第17回(2008年度)
日本東洋医学会群馬県部会学術講演会演題抄録
日 時:平成 20年 11月 23日 (日・祝)
場 所:ウェルサンピア高崎
会 場:田村 遵一 (群馬大医・附属病院・ 合診療部)
事務局:小暮 敏明 (群馬大院・医・統合和漢診療学)
一般演題 >
座長:伊藤 克彦(山王クリニック)
1.疎経活血湯エキスが奏功した胸鎖関節症,肋間神経
痛の一症例
佐藤 浩子, 武司,小暮 敏明
(群馬大院・医・統合和漢診療学)
岸 奈治郎,田村 遵一
(群馬大医・附属病院・ 合診療部)
【緒 言】 肋間神経痛など整形外科的な胸痛を長期間に
わたり訴え, 診断や解決策に難渋する症例は日常診療で
も比較的多く遭遇する. 今回, 右胸部痛を訴え胸鎖関節
症と診断された症例に対し, 和漢薬を処方し改善が得ら
れたため報告する. 【症 例】 68歳, 女性. 主訴は右胸
部痛. X−10年頃より右胸部痛を自覚, 内科で胸部 CT
や PET など行なわれるも原因不明, 整形外科にて胸鎖
関節症と診断され, 鎮痛剤などの処方を受けたが痛みの
程度と頻度は共に増強した. 糖尿病のかかりつけ医から
当院を紹介され, 和漢診療を目的に X 年 4月受診した.
身長 147cm,体重 44kg.血圧 116/68mmHg.胸部 : 右上位
肋骨間に圧痛あり. 皮疹なし. 腹部異常所見なし. 浮腫な
し. 明らかな神経所見なし. 血液, 生化学検査などで異常
なし. 胸鎖関節症と肋間神経痛と診断した. 舌候は淡白
色で舌下静脈怒張あり.脈候は浮沈間,渋.腹候は腹力軟,
両側の胸脇苦満あり, 小腹不仁を認めた. 舌下静脈の怒
張の所見より瘀血による痛みを え, 疎経活血湯エキス
7.5g を処方した. 2週間後, 痛みは半減し, NSAIDS の
用は 2週間で 1回のみと激減した. 4週間後, 症状はほぼ
改善したが, 一方で足の冷え, 鼠径部の痛み, 頻尿を訴え
たため午車腎気丸エキス 7.5 g に変 したところ, その 2
週間後胸部痛が再燃した. このため, 疎経活血湯エキス
7.5 g を再度処方した. 【結 語】 今回, 疎経活血湯エキ
スにより痛みがほぼ消失した右胸部痛の症例を経験し
た. 肋間神経痛は日常診療でも多く遭遇する診断である
が, このような症例も漢方薬の良い適応となる可能性が
ある.
2.味覚障害に黄耆 中湯が著効した一例
岸 奈治郎,田村 遵一
(群馬大医・附属病院・ 合診療部)
武司,佐藤 浩子,小暮 敏明
(群馬大院・医・統合和漢診療学)
【緒 言】 黄耆 中湯は金 要略の出典で, 虚労裏急,
諸々の不足を補う 云々」と記載されているのみで, 具
体的な治療目的がはっきりしない. 今回我々は, 多くの
訴えを抱える患者に対し黄耆 中湯用いて効果を認める
と同時に味覚障害が改善した症例を経験したので, 若干
の 察を え報告する. 【症 例】 71歳, 女性. 200X
年 3月, めまいを主訴に近医耳鼻科を受診. 点滴で軽快
したが, その後から気 が優れず食欲もなくなり体重も
減少傾向にあることから, 同年 6月漢方治療を希望し当
科を受診した.身体所見で 149cm,38kg と,るい痩を認め
た. 検査所見では腹部超音波検査での胆囊結石以外, 症
状を説明する所見はみられなかった. 和漢診療学的所見
では, 怠感・易疲労感があり, 汗をかきやすく, その後
乾くと冷え, 2回の夜間尿があった. 脈は浮弱, 舌は地図
状の微白苔を被り, 腹診では腹力やや軟弱で臍上悸を認
めた. 虚労の状態と捉え黄耆 中湯を投与した. 内服 3ヶ
月で改善傾向にあり継続. 5ヶ月で症状は 2割程度にな
り, 友人にも元気になったといわれるようになった. 同
時に, 当初訴えていなかったが以前からあった味覚障害
が回復したとの報告を受けた. 【結 語】 虚労を目標
に黄耆 中湯を用いることで, 諸症状の改善を得た. ま
た, 味覚障害に対しても有効であったことから, 本方の
応用の目標の一つとして 慮する必要性が示唆された.
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Kitakanto Med J
2009;59:175∼178