば、小児呼吸器科またはアレルギ ー担当医師が、心疾患には小児循環器科が処方をすることもあり、結果として種類が複雑 になる。このため、薬剤師も交えて薬手帳をチェックし、薬剤の相互作用に何があるのか、 投薬の種類と回数、量などがまとめられないかを医師・薬剤師で検討できると負担軽減に つながる。 訪問薬剤師の利用をお勧めしたい。処方変更なども病院から FAX で届く。 8. ALP、LDH、WBC、肝酵素の正常値が違う。 肝酵素等の正常値は成人と違う。白血球数も成人と違い、とくに 3000 未満の白血球減少 がみられる時は、重症感染症に注意する。 9. 3ヶ月~6ヶ月の時点でヘモグロビンが7程度まで低下し、以後エリスロポイエチンが 増加し貧血が補正される。 ヘモグロビン値は生後3~6か月に向けて低下する。併せて MCV も低下する。Hb 値 は 7.0 位まで低下。鉄剤の投与は積極的に行うのか?超早期でなければ投与する。 10. 栄養の管理を、年齢や成長に合わせて変更することが必要となっている。 呼吸器、寝たきりではカロリー消費が少ないため、脂肪蓄積を抑えるため制限すること が多い。 筋肉量が増加することはないと考える。成人では 20 歳をこえ、30 歳を越える ‥ ‥20 歳ころまでに十分な栄養を投与しておく必要がある。 障害児の栄養管理はあまり報告がない。しかし在宅人工換気児では、呼吸商をしらべた 10.

(12) 報告からも、通常カロリーの 4 分の 3 程度にしている。けいれん既往のある児は、酸素消 費量が増加するため、カロリーが必要になり、20~30%多い栄養管理が必要となる。呼吸 努力、筋緊張の程度をもとに栄養を考える。呼吸リハを取り入れる場合には代謝が増加、 エネルギーを供給。微量元素も併せて栄養の補給を考慮したい(小児在宅医療支援マニュ アル)5)。便性の評価も必要で、栄養剤の注入によって泥状便の持続がみられることがあり、 注入内容に線維質を添加するのも一案。 11. 理想体重での検討ではなく、年齢や体重増加で検討するが個人差が大きいので、小児科 医に検討してもらう。 12. 予防接種を意識しないといけない。(小児科医と相談して行う) 日本小児科学会 HP の推奨するワクチンプログラムを参照するのが便利です。接種時期 は、修正月齢を考慮せず、早産児も暦年齢通りに接種してください。薬剤の入手について は問屋に相談していただくと円滑に進むことがあります。 病院では予防接種外来に通う必 要があり、開業医での接種を引き受けていただく例が多く、利点もあります。 13. 健診できる施設としておくと(1歳半、3歳、6歳に集団健診)健診をやってあげら れる。 健診できる施設:市町村委託は医療機関の登録が必要。集団健診は保健所管轄で、連れ てゆくとウイルス感染症に罹患する可能性がある。 14. 熱が出た時の抗生剤は使わないのが原則で、小児科医と相談する(個別対応、耐性菌 が出来やすい) 。 発熱時、安易に抗生剤は投与しない。殆どはウイルス感染症である。全身状態をチェッ ク not doing well に気づくのは母。いつもと違うという訴えには傾聴。CRP は、結構敏 感な母(家族)が多い。それまでの発熱既往の記憶を家族に問うて対応する。頻脈は測定 項目としては有用なことがある。併せて胃残の増加も。食欲も併せて考慮するとよい。本 人の空腹感の把握は必要。解熱剤使用は、一過性に効果はあるかもしれないが、アセトア ミノフェンにとどめる。 15. 熱が出た時にはこもり熱があり、涼しくするだけで良い時がある。 発熱時の初期処置:成人とは違う。着せすぎないこと。 16. 水頭症の時には体温が下がりやすいので帽子をかぶせたほうが体温が安定する。 水頭症は周囲の温度の影響を受けやすい。特に冬、外出時、風の強い日に帽子使用の効 果あり。 17. カフアシスト・ロートエキス・小青竜湯で痰を減らすことができる。 カフアシストは神経筋疾患などに保険適用がある。胸廓を広げて発達を促すのは有用。 ロートエキス、テオコリン、漢方薬は気道分泌を抑制する効果があり、併用すると良いこ とがある。 【Social 心理的側面】 11.

