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商品貨幣の生成に関する一定理

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(1)

商品貨幣の生成に関する一定理

近  藤

学  1.貨幣をたんなるシンボルとみる見解(nominalism)は別として,これを 商品流通の発展の中から何らかの意味で必然的に生成されてきた一商品とみる 見解の中で,この「必然性」の理解をめぐって,基本的に異なる二つの見解が 存するものと思われる。一つは,貨幣便利説とも呼ぶべきものであって,貨幣 は直接的な現物交換がかかえている困難(すなわち商品所有者が互いに相手の 所有する商品を直接に欲するという幸福な例外以外には交換は成立しない)を       ユ  打開するための手段として生じてきたとする見解である。他の一つは,マルク スの見解であって,貨幣とは「商品のうちにつつみこまれている使用価値と価       コラ 値との内的対立」が回り道の論理によって単純な価値形態として現象し,この       ヨ  形態にふくまれている「相対的価値形態と等価形態との対立」が現実の交換過 程の矛盾に媒介されて次第により完成された価値形態をつくりだし,ついセこは       の 一つの商品を一般的等価物として措定するに到ったものとみるものである。こ こでマルクスの言う“交換過程の矛盾”というのは,貨幣便利説の言うような       ら  意味ではなく,次のような意味である。あらゆる商品は「使用価値として実現 1)貨幣便利説の一典型は次のようである。「貨幣は,本質的には物々交換よりも便利  な方法で,人々が財やサービスの交換がでぎるようにするための工夫である」.Dues。  enberry (1) p. 2. 2) Marx (2) (1) p. 83. 3) Marx (2) (1) p. 91. 4)Marx〔2)(1)p。117.尚,緬値形態論およびその方法については見田〔3〕第4  章が有益。 5)マルクスの交換過程の矛盾についての説卿こは,貨幣便利説的な解釈の余地を許す  部分と,以下でのべるような部分の二つが存在しているようにみえる。しかしながら  明らかにマルクスの力点は後者にあると思われる。Marx〔2〕(1)p.115∼6参照。

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 110  彦根論叢 第241号        のされるまえに,価値として実現されなければならない」が,そのためには自己 の価値を社会的労働として表示するためのあれこれの等価物を(したがって交        の 換比率を)見つけなければならない。ところがすべての商品所有者が自己の商 品を一般的等価物として特殊的等価物をもとめようとすれば,どの商品も一般 的等価物となることはできず,したがってすべての商品の交換比率は不明とな り,全面的な交換不能に陥る。そしてこの矛盾を解決するために,「ある一定 の商品を除外して,この除外された商品で他の全商品が自分たちの価値を全面     8) 的に表わす」ようになったと言うのである。  マルクスの所説に関して注意しておくことは,も.し貨幣が存在しなかったな ら,商品交換が十全におこなわれないというのではなく,論理的に不可能にな るとみているという点であろう。このようなマルクの見解を本稿では貨幣必然 説と呼んでおこう。  貨幣必然論からみた貨幣便利説の難点は,貨幣生成の蓋然性を説明するが, その必然性を明らかにしえないという点である。すなわち次の二つの場合に は,貨幣便利説はとうてい貨幣生成の必然性を積極的に主張しえない。  σり 間接交換を許し,それにともなう取引諸費用が無視しえる場合。  ㈲ すべての交換者が自己以外のすべての商品との交換を欲している場合。 ㈲の場合の例として,A, B, Cの三者の交換において, A氏がB氏のB商品 を,B氏がC氏のC商品を, C氏がA氏のA商品を需要するという循環的なケ ースを考えてみよう。このとき,B氏はまずA氏との交換に応じでA商品を入 手し,これをさらにC氏と交換すれば,B氏は所望のC財を入手することがで きる。この例のように,適当に間接交換をくりかえせば,直接交換でなくても   尚『資本論講座1』p.230では交換過程の矛盾を貨幣便利説的に理解しているが一   面的であろう。〔4〕  6) Marx〔2〕p.115.  7) 「社会的労働の関連が個人的労働生産物の私的交換として実現される社会状態のも   とでこのような一定の割合での労働の分割が実現される形態,これがまさにこれらの  ’生産物の交換価値なのです。」〔5〕p,162∼3. .8) Marx〔2〕(1)p.116

