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早期胃癌における粘膜下層浸潤様式の臨床病理学的検討 : 粘膜下層への癌組織型の多様性について

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原  著 〔東女医大誌 第64巻 第5号頁399∼409平成6年5月〕

早期胃癌における粘膜下層浸潤様式の臨床病理学的検討

一閃膜下層への癌組織型の多様性について一

東京女子医科大学 消化器病センター消化器外科学(主任    テ    ヅカ    ヒデ    オ

  手 塚  秀 夫

羽生富士夫教授) (受付 平成6年1月6日) Early Gastric Carcinomas:Their Modes oHnvasion and Changes of        the Histologic Types iむthe Submucosa        Hideo TEZUKA Department of Surgery(Director:Prof. Fujio HANYU), Institute of Gastroenterology,       Tokyo Women’s Medical College   In order to evaluate the modes of submucosal invasion by early gastric carcinomas, histopa− thological examination was performed on 106 patients with submucosal carcinoma in comparison w孟th 182patients with mucosal carcinoma. Three modes were correlated with the age and sex of the patients, the localization site, size, macroscopical and m量croscopical types of carcinomas,1ymph node status, and changes of histological types of carcinomas i凱the sψmucosa. First mode, lamina muscularis mucosa type, was found in 1000ut of 1961esions. It was sometimes found in earlier submucosal carcinomas. Deep submucosal type was typically observed expansively in well・differ・ entiated carcinomas and diffusely in poorly・differentiated carcinomas in 361es量ons. Lymphatic and vascular invasio飢ype in 601esions was correlated with the highest ratio of lymph node metastasis. Larger carcinomas sometimes contained multiple histological subtypes in the mucosa, in which case, the predominant histological types in the mucosa were also predominant in the submucosa in 90 percent of the cases. In the remainder, however, minor histolog三cal types in the mucosa, usually poorly−differentiated types, were predominant in the submucosa. The modes of submucosal invasion and the histological subtypes of carcinomas in the submucosa might be valuable parameters in assessing early gastric carcinomas.          緒  言  早期胃癌の定義と肉眼形態分類が定められてか ら30年あまりが経過し,また近年胃集団検診の普 及と診断学の進歩により早期胃癌手術症例の胃癌 全体に占める割合が増加している1).しかし早期 胃癌といえども粘膜癌(以下m癌)と粘膜下層癌 (以下sm癌)ではsm癌の成績が不良である2).こ れは脈管侵襲やリンパ節転移および再発などが関 与している1)2).そこでm癌がsm癌へと進行する 場合に癌腫がどのようにして粘膜下層(以下sm 層)に浸潤してゆくのか,.また病巣の進展に伴っ て粘膜層(以下m層)およびsm層の組織型がど のような変化を示すのか,それらの特徴を明らか にする目的で浸潤様式を検索決定し浸潤様式と年 齢,性別,占居部位,腫瘍径,肉眼型,組織型, リンパ節転移,sm層における組織型の多様性に ついて臨床病理学的に検索し,さらに腫瘍径の増 大に伴う浸潤様式の変化についても検討を加え た.         対象と方法  検索対象は1986年から1987年の2年間に東京女 子医科大学消化器病センターにおいて切除された 一399一

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1)筋板型(間隙型)HE染色,×10 3)筋板型(断裂型)HE染色,×20 5)深層型(膨張型)HE染色,ルーペ像 7)脈管侵襲型(リン・《管侵襲型)Vlctorla blue&  HE染色×5       図1 2)筋板型(分散型)HE染色,×16 4)筋板型(切れ上がり型)HE染色,ルーペ像 6)深層型(ひまん浸潤型)HE染色,ルーペ像      8)脈管侵襲型(静脈侵襲型)Vlctorla blue&HE       染色,×5 浸潤様式の分類 一400一

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早期胃癌288症例で,内訳はm癌が182症例,sm癌 が106症例である.切除標本は10%のホルマリン溶 液で36∼72時間固定した後,病巣部位を中心とす る約5mm幅の半連続縦割で切り出し脱水し,パ

