オランダ国際婚姻法に関する研究ノート 婚姻の効
力を中心として
著者名(日)
笠原 俊宏
雑誌名
東洋法学
巻
53
号
1
ページ
153-170
発行年
2009-07-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000698/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja︽研究ノート︾
オランダ国際婚姻法に関する研究ノート
婚姻の効力を中心として
六五四三二一
︵参考資料一︶ ︵参考資料二︶ ︵参考資料三︶ ︵参考資料四︶ 緒言 オランダ国際婚姻法立法の概容 法定婚姻関係抵触法の概容 夫婦財産制抵触法の概容 年金受給権公平化抵触法の内容 結証叩 法定婚姻関係抵触法 夫婦財産制抵触法 ハーグ夫婦財産制条約批准法 年金受給権公平化抵触法笠 原
俊 宏
153緒言 諸国国際私法の改正における牽引役を果たしているハーグ国際私法会議の本拠が置かれているオランダは、会議 の主催国として、それが採択した諸条約の普及の推進役を務めており、最も進歩的な国際私法規則を有する国であ ると認識されているが、その国際私法立法は、必ずしも早くから充実されたものであったとは言えない。一九八○ 年代の立法化が開始される以前におけるオランダ国際私法の法源は、一八二九年五月一五日の﹁王国の立法のため の総則に関する法律﹂第六ないし第一〇条である。就中、第六条は、著名なフランス民法典第三条第三項と同様 に、﹁人の権利、身分及び能力に関する法律は、オランダ人が外国に居住するときであっても、その者を規律す る。﹂と規定し、現在においても、オランダ国際私法の基本的な実定規定として効力を有している︵拙編訳﹃国際 私法立法総覧﹄︵冨山房、一九八九年︶七八頁︶。一九八○年代初頭に始まったオランダ国際私法の立法化は、当 面、個々の法律関係ごとにそれを実現するという方針が定まった後、特に九〇年代に入ってからは、嵐の如く一気 に加速し、そして、多くの分野に亘り、国際私法規定が立法化されたが、近時に至っては、未だ重要な課題は残さ れているものの、そのための作業は幾分か緩慢になって来ていると指摘されている︵図きα轟甲囚蚕BgU暮9 胃貯讐①ヨ8旨呂○冨=凶≦ー○<R≦①名88南○○ρキ頚厨魁8園融§鋤蹴亀匙窪謹ざ㍗§儀寄愚㌧象鴇Φ9駐︵以下、
舅
麩として引用する︶808¢鐸︶。 家族法関係について言えば、その立法化は一九八一年の﹁離婚抵触法﹂︵杉林信義目笠原俊宏﹁オランダの国際 離婚法について﹂秋田法学七号一六六頁以下︶に始まり、二〇〇五年の﹁登録パートナーシップ抵触法﹂︵拙稿 ﹁オランダ登録パートナーシップ抵触法︵二〇〇五年︶﹂東洋法学五一巻一号二一五頁以下︶をもってほぼ全体を網 154羅し、一先ず終了していると見ることもできる。その間に立法化された諸立法は、その多くについて、既に紹介さ れている。すなわち、一九九〇年の﹁氏名抵触法﹂︵一九九九年改正、拙稿﹁外国国際私法立法に関す研究ノート ︵五︶iオランダ氏名抵触法︵一九八九年︶・フィンランド家族氏名法︵一九八五年︶1﹂大阪国際大学紀要国際研 究論叢一一巻一号九五頁以下︶、同年の﹁婚姻抵触法﹂︵一九九八年改正、拙稿﹁オランダ国際家族法立法に関する 研究ノートー相続抵触法を中心としてー﹂東洋法学四四巻一号一六一頁以下︶、一九九六年の﹁相続抵触法﹂︵同︶、 二〇〇三年の﹁親子関係抵触法﹂︵拙稿﹁オランダ国際家族法に関する研究ノートi親子関係抵触法を中心として ー﹂東洋法学五二巻一号一三五頁以下︶、二〇〇四年の﹁養子縁組抵触法﹂︵同︶がそれらである。未だ紹介されて いなかったのは、一九九二年の﹁夫婦財産制抵触法﹂、一九九四年の﹁法定婚姻関係抵触法﹂、二〇〇一年の﹁年金 受給権公平化抵触法﹂であるが、それらの立法について、この小稿において補充的に言及することにより、オラン ダ国際家族法立法の全体像がほぼ明らかにされることとなる。又、オランダは、国際立法についても、家族関係に 関する殆どのハーグ国際私法条約の当事国でもある︵国轟B璽8らF葛9︶。 