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核医学を通してつながる群馬とアジアの絆の構築を目指して

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Academic year: 2021

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核医学を通してつながる群馬とアジアの絆の構築を目指して

口 徹也

1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科放射線診断核医学 入局まで 私は,群馬県高崎市の農村地域 (旧群馬郡榛名町)の出身 で, 医師という職業に憧れたのも, 地元の内科の開業の先 生の影響も大きく, 卒業後は広く患者さんを診療できる内 科医になることを えていた. そのこともあり, 地元の群 馬大学に入学したのだが, その流れの中で, 現在の専門の 核医学に興味を持つことになったのは, 私が医学部の 3年 生でポリクリに回った時に出会った遠藤啓吾教授の影響が 最も大きかったと思う. 遠藤先生は, 京都大学より新任の 教授としてこの年に赴任され, 私の所属するポリクリ班が 遠藤先生に最初に御指導頂いた班であった. その後に始 まった先生主催の New England Journal of Medicineの抄 読会に参加し, 先生の学者としての風格に間近に触れすぐ さま魅了されたのはもとより, 抄読会後の食事会などで気 さくで謙虚なお人柄に触れることとなり, 先生の専門とす る核医学に大きな興味を抱くこととなり, 入局を決めた. 研修医,大学院,アメリカ留学時代 核医学教室に入局の前に, 内科研修を行ってくるよう御 指示をいただき,本学第三内科 (当時)の成清卓二先生のご 指導にて, 腎臓, 血液疾患を中心に内科研修を行った. その 後, 遠藤教授の主催する核医学教室に 1994年 4月より移 り, 大学院生として RI 標識モノクロナール抗体を用いた 癌診断および治療への応用に関しての研究を開始した. 抗 CD20抗体による悪性リンパ腫モデルマウスを用いた動物 実験や Tc標識抗顆粒球抗体 (抗 NCA95キメラ抗体) による骨髄シンチグラフィの骨髄増殖性疾患診断における 有用性に関して臨床研究を行い, 学位を頂いた. 大学院 4年生の初夏の頃より, 遠藤教授と井上助教授の ご高配にて, 米国 MD アンダーソン癌センターへ留学の機 会を与えられた. 核化学が御専門の David J. Yang 先生の ご指導の下, 新しい核医学診断薬の研究に従事した. その 後, 研究費の都合もあり, ミシガン大学医療センターに移 り,Richard L.Wahl先生のご指導の下,RI 標識抗体の研究 を継続した. テキサスから 1300マイル (約 2000 km) も離 れたミシガン州アナーバーに, 乗用車の後ろに引っ越し用 トラックを牽引し妊娠中の妻と家財道具一式を持って引っ 越したのは大変ではあったが, 楽しい思い出である. 研究 室には, 日本より 3名の日本人医師も留学 (菅原, 中駄, 東 先生) しており, ヒューストンとはうって変わって, 日本語 が話せる社会で楽しく研究を続けることができた. 翌年の 初夏には, 長男に恵まれ, 1999 年の秋に長男と 3名で帰国 した. 帰国してから 「留学から帰るまでがいちばんええんや.」とよく遠藤先 生に言われたことを覚えているが, 本当に留学時代は人生 ―307― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成27年8月20日 修正 平成27年8月21日 採択 平成27年9月3日 論文別刷請求先: 口徹也 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科放射線診断核医 学 電話:027-220-8401 E-mail:tetsuyah@gunma-u.ac.jp

