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太陽光誘起による光ファイバからのレーザー発振

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Academic year: 2021

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1.はじめに 太陽光励起レーザーの歴史は古く,1963年 に初めて発振した[1] 。半世紀後の今日,太陽光 励起レーザーは太陽光エネルギー高度利用の一 つの形態になりうると再度注目され,様々な応 用を見据えた研究が始まっている[2―5] 。太陽光 励起レーザーは励起源に太陽光を使用し,「良 質なエネルギー源」になる可能性を秘めてい る。しかし,レーザー発振に至っているが,低 いレーザー効率,レーザー媒質の冷却,低い レーザービーム品質など課題がある。 まず,ここでの我々の太陽光励起レーザーの 定義をしておきたい。!1一次エネルギー源が太 陽光,!2太陽光で直接レーザー媒質を励起,!3 最終出力がレーザー光である。基本的な構成要 素は,太陽光集光系,レーザー構造,レーザー 媒質である。本稿ではレーザー構造とレーザー 媒質の検討について詳しく述べ,結果をもとに 構築した太陽光励起ファイバレーザーの発振特 性について紹介する。 2.太陽光励起レーザー構造の検討 我々は光ファイバ型の太陽光励起レーザーに 着目した。太陽光はレーザーの励起光としては パワー密度が低く(100mW/cm2 ),太陽光集 光比には限界が存在するため,いかに効率よく 励起できる構造にするかが課題である。ファイ バ型レーザーには以下の特徴が挙げられる。!1 ガラスの高い透明性,励起光を閉じ込める導波 路構造,長い相互作用長,および信号光と利得 媒質の高いモード整合効率を利用し,高効率な 励起が可能,!2クラッドを二重に設け内部クラ ッド部分に太陽光を導入・伝搬させ,コアで 徐々に吸収させるダブルクラッド構造を用いる ことが可能(これは光の輝度圧縮となり,集光 系の制約条件を緩和する),!3比表面積が大き いため冷却性能に優れる(従来の太陽光励起 レーザーは強制冷却が必須),!4レーザー媒質 からのエネルギー引き出し効率が高い。以上の ような特徴から太陽光励起レーザー構造には, ファイバ型が適していると考えた。 3.レーザー媒質の検討 AirMass1.5の太陽光スペクトルを考慮 し て,特定の波長に変換するときのエネルギー変 換効率を考えた場合,波長約1100nm で最大 〒480―1192 愛知県長久手市横道41番地の1 TEL 0561―71―7781 FAX 0561―63―5426 E―mail : mizunos@optics.tytlabs.co.jp 1)

Toyota Central R&D Labs.,inc.2)

Toyota Technological Institute

S

.Mizuno,K.Hasegawa,H.Ito

1)

,T.Suzuki and Y.Ohishi

2)

Sunlight

―induced laser oscillation from an optical fiber

水 野 真太郎,長谷川 和 男,伊 藤

1)

,鈴 木 健 伸,大 石 泰 丈

2)

1)(株)豊田中央研究所,2)豊田工業大学

太陽光誘起による光ファイバからのレーザー発振

(2)

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 㻟 㻜㻜㻡㻜 㻜㻣㻜㻜㻥 㻜㻜㻝 㻝㻜㻜㻝㻟 㻜㻜㻝㻡㻜 㻜

Intensity (arb. units)

