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生活保護制度における論点整理と地方自治体の生活保護率に及ぼす要因 : 三田市を事例として

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Academic year: 2021

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(1)

著者

八並 剛志

雑誌名

KGPS review : Kwansei Gakuin policy studies

review

21

ページ

49-52

発行年

2015-03-31

(2)

49

生活保護制度

生活保護制度

生活保護制度

生活保護制度における

における

における論点整理と地方自治体の

における

論点整理と地方自治体の

論点整理と地方自治体の

論点整理と地方自治体の

生活保護率に及ぼす要因

生活保護率に及ぼす要因

生活保護率に及ぼす要因

生活保護率に及ぼす要因

―三田市を事例として―

―三田市を事例として―

―三田市を事例として―

―三田市を事例として―

八並

八並

八並

八並

剛志

剛志

剛志

剛志

【修士論文

修士論文

修士論文

修士論文概要書

概要書

概要書

概要書】

我が国では、生活保護制度が公的扶助の中心的な制度である。この制度は 1946 年に 戦後の国民生活が窮乏していることに応じて施行された旧生活保護法に元を持っている。 その後、1950 年に社会情勢や法的不備への指摘などを受けて全面改正、「生活保護法」 が制定され、現在の制度の枠組みが確立されたのである。しかし、今日の生活保護制度 の状況は想定している機能を十分に果たせているとは言い難く、現状の問題も多岐に渡 っている。そこで、本論文では先行研究を整理することで現在の生活保護制度の論点を 整理することで現状の問題点をそれぞれ理解しやすくした上で、兵庫県三田市を例に取 り、地方自治体の生活保護行政を考察していく。 1. はじめに 本論文は以下のような流れで構成されている。まず、第 2 章では生活保護制度の 概要について述べる。ここでは法的側面から見て生活保護制度がどのようなもので あるかを記した後に、制度がどれほど利用されているかなどの現状についても触れ ておく。第 3 章では生活保護制度の多岐に渡る複雑な問題について整理するために、 先行研究を元に各論を整理している。今回取りまとめた論点は、①福祉事務所の現 業員であるケースワーカー、②生活保護制度がどれほどの被保護有権者を保護して いるかを示す捕捉率、③被保護対象ではない者が不正に保護費を受給する不正受給、 ④被保護世帯の中でも働くことができると考えられている稼働能力世帯、⑤制度の 目的でもある「自立の助長」のために打ち立てられた自立支援プログラム、以上 5 点である。第 4 章では兵庫県下の市町村で最も生活保護率が低いとされている三田 市を事例に取り、地方自治体の生活保護行政の内情を論じる。ここでは三田市の生 活保護行政をデータから整理しつつ、三田市市役所福祉総務課の職員にヒアリング 調査を行い、行政側が制度に関してどういった意見を持っているかを述べる。また、 兵庫県下の生活保護状況についても県下データベースから取りまとめる。第 5 章で はこのような調査・考察に基づいて仮説検証を行う。そして、第 6 章で本論文の総 括を行った上で、今後検討すべきリサーチ・クエスチョンを 2 つ記して本論文の終 わりとしたい。

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50 2. 生活保護制度 生活保護制度の概要を把握するために、生活保護法を順に見ていきたい。まず、 同法第 1 章第 1 条には「この法律は、日本国憲法第二十五条 に規定する理念に 基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要 な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長するこ とを目的とする。」とある。ここで注意しておきたいことは「最低限度の生活」と 「自立の助長」という 2 つの言葉である。生活保護制度では単に生活困窮者に対 して経済的扶助を行って最低限の生活を保障するだけではなく、その被保護者が 社会で自立できるようにサポートすることが求められている。 3. 先行研究 生活保護制度に関する先行研究の主要な 5 つの論点を整理する。 ①ケースワーカー、②捕捉率、③不正受給、④稼働能力のある世帯、⑤自立支援 プログラム、以上 5 点である。 4. 三田市の生活保護行政 まずは、三田市の生活保護率に関して述べる。生活保護率とは全体の世帯数の うちで実際に生活保護を受けている被保護世帯の割合である。平成 23 年度では、 全国の生活保護率は 1.63%であり、兵庫県下全体では 1.85%であった。他年度を 比較しても兵庫県は全国平均を上回る生活保護率となっている。そんな中で三田 市は 0.23%という他の市町村自治体を見ても最も低い数値を出しており、その数 値は平成 25 年度でも変わらず 0.31%という非常に低い値になっている。 222 200 197 200 202 223 259 271 313 253 244 244 240 271 301 357 0.28 0.22 0.21 0.21 0.21 0.23 0.29 0.31 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 0 50 100 150 200 250 300 350 400 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 世帯数 被保護人員 保護率

