IRUCAA@TDC : DNA多型を用いた法歯学的個人識別法の適用範囲の拡大と検査法の転換
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(2)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ DNA多型を用いた法歯学的個人識別法の 適用範囲の拡大と検査法の転換 ______________________ 17390567. 平成 17 年度∼平成 19 年度科学研究費補助金 (基盤研究(B))研究成果報告書 平成20年3月. 研究代表者. 水 口. 東京歯科大学歯学部教授. 清.
(3) 〈は し が き〉 本研究は平成 17 年,平成 18 年,平成 19 年度文部省科学研究費補助金(基盤 研究(B))を得て実施した「DNA多型を用いた法歯学個人識別検査法の適用範 囲の拡大と検査法の転換」 (課題番号 17390567)の平成 20 年3月までに得られ た成果をとりまとめたものである.. 研 究 組 織 研究代表者 :. 水. 口. 清(東京歯科大学歯学部教授). 研究分担者 :. 花. 岡. 研究分担者 :. 丸. 山. (研究協力者 :. 伊. 藤. (研究協力者 :. 笠. 原. (研究協力者 :. 野. 平. 千. 鶴). (研究協力者 :. 中. 村. 安. 孝). (研究協力者 :. Nambiar Phrabhakaran). 洋. 一(東京歯科大学歯学部准教授) 澄(東京歯科大学歯学部助教). 春. 雄) 育). 交付決定額 直接経費. 関節経費. 合. 計. 平成 17 年度 3,600,000. 円. 0. 円. 3,600,000. 円. 平成 18 年度 3,200,000. 円. 0. 円. 3,200,000. 円. 平成 19 年度 2,600,000. 円. 780,000. 円. 3,380,000. 円. 総. 円. 780,000. 円. 10,180,000. 円. 計. 9,400,000. 研. 究 発 表. (1). 雑誌論文. 1.. 野平千鶴,丸山. 澄,水口. 清:日本人およびマレー人のミトコンドリア. DNA 多型,DNA 多型 Vol.13:251-252, 2005. 2.. 丸山. 澄,水口. 清:日本人における mtDNA 多型系統の枝葉,DNA 多型.
(4) Vol.13:253-255,2005. 3.. Ito T, Komiya-Ito A, Okuda K, Minaguchi K, Saitoh E, Yamada S,. Kato T:Murine monoclonal antibody which can distinguish cystatins SA1 and SA2, Mol Immunol 39:1259-1263, 2005. 4.. Maruyama S,Minaguchi K:Polymorphism of LPL locus in Japanese and. Comparison of PCR amplification efficiency from degraded DNA between LPL locus and the D21S11, Bull Tokyo Dent Coll 46(4):115-121, 2005. 5.. Minaguchi K,Maruyama S,Kasahara I,Nohira C,Hanaoka Y,Tsai T, Kiriyama. T, Takahashi N:Identification of unknown body using DNA analysis and dental characteristics in chest X-ray photograph , Bull Tokyo Dent Coll 46(4):145-153, 2005. 6.. 水口 清:DNA による個人識別,Animus No.42:40-44,2006.. 7.. 水口 清,丸山 澄,野平千鶴,佐々木継泰,石川 昂,Nambiar P:マレ. ーシア・クアラルンプール周辺に在住するマレー人のミトコンドリア DNA 多型 解析, 8.. DNA 多型 Vol.14:91-94,2006.. 伊藤春雄,笠原 育,水口. 清:日本人を対象とした AmpFlSTR Yfiler に. よる5種の Y-STR の追加と 21-YSTR haplotype および binary haplogroup との 関連, 9.. DNA 多型 Vol.14:120-122,2006. Nonaka I, Minaguchi K, Takezaki N: The human Y-chromosomal binary. haplogroups in the Japanese population and the relationships between their 16 Y-STR polymorphisms, Ann Hum Genet 71:480-495, 2007. 10. 水口 清:顎顔面領域の情報からの個人識別,日法医誌 61;111-120, 2007. 11. Maruyama S, Minaguchi K, Takezaki N, Nambiar P: Population data on 15 STR loci using AmpFlSTR Identifiler kit in a Malay population living in and around Kuala Lumpur, Malaysia, Legal Med 10:160-162, 2008. -212. 伊藤春雄,笠原. 育,水口. 清:マレーシア・クアラルンプール周辺に在. 住するマレー人の Y 染色体多型の系統分化,DNA 多型 (2) 1.. 口. 頭. 発. Vol.15:201-204,2007.. 表. 丸山 澄,水口 清:ミトコンドリア DNA 多型による日本人と近縁集団と. の個別配列の識別,第 89 次日本法医学会総会,平成 17 年4月 21 日,高松市..
