平成2年度山梨県肺癌検診実施状況
飯富病院 外科 長田忠孝 高畑内科小児科医院 高畑賢司 志村内科医院 志村政文 山梨県立中央病院 外科 千葉成宏 順天堂大学医学部 病理 須田耕一 石和保健所 清水卓造肺癌部会の資料は7,000万円を越える費用を費やして実施されてい
る山梨県下の肺癌検診の唯一の公的統計資料である。この資料は検診受診 者、検診実施主体である市町村、山梨県健康管理事業団に代表される検診 実施機関、さらに肺癌部会自身のこの検診への考え方、取り組む姿勢のミ ックスされた結果が現れたものといえる。すなわち、この資料をより完成 度の高いものにする努力は、山梨県の肺癌検診体制の創出のためには不可 欠のものと考えられる。 以上のような観点にもとづき、今回も平成2年度の山梨県下の肺癌検診 、の実施状況を、成人病検診管理指導協議会肺癌部会に検診実施主体である 市町村から報告された資料に、多くの市町村の保健婦、保健衛生担当の方 々に主として電話でうかがった実情を併せて、検討を加え報告する。 一肺癌検診実施市町村数一 平成2年度には、上野原町と双葉町を加え、ついに県下64市町村の全 部で検診が実施されるようになった。 《表一1》《表一1>平成2年度山梨県肺癌検診実施状況
1.実施市町村数の変化 S.61年度 20市町村 S.62年度 53市町村 S.63年度 59市町村 H. 元年度 62市町村 H. 2年度 64市町村 2.平成2年度レ線検診実施状況 受診者数 検診実施率 要精検者数 要精検率 精検受診率 発見肺癌 2年度123,342
51.6% 2,092 1.7% 72.1% 10万:30R7人 元年度118,857
50.4% 1,965 1.7% 75.3% 10万:27R2人 63年度99,231
44.4% 2,903 2.6% 60.1% 10 :33R2人 62年度73,412
60.8% 1,719 2.2% 80.3% 10 :30Q1人 一24一一レ線検診一 レ線検診受診者が平成元年に比し4,500人増加したのは、実施市町 村数の増加に加え、大泉村、小淵沢町、道志村、西桂町、山中湖村の検診 実施率の上昇が指摘される。須玉町では検診を隔年実施しているため2年 度は実績がない。その他の市町村では検診実施数の変化はほとんどなかっ
た。 《表一1,2,3,4》
実数として把握できる要精検率は多少の凹凸はあるものの全体として昭 和62年より変化がない。精検受診率も72%とほとんど変化なく、要精 検者の4人に一人が医療機関を受診していないことになっている。発見肺癌数もほぼ変化なく37人、10万対30の発見率だった。 《表一1》
これらの数字は市町村からの報告が年度末で締められることもあり要精 検率を除き、いずれも低値となっていることが予想される。事実平成元年 では県の健康増進課の調査により肺癌疑い例の15例中6例が原発性肺癌 と判明した。従って平成元年の発見肺癌数は38人となり、発見率も上昇し、10万対32となる。
《表一2》韮崎保健所管内レ線検診実施状況
、 o o 韮 崎 市 元 年 ,4,930 ●U0.9
●0.2 ●Q5.0
63年
4,829
52.5
0.889.7
62
0 O.0 明 野 村 元 年 ,1,521 ●W8.7
●4.6 ●X4.3
63年
1,204
68.8
5.583.3
62
1 278
72.9
5 898.6
須 玉 町 元 年2,945
92.7
4.771.5
63年
62
99
3.54.0
75.0
3 263
91.0
5.481.9
高 根 町 元 年 ,2,660 ●V1.9
■1.6 ●W1.0
63年
2, 73464.0
2.951.9
62
2 326
80 5
3 372.4
大 泉 村 元 年 , 717 ●S6.0
■6.8 ●Q4.5
63年
769
56.4
11. 176.5
62
27
55.O
10.5
52.9
小淵沢町 元 年 , 267 ●P7.8
●P0.5
●X2.9
63年
286
19.1
14.7
100.0
62
30
1 8 3.3100 0
白 州 町 元 年P,512