ラフィン包埋の後に薄切した.染色は

Hematoxylin−Eosin染色とAlcian blue−PAS染 色を主として観察し,また静脈侵襲については Victoria blue−Hematoxylin−Eosin染色を行い, 症例によっては鍍銀染色かElastica・Van Gieson 染色を追加して組織標本を作製した.  用語および基準は胃癌取扱い規約(改訂第11 版)3)に準じたが,本論文での使用の範囲において は改訂第12版と差はない.深高度についてはsm 出直に脈管侵襲のみが観察されるものはsm癌と した.分化度についてはpap, tub、, tub2を高分化 型,por, sig, mucを低分化型とした.なお統計 処理はλ:2検定によった.          結  果  1.浸潤様式の検討  sm層への浸潤様式について筆者は以下のよう に3型に分類した.癌腫がsm層に軽度浸潤した 場合の粘膜筋板の形態的変化のみられるものを, ①筋板型とした.癌腫がsm層に中等度以上浸潤 した場合のsm層での癌腫の形態を,②深層型と した.また,ly−1, v・1以上を全て,③脈管侵襲型 とした.  さらに筋板型を粘膜筋板に対する癌腫組織の浸 潤経路と浸潤様式から間隙型,分散型,断裂型, 切れ上がり型の4つに細分類した.深層型は膨張 型とびまん浸潤型の2つに細分類した.脈管侵襲 型はリンパ管侵襲型と静脈侵襲型の2つに細分類 した.以上のように浸潤様式を3型に大別しさら にそれぞれを細分類し8型とした.ただし,①間 隙型は癌腫が粘膜筋板の間隙からsm層に浸潤す るもので,既存の血管やリンパ管あるいはリンパ 濾胞などの出入りする間隙から浸潤するもの,② 分散型は癌腫が粘膜筋板を分散させながらsm層 に浸潤するもの,③断裂型は癌腫は粘膜筋板に浸 潤し筋板を融解消失してsm層に進展するもの, ④切れ上がり型は癌腫が粘膜筋板の切れ上がりや 融解を伴ってsm層に浸潤するもの,⑤膨張型は 断裂融解させた筋板を伴って癌腫がsm層に塊状 に浸潤するもの,⑥びまん浸潤型は癌腫が粘膜筋 板の破壊を伴ってsm層にびまん性に浸潤するも の,⑦リンパ管侵襲型は癌腫がリンパ管侵襲によ りsm層に浸潤するもの,⑧静脈侵襲型は癌腫が 静脈侵襲によりsm層に浸潤するもの,とした(図 1).  なお1つの癌腫の浸潤様式において1つの浸潤 様式を示すものもあれぽ,2つ以上の浸潤様式を 有するものもあり,浸潤様式の検討については重 複を許した.以上のように浸潤様式を分類すると 合計は106例で,内訳は筋板型は47例,深層型は12 例,脈管侵襲型は4例,筋板型+深層型は3例, 筋板型+脈管侵襲型は19例,深層型+脈管侵襲型 は12例,筋板型+深層型+脈管侵襲型は9例で あった.  2.浸潤様式と性別および年齢  性別では筋板型は男性77例,女性23例,深層型 は男性21例,女性15例,脈管侵襲型は男性39例, 女性21例であった.  平均年齢でみると筋板型は58.1歳,深層型は 57.0歳,脈管侵襲型は60.0歳であった.  3.浸潤様式と占居部位  筋板型ではC領域は16例,M領域は49例,A領 域は35例であった.深層型はC領域6例,M領域 は17例,A領域は13例であった.脈管侵襲型はC 領域は7例,M領域は29例, A領域は24例であっ た(各浸潤様式内での重複を含む).  占居部位における頻度はどの浸潤様式において もM領域>A領域>C領域の順であった.各浸潤 様式間における有意差は認められなかった(表 表1 領域別による各浸潤様式の頻度      領域 Z潤様式 C

M

A

計 筋 板 型 [ 層 型 ャ管侵襲型 16 U7 49 P7 Q9 35 P3 Q4 100 R6 U0 計 29 95 72 196 複数の浸潤様式をとる例数は筋板型22例,脈管侵襲型16例で ある. 領域別ではC領域5例,M領域18例, A領域15例である.

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1).  4.浸潤様式と腫瘍径  腫瘍径はm層での長径と短径の和の平均値と した.①2cm未満では筋板型が最も多く48例中29 例(60.4%)で,次いで脈管侵襲型が48例中11例 (22.9%),深層型は48例中8例(16.7%)と最も 少なかった.②2cm以上4cm未満では筋板型が89 例中47例(52.8%)で最も多く,次いで脈管侵襲 型が89例中25例(28.1%)で,深層型は89例中17 例(19.1%)と最も少なかった.③4cm以上6cm 未満でも筋板型が31年中13例(41.9%)と最も多 く,次いで脈管侵襲型が31例中12例(38.7%)で 深層型は31例中6例(19.4%)で最も少なかった.

