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大学生の就職活動困難感に対するキャリア支援の探索的研究 : 就職活動経験者と就職支援者の比較から 利用統計を見る

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* 筑波大学、**山梨大学、***埼玉学園大学 ※この調査は、第一筆者が筑波大学大学院在籍中に実施した調査の一部を加筆修正したものである。

大学生の就職活動困難感に対するキャリア支援の探索的研究

-就職活動経験者と就職支援者の比較から-

原   瑞 穂*,**  小 玉 正 博*,*** 要  旨  本研究の目的は、大学生の就職活動に不適応をもたらす諸要因の内容とそれらの要因の関連を構造的 に明らかにするための第一段階として、就職活動に対する困難感の認知と対処方法を質的に検討するこ とである。就職活動を経験した既卒生 15 名、就職支援者 11 名に対する調査から収拾した内容をカテゴ リーに分類した結果、厳しい環境への不満と諦め、社会情勢への責任転嫁などの 21 の小カテゴリーと社 会情勢の認知、利用資源への認知などの6つの中カテゴリー、社会情勢、援助資源などの4つの大カテ ゴリーが得られた。また、就職活動に対する大学生の認知は、他者や環境に対するものよりも、自分自 身の能力や行動についてネガティブな考えを持つ傾向が強いものの方が多かった。一方、楽観性を持つ 者は困難感を持ちつつも成功につなげられる可能性も明らかになった。就職活動困難感を持つ者へは、 自立性、客観性、自己コントロール性などに対する支援が必要であることが明らかになった。 キーワード : 就職活動、困難感、大学生、認知 1.問題と目的 1. 1 研究の背景  日本企業の新卒者採用は景気状況に大きく影響され る。バブル崩壊以降日本経済情勢は回復途上にあり、昨 今の企業経済環境の好転に伴い、平成 28 年度大学卒業 者の就職率も 97.6%と改善傾向が見られる1)。しかし、 文部科学省報告2)によれば、平成 28 年の4年制大卒者 の「就職者」のうち「正規の職員等でない者」と「一時 的な仕事に就いた者」及び「進学も就職もしていない 者」の合計は7万8千人であり、これらの不安定な雇用 状態にある者の卒業者に占める割合は 13.9%であった。 平成 24 年度の 13 万人(22.9%)から徐々に低下してい るものの、未だに未就職卒業者が少なくないことを意味 し、非正規雇用者の二割近い者が不本意雇用(正社員と して働く機会がない者)である3)  諸外国の学生が何年もかけて初職を探すのに比べると 日本の学生は大学卒業後すぐに就職するのが慣例であ り4)、平成 28 年度では大学卒業者の 74.7%が雇用され ている2)。このような日本の新卒一括採用システムは、 初職の雇用形態が生涯の職業生活に及ぼす影響が大き く、大学卒業時の就職活動が人生における重要課題と捉 えられている。そのため、新卒時の未就職者は不利な就 職活動を強いられることになる。このような状況を避け るために就職留年する学生が少なくとも7万9千人いる という報告もあり5)、大学卒業者の約 30%程度の学生が 未就職や就職留年など就職に関する切実な問題を抱えて いると推察される。このように、新規大学卒業者の就職 率が上昇傾向にあるとはいえ、雇用の不安定化、長期失 業率の低年齢化、非正規雇用の拡大など6)、若者の雇用 に関する課題はむしろ深刻化しており、学生が積極的に 就職活動し自分らしい職業選択をしているとは言いがた い。  このような中、若者自身の仕事に対する意識も変化し ている。日本の若者は楽しい生活のために働くことを重 視し、能力・個性の発揮できる会社を求め、長期雇用の 下でのキャリア形成を志向する傾向にあり、自分に合う 会社で、「自分らしく」長く働き続けることを希望して いる6)。また、外国人学生と比較した最近の日本人学生 の特徴として、「安定志向」「グローバル志向が低い」「真 面目だが快活さに乏しい」「ストレス 耐性が弱い」など が指摘されている7)。一方、企業の求める人材像は、経 済のグローバル化とアジア新興国などとの市場競争の激 化の下、多様な場面での対応能力、課題発見、問題解決 能力など、より高い能力を有する者が求められている6) このような若者が目指す企業像と企業が求める人材像と のズレは若者の企業選択の幅を狭めている。また、人気 企業へ集中が実質的に求人倍率を低くしている可能性が あり、若者の企業選択時の困難感や、就職活動全般にお ける行動や意識に影響を与えていると考えられる。  いつの時代でも、就職は大学生にとって社会的自立に 向うキャリア形成の第一歩であり、職業決定は青年期後 期の最も重要な発達課題である8)。しかしながら、実際 の就職活動は必ずしも円滑に進むとは限らない。近年は 長期化した就職活動の悪影響も危惧される。具体的に は、肉体的疲労や経済的問題、度重なる不採用通知から 受ける精神的苦痛など、内定獲得までに多くの試練があ る。このような中で、大学生の精神的健康面には多くの 負の影響が現れており、一度の失敗から自己否定に陥り 就職活動の先延ばしや活動を回避する者、ストレス状態 に陥ることを予測して活動を回避する者、さらには「就

