付録1 原子炉等利用に関する共同研究報告書
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(2) 付録 1. 原子炉物理・原子炉応用に関する研究 研究総括責任者竹田敏一(大阪大学大学院工学研究科). 1件となった。これらを分 本年度における原子炉物理・原子炉応用に関する研究は 1 類すると、以下のように 7つの分野になる。. (1)原子炉の基礎的な特性(炉特性) . . .. 1-1、 -4 、 -5 、 -6. (2)原子炉計測. 1-3. (3) 中性子ラジオグラフィ-.....1-2 、 (1-1). ( 4 )放射化実験... .. 1 7 (5)γ 線遮蔽効果.....1-8 (6) 検出器の開発.....1-9、 -11 (7) 照射実験... . .1-10 まず、. (1) では、昨年度行われた 4件の継続が実施され、補助測定者として本年度. も多数の学生が参加し、教育面での成果を着実に上げている。 1-1 (名大・工、井口ほ か)では、炉周期法や落下法による制御棒価値校正を行っている。また、炉出力 l W 時 における炉室内の γ線と中性子の線量率を測定した。この他、炉運転時と炉停止時のパ ックグラウンド γ線スペクトルの比較や、中性子ラジオグラフィに関する実験を行った。 次に、. 1-4(神大・海事科学、北村ほか)では、金箔を用いて熱および熱外中性子束. 分布を測定し、約. 8 %の南北非対称性と、局所的くぼみを伴った上下非対称性が観察さ. れることを明らかにした。 次に、. 1-5(阪大・工、竹田ほか)では、前半に制御棒反応度価値の測定と金箔を用. いた中性子束分布の測定が、後半に臨界近接実験が行われた。 次に、 1-6(九大・工、池田ほか)では、原子炉内の中性子束の絶対値を、ナトリウ ム試料の放射化法を用いて求めるもので、前代表者の的場らが長年にわたって確立して きた精密計測システムを用いた教育プログラムである。 次に ( 2)のうち、 1-3(摂南大・工、山本ほか)は、放射線利用施設の遠隔利用に 関する実験であり、今年度は中性子と γ線の測定機器に対するネットワークの対応につ いて調査を行った。 次に (3) の 1-2 (大阪府大・先端研、 谷口ほか)は、冷却型 C C Dカメラを用いた 1. 中性子ラジオグラフィー技術の検討であり、今年度は 5種類の冷却型 C C Dカメラの画像 感度と白色ノイズ特性を比較した。この結果、感度は 3倍、ノイズ出現率には 1 0 0倍も の差が見られた。 次に. ( 4 )のうち 1-7(広島大・原放医研、遠藤ほか)は、 L E Tカウンターを用いた. マイクロドシメトリ手法による線質評価を目的とした研究で、今年度は組織等価型ガス 比例計数管を用いた測定実験が行われた。 次 に (5) の 1 ー8(金沢大、小村ほか)は、リンモリブデン酸アンモニウムとウラ ン系列核種の放射平衡状態において見られる特異な γ線の遮蔽効果についての実験的.
(3) V o l .4 3( 2 0 0 6 ). 近畿大学原子力研究所年報. な検討であり、今年度は塩化セシウムを使った 2種類、の試料を使った実験が行われた。 この結果、ひとつの試料から特異な遮蔽効果が観測された。 次 に (6) の 1-9 (福井工業高専、前多ほか)は、比例計数管の構造を改良するこ とにより、中性子の位置をも検出できる装置を開発することを目的にした研究である。 今年度は、検出器の実用性を調査するために、中性子放射孔から出る熱中性子の位置分 布を測定し、原子炉上蓋によって絞られたビーム状の分布を再現することができた。 次に、 1-11 (東大・原総セ、小佐古ほか)は、イメージングプレート ( I P )を用いた 放射線 2次元位置検出手法の検討であり、本年度は熱中性子とガンマ線が混在する場で のP S L変換感度に関する研究が実施された。. ( 7 )の 1-10 (大阪産業大、福田ほか)は、宇宙放射線健康管理を目的に検討 されているカルシウム化合物をベースとした T L Dのγ線感度を評価するために照射実 次に. 験を行ったものである。今年度は、 2種類の焼結体と 1種類の結晶を用いて、原子炉内 放射線と C o 6 0の γ線照射に対する熱蛍光特性を比較した。 以上のように、多くの独創的な実験研究が進められ、研究成果が着実に上がりつつあ る。その大半は国内外の学術雑誌、国際会議、国内の学会で発表され、原子力工学の発 展に役立っている。国内外を問わず、大学が主体となって利用できる原子炉研究施設が ますます限定される反面、施設の新設の目途が立たない状態が続いている。教育面、研 究面での原子炉施設の有効性について関係各署にアピールし、研究施設の環境整備に努 めねばと強く感じる次第である。. -7 7-.