④6cm以上では脈管侵襲型が28例中12例

(42.9%)で最も多く,次いで筋板型が28例中11例 (39.3%)で,深層型は28宮中5例(17.9%)で最 も少なかった.各浸潤様式問における有意差は認 められなかった(表2).  腫瘍径と組織型との関係をみると2cm未満は 高分化型は60症例中24症例(40.0%)で,低分化 型は46症例中9こ口(19.6%)であった.2cm以

上4cm未満は高分化型は60症例中29症例

(48.3%)で,低分化型は46症例中25症例(54.3%) であった.4cm以上6cm未満は高分化型は60症例 表2 腫瘍径別における各浸潤様式の頻度     腫瘍径 @    T(cm) Z潤様式 Tく2 2≦Tく4 4≦T<6 6≦T 計 量 板 型 [ 層 型 ャ管侵襲型 29 W11 47 P7 Q5 13 U12 11 T12 100 R6 U0 計 48 89 31 28 196 中4症例(6.7%)で,低分化型は46症例中5症例 (10.9%)であった.6cm以上は高分化型は60症例 中3症例(5.0%)で,低分化型は46症例中7症例 (15.2%)であった.  検討症例では腫瘍径の最小のものは0.5cm最 大のものは10.Ocmで,4cm未満のものが80%以 上を占めた.高分化型の最小径は0.5cmで腫瘍径 の1cm未満のものが7例みられた.低分化型の最 小径は/.5cmで腫瘍径の1cm未満のものはみら れなかった.  組織型別では腫瘍径の平均値は3.1clnであっ た.高分化型の平均値が2.6cmであるのに対し, 低分化型の平均値が3.6cmであった.高分化型は 4cm未満が60例中52例(86.7%)であったが低分 化型は4cm未満が46例中34例(73.9%)であった. 低分化型は高分化型に比べてやや大きかった.  5.浸潤様式と肉眼型および潰瘍病変併存の有 無  肉眼型を隆起型,陥凹型,混合型の3型に分類 し,それぞれについて潰瘍病変併存の有無を検討 した.①隆起型(1,Ila)では筋板型が19例中9 例(47.4%)で最も多く,次いで脈管侵襲型が19 例中8例(42.1%)で深層型は19例中2例(10.5%) で最も少なかった.また,隆起型では潰瘍病変は みられなかった.②陥凹型(IIC, IIC+III, III+IIC) では筋板型が最も多く122例中71例(58.2%)で, 次いで脈管侵襲型が122例中31例(25.4%)で深層 型は122例中20例(16.4%)で最も少なかった.③ 混合型(IIc+Ila, IIa+Ilc)では脈管侵襲型が55 例中21例(38.2%)で最も多く,次いで筋板型が 55例中20例(36.4%)で深層型は55例中14例 (25.5%)で最も少なかった. 表3 肉眼型と潰瘍病変の有無による各浸潤様式の頻度   肉眼型 Z潤様式 隆 起 型

i1,IIa)  陥 凹 型iIIC, IIC+III, III+IIC)  混 合 型iIIC+IIa,11a+IIC) 計

潰瘍病変 十 筋 板 型 [ 層 型 ャ管傷一型 000 928 46 X20 25 P1 P1 735 13 P1 P6 100 R6 U0 計 0 19 75 47 15 40 196 一402一

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 肉眼型はどの浸潤様式でも陥凹型〉混合型〉隆 起型の順であり,陥凹型には混合型や隆起型に比 べて潰瘍病変合併が多くみられたが,各浸潤様式 間と肉眼型における有意差は認められなかった. また病巣内潰瘍病変の有無による脈管侵襲型につ いては,潰瘍病変を伴わない場合の脈管侵襲型は 60例中35例(58.3%),潰瘍病変を伴う場合の脈管 侵襲型は60例中25例(41.7%)で有意差はないも のの脈管侵襲型は潰瘍病変を伴わない場合に多く みられた(表3).  また組織型との関係をみると,低分化型は陥凹 型が46・例中36例(78.3%)で,隆起型が46例中2 例(4.3%)であった.高分化型は陥凹型が60例中 33例(55.0%)で,隆起型が60例中8例(13.3%) であった.肉眼型と組織型との間に有意差は認め られなかった..  6.浸潤様式と組織型  高分化型では筋板型が105・例中59例(56.2%)で

最も多く,次いで脈管侵襲型が105例中31例

(29.5%)で,深層型が105例中15例(14,3%)で 最も少なかった.

 低分化型でも筋板型が最も多く91例中41例

(45.1%)で,次いで脈管侵襲型が91例中29例 (31.9%),深層型が91例中21例(23.1%)で最も 少なかった.各浸潤様式間における有意差は認め られなかった.