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必要なものが入手できる。よって必ずしも貨幣は必要でない。  α)の場合には,すべての交換者は他のすべての交換者と使用価値という点で は直接交換可能な状態にあるから,貨幣便利説のいう困難ははじめから存在せ ず,したがって交換の困難を理由として貨幣生成の必然性を主張することはで きない。  逆に,貨幣必然説の難点は,すべての商品の交換が可能となるために,従っ てすべての商品の交換比率が決定されるために,ある一つの商品が商品貨幣と して排斥されなければならないとする根拠が具体的かつ直接的には明らかでは なく,“矛盾の解決”という形で言わば抽象的・一般的に,したがって天下り 的に与えられてしまっている点であろう。  そこで本稿では,貨幣必然説の立場にたちながら,貨幣一といっても実際 は商品貨幣のことであるが一発生の論理的根拠を積極的に明らかにしてみた い。その際,貨幣便利説の介入する余地を封じてしまうために,先述したα)の        の ケース,すなわち人々は「他人の使用対象にたいする欲望」が拡大・固定化し, 自らの生活欲求を充足するために,自己の商品とひきかえに他のすべての商品 を必要としているような経済を想定する。それは,交換がすでに「一つの規則       りの 的な社会的過程」となり, 「労働の生産物の少なくとも一部分は,ばじめから          ユ  交換を目的として生産」し,「それらの物が交換される量的な割合が,それら       ユコ  の物の生産そのものによって定まるようになる」,そのような経済である。別 言すれば,資本主義的商品生産の歴史的・論理的前提としての単純商品生産と それに照応する単純商品流通が,局地的に成立している経済である。  2.nコの社会的分業が成立し,それぞれ一つの商品生産に特化した自由な 小生産者達が,自己の所有する剰余生産物を局地的な市場で定期的に種々の商 品と現物交換している状況を考える。この局地的市場では,交換される同一商 品の交換比率はすべて同一と仮定する(一物一価の原則)。各商品の売り手は 同時に他のすべての商品の買い手でもある。このような経済主体をここでは交 換者と呼ぶ。商品ゴの売り手グループを交換者かと同一視し,交換者ゼから交 9)10)11)12) Marx (2) (1) p. !18.

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 1!2 彦根論叢 第241号 換者」への商品の取引量を 1]ijとかく。(i,」 =1…n;i≠の.∬‘ゴは簡単のため正:と仮定す る。これらの取引量:の全体は表1のような行 列をつくる。交換者iと交換者」の取引は二 重であり,      κ1L___→      o      o

       −

       Xl監        (i, 1’=1…n; i#」) と表わすことができる。交換比率ρ〃とは (・)ρ・一 チ(4ノー・…n・i≠」) −り乙 ・n 1 2 一””’””H’n O xユ2  ・…・…Xln X21 O ’ ・       .. Xn 一ln 。nユ___憂∵o 表! で与えられるn2一πコの比率のことである。すなわちそれは,商品iの1単位 と交換される商品」の大きさを示す。定義よりただちにわかるように,     pi’i :一fLr. (i,7’一一i・’・n; it」)       s)il・ であるから,すべての交換比率醐を決定するには,さしあたりn2−n/2コの 交換比率を決定すればよい。尚,以下の議論においては,ρガの表記において つねにκブが成りたつように表記するものと約束しておく。  まずn=3のケースを考える。(図1参照)3商 品の場合には,決定すべき交換比率の数はρ1 2・, ρ13,ρ23の3コであるが,しかるにたとえば  (2) Pi2’P23>Pi3 となったとしよう。この意味は,商品1を商品2     ¢

lz:“

O一.v. .@

図1 と1:ρ12の比率で交換し,さらに商品2を商品3と1:ρ23の比率で交換すれ ば,間接的に商品1を商品3と1:ρ12・ρ23の比率で交換したことになるが,他 方直接交換では商品1を商品3と1:ρ13の比率で交換しており,結局交換者1 にとっては間接交換の方が有利であり,交換者3にとっては直接交換の方が有 利であるということである。こうした状態がくりかえされるとすれば,交換者 1は交換者3との直接取引をやめて,間接交換に特化しようとするだろう。そ の結果交換者3はρ盈3の上昇を甘受せざるをえなくなり,結局商品交換経済は

