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東京女子医科大学眼科における斜視手術について

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Academic year: 2021

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原 著 (東女医大誌第55巻 第12

)

頁 1064-1068昭和60年 12月

東京女子医科大学眼科における斜視手術について

東京女子医科大学眼科学教室(主任 内田幸男教授〉

議十.榔

1

石毛・伊藤語手

( 受 付 昭 和60年 7月30日〕

Operations on Ocular Muscles for Strabismus Performed in the Department of Ophthalmology

Tokyo Women's Medical College

Atsuko TSUTSUMI

Kazuko KIRIBUCHI and Keiko ITO Department of Ophthalmology, Tokyo Women's Medical College

The results of operation in108 cases of strabismus, particularly horizontal strabismus, performed in our department are discussed.

The main operation for esotropia was recession of the medial rectus muscles. The corrective e丘ecton the ocular level was favorable

but the effect of the operation on obtaining the binocular vision in congenital esotropia was poor.

A

combined operation, involving advancement of the medial rectus muscle and recession of the lateral rectus muscle, was used for intermittent exotropia with normal correspondence, and recession of both lateral rectus muscles was used for intermittent exotropia with double correspondence. The corrective e妊ecton the ocular level was favorable, and the prognosis of binocular vision was also good. There was much variation in the operational effects on constant exotropia and exotropia associated with poor visual acuity, and the residual angle of squint was large in most cases.

緒 言 斜視の治療の中で,手術はもっとも有効な方法 であるが,その効果は一定ではない.その効果に は 機 械 的 に 眼 筋 を 動 か し た た め の 影 響 の み な ら ず,感覚の異常などさまざまな要因が関与する. 斜視手術の目的は眼位ずれをなおし,良い両眼 視機能を得ることにある.より良い結果を得るた めには,術前に十分な検査を行ない,手術筋を選 択し適確な定量をすることが必要である. 今回われわれは,東京女子医大眼科における斜 視手術について検討を加え,手術筋の選択,定量 について若干の知見を得たので,ここに報告する. 対 象 昭 和55年1月から60年3月までに当教室で斜視 手術を受け,術後3ヵ月以上経過をみることので きた108例の手術効果について検討した. 眼筋マヒによる麻痩性斜視はすべて除外した. 垂直斜視は症例が少ないため,今回は主として水 平斜視について検討した.108例を斜視の種類別に 分類すると表1のごとくであった.垂直斜視や交 代性上斜位例が少ないのは,水平斜視に合併して 表1 手 術 を 行 な っ た 斜 視 の 種 類 斜視の種類 症例数 % 先天性内斜視 19 17.6 一部調節性内斜視 16 14.8 内斜視 開散マヒ型内斜視 3 2.8 斜視弱視 2 1.9 視力不良性内斜視 1 0.9 正常対応、間歌性外斜視 29 26.9 二重対応問歎性外斜視 13 12.0 外斜視 恒常性外斜視 9 8.3 視力不良性外斜視 10 9.3 術後外斜視 3 2.8 上斜視 3 2.8 目 十 108 100

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いるものが多いため,水平斜視の型で分類したた めである. 手術方法 l 内斜視 小児の内斜視は原則として内直筋後転を行なっ た.内斜視の斜視角2。に対して内直筋後転1mmの 割合で行ない,術後内転不全や輯湊不全をおこさ ないためにも6mmを限度とした. 年長児および成人では,内直筋後転によって術 後輯鞍不全をおこしやすいので,外直筋短縮を主 にし,内直筋後転は少なめにした. 先天性内斜視では主として両眼の内直筋後転を 行なった.一部調節性内斜視では,眼鏡装用後半 年以上たっても残余斜視角が10。以上あり,斜視角 に変動がないものに対し,主に片眼の内直筋後転 を行なった.開散麻痔型内斜視では主に両眼の内 直筋後転を行なった.斜視弱視や視力不良性内斜 視では,主に視力不良眼の外直筋短縮と内直筋の 後転を行なった.