 7.sm癌のm層における組織型と腫瘍径

 m層の組織型が単一の組織型で構成されるも のは106症例中47症例(44.3%)で,複数の組織型 で構成tきれるものは106症例中59症例(55.7%)で あった.  ここで対照としてm癌182症例についても同様 の検索をした.単一の組織型で構成されるものは 182症例中142症例(77.9%),複数の組織型で構成 されるものは182症例中40症例(22.1%)であった.  またm層面における組織型と腫瘍径との関係 は2cm未満では単一の組織球で構成されるもの が33症例中21症例(63.6%)であるが,腫瘍径の 増大とともに複数の組織型で構成されるものの割 合が増加し,6cm以上では単一の組織型はみられ なくなり全例とも複数の組織型のみとなった.2 cm未満における単一の組織型と6cm以上におけ る複数の組織型との間には有意差が認められた (p<0.01) (表4).  8.sm層浸潤の組織多様性  sm層浸潤がm層の優勢な組織型で浸潤するも のを検索した.m層については106症例のうち,① m層が単一の組織型で構成されるものは47症例, ②m層が複数の組織型で構成されるものは59症 例であった.sm層については,①m層での優勢な 組織型がsm層に浸潤するもの,②m層での劣勢

な組織型がsm層に浸潤するもの,の2通りで

あった.  m層が複数の組織型の症例のうち,優勢な組織

型がsm層に浸潤するものは59症例中48症例

(81.4%)で,優勢でない組織型が浸潤するものは 59症例中11症例(18.6%)であった.したがって sm層へ浸潤する組織型は, m層の優勢な組織型 が浸潤するものが単一の組織で構成されるものと あわせて106症例中95症例(89.6%)であった.高 分化型と低分化型との間には有意差はなかった (p<0.01)(表5).

 さらにm層での優勢でない組織型がsm層へ

浸潤する11症例の組織型の組み合わせについてみ ると,分化度の高いtub1やtub、で浸潤するものが 11症例中3症例(27.3%)で,分化度の低いporや 表4 腫瘍径別による粘膜層の癌組織型の多様性     腫瘍径 @    T(cm) g織多様性 Tく2 2≦T〈4 4≦T〈6 6≦T 計 単 一 。 数  21* i63.6%)

@12

i36.4%)  24 i44.4%)

@30

i55.6%)   2 i22.2%) @ 7 i77.8%)  0 @10* i100%)  47 i44.3%)

@59

i55.7%) 計 33 54 9 10 106 *p〈0,01 表5 粘膜下層浸潤における粘膜層と粘膜下層の癌組  潮型の多様性        粘膜層 S膜下層 S7症例単一 複数 T9症例  計P06症例 優勢な組織型による浸潤 勢な組織型による浸潤 47症例 i100%)

@0

48症例 i81.4%) P1症例 i18.6%) 95症例 i89.6%) P1症例 i10.4%) 一403一

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症例3 症例6 Otub1 ●mUC    面こ分散型

㌻/7ρ↑

   な分散型

    懸分散.

    師

       症例7

歪分散型

Otub1 ●tub2 Otubl etub2 ●por 図2

∠蕪…

      分散型       分散型 sm癌組織の多様性 症例9 症例10 Otub1 ●PQr

ク7嚇

:\蝉分散.

   」

   猟犠

●tub1 。・・防4遜迦鶏こ        図3 切除標本肉眼写真(症例9) 星印(矢印↑)は粘膜癌を,雪印(矢印↑↑)は粘膜下層癌を示す.        404 (HE染色,×10)         分散型

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表6 劣勢な組織型が浸潤する場合の粘膜層と粘膜下  層における癌組織型の比較    深達度 ヌ例 粘膜層 粘膜下層 浸潤様式 1 sig(por) po「 分散型 2 por(tub、) tub、(por) 膨張型 3 tub1(muc) mUC 分散型 4 tub2(por) por(tub2) 分散型 5 tub、(por) po「 分散型 6 tub、(tub、, por) po「 分散型 7 tub1(tub2) tub、(tub1) 分散型 8 tub、(por) po「 分散型 9 tub1(por) PO「 分散型 10 tub2(tub、) tub1 分散型 11 tub,(por) po「 分散型 mucで浸潤するものが11症例中8症例(72.7%) であり,sm層には分化度の低い組織型が浸潤す る傾向がみられた。浸潤様式についてみるとtub、 で浸潤する1例のみ膨張型であるがその他は分散 型であった.11症例のいくつかを列記するととも に代表的1例を図に示した(表6,図2,図3).  9.sm層への浸潤様式  高分化型は,2cm未満では間隙型が32例中11例

