1.研究主題によせて (1)はじめに 英語ディベートを授業や部活動で取り組んでおられ る先生方はどれくらいいるのであろうか。「ディベー ト甲子園」という言葉はよく聞かれるかもしれないが, 英語ディベートの授業はあまり見たことがない,もし くは,ディベートは敷居が高くて取り組みにくいうえ に,英語で行うので難しいのではないか。そう思われ ている方々の声をよく耳にする。しかし本当にそうな のであろうか。そう思い込んでいるだけなのではない だろうか。現代社会のグローバル化の影響を受け,英 語力の育成が特に求められる現代において,授業にお いて英語ディベートを取り組むことは非常に大切だと 考える。文部科学省(2013)によると,中学校において は簡単な情報交換や表現ができる能力を養い,高校に おいては,言語活動の高度化(発表・討論・交渉等)と, 英語教育改革実施計画にある。英語教育への期待の高 まりの中,今後,ますます英語ディベート指導が求め られると考え,本研究を継続して取り組む決意をした。 (2)研究のねらい 文部科学省が求める英語力の育成とは,4技能のバ ランスの良い英語力を育成すること,そして,英語に よるコミュニケーション能力を育むことである。4技 能のバランス良い英語力を養うにはどのような指導を すればよいのだろうか。筆者は,聞く・読む・書く・ 話す,の全てのスキルが要求される英語ディベート に着目した。英語ディベートの試合をグループ対戦と いう形で行うことができれば,全てのスキルが試合中 に求められることになる。仲間とコミュニケーション をとったり,対戦相手とやりとりをしていくため,先 のような文部科学省が求めている英語によるコミュニ ケーション能力の向上が期待できる。そこで本研究で は,今後必要となってくるディベートという,英語に よる課題解決能力に必要なスキルを磨き育てる活動 を,授業や課外活動(部活動等)を通して行うことで, 学習者の英語力育成や英語によるコミュニケーション 能力を育成することをねらいとした。研究を進めるに あたって実施した実際の中学・高校での授業場面や, 課外活動での様子を,本研究では事例として,取り上 げて報告する。 (3)研究仮説 英語ディベートという1つの英語学習法は中学生や 高校生にバランスのとれた英語力を育成することに貢 献するものであると考えた。また仲間と協力して対戦 していくことになるので,英語によるコミュニケー ション能力も向上できるものであると考えた。チーム メイトと必要なコミュニケーションをとりながら,対 戦に向けての準備,対戦中の協力,試合後の振り返り をすることを通して,この2つの力の育成を目指した。 (4)研究方法 授 業 に お い て は, 中 学3年 生 と 高 校3年 生 の 英 語 ディベートの試合後に取った感想文や授業後のアン ケートなどから,学習者の心の変化を振り返り(self-reflection)のデータ資料として追うことにした。課外 活動においては,中学3年生,高校1 ~ 2年生までそ れぞれのイベントを通して得たことをまとめることに した。 2.高校の授業で英語ディベート(高校3年生) (1)実践の概要 前任校での実践になるが,高校3年生で英語ディベー トを通した英語学習を実施することができた。以下に 詳細を記述する。 ・年 度:2013年度高校3年生 ・科 目:英語演習 ・クラス:文系クラス ・単位数:2単位(月・金曜日) ・人 数:32名 ・期 間:1・2学期間(全44時間) ・教 材:Impact Issues(Longman) ・方 法:1週間に1レッスンを進めた。
戸田 行彦
Yukihiko TODA
滋賀県立守山中学校・高等学校大嶋 秀樹
Hideki OSHIMA
滋賀大学教育学部Learning English through English Debate in Junior & Senior High School
レッスン1回目は,題材の社会問題に対する理解を 深め,意見を考えさせた。レッスン2回目は,ALTとT.T (team-teaching)を行う中で,生徒の意見を集約し, 意見交換をさせた。その時はペアディベートであるが, 2:2,3:3,4:4とディベートの形を変えて実践を続けた。 (2)年間目標 年間目標は以下の2つである。
・To help students express themselves in English.