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 (3) P12’P23==P13 の水準におちつこうとする傾向をもつであろう。あるいは(2)をかきかえて交換 比率の次のような性質     Pi2’P23’P31>1 に目をつけた何者かが,商品1を商品2,商品2を商品3,商品3を商品1に 交換すれば商品1の1単位が1以上になることを利用して,当の局地的市場で 大もうけをしたり,極端な場合には市場そのものを破壊してしまうこともあり   13) えよう。  さらにまた,間接交換と直接交換の較差〔2)に目をつけた商人があらわれ,     ρ13〈ρ養くρ鴬砦くρ12・ρ23 をみたすように比率協,ρ擬をえらびだし,        ρユ3*        P13 * th

交換者!と交換者3との取引を図2のように①   (亙⊃

媒介することによって自らも一定の利益を得,      図2 かつ交換者1と3の双方に経済的利益をもたらすことができる。

e

       (交換者1は ρ13より高い比率薦で商品3を入手できるし,交換者3は失われた販路を回 復することができる)。  このような種々の事情によって商品交換経済では交換比率は(3)のように,一 般の場合には  (4) ρゲρ魏=ρ瞬 (i,」,ん=1…n;κブ,iくll) なる傾向をもつものと考えられる。この傾向を交換比率の漂準化傾向と呼び,        ユの 交換比率を未知数とみた方程式(4)を,交換の三角方程式と呼ぶことにしよう。 商品の数が一般にnコ(n≧3)の場合には,交換の三角方程式の数は,交換者 を頂点とする三角形の数と等しくなるから ・…+(・+・)+(・+・+・)+…+(・+・+……n一・)一”(”一1 P@一2) となる。これよりn=3の場合には交換の三角方程式の数は㈲の1本であり, 13) 塩沢〔6〕p.5∼6. 14)塩沢〔6〕p.5ではこの関係を,交換比率は推移的であると表現している。

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 114  彦根論叢i第241号 決定すべき交換比率の数は3コであるから,任意の2コの交換比率をパラメー ターとして定めてやれぽ,他の一つは(3)より自動的にもとまることになる。  3.商品の数がltコという一般の場合には, n?一n/2コの交換比率をすべて 決定するためには,最小必要なパラメーターの数と,交換の三角方程式の数は 一体どれくらいであろうか。この答は次の定理により与えられる。  〔定理〕 nコ(n≧3)の商品をもつ現物交換経済において,交換比率は標準 化傾向をもつとする。このときnコの商品の交換が全面的に可能となるために 必要なn2−n/2コの交換比率ρ,ノ(t,戸1…n;κのを決定するためには少なく ともn−1コの交換比率をパラメーターとし,(4)の交換の三角方程式が少なく とも@一1)(n−2)/2コ必要である。すなわち 商品の数 00疋4 決定すべき交 換比率の数 冗 り06・一

D

  ︵ 2 交換の三角方 程式の数

  1

  4

n(n−!)(n−2)

  6

交程 な方 要角 必三数 小のの 最換式   1   3 (n−1)(n−2)

  2

パの な︻ 要タ 必[ 小メ 最ラ数 1 ワ勾3・: が成りたつ。  注:パラメーターの数と最小必要な交換の三角方程式の数を合計すれば,決 定すべき交換比率の数に一致する。  (証明) 数学的帰納法による。  n=3のとき,すでにみたように定理は成立する。n=kのとき,定理の成立を 仮定する。したがって,k(k−1)/2コの爾(∫」=1…k;i<」)が,最小でn−1 の交換比率をパラメーターとし,最小で(fe−1)@一2)/2コの交換の三角方程 式をえらんで完全に決定されているものとする。  次にη=妊1の場合には,新たに交換者k+1と新商品々+1が登場すること により,既存のk人の交換者との間にkコの取引関係が発生するから,決定さ るべき交換比率はρlk.1,ρ2k,x,…,ρkk,1のfeコ増加する。したがってn= k+1 のとき決定されるべき交換比率の総数は,

(7)

(6) Tkg(!1:Ll)一k−1)+k,.kg(X:.1,)k+1) である。しかるに帰納法の仮定によりすでにk(k−1)/2コの交換比率は既知で あるから,kコの交換比率(すなわちρlk.1,…,ρkfe.Dのみを決定すればよい。 このため,各未知数ρlk.1,…,ρkfe.1をふくむすべての交換の三角方程式を書ぎ 下してみると,     liii iiSilELIiili ) k−i一  (7)

    雛:1三蜘…・

    Pk一偽●ρkla+[=ρ彦一!k+[   1コ であるから(ただし(7)において両は既知であることを示す),新しいkコの 未知数を含む交換の三角方程式の数は     ・+2+…+k一…k(与11 コつくることができる。よってπ=姓1のときの交換の三角方程式は全部で