それに対して、財産法関係の分野に関する立法化の現状については、未だにそれが不足している分野が多く、そ の点がオランダ国際私法における今日的課題の一つであると指摘されている︵内声B98●9けもひ搭︶。因みに、 一九九〇年代以後において立法化が実現されているのは、次に掲げる諸立法である。すなわち、一九九三年の﹁外 航、内航及び航空抵触法﹂、同年の﹁生命保険抵触法﹂、一九九四年の﹁財産保険抵触法﹂、一九九六年の﹁信託抵 触法﹂、一九九八年の﹁法人抵触法﹂、二〇〇一年の﹁不法行為抵触法﹂︵拙稿﹁オランダ国際不法行為法に関する 研究ノートi不法行為抵触法を中心としてー﹂東洋法学四七巻二号一〇一頁以下︶、及び、最近の国際私法立法で ある二〇〇八年五月一日の﹁物権抵触法﹂︵↓①巨ω霞ξ爵9\田辞o鵠ωε①o軍U霧巳a9ぎ9の魯ΦΩ①器旨N霞 155
認篶ξ畠号巴摸①讐毘○冨一自ω零冨P賠麩800 。過¢緕○ 。怖︶等が見られるに止まる。 以下においては、オランダ国際私法中、国際財産法に先駆けて完成されるに至ったと見られる国際家族法につい て、就中、国際婚姻法の分野において未だ言及されることがなかった婚姻の一般的︵身分的︶効力及び財産的効力 ︵夫婦財産制︶について言及し、更には、比較立法的観点から検討することにより、当該法律関係立法のあり方に ついて、若干の考察を試みることとしたい。 ニ オランダ国際婚姻法立法の概容 前述のように、オランダ国際私法上、国際婚姻法は婚姻の成立、婚姻の一般的︵身分的︶効力、婚姻の財産的効 力︵夫婦財産制︶、婚姻の解消を単位法律関係として、それぞれの法律関係について、既に立法化が完成してい る。これらの中、婚姻の一般的︵身分的︶効力及び婚姻の財産的効力︵夫婦財産制︶に関するオランダ抵触法つい て論及する前に、ここにおいては、婚姻の成立及び婚姻の解消に関する前記の二つの抵触法の概容及び特徴につい て、極く簡略ながら述べておきたい。 先ず、婚姻抵触法は、婚姻締結の準拠法の決定︵同法第二条ないし第四条︶、及び、外国婚姻の承認︵第五条な いし第八条︶の二つの問題の規律を目的としている。その特徴は、﹁婚姻保護﹂︵貯く9ヨ讐ユ旨○急︶の理念に基づ いていることである。そのために採用されている多元的連結の規則は、オランダ法への連結、又は、国籍主義に基 づく配分的連結のいずれかの選択的連結の規則である。その背景に存在するのは、オランダが批准している 一九七八年の﹁婚姻の締結及び有効性の承認に関するハーグ条約﹂であるが、それと共に、欧州人権条約第八条 ︵私的生活及び家庭生活の尊重︶及び第一二条︵婚姻の権利︶の影響をも看過することはできない︵詳細には、拙 156
稿・前掲東洋法学四四巻一号一六八頁以下参照︶。 他方、離婚抵触法は、婚姻解消の準拠法の決定︵同法第一条︶、及び、外国離婚の承認︵第二条及び第三条︶の 二つの問題の規律を目的としている。その特徴は、一九七〇年の﹁離婚の承認に関するハーグ条約﹂における理念 である﹁離婚保護﹂︵貯く鶏 9︿R鼠︶の理念が踏襲されていることである。又、離婚の承認については、一九六七 年の国際戸籍委員会︵○田○︶条約も重要なオランダ国際私法の法源となっている︵↓けζ●号ωOR\零囚○鼠躍” 田く器巨①彗魯・琶一餌≦昌后δ99・毎ω\空Φ田晋OR<R\国≦・&=・巳富\淫ω囚8葵・魯︵3︶層巨箏 身鼠98U暮魯冨ヨω巳痒﹂8㊤も・N8雪器ρ︶。特に、同抵触法第一条は、いわゆる﹁実効的国籍の理論﹂を 導入した規定として知られているが、その理論を前提とした上で、結果的には、制限的当事者自治とも言うべき多 元的連結の規則により、身分保護の理念を実現しようとするものであると言うことができる︵詳細には、杉林艮笠 原・前掲一八一頁以下参照︶。 三 法定婚姻関係抵触法の概容 法定婚姻関係抵触法が立法化されるに至るまで、婚姻の一般的︵身分的︶効力の準拠法に関するオランダ判例は 極めて乏しく、いかなる規則が存在していたかは明らかではない。同抵触法においては、一九〇五年のいわゆる ハーグ婚姻事件条約に反し、ハーグ夫婦財産制条約は当該法律関係については適用されていない︵第一条︶。通 常、夫婦間においては、身分的問題について、契約が締結されることは稀であり、その問題に当事者自治の規則を 採用することは適当ではないという立場が支配的であった。従って、当該法律関係については、夫婦の共通本国法 に依ることを原則として、異国籍夫婦の場合には、現実の婚姻住所地法に依り、それがないときは、事案の情況を 157