・To broaden students’ horizon through English. (3)考査問題 1学期については,中間考査に筆記問題を,期末考 査にディベートの対戦を行った。筆記問題は学習し た3つの論題から2題を選んで150語で意見陳述する 問題を出題した。評価は①Opinion,②Reason,③ Supportをそれぞれ評価した。ディベートの対戦はペ アディベートとし,1:1で行った。選ばれたペアを 事前に発表し,クラス全員の前で対戦し,教員二人で ジャッジした。オーディエンスは賛成側・否定側のど ちらかに理由をつけて投票しなければならない。その 結果も集約し勝敗については,後日発表した。評価項 目は,①立論がしっかりかけている,②反論ができる, ③再反論ができる,をそれぞれA~D評価した。(A: 効果的で強い B:良い C:的外れ D:できてない) 以下はそのまとめである。
・May :Mid-term :Written test (Writing your opinion)
「学習済みの3題から2つを選択し150語で意見陳 述する」
・June:Term-end :Pair Debate Matches (立論→反論→再反論まで1対1で行う。) 「通勤には車か電車のどちらが良いか」 2学期については,授業中に4人グループを作り2:2 で対戦をした。中間テストでは筆記試験と即興ディ ベートスタイル(Parliamentary style)でディベート の対戦を3:3で行った。期末テストでは4:4の準備型 ディベート(HEnDA style)を行った。証拠等を用い て立論を作成した。評価方法については前述と同様で ある。
・October :Mid-term :Written test
「お題に対して賛成・反対意見を100語で陳述す る」
“Parliamentary style debate”
「受験生は恋愛禁止にすべきだ」
(立論→反論→再反論→要約:4人1チーム) ・November:Term-end :“HEnDA style
English Debate(立論→反論→再反論→要約: 4人1チーム) 「小学校英語はすべての学年で必修化されるべき だ」 (4)生徒の意識の変化 以下は,生徒のアンケート(振り返りによる意識の 変容を問う質問紙調査)により分析したものである。 3つの項目について,「はい」,「いいえ」,「どちらとも いえない」の3件法で回答させ,その結果を集計した ものである。4月から1・2学期間学習してきて,最後 の授業(12月)に聞いたものをもとに,生徒の意識の 変化について考察する。 1つめの,「英語で意見が言えるようになった」に対 して,生徒は,「はい(21名)」,「いいえ(9名)」,「ど ちらともいえない(2名)」と答えた。 2つめの,「英語力が以前よりついた」に対しては,「は い(23名)」,「いいえ(7名)」,「どちらともいえない(2 名)」であった。 3つめの,「ディベートが好きになった」に対しては, 「はい(15名)」,「いいえ(13名)」,「どちらとも(4名)」 であった。 以上の生徒の意識の変化をみてみると,英語で意見 が言えるようになったと考えている生徒は,66%と なっており,クラスの三分の二はディベートを取り入 れたことの成果を支持していることが判明した。英語 力がついたと考えている生徒も,71%がこの成果を 支持している。ディベートが好きかという問いについ ては,残念ながら50%を超えなかった(47%)。これ はもともとディベートという手法が好きではなかった が,1・2学期間学習してきたことを通して,嫌いであっ た英語ディベートを好きになるという肯定的な反応が 約半数近くまで登ったということが言える。この変化 は非常に大きいと言えるのではないだろうか。 (5)生徒の声 最後に,高校生の記述の感想をいくつか紹介する。
In April, I didn’t like speaking English in front of classmates, but now I do have confidence. So I like debating and English more.
At first, I really didn’t want to debate, but I was glad when I was able to speak English well. I thought I wanted to become a good English speaker!
I want to learn English like this course, not just leaning grammar lessons. So, I decided to learn how to communicate in English in the university. I want to contribute to the world in the future.
I wanted to learn English more through debating. And I understand the enjoyment of English debating. I felt delighted when I argued against the opponent team.
First, I couldn’t understand English enough. So I don’t like debating. But finally, I became to like that. The final debate game was very interesting. Everyone, good job!!
