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高知大学留学生センターに期待する

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Academic year: 2021

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高知大学留学生センター紀要 創刊号

高知大学留学生センターに期待する

社団法人日本語教育学会理事・香川大学教育学教授 山 下 明 昭 旧文部省は、2000年における留学生10万人受け入れ計画を次のように試算 していた。毎年13ないし14.2パーセントの増加を目的とし、我が国の18歳人 口が増加する1992年までを前期、減少に転ずる1993∼2000年を後期とし、前 期においては受け入れ態勢基盤の整備に重点を置き、着実な増加を目指し、 後期には、前期の基礎の上に立って、大幅な受け入れ数の増加を見込むとあ る。留学生10万人という数値そのものの是非はここではさておきこの数値を 達成するためには高等教育機関在籍者数の4∼5パーセントにあたる数値の 留学生を受け入れなければならない。言い換えればこの数値は各高等教育機 関の評価値でもある。これを単純に高知大学に当てはめると、高知大学の学 生数4,994名として、約200∼250名の留学生受け入れが目標数値となる。現 在では177名の留学生(研究生を含む)が在籍している。この学生数は達成の 第一段階に差しかかっているといえる。評価を行う評価者のレベルにもよる が数値だけをみて単純に評価をするような評価者からみれば現在の高知大学 は未達成クループ大学であるともいえる。 しかし、質の高さは他大学を抜きん出ている。内訳は、修士課程43名博士 課程52名となっている。また、大きな問題や事故等のことは耳にしたことが 無い。しかも卒業生の満足度は高い。文部科学省が問う次なる評価は「質」 であり、さらに次の評価は卒業生の「進路」や「満足度」を評価してくる。 高知大学において質等は高得点であるといえる。これも偏に先達の教官、事 務官の方々の努力そして日本人学生や地域の方々の協力のたまものであると 思われる。中でも阪大や外語大学、東京外語大学、岡山大学等のような大規 模留学センターのような短期プログラム(六カ月実際は四カ月)を設けず、 これらの機関の短期プログラム修了者や尋問の日本語学校修了者または他大 学修了者を経て来た留学生を受け入れてきたことが功を奏したと考えられ る。また、人文学部の日本語指導と各学部の修士課程、博士課程の連携が要 因となっていることが伺える。 量的にも評価をクリアーしなければならないが留学生センターは、全く日 3

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 本語が出来ない私費留学生を受け入れるのは困難である。それは入国管理局 が日本語が全く出来ない学生を受け入れることに対して難色を示すからであ る。唯r経済的支弁能力が認められる国費留学生や交換留学生については別 であるが自ずから留学生センターの役割は、国費留学生や交換留学生の教育 に限られることになる。これでは高知大学のノルマである250名達成にセン ターは寄与できない。留学生が入学するために従来の日本語テストでいえば 1級合格者だけに入学許可をだしていたのでは地方大学には留学生は増えな いのである。センターの短期プログラムの成果はよく問題視されるところで あるが、留学生センターで6カ月の指導を受けても他大学へと流れてしまう 場合も多い。また、国費留学生が地方大学の留学生センターにくる人数は凡 そ3名ないし4名程度である。この先多く見積もっても10名未満の数字しか 見込まれない。センター方式を取らず、かつ留学生に日本語教育をもなされ てきた高知大学の先見性に対して敬意を表する。これまで行われて来た高知 大学の良さを留学生センターが設立されても縮小することなくさらに拡大さ れ,れば他大学ではできないことが高知大学では可能となる。一般的に留学生 センターの教官は日本人学生との交流機会がない。高知大学留学生センター を大規模大学のように孤立させてはならない。これからも全学の教職員、学 生そして地域の方々からの継続的な協力と理解そして支援が必要である。ま た、センターは留学生だけのサービス機関になってはならない。中でも人文 学部の日本語・言語系の教官や学生との関わりは重要である。いわゆる日本 語教育の中・上級について人文学部の支援なしには成り立たないからであ る。6カ月では日常会話しか身につかない日本語も専門教育と平行に日本語 を学習することにより中・上級の日本語を習得することが可能になる。この ことは彼らの将来のチャンスを飛躍的に増大させる。 例えば、元高知大学の学長の教えを受けた者達は世界に広がり現在では各 国で重要なポストについている。韓国では大学の助教授に、イタリアやイン ドでは環境庁等に勤務している。元学長は日本にいながらにして世界各国の 水質調査データがその日の内に入手可能なのである。時には師を越えイタリ アと韓国の間で日本語を媒体にしながら水質調査デー一・タのやり取りがされた り論議がなされたりしている。留学生に英語だけとか母国語だけというので はなく日本語をも習得するチャンスを奪ってはならない。 留学生が留学生とだけと交わるのではなく、また留学生だけが学ぶのでも なく、留学生と日本人学生が共に学び合う。そして時には教職員も学生も地 4