2

外斜視 正常対応問敵性外斜視は輯湊不全を伴うことが 多く内直筋の強化手術を主体とした.表2のごと くまず一眼の内直筋前転を行ない,外直筋後転を 併用した.外直筋の後転量が多いと,術後外転不 全をきたすため,外直筋後転は5mmにとどめた. ここでいう内直筋前転とは内直筋の短縮をできる だけ (5mm位〉行ない,付着部よりlmm位前へ 移動する方法である.術前斜視角が大角度の場合 でも,片眼の前後転のみにとどめ,後日足りなけ 表2 正 常 対 応 間 歎 性 外 斜 視 の 手 術 方 法 斜 視 角 10"--14・ -15"--17・ -18"--20。 -21"以上 手 術 量 内直筋前転単独 内直筋前転+外直筋後転3m m 内直筋前転+外直筋後転4m m 内直筋前転+外直筋後転5m m れば再手術している. 二重対応間歌性外斜視は輯湊は良好で,外ょせ の力が強いことから,両眼の外直筋の後転を行 なった.両眼の外直筋後転を斜視角1。につきlmm 行ない, 10mmを限度とした. 恒常性外斜視は正常対応間敵性外斜視と同様 に,内直筋前転と外直筋後転を併用した.視力不 良性外斜視は視力不良眼に対し,一眼の内直筋前 転と外直筋後転を行なった.術後外斜視例は3例 とも幼小児期に内斜視であったため内直筋後転術 を受けていた.後転してある内直筋をみつけ,も との付着部よりlmm前転した. 検査方法 検査は大型弱視鏡を用い,手術直前の他覚的斜 視角の値と,術後の値の比較を行なった.同一症 例で2回以上手術を行なっている場合は 1回目 の手術効果のみをみた. 斜視手術の効果をみるために, 日本弱視斜視学 会小委員会が報告した斜視の治療基準J)(表3)に 基づいて効果判定した.この治療基準は治癒後 4 年目に判定すると決められているが,今回はその 年数を経ていないものも,判定基準に沿って一時 表3 斜視の治癒基準(小委員会〉 治 癒 度 IV 治癒Excellent III ほぼ治癒Good II 部分治癒Fair 整容治癒Cosmetically satisfactory

無効notimproved 湘j 定 内 偏位度 自覚症状 10・以内9方向眼位〔遠見・近見〉にて自覚症状のない斜位 少自なくとも第強1眼位ヰ位にて斜位 覚 症 状 の い 斜 第 徴1眼位で斜位一斜視 小斜視 第異1眼位で:t15ム以内,上下10ム以内の斜視 常頭位の軽減または消失 1065 容 両眼視の程度 立体視60"未満NRC 立体視60"以上NRC 立体視60"以上または実用的立体視 NRC-ARCまたはARC NRC:正常対応 ARC 異常対応

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的な効果判定をこころみた. 結果および考察

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内斜視 1)先天性内斜視 手 術 に よ る 効 果 は , 内 直 筋 後 転1mmVこっき 0.5-2S,平均lS矯正された.平均手術筋数は 2.4で,平均手術回数は1.4回であった. 期待値の1mmにつき2。に比べ,矯正効果がやや 低いが, 2'以上矯正される例もわずかであるが存 在し,現在の定量以上に手術すると,過矯正とな る症例がでてくると思われる. 内斜視の手術を両内直筋後転法をとるか,片眼 の前後転法を行なうかについては論議のあるとこ ろである.Milesらと Burian2 )は両者を比較し,両 内直筋後転法は近見偏位に対して大きな効果をも ち,前後転法は近見・遠見ともに同じような矯正 効果をもつので,両内直筋後転法は調節性因子を もっ内斜視によく,非調節性の先天性内斜視には 前後転法がよいと述べている.われわれは,手術 による侵襲が少なく,比較的定量がしやすいこと から,両内直筋後転を行ない,ついで残余斜視角 がある場合 1眼か両眼の外直筋前転を加えてい る. 表

4

は治癒基準に基づいた効果判定の結果であ る.良好な立体視を獲得した例は

1

例もなく,両 眼視機能の予後は不良であった. 先天性内斜視の手術時期については早期に手術 した方が良いとする説3)4)と早期に手術しても良 好な両眼視機能は得られず,両眼視機能検査が可 能となる時期まで待ってもよ L、めとする説があ る.当科では,①眼位ずれが大きく,②調筋性因 子がない,③交代視しているとし、う点がそろえば 手術をしている.今回の結果では