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活うつ」と呼ばれる状態に陥る学生も少なくない。また、 就職活動を行わないまま就職も進学もせずに卒業を迎え る学生の多さの指摘もある9)。就職活動学生の二極化10) は以前から報告されていたが、就職活動における学校間 格差や学生のストレスなども問題視されている11)。中で も困難を乗り越え内定獲得まで就職活動を継続できる学 生と、ストレスに耐えられずに就職活動を中断休止する 学生の二極化は現在もより顕著に表れている。この時期 をどう乗り切るかは学生にとって重要な課題であるが、 学生支援に携わる側にとっても大きな課題である。  このように、大学生の就職活動時期には、学校から社 会への移行期における職業選択問題に加えて、経済状況 や企業の求める人材像の変化、新卒一括採用慣行などの 企業動向の把握に伴う学生の意識の変化等、様々な社会 的要因と複雑化した就職活動スタイルによって大学生自 身の精神的健康が阻害されていることが推察される。 1. 2 先行研究  日本における大学生の就職活動に関する研究は、職業 レディネス・職業アイデンティティ、進路未決定、職業 興味、自己効力感、キャリア成熟などを対象にしたもの が多く、学校から就労への移行時の問題について関心が 向けられてきた。その一方で、大学生の就職活動におけ る精神的健康に関する研究は多くはない。以前から、大 学生の職業不安に対して大学側からの適切な進路指導 介入が必要であるという坂柳の指摘12)があった。藤井13) は就職活動不安、職業適性不安、職場不安からなる「就 職不安尺度」を作成し、精神的健康と就職活動との関連 性を検討した結果、就職不安がストレス、うつ反応と強 く関連することを明らかにしている。北見・茂木・森14) も就職活動を経験している学生は精神的健康状態が悪 く、就職活動自体がストレスとなっていると報告してい る。松田・永作・新井15)は、就職不安をアピール不安、 サポート不安、活動継続不安、試験不安、準備不安と5 因子に分類し、単なる行動レベルでの活動促進ばかりで はなく、高不安者に対する対処方略と介入方法の必要性 を提言している。このように、先行研究では、就職活動 自体のストレスが大学生の精神的健康を妨げる重要な要 因であり、その対策が必要であることが明らかになって いる。 1. 3 目的  大学生の就職活動ストレスに関する先行研究は現状分 析と対策の必要性を示唆するものが主であった。しかし、 就職活動において不適応をもたらす諸要因とそれらの要 因間の関連性について構造的に明らかにしようとするも のは必ずしも多くはない。特に、大学生が就職活動を展 開、継続する過程でどのような困難性を感じ、それに対 してどのように対処、解決しているのかというプロセス についてはほとんど明らかにされていない。人は目標に 向かって行動しなければならない時、強い期待を持つほ ど緊張や不安などのストレスをより強く感じる。この感 情や認知を本調査では困難感とした。本調査では、大学 生が就職活動を行う中で持つ困難感を検討するために、 大学生と就職支援者の双方向から就職活動に対する認知 の傾向の調査を行い対処方法の検討につなげることを目 的とする。 2.方法 2. 1 調査対象者  就職活動中の大学生の認知傾向を調べるために平成 22 ~ 24 年度に就職活動を経験した、関東、関西地方在 住の大学生と既卒者 15 名、さらに客観的に大学生の就 職活動に関する認 知を把握するため に、関東地方在住 の 就 職 支 援 者 11 名 の 総 数 26 名 を 対象とした。大学 の キ ャ リ ア セ ン ター及び外部の大 学生の就職支援機 関に勤務する者で あり、広く大学生 の意識を把握する ためには適当であ ると考えた。就職 活 動 平 均 年 齢 は、 既卒生 24.6 歳,就 職支援者 46.5 歳で あった(表1参照)。 2. 2 調査時期と調査方法、調査内容  平成 23 年8月から9月下旬、および平成 26 年4月で あった。調査は協力者の許可を得て、第1著者が行っ た。大学生及び既卒生にメール調査、就職支援者に面接 調査 30 分程度及びメール調査を実施し内容を記録した。 就職活動経験者には、a)基本属性、b)就職活動中に~ なければならないと考えたこと、c)就職活動をとおし て得られたもの、d)就職活動中にストレスとなったこ と、e)就職活動中に頼りになった人、f)その他就職活 動中に感じたこと、を尋ねた。就職支援者には、a)基 本属性、b)大学生の就職支援において感じた、大学生 の行動や認知の傾向など全般、~なければならない思考 や学生のストレス度などを尋ねた。 2. 3 倫理的配慮  調査前に調査対象者に本調査の趣旨と個人情報及び結 果の取扱いに関する説明を行い、調査協力の回答をもっ 表1 調査対象者一覧