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高知大学留学生センター一・紀要 創刊号 域の方々も留学生からも学ぶ。留学生も日本人学生や地域の方々からも学ぶ。 センターは、このような相互学習が可能な環境を維持し発展させるべきであ る。高知大学留学生センターは人文学部の応援を得ながらこれらのコーディ ネイタ一役となるべきである。留学生センターが留学生の受け入れだけを視 野にいれていたのでは他大学のセンターとなんら変わりないものになってし まう。幸い高知大学人文学部でこれまで培われたノウハウが有りまた人材を も有している。留学生・日本人学生・地域の方々にさらなる質の高いサービ スを可能にするためには、一つには人文学部と留学生センターの教官とが協 力しあって日本語系の博士課程を設け大学院レベルで相互乗り入れを行うと いうのも一案である。(名古屋大学では設立済み)そして留学生の受け入れ がただ単に留学生教育だけに終始するのではなく日本人学生や地域の方々に とっても有効になるようなGestalt的に仕掛け作りを行うべきである。 現在日本の大学は大凡偏差値競争に重きをおいている。しかし、これから の大学は付加価値サービスの競争を行わなくてはならない。そこで日本語・ 日本文化の研究のために日本へ短期、中期、長期留学希望を持ちながら経済 的等理由から来日出来ない英語圏学生をシステム的に受け入れるのである。 まずは、日本語・日本文化について教育・研究を行っている大学と交流協定 を結びその協定校からの学生を定期的に受け入れるのである。留学生には日 本語の学位を日本人学生や英語を希望する留学生や地域の方々には留学生セ ンターと人文学部の教官がコーディネイトしていわゆる学内NOVAを設け る。これは入学時点の外国語能力を競うのではなく入学後の付加価値につい て競う大学となる仕掛けとなるのである。このことにより、コスト革命や日 本人における外国語習得の革命、学生のモティベーション革命、地域との連 帯などにおいて他大学との差別化が図られる。付加価値競争に一席を投じる ことが可能になる。日本語関係の修士または博士号を目指す留学生を協定校 から定期的に受け入れることで「質」「量」ともに留学生の数値もあがる。 そして日本人学生の外国語習得のチャンスが増大する。外国語劣等感が解消 される。さらにこれを発展させれば英語だけはなく第二外国語の中国語や韓 国語等々まで展開させられる可能性がある。高知大学の学生は何学部であっ ても最低一つは外国語の運用が出来るようになって卒業するというのはどう であろうか。さらにはこれらの付加価値施設を地域の方々にも還元していく ことができる。留学生センターと人文学部そして他学部が力を合わせればこ のように高知大学の可能性は無限に広がる。 5

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 最後に学内外の設備、中でも寮の整備が急がれるのではないだろうか。研 究者が家族でこられても受け入れられるよう・な寮の設備も必要な時代にきて いる。農学部キャンパスだけではなく朝倉キャンパスにも寮の増築を急がな ければならない。民間活力という言葉をよく耳にするが、地元と連携してい かなければならない時代にきているのではないだろうか。企業もしくは民間 の寮を大学が買い取りまたは借り切りを行う。また、県や地域をも視野にい れながら整備を進める必要がある。 高知大学はこれまでも留学生受け入れに対して日本語教育も含め日本の中 でもトップクラスの質を保持して来た。さらにセンターは留学生の受け入れ だけではなく日本人学生や地域の方々にも還元するための中核として存立す べきである。 一6一

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