(13) 18. 本人の同意は成人と同様重要であるが、表現が難しいので見過ごされやすい 本人から発信できないこと(急性膵炎、骨折など)があり、ずっと見過ごされていたこ とがある。成人のようには口で表現できない。ヘルパー、訪問看護ステーションスタッフ によくよく触っておいてもらうことと、母からの聞き取りを常にしておく。常々家族がど のような処置、対応を望んでいるのかも重要。 気切をするタイミングを本人に相談してく れなかったと、後にコミュニケーションができるようになって告白されたことがある。 19. 障害の認識がうすいことが多い。 家族とともに児の障害の認識を話し合っておくことも必要。本人(児)は、私は障害な の?と思っていることがある。 反面おおらかな家族もあり、 「生きていればいい」と表現 される家族もある。 障害受容、愛着形成ということばは、成人在宅医にとってなじみが浅 い。 【社会的側面】 20. 家族の中での葛藤(離婚、兄弟間の問題)は起こることがあるが保健師さんや、学校 の先生と相談する。 21. 出生時障害/中途障害の場合には、 「健康な我が子を失った」という家族の悲しみを癒 やす必要がある。 20.21 に共通した内容として:保健師訪問など年齢が小さい時は支援者が病院関係者だが、 その後は身近な隣人になってゆく、キーパーソンが代わってゆくことを理解。将来、過去 のことを話す。わが子を失うとき、こどもの行く末も話題になることがある。 22. 総合支援法を使う。 医療ケア児を受け入れる施設でも呼吸器があると難しいと対応されることがある。医療 資源調査をもとにマッピングをするようなことをするとよい。資源が少なく使いにくい。 23. 母親同士が知り合いになっていてネットワークがある。 24. 母親が主治医となってさまざまなことを行ってくれる。 25. 母親が子どもの行く末を常に心配している / 考えたくないという気持ちがある。 26.「呼吸器不可」など医療的なケアがあるために社会サービスの利用制限を受ける人がい る。 27. 虐待などがあれば児童相談所に相談する。 周産期に治療を受けた児ではその後の発達や虐待のリスクが高いことが指摘される中 7)、 医療的ケアが必要な在宅児にとって、家族は育児不安や育児困難を伴いやすく,ケアや養 育の不適切さから,児の病状悪化や親子の愛着形成不全を生じる事例も少なくないなど, 児の予後を左右する虐待が生じるハイリスク群との報告 8)があります。加えて、ネグレクト も多く、母が何らかの病気に罹患している場合、虐待の意識がなくてもネグレクトになる ことがありうる。. 12.

(14) 28. 働くこと、人生を見通したビジョンが必要である。 (その人らしさはこれから創るもの) 29. 発達段階は要素によって凸凹があるので、知的・身体的な成長を個別に考える必要が ある。 人生を見通したビジョンすなわち家族プランを一緒に考える。発達段階によって個別に 考える必要が出て来る。 【診療報酬】 30. 経管栄養の栄養剤は、小児の場合には指定がない。(在宅小児経管栄養法) 31. 超重症児・準超重症児の適応になればサービスを増やすことができる。 小児在宅経管栄養指導管理料(平成 24 年度から、平成 28 年度一部改訂)が適応できる。 超重症児適用になればサービスを増やせる。訪問看護の時間を増やすことができる。 介護の体制について‥‥神経難病在宅児では1~2時間に1回吸引要。総合支援重度訪問 介護を行っている自治体もあり、24 時間カバーできる。小児では、母を含めてカバーでき る範囲は不明。申請すると、週 8 時間(こどもは区分認定がなく、家族の負担に応じて対 応可。医師の意見書は不要だが、養育意見書のような添付書類があるとよい) 。遠い先のこ とを考えると(学校のあと、親が老化すると) どうなっているのかが心配。総合支援法は 自宅扱いという面から、ホームヘルパーにとっては 4 名の(梶原厚子氏の発言からですが、 総合支援法の扱いで4名が利用適応最大で効果的のようです。 )グループホームが将来便利 かも知れない。 . 講習会評価(当日終了後アンケート). 当日の参加者は 16 名を 3 グループに分け、各グループには小児在宅医療経験者、小児在宅 医療に携わる医師、理学療法士、講演者がファシリテータとして対応した。当日参加者よ りアンケート調査用紙による質問と、会場でのインタラクティブによる質問応答を思成っ た。 講習会で企画された各セッション(以下番号で示す)5段階評価は図9に示した。 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (14). 講義1「小児在宅医療、現在の問題点」(側島久典)の評価について 講義2「成人在宅医が小児在宅に期待されている役割、小児と成人の違い」(紅谷浩之) グループワーク1「症例1」 講義3「診療報酬について」(大山昇一) 「小児在宅医療とリハビリテーション」(田中総一郎) 「知ってよかったことトップ30」 グループワーク2「症例2」 講義5「重症心身障害児の病態とその対応」(高田栄子) 実技「気管切開チューブ交換、胃瘻」希望者のみ(長谷川朝彦) 今回の講習会全体に対する評価 WSと組み合わせの形式はどうだったか. 13.