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て同意が得られたと判断した。本調査は筑波大学大学院 人間科学研究科研究倫理委員会の審査を受けた承認番 号 :(東 24-43)。謝礼は提示していない。 2. 4 分析方法  メールと面接で得られた記録データを対象とし川喜田 のKJ 法16)によるカテゴリー分類を行った。就職活動経 験者と就職支援者から得られた項目は度数の差はあるも のの概ね同じ内容であったため、統合して分析すること に問題ないと判断した。  第一ステップとして、回答者の意図を損なわない程度 に回答内容を意味単位に切片化し、簡潔に要約した上で カード化した。その結果、就職活動経験者と就職支援者 から得られた全回答内容は 306 件であった。第二ステッ プでは意味単位である小カテゴリーにまとめた。第三ス テップでは、小カテゴリー間の概念関係を吟味しながら 類似概念を包括する中カテゴリーを生成し、第四ステッ プでは、中カテゴリーをより上位の概念にまとめた大カ テゴリーを生成した。以上の手続きにより、カテゴリー 分類に関する明確な記述のない 42 件を除いた 264 件を 分析対象データとした。分析者2名(著者)間の盲件式 による分類合致率は 84.0%であった。相違項目 16%に ついては二者間で討論の上再分類を行い、全回答につい て概念の一致を確認して分類を終えた。分類した結果を もとに学生と就職支援者との就職活動に対してどのよう な認識の違いがあるかを検討した。以降、就職活動経験 者の表記を学生と示す。 3.結果  有効回答 264 件を対象として分類した結果大学生の就 職活動に関する要因は、環境要因の [社会情勢] と [援 助資源]、個人要因の [就職活動に対する認知] と [就職 活動に対するストレス反応] とに大別され、さらに大カ テゴリー4個、中カテゴリー6個、小カテゴリー 21 個 に整理された(表2)。表内の「度数」とは各内容の出 現数、「率」とは有効回答数 264 件を分母とした場合の 出現率である。また、大カテゴリーを[]、中カテゴリー を『』、小カテゴリーを「」、内容を<>で示す。 3. 1 環境要因  環境要因からは [社会情勢] と [援助資源] の2つの大 カテゴリーが抽出された。  [社会情勢] からは、『社会情勢の認知』の中カテゴリー と「厳しい環境への不満と諦め」「社会情勢への責任転 嫁」の2つの小カテゴリーが、[援助資源] からは、『利 用資源への認知』の中カテゴリーと「周囲の援助資源と の関わり」「「就活」への迎合」の2つの小カテゴリー がそれぞれ抽出された(表2を参照)。次に、中カテゴ リー毎に内容を示す。 3.1.1 社会情勢 (1)社会情勢の認知  『社会情勢の認知』では、<就活生が 50、60 の企業に エントリーするのが普通という風潮には違和感がある> と、就職活動システムへの不満を持ちつつ<厳しい情勢 だからどうせダメだという気持ち>や<置かれた環境が 悪い>といった「厳しい環境への不満と諦め」を感じる 傾向が得られた。さらに。<そのような風潮を作ってい る/変えられない就職あっせん企業、大学、マスコミに も責任があると思う>など、就職難の時代に原因を求め る「社会情勢への責任転嫁」が得られた。 3.1.2 援助資源 (1)利用資源への認知  『利用資源への認知』では、<自信喪失の時家族の一 言が非常に嬉しかった><自分が関わった全ての人(家 族、学友、先生、旧友など)に感謝している>など、周 囲の人からの援助に感謝しつつも、<親の期待に応えな ければならないと思う>など、過干渉な援助に対する複 雑な思いを内包する「周囲の援助資源との関わり」が認 められた。また、<マニュアル本の通りにすれば大丈夫 だと思っていた><ウソをついても留年の理由を作らな ければ面接は通過しないと思う><よく見せないとなら ないと演じていると思う>など、「「就活」への迎合」が 5.3%の出現率で認められた。この中には、マニュアル 化された支援に依存しつつ、失敗を経験しながら採用側 の意図に気づき、就職活動を通して成長している者も存 在した。 3.2 個人要因  『個人要因』からは [就職活動に対する認知]、[精神 的健康の阻害] の2つの大カテゴリーが抽出された。[就 職活動に対する認知] と し て、『 ポ ジ テ ィ ブ 認 知 』『 ネ ガティブ認知』『不足している能力』の3つの中カテゴ リーが抽出された。『ポジティブ認知』では「自立性の 高さ」「客観性」「自己コントロール性」「楽観的特性」「活 動後成長感」の5つの小カテゴリーが、『ネガティブ認 知』では「完全志向による失敗回避」「評価希求」「依存 性の強さ」「自己否定感情」の4つの小カテゴリーが、『不 足している力』からは、「レジリエンスの低さ」「職業レ ディネスの不足」「コミュニケーション力の不足」の3 つの小カテゴリーがそれぞれ抽出された。一方、[ 精神 的健康の阻害 ] では『就職活動に対するストレス反応』 の1つの中カテゴリーと「イライラ・怒り」「不安と恐 怖感」「就活うつ状態」「無気力・疲弊」「活動回避と孤立」 の5つの小カテゴリーがそれぞれ抽出された。以下に中 カテゴリー毎にその内容を示す。