(・)垂学一2)+k(㌻1)一(細1(ん一△

となる。  ところで(7>をみると,kコの方程式をてきとうにえらべば,ρlk.1を決定す るためにはρ2k。],.p2k.]を決定するためにはρ3k。1…というように次々と連環 しており,     Plk+1−P2k+1〈一’一’’”‘’ePk−1h÷1ePkk一くtM一一JPIk−1 となっている。しかも最初のk−1コの方程式をすべて乗じて(4)を考慮すれば k番目の方程式が導かれるから,このfeコの方程式のうち1コは独立でない。 したがって,ある1つの交換比率(例えばρhk,i)をパラメーターとして扱え ば,残りのk−!コの未知数は次々と,最小ん一1コの交換の三方程式によっ

(8)

 116 彦根論叢 第241凡 て決定することができる。 (パラメーターの選び方は鳶通りある)  結局,n=k+1のときは,新しいkコの未知数ρlk。1,…ρkk.1を決定するた めに,少なくとも1コの交換比率をパラメーターとし,少なくともk−1コの 交換の三角方程式が新たに必要になる。よってn=k+1のときは,全部で  (9) (fe−1) 十1 =k コのパラメーターが少なくとも必要であり,最小必要な交換方程式の数は, ao) apt−i)(fe−2)+(k−i)=!llgttkE:1)k−i) となることがわかる。(6)(8)(9)⑩より定理は証明された。    Q.E. D.  4.定理のもつ意味を考えてみよう。定理の主張は,nコの商品を現物で交 換しあう経済では,適当にn−1コの交換比率を定めてやれば,n(n−1)/2コ のすべての交換比率が(標準化傾向が存在するかぎり)決定されてしまうとい うことである。例えばn= 100とすれば,わずか99コの交換比率を決定するだ けで,4,950コの交換比率はすべて決定され,任意の商品どうしの交換が可能 となるというのである。こうした驚嘆すべき事実が成立するのは,次のような 状況を考えてみるとよい。

/ptg7xi

(2)      P25 脅5 急

e.k, 一@

   図3−a

     o

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@ 的⑤ 図3−b OiS つ申 @ 5  図3−aは5商品が相互に交換されている状況を図示したものであるが,決 定すべきi交換比率の数は10コである。しかるにこの10コの交換比率を決定する ためには,図3−bのように,どれか一つの商品で他の商品との交換比率を統

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一的に表示し,ρ12,ρ13,ρt4,ρ15の4つ交換比率を定めてやればよいという ことがわかる。別言すれば,図3−bは,商品1が一般的等価物=商品貨幣と して,交換過程において特別の地位を獲得した状況を表わしているのである。 一般に,nコの商品を交換する現物経済においては,ある一つの商品(商品1 としよう)を商品貨幣として排斥し, (11) λゴ=⊥(プ=2…。)       Pv’ とおけば,λゴは商品ブの1単位と交換される商品1の量を示す。すなわち,1 以外のすべての商品は,その価値を商品1の商品姿態の量によって統一的に表 示される。このような:Rノを商品ブの(商品1による)実物価格と呼ぶことに しよう。すると〔定理〕の主張は,ある一つの商品を商品貨幣として排斥し, この商品貨幣と他のn−1コの商品との交換比率,したがってn−1コの実物 価格々を定めることができれば,すべての交換比率が確定し,全面的な交換 が可能となることを示唆しているものと考えられる。(実物価格λiの決定に より商品:貨幣1は貨幣商品に転化する)  5.次に考察すべき課題は,n−1コの実物価格λf(ブ=2…n)の決定の問題 である。本稿ではこの問題に十分立ち入ることはしないが,労働価値説の意義 という視角から,若干の論点を提示しておこう。  周知のように交換比率の説明原理としては,二律背反的な二大学説一労働 価値説と限界効用理論一が存在すると考えられている。まず限界効用理論に よる実物価格λjの決定を論じ,後に労働価値説はよるその決定を論じよう。  実物価格々は,定義(1),⑳により (12) 2j=#’」 (」’=2…n)       vカ であるから,実物価格を決定するためには,@12,1]13,…,xln)と(x21,x31,…, X.Dといった各交換者間の取引量を決定すれぽよい。  今,交換者ブの効用関数を     ひ=Uゴ(ごソ1,・。㍉∠ソ孟) (拶1…n) とおく。図は交換者ブが期首に保有又は実際に消費可能な商品iの量である。