, 0 ■X8.2
●2.2 ●P00.0
63年
1,532
92.7
0.884.6
62
1 558
94.1
2.455.3
武 川 村 元 年914
●V6.4
●9.4 ■U9.8
63年
945
68.2
11.7
68.5
62
975
74.1
11 2
66.1
長 坂 町 元 年 ,2,247 ●W1.9
●0.3 ●P00.0
63年
O62
O 双 葉 町 元 年 ● 0 ● ● ● 一25一《表一4》大月保健所管内レ線検診実施状況
市 町 村 年 度 検診実施数 検診実施率% 要精検率% 精検受鯵率% 2 年2,109
24.0
0.5 都 留 市 元 年2,160
25.1
1.857.9
63年
2,627
32.0
4.398.2
62年
0 0.0 21,845
20.0
1.634.5
大 月 市 元 年1,534
16.2
0.1100.O
63年
1,529
15.1
0.062年
0 0.0 2 年256
23..9 6.356.3
秋 山 村 元 年299
26.4
13.7
100.0
63年
176
16.5
9.762年
0 0.0 2 年440
69.4
0.2 小 菅 村 元 年392
53.0
14.0
100.0
63年
395
55.2
O.3100.O
62年
411
57.3
4.668.4
2 年502
92.4
0.6100.0
丹波山村 元 年528
73.4
3.0100.0
63年
532
72.3
1.590.0
62年
558
76.0
0.5100.0
2 年726
11.9
1.964.3
上野原町 元 年 063年
0《表一3》畜田保健所管内レ線検診実施状況
o ■ ● ● ● 富士吉田市 元 年2,792
22.5
0.063年
2,806
21.7
0.2100.0
62
2 489
18 9
0 0 道.志 村 元 年U3年
18
●3.4 R.328.6
Q0.0
80.0
Q5.0
62
0 0 0 西 桂 町 元 年213
●P8.5
●0.5 ●P00.0
63年
108
9.7 O.062
170
15.5
0 0 0.0 ■ ● ● 忍 野 村 元 年929
41.8
5.663年
819
36.8
0.062
770
35
0 660 0
● ● ■ ● 山申湖村 元 年66
5.6 1.6100.0
63年
90
8.3 0.062
134
11.9
1 5100 0
河ロ湖町 元 年608
●P6.4
0.063年
158
3.8 1.9100.0
62
499
11.6
2.2100.0
勝 山 村 元 年134
●Q6.0
0.O63年
177
33.7
0.6100.0
62
167
23.9
1.2100.0
足和田村 元 年351
●U1.1
2.3100.0
63年
445
75.3
0.062
403
78.9
0.2100.0
● ● ● 鳴 沢 村 元 年478
79.0
0.063年
521
80.2
◎.0 7 一26一一喀疾検診一 喀疾細胞診による検診実施数は相変わらず低調である。 《表一5》 肺癌の一次予防にもつながるこの検診は40年の歴史のある結核検診を 母体にしたレ線検診と異なり、健康にたいして関心の低い中高年のヘビー スモーカーを対象にしていることもあり、どうしても検診受診率が低率に なる傾向にある。しかしレ線検診受診者の約10%は肺癌のハイリスクグ ループに属すると言われており、歴史の浅いこの検診の受診率は市町村の 肺癌検診への関心の高さに比例するように思われる。 櫛形町は婦人会の組織である愛育会を利用して検診受診率をアップし、 厚生大臣i麦彰を受けたそうです。腰の重い亭主をせきたてて喀疾を集める 良妻賢母は、何やら国防婦人会を連想させるが、この様な努力、試みが喀 ’疾検診の認知につながっていくと思われる。 《表一6》 富士吉田市では医師会のミニ人間ドックの長い歴史があり、これと喀疾 検診をドッキングした結果、毎年500人を限度とした予算をオーバーす るほどの受診希望があるそうです。 《表一7》 櫛形町も富士吉田市も既存の組織を利用し、検診の普及を図って高い受 診率を得ておリ、同様な試みは都留市、大月市にもみらる。検診率のアッ プには有力な手段であるようだ。 中道町、石和町では保健婦の懸命の呼び掛けにもかかわらず、受診希望 者が集まらなかったとのことだった。 《表一8》 喀疾検診未実施は4市町村だった。ある役場の保健衛生担当は、多忙の ためこの検診の実施が遅れているとの言い訳をしていたが、(この様な地 方公務員がハイリスクグループに属することは良くあることだ。)歴史の 浅いこの検診の重要性を、我々もより一層PRする必要がありそうである。