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3.2.1就職活動に対する認知 (1)ポジティブ認知  『ポジティブ認知』では、<失敗から必ず何かを学び、 すぐに実行に移す>という主体的に行動する「自立性の 高さ」が認められた。これは、大学生の社会経験の豊か さや学生生活の充実感が積極的な活動に影響を与えてい る17)と考えられ、就職活動から充実感を得られている 可能性が示された。また、<大局的な視野で全体を俯瞰 する癖を持つようにすると、本来の目的を見失わずに済 む>など、現在の就職活動を俯瞰して冷静に理解する 「客観性」が認められた。さらに、<・・・ 気持ちの切り 替えることに決めていた>ように、就職活動における困 難な状況においても柔軟に対応する「自己コントロール 性」と、<この瞬間には緊張するが、未来に対しては割 と楽観的 ・・・ ><ストレスを感じるよりも楽しいことの 方が多かった>とする「楽観的特性」がそれぞれ得られ た。一方、支援者の回答からは、現実感のない楽観性を 問題視するものがあった。過度な楽観性は問題解決の先 延ばしを促進してしまうとする黄・兒玉の指摘18)もあ るが、ポジティブ志向は主観的幸福感と正の関係である との橋本の報告19)があり、精神的健康を高める要因で あると考えられている。さらに、<自分が将来やりたい ことが明確になった>ように就職活動を通して自己成長 を確認できたとの回答が 4.2%見られた。これらの結果 は、就職活動において積極的意味を見出したりすること ができる者ほど成長感が高まるとい藤里・小玉の報告20) や、就職活動の困難な経験を通じて肯定的変化が見ら れ、成長の好機ととらえる髙橋・岡田の見解21)を支持 するものであった。 (2) ネガティブ認知  『ネガティブ認知』では、履歴書や面接対策が完璧で なければ内定が取れないという思いから<グループ面接 では誰よりも一番目立たなければ通過できない>、<失 敗してはならないと思っている>などの「完全志向によ る失敗回避」が 8.0%得られた。また、<自分の話を聞 いていると考えると、どう思われるか心配>などの採用 担当者の反応や、<評価が気になる>傾向を示す「評価 希求」が 7.6%認められた。このような学生に対して就 職支援者からは<大学がお膳立てしてくれるので全部分 かった気分になっている>と評価されており、従順であ るが自ら行動しようとしない「依存性の強さ」が見受け られた。さらに、<就職活動がうまくいかないと、過去 のことも含めてすべてについて自信がなくなる>とする 「自己否定感情」が 8.3%得られた。 (3)不足している力  『不足している力』では、<一度ショックなことがあ るともう動けない>のように、一度の不採用通知に傷つ き、再挑戦への躊躇や活動回避につながる「レジリエン スの低さ」が見られ、こうした行動傾向は支援者から見 ると<失敗を乗り越えていこうという忍耐強さがない> のように忍耐力のなさとして感じられていた。また、職 業意識が発達しないまま就職活動に向かう、<自分が 「やりたい」と思う仕事がわからない><「人ごとのよ うだね」と家族や友人から言われる>などから推測され る、「職業レディネスの不足」は、8.7%は最も多かった。 これは、就職支援者の<社会への興味関心の薄さ>とし て映り、それに加えて<読み書きのレベルが低い>など 基礎的な能力不足の問題も指摘された。さらに、人との 会話や対応に苦手意識を持ち、<人とのコミュニケー ションが得意でない>、<活動中、周囲の皆と情報を共 有しようとはあまりしない者がいる>などの「コミュニ ケーション力不足」が認められた。この結果は、労働政 策研・研修機構11)の未就職卒業者の特徴と一致するも のであった。 3.2.2 精神的健康の阻害 (1)就職活動に対するストレス反応  『就職活動に対するストレス反応』では、<就職活動 状況を詳しく聞く友人や、自慢する人が嫌でした>にあ るように友人が競争相手となる苛立ちや<不採用通知す ら来ない会社には腹が立つ>など企業の対応に対する怒 りが認められた。また、<できない自分限界を見ること、 能力が及ばないことが怖い><本当に自分を必要とする 会社があるのか不安になった>などから自分の能力不足 と自己効力感の低さによる「不安と恐怖感」が示唆され た。さらに、<一つの失敗がすべてのことにつながって しまう><悩んでいる人が多い>のように就職活動で精 神的に追い詰められ、「就活うつ状態」に陥る傾向が得 られた。<長く活動しても内定に結びつかないので疲れ てしまう>のように失敗経験の連続から生まれる「無気 力・疲弊」、<信頼できる人間がいない>といった周囲 からの孤立、<活動をしばらく休んでいた>などの活動 休止状態、さらに公務員試験やアルバイトへの間接的な 就職活動回避まで様々な「活動回避と孤立」状態が得ら れた。就職活動を回避した者は、卒業後は学校側も<孤 立している学生の動きがわからない>状態になっている 現状が示唆された。 3. 3 学生と就職支援者の内容の比較  就職活動に対する取り組みについて学生と就職支援者 との認識に差があるかを調べるため、カテゴリーの分布 の比較を行った。得られた内容を表 3 に示す。全体の 回答件数は、学生 162 件(61.1%)、就職支援者 102 件 (38.6%)の合計 264 件であった。度数の差はあるものの、 項目について概ね同じ内容が得られたことから、両者を 合計し分析することは質的に問題ないと判断した。 3.3.1 学生と就職支援者の認知  まず環境要因では、[援助資源]の『利用資源への 認 知 』 が 学 生 で 23 件(12.5 %)、 就 職 支 援 者 で 9 件