4人1チームで対戦中(高3年12月) 3.中学の授業で英語ディベート(中学3年生) (1)実践の概要 高校での英語ディベートの資料をもとに,中学生版 にワークシートを作成し,毎時間学習した。JTE2人, ALT1名で40名を指導した。ペアディベートから2;2, 3;3,4;4と高校での実践と同様に指導した。 ・年 度:2015年度中学3年生 ・科 目:英語ディベート(学校設定科目) ・クラス:中学3年生2クラス ・単位数:2単位(月・金曜日) ・人 数:40名×2クラス ・期 間:1年間(35時間)
・教 材: Discover debate(Language Solutions, Ins) ・方 法:型を学び,対戦形式で学習する。 (2)年間目標 人前で英語を用いて自分の意見を発信できることを 年間目標にして,以下のような取り組みを各学期展開 した。 1学期:立論&アタックの作り方 ①立論 ②アタック ③ペアディベートなど 2学期:ディフェンス&サマリーの作り方と対戦 ①ディフェンス ②サマリー ③アタック&ディフェンスまで2:2ディベート ④サマリーまでを3:3ディベート 3学期:チームで4:4ディベート対戦 ①クラス予選,決勝戦 ②即興ディベートで対戦 である。まとめると,1学期に型を教え,何度も練習 をすることを重視し,週1単位ではあるが,継続して 指導した。小さなパーツを積み上げて,完成したら同 じテーマで何度も賛成・否定を交代しながら対戦して いる。 (3)考査問題 1学期は,ディベートの型を中心に学習した。英語 ディベートの立論の作り方について,「ペットにする なら,犬or猫?」,「サッカーは野球より面白いスポー ツである」といった簡単なお題を用いて学習してきた ので,それらの確認を問う問題を出題した。立論は, 意見・理由・サポートの3つで構成されているので, 実際に立論を書くことも重視した。またアタック(立 論に対しての反論)もスピーチを聞いて,実際に作成 する問題も主題した。 2学期は,ディフェンス(アタックへの反論)とサ マリー(議論の要約)の型を学習したので,実際にそ れらを用いて,リスニング問題から取り組む問題を出 題した。特に難しい分野でもあるので,ルール的な部 分も出題した。例えば,サマリーでは新しい証拠を出 さないこと,比較の観点を用いて,スピーチを作成す ることなどである。1学期より少し論題のレベルを上 げて,「中学・高校での制服を廃止すべきである」に ついて議論をし,考えを深めた。 3学期は,リスニングを中心に出題し,アタックを 作成したり,ディフェンスを作成する問題を主題した。 また即興ディベートにも取り組んでいたことから,即 興ディベートのルールも確認する問題も出題した。論 題は即興なので身近で簡単なものにした。「バレンタ インデーを廃止すべきである」などである。 (4)生徒の意識の変化 生徒の英語ディベートへの意識の変化について,ア ンケート調査を実施した。2つの項目について(「好 N=76 平均 標準 差 Z p 効果 効果の 値 偏差 両側 量r 大きさ 4月 好き 3.13 1.17 3月 好き 3.76 1.21 0.63 -2.5 0.01 -.29 小
であった。 「死刑制度の廃止」 (2012年) 「大学秋入学の是非」(2013年) 「輸入米関税の撤廃」(2014年) といったテーマを生徒たちは英語でディベートに挑戦 した。(1)の概要にあるように,県2回のセミナーに 参加し,論題への理解を深めることができた。特に,「大 学の秋入学の是非」ついての論題は,自分たちの進路 を考える高校生にとって,大変身近なものであり,世 界を視野に,グローバルな思考で議論ができたものと 思われる。今後もこういった論題は提案されることを 期待している。 (3)セミナーや練習試合 滋賀県では当時,年に2回程度,有志で結成された 英語ディベート推進委員会が,滋賀県高校生英語ディ ベートセミナーを主催した。第1回目のセミナーは, 100名近くの県内の高校生が集まり,ディベートの仕 方を日本語で学び,他校の生徒と交わりながら,ディ ベートの手法を学ぶものである。第2回目では,各校 がチームで参加(60名程度)し,対戦をする講座も用意 され,県大会に向けて各校がレベルアップいく様子が 感じとれた。顧問の先生も熱心に集っていた。 このセミナー以外に,顧問同士が連絡を取り合い, 練習試合を多く持つ学校もあった。近年では1つの学 校に集まって,たくさんの対戦を持つこともできるよ うになってきた。学校によっては,Skypeを使ってい るところもある。練習試合のほかに,夏休みに合宿を 行った時もある。滋賀大学教授の大嶋秀樹先生に特別 レクチャーをお願いして快く引き受けてくださり,感 謝している。Make friendsをモットーに多くの高校 生が合宿に参加した。ディベートを通し,参加者の生 徒や顧問がMake friendsできた。その後も,大会に 向けて,多くの高校生・顧問が週末,英語ディベート の対戦をしている。 (4)県大会とその上位大会 2回のセミナー,各練習試合を経て,毎年11月に滋 賀県予選大会が開催される。多いときで10校程度参加 し,上位1 ~ 3校が全国大会に出場できる。