(15) 図9:各セッションの参加者評価 全般に満足度は高い結果であった。事前アンケート通り講義による知識の修得は成人在宅 を行っている医師看護師にとって必要性が高いと思われた。 2症例を用いたグループワーク(GW)では、プロダクトの作成は円滑で、KJ 法の採用は このような形式では有用性が高いと考えられる。 小児中途障害症例と、新生児仮死後 NICU 長期入院児例はこれからもグループワークで 採用できる内容と考えられ、過去2回の講習会での反応と併せ、今後もこのような企画で の提示は、成人在宅医療関係者には良い教材と考えられる。 (9)の実技は、希望者のみの参加とし、講習会終了後に行たため、実技に参加した人数 は多かったものの(図 10)、回答数が少なかったと考えられた。. 図 10 まーちゃん人形での実技講習解説(講習会終了後自由参加) 終了後、参加者からのアンケート内容(記述)を以下に示した。とくに質問項目「小児在 宅医療に興味をもって参加するにはどのような方式が効果的か」では、成人在宅医療講習 会と同時に、また、家族に参加していただけるなら是非との意見、各地での開催を望む声 が聞かれた。今後の開催に向け、賛同をいただくとともに、よろ多職種でのこのようなワ ークショップの開催を望む声も寄せられ、今後の検討を行いたい。. 14.

(16) . 本講習会の良かった点(アンケートから). . . 問題点と思われる事柄(アンケートから). . 小児在宅医療に興味をもって参加するにはどのような方式が効果的か(アンケート). 15.

(17) . まとめ. 1.. 勇美記念財団の助成と、日本小児在宅医療研究会からの後援を受け、成人在宅医およ び訪問看護師向け小児在宅医療講習会を開催した。. 2.. 講義と症例提示での日常対応を考察するのには、ワークショップ形式での小グループ ワーキングが効果的であった。グルーピングの方法を考慮することで、多職種間の意 見交換、未知であった知見が修得されており、今後の小児在宅医療と成人在宅医療を 融合した横断的な医療を進める1方法として推奨したい。. 3.. 小児在宅医療における訪問診療、日常診療を支える人材育成に、成人在宅医および訪 問看護師を対象とした小児在宅医療講習会は、小児に興味を示される医療スタッフの 参加が有用で、今回訪問薬剤師の積極的参加が得られ、症例への支援内容に意見が多 く出され、より職種間の活動の連携、理解が深まると考えられた。. 4.. 成人と小児の違いをわかりやすく解説することが、より積極的に成人在宅医、訪問看 護師からの協力、支援が得やすくなると考えられた。. 小児在宅医療では、今後医療的ケア児の増加、とくに人工呼吸器を装着して病院から在宅 移行する人数が増加していることが確認されている。将来成長とともに、成人在宅医療の 中に占める割合は確実に多くなると予想され、成人在宅医および訪問看護師に向けた小児 在宅医療講習会のニーズは増加すると予想される。これまで2回成人在宅医向け小児在宅 医療講習会を開催し、より多職種へ広げた企画が望まれる。 本研究は、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成による. 16.

(18)

参照

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