(5) 2.. 丸山 澄,野平千鶴,水口 清:マレー人のミトコンドリア DNA 多型,第. 47 回歯科基礎医学会,平成 17 年9月 29 日,仙台市. 3.. Minaguchi K , Maruyama S , Nohira C , Nambiar P : Phylogeny of. mitochondrial DNA polymorphisms and its application to forensic science, 2005 International Forensic Science Symposium, 平成 17 年 11 月8日,Taipei. 4.. Minaguchi K, Nonaka I:Phylogeny of Y-chromosomal DNA polymorphisms. and its application to forensic science,平成 17 年 11 月8日, Taipei. 5.. 水口. 清,丸山. 澄,野平千鶴,佐々木継泰,石川. 昂,Nambiar P : マ. レーシア・クアラルンプール周辺に在住するマレー人のミトコンドリア DNA 多 型解析,日本 DNA 多型学会第 14 回学術集会, 平成 17 年 11 月 24 日,前橋市. 6.. 伊藤春雄,笠原. 育,水口. 清 : 日本人を対象とした AmpFlSTR-Y-filer. による5種の Y-STR の追加と 21-Y-STR haplotype および binary haplogroup と の関連,日本 DNA 多型学会第 14 回学術集会, 平成 17 年 11 月 24 日,前橋市. 7.. 加藤哲男,奥田克爾,水口. 清,山中あゆみ,君塚隆太,高橋尚子,伊藤. 理恵子,伊藤太一,伊藤明代,,三浦 直:唾液タンパクの抗菌活性と生体制御 能,平成 17 年度口腔科学研究センターワークショップ,平成 18 年3月3日, 千葉市. 8.. 水口 清,笠原 育:Y-STR 多型データからの Y binary haplogroup の推定,. 第 90 次日本法医学会総会,平成 18 年4月 27 日,福岡市. 9. Minaguchi K:New technologies in forensic diagnosis,2006 FDI Annual World Dental Congress,平成 18 年9月 23 日,Shenzhen. 10. 伊藤春雄,笠原 育,水口 清:マレー人における Y 染色体多型の系統分 化,第 282 回東京歯科大学学会総会,平成 18 年 11 月4日,千葉市. 11. 伊藤春雄,笠原. 育,水口. 清:マレーシア・クアラルンプール周辺に在. 住するマレー人マレー人における Y 染色体多型の系統分化,日本 DNA 多型学会 第 15 回学術集会,平成 18 年 11 月 16 日,福山市. 12. 水口 清:法歯学領域の研究と鑑定,第 28 回法医学歯科研究会セミナー, 平成 18 年 12 月 16 日,東京. 13. 水口 清:顎顔面領域の情報からの個人識別,第 91 次日本法医学会総会, 平成 19 年5月 17 日,秋田市. 14. 丸山. 澄,水口. 清:マレーシア・クアラルンプール周辺に在住するマレ. ー人における 15 座位の STR 多型と東アジア集団との比較,第 283 回東京歯科大.