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(3.4%)とともに最も多かった。個人要因では、学生 は[就職活動に対する認知]の『ポジティブ認知』と 『ネガティブ認知』ともに 40 件(15.2%)、[精神的健康 の阻害]の『就職活動に対するストレス反応』が 38 件 (14.4%)と多く、就職支援者は[就職活動に対する認知] の『不足している力』が 22 件(8.3%)と多かった。 表2 学生と就職支援者からのヒアリング内容の分析結果

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 学生は、[就職活動に対する認知]の『ポジティブ認 知』から「自立性の高さ」「客観性」「自己コントロール 性」「楽観的特性」「活動後成長感」が、『ネガティブ認知』 から「評価希求」「自己否定感情」が、『不足している力』 から「職業レディネスの不足」が、[精神的健康の阻害] から『就職活動に対するストレス反応』から「イライラ・ 怒り」「不安と恐怖感」「就活うつ状態」が多く抽出され た。就職支援者は、[就職活動に対する認知]の『ネガ ティブ認知』から「完全志向による失敗回避」「依存性 の高さ」が、『不足している力』から「レジリエンスの 低さ」「職業レディネスの不足」「コミュニケーション力 の不足」が、[精神的健康の阻害]の「無気力・疲弊」「活 動回避と孤立」が多く抽出された。言い換えると学生は 客観的に自立的に状況を把握し、楽観性をもって自己を コントロールしながら活動を行っている反面、職業選択 への準備不足を感じ、周囲からの評価を気にし、失敗に よる自己否定に陥っていた。そのためイライラや怒り、 不安や恐怖を感じ、中には抑うつ状態に陥ってしまうこ とが示唆された。一方、就職支援者か ら見る学生は職業に対する準備が不足 しており、完全主義による失敗回避の 傾向が強く他者やマニュアルへの依存 性が高く、忍耐強がなくコミュニケー ション力も不足していた。そのため悩 みを他者に相談できず、疲弊し無気力 になり活動を回避し孤立することが示 唆された。 3.3.2 学生と就職支援者の就職 活動に対する認知対象  就職活動によって自覚された認知の 対象とそれを肯定的、否定的のどちら に評価しているかを調べるために有効 回答 264 件を再分類した。その結果、 『自己に対する認知』、『他者に対する 認知』、『環境に対する認知』の中カテ ゴリーが抽出され、さらに「自己に対 するポジティブ認知」「自己に対する ネガティブ認知」「他者に対するポジ ティブ認知」「他者に対するネガティ ブ認認知」「環境に対するポジティブ 認知」「環境に対するネガティブ認知」 の6小カテゴリーに分類された(表 4)。  就職活動に対する認知の対象は、自 己に対する認知が(204 件)他者に対 す る 認 知(32 件 )、 環 境 に 対 す る 認 知(28 件 ) よ り 多 か っ た。 そ れ ぞ れ のカテゴリー数を全体の総件数と比較 した結果、ポジティブな回答数 58 件 (22.0%)、ネガティブな回答数 206 件(78.0%)であ り、就職活動に対する否定的認知が3倍以上であった。 中でも、自己に対するネガティブな認知の回答(166 件) は全体の 62.9%を占めており、学生は自分自身に対し て否定的な認知を多く持つことが示唆された。  就職支援者との比較では、いずれも自己に関する回答 が最も多く(学生 72.8%件、支援者 84.3%件)、その内 ネガティブな回答が学生 86 件(52.5%)、支援者 81 件 (79.4%)であった。他者に対する認知は就職支援者5 件(9.3%)より学生 27 件(16.7%)と多かった。環境 に対する認知は両者ともネガティブな認知が多かった。 全体として学生はポジティブな認知も就職支援者より多 く持っていた(学生 51 件:31.5%、就職支援者7件: 6.9%)。以上の結果から、学生は就職活動に対してポジ ティブ・ネガティブの両方の認知を持ちながら活動して いること、学生の他者に対する認知は就職支援者が捉え ているよりも多く、彼らの精神的健康は他者からの影響 もあることが示唆された。 表3 学生・就職支援者から得られた認知の度数比較 表4 就職活動に対する認知の対象と傾向