(4) 付録 1. ( 1 ). 近畿大学原子炉の炉特性の測定と利用 代表者:井口哲夫(名古屋大学大学院工学研究科). 〔要約〕. 制御棒校正、空間線量率およびスペクトル測定、中性子ラジオグラフィ実験を 4年生 15名 とともに 6月30日 , 7月1日に行った。調整棒およびシム安全棒については炉周期法を、また シム安全棒および安全棒 (#1、 #2) については落下法を使用し制御棒価値校正を行った。 各制御棒の価値はここ数年安定していて、調整棒以外の 3本の安全棒の価値はほぼ等しかっ た 。 炉出力 1 W時における炉室内のy線線量率を電離箱型サーベイメータで、中性子線量率を 中性子レムカウンターで測定した。中性子保管庫周辺等多少高い線量率を示す場所もあった が、安全上問題となる線量は認められなかった。また、炉運転時と炉停止時のバックグラン. ドy線スペクトルを HPGe 検出器で、測定し、運転時には炉の構造材の主成分である Feの即発y線 ピークが観察されたが、炉停止時には特別なピークは認められなかった。. lW 運転時における中性子ラジオグラフィ撮影を蛍光コンパータと高感度フィルムとの組 み合せで行い、同じサンプルを X線でも撮影し、中性子および X線ラジオグラフィの感度の 差に関する検討を行った。. ( 2 ). 高感度中性子ラジオグラフィの実用化に関する研究〈四) 代表者:谷口良一(大阪府立大学先端科学研究所). 〔要約〕. 高感度かつ経済性のある中性子ラジオグラフィシステムの開発のため、この 1 0年間に開 発された 5種類の冷却型 C C D撮像装置の比較検討を行った。実験は、近大原子炉 B設備の中 性子場を用い、同じ L i F + Z n S (Ag)シンチレータで、 1 0分間に統ーした照射時間で得られた 5 種類の中性子画像の感度と C C D に特有の白色ノイズ特性の比較を行った。その結果、感度は 機種によって 3倍ほど異なり、ノイズ出現率では実に 1 0 0倍もの違いがあることが明らかと なった。検討した冷却型 C C D装置の中では、感度、ノイズ、特性のいずれの場合も、新しい機 種が優れている傾向が見られた。. -7 8-.
(5) 近畿大学原子力研究所年報. Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). ( 3 ). インターネットによる遠隔操作の炉物理実験及び実習のための技 術開発 代表者:山本淳治(摂南大学工学部). 〔要約〕 インターネットの普及に伴って、これを利用して装置の遠隔操作や監視を行うシステムが 各分野で注目されている。代表的な利用技術として医療分野における遠隔診断システムがあ り、すでに実用化されている。このようにインターネットの普及拡大は、放射線利用に対し でも遠隔利用の可能性を広げている。研究用原子炉など放射線を扱う共同利用実験施設では、 距離に対する遠隔性に加えて放射線管理のための制約に対する遠隔性も加わり、この両方に 対応して遠隔操作するメリットがある。本年度は、原子炉において従来から用いられている 中性子と γ線の測定機器に対してネットワークへの対応を調べた。パーソナルコンビュータ を使って検出情報をディジタル化し、クライアント・サーバ方式で遠隔測定の動作試験を行 った。. ( 4 ). 原子炉の制御棒効果と中性子束分布の測定 代表者:北村晃(神戸大学海事科学部). 〔要約〕. 2名の参加の下、制御棒較正並びに金箔放射化法による中性 動力システム工学課程学生 4 子束垂直方向分布の測定を行った。 4 本のマニュアルストリンガ ( M S ) 位置における金箔放 射化反応率分布は、約. 8 %の南北非対称性と局所的くぼみに特徴づけられる上下非対称性を示. した。これらは一昨年、昨年にも観測されており、再現性がある。. 0 6年度からは、必修の学生実験としてではなく、希望学生の自主的参加の下に同様の実験を 実施することを計画している。. -7 9-.
(6) 付録 l. ( 5 ). 近大炉・中性子東分布詳細測定 代表者:竹田敏一(大阪大学大学院工学研究科). 〔要約〕. 本年度は、前半と後半の 2回に分けて測定実験を行った。前半では、大阪大学原子力工学 科 4年生全員 38名が 3班に分かれ、教官の指導の下に、原子炉起動・運転実習、制御棒校 正、中性子束分布測定、空間線量測定実験を行った。実験期間は 7月 5 目 、 7 8日であり、 各日ともに午前 9時 30分より午後 5 時までの計画で実験を実施した。後半では、同メンバ ーを 2班に分け、臨界近接実験を行った。実験期間は 7月 14日および 1 5日である。得られ た実験データは、近大炉における炉物理定数の統計精度の測定と、その向上に資するための ものである。. ( 6 ). 原子炉中性子の精密計測システムの開発及び原子炉を用いた実 験実習 代表者:池田伸夫(九州大学大学院工学研究院). 〔要約〕. 九州大学と徳島大学の学生を対象に原子炉運転実習を行った。 1 2年日の本年度は、 9月 8. 9 日にかけて、原子炉の起動・運転の実習、放射化法による炉内中性子の絶対測定、漏洩 γ 線の測定等の内容で実習を行った。放射化法による炉内中性子絶対測定では、熱中性子に よる N a 2 3の放射化反応を利用して原子炉内の中性子束分布を調べた。 N a 2 3 の試料には試 薬炭酸ナトリウム(N 2 ) を用い、放射化して生成した N a 2 4 の放射能の絶対測定にはガ a C 03 ンマ線サムピーク法を用いた。実習時間の制約と計測回路の不調により一部例年に比べ精度 の劣る結果であったが、概ね昨年度までと同様の結果が得られた。今後も本実習を通じて学 生に原子炉物理や放射線計測に対する理解を深めてもらえるよう努めていくとともに、中性 子束分布の測定法についても検討していきたいと考えている。. -8 0-.