(34.4%)と最も多く,次いで分散型が6例

(18.8%)であった.2∼4cmではリンパ管侵襲型 が49例中10例(20.4%)と最:も多く,次いで間隙 型が9例(18.4%)であった.4∼6cmでは静脈侵 襲型が13例中3例(23.1%)と最も多く,次いで リンパ管侵襲型,間隙型,断裂型,膨張型がそれ ぞれ2例(15.4%)であった,6cm以上では静脈 侵襲型,リンパ節侵襲型,間隙型,分散型がそれ それ11例中2例(18.2%)と最も多く,次いで断 裂型,びまん浸潤型,切れ上がり型がそれぞれ1 例(9.1%)であった(表7).  低分化型は,2cm未満では間隙型が16例中5・例

(31.3%)と最も多く,次いで断裂型が4例

(25.0%)であった.2∼4cmでは間隙型が40例中 11例(27.5%)と最:も多く,次いでリンパ管侵襲 型が8例(20.0%)であった.4∼6cmでは静脈侵 襲型が18例中5例(27.8%)と最も多く,次いで 間隙型とびまん浸潤型がそれぞれ4例(22.2%) であった.6cm以上ではリンパ管侵襲型が17例中 6例(35.3%)と最も多く,次いでびまん浸潤型 が4例(23.5%)であった(表8).  高分化型も低分化型も腫瘍径が4cm以上の場 合には脈管侵襲型が最も多く59例中24例(40.7%) であった.  なお,びまん浸潤型では高分化型と低分化型と の間に有意差があった(p〈0.01).  10.リンパ節転移  筋板型ではリンパ節転移陽性率は!00例中21例 (21.0%)で最も低く,深層型では36例中13例 (36.1%)で,脈管侵襲型では60例中26例(43.3%) で最も高かった.脈管侵襲型におけるリンパ節転 移陽性率と筋板型におけるリンパ節転移陰性率と の問には有意差が認められた(p<0.01)(表9).          考  察

 早期胃癌においてm癌がsm層へと浸潤する

場合に組織型の優劣がどのように変化するのであ ろうか? sm層への浸潤様式の分類については 表7 高分化型腺癌における腫瘍径と各浸潤様式の頻度        腫瘍径T(Cm)浸潤様式 T<2 2≦T<4 4≦T〈6 6≦T 計 筋 板 型  間隙型 @分散型 @断裂型 リれ上がり型 11 U12 9846 2121 2211 24 (22.9%) P7 (16.2%) W (7.6%) P0 (9、5%) 深 層 型  膨張型 ムまん浸潤型 50 34 20 01 10 (9.5%) T (4.8%) 脈管侵襲型 リンパ管侵襲型 テ脈侵襲型 52 10 T 23 22 19 (18.1%) P2 (1L4%) 計 32 49 13 11 105 高分化型腺癌60症例中,浸潤様式を2つ以上有する25症例を含む. 一405一

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表8 低分化型腺癌における腫瘍径と各浸潤様式の頻度        腫瘍径T(cm) Z潤様式 T<2 2≦Tく4 4≦T〈6 6≦T 計 筋 板 型  間隙型 @分散型 @断裂型 リれ上がり型 5040 11・ S50 4201 1220 21 (23.0%) W (8.8%) P1 (12,1%) P (1.1%) 深 層 型  膨張型 ムまん浸潤型 12 37 0. S 04 4  (4.4%) P7 (18.7%) 脈管侵襲型 リンパ管侵襲型 テ脈侵襲型 22 82 52 62 21 (23.!%) W  (8.8%) 計 16 40 18 17 91 低分化型腺癌46症例中,浸潤様式を2つ以上有する25症例を含む. 表9 リンパ節転移の有無による各浸潤様式の頻度      リンパ節転移 Z潤様式 陽 性 陰 性 計 筋 板 型 [ 層 型 ャ管侵襲型 21 P3 Q6* 79* Q3 R4 100 R6 U0 計 60 136 196 *pく0.01 門倉4),井口ら5),坂本ら6)の報告があるが,筆者は 浸潤様式を,①筋板型,②深層型,③脈管侵襲型, の3型に分類し,sm層へ癌腫がいかにして浸潤 し,さらに組織型の優劣がどのように変化するの かを調べる目的で,浸潤様式の特徴および組織多 様性についてm癌182症例,sm癌106症例につい て臨床病理学的に検討した.  性別はどの浸潤様式においても男性のほうが女 性に比べて多くみられた.男性の頻度が女性に比 べて多いことは諸家7)8)の報告するところである が同様の結果であった.  年齢においてもどの浸潤例もぽぽ同程度であっ た.  占居部位はどの浸潤例ともM>A>Cの順に頻 度が多いが部位による特徴はない.この結果は諸 家7)8)の報告と同様であった.  腫瘍径は平均3.1cmで4cm以下が80%近くを 占めた.低分化型は平均3.6cm,高分化型は平均 2.6cmで低分化型は高分化型に比べて有意差は ないもののやや大きかった.  m層における組織型と腫白白との関係は,腫瘍 径の増大とともに癌腫の単一の組織型ではなくな り,複数の組織型から構成されるものになった. すなわち2cm未満では単一の組織型を示すもの が63.6%を占めるが,腫瘍径の増大とともにm層 における組織型は単一ではなくなり,複数の組織 型を形成してくる.そして6cm以上になると複数 の組織型を示すものだけとなった.  m癌182症例について同様の検索を行ったが, 単一の組織型で構成されるものは182症例中142症 例(77.9%)で,複数の組織型で構成されるもの は182症例中40症例(22.1%)であった.仁瓶9>も 早期胃癌における混合型は27.8%にみられたとし ている.これらのことは組織型が複数となること により,腫瘍径によっては生検組織と切除胃にお ける病理組織診断との間に組織型の不一致が起こ る場合があることを示している.生検にあたって は癌の存在診断ということだけではなく,癌腫の 優勢な組織型を知る意味からもきめ細やか・な生検 の施行が望まれる.  脈管侵襲型はリンパ節転移が他の浸潤様式に比 べて高かった.リンパ節転移は筋板型との間に有 意差がみられたが,これは脈管侵襲型に比べて筋 板型はsm層への初期浸潤で癌浸潤が軽度なこと も一因と考えられた.  sm層浸潤の組織多様性についてみると, sm層 における組織型は,m層での優勢な組織型で浸潤 するものがおよそ90%近くを占めたが,注目すべ きことはm層において優勢でない組織型が106症 例中11症例(10.4%)に観察されたことである. 一406一