筆者も前 任校の時に,2度出場した経験があるが,全国大会で はさらなる磨きのかかった議 論 が 熱 く 行 わ れ た。Make Friends憲 章 を 掲 げ て い る 熱 く て い た。Make friends憲 章 を 掲 げ て い る HEnDA(全国高校英語ディベート連盟)に則り,勝ち 負けだけではなく,他校との友情を築くことのできる 素晴らしい大会である。引率した生徒たちも,対戦し た敵チームのメンバーと対戦後に大変仲良くなってい きかどうか」,「得意かどうか」)5件法で調査した。 (N=76) 好きかどうかについては,4月では3.13/5段階で あったが,3月には3.7/5段階と,0.63ポイントもアッ プした。ウィルコクソン符号付順位和検定によると, **P<0.01,効果量小(r=0.29)であった。 得意かどうかについては,4月では平均2.68/5段階 であったが,3月には3.53/5段階と0.85ポイントも アップしていて,ウィルコクソン符号付順位和検定に よると,**P<0.00,効果量中(r=0.39)であった。 (5)生徒の声 はじめは自信のなかったディベートであるが,練習 を重ねるごとに少しずつ自信をつけていくことができ た様子が見られた。以下に生徒の声をいくつか紹介す る。 ・英語ディベートでは,同じ論題を何度もすること に驚いた賛成と反対の両方をすると,物事がすご く見えてくる。 ・どんな意見も表裏一体で,どんなに強い立論を作っ ても,アタックをされることがわかった。 ・ジャッジにどう伝えるのか,話し方がとても大切 だと思った。 4.高校の部活動でのディベート活動(高校1・2年生) (1)概要 高校での英語ディベート活動を部活動で始めた。高 校1・2年生主体であった。毎年11月に開かれる県大 会に向けて取り組んだ。6月に滋賀県の英語ディベー ト推進委員会主催の高校生英語ディベートセミナー に参加したり,その後は各校との練習試合を経て,県 大会を迎えた。練習時間は主に放課後であり,各自が リサーチしてきたことを報告しあい,立論を作成して いった。立論をみんなで完成させると,各役割(アタッ ク担当,ディフェンス担当,サマリー担当)にわかれ て,それぞれのスピーチを作成していった。 (2)論題 英語教師にとって,英語表現を教えることは仕事の 範疇であるが,論題は難しいものもあり,生徒たちと ともに考えることもした。高校での論題は以下のもの N=76 平均 標準 差 Z p 効果 効果の 値 偏差 両側 量r 大きさ 4月 得意 2.68 1.01 3月 得意 3.53 1.08 0.85 -3.73 0.00 -.39 中
トPre大会が開催されており,それに参加を目指して 生徒を12名とともに,2015年の12月に初めて参加し た。高校生のような県レベルのセミナーもなく,ほぼ 手さぐりではあったが,高校で活用した資料を少し簡 単にしながら,ディベートの指導を継続した。 (2)論題 中学生の大会の論題は,高校よりやさしく,より議 論しやすいものである。「中学高校における制服の廃 止」や「学校給食の是非」といったように,取り組み やすい論題であることは事実である。周囲を見ても英 語ディベートに取り組んでいる学校も多くなく,本県 では本校を含めて,2校のみの参加だったので,練習 試合を通して,全国大会に向けて互いのレベルアップ を図った。 (3)セミナーや練習試合 前述のように,本県において高校のようなセミナー は未だ開催されておらず,2校で連絡を取り合い,練 習試合を何度かした。試合をするたびに,成長するディ ベーターたちの姿が見られることも,中学においては 顕著であった。中学の先輩たちが,高校でディベート を続けているので,大会前には高校生に特別に相手を してもらった。 (4)県大会とその上位大会 県大会は今のところ(2016年11月段階)はまだ開 催されていない。全国大会もPre大会ということで, 毎年開催されている。2015年12月に岐阜聖徳学園高 校で全国各地から集まった18チームで対戦をした。本 校からは2チーム出場した。 (5)大会後 中学には英語クラブのようなものがなかったため, 大会後は解散することになった。高校では英語ディ ベートを部活のような形でできるところがあるので, そこに入り,活躍をしている卒業生もいる。本校は中 高一貫教育校なので,生徒たちは中学3年生の段階か ら高校部活動・研究会等に参加することができるのも 大きなメリットである。 紅白戦の様子 る。この姿を見ると,ディベートという英語学習法の もう一つの有意義な点が見出すことができ,だんだん と生徒も教員もディベートをやめられなくなってく る。近年では,9月中旬頃から全国の各エリアにて,(関 西地区では)関西大会と呼ばれるブロック大会が開催 される。この大会の優勝校には全国大会に行ける可能 性が高い。 全国大会での写真 (5)大会後 英語ディベートの各種大会後,部員たちは次の論題 発表を心待ちにしていた。毎年3月にその年の論題が 発表されるのであるが,それまでの約3か月,つまり3 学期の間は即興ディベートなどで,話す力が衰えない ように日々練習していた。そして論題が発表されると, 猛烈なデータリサーチが始まる。高校2年生にとって は,この春に毎年愛知県で開催される大会で引退する ことが多い。その後,1年生が2年生となり,新1年生 を迎え,前日のセミナーや練習試合,県大会へと向かっ ていくのである。 5.中学でのディベート活動(中学3年生) (1)概要 中学校に英語部のような部活はないので,英語科の 先生がスピーチコンテストに出場する生徒を放課後残 して練習するのとほぼ同じような形で英語ディベート の指導にあたった。ここ数年,全国中学生英語ディベー