(10)

 118  彦根論叢 第241号 各効用関数は簡単のために一次同次関数と仮定する。交換者1と交換者」(ゴ= 2…n)の取引に注目しよう。rciノ, x]1を未知数と考えて,交換が交換者の自由 意志によρて行なわれているかぎり,」=2,…,πに対し     こ刀(ツ},… ,ツ㌔)<σ1(yl−Xlノ,… ,ツし一トrcゴ1,・一)     ぴ(ツi㌧…,yA)くひノ(ツf+Xl」,…,y;一5C」1,…) が成立しなければならない。すなわち交換の前後を比較すれば,交換によって 効用水準は増大しているはずである。すると効用関数の一次同次性の仮定より 」=2,…,ηに対し      6Ui        eUi     一∂ツ「κげ+∂ツ「灘力>o  (!3)      ∂U」    ∂ぴ        . z;ja>O        ’X「 V’一      ∂ツ1        0yf

戯立す・・ここで鑑鮫継ゆ商品記す・限界効用であ・・

 連立不等式㈱が1:1i>0,」じヵ>0の解をもつための必要十分条件は,

    緋〉α器/謬〉霧/毅

となることである。すなわち交換の対象となる商品の限界効用が正で,また交 換者1と交換者」とを比較すれば交換者1の方が商品1よりも商品」の方の限 界効用を相対的に高く評価する(交換者1の商品1に対する商品」の限界代替 率が交換者」のそれよりも大)ということである。この条件は交換が行なわれ る限り妥当なものである。  すると実物価格2フは,働に注意して ㈹毅/怨紅く・・〈諭/S’;,一σ一・…・) なる制約を満たさねばならない。  したがって,限界効用理論は(14式が示すように,単純商品経済における実物 価格んの決定について,それが存在すべき一定の範囲を説明する理論である と考えられる。  次に労働価値説よる実物価格寿の決定をみよう。労働価値説によれば,単 純商品経済では等価交換が行なわれる。したがって商品1の価値をtl,商品」

(11)

のそれをなとすれば,  a5) ti,xij=tJ・cia (」’=2…n) が成立する。よって実物価格は簡単に, Q6) Rti=一fL,一 (」‘一一2…n) と求められる。  労働価値説に関して注目すべきことは,限界効用理論が実物価格λノの決定 を,交換者の主観的要因によって決定されるとするのに対し,労働価値説は, むしろλフを生産過程の客観的要因(投入係数)によって定まるものとみてい るということである。だが,一体⑯式が成立する前提であるところの商品の等 価交換の主張⑮はどのように根拠づけられるのだろうか。  単純商品経済における実物価格あの決定および等価交換の根拠については,        ヱうタ すでに置塩によってその説明が与えられている。今,一時的な実物価格の決定 を放棄して,それらはさまざまに変動しているものとして,それらの実物価格 が長期平均的に落ちつくべき実物価格λ∵σ=2…n)の決定を考えよう。ただ しλ1…1,すなわち商品1の1単位と交換される商品!の量は1であるから, 謹三1である。単純商品経済では小生産者の自由な競争によって,長期平均的 には所得率(実物価格で評価した所得を,生きた労働時問で除したもの)の均 等化傾向が支配する。すると実物価格対σ=1…n)は,  ⑰  湾一Σ袴鰯=τ∫α (i,ブ=!…n)       ヨ なる制約に服する。ここで砺は商品ブを単位生産するのに必要な商品ガの投 入係数,τ,は同じく労働投入係数である。αは均等所得率である。働より     (÷)一¥(亨)a・j+Tl(i・・1一・…n) となるから,結局         暦     λ哲       =tゴ (戸2…n)       ==t[J     α        α ・な・・と・・わか・・准・であ・か・・一 ヲしたが・て・ 15)置塩〔7〕第!章7.尚,本稿でいう実物価格ηは同書では「価値価格」と呼ば  れている。

(12)

 120    彦根論叢i 第241号

⑱ ・弩1(ブー2…n)