勘案して準拠法を決定するという立場が残ったが、共通本国法が妻の法的不利益へ導く場合については、必ずしも 明確ではなかった︵Uの切・R\囚・鼠渥場8ら一けも8N︶。 又、日常家事債務の連帯責任の問題をも含め、他方配偶者の同意の必要性の問題については、法定婚姻関係抵触 法が立法化されるまで、当該法律関係は財産的側面及び身分的側面の両面を有する法律関係に関する問題であると 考えられていた︵U①ωOR\囚○旨⇒堕oPo霊︸もb8︶。それに対して、法定婚姻関係抵触法は、それらの問題に関し て規定しているが、前者の問題については、﹁双方が、債務の発効当時、同一の国家にそれらの者の常居所を有す るとき、当該国家の法律﹂により︵第二条︶、また、後者の問題については、﹁他方配偶者が、かような法律行為が 実行される当時、その者の常居所を有する国家の法律﹂によって決定すべきことが明確に定められている︵第三 条︶。すなわち、前者は夫婦の共通常居所地法をその共通本国法に優先させる立場であり、又、後者はそれら両方 の法を退ける立場である。これらは、一体、財産的法律関係であるか、それとも、身分的法律関係であるという二 者択一の立場からの規則ではなく、その法律関係の特性に着目した上で準拠法を定めている精緻な規則として注目 されるべきであろう。 四 夫婦財産制抵触法の概容 オランダ国際私法における夫婦財産制の規律については、その婚姻時期により、夫婦財産制抵触法に先駆する前 記のハーグ婚姻事件条約及びハーグ夫婦財産制条約に服すべきものとされ、オランダ最高裁判所における判断にも 混乱が見られる。前者の条約が支配する場合には、夫の本国法が当該法律関係を規律し、一九七八年における後者 の条約の批准以後、夫婦財産制抵触法が施行された一九九二年九月一日の前までは、一九七六年一二月一〇日の 158
Oぎδ琴ぎダく彗一①段判決︵詳態Φ罠憩訣貯措§艶蹴亀幾貯ミ誌度Φミ︵以下、言肉として引用する︶這§つミ毒︶ において判示された規則が基準とされた。すなわち、夫婦による準拠法選択︵当事者自治︶を原則とするが、それ がないときは、夫婦の共通本国法に依り、それもないときは、婚姻後の最初の共通常居所地法に依って規律される べきものとされた。それが確定できないとき、初めて最密接関係法に依るという規則が適用されることとなる。し かし、一九八九年四月七日の最高裁判所判決において、夫婦が﹁特別な事情の下に﹂婚姻している場合には、例外 的に、上記と異なる法が規律するという判断が示されているが︵員肉一〇〇一噛サω母ぎ富U①ωo雲︶、如何なる場合 がそれに該当するかは必ずしも明確ではない︵Uの印○段\囚・鼠轟る戸。洋一層ミO雪器e認忌く彗閃・9\ζ窪誉① くも○一畢写貯鉾巴導R冨ぎ⇒蝉=餌≦冒9Φ乞Φ浮窪き身一⑩○ 。8巳逡9器ρ︶。そして、一九九二年九月一日以後に おける婚姻については、夫婦財産制抵触法の施行により、前記のハーグ夫婦財産制条約に服すべきものとされ︵第 一条︶、又、同時に、第三者の権利等に関する規則が追加されている︵第三条及び第五条︶。同条約の下において、 夫婦は婚姻前及び婚姻後において、準拠法を選択することができる。但し、その範囲は夫婦のいずれか一方が国籍 又は常居所を有する国の法に制限されている。準拠法の明示の指定がないときは、婚姻後の最初の常居所又は共通 国籍がある国の法が準拠法とされる︵同条約第四条︶。後者の場合には、反致の成否が考慮されなければならな い。又、婚姻中は、他方が国籍又は常居所を有する国の法に変更することが認められている︵U①団○震\囚o旨轟” 8。o一けもbO 。ρ︶。 五 年金受給権公平化抵触法の内容 従前、離婚の際における年金受給権公平化の問題については、その性質が必ずしも明瞭ではなく、婚姻の一般的 159