て海外留学があるのではないだろうか。ただ喋れるだ けではない,骨太の英語力を身につけている。 近年,Active learningという言葉を頻繁に耳にす る。ディベートそのものが,大変大きなアクティグラー ニングの実現の1つの形であることは間違いない。仲 間とともに,頭をフル回転して,第3者を説得するゲー ムである英語ディベートがActive learnersを育てて いるといっても過言ではないと考えている。 7.今後の課題 (1)授業において 授業においては,教科書に載っている文章から自分 の意見を考えさせる活動を最後には取り組ませたい。 なかなか日本人は自分の意見を述べるのが得意ではな いので,ディベートという手法を通して,物事の両面 を調べ,考え,深めていく中で,自分の意見を最後に 書かせることを行っていきたい。それができたときに は,次なるチャレンジとして,ディスカッションを授 業で進めていきたいと考えている。賛成・反対と言っ た活動から,深い思考を伴った議論をするために,ディ ベートの経験を活かし,ディスカッションへと挑戦し ていくことこそが,今後の課題である。 中学校の授業においては,中学3年生の2学期にFor or againstを学習するレッスンがある。この時期まで ディベートを待つ必要はなく,中学2年生の3学期で比 較表現を学習した時から,ディベートのエッセンスを 教えていくべきであろうと考えている。その時こそ, 簡単なテーマでOKである。
(例) Cats are better than dogs. I have two reasons.
First… Second…
For these reasons…
と言った具合である。主張を述べる文,理由の数を述 べる文,ナンバリングして理由を述べていく文,最後 にまとめる文を持ってくるといったように,型を教え ると,そこに生徒たちの意見や考えを書けるようにし ておく。理由の後に,具体例が書けるようになれば, 立論はほぼ完成したことになる。しかし,書くことは 難しいので,お題について,しっかりとブレーンストー ミングをして,教師のモデル立論を提示し,どれか意 見・理由・具体例の文なのかを理解した後で行うべき であろう。ペアを相談しながら作成しても良いし,グ ル―王で作成しても良い。段々と自分の意見を英語で 言える場面がたくさん増えてくれば来るほど,生徒た ちの意欲も増えるものと考える。毎時間継続して帯活 動で行えれば,定期テストに出題することも可能であ る。毎時間かかせることが難しいときには,1分間ス 6.考察 (1)外部試験の結果より 中学において,英語ディベートをすることで,外 部試験においても大きく力を発揮することができた。 GTECのListening, Reading, Writingどの分野にお いても,全国平均を大きく上回る結果であった。英語 検定試験においても,準2級に合格する生徒もいた。 (2)イベントを通して 中学生・高校生において,英語ディベートを行うに あたり,自分の意見を持つこと,論題に対する理解を 深めること,他校と生徒たちとが交流することで,生 徒たちに大きな成長をもたらすことがわかった。以下 に生徒の声を紹介する。
I enjoyed English debate very much! I joined this English debate because I was interested in English before. At first, I couldn’t understand what I should say and I also couldn’t understand what opponents said. While I practiced many times, I found my English improved. On December 20th, we lost two games, but we could get new English debate skills. Also, we also could listen to passages in English better than before and we could enjoy English debate!!! That was my first time that I could use English pleasantly. The field of my English was broadened. Thank you very much!