発見された肺癌は4人で発見率は10万対75だった。これは諸家の報
告の1/2から1/3の低率である。2人は喀疾検診のみで、残る2人は
レ線検診と喀疾検診の両方で発見された。<表一5》平成2年度山梨県喀疾検診実施状況
喀痕検診実施数 要精検者数 要精検率 精検受診率 発見肺癌 2年度 5,348 (4.3X)牢 17 0.3% 94.1% 10万: S 75 元年度 4.901 (4. IX) 24 0.5% 71.4% 10万: R 61 63年度 3,890 (3.眺) 21 0.5% 71.4% 10万: Q 53 62年度 3.534 (4.8竃) 31 0.9% 83.9% 10万: Q 57 命対レ線検鯵比 一27一<表一6》小笠原、韮崎保健所管内喀疾検診実施状況
入 田 村 元 年 ●1,051@4
43 菰 崎 市 元 年 ■4,930@29
117@2
白 提 町 元 年6 ●4,239@ 4
101@ ・
明 野 村 元 年 P 2 4,1,527 100@1
芦 安 村 元 年 131 須 玉 町 元 年 2,945@ 9
70S 若 草 町 元 年 ■2,648 148 V 高 恨 町 元 年U ,2,660 Q 7 4 74 櫛 形 町 元 年 ●4,536 S 74 872 長 坂 町 元 年 年 ●2,247 81O 甲 西 町 元 年 ●3,055 58 大 泉 村 元 年 ・ 0V17 V6 47T0 」\ 小淵沢町 元 年 U ・ 0 Q87 67 白 州 町 元 年 R 1:5121 5 21 61
武 川 村 元 年 914 X4 80V 双 葉 町 元 年 ■ o 0<表一7》大月、吉田保健所管内喀痕検診実施状況
都 留 市 元 年6 ●1,853 Q 27 307 25P 0 :富士吉田市 元 年6 ●2,792 Q 6 397Q 大 月 市 元 年 ●1,375@2
159P58 道 志 村 .ウ 年U3 15 3亨 秋 山 村 元 年 259 V6 42 西 桂 町 元 年U3 213P 81V5 ・小 菅 村 元 年 335 X 17 忍 野 村 元 年3 929P Ii 丹披山村 元 年 518 1° 山中湖村1元 年 建 ● 61@9
i8 上野原町 元 年 年 0 0 河ロ湖町 元 年 608 P 8 ’105P1 *施設検診 勝 山 村 元 年3 134 P77 21 足和田村 元 年 US45
351 26U 鳴 沢 村 元 年 鑑 473 20<表一8》石和、身延保健所管内喀疲検診実施状況
、 レ 、 石 和 町 元 年3 ,L 302 Q 834 18P0 三 珠 町 元 年63 ,1,362 P 59 21Q 御 坂 町 元 年63 ,3,251@642
81W 市川大門町 元 年63 ●3,263 R 368 18Q3 一 宮 町 元 年 ●2,893 Q 7 5争 六 郷 町 元 年63 ,1,531@521
37R4 八 代 町 元 年63 ・ 0 Q,505 36 、0 下 部 町 元 年63 ●2,294 Q 75 141T8 境 川 村 元 年 R ,1,468 P 37 26R9 増 穂 町 元 年 R ,4,054@959
0P 9 中 道 町 元 年 P,852・ 0@27
45 鰍 沢 町 元 年U ●1,431 P 7i 68 芦 州 村 元 年63 1278 711 中 富 町 元 年 R鑑 , 0 P,850 P 5◎ 106@4
豊 富 村 元 年 ,1,16438