(7) Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). 近畿大学原子力研究所年報. ( 7 ) マイクロドシメトリー手法を用いた UTR-KINKI中性子場の線質の 評価 代表者:遠藤暁(広島大学原爆放射線医科学研究所) 〔要約〕. E T カウンターを用いたマイクロドシメトリ手法による線質の評価を 本研究においては、 L 行うことを目的とする。 L E T カウンターは組織等価な器壁をもっガス比例計数管に組織等価 ガスを封じ込めた検出器である。ガス圧を変化させることで生体組織中に付与されるエネル ギーを模擬的に測定する。このマイクロドシメトリで得られる y分 布 は 、 ご く 小 さ い (1 数 μ)生体組織に付与されるエネルギー分布を通して、生物効果比見積もることも可能であ. T R K I N K I の生物照射場としての特性を明らかにすることができる。 る。本研究を行うことで U 本研究年度においては、組織等価型ガス比例計数管 ( T E P C )を用いて U T R K I N K I 照射口入口で のマイクロドシメトリスペクトルの測定を行った。. ( 8 ). リンモリブデ、ン酸アンモニウムによる γ線の遮蔽効果に関する研究 代表者:小村和久(金沢大学自然計測応用研究センター). 〔要約〕. A M P ) とウラン系列核種が放射平衡にある粉末を混合す リンモリブデン酸アンモニウム ( ると、ラドンの娘核種から放出される γ線の計数率の著しい減少が観測された。本研究では、 ラドンの娘核種以外でもこの特異な遮蔽効果が観測されるかを確かめ、遮蔽効果解明の手が. s C l中の C sを A M Pに吸着させたもの、および かりにすることを目的とした。実験 1として C C s C lと A M Pの単純な混合物を近畿大学原子炉の中央ストリンガー付近で 5時間照射した。照 射 1ヵ月後に γ線スペクトロメトリーにより 134CS の放射能を測定し、 2つの試料の 134CS の 放射能を比較した。実験 2として、 A M P、N a C l、K G lの混合物、およびモリブデン酸アンモニ ウム ( A M ) 、N a C l、K C lの混合物を近畿大学原子炉の中央ストリンガー付近で 1 0分間照射し た。二照射後、 γ線スペクトロメトリーにより. 9 9 M o、 2 4 N aの放射能をそれぞれ 2回ずつ測定し、. 各放射性核種の計数率を比較した。実験 lでは、 2つの試料の塩化セシウム放射能には差が 見られず、両試料ともに 134CSでは特異なる γ線の遮蔽効果は観測されず、 A M Pの外部に吸着 および単純に接しているだけでは、 γ線の遮蔽効果は生じないことがわかった。実験 2では、. 4Na計数比が、 AM混合物に比べて約 10%低く、 A A M P混合物の壊変補正した 9 9 M o /2 M P内部から 発生する. 9 9 M oでは、 γ線の特異な遮蔽効果が生じたことが示唆された。 00.
(8) 付録 1. ( 9 ). 傾斜線位置読み取り法による中性子位置検出器の開発 代表者:前多信博(福井工業高等専門学校電気工学科). 〔要約〕. 平成 1 5年度の「近畿大学原子炉等利用共同研究」で、陽極芯線に沿って 2本の位置読取 線を張った比例計数管が、中性子位置検出器として作動する事がわかり(前多,伊藤,堀口, 傾斜線式位置読取法による中性子位置検出の可能性. R A D I O I S O T O P E S, V o l . 5 3, 6 1 1 -. 6 1 5 ( 2 0 0 4 ) ) 、平成 1 6 年度には位置分解能の概略も明らかになった(前多,伊藤,堀口, 斜線式読取法による中性子位置検出の位置分解能. 傾. R A D I O I S O T O P E S, V o l . 5 4, 3 5 9 -. 3 6 3 ( 2 0 0 5 ) )。 平成 17年度は、この検出器の実用性を調べるため、熱中性子の位置分布を測定した。中 性子転換物質の一様性を簡便に保証する方法として、焼結体のチッ化ホウ素 ( B N板)を使っ た 。 1 0 m m間隔で直径 2 皿のスリット孔が 7個あいたアルミ板で B N板を覆った有効長 6cmの 中性子位置検出器で、 UTR-KINKI の中性子放射孔から出る熱中性子の位置分布を測定した。 中性子放射孔の上 8 . 5 c mと 1 8 . 5 c mでの位置分布測定値から、熱中性子は原子炉上蓋で絞ら れ(遮蔽され)ビーム状に分布している事がわかった。. (10) 宇宙線によるカルシウム化合物の熱蛍光特性の研究 代表者:福田和悟(大阪産業大学人間環境学部) 〔要約〕. 太陽紫外線による生物学的影響が研究されているが、われわれは、 C a F2に T b407と S m 203を 添加した C a F2: T b, S m焼結体において観測される 3 7 8 Kの T L ピークが紫外線 (UV-B、UV-C)、. X線 、 γ線に対しでも T L D として使用できること、また T b407(O .0 6 w t 先 ) と G d2 03( 0 .0 3 w t % )を 添加した C a F2 : T b, G d焼結体において、原子炉内放射線(中性子 +γ 線)および“ C oの γ線照射 に対し、 1 8 0 1 9 0C 付近に T L ピークが観測されることを報告した。 0. 今回、 C a F2: T b, S m, G d. 焼結体、 C a F2: T b, G d焼結体および C a F2 : T b, G d単結晶を作成し、原子炉内放射線と 6 0 C oの γ 線照射に対する熱蛍光特性を調べた。 C a F2: T b, G d単結晶において原子炉内放射線に対して. 1 1 5Cと 2 2 0Cに T Lピークが観測され、 6 0 C oのγ線照射に対しては 1 6 0Cと 2 3 5 2 4 5Cに T L 0. 0. 0. 0. ピークが観測され T L グロー曲線が異なった。これは、原子炉内放射線と日 C oの γ線の違い によるものと考えられる。一方、焼結温度が 1 0 0 0Cと低い C a F2:T b, S m, G d焼結体、 C a F 0. 2 :Tb, G d焼結体については、原子炉内放射線、日 C oのγ線照射に対して T L D として使用でき ないことが分かつた。. 一. 82 -.