このように,同じ論題で日々練習していくことで, 英語による聴解や発話のレベルが向上していることが 伺える。また勝っても負けても大きな達成感が得られ ることもわかる。さらに,英語ディベートを経験した 生徒たちかを見ていて,大きな変化がある。それは, 英語を「学習する教科」という位置づけから,「使用 する言語」へと意識の転換が行われることである。ディ ベートを経験すると,人が変わると筆者は考えている が,その要因は,こういった意識の転換なのではない だろうか。 (3)ディベート卒業後の姿 卒業後の姿として共通していることがある。それは みんなが留学しているということではなく,一人一人 が自分の意志を強く持ち,目標に向かって一生懸命に 何事にも励んでいることである。ディベートをするこ とで得られる論理的思考力・意志決定力・議論の力は, これほども大きく人を変えるものかと驚愕する。特に 英語で行うので,英語力もつく。日本人のみならず, 留学生とも躊躇なく話している。その先の選択肢とし
教育改革実施計画」 http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaiko kugo/__icsFiles/afieldfile/2014/01/31/1343704_ 01.pdf, p1. HEnDA(全国高校英語ディベート連盟)HP http://henda.global/ 註 本研究は,本論文の第一著者である戸田行彦が中心 となって数年間にわたり実践研究を続けてきた「英語 ディベート」を通じた中学生・高校生の英語力向上を はかる英語教育研究,英語による言語活動を通した生 徒の生きる力を育てる中等教育の場での教育実践に根 差した英語教育研究の一端をまとめたものである。論 文の著作(authorship)は,すべて第一著者の戸田 行彦に帰属するもので,第二著者の大嶋秀樹は第一著 者の戸田行彦の研究を大学教員の立場で支援し,その 成果の公開の場を提供したもので,著作についての権 利は,本論文のすべてをまとめた第一著者の戸田行彦 が有することをここに明記する。 ピーチをペアで行うことでも対応可能である。大事な のは自分の意見を考える場面と作り,誰かと口語や文 語で共有し,やりとりをしていくことにある。思春期 の中学生にはどんどん意見を交換してもらいたい。 高校の授業においては,高校1年生から英語表現Ⅰ の授業があるので,そこで意見発表をするチャンスが 十分にある。またコミュニケーション英語Ⅰにおいて も,読みながら,自分の意見を構築していく良いチャ ンスがある。今後の新科目に,「論理・表現(仮称)」 といった科目が新設されると聞く。そこでディベート やディスカッションを高頻度に行うことが大切だと考 えている。中学で意見を構築する活動を経験してきた 高校生に,ディベートやディスカッションの指導を行 うためには,指導法ももちろん,大切ではあるが,そ の評価についても整える必要がある。指導と評価の一 体化に向けて,どのような評価項目を用意すべきであ るのか,今一度検討すべきである。筆者の課題として は筆記試験とディベートの試合によるパフォーマンス 評価のバランス・評価項目・評価方法の改善を試みる 必要がある。今後の課題として,生徒の声を大切にし ながら,改善に取り上げていく所存である。 (2)授業以外において 各種コンテストに挑戦する生徒たちを増やすために は,生徒や教員向けのセミナーは必要である。現在で 行われているものもあるが,参加校を拡充すべくさら なる周知が必要であろう。準備型ディベート(HEnDA) の全国大会は今年で第11回大会をむかえる(2016年 12月現在)。即興型ディベートの大会も近年注目を浴 びてきている。どちらか一方のディベートを行うとい う選択的な考えも悪くはないが,できれば両方のディ ベートを経験する方が望ましいと筆者は考える。準 備型ではデータリサーチ力,即興型ではパブリックス ピーキング力など,それぞれに得られる力があるから である。どちらを先に経験しても良いのだが,両方を 同時にできるものはないのか現在模索中である。例え ば,簡単なテーマについて,証拠資料を付けてディベー トの対戦を行うと,敷居が高いと思われがちなディ ベート人口も増えるのではないだろうか。ディベート を経験し,自分の意見を臆せず言える日本人育成に向 けて,今後も日々の活動に改善を加えながら,継続し ていく所存である。 8.参考文献 中央審教育課程部会・教育課程企画特別部会(2016). 「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のま と め 」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/ chukyo/chukyo3/053/siryo/__icsFiles/afieldfi le/2016/08/02/1375316_3_2_4.pdf, pp.137-138. 文部科学省(2013).「グローバル化に対応した英語