2

歳前に手術を 受けた例が5例と少なく巌密には言えないが,早 表4 先 天 性 内 斜 視 の 治 癒 判 定 症例数 % IV

III

Il 4 21 11 58

4 21 期手術例が遅い例に比べ,両眼視機能が良いとい う結果は得られなかった. 2) 一部調節性内斜視 手術効果は内直筋後転1mmにつき0.3-2.6', 平均1.5',矯正されており,先天性内斜視とほぼ同 じ位の効果が得られた.平均手術筋数は1.3,平均 手術回数は1.1回であった.先天性内斜視に比べる と斜視角が少なく,交代性上斜位・下斜筋過動な どの合併も少ないため,手術はほぼ一回でよい眼 位の得られるものが多かった. 治癒基準に基づいた効果判定は表5のごとくで あった.先天性内斜視に比べると,両眼視機能の 予後も良好であった. 3) 開散麻薄型内斜視・斜視弱視・視力不良性内 斜視 症例数が少なく,評価を加えることができな かった. 2 外斜視 1)正常対応間歓性外斜視 手術効果は表6のごとくで, これれしは予想想、してい た値にほJま 2.0,平均手術回数は1.1回であった. 久保田ら川土正常対応間

l

敵性外斜視において, 内直筋前転のみの効果と,外直筋後転を加えたも のを比較し,後転を1mmでも加えた方がはるか に有効であると述べている.術直後の眼位は良好 でも,時間がたつにつれ,再び外斜してしまう症 表5 一 部 調 節 性 内 斜 視 の 治 癒 判 定 症例数 % IV

III 3 19 II 7 44 4 25

2 12 表 6 正 常 対 応 間 歌 性 外 斜 視 の 手 術 成 績 手 徐E 法 症例数 効果平均 内直筋前転単独 5 11" 内直筋前転十外直筋後転3mm 6 14" 内直筋前転十外直筋後転4mm 8 17" 内直筋前転+外直筋後転5mm 6 22"

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表7 正常対応間敏性外斜視の治癒判定 症例数 % IV 9 31 III 9 31 II 4 14 3 10

4 14 例もみられた.間歌性外斜視の場合,このような 戻りがみられるため,意図的に過矯正にするとよ いとする意見市)も多いが,われわれは意図的に過 矯正を試みる手術は行なっていない.中川ら9)は 術後の内斜が多ければ完全治癒の比率は高まる が,同時に過矯正の症例もふえ,作為的に術直後 内斜を作ることには検討が必要であると述べてい る 表Hこ治癒基準に基づく効果判定を示した.良 好な立体視が得られた症例が約2/3にみられ,両眼 視機能の予後は良好であった.術前同時視が認め られなかったのに,手術後認められるようになっ た症例が4例(14%) にみられた.このことにつ いて久保田ら10)は,間歌性外斜視では外斜の状態 と正位の状態の時があり,手術によって正位に保 ちやすい状態を作ってやれば,同時視が証明しや すくなるのだと説明している. 2) 二重対応間敏性外斜視 手 術 効 果 は 外 直 筋 後 転1mmにつき0.4-1.30 , 平均

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.

9

8

。矯正されており,ほぼ予想したとおりの 結果が得られた.平均手術筋数2.5,平均手術回数 は1.2回であった. Burianら11)はBasic typeに は 前 後 転 術 , Convergence Insufficiency typeには両内直筋前 転術, Divergence Execss typeには両外直筋後転 術がよいとしている.二重対応間歌性外斜視は Divergence Excess typeiこ相当し,開散方向に向 かう力が強L、ため,外直筋を弱める手術が有効で ある.正常対応間歌性外斜視の場合,外直筋後転 を5mm以 上 行 な う と 外 転 制 限 が 生 じ る の に 対 し,二重対応間敵性外斜視では10mmまで可能で、 ある. 治癒基準による効果判定は表

8

のごとくで約

2

/

3の症例で良好な立体視が得られた.術前同時視が 1067 表8 二重対応間敵性外斜視の治癒判定 症例数 % IV 2 15 III 7 54 II 2 15 I I 7.7

I 7.7 証明されなかったのに術後証明された症例が3例 (23%)にみられた.岩重叫ト土二重対応間歌性外斜 視をもっとも予後が良好で,手術効果が安定する 型であると述べている.しかし交代性上斜位や上 斜視の合併がみられたものは,手術後も両眼視機 能は不良であった.大月l討は術前術後上下ずれが 原因で良好な両眼視機能が認められなかった症例 は,水平斜視を主体とした治療法で、は治癒しがた いと述べている. 3)恒常性外斜視 9例中 7例に水平15ム以上の斜視角が残った. 手術効果は正常対応間歌性外斜視に比べぱらつき があり,矯正効果が少ない傾向がみられた.手術 後の両眼視機能は全例不良であった. 4)視力不良性外斜視 10例中15ム以上の斜視角が残った症例が