Wavelength (nm) Infrared spectrometer UV/Visible spectrometer Integrating sphere Computer Solar Tracking • Altazimuth mount • Condenser lens Sample Ti:sapphire laser (a) (b) 400 600 800 1000 1200 1400 In te ns ity d iff er en ce [a rb .u ni ts ] Wavelength [nm] Em is si on Ab so rp tio n 4F 3/2Ѝ4I9/2 4F 3/2Ѝ4I11/2 4F 3/2Ѝ4I13/2 Sp ec tr al in te ns ity [a rb .u ni ts ] w ithout sample w ith sample の変換効率が得られる。Nd3+ を添加したレー ザーはそれに近い1060nm 付近で発振実績が あり,また低しきい値化に有利な4準位系レー ザーであることから,Nd3+ イオンは太陽光励 起レーザーの有望な活性イオンと考えた。Nd を添加したガラス材料は核融合用レーザーやフ ァイバレーザーとして応用されてきたが,励起 源に半導体レーザーやランプなどの高輝度光源 が用いられており,広帯域で低パワー密度の太 陽光の場合のガラス材料検討は少ない。我々は 様々な Nd 添加ガラスに対し,吸収断面積,蛍 光断 面 積,蛍 光 寿 命,Judd―Ofelt 解 析,レ ー ザーや太陽光を励起源とした発光量子効率など の評価を行い,太陽光励起レーザー媒質として のポテンシャルを調査した。特にファイバ化が 可能なホストガラスとしてボロシリケートガラ ス,テルライトガラス,フッ化物ガラスについ て検討した。本報では,我々が評価した範囲内 で最も優れた特性を示した Nd 添加フッ化物 (ZBLAN)ガラスについて述べる。 4.発光量子効率 太陽光下でのガラスの光学特性を明らかにす るために,太陽や各種光源を励起光源にできる 発光量子効率測定装置を構築した(図1)。太 陽を経緯台で追尾し,レンズで太陽光を光ファ イバへ取り込んだ。太陽光を積分球内へ導き試 料に照射した。吸収・発光スペクトルは測定波 長帯域の異なる2台のマルチチャンネル分光光 度計で測定した。量子効率の導出方法は文献[6] に示した。 図2に太陽光照射時に0.5mol.%の NdF3添 加 ZBLAN ガラスを積分球内に置いた場合と置 いてない場合のスペクトル(a),およびそれら の差スペクトル(b)を示す。約850nm 以下 の可視・近赤域には Nd イオンに起因する離散 的 な 吸 収,約890nm,1050nm,1300nm に は4 F3/2を始準位とする発光が確認された。 図3に上記装置を用いて測定した NdF3添加 ZBLAN ガラスの各種発光量子効率を示す[7] 。 太陽光(ηns)と Ti : Al2O3レーザー(973nm) (η973)を励起光としている。また,Ti : Al2O3レー ザー励起で実測した発光寿命と Judd―Ofelt 解 析の結果を用いて算出した輻射遷移量子効率 (ηr)も示してある。ηrは x=0.5mol.%以下で 誤差の範囲内で100% であり,非輻射緩和の影 響は小さいことを示している。一般的に酸化物 ガラスよりも低いフォノンエネルギーを持つフ 図1 積分球を用いた太陽光照射下の量子効率測定装 置 図2 太 陽 光 照 射 時 に(a)0.5mol の NdF3添 加 ZBLAN ガラスを積分球内に置いた場合と置い てない場合のスペクトル,(b)差スペクトル 35

(3)

0.1

1

0

20

40

60

80

100

NdF

3

content, x [mol.%]

Qu

an

tu

m ef

fici

en

cy

[%]