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m層では優勢でない組織型でもsm層においては 優勢に浸潤している場合があるということであ る.またsm層へ浸潤する組織型はm層で分化の 低い組織型のものが72.7%を占め,浸潤様式では 分散型が大多数を占めた.これらのことを要約す れぽ,癌腫は腫瘍径の増大とともに組織多様性を 帯び,浸潤様式では大多数においてsm層へはm 層での優勢な組織型が浸潤し癌腫の伸展を左右す るが,一方ではm層での劣勢な組織型がsm層へ 浸潤する場合が約10%にみられる.しかもその組

織型はm層では低分化な癌腫がsm層へ浸潤す

る傾向があると考えられる.仁瓶9)もsm胃癌の 12.0%に高分化型から低分化型へのsm浸潤を認 めたとしている.以上のことは両者の組織型の間 に癌発生の時点で浸潤増殖の性格の相違はあるに しても,分化度の低い組織型は分化度の高い組織 型に比較して発育速度が早く深部に浸潤しやすい ことが示唆される.また,池口ら10)は粘膜内病巣の 広がりと粘膜下病巣の広がりとの比較から,分化 型癌と低分化型癌とではsm層での発育進展に相 違があり,低分化型癌は分化型癌に比べ粘膜下層 で浸潤傾向が強いのではないかと推測し,谷口ID も未熟な組み合わせの組織表現をする腫瘍細胞が 成熟型の腫瘍組織を駆逐して優位を占めるのでは ないかとしている.胃癌取扱い規約3)では優勢 predominantな組織型をもって癌腫の組織型を 表すことになっているが,sm癌の場合にはm層 の優勢な組織型が必ずしも癌腫の先進浸潤部を代 表した組織型ではない.したがって早期胃癌の切 除標本における検索は癌腫全体における優勢な組 織型を診断するだけでなく,sm層における癌腫 の優勢な組織型に注目して転移や予後との関係を みることが必要である.  m癌がsm癌へと発育進展してゆくには癌腫が