(9) Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). 近畿大学原子力研究所年報. (11) 原子炉放射線場におけるイメージングプレートの応答特性試験 代表者:小佐古敏荘(東京大学原子力研究総合センター) 〔要約〕. I P )は、各種放射線 放射線 2次元位置検出器として着目されているイメージングプレート ( に対して高い検出感度を有していることが知られている。本共同利用の初年度となる平成 1 7 年度は、 I P を原子炉内外の放射線場の線量レベル計測に適用するための基礎的な情報を取得 することに重点をおいた。特に、熱中性子とガンマ線が混在する場において、感度よく P S L 信号を得るために、種々の中性子変換材(今回は G d 、D y 、A lの 3種類を試験した)を I P表 面に添付し、原子炉からの直接漏洩する放射線を照射し、得られる P S L値を比較した。また. I Pを立方体または八角柱状に組み、将来的に混合放射線の入射角情報を取得するための基礎 的な試験を実施した。変換材を添付した I Pの感度について、放射線の入射方向、特に表側 からの入射、裏側からの入射の感度に大きな差があることが必要不可欠な特性となる。これ. lが変換材として適していると結 までに得られたデータに基づけば、 3種の中では総合的に A 論された。今後関連の基礎特性試験を継続し、原子炉放射線場における I Pの有益な適用方 法を検討する。. 00. 。 円.
(10) 付録 l. 原子炉化学・放射化学に関する研究 研究総括責任者山中伸介(大阪大学大学院工学研究科) 原子炉化学・放射化学に関する研究では、平成 1 7年度は下記の 3件の研究が採択、 実施された。. (1) 食品中のナトリウムと塩素の放射化分析 (2) 大気環境トリチウムの化学形態と迅速捕集に関する研究 ートリチウム化合物の科学形弁別連続モニタリングシステムー. (3) 古代エジプト遺物中微量元素の中性子放射化法による分析 研 究 (1)は過去数年間実施されている一連の研究であり、極抵出力原子炉を用い て献立および食品中の Naと塩素 (Cl)の同時測定を行い、 Naから換算した食塩量と. Clから換算した食塩量を求め、各種食品中の値について比較検討している。本年度は 粉末飲料である各種調整ココアと各種粉末清涼飲料に含まれる食塩量について検討し た。調整ココアの一部を除いて粉末清涼飲料ともに Naと CIが検出された。また、前 回までの報告と同様に、使用原料の一つに調味料(アミノ酸等)との表示があり、 Na 量から算定した食塩量の方が Cl 量 か ら 算 定 し た 食 塩 量 よ り も 高 い 値 を 得 る 傾 向 が 認 められた。調整ココアおよび粉末清涼飲料ともにー食分として摂取する食塩量は製品. .2g程 度 で あ っ た 。 但 し 、 一 日 の 摂 取 量 が 多 によって差がみられるものの、多くて 0 くなるとこの限りではない。 研 究 (2)は、大阪薬科大学、京都大学、新潟大学および近畿大学の共同研究であ り、過去 4年間より引き続き実施されたテーマで、研究目的は「環境中および原子炉 施設周辺大気中の 3Hの迅速分別捕集と形態別測定評価」である。これまで、バイコ ールガラス管壁を利用して、 HTと HTOを分離できることを見出している。そこで本 年度は、最近市販された電離箱方式の検出器の検出限界が排出基準を下回ることを調 べるために、放射性同位元素研究施設において現場実験を行った。まず、測定に使用 したアロカ製のラドン/ト目ン除去式トリチウムガスモニタの性能試験を行った結果、 HTOの排気中または空気中の濃度限界である 3x1 03Bqcm-3まで測定可能であること ・. がわかった。次に、作業環境における気体状トリチウム濃度の連続モニタリングを行. -粒 子 の 濃 度 を 反 映 し った結果、電離箱式モニタリングシステムの出力は、ほとんど α ており、室内換気と密接な関係があることも明示された。大気の自然換気が可能な機. -粒子の濃度は低下し、換気の影響も低減されて 械室の測定を行った結果、予想通り α いることがわかった。これらより、ラドン/トロン除去式トリチウムガスモニタは、 放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律に準拠した気体状トリチウムの 連続モニタリング装置として利用可能であることがわかった。 研 究 (3)は、古代エジプト遺物ファイアンスの主要構成元素や微量元素、特に希 土類元素の存在比率を中性子放射化法による非破壊にて分析し、これらの相関分布か らファイアンスの時代性・地域性を追求する考古学分野への科学的研究応用である。 今年度の実験は初回分析であり、実の「遺物」と、比較対象である「日本瓦・砂」の.
(11) Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). 近畿大学原子力研究所年報. それぞれ 2種 類 、 計 6サンプルの分析を行い、検出可能な γ線 核 種 の 決 定 等 の 定 性 的. I・38の 検 出 が 十 分 可 能 な 分 析 を 行 っ た 。 主 と す る 微 量 元 素 Na-24、 Mn-56、 K-42、 C であることを確認した。しかしながら、期待した希土類核種の検出は今回確認できな かった。次年度にあっては、想定される γ線 エ ネ ル ギ ー 領 域 お よ び 照 射 ・ 冷 却 ・ 測 定 時間を考慮した測定を繰り返し、多くのサンプル分析を通じ、サンプル聞の相関分布 から、遺物の時代性・地域性の科学的特徴を発見していく。 以 上 の よ う に 、 原 子 炉 化 学 ・ 放 射 化 学 に 関 す る 研 究 は 三 件 あ る が 、 研 究 (1)は放 射 化 分 析 法 の 食 品 科 学 へ の 応 用 と 正 確 な デ ー タ の 蓄 積 と い う 観 点 か ら 、 ま た 研 究 (2) は 3Hによる環境影響を正確に評価するために自然界での動態を把握しようとする点、 研 究 (3)は中性子放射化法による非破壊分析の考古学分野への応用という点から、 すべて重要な研究である。これら三件の今後のさらなる発展を期待する。. h u. o o.