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51 5. 仮説の検証 本論文で検討する仮説は、(1)「三田市の生活保護率の低さは高齢化率が低いこ とに起因する。」(2)「三田市の生活保護率が低さは持ち家率が高いことに起因する。」 の 2 つである。仮説の設定理由は先行研究からである。(1)については、生活保 護制度を利用することへの大きな要因となるのは高齢化率である(牛沢、2004)と 述べられていることから、(2)については、三田市が全国平均の 1/10 程度に生活 保護率がとどまっているのは住宅購入能力の高い生産年齢人口が他市から流入して きていることが要因である(岡本、2013)と述べられていることから、それぞれ限 定的に検証を試みることにしたい。 6. 総括 結果として、三田市や他の自治体を観察するにこれらの 2 つの要因のみで生活保 護率を説明することはできないと考えられるが、持ち家率は高齢化率に比べ説明力 を持つことが明らかとなった。三田市役所福祉総務課現職員は三田市の生活保護率 が県下で低いことに関して「三田市の生活保護率が低いことの原因を探り当てるこ とは難しいように思う」と述べている。しかし、ケースごとにより深くその自治体 を研究していくことでそれが説明できる可能性は捨てきれない。本論文ではここま でになってしまうが、最後に今後検討すべきであろうリサーチ・クエスチョンを 2 つ記しておきたい。 まず、1 つ目は「福祉の磁石」現象である。これは福祉政策が充実している自治 体に保護を求めて要保護者がその地域に流れて行き、他の地域では福祉政策が不充 実なために要保護者が少なくなるというものである。つまり、生活保護率が高い地 方自治体である尼崎市や神戸市、また大阪市が近いことにより、そちらに生活保護 を求めて要保護者が流れて行っている可能性が指摘される。現に三田市はベッドタ ウンであるがゆえに雇用が多いというわけではなく、更に住宅扶助の一環である低 額もしくは無料宿泊所などの施設もない。加えて、三田市の生活保護廃止理由の 23%は他の地方自治体に移っていく「移管」であり、廃止理由の 2 位であることも 考えておきたい。つまり、ある特定の地方自治体の生活保護率は周囲の生活保護率 の高い、もしくは福祉政策の充実している地方自治体の存在によって下がるのでは ないか、という仮説を示すことができる。 そして、2 つ目は 20 年後の三田市生活保護行政の行方である。平成 22 年度の国 勢調査によれば三田市の 45 歳から 64 歳の人口は 35780 人であり、これは全体の人 口のおよそ 31.3%にあたる。この年齢層に属している人口のほとんどが 20 年後に は高齢者として暮らすこと になり、それは福祉政策による行政の財政圧迫はもとよ り生活保護行政にも大きな影響を与えることは明らかである。現状の三田市の生活 保護率が低い上で打ち立てられている福祉政策とは違う側面の問題を加味しながら 将来の政策を思案していく必要がある。これは生活保護行政だけではなく、地方自 治体全体の福祉政策において取り扱うべき重要なテーマとなりえる。

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52 これら 2 つのリサーチ・クエスチョンは将来の地方自治体の生活保護行政を考え る上で検討する価値のある課題である。 参考文献 ・阿部彩、國枝繁樹ほか(2008)『生活保護の経済分析』、東京大学 出版会 ・池田和彦(2008)「生活保護行政における『稼働能力』の解釈と 問題点」、筑紫女学園大学 ・大倉正臣(2012)「近年の生活保護の動向」、『聖徳大学研究紀要 第 23 号』、聖徳大学短期大学部 ・岡本邦博(2013)「10 都市の持続可能性を探る」、『地方行政』2013 年 1 月 28 日号 p2-6、時事通信社 ・厚生労働省(2012)「生活保護制度の状況等について」、厚生労働省 ・澤井勝(2013)「2013 年度地方財政対策とその課題 中心は地方 公務員給与の削 減と生活保護費切り下げ」、自治総研 ・指定都市市長会(2012)「社会保障制度全般のあり方を含めた生 活保護制度の抜本的改革の提案」(2012 年 10 月) ・杉村宏(1991)「生活保護政策研究序説」<http://hdl.handle.net/ 2115/28308> ・総務省行政評価局(2009)「生活保護に関する行政評価・監視 結 果報告書-自立支援プログラムを中心として-」 ・武田英樹(2007)「生活保護行政におけるソーシャルワークの課 題」、『近畿大学豊岡短期大学論集 第 4 号』、近畿大学 ・橘木俊詔・浦川邦夫(2006)『日本の貧困研究』、東京大学出版会 ・船木浩行(2001)「わが国生活保護制度の実施体制のあり方に関 する考察(2)-福祉事務所発足の過程とその課題-」、東海 大学健康科学部 ・星野菜穂子(2009)「生活保護費を対象とした地方交付税の財源 保障」、『自治総研』2009 年 5 月号、地方自治総合研究所

参照

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