粘膜筋板を破ってsm層に増殖してゆく.では

いったいどのようにして浸潤してゆくのか? そ こで,sm層への浸潤様式について筆者は粘膜筋 板の形態と腫瘍先進部の浸潤形態から筋板型,深 層型,脈管侵襲型の3型に分類した.これをさら に細分類し,筋板型を間隙型,分散型,断裂型, 切り上がり型の4型に,深層型を膨張型とびまん 浸潤型の2型に,脈管侵襲型をリンパ管侵襲型と 静脈侵襲型の2型のあわせて8型に分類した.  sm層への浸潤様式にりいては門倉4),井口ら5), 坂本ら6)など諸家の報告がみられる.井口ら5)は早 期胃癌の進展と発育様式について3型に分類して いるが,その分類に従えばPen A型は断裂型,切 れ上がり型,びまん浸潤型,膨張型であり,Pen B 型は間隙型,分散型,リンパ管侵襲型,静脈侵襲 型ということになる.  以上の分類に従って,sm層への浸潤様式をみ てゆくと,まず腫瘍径の小さいものでは,高分化 型と低分化型ともに2cm以下では間隙型が最も 多くみられ,sm層への極めて軽度の浸潤のもの も観察された.菅原ら12)は分化型胃癌の初期粘膜 下侵入様式は小血管やリンパ管が粘膜筋板を貫く 既存の組織間隙を利用するものであったと述べ, 佐久間ら13)も微小胃癌の粘膜下層浸潤は粘膜筋板 欠損部における組織間隙から起こると述べてい る.筆者も癌腫が小血管やリンパ管あるいはリン パ濾胞による粘膜筋板の既存の組織間隙からsm 浸潤するものや,癌腫による粘膜筋板の欠損部か らsm浸潤するものを観察しており,そのほかに 癌腫が炎:症などによって起きた粘膜筋板の間隙を 浸潤してゆくものも観察された.したがって,以 上のことから間隙型がsm層への初期浸潤様式と 考えられた.  腫瘍径が増大しても高分化型は間隙型と分散型 がともに浸潤様式の中で頻度が高かった.この傾 向は低分化型にはみられず高分化型の特徴と考え られた.一方,低分化型は腫瘍径が2cm以上にな るとびまん浸潤型の頻度が増え,浸潤様式の中で 上位を占める.この傾向は高分化型にはみられず 低分化型の特徴と考えられ,これらの間には有意 差がみられた.膨張型は,高分化型と低分化型と もに腫瘍径が4cm未満で比較的多くみられるが, 4cm以上になるとほとんどみられない.このこと から膨張型は腫瘍径が比較的小さい場合にみられ る浸潤様式であると考えられた.また膨張型は高 分化型では105例中10例(9.5%)に,低分化型で は91例中4例(4.4%)にみられ有意差はないもの の高分化型に多かった.これは井口ら14)もPen A 一407一

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型は高分化型が大部分であるということと同じで あった.  低分化型は高分化型に比べて腫瘍径の平均値が 大きく,sm層への浸潤様式では腫瘍径の増大と ともにびまん浸潤型が増加することから,低分化 型の進展の特徴の一つとして腫瘍径がm層内で およそ1cm以上に発育した癌腫はsm層に広範囲 に浸潤する可能性があると考えられた.何故なら ぽ腫瘍径が2cm未満のsm癌についてみると,低 分化型癌が9症例みられたのに対し高分化型癌は 24症例であり,特に1cm未満では低分化二二がみ られなかったのに対し高分化型癌は7症例もみら れた.しかもsm癌では低分化型癌が高分化型癌 に比べて腫瘍径の平均値は大きかった.このこと から,高分化型癌は低分化型癌に比べて二二径が 比較的小さく1cm未満の早い時期からすでにsm 層への浸潤がみられるのに対して,低分化二二は

m層での腫瘍径が比較的大きくなったおよそ1

・cm以上の時期からsm層への浸潤が増加すると 考えられる.以上のように低分化二二の場合は高 分化型癌に比べてm層内をある程度発育進展し, そのあとsm層へ浸潤すると考えられ,高分化型 と比べて浸潤様式に差がみられるものと考えられ た.菅原ら12)は未分化型胃癌は早期に粘膜筋板内 へ直接侵入し,これを破壊して増殖する特徴を持 つのではないかと推察し,羽生ら15)は未分化型胃 癌は癌細胞の発育速度から早く,短期間で大きな 病巣に発育してしまうと推論している.  sm層への浸潤様式の特徴的なことの一つとし て,腫瘍径が大きくなるとともに脈管侵襲型の割 合が高くなり,腫瘍径が4cm以上になると脈管侵 襲型が第一の浸潤様式と.なった.こ.と.である一        偉(40.7%).特に高分化型ではすでに2cm以上で, 低分化型でも4cm以上で脈管侵襲型が第一の浸 潤様式となった.また,sm癌といえどもリンパ節 転移は癌腫が2cm未満で9.4%に,6cm未満では 19.8%と高くなった.リンパ管侵襲や静脈侵襲の ように脈管侵襲の多い早期胃癌では,他臓器転移 や再発死亡率が高いことが知られており治療上注 意が必要である2).  病巣内潰瘍病変併存の有無による脈管侵襲をみ ると,有意差はないものの潰瘍病変のない場合が 58.3%であるのに対し,潰瘍病変のある場合が 41.7%でわずかながら多かった.廣田ら7)も,sm 癌では潰瘍病変のない場合の方がある場合に比べ てリンパ節転移が多かったと述べ,その理由とし て癌そのものの生物学的態度か,潰瘍に伴う治癒 機転が転移を阻止していることを挙げている.  腫瘍径や組織型は,癌腫のm層での進展および sm層への浸潤様式などによっていろいろな特徴 をもたらす.また組織型によって癌腫の進展とと もに脈管侵襲にも特徴が認められた.組織の分化 度によって癌腫はそれぞれある一定の規則にのっ