(6) 学学会,平成 19 年6月2日,大阪市. 15. 丸山 澄,野平千鶴,佐々木継泰,石川 昂,水口. 清,Nambiar P:全ゲ. ノム配列による比較から見たマレーシア・クアラルンプール周辺に在住するマ レー人のミトコンドリア DNA 多型の系統評価,日本 DNA 多型学会第 14 回学術集 会,平成 19 年 11 月 18 日,大阪市. 16. 中村安孝,水口 清:16X-XTR 座位の multiple PCR による検出と日本人に おける出現頻度,日本 DNA 多型学会第 14 回学術集会,平成 19 年 11 月 18 日, 大阪市. 研究成果による産業財産権の出願・取得状況 なし. 研. 究 成 果. 1.はじめに 本研究は DNA による個人識別において,常染色体上のマイクロサテライトの 変異を検出するキットによる検査が世界的な主流を占めている中で,歯牙を中 心とした高度変性資料からの DNA 検査の精度を上げるため,その検査法の転換 を計りさらに検査対象の拡大を目的として計画されたものである。その際に SNP (一塩基多型)を中心とした検査に重点を置くところから,結果的に対象者の 地理的由来(いわゆる人種)の違いを示すマーカーを検査することになる.更 に検査座位はミトコンドリア,X 染色体,Y 染色体,常染色体それぞれから選択 するため,個人識別のみでなく性別判定,人獣鑑別等にも役立つ. 具体的には,(1) 母性遺伝をするミトコンドリア DNA(mtDNA)のタンパクをコ ードしない control 領域による識別に,coding 領域の情報を加え,全 mtDNA ゲ ノムに基づいた多型分類を目指し,変性 DNA から正確で情報量の多い判定結果 を得ること. (2) 父性遺伝をする Y 染色体多型の biallelic marker(2種の変 異のみの多型)によるハプログループ解析で,申請者らは日本人を 21 の系統に 分類してきているが,識別精度をあげるため,Y 染色体上の一塩基多型(SNPs) を検討し細分類を目指すこと. (3) Y 染色体上の SNPs 検査を,変性 DNA に対す る増幅効率をあげながら,少ない検査回数で結果を得るシステムを作ること. (4) X 染色体上の SNPs を小さな増幅サイズで検出し,できる限り変異の高い座.
(7) 位による分類を可能にすること.(5) 常染色体上の SNPs で,2カ所以上の塩基 置換を含む多型性の高い領域を,小さな増幅産物で検出可能にしていくこと. (6) 多型検査部位を増やした後,新しい分類法によりマレー人の mtDNA,Y 染色 体,X 染色体多型を検討すること.(7) これらの多型を歯牙や抜歯時の唾液汚染 血痕などから得られた変性 DNA の検査,また現在請け負っている鑑定に応用し ていくことなどを目的として研究を進めてきた. このような研究の過程で,新たな問題点なども見いだされたため,細部につ いては研究の進展により,多少方向性が変わってきたが,本研究で得られた結 果について述べると以下に示したようになる. 2. ミトコンドリア DNA 多型 1). 日本人のミトコンドリア DNA 多型. すでに 211 人の日本人の mtDNA 多型について,全 control 領域と coding 領域 の多型から 106 の系統と 197 型に分類しているが(DNA 多型,2005),2006 年に Kong らが多くのデータをまとめ,新たな東アジアの系統樹と命名法を示したた め,彼等の分類を考慮に入れながらさらに細分する必要が有る系統の解析を進 めてきた.またその他に,新たな 81 人の日本人試料を追加検査を行い,全コン トロール領域で 71 型に,coding 領域を含めて 74 型に分類しているが(DNA 多 型,2005),19 例の日本人試料を追加し,100 例につき現状の最新の情報から系 統の末端を決定した.つまり,当初の 211 例の試料に加えて 100 例を検査した ことになる. 100 例の日本人の検査結果は,1.15kb の全コントロール領域の検査で 86 型が 認められ,genetic diversity は 0.9927 であった.これらの系統を現時点の情 報で最も末端に当たる系統を決定したところ,多くの系統は東アジアの haplogroup と同じ系統に含まれたが,M7a2a,M7a2b,M7a2*, M7c1b, M11b2*, G2b*, D4c1b1a, D4g2b, A4*, A9, N9b*, B4d1, B4d2,F1e と名付けた 新しい系統が見い出され,それぞれの全ゲノム配列を決定して系統を確立した. すべてを系統の末端まで決定した結果では,100 例の配列は 93 型に分かれ, genetic diversity は 0.9984 と上昇した.これらの系統を control 領域の haplotype の類似性から他の日本人,東アジアの中国人および韓国人のデータと 比較すると,M7a2a,M7a2b,M7a2*, D4g2b,F1e は日本人には認められたが,.