r 793 ns

η

η

η

ッ化物ガラスは,非輻射緩和確率が小さいこと が知られている。x!3% では濃度消光による 減 少 が み ら れ た。η793は 最 大 で88% で,Czo-chralski 法で合成した Nd3+:YAG 結晶を波長 514.5nm で励起した場合に得られた量子効率 90% と同等である[8] 。ηnsは x=0.5mol.%で最 大を示し70% であった。しかしηr,η793とは異 なり,低 x 領域で減少する傾向が見られた。 これは低い添加領域では,発光に寄与しないホ ストガラス吸収の割合が増加し,量子効率の低 下を起こしていると考えられる。ここではデー タを示さないが,テルライトガラスの場合,太 陽光波長域でホストガラスの吸収が大きく,ηns の低下が顕著であった[9] 。 これまでの検討から,太陽光励起レーザー媒 質には,ファイバ化が可能な熱的安定性を有 し,可視域に大きな吸収がなく,低フォノンエ ネルギーで発光効率の高いガラスであることが 重要であることが明らかとなった。フッ化物ガ ラスは,そのような観点から太陽光励起ファイ バレーザー用媒質として有望な候補である。 我々は Nd 添加 ZBLAN ガラスを用いて光ファ イバを試作し,自然太陽光を用いてレーザー発 振を試みた。 3.太陽光励起ファイバレーザーの発振特性 図4に太陽光励起ファイバレーザー発振実験 の概略図を示す[10] 。太陽光の集光光学素子には 高い集光倍率が比較的容易に達成でき,色収差 がない軸外し放物面鏡を採用した。今回用いた 軸外し放物面 鏡 で 達 成 さ れ る 集 光 倍 率 は 約 10000倍集光された太陽光はファイバ端面に入 射される。試作した Nd 添加 ZBLAN ファイバ はダブルクラッド構造で,コア径はシングル モ ー ド 設 計 で5μm,第1ク ラ ッ ド 径 が125 μm,ファイバ長が7.5m である。ファイバ両 端に設置された共振器ミラーの反射率は,波長 1050nm において98% である。これらのシン プルな光学系を経緯台に設置し太陽を追尾させ た。 multimode fiber direct sunlight Reflecting mirrors R=98%@1050nm T=95%@400-850nm

Nd-doped fluoride (ZBLAN) glass fiber 5/125/200μm㽢7.5m (Single mode design) Without Active Cooling

long pass filter Off-axis parabolic mirror

Concentration ratio: 10626 No chromatic aberration power meter lenses Altazimuth mount optical spectrum analyzer 50.8mm ф 図4 太陽光励起ファイバレーザー発振実験の概略図 実験は青空に時折積雲が通過する空のもとで 行った。Nd 添加 ZBLAN ファイバ透過前後の スペクトルを図5に示す。ZBLAN ファイバ入 射直前の直達日射太陽光スペクトルは Bird モ デルによって算出した[11] 。ファイバ透過後のス ペクトルに1050nm 付近に強いレーザー発振 線が確認された。350nm―950nm には Nd イオ ンの4f 電子遷移に基づく吸収線が見られ,複 数の波長帯では太陽光が吸収されきった。一 方,約410―510nm,590nm―725nm 付 近 で は 透過光があり,今後,これらの波長帯をカバー できる増感剤の開発が期待される。スペクトル アナライザーは約1秒程度でスペクトル測定を 終えるが,図6に示すように毎回測定毎に発振 図3 Nd 添加ガラスの太陽光照射下の発光量子効率 の NdF3添加量依存性 36

(4)

400 500 600 700 800 900 1000 1100 0 0.01 0.02 Wavelength [nm] S pe ct ra l i nte n si ty [W /n

m] Nd: ZBLAN fiber laser Direct solar radiation (Bird model)

4F 3/2 2H 9/2, 4F5/2 4S 3/2, 4F7/2 4F 9/2 2H 11/2 2G 7/2, 4G5/2 4G 11/2, 2D3/2, 2G 9/2, 2K15/2 4G 9/2, 4G7/2, 2K 13/2 2P 1/2, 2D5/2 0 0.01 0.02 S p ec tr a l i nt en si ty [W /n m ] 0 0.01 0.02 (a) (c) 1051 1052 1053 1054 1055 0 0.01 0.02 Wavelength [nm] (b) 0 20 40 60 80 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

Input solar power [mW]