(12) 付録 1. ( 1 ). 食品中のナトリウムと塩素の放射化分析 代表者:山本忠志(兵庫教育大学学校教育学部). 〔要約〕. 健康に及ぼす食事の影響については量と質の両面から重要視され、過剰のナトリウム. ( N a ) 摂取は血圧を上昇させる因子のーっとして健康管理上注意が払われている。そこで、 a と塩素 ( C l ) の同時測定を行い、ぬから換算し 我々は極抵出力原子炉を用いて食品中の N l から換算した食塩量を求め、各種食品中の値について比較検討している。今 た食塩量と C 回、粉末の飲料である各種調整ココアと各種粉末清涼飲料に含まれる食塩量について検討し、 以下の結果を得た o 1 ) 調整ココアの一部を除いて粉末清涼飲料ともに Naと C lが検出された。 2 ) 前回までの報告と同様に使用原料の一つに添加物(アミノ酸等)との表示があり、 Na量. l 量から算定した食塩量よりも高い値を得る傾向が認められた。 から算定した食塩量の方が C. 3 ) 調整ココアおよび粉末清涼飲料ともに一食分として摂取する食塩量は製品によって差が みられるものの、多くて. ( 2 ). O . 2g程度と微量であった。. 大気環境トリチウムの化学形態と迅速捕集に関する研究 一トリチウム化合物の化学形弁別連続モニタリングシステム一 代表者:木村捷二郎(大阪薬科大学薬学部). 〔要約〕. トリチウム ( T )化合物は、化学形態により排気の濃度限度が 4桁異なっている。したがっ て、放射線管理において、安全性および経済性を考慮し、合理的に行うためには、化学形態 により分別し、それぞれの放射能濃度を測定する必要がある。これまで、バイコールガラス 管壁を利用して、. H Tと H T Oを分離できることを見出している。そこで、本報告では、最近市. 販された電離箱方式の検出器の検出限界が排出基準を下回ることを調べるために、放射性同 位元素研究施設において現場実験を行った。まず、測定に使用したアロカ製のラドン/トロ ン除去式トリチウムガスモニタの性能試験を行った結果、. H T Oの排気中または空気中の濃度. 限度である 3x1 0 -3B q c m づまで計測可能であることがわかった。つぎに、作業環境における気 体状トリチウム濃度の連続モニタリングを行った結果、電離箱式モリタリングシステムの出 力は、ほとんど α一粒子の濃度を反映しており、室内換気と密接な関係があることも明示さ れた。大気の自然換気が可能な機械室の測定を行った結果、予想、通り αー粒子の濃度は低下 し、換気の影響も低減されていることがわかった。. -8 6-.
(13) Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). ( 3 ). 近畿大学原子力研究所年報. 古代エジプト遺物中微量元素の中性子放射化法による分析 代表者:吉田茂生(東海大学工学部). 〔要約〕 本研究は古代エジプト遺物ファイアンスの主要構成元素や微量元素、特に希土類元素の存 在比率を中性子放射化法による非破壊にて分析し、これらの相関分布からファイアンスの時 代性・地域性を追求する考古学分野への科学的研究応用で、ある。今年度の実験は初回分析で あり、実の「遺物」と比較対象である「日本瓦・砂」のそれぞれ 2種類。計 6サンプルの分. a 析を行い、検出可能な γ線核種の決定等の定性的な分析を行った。主とする微量元素 N. 2 4, M n5 6, K 4 2, C l 3 8の検出が十分可能であることを確認した。しかしながら、期待した希 土類核種の検出は今回確認できなかった。次年度にあっては、想定される γ線エネルギー領 域及び照射・冷却・測定時間を考慮した測定を繰り返し、多くのサンプル分析を通じ、サン プル間の相関分布から、遺物の時代性・地域性の科学的特徴を発見していく計画である。. i. 円. o o.
