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緊張時における運動と休息によるパフォーマンス向上法の検討

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Academic year: 2021

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緊張時における運動と休息によるパフォーマンス向上法の検討

Rising to maximum heart rate reduces choking

高埜 悠斗

,日根 恭子

Yuto Takano, Kyoko Hine

東京電機大学情報環境学部,‡豊橋技術科学大学大学院知能・情報工学系

Tokyo Denki University, Toyohashi University of Technology 16JK156@ms.dendai.ac.jp

概要

アスリートは重要な試合で最も良いパフォーマンス を発揮したいと考えるだろう.先行研究より,中程度の 緊張状態が最も良いパフォーマンスを発揮できること が示されている.しかし,過度の緊張のため,良いパフ ォーマンスが発揮できないことがある.そこで本研究 では,特別な練習を必要としない緊張緩和方法を検討 した.その結果,急激に運動をした後,休息することで, パフォーマンスの低下を防げる可能性が示唆された.

1 はじめに

アスリートは,プレッシャーのかかる場面で競技を 行わなければならない.そのような場面で,アスリート はしばしば緊張状態になり,パフォーマンスが低下す ることがある.そのため,緊張を緩和し,パフォーマン スの低下を防ぐ方法が検討されている.緊張状態を引 き起こす要因の一つとして,不安が挙げられる[1].そ こで本研究では,不安を低減させる方法を考案し,プレ ッシャーによる緊張状態において,パフォーマンスの 低下を防ぐかどうかを検証することを目的とする. 不安のようなネガティブな情動を感じているときは, 交感神経が優位となり,心拍数が上昇するなどの身体 変化が伴うことが知られている[2].また,感情の生起 には,身体変化とその評価が必要であることが示唆さ れている[3].これらのことより,心拍数は情動が生起 するための要因の一つと考えることができ,心拍数を 変化させることで,情動を変化させることが可能であ ると考えられる.本研究では,緊張時の心拍数を低下さ せるため,急激な運動とその後の休息に着目した.急激 な運動により最大心拍数まで上昇した後,休息をとる ことにより,心拍数を低下させることができると考え られる.そこで本研究では,緊張状態において,急激な 運動とその後の休息を行うことにより,パフォーマン スの低下を防ぐことができるかを検討した.

2 実験

2-1 実験参加者 大学生 24 名(男性 19 名,女性 5 名,平均年齢 20.9 歳)が実験に参加した. すべての参加者は,ボー リングの経験があったが,プロではなかった. 2-2 実験場所 関東地方のボーリング場 2 か所であった. 2-3 実験方法 実験参加者は,運動有条件と運動無し条件にランダ ムに振り分けられた.すべての実験参加者は,緊張有条 件と緊張無し条件を行い,実施順は実験参加者間でカ ウンターバランスがとられた.緊張有条件では,(1)ビ デオ撮影(2)競争(3)賞金(4)プロによる評価に関 する教示が与えられた[4].緊張無し条件では,これら の教示は与えられなかった.その後, [5]への回答が求 められた.次に,運動有条件では,最大心拍数[6]に達 するまでその場で駆け足が求められ,その後 20 秒休息 した.運動無し条件では,1 分間の休息が求められた. その後直ちにボーリングの投球が求められた.3 フレー ムの投球が終了後,もう一つの条件が実施された.

3 結果

Stai-1 で,緊張有条件よりも緊張無し条件の方が状 態不安の得点が高くなった 4 名の実験参加者のデー タを除いた.また,実験の慣れを考慮し,2 回目に実施 した条件のみスコアについて,緊張(あり,なし)と運 動(あり,なし)を実験参加者間要因とした分散分析を 行った.その結果,交互作用が有意であり,緊張有条件 において運動有の方が運動無しよりも有意にスコアが 高かった(F(1,16)=5.04, p<.05).一方,緊張無し条件 では,有意な差は見られなかった(F(1,16)=1.54, p=.23). 2019年度日本認知科学会第36回大会

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図 1. 緊張あり条件の運動有と無しの 3 フレームのボーリングの平均得点 (エラーバーは標準誤差) また,条件ごとに,教示から投球までの最大心拍数 と最小心拍数の差を求めた. 緊張(あり,なし)と運 動(あり,なし)を実験参加者間要因とし,分散分析 を行ったところ,運動無し条件では緊張有条件 (14.8)の方が緊張無し条件(4.9)よりも有意に高 かった(F(1, 16)=10.97, p<.01)一方,運動有条件 では,有意な差は見られなかった(F(1, 16)=0.94, p=.34).

4 考察

本研究の目的は,緊張状態において,急激な運動とそ の後の休息を行うことにより,パフォーマンスの低下 を防ぐことができるかを検討することであった.ボー リングのスコアに関する分散分析より,緊張している ときには,急激な運動した後休息を行った方が,スコア が良いことが示唆された.また,心拍数の差について, 運動有条件では,緊張有条件と緊張無し条件の間で有 意な差がみられなかった.緊張しているときは心拍数 が上がり,通常何もしないと心拍数は下がらない.しか し,急激な運動を行うことによりさらに心拍数が上が り,休息することで心拍数が下がる.この心拍数の低下 が,緊張を緩和させ,ボーリングのスコアの低下を防い だと考えることができる. 従来の緊張緩和の研究では,特別なシステムが提案 されているため,そのシステムがないと緊張を緩和す ることが難しく,誰でも気軽に利用することが難しか った[7].本研究では,特別なシステムを利用せず,また 即効性があるため,スポーツにも適用できるといえる. 本研究より,スポーツの試合の前に緊張しているとき には,試合の前に運動をしてその後少し休息してから 試合に出場したほうが,良い結果が得られるといえよ う.

参考文献

[1] Marchant, D., & Gibbs, P. (2004). Ethical considerations in treating borderline personality in sport: a case example. The Sport Psychologist, 18(3), 317-323.

[2] Friedman, B. H., & Thayer, J. F. (1998). Anxiety and autonomic flexibility: a cardiovascular approach.

Biological psychology, 47(3), 243-263.

[3] Seth, A. K. (2013). Interoceptive inference, emotion, and the embodied self. Trends in cognitive sciences, 17(11), 565-573. [4] 長谷川弓子・矢野円郁・小山 哲・猪俣公宏. (2011). プレッシャー下のゴルフパッティングパフォーマンス: 不安の強度とパッティング距離の影響. スポーツ心理 学研究, 38, 85-98. [5] 肥田野直・福原眞知子・岩脇三良・曽我祥子・ Spielberger, C. D.(2009). 新版 STAI マニュアル,実 務教育出版

[6] Tanaka, H., Monahan, K. D., & Seals, D. R. (2001). Age-predicted maximal heart rate revisited. Journal of the american college of cardiology, 37(1), 153-156.

[7] 葛西響子, 山本景子, 倉本到, & 辻野嘉宏. (2014). コウテイカボチャ: 聴衆に肯定的な反応を重畳する発 表時緊張感緩和手法. 研究報告ユビキタスコンピュー ティングシステム (UBI), 2014(8), 1-8. 0 10 20 30 40 50 * *p<.05 2019年度日本認知科学会第36回大会

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図 1. 緊張あり条件の運動有と無しの  3 フレームのボーリングの平均得点  (エラーバーは標準誤差)  また,条件ごとに,教示から投球までの最大心拍数 と最小心拍数の差を求めた

参照

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