流 れ

2015;65:307∼308

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の中で最も輝く季節であり楽しかった. が, 留学時代とは 変わって,日本での臨床は本当に忙しい.2000年より,保 学科の教務員として群馬大学のスタッフとして採用してい ただき,2001年より核医学教室の助手となり,それ以後,お 陰様で現在の核医学科で働かせて頂いている. 核医学科で は, PET 診断, RI 治療を 2つの柱として診療, 研究を続け て来た. I-MIBG は, 神経堤 (neural crest) が発生母地と なる神経内 泌腫瘍である褐色細胞腫, 傍神経節腫, 神経 芽細胞腫などに集積するため, このことを利用して, I の 放出する β線を用いて癌細胞内部より選択的な照射が可 能となるが, 2003年より稼働開始となった新しい RI 病棟 にて, 金沢大学, 北海道大学, 鹿児島大学など国内 4施設と ともに群馬大学でも I-MIBG 治療を開始した. 2013年ま でに, 東日本全域よりご紹介頂いた 45名の悪性神経内 泌腫瘍の患者に合計 110回の治療を行った. 一方, PET 診断では, 1999 年当時に本学で富吉, 井上ら により開発された, フッ素 18標識アルファメチルタイロ シン ( F-FAMT)の臨床研究を継続している.PET 検査で 一般的に われるフルオロデオキシグルコース (FDG) と は違い, F-FAMT は癌に特異的に発現する L 型アミノ酸 トランスポーター (LAT1) を介して輸送されるため, より 特異性の高い癌診断が可能となることがわかってきた. 当 科では, 顎口腔科学講座からの大学院生とともに, 主に口 腔腫瘍での有用性に関して臨床研究を行った. これからの展望 2011年に遠藤教授が退官され, その後は, 現在まで対馬 義人教授の下で, 核医学 野を担当させて頂いている. 高 齢化が進み, 癌の治療も多様化しており, その中で RI 治療 への期待も高まっているが, 一方, I によるバセドウ病や 甲状腺癌の治療でさえも行える施設は十 とは言えず, 本 邦における RI 治療体制の整備は急務であり, 今後も核医 学科の外来, 入院機能を充実させていきたい. 一方, 今まで 行ってきた悪性神経内 泌腫瘍の治療に関しては, 医療上 の必要性の高い抗がん剤を用いる先進医療 Bの枠組みの なか,「悪性もしくは再発性褐色細胞腫を対象とした I-MIBG 内照射療法に関する研究」のテーマにて, 金沢大学 の絹谷清剛教授を代表研究者として新たな多施設共同研究 を継続していく予定である. 大学の国際化は本学にとっても重要課題であり核医学を 通じてアジアの医療の発展に群馬大学が寄与していくこと の意義は大きいと えられる. 当科では, アジアにおける 核医学発展のための指導的人材養成プログラム (ANMEG program) を通じて, 2013年秋よりアジアの国より 5名の 国費留学生を含む大学院生を毎年受け入れ, 研究指導を 行っている. 特色の一つに, 博士課程の核医学を専門とす る医師を受け入れることに加え, アジアの病院の現場で働 く核医学専門の放射線技師を大学院修士の学生として受け 入れることである. 本年 9 月に第一期の修士課程の卒業生 が無事卒業しインドネシアに帰国予定である. 本プログラ ムは 5年にわたり新たな留学生を受け入れるので, これか らもさらに留学生数は増えていく. 大学院生の指導には, 言葉や文化の壁に加え, 多くのスタッフの手間も要し困難 を伴うが, 彼らの指導を通じてアジアの国々との核医学を 通した国際 流が進むことに加え, 我々自身もアジアの核 医学の指導者として成長していけるという大きな成果も期 待できる. これからも, 多数の群馬大学関係の方々とのご 縁に支えられ, 教室員一同, 力を合わせて, このプログラム を発展させていきたいと思いますので, 御支援, 御指導の 程よろしくお願い申し上げます. 参 文献

1. Higuchi T,Inoue T,Sarwar M,et al. Tc-labelled chimer-ic human/mouse anti-granulocyte antibody bone marrow scintigraphy:a preliminary clinical study. Nucl Med Com-mun 1998;19:463-474.

2. Higuchi T, Yang DJ, Ilgan S, et al. Biodistribution and scintigraphy of[ In]DTPA-adriamycin in mammary tumor-bearing rats. Anti-Cancer Drugs 1999;10:89-95. 3. Nakazawa A, Higuchi T,Oriuchi N,et al. Clinical

signifi-cance of 2-[(18)F]fluoro-2-deoxy-D: -glucose positron emission tomography for the assessment of (131)I-metaiodobenzylguanidine therapy in malignant phaeo-chromocytoma. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2011; 38: 1869-1875.

4. Tomiyoshi K, Amed K, Muhammad S, et al. Synthesis of isomers of F-labelled amino acid radiopharmaceutical: position 2-and 3-L- F-alpha-methyltyrosine using a separa-tion and purificasepara-tion system. Nucl Med Commun 1997; 18(2):169-175.

5. Tomiyoshi K,Inoue T,Higuchi T,et al. Metabolic studies of[ F-alpha-methyl]tyrosine in mice bearing colorectal carcinoma LS-180. Anti-Cancer Drugs 1999;10(3):329-336. 6. Kim M,Achmad A,Higuchi T,et al. Effects of

intratumor-al inflammatory process on F-FDG uptake: pathologic and comparative study with F-fluoro-α-methyltyrosine PET/CT in oral squamous cell carcinoma. J Nucl Med 2015;56:16-21.

7. Kinuya S,Yoshinaga K,Higuchi T,et al. Draft guidelines regarding appropriate use of I-MIBG radiotherapy for neuroendocrine tumors. Ann Nucl Med 2015;29:543-552. 8. Shintawati R, Achmad A, Higuchi T, et al. Evaluation of bone scan index change over time on automated calculation in bone scintigraphy. Ann Nucl Med 2015 in press. 核医学を通してつながる群馬とアジアの絆の構築を目指して

参照

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