関係、離婚、扶養、夫婦財産制に亘る問題であると考えられていた。それに対して、常設国際私法委員会が、当該 問題を夫婦財産制の問題であると見倣すことが最も妥当であり、従って、夫婦財産制抵触法によって規律すべきで あるという立場に拠ったため、二〇〇一年三月一日から施行された年金受給権公平化抵触法が規定している内容 も、それ自体が規律することを定めるものではなく、既に施行されていた夫婦財産制抵触法中の規定と統合されて おり、又、国内的問題の規律を対象とする﹁離婚の際の年金受給権公平化法﹂中の規定を改正しているに過ぎな い。新たに夫婦財産制抵触法へ追加された第一〇a条においても、夫婦財産制の準拠法が年金受給権公平化に関す る問題へも適用されることが定められている︵図目α鍔国囚声ヨ9U昇魯凛貯簿①ぎ冨箏善○冨=四類−○くR≦①妻 一80 。−︾仁讐ω什NOO妙舅麩NOO蝉¢q串︶。 六 結語 オランダ国際私法の法典化作業が開始された当初、個別の抵触法立法は、その全てが統合されて、オランダ民法 典の末尾へ第一〇編として付加される予定であった。実際、二〇〇三年末には、法務省が、二〇〇二年六月の常設 国際私法委員会草案に基づいて、統合された国際私法予備草案を公表している。しかし、その後における動きはな く、現在までのところ、当初の予定がそのまま実現される気配は見られない︵囚轟日9舅麩888●9けも9釧︶。 それに対して、ベルギーは、隣国にあって、より遅くに法典化作業を開始しながら、二〇〇四年に、より早く新し い国際私法典を制定・施行させているが︵拙稿﹁ベルギー国際私法︵二〇〇四年︶の邦訳と解説︵上︶、︵下︶﹂戸 籍時報五九三号二〇頁以下、五九四号五七頁以下︶、オランダ国際私法の場合には、次のように、ベルギーと異な るいくつかの事情が存在していることが指摘されている。 160
オランダにおける国内的法典化が当初の勢いを失っていると見られる原因として考えられるのは、国際私法の欧 州化、すなわち、EU国際私法の急速な進展である。国際私法に限らず、欧州諸国における国内立法の全般に亘 り、EUの次元における立法化が国内立法の重要性を後退させているということが指摘されている︵囚声B9
菊
麩888﹄Fづひ9︶。そして、今後、国際私法が全体として向かうべき方向が不明瞭になっているという指 摘もある︵国蚕目9賠麩8080PoFb密。︶。従来の国内立法としてのオランダ国際私法は、最密接関連性の原 則及び弱者保護の理念によって先導されてきたが︵8切OR\囚o岳躍層8らFづN課9ω8︶、最近のEU規則にお ける指導理念はそれらと異なっており、寧ろ、EUの領域内市場における利益とか、統一性、簡便性、法的確実性 とかの観点が優先されていると言われている︵国鍔ヨ9賠麩888●9けも密匿︶。確かに、オランダにおいて は、そのようなEU法との関連における調整の必要性について、既に早くから指摘されていたところであり、オラ ンダ法をEU法へ適応させるべきではないかと考えられていた︵囚轟B9舅麩880P9けもひq︶。かくして、 ハーグ国際私法条約上における立場に依拠する従来からの姿勢とEUの法的統合の影響との狭間にあって、その進 路を模索するオランダ国際私法の困難な情況が垣間見られるようである。EU加盟諸国における今後の動向を知る 上においても、特にオランダ国際私法立法の動向が注目される所以である。 以下は、この小稿において引用された婚姻の効力に関するオランダ国際私法立法の試訳である。それらの訳出に 際しては、H彗ぎ日ロ段\頃きω名震の巳○貰、霊日身壁≦一藷巨呂90団跨①乞①99壁畠88もb圏9ω①ρ■に所載の 英語訳に依拠した。 161︵参考資料一︶法定婚姻関係抵触法 162
法定婚姻関係についての法律の抵触の規律に関する法律
︹藩漏ぞ
第一条 一 夫婦自身問の法定身分関係は、次に掲げる法律によって決定される。 a 夫婦の共通国籍の国家の法律、又は、それらの者が共通国籍を有しないときは、 b それらの者がその常居所を有する国家の法律、又は、かような常居所がないときは、 c 全ての情況を考慮して、それらの者が最も密接な関連性を有する国家の法律 二第一項a号の規定は、夫婦が二つ以上の共通国籍を有するとき、適用されない。 一一一第一項に記された情況における変更の結果として、その諸規定の適用が、前に適用されるとは別の法律の適用 になるときは、その別の法律がかような変更時から適用されるものとする。 第二条オランダ官法一九九三年第五一四号