とってsm層へと浸潤してゆくものと考えられ

た.          結  論  粘膜癌から粘膜下二二への癌腫の浸潤様式と粘 膜層から粘膜下層へ病巣の進展に伴って起こる組 織学的変化について,粘膜癌182症例,粘膜下層癌 106症例を検討した.  (1)粘膜下層への浸潤様式を,①筋板型,②深 層型,③脈管侵襲型に大別し,さらに,8型に細 分類した.  (2)粘膜下層への初期浸潤様式は間隙型が考え られた.  (3)組織型別の浸潤様式では,高分化型は間隙 型(22.9%)と分散型(16.2%)が,低分化型は びまん浸潤型(18.7%)が多かった.  (4)粘膜層における組織型と腫瘍径との関係で は,径が6cm以上になると全例とも粘膜層は複数 の組織型で構成され,2cm未満との間には有意差 があった(p<0.01).  (5)腫瘍径と浸潤様式との関係は径が4cm以 上では脈管侵襲型が最:も多く(40.7%),高分化型 は静脈侵襲型が,低分化型はリンパ管侵襲型が多 かった.  (6)粘膜層の組織型は単一の場合が44.3%,複 数の場合は55.7%で,腫瘍の増大につれ複数の組 織型の割合が増加した.粘膜下層へは粘膜層での 優勢な組織型が浸潤するものが多い(89.6%)が, 粘膜層で劣勢のものが粘膜下層で優勢に浸潤する 場合もあった(10.4%). 一408一

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 (7)脈管侵襲型はリンパ節転移陽性率が高く筋 板型との間に有意差があった(p〈0.01).  稿を終えるにあたり御懇篤なる御指導と御校閲を 賜りました羽生富士夫教授に深甚なる感謝の意を表 します.直接御指導をいただきました鈴木博孝教授に 心から深謝致します,あわせて東京女子医科大学消化 器病センター病理研究室の諸兄に感謝の意を表しま す.  なお,本論文の要旨は第35回日本消化器外科学会総 会,第56回胃癌研究会において発表した.       文  献  1)鈴木博孝,遠藤光夫,鈴木 茂ほか:早期胃癌に    おけるリンパ節転移の検討.日消外会誌 17:    1517−1526, 1984  2)手塚秀夫,鈴木博孝,喜多村陽一ほか:早期胃癌    再発死亡症例の検討.日消外会誌23:    2202−2208, 1990  3)胃癌研究会編:胃癌取扱い規約 改訂第11版.    pp41−75,金原出版,東京(1985)  4)門倉萩郎:胃癌の広がりと胃壁内進展に関する研    究,日外会誌 69:555−564,1968  5)井口 潔,副島一彦:早期胃癌の進展と発育様式.    外科治療i34:49−54,1976 6)坂本啓介,秋山 洋,豊島範夫ほか:早期胃癌の   予後を左右する因子一特に粘膜下層浸潤と予後の   関連について一。手術 26:267−273,1972 7)廣田映五,海上雅光,板橋正幸ほか:早期胃癌の   病理;病理形態と予後.消外 4:295−300,1981 8)太田博俊,高木國夫,大橋一郎ほか:早期胃癌1000   例の検討一肉眼分類を中心に一.日消外会誌   14:1399−1408, 1981 9)仁瓶善郎:組織像からみた胃癌の進展形式につい   て.日外会誌 83:446−456,1982 10)池口正英,米川正夫,太田道雄ほか:胃癌の粘膜   下層浸潤における粘膜筋板の役割.日消外会誌   22 :2333−2337, 1987 11)谷口春生:胃癌の発育経過一組織型を中心として   一.臨外 21:77−85,1985 12)菅原 陽,大内明夫,清水文人:微小胃癌および   小胃癌の臨床病理学的研究.日外会誌 87:   1313−1323, 1986 13)佐久間晃,大内明夫,高橋正倫ほか:粘膜下層に   浸潤のみられた微小胃癌の組織構築.消外 4:   1580−1584, 1981 14)井ロ 潔,古沢元之介,副島一彦ほか:早期胃癌   (表在癌)の臨床病理学的分析.癌の臨 13:   1017−1024, 1967 15)羽生  ,竹下公夫,星 和夫ほか:微小胃癌の   病理組織学的検討.癌の臨 29:966−970,1983

参照

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