2

例 あった.手術効果はばらつきがあり検討できな かった.丸尾1内土弱視などの視力障害があるとき は,術後斜視角が変化していくことを考えて,内 斜視では低矯正に,外斜視では過矯正の手術を行 なうことが望ましいと述べている. 5) 術後外斜視 後転してあった内直筋をもとの付着部より1 m m前転することにより ,

W-23

0,平均16。矯正さ れ,内直筋前転のみでかなり良い矯正効果が得ら れた. 結 論 東京女子医大眼科にて斜視手術を行なった

1

0

8

例について,主に水平斜視を中心に,手術効果の 検討を行ない,次の結果を得た. 内斜視の手術は主に内直筋後転を行なって良い 眼位の矯正効果を得たが,先天性内斜視において は両眼視機能の予後は不良であった. 正常対応間歌性外斜視は,内直筋前転・外直筋

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後転を併用し,二重対応間歌性外斜視は両外直筋 後転を行ない,良い眼位の矯正効果を得,両眼視 機能の予後も良好であった. 恒常性外斜視・視力不良性外斜視は手術効果の ばらつきが大きく,残余斜視角の大きい症例が多 かった. 稿 を 終 え る に あ た り , 御 校 聞 を 賜 わ っ た 内 田 幸 男 教 授 に 深 謝 い た し ま す . ま た 終 始 検 査 に 協 力 し て く だ さった視能訓練土,金子鏡子嬢・高橋真由美嬢に厚く 御礼申し上げます. 文 献 1)植村恭夫:斜視および弱視の診断および治療基 準.眼科Nook 10 1-11 (1979)

2) Miles

D.R. and Burian

H.M.: Computer stastical analysis of symmetrical and asym metrical surgery in esotropia. Trans. Am. Acad Ophthal & Otol 71(3) 290-297 (1967) 3) Taylor

D.M.: Is congenital esotropia fun -ctionally curable J Pediat Ophthal 11(1) 3-10 (1974) 一 1068 4)植村恭夫:小児斜視,殊に乳児内斜視について.眼 科 12(4)253-263 (1970) 5)矢沢興司・ほか:内斜視手術の長期予後.眼臨 70(11)1197-1206 (1976) 6)久保田伸枝・ほか:水平斜視手術の定量について. 限臨 72(11)1364-1368 (1978) 7)Raab

E.L.

et al.: Recession of the lateral recti. Arch、Ophthal93(8) 584 -586(1975) 8)杉田慎一郎・ほか:術前orthopticsを行ない得る 間 歌 性 外 斜 視 の 術 後 の 長 期 観 察 に つ い て . 眼 臨 70(11) 1246-1248 (1976) 9)中川 喬・ほか:問敵性外斜視の治療効果.限臨 72(11)1353~1357 (1978) 10)久保田伸枝・ほか..外斜視手術前後の両眼視機能 について.眼臨 67(1)36-39 (1973)

11) Burian, H.M., et al.: The surgical manag巴

ment of exodeviations. Amer.J Ophthalmo159(4) 603-620 (1965) 12)岩 重 博 康 : 斜 視 の 手 術 . あ た ら し い 眼 科 2(3) 343-348 (1985) 13)大 月 洋 : 外 斜 視 手 術 後 の 長 期 予 後 . 眼 臨 70(11)1207-1215 (1976) 14)丸 尾 敏 夫 : 斜 視 の 手 術 方 針 . 眼 臨 79(7) 1301-1305 (1985)

表 7 正常対応間敏性外斜視の治癒判定 症例数 %  I V  9  3 1  I I I  9  3 1  I I  4  1 4  3  1 0  。 4  1 4  例もみられた.間歌性外斜視の場合,このような 戻りがみられるため,意図的に過矯正にするとよ いとする意見市)も多いが,われわれは意図的に過 矯正を試みる手術は行なっていない.中川ら 9 ) は 術後の内斜が多ければ完全治癒の比率は高まる が,同時に過矯正の症例もふえ,作為的に術直後 内斜を作ることには検討が必要であると述べてい る 表 H

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