配偶者が、他方配偶者によって締結された債務であって、日常の家事の過程において惹起されたものについて、 貢任を有するか否か、及び、如何なる範囲において責任を有するかは、当該配偶者及び他方当事者の双方が、債務 の発効当時、同一の国家にそれらの者の常居所を有するとき、当該国家の法律によつて決定されるものとする。 第三条 配偶者が、法律行為について、他方配偶者の同意を必要とするか、及び、必要であるとき、かような同意が如何 なる方式において与えられなければならないか、又は、それが裁判所の決定若しくは他の官庁の決定によって代替 されることができるか、及び、かような同意の欠鉄が如何なる結果となるかは、他方配偶者が、かような法律行為 が実行される当時、その者の常居所を有する国家の法律によって決定されるものとする。 第四条 第二条及び第三条の諸規定は、夫婦の婚姻財産制を決定する法律に拘わらず、かつ、夫婦問の法定身分関係の準 拠法に拘わらず適用される。 第五条 本法は、国王命令によって定められるべき日に発効する。 第六条 本法は、法定婚姻関係抵触法として引用されることができる。 163
︵参考資料二︶夫婦財産制抵触法 164
夫婦財産制についての法律の抵触の規律に関する法律
一九九一年一一月二〇法律 一九九二年九月一日施行 二〇〇一年一月二日改正 オランダ官報二〇〇一年第一二号 第一条 夫婦財産制の準拠法は、一九七八年三月一四日にハーグにおいて締結され、オランダ条約集一九八八年第一三〇 号中に仏文及び英文並びにその蘭語訳が公表された夫婦財産制の準拠法に関する条約の諸規定によって指定され るQ 第二条 準拠法の選択がないとき、双方がオランダ国籍を保有する夫婦の婚姻財産制は、それらの者が他の国籍をも保有 するか否かに拘わらず、第一条に記された条約第四条第二項第一号に従い、オランダ法によって決定される。 第三条配偶者と第三者との間における法律関係に関する夫婦財産制の効果は、夫婦財産制の準拠法によって決定され るQ 第四条 夫婦財産制が外国法によって決定される配偶者は、夫婦財産制がオランダ法によって決定されないことの宣言を 含め、オランダ民法典第一編第一一六条に言及された登録簿への登録のための公証された文書を提出することがで きる。 第五条 一 夫婦財産制が外国法によって決定される配偶者と婚姻中に法律行為を行なった第三者は、その者及び夫婦双方 が、法律行為の当時、オランダにそれらの者の常居所を有したとき、婚姻解消後においても、夫婦間にオランダ 法の下における財産の一般的共有が存在する如く、かような法律行為から生ずる債務について請求することがで きる。 二 第一項における規定は、法律行為の当時、第三者が、外国法が夫婦の婚姻財産制を決定することを知っていた か、又は、知るべきであったときは適用されない。法律行為が第四条に言及されたような文書のそこに言及され た登録簿への登録から一四日が終了して行なわれたときは、その事例であると見倣される。 第六条 国際私法規則に従って指定された外国に位置する主要な財産の所在地国法のそれへの適用により、夫婦の一方 が、本法第一条に記された条約によって指定された法律が適用されていたならば、他方配偶者に比して、その者が 権利を授与されていなかったであろう利益を受けた場合には、他方配偶者は、この網が張られることを要求する 165