(8) 韓国人,中国人に類似配列は認められず, G2b*,N9b*は類似配列は東アジアの データに認められず,今回が最初の例であった.その他の M7c1b,D4c1b1a, A4*, B4d1, B4d2 は類似系統が韓国人,中国人にも存在する可能性が高い.しかしこ れらも,検査領域を拡大すれば異なる系統と証明される可能性もある.また A9 系統は control 配列に特徴が少なく,coding 領域の検査なしに比較は難しい. 今回 100 例を追加したのみで,少なくとも 14 の新しい系統が見い出されたこと は,まだ多くの系統が見い出される可能性を示唆している.このデータは現在 論文に投稿中であり,本報告書にその内容を添付する. 当初の 211 例の日本人データにも新しい系統を作っているものが存在し,論 文としてまとめる計画であったが,現在一部について全ゲノム配列を決定しな がら解析を進めており,公表を差し控えた. 2). マレーのミトコンドリア DNA 多型. マレー人についてはすでに 30 人のマレー人の mtDNA の全 control 領域,およ び coding 領域の検査を行っているが(DNA 多型,2005),その後例数が増加し 81 例について全 control 領域の検査と系統解析を行った.その結果一般マレー 人のミトコンドリア DNA 多型の系統は東アジアに拡がる M7b2b,M7c1c,G2a1c, D4a,D4e1,N9a1,Y2,B4a,B4c1b1,B4c,B5a,F1a1 が 49.4%,南アジアに存 在する E,R8,R*,R9b,M*,N*が 48.1%(39 例)を占めることを明らかにした (DNA 多型,2006).これらのうち特に M*系統には新しい系統が含まれ,当初そ の他にも東アジアとは異なる系統を形成している可能性が示唆されたため,そ の後 31 例の試料について全ゲノム配列を決定した.その結果すべての試料につ いて新しい系統特異的な部位の検査を行う必要があると判断したこと,および 更に試料が増加し,現在 119 例について検討していることから,まず全コント ロール領域のみの比較をまとめ,法医学的応用性について検討し纏めた後に, 全ゲノム配列に基づいた比較を行うように方針を変更した.全 control 領域の 比較では 117 例に 108 型の haplotype が見い出され,genetic diversity は 0.9987 と算出された.117 例の control 領域の多型検査と,ハプログループの推測結果 のデータについては表1として添付する.最も多い系統は M7c と F1a1a で,次 いで B4c1b2b の順であった.このデータは現在投稿準備中である.全ゲノム配 列を含めた系統についてはマレー人に特徴的な系統が認められ,ユーラシアに おいて重要な情報であり,ほぼ完成に近づいているため早々に投稿に持ってい.
(9) くつもりである. 以上のごとく,マレー人の系統は半分が東アジアの系統からなるが,これら は多くのものが東アジアとは別の枝を形成している可能性が高く,ミトコンド リア DNA 多型から見た出身地の由来の識別が可能と考えられた. 3.Y 染色体多型 日本人の Y 染色体多型については,DYS19, DYS3891, DYS3892, DYS390, DYS391, DYS392, DYS393, DYS385, DYS388, DXYS156Y, DYS434, DYS435, DYS436, DYS437, DYS438, DYS439 の 16 種類 Y-STR haplotype の検査を 263 人の日本人について検 討し,225 型を見い出し genetic diversity が 0.994 であることを明らかにし, さらに binary narker の解析により日本人を 20 の haplogroup に分類し,両者 の関係から Y-STR 型から binary haplogroup を推測可能であることを示してき た. 実際に推測した binary haplogroup データとの比較により,日本の中でも binary haplogroup の genetic cline が存在することが明らかとなり,法医学上の1人 の対象者の地理的由来の推定にも役立つことを示した(Ann Hum Genet 2007). さらに近年 16 座位の Y-STR kit が市販され(AmpFlSTR Yfiler kit),そのう ち5座位は私達のものと異なっていたため,同じ試料について DYS448,DYS456, DYS458,DYS635Y,GATA H4 のデータを追加した.Y-STR kit によるデータは非 常に増加しているところから,この kit のデータかと Y-binary haplogroup と の関係を示し,kit データから binary haplogroup が推測可能であることを示し た(DNA 多型 2006) .この研究に関しては現在他の日本人データからの推測を加 え,投稿準備中である. 81 人のマレー人男性の Y の系統を検査し,少なくとも現在 25 系統に分類して おり,そのうち2系統は世界的にもまだ明らかになっていない古い系統で,そ の他に3種の新しい binary marker を見い出し,東アジアに広がる O 系統の新 しい分岐の存在が明らかになった.これらの新しい O 系統は既存のマレー人の O3c,O3d が同じ起源を持ち,しかも特に O3c が日本人のものと異なる性質を持 つため,これらの系統を示すマーカーが複雑な変異をおこしてきた可能性を示 唆していた. 4.. X 染色体多型.