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4.総合考察  本調査の目的は、就職活動経験者と就職支援者を対象 に、大学生が就職活動を行う中で持つ困難感について探 索的に検討し、対処方法の検討につなげることであっ た。全対象者の言説をKJ 法によって分類し、環境要因 と個人要因から小カテゴリー 21 が得られた。また、学 生と就職支援者の認知の比較から、学生の就職活動にお ける精神的健康への影響は、ネガティブな認知と他者か らの影響が要因として考えられること示唆された。この 分類結果を踏まえ、就職活動に対する困難感を、環境・ 個人要因、対処方法から考察する。 4. 1 就職活動困難感に対する環境要因の影響  大学生は就職活動が順調に進まない原因を厳しい雇用 環境に責任転嫁する傾向にあり、社会情勢を原因とする 就職困難感を持っていることが示唆された。これは濱 中9)の、就職困難の原因を個人に求めるばかりでは解決 しないという見解とも関連している。また、学生は家族 や友人、企業担当者等の周囲の人々等「周囲の援助資源 との関わり」に関する認知、就職支援者は就職活動マニュ アルに沿って動こうとする「「就活」への迎合」に関す る認知が多く抽出された。このことから、就職活動にお ける学生の活動の促進、阻害いずれにも周囲の資源が大 きく影響していると考えられた。友人や親など身近な 他者からの支援が活動継続の重要な要因である22)一方、 思ったような支援が得られない場合には強いストレス反 応を感じる傾向が見られた。具体的な支援を求める者は 就活マニュアルへの依存傾向も強く、そのことが主体的 判断や行動を損ねている可能性もあり、過度のマニュア ル依存は企側の期待とのギャップを生じ6)、学生の困難 感を生み出しているとも考えられる。 4. 2 就職活動困難感に対する個人要因の影響  大学生の就職活動に対するネガティブな認知が就職活 動困難感に影響を及ぼしていることが示唆された。現代 の就職環境では何度も失敗を経験することが必須であ り、失敗なく成功に至ることは極めて困難である。その 意味では、以前にも増して就職活動はストレスフルな人 生課題と考えられる。本調査では、そのような状況での 対処として、他者への精神的・方策的支援に依存する傾 向が見られた。しかし、それは自立とはアンビバレン トな感情をもたらすことがある。福岡23)24)は、他者から サポートを受けることに対して心理的負債感や自尊心へ の脅威といった否定的な認知との関連を検討し、他者依 存性の高い者ほど心理的苦痛をより強く感じる傾向があ ること、特に不満足なサポート関係は人の基本的な欲求 を充足するには不十分であり、それゆえ心理的な苦痛と 関連する、ひいては心身の健康に影響すると指摘してい る。したがって、就職支援者側の対応如何によってはよ り強い不満足感につながっていく23)恐れもあり、学生 の就職活動に対する困難感をさらに複雑化させる可能性 があると考えられる。また、強い評価希求や思うような 評価結果が得られない場合の自己否定感情などは、怒り や不安・恐怖などを増幅させ、抑うつ状態を招く可能性 も考えられる。その結果、疲弊から無気力へ、さらには 活動を回避し孤立する恐れもある。就職支援者は、この ような学生の就職活動に対する困難感を念頭に置き、個 人の特性や職業レディネスの度合いや個人の能力の程度 を考慮しながら支援を行うことが重要である。 4. 3 学生の就職活動困難感への対処  次に、就職活動困難感を持ちつつも、内定にたどりつ く大学生の特徴について考察する。まず、彼らは置かれ た環境を受け止め、自立的で客観的、自己抑制的、楽観 的に就職活動に取り組もうとしているのが特徴的であっ た。就職活動後に自身の成長感を得る者も存在した。つ まり、就職活動での失敗を経験しながら採用側の意図に 気づき、活動後には新たな自己への気づきや自己成長感 を感じていたのである。これは、就職活動を通して自己 成長が伸長するという浦上の見解25)、自己理解や自己受 容、問題解決能力の獲得などにより自己成長感を得て いるとの髙橋・岡田21)の見解と一致するものであった。 また楽観性については、楽観的傾向者が困難にも柔軟に 対応できる可能性が強く、レジリエンスを高める要因で あるとする石毛・無藤や26)平野の見解27)からも本調査 の結果を解釈することができる。  これらの報告かから考えても、就職活動困難性に関し ては有効回答数の8割であった就職活動に対するネガ ティブな認知をどのように改善するかが重要であろう。 「完全主義」「評価希求」「依存性」「楽観的特性」などの 要因は、そのとらえ方と扱い方により適応、非適応のど ちらにも変容しうるものである。就職支援者は、学生の ネガティブな認知をポジティブな認知へ変容する重要な 役割を担っているため、これらの要因に対する積極的な 理解と対策が必要であろう。 4. 4 結論  本調査の結論として次の二点が挙げられる。  第一に、就職活動に対する学生の困難感を検討するに は、学生の自己へのネガティブな認知への対策が重要な ポイントになるということである。本調査では、学生の 認知の内、自己へのネガティブな認知が過半数を占めて おり、就職活動を困難に感じさせる大きな要因の一つで あると考えられる。従って、ネガティブな認知に対する 方策が就職活動の困難感を軽減するために必要であると 言える。一方、周囲からのサポートのようにポジティブ な認知であるかのように見えるものでも、状況や頻度、 強度によってはストレスの原因ともなり得る。よってネ ガティブな認知に対してだけでなく、ポジティブな認知 の双方に働きかける支援対策が必要であろう。今回の調

