342 (110) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
オオ ハラ ノボル昇(昭和3
博士(医学) 乙第1357号平成5年2月19日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
高周波数超音波プローブ(20回忌z)による大腸壁基本層構造および大腸表面型 腫瘍の検討 (主査)教授 小幡 裕 (副査)教授 浜野 恭一,村木 細論 文 内 容 の 要 旨
目的大腸癌の治療方針決定に内視鏡的超音波断層法
(EUS)による深達度診断は必要不可欠とされている. 近年注目されている表面型早期大腸癌は腫瘍径が小さ くても速く進行するものがあるため,正確に深達度診 断をおごなう必要がある.高周波数超音波プローブ(20 MHz)は従来のEUSと異なり直視下走査が可能であ り,より詳細に観察し得る利点があることから本機種 を用い大腸壁の基本層構造および表面型腫瘍における 深達度診断の可能性を検討した. 対象および方法 装置は経内視鏡的超音波診断装置ソノプローブシス テムSP-101(富士写真光機社製),コロノスコープは同 社製電子内視鏡EVC-HMを用いた. 大腸新鮮切除標本の正常大腸壁5例,人工的損傷病 変12例および上皮性腫瘍15例に対して水槽内標本エ コーをおこない,大腸壁基本層構造を検討した. 臨床例ではソノプローブシステムを施行した50症例 50病変を対象とし,うち上皮性腫瘍43例の形態・厚さ と第4層(粘膜筋板)の描出率を検討した.また第4層をm癌とsm癌との鑑別の指標として表面型早期
癌14例の深達度診断をおこなった. 結果 1)大腸壁基本層構造の検討 実験例および臨床例の解析から,第1~3層は粘膜 層,第4層は粘膜筋板,第5層は粘膜下層,第6層は 内輪筋,第7層は境界エコー,第8層は外縦筋,第9 層は漿膜または外膜と各々層別された. 勿上皮性腫瘍の形態・厚さ別の第4層描出率 第4層の描出率は有茎性0%,広基性31%,表面型90%であった.臨の厚さ1mm以下で88%,2-4㎜
で60%,それ以上の厚さでは描出不能であった. 3)表面型早期癌の深達度正診率 表面型早期癌の14例(m癌12例,sm癌2例)全例に おいて正診可能であった. 考察 高周波数超音波プローブ(20MHz)が開発され,そ れにより大腸壁基本層構造および早期癌の形態・厚さ などによる大腸壁の特徴を明らかにした. 現在まで,大腸壁に関しては超音波上,粘膜筋板が 描出されたという報告はない.今回周波数20MHzを 用いたことにより大腸壁は9層に分離され,第4層が 粘膜筋板に相当することを初めて明らかにしたことか ら,とくに表面型早期癌の深達度をより正確に行い得 る様になった.このことは,治療法を選択決定する上 で極めて重要なことである. 結論 高周波数超音波プローブ(20MHz)を用いることに より,大腸早期癌の病態をより詳細,適確に把握する ことが可能となったことは,治療面への貢献も大きい ものとみなされる. 一976一343