O u tp ut pow er [ m W ] slope efficiency: 3.3 % threshold: 49.1 mW total efficiency: 0.88 % 線スペクトルが変化した(図6(a),(b),(c) は約4分以内に得られたスペクトル)。不均一 広がりにより多数の縦モードが発振しているも のと考えられる。図6(a)で得られたスペク トルの最大ピークの波長は1053.71nm で半値 全幅は0.013nm であった。 Nd 添加第1クラッドに入射した 太 陽 光 パ ワーに対するレーザーパワーの関係を図7に示 す。最大のレーザー出力パワーは,入射パワー 65.0mW に お い て0.57mW で あ っ た。レ ー ザー発振しきい値は49.1mW,スロープ効率 は3.33%,総合効率は0.88% であった。さら なる効率向上に向けて改善すべき点として,!1 共振器ミラーの反射率,ファイバ長の最適化, !2励起光の吸収効率の改善(ex.未吸収太陽光 成分の削減),!3共振器損失の改善(ex.ミラー 損失,ファイバの伝送損失の低減)が挙げられ る。 4.結言 ダブルクラッド構造 Nd 添加フッ化物ガラス ファイバと放物面鏡を組み合わせ,自然太陽光 励起によるレーザー発振を実証した。太陽光励 起ファイバレーザー媒質の特徴は,ファイバ化 が可能であり,可視域に大きな吸収を持たず, 低フォノンエネルギーで太陽光下での発光量子 効率が比較的高い材料を選択している点にあ る。ガラスは高い組成自由度を持つので,今後 これらの特性を向上させた新たな太陽光励起フ ァイバレーザー媒質の開発が期待される。 太陽光励起ファバイレーザー発振の実現は, 太陽光励起レーザーを利用した革新的なエネル ギー技術分野に要求されるビーム品質,冷却, およびエネルギー変換効率などの課題に対して ブレークスルーとなる可能性がある。また,小 型の放物面鏡とファイバ型共振器という小型軽 量でメンテナンスが容易なシステムであるた め,これまでの大型,大出力のレーザーシステ ムとは一線を画す,ポータビリティの高い太陽 光励起レーザー応用も期待できる。 本稿に紹介した太陽光励起ファイバレーザー 技術は,まだ発振しきい値をようやく超えたレ ベルである。この技術が実用化に至るかどうか は,今後の性能向上にかかっている。 図5 透過前後の太陽光スペクトル 図6 異なる時刻に測定された太陽光励起ファイバ レーザーの発振線 図7 太陽光励起ファイバレーザーの入出力特性 37

(5)

参考文献 [1]Z.J.Kiss,H.R.Lewis,and R.C.Duncan,Appl.Phys. Lett.,2,93‒94(1963). [2]T.H.Dinh,T.Ohkubo,T.Yabe,and H.Kuboyama, Opt.Lett.,37,2670―2672(2012). [3]D.Liang,and J.Almeida,Opt.Express,19,26399― 26405(2011) [4]D.Graham―Rowe,Nat.Photonics4,64‒65(2010).

[5]K.Hasegawa,H.Ito,S.Mizuno,IEEE Photonics

Con-ference,ThCC3907―908(2011). [6]T.Suzuki,H.Nasu,M.Hughes,S.Mizuno,K.Hase-gawa,H.Ito,and Y.Ohishi,J.Non―Cryst.Solids356, 2344‒2349(2010). [7]T.Suzuki,H.Kawai,H.Nasu,S.Mizuno,H.Ito,K. Hasegawa,and Y.Ohishi, [8]D.P.Devor,L.G.Deshazer,and R.C.Pastor,IEEE J.Quantum Electron.25,1863‒1873(1989). [9]T.Suzuki,H.Kawai,H.Nasu,M.Hughes,S.Mi-zuno,K.Hasegawa,H.Ito,and Y.Ohishi,Proc.SPIE

7598,Optical Components and Materials VII,75981

L.

[10]S.Mizuno,H.Ito,K.Hasegawa,T.Suzuki,and Y.

Ohishi,Opt.Express,20,5891―5895(2012).

[11]R.E.Bird,and C.Riordan,J.Climate Appl.Meteor.

25,87―97(1986).

参照

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