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査では、就職活動の環境や資源は同じでありストレスも 同様に感じているにもかかわらず、学生によって環境や 資源、自己に対する考え方には明らかな相違が見られ た。現代の学生は真面目に努力する素直さが特徴である が、就職活動においては真面目に努力してきたにもかか わらず内定を獲得できない学生が多く存在し、知識や能 力の高い者が必ずしも就職活動で結果を出しているとは 限らないのが現状である。学生生活において真面目に努 力してきた者が、最後の段階で就職活動の失敗によって 自信喪失となり、ひいてはその後の人生に影響を及ぼす ことがあるとすれば、この時点での立て直しが必要であ る。また、こうした現象がなぜ起きるのか、どこに原因 があるのかを検討することは今後のキャリア支援にとっ て課題であろう。その意味で今回の調査で得られたアン ビバレントな感情の対処に焦点をあてつつ、学生一人ひ とりの精神状態に寄り添うキャリア支援の方策を検討す ることは重要であり意味があると考える。  第二に、就職活動困難感には、就職支援者と学生との 認知の差がもたらす影響が少なからずあると予想され る。本研究において、学生は就職支援者が考える以上に 他者に対するネガティブな認知を強く持つことが示され たことから、就職支援者はこの両者間の意識の差を意識 し、学生の心理的状態を十分に確認しつつ適切に情緒的 および方策的な援助を提供することが必要である。福 岡22)の知見に基づくならば、学生への支援が有効に作 用するためには就職支援者は学生の依存性を助長するよ うであってはならない。本人の気持ちを受けとめつつ、 自己を肯定できる支援を根気よく行うことにより、自立 性を損なうことなく望ましい方向に意識と行動を向ける ことが重要であろう。キャリアカウンセリングにおいて は、宮城や渡辺らからキャリアとメンタル双方向からの 支援の必要性が提言されている28)29)。就職活動における 心理的側面は重要な視点と考えられ、具体的な支援策を 検討するにはさらなる研究が必要である。  就職活動困難感については、大学生活、あるいはそれ 以前の時期の問題も含まれていると考えられ、短期的に 改善が難しいものもある。現在の就職支援対策には多く の課題や問題があると指摘されている30)31)が、本調査で も学生の職業レディネスの不足や忍耐力の弱さ、コミュ ニケーション力の不足が示唆された。これらは短期に身 に付くものではないため、大学入学時やそれ以前の時期 からの準備が必要であろう。インターンシップ関与が職 業レディネスや自己効力感に促進的な影響を与えている という高良・金城の報告32)もあり、安達の提言33)のよ うに自分を知り現実を知ることで自己効力感を上げる経 験も必要であろう。最初から就職活動をしない無活動学 生について、小杉17)は就職活動前段階である学生生活 の過ごし方の重要性を指摘している。体験を取り入れる 教育や、厳しい現実に直面し躊躇する経験が必要であろ う。 5.今後の課題  最後に、本調査の限界を踏まえ、次の二点を今後の課 題として提示する。まず、調査協力者に内定者が多かっ たことである。就職活動中の困難性を検討するには活動 中の学生の認知傾向を調査する必要があると考える。次 に、就職支援者の回答が、支援を求める学生に対する印 象が中心になっていることは否めない。今後は明らかに なった要因を整理し、就職活動中あるいは在学中の大学 生についての量的検討を行っていきたい。 謝辞  筑波大学博士前期課程在籍中に本調査をご指導してく ださいました、現在筑波大学名誉教授であり埼玉学園大 学教授の小玉正博先生に大変お世話になりました。心か ら感謝申し上げます。 参考文献 1) 厚生労働省. 平成 28 年度 大学等卒業者の就職状況調 査.http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000164865.htm (参照 2017-5-9) 2) 文部科学省. 学校基本調査-平成 28 年度(確定値) 結果の概要-.http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/ chousa01/kihon/kekka/k_detail/1375036.htm(参照 2016-12-19) 3) 厚生労働省 . 平成 26 年「就業形態の多様化に関する 総合実態調査」の結果.http://www.mhlw.go.jp/toukei/ itiran/roudou/koyou/keitai/14/dl/houdou.pdf(参照2015-11-4) 4) OECD.世界の若者と雇用-学校から職業への移行を 支援する-. 