(14) 付録 1. 生物の放射線影響に関する研究 研究総括責任者米津義彦(鳴門教育大学学校教育学部) 平成 1 7年 度 の 生 物 の 放 射 線 影 響 に 関 す る 研 究 は , 昨 年 度 と 同 数 の 課 題 で 実 施 さ れ た が,広島大学の池田秀雄氏のグループが解散し,新たに東京大学の松本義久氏のグル ー プ が 加 わ っ た o 生物系の研究課題は次の通りである。. 3- 1 米 津 義 彦 ほ か 3名. 速中性子による植物染色体突然変異の研究. 3-2 谷 口 研 至 ほ か 5名 速 中 性 子 に よ る 植 物 培 養 細 胞 の 突 然 変 異 研 究 3-3 吉 田 茂 生 ほ か 4名. 低線量放射線照射による細胞損傷・修復機構と刺激効 果に関する基礎研究. 3-4 高 井 明 徳 ほ か 3名. 中性子線による魚類細胞における小核誘発に関する 研究. 3-5 根 岸 友 恵 ほ か 2名. ショウジヨウパエ体細胞の放射線誘発酸化傷害に関す る研究. 3-6 河 井 一 明 ほ か 4名 3-7 野 村 大 成 ほ か 5名. 核分裂放射能によるヒト臓器・組織障害の発生機構. 3-8 松 本 義 久 ほ か 1名. 中性子線による D N A損 傷 と そ の 修 復 の 分 子 機 構. 放射線被曝による生体過酸化物生成とその防御. これらの生物系の研究課題は,. (1) 放射線の生物作用の解明と,. (2) 放 射 線 の. 7年度の研究成果の概要を示す。 生物モニタ一系の開発に大別されるが,以下に平成 1. (1) 放 射 線 の 生 物 作 用 の 解 明 谷 口 ら ( 研 究 計 画 3- 2) は , こ れ ま で に 放 射 線 照 射 に よ っ て , ク レ ピ ス 培 養 細 胞 の細胞周期に関する多くの温度感受性突然変異系統を分離しているが,本年度は昨年 度から新たに開始したアラビドプシス(シロイヌナズナ)の培養細胞からの温度感受 性株の分離を行うための苗条原基の作出と突然変異誘導のための条件の検討を行って いる o 今 回 は 放 射 線 照 射 に よ っ て 生 じ た 突 然 変 異 を 固 定 化 す る た め に 不 可 欠 な BrdU 処理に対する耐性試験を行い, B rdU処 理 時 間 が 2 4時 間 の 場 合 に 生 存 率 が 約 50%で あ ることを明らかにし,現在この条件で温度感受性株の分離実験が継続されている。 吉田ら (3- 3) は , 低 線 量 の 放 射 線 の 生 物 影 響 を 検 討 す る た め に , カ イ ワ レ ダ イ コンを用いて研究を継続しているが,今年度は「放射線ホルミシス効果の発現領域が 0.1μGy/sec~0.1mGy/sec の線量率で, 10mGy~ 1 0 G yの線量の範囲に存在する。 J とい. 4MeVの 中 性 子 う仮説を立て,これを実験的に検証することを試みている。その結果, 1 線照射の場合はこの仮説が支持される結果が得られたが,原子炉放射線を用いた実験 からは,仮説を裏付ける十分なデータは得られなかった。しかし,今後実験を繰り返 すことによって,仮説を裏付けることが期待される。 根岸ら (3- 5) は , シ ョ ウ ジ ョ ウ パ エ の 複 数 の D N A障害修復欠損株を用いて,. X線 照 射 後 の ア ボ ト ー シ ス 誘 導 と 突 然 変 異 の 誘 導 に つ い て 研 究 を 行 っ て い る 。 昨 年 度 は,尿酸欠損株を用いて,酸化傷害が細胞障害の要因になっていることが示唆された.
(15) Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). 近畿大学原子力研究所年報. ので,本年度は長波長紫外線 ( UV-A) による酸化傷害との比較検討を行っている。 X 線に対しては,尿酸欠損株の方が野生株より感受性が高かったが,. DNAの酸化傷害. の 指 標 で あ る ふ hydroxydeoxyguanosine (8-0HdG) を測定したところ,両者間で差が 認められなかった。一方, UV-Aレーザ一光照射では, 8-0HdGは線量依存的に増加した が,増加率は両株間で差が認められず,生存率も差がなかった。このことから, X線 に よ る 酸 化 傷 害 と UV-Aのそれとは異なると推論している。また, 8-0HdG量 は 尿 酸 欠 損感受性の致死作用とは関係しないと結論づけている o 河井ら (3- 6) は,マウスに X線を照射後,緑茶ポリフェノールを投与すると,. X線誘発小核頻度が有意に減少することから, X線 照 射 後 の 骨 髄 細 胞 の 回 復 に 及 ぼ す 緑茶ボリフェノールの効果を調べている。 X線 2Gy照 射 に よ る 末 梢 血 中 の 網 状 赤 血 球 の割合は,緑茶フェノールを投与したマウスと対照群との闘で差が認められなかった。 一方, DN A酸 化 損 傷 マ ー カ ー で あ る か OHdG量は, X線 30Gy照射群と対照群の間で, 肝 臓 や 脳 で は 差 が な か っ た が , 骨 髄 で は X線 照 射 群 の 方 が 多 く , 緑 茶 ポ リ フ ェ ノ ー ル の放射線防護効果を調べる指標となることが期待される。 野村ら. (3-7)は,ヒト臓器・組織置換 S C I Dマウスを用いて,原子炉放射線によ. るヒト臓器・組織への急性,晩発障害を調べている。中性子線 0.2 Gy照射では, γ線 大量照射と同様に,またヒト甲状腺置換と同様,ヒト肺組織においても,遺伝子発現 の異常が検出された。一方,マウスを用いて,中性子線の遺伝的影響(継世代影響). l世代まで作製した。今後,奇形等の発生を調べる予 を調べる実験を開始し,すでに F 定である。 松本ら (3- 8) は,中性子線による D N A損 傷 の 特 徴 と そ の 修 復 の 分 子 機 構 を 明 らかにする目的で,正常細胞, XRCC4欠損細胞,リン酸化部位変異体発現細胞に原子炉 放射線を照射し,コロニー形成法でその生存率を調べている。その結果,原子炉放射 線の感受性は, X線同様,高い方から XRCC4欠損細胞,リン酸化部位 2及 び 3欠損細胞, 正 常 細 胞 , リ ン 酸 化 部 位 1欠損細胞の順であった。. (2) 放 射 線 の 生 物 モ ニ タ 一 系 の 開 発 米津ら (3- 1)は,ヌマムラサキツユクサ(ツユクサ科)の花粉母細胞を生物検 量計として使用するための基礎資料を得るために,つぼみに 1-1 6 cGyの 原 子 炉 放 射 線(中性子線と γ線が等量混合したもの)及び 1 . 5 9 . 0 cGyの X線を照射し,減数分 裂四分子期における小核頻度を調べている。その結果,原子炉放射線では 2cGyで,ま た X線 で は 3cGyで対照群に比べて有意に小核頻度が高くなることを見いだし,ヌマム ラサキツユクサの花粉母細胞が,タマネギ発芽種子根端組織と同程度の放射線感受性 を有していることを明らかにした。 高井ら (3- 4) は,魚類の偲細胞を用いたモニタ一系の開発を試みているが,本 年度はキンギョを用いて,放射線による小核誘発の機構と特性及びその有用性につい て検討している。その結果,誘発された小核頻度は, X線 照 射 後 2 4時間目にピークが あること,線量と誘発された小核の関係は直線的であることが明らかになった。これ らの結果は,メダカの結果とほぼ同様であり,キンギヨも,メダカ同様に,化学変異 原検出系として,水環境汚染モニタリングに応用できることを指摘している。.