をえる。⑱と⑫より,λゴ=袴(ブ=2…・・)の場合には㈲,すなわち等価交換関係 が成立することがわかる。  結局,単純商品経済では,小生産者間の自由な競争によって現実の一時的な 実物価格々は長期平均的な実物価格暦によって規制され,長期平均的には諸        商品の等価交換が実現するということがわかった。したがって⑬式の意味は一 時的な実物価格ではなく,長期平均的な実物価格湾が価値法則に支配される ということを示していると解釈しうるのである。 (同様に取引量も長期平均的 な意味に解されるべきである)  以上の考察をもとにして,さしあたり次のように結論することができよう。  労働価値説においては,交換者∫は産業ゴと同一視され,時間視野は長期平 均的な範囲に拡大され,また交換は私的・個別的なものではなく,産業連関的 な,社会的な生産過程と一体的にとらえられている。したがって,一口に「交 換比率」の説明原理としての労働価値説と限界効用理論といっても,交換や交 換比率についての両者の意味内容は大きく異なっておりむしろ両者はその理論 の目的・課題・論理的位相を異としていると考えるべきである。したがって単 純に両者は二律背反の関係にあるのではなく,むしろ相互補完性をもちうるの である。だがしかし,両学説が相互補完性をもちうるためには,

⑲ 1舞/誰く・弩1〈霧/1郵(」一・…・)

なる条件が必要不可欠である。すなわち,限界効用理論は一時的な実物価格決 16) エンゲルスは明快に次のように述べているる。「ひと言で言えば,マルクスの価値  法則は,およそ経済法則というものが妥当するかぎり,単純商品生産の全時代にわた  って,すなわち資本主義的生産形態の出現によって単純商品生産が変化させられる時  まで,一般的に妥当するのである。それまでは,価格は,マルクスの法則によって規  定される価値に向かって引きつけられ,この価値を中心として振動するのであり,し  たがって単純商品生産が十分に発展すればするほど,それだけますます,外部の暴力  的掩乱によって中断されない比較的長い期間の平均価格は,無視してもよいひらきの  範囲内で価値と一致するのである。」Marx〔2〕(5)p.1148.

(13)

定の範囲を与え,労働価値説はそれらの実物価格が長;期平均的に落ちつくべき 価格変動の重心を与えておりその長期平均的実物価格は単純商品経済の範囲内        17) では価値法則によって明白に支配されているのである。  条件⑲はさらに次のことをも含意している。すなわち個々の交換者の自由な 意志にもとつく自発的な行動といえども彼らの行動は(単純)商品経済の生産 過程と密接不可分な関連をもち,むしろ彼らの意識さえも,経済の実体的要因 に規制され,これを反映するにすぎないのであるということである。  このように考えてくると,限界効用理論は,十全な価格理論を提供している というよりはむしろ労働価値説によって一般的な基礎を与えられた土台の上に 構築され,位置づけられるべき,特殊理論あるいは部分理論として正当に評価 されるべきものであるまいか。       (1986.10。4)       参 考 文 献 (1) Duesnberry, J. S., f‘MONEY AND CRLqDr7T: JMPACT AND CONTTROL”,   Prentice−Hall, lnc., 1964. (2) Karl Marx−Fredich Engels Werke, Band 23, lnstitut fur Marxismus−Lenmismus   beim ZTK der SED.(マルクス=エンゲルス全集刊行委員会訳『資本論』(!), t5),大   月書店.1968年) 〔3〕見田石介『見田石介著作集第四巻」大月書店,1977年。 〔4〕 遊部久蔵他編『資本論講座1』青木書店,1963年。 〔5〕 岡崎次郎訳『マルクス=エンゲルス資本論書簡2』大月書店,1971年。 〔6〕塩沢由典『数理経済学の基礎』朝倉書店,1981年。 〔7〕置塩信雄『マルクス経済学』筑摩書房,1977年。 〔8〕藤森頼明「現代価値論の研究(1)」『城西経済学会誌』第17巻第1号,1981年。 〔9〕岡  稔「社会主義のもとでの商品生産と価値法則」『資本論講座1』所収.1963   年。 〔10〕宮鍋 幟「社会主義のもとでの商品・貨幣関係」『(一橋大学)経済研究』第25巻第   2号,1974年。 17)賃労働が存在する本来の資本主義的商品生産の場合や独占資本主義社会主義の下  で価格がどのように価値法則に規制されるかは興味深い問題である。いわゆる転形問  題や独占価格一の価値法則による規制等については,置塩〔7〕第1章,第4章,およ  び藤森〔8〕第2章などを参照。社会主義のもとでの価値法則等については,岡〔9〕  および宮鍋〔!0)を参照。

参照

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