濱口圭一郎監訳・中島ゆり訳 明石書 店. 2011,p.70-95. 5) 読売新聞.(参照 2010-7-6 朝刊). 6) 厚生労働省. 平成 25 年版厚生労働白書-若者の意識 を探る-.2013,p.124-165. 7) リクルートワークス研究所. 新卒採用の潮流と課題. http://www.works-i.com/pdf/r_000192.pdf(参照2010-11) 8) 下山晴彦. 大学生の職業未決定の研究. 教育心理学研 究.1986,vol.34(1),p.20-30. 9) 濱中義隆. 現代大学生の就職活動プロセス. 大学生の 就職とキャリア. 小杉礼子(編)第一章. 勁草書房. 2007 10) 株式会社マイナビ.201 年卒マイナビ大学生広報活 動開始前の活動調査.https://saponet.mynavi.jp/wp/ wp-content/uploads/2016/11/pre_action_2014.pdf(参照 2012-12) 11) 独立行政法人労働政策研究・研修機構. 高校・大学 における未就職卒業者支援に関する調査.JILPT調査 シリーズ. 2010,vol.81,p22-51. 12) 坂柳恒夫. 大学生の職業的不安に関する研究. 広島大

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Exploratory Study on the Sense of Difficulty Facing Job Hunting University Students

-Survey of those having experience in job hunting and career supporters

-The objective of this study is the qualitative consideration of the cognition of difficulties faced in job hunting activities and the coping strategy thereof as a first step to structurally clarifying the various factors causing maladaptation toward job hunting of university students and their correlation. The survey conducted on 15 graduates who have experienced job hunting as well as 11 career supporters were divided into categories according to the content. As a result, 21 mini categories consisting of such factors as dissatisfaction and resignation toward a strict environment, shifting of responsibility to the social climate were created, as well as 6 sub-categories such as cognition of the social climate and cognition of available resources, and 4 main categories such as social climate and aid resources.

In addition, as a result of analyzing the object of cognition, by and large, the cognitive trend of many university students toward job hunting was negative thinking toward themselves and their actions and not so much toward others and the environment. As a coping strategy, it was revealed that those having autonomy, objectivity, self-control and optimism had a better likelihood of turning their difficulties into success.

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