(16) 付録 1. ( 1 ). 速中性子による植物染色体突然変異の研究 代表者:米津義彦(鳴門教育大学学校教育学部). 〔要約〕. 平成 1 7年度は,ツユクサ科. T r a d θs c a n t i a,カヤツリグサ科 C a r e xなどを用いて,新しい. 染色体突然変異を作出する実験や放射線の生物検量計として有効な実験植物の探索などの研 究が行われた o 単子葉植物のツユクサ科ヌマムラサキツユクサ. T r a d e s c a n t i ap a l u d o s aの花粉母細胞を生. 1 6c G yの原子炉放 物検量計として使用するための基礎的データを得るために,つぼみに 1 . 0c G yの X線を照射し,減数分裂 射線(中性子線と γ線が同線量混合したもの)及び1.5-9 G yで,また, X線で 四分子期における小核頻度を調べた。その結果,原子炉放射線では 2c は 3c G yで対照群と比較して有意に小核頻度が高くなることが明らかになった。したがって, ヌマムラサキツユクサの花粉母細胞は,タマネギ発芽種子根端組織と同程度の放射線の検知 力を有していると推定される。しかし,照射した線量と小核頻度との関係については,さら に実験を行って検討する必要がある。. ( 2 ). 速中性子による植物培養細胞の突然変異研究 代表者:谷口研至(広島大学大学院理学研究科). 〔要約〕. 植物の温度感受性突然変異細胞培養系を用いた細胞周期に関する研究について、我々は独 自の研究を進めてきた。現在まで本共同研究によりクレピス属植物の組織培養苗条原基を用 いた突然変異誘導技術の確立を行い、細胞周期に関する温度感受性突然変異系統の確立とそ. 5年度からはクレピスの遠縁雑種 ( 2 n = 7 ) の懸 れらの特性解析を行ってきた。さらに平成 1 濁培養細胞を用いた単細胞由来の温度感受性突然変異誘導技術と遺伝子の解読が完了してい るアラビドプシスの培養細胞を作出し、これから温度感受性突然変異体を誘導する研究を開 始した。本年度は昨年度確立されたアラビドプシスの組織培養系を用いた温度感受性突然変 異体の誘導法の確立を目指し、その誘導条件の検討を行ったので、その結果について報告す る 。. -9 0-.
(17) 近畿大学原子力研究所年報. Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). ( 3 ). 低線量放射線照射による細胞損傷・修復機構と刺激効果に関する 基礎研究 代表者:吉田茂生(東海大学工学部). 〔要約〕 当研究グループにて行ってきた植物(カイワレダイコン種子)に対する放射線照射による 生育への影響に関する分析結果をまとめ、それより「放射線ホルミシス効果(成長促進効 果)発現領域が 0.1μGy/sec~O.lmGy/sec の線量率で 101D.Gy~ 1 0 G yの線量の範囲に存在す. る」とした 1つの仮説を立て、実験的に実証することを研究目標とした。これまでの分析結. 1 4 M e V中性子照射のみにこのような効果が見られ、原子炉放射線による照射では確 認できなかった。これを 1 4 M e V中性子照射で確認された線量・線量率に合わせた条件にて原 子炉放射線で照射した場合に、 1 4 M e V中性子照射と同じ照射効果が確認できるのだろうかを 果からは. 実験した。残念ながら今回の結果からは実証できるだけの充分なデータは得られなかったが、 可能性の高いデータを得ることができ、次年度への実験方針を示唆するものとなった。. ( 4 ). 中性子線による魚類細胞における小核誘発に関する研究 代表者:高井明徳(大阪信愛女学院短期大学). 〔要約〕 本研究は、キンギヨの偲細胞における放射線誘発の小核出現の機構と特性および有用性を. c r i d i n eo r a n g e染色法を用い、小核頻度の 明らかにするために、 X 線の全身照射を行い、 a 時間及び線量応答反応を明らかにしたものである。 本研究の結果から、照射後の経過時間と誘発されたキンギヨの鯨細胞における小核を有す る細胞 ( M N C )の頻度との関係は線量に関わらず 誘発された. 24hにピークがある二相性であった。線量と. M N C頻度との関係は直線的であった。今回の結果はすでに報告してメダカにおけ. る結果とほぼ同じであり、キンギョの鰐細胞の小核試験は、メダカ同様、信頼できる短期試 験系として、化学変異原検出、水環境汚染モニタリング等に応用できる可能性があることを 示唆するものである。. 唱EA. Qd.