(10) X 染色体多型については最初に X 染色体上の SNP を含んだ Alu 配列の変異の検 討をした.その結果,多型はあるがマレー人の分布と大きな違いがなかった. これはこの変異が古いことを示唆していた.そこで SNP の検査を進めていく前 に,今後,他の集団との比較も視野に入れて進めていくため,現在比較的広く 検査され始めた X 染色体 STR 多型の検討を優先することとした.そこで DXS7424,GATA172D05,HPRTB,DXS8377,GATA31E08,DXS9895,DXS7423,ARA, DXS6803,DXS6789,DXS6800,DXS6809,DXS7133,DXS7132,DXS101,DXS6807 の 16 種類の STR 多型の multiplex PCR による同時検出の条件を検討し,検出を可 能にした.その結果これらの多型のヘテロ接合度は 43%? 89.4%に分布してい た.X 染色体多型の特徴として男性において組み換えが起こらないところから, haplotype の比較が可能である.これらのうち DXS7424-DXS101, DXS6809-DXS6786 はそれぞれ 0.8cM,0.5cM 以内に位置するところから両者の haplotype を検討す ると,それぞれ 132 人に 31 型,140 人に 41 型が認められ,非常に識別能力も高 いことが明かとなっ た.またこれらの座位のうち DXS6789,DXS6807 は2峰性の分布を示し,DXS6789 の分布はミトコンドリア DNA 多型の一部の系統との相関が認められた.現在,X 染色体の STR kit が市販され,私達のものと5座位が異なるため同時に検討し ており,STR の検査座位数を増やすと共に,SNP を含めた比較を行っていくこと を予定している. 5.. 常染色体多型. 117 人のマレー人の常染色体上の 15 座位の STR 多型(D8S1179, D21S11, D7S820, CSF1PO , D3S1358, TH01, D13S317, D16S539, D2S1338, D19S433, vWA, TPOX, D18S51, D5S818, FGA )を AmpFlSTR Identifiler kit により検査を行った。ヘ テロ接合度は 61.1-87.3%に分布した。Da 距離から Neibour-joining tree を作 製したところ、今回のマレー集団は、中国人、韓国人、日本人とは異なるクラ スターを形成し、他のマレー人集団、インドネシア人集団とも異なるクラスタ ーを形成した。しかし、後者は bootstrap 値が低いところからこの違いがマレ ー人の多様性によるものか、偶然の偏りなのかは明らかではなかった。 6.高度変性試料からの DNA 多型検査 2種の STR 座位,LPL と D21S11,について,歯牙および抜歯時の止血血痕を.