か、又は、夫婦財産制の終了若しくは変更と関連して夫婦間において決済されるとき、補償を要求することができ る。 第七条 オランダ民法典第一編第九二条第三項は、次に掲げる配偶者に対し、オランダにおいて実行された回復について のみ適用される。 a 夫婦財産制がオランダ法によって決定される配偶者、又は、 b 本法第五条の規定に従い、回復が可能な配偶者 第八条 オランダ民法典第一編第一一九条中の規定は、夫婦が、それらの者の婚姻財産制を決定する法律であって、前に それに適用可能であった法律とは異なるものを指定するときは、適用されない。 第九条 ︵省略−他の法令の改正︶ 第一〇条 オランダ民法典第一編第二二一条の規定は、夫婦の婚姻財産制が外国法によって決定されるときも適用される。 第一〇a条 離婚又は裁判上の別居により、配偶者が他方配偶者によって生じた年金受給権の一部に対する権利を与えられる か否かは、離婚の場合における年金受給権の平等化法第一条第七項を除き、夫婦の婚姻財産制の準拠法によって決 定される。 166
第一一条 本法は、夫婦財産制抵触法として引用されることができる。 第一一一条 一 本法は、国王命令によって指定されるべき日に発効する。 二 本法は、その発効日の後に婚姻を締結する夫婦の婚姻財産制に適用される。 三 本法の準拠法の指定に関する諸規定は、発効日の前に婚姻を締結し、かつ、かような日の後にその準拠法を指 定する夫婦の婚姻財産制に適用される。 第一三条 本法の発効前になされた夫婦によるそれらの者の婚姻財産制の準拠法の指定、又は、かような指定の変更は、か ような指定が本法によって規律されなかったことを唯一の理由として無効であると考慮されてはならない。これ は、離婚及び別居についての法律及び管轄の抵触の規律に関する条約︵オランダ官報一九一二年第二八五号︶の諸 規定が夫婦財産制に適用され、かつ、その条約がオランダについて施行を停止した一九七七年八月≡二日の前に指 定がなされた事件には適用されない。 167
︵参考資料三︶ハーグ夫婦財産制条約批准法
夫婦財産制の準拠法に関する一九七八年三月一四日ハーグ条約の批准
に関する一九九一年一一月二〇日王国法
一九九一年一一月二〇日法律
第一条 一九七八年三月一四日にハーグにおいて締結され、オランダ条約集一九八八年第一三〇号中に仏文及び英文並び にその蘭語訳が公表された夫婦産制の準拠法に関する条約は、オランダ王国の全土について承認される。 第一一条 第一条に記された条約第二八条に従い、オランダ国内法が条約第四条第二項第一号に従って適用されることがで きるようになるため、条約第五条に言及された宣言がオランダについてなされることが承認される。 第一一一条 第一条に記された条約第二八条に従い、オランダについて、条約第九条第二項及び第三項の規定に従い、次に掲 げることがオランダにおける第三者に関する夫婦の財産法関係について適用されるという宣言がなされることが承 168一九九一年一一月二一日施行
オランダ官法一九九一年第六二七号
認される。 a 配偶者と第三者との間における法律関係に関する夫婦財産制の結果は、b号及びc号における諸規定を除い て、夫婦財産制に関するオランダ法に基づく準拠法によって決定される。 b 夫婦財産制が外国法によって決定される配偶者は、オランダ民法典第一編第一一六条に言及された登録簿へ の登録であって、その者の夫婦財産制が外国法によって決定されるという宣言を有する公証された文書の登録 をさせることができる。 c 夫婦財産制が外国法によって決定される配偶者と婚姻中に法的取引を実行した第三者は、その者及び夫婦双 方ともが、かような法的取引の当時、オランダにそれらの者の常居所を有したとき、婚姻解消後においても、 夫婦間にオランダ法の下における財産の一般的共有が存在する如く、かような法的取引から生ずる債務につい て請求することができる。 d c号の規定は、第三者が、法的取引の当時、夫婦の婚姻財産制が外国法によって決定されることを知ってい たか、又は、知るべきであったときは適用されない。法的取引がb号に言及されたような文書がその号に言及 された登録簿へ登録された後の一四日の終了後に行なわれたときは、その場合であると見倣される。 第四条 第一条に言及された条約の批准に際し、﹁民法典第一編第八五条第一項、第八六条、第八八条及び第八九条は、 条約の意味の範囲内においで、オランダ法の下における夫婦財産制の一部を形成しない。﹂と読む宣言が、オラン ダについてなされることが承認される。 第五条 ︵省略︶ 169
︵参考資料四︶年金受給権公平化抵触法 170