(18) 付録 l. ( 5 ). ショウジョウバエ体細胞の放射線誘発酸化傷害に関する研究 代表者:根岸友悪(岡山大学薬学部). 〔要約〕. X線の生物影響について、これまで体細胞に誘起されるアボトーシスと突然変異に注目し て研究を行ってきた。昨年度、尿酸欠損株を用いた実験により、傷害を引き起こす要因とし て酸化傷害が関与している可能性が示唆されたので、本年度はさらに長波長紫外線による酸 化傷害との比較を行い詳細な検討を行った。. X線照射に対して尿酸欠損株が、野生株より感受性が高いことが確かめられた。しかしな N Aの酸化傷害の指標とされているかh y d r o x y d e o x y g u a n o s i n e( 8 0 H d G )の量は変化し がら、 D なかった。一方、 U V A レーザー光照射では、 8 0 H d Gは線量依存的に増加したが、増加率には 両株で差が見られず、その時生存率も両株間に差は見られなかった。このことは X線照射に よる酸化傷害は U V A による酸化傷害と違うものであり、尿酸がスカベンジャーとして作用し ていることを考えると、 X線照射により細胞内にパーオキシナイトライトが生成している可 能性が考えられる。また、 8 0 H d G量は尿酸欠損感受性の致死作用と相関性が無いと考えられ る 。. ( 6 ). 放射線被曝による生体過酸化物生成とその防御 代表者:河井一明(産業医科大学産業生態科学研究所). 〔要約〕. X線照射後に緑茶ポリフェノールを投与すると、マウスの未熟赤血球中における X線誘発 小核の出現頻度が有意に減少する。そこで、緑茶ボリフェノールによる小核抑制機構の解明 を目的に、 X線照射後の骨髄細胞の回復に及ぼす緑茶ボリフェノールの効果を調べた。 X線. 2Gy照射による末梢赤血球中の網状赤血球の割合は、緑茶ボリフェノールを投与したマウ o n t r o l群との間に差が無かった。 X線照射により損傷を受けた骨髄組織の回復 スと無処置 c に、照射後に投与した緑茶ボリフェノールは影響しないと考えられる。今後、他の小核誘発 抑制機構を探る必要がある。 また、放射線防護効果を調べる際、指標となる生物学的マーカーの選択が重要である。. D N A酸化損傷マーカー8 0 H d Gの各臓器 D N A中のレベルをよ X線 3 0 G y照射 24時間後のマウ o n t r o lと差が無く、 X線によって 8 0 H d G が生 ス各臓器で測定した。肝臓、脳では非照射 c. 4時間の聞に効率良く修復されていると考えられる。それに対し、骨髄では X 成しないか、 2 線照射群で高い値を示した。今後、 8 0 H d G生成量を指標として、緑茶ポリフェノールの効 果を調べたい。. -9 2-.
(19) Vo l .4 3( 2 0 0 6 ). 近畿大学原子力研究所年報. 核分裂放射能によるヒト臓器・組織障害の発生機構. ( 7 ). 代表者:野村大成(大阪大学大学院医学系研究科) 〔要約〕. ヒト臓器・組織置換 S C I Dマウスを用い、近畿大学原子力研究所原子炉 ( U T R K I N K I ) によ 性、晩発障害を最新の迅速高感度測定技術を用い検 る核分裂放射能のヒト臓器・組織への急J 出した。. 1.近大原子炉 U T R K I N K I における放射線照射線量率測定:近大原子炉 U T R K I N K I (熱出力. 1W, 炉心部最大熱中性子 1 07n / c m2/ s e c ) における実験信頼度を上げるために中性子な らびにガンマ線の正確な線量率測定を行った。. 2.ヒト組織置換マウスの作製・維持と核分裂放射能照射実験:中性子線照射0 . 2G yでは、 ガンマ線大量照射と同じく、また、ヒト甲状腺置換と同じくヒト肺組織においても、遺. e n eC h i pより検出されている。現在、遺伝子変異について検索中で 伝子発現の異常が G ある。また、微細構造障害も誘発されている。. 3.中性子線による遺伝影響(継世代影響実験):N 5 雄マウスに中性子線 0 . 2( 8匹 ) 、 0 . 4 ( 9匹) G yを照射し、 N 5雌マウスと交配することにより F1マウスを作成し、次世代で のがん、奇形等の発生を観察する。. 4. 遺伝影響(継世代影響実験)一マイクロサテライト変異:新たに検出可能となったマイ P U L 6 7,D 1 2 M i t 3 6 ) について、予備試験を行った。 クロサテライト変異 (. ( 8 ). 中性子線による DNA損傷とその修復の分子機構 代表者:松本義久(東京大学大学院医学系研究科). 〔要約〕. 放射線はさまざまなタイプの D N A損傷を引き起こすが、その中でも D N A二重鎖切断 ( D S B ) は最も致命的なものであると考えられている。近年、真核生物に主要な D S B修復機構として 相同組換え(田)経路と非相同末端再結合(N1宮J )経路があることが明らかになり、それらに関. NA損傷センサ一役である わる遺伝子群が続々同定された。松本は、これまで長年、後者で D D N A P K ( D N A P K c s、K u 8 6、K u 7 0から構成)と鎖結合反応を実行する X R C C 4 / D N Al i g a s eI V複合 N A P Kが X R C C 4をリン酸化する部位を突き止めた。本研究は、 体の研究を行っており、近年、 D 中性子線による D NA損傷の特徴とその修復の分子機構を明らかにする第一段階として、正常. R C C 4欠損細胞、リン酸化部位変異体発現細胞について近大炉で、の照射を行い、コロ 細胞と X ニー形成法にて生存率を調べた。感受性の傾向は X線と同様で、高い方カh ら X R C C 4欠損細胞、 リン酸化部位 2および 3欠損細胞、正常細胞、リン酸化部位 l欠損細胞の順であった。次の 課題は、① γ線の寄与と中性子線の寄与の分離、②線量率効果の考慮、③照射場中での線量. B E を求めることになるであろう。 分布に関する補正を行いつつ、各細胞における中性子線の R. -9 3-.
(20) 付録 1. - 94 -.
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