(11) 試料として抽出した変性 DNA を試料として増幅効率の比較を行った.LPL は 116-135bp で,D21S11 は 213-239bp の PCR 増幅産物が得られる.それぞれの増 幅効率を比較するために,LPL 座位で検出された試料について D21S11 座位では PCR 成功率が 60-88%に低下した.両者の PCR 増幅サイズは 90-110bp 異なるとこ ろから,増幅効率が増幅サイズに大きく影響されることを再確認した. 森の中から発見された白骨死体について歯科治療痕と胸部 X 線写真の一部に 撮影されていた治療痕の比較,および血液型検査に用いられていた歯牙と該当 者と思われる人物の母親および妹から得た血液を試料とした DNA 型の比較を行 った.歯牙からの DNA 型検査はミトコンドリア DNA 型および ABO 式血液型を決 定した.ミトコンドリア DNA 型は増幅産物を小さくすることにより両者が同じ 型を示し,ABO 式血液型検査では,歯牙から薄い B 型の allele が見い出され, DNA に僅かなコンタミがある可能性が示唆された.しかし遺体が対象者の母の娘 で,母の子供と姉妹であると考えて矛盾は認められなかった.この例において はミトコンドリア DNA の型が極めて稀で, 今までのデータベースに存在しない型であったため,極めて有力な証拠となっ た.つまり,本事例は SNP 検査が高度変性 DNA 検査に有効であることを示した ものであるが,同時に検査の結果を評価するために,データベースが正確であ ることの必要性が改めて再確認された. 7.. その他の関連研究 私達は長年に渡り唾液タンパク関連遺伝子の多型検査を進めてきているが,. 特に唾液タンパクシスタチンは少なくとも5つの遺伝子が唾液中に発現してお り,その中で新しい多型性タンパク見い出し,その遺伝子を明らかにした際に は,歯科臨床との関連を検討するためタンパクの機能についても検討している. 今回共同研究の成果として,唾液システインプロテアーゼインヒビターのシス タチン SA の多型性変異 SA2 の 両者を区別できるモノクローナル抗体を作製した.シスタチン SA1 と SA2 は, 2箇所のアミノ酸配列の違いを示すのみで極めて類似した構造を持つと考えら れるが,システインプロテアーゼインヒビター活性は異なる.唾液シスタチン はサイトカインの機能にも影響することも見い出しており,抗体作製時の抗原 性を異にする epitope の存在も証明されたことから,僅かなアミノ酸配列の違 いを持つ多型性タンパクも様々な機能に影響することを改めて証明されたもの.
(12) と言える(Mol Immunol,2005). 8.さいごに 歯科領域の法医学で最も重要な仕事は個人識別であるが,DNA 多型検査は高度 変性死体の個人識別にとって,顎顔面領域の形態的な個人識別手段に加えて, 必要欠くべからざる手段である.歯科領域で個人識別を依頼される資料は,白 骨化した死体や,腐敗が激しいものがしばしばあるが,本研究はこのような変 性度合いの高い生物学的資料の検査に応用することを前提とした上で,検査方 法を SNP を中心とした検査法に移行していくことを目指し,さらにその際に個 人識別のみでなく,対象者の地理的由来の推定,性別判定,人獣鑑別等の情報 が同時に得られる研究を進める計画で行ってきたものである. これらの目的にあった研究として1つはミトコンドリア DNA 多型の研究を推 進してきた.ミトコンドリア DNA 多型の研究は研究者も多くその進展も早い. 私達の計画当初に比べ,現在は mtDNA の系統を決定するため,全ゲノム配列を 決めようとする動きに傾いている.私達も新しい系統は全ゲノム配列を決定す るという方針に転換 しているため,当初ほぼ出来上がっていた段階にデータを追加しながら研究を 進めている.また東アジアの系統は,系統樹の大きな幹が共通するが,南アジ アは多様性が高く充分な情報が得られていないため,一般マレー人のデータは 極めて貴重で,現在も試料数を追加しながら研究を進めている. Y 染色体多型については,SNP を中心とした分離法を広げている研究者は少な いため,今後マレー人との比較を含め SNP の研究を進めていきたい.またこの 際に,現在主流となっている STR の検査を行いながら,他のデータとの関連づ けられるように考慮していくつもりである. X 染色体についても同様で SNP を検査しながら,STR との関連を考慮すること で他集団との比較に結びつけることができるようにしていきたい.そのため STR 検査に力を注ぐ結果になったが,ほぼ目的に近づいてきたため今後は当初の目 的に戻り,進め ていきたい. 常染色体多型は近年多くの研究者が個別に SNP を検討し始めたため,自分達 で対象を探していくことは一時差し控えた.今後はミトコンドリア DNA,Y 染色 体多型,X 染色体多型の結果を考慮して最適なものを選択して進めていきたい..
(13) 以上のように,近年の研究は進展が早く,計画当初のものが方針を変えざる を得ない点が多かった.そのため,論文の公表について予定通りいかなかった 点もあるが,研究成果としては実用上有益な結果が得られているものと確信し ている.法医学試料の検査はデータベースや検査法のみでなく,基本的な DNA 抽出にもまだ多くの問題があり,今後さらに実用上の目的を考慮しながら研究 を進めていきたい..
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