b 早 川 町 元 年3 ,19320 P 426 170P 2 身 延 町 元 年 U ・ 0 Q,700 Q 121P 1 南 郁 町 元 年6 ■2,0?4 Q 075 131P00 一28一 富 沢 町 元 年 ,1,712 54一発見肺癌一 発見された肺癌患者の年令、性、発見された検診の種類、組織型、臨床 病期、手術の有無、肺癌検診を実施した検診機関の一覧を市町村別に示し てみると、身延町、富沢町の2例が総ての情報を備えているのみである。 市町村の保健婦や検診機関の担当者に聞いてみると、組織型、臨床病期、 手術を含めた治療内容についての情報収集は極めて困難とのことであった。 この様なわずかな表を完成するためにも、医師、医師会の関与がどうし ても必要なようである。
《表一9》平成2年度肺癌検診発見肺癌
年令、性 発見検診 組織型 臨床病期 手術 検診機関 甲府市 65 ♀ レ線 甲府市医師会 ■ ■ . ■ 匂 ・ ・ . ・ 57 ♀ レ線 甲府市医師会 昭和町 64 ♂ レ線 健康管理事業団 田富町 76 ♀ レ線 (+) 健康管理事業団 塩山市 50代♂ レ線 春日居町 75 ♀ レ線 1期 (+) 山梨厚生病院 ..・・.・・ 84 ♀ レ線 1期 山梨厚生病院 大和村 60代♂ レ線 一宮町 60代♂ レ線、喀疾 御坂町 63 ♂ レ線 腺癌 健康管理事業団 …A● 7 ■ ・ ● ■ ■ ◆ ・ 52 ♂ レ線 (+) 健康管理事業団 ・・….■ 64 ♂ レ線 腺癌 一 (+) 健康管理事業団 83 ♂ レ線 (+) 健康管理事業団 境川村 60代♂ レ線 . , . ・ ・ ● o . ・ . 吟 ・ . ・ “ 令 ・ . ● ● ⑳ ・ ● ・ ● ● ● ● ■ ∋ ● s ● . ・ ● ● ● ・ . 70代♂ レ線 三珠町 72 ♀ レ線 六郷町 64 ♀ レ線 (+) 厚 生 連 下部町 60代♀ レ線 中富町 63 ♂ レ線 (十) 健康管理事業団 身延町 68 ♂ レ線 小未 健康管理事業団 ◇ ・ テ ■ ■ ■ ● . ・ ’ . ・ ● ◆ 61 ♂ レ線 小未 VI期 なし 厚 生 連 富沢町 64 ♂ レ線 扁上 w期 (+) 健康管理事業団 ± ・ ■ ■ ● ■ 71 ♂ レ線 扁上 n期 (+) 白根町 58 ♂ レ線 (十) 健康管理事業団 68 ♀ レ線 (+) 健康管理事業団 . ・ ・ . ・ ・ . o . ・ ‘ . . . ・ . ・ . ・ ◆ ’ . w . 80代♀ 櫛形町 , ・ . . ・ “ ・ ・ .74 ♂ 扁上 健康管理事業団 66 ♂ レ線 健康管理事業団 ・ ’ ・ ・ ◆ . ・ 80 ♂ レ線 なし 健康管理事業団 甲西町 60代♂ 熔疲 韮崎市 74 ♂ レ線、喀疲 健康管理事業団 明野村 80代♂ レ線 H期 高根町 80代♂ レ線 令 . ・ ・ . ・ . ・ ・ ■ ● ● A ● 60代♀ レ線 長坂町 60代♂ 喀療 1期 ・ . P ・ 今 ・ ・ . . . . . ⑳ ⇔ 工 … . ・ 70代♀ レ線 n期 大泉村 60代♀ 大月市 58 ♀ レ線 扁上 (+) 大月市立中央病院 66 ♀ レ線 大月市立中央病 一29一一要約と結語一 A。レ線検診 1.都市部での低検診率 甲府市 富士吉田市 都留市 大月市 竜王町 田富町 ◎ この様な地域では従来の定型的な検診体制ではこれ以上の検診 率の向上は望めない。保健事業第3次計画にある個別検診に期待。 2.郡部での低検診率 牧丘町 須玉町 河口湖町 上野原町 忍野村 勝山村 秋山村 ◎ 本来なら高受診率を期待できる地域である。検診体制に問題あ り!!厚生省のマニュアルにそった検診をすべきである。 3.検診率の上昇した市町村 大泉村 小淵沢町 道志村 西桂町 山中湖村 ◎ 関係者の努力に敬意を表します。
4.検診受診者は平成元年より4500人増加したが、多くの市町村で
住民検診を利用した肺癌検診は頭打ち傾向にある。 ◎ 男性を多く含む事業所検診などに肺癌検診を取り入れる必要が ある。人間ドックや個別検診に期待。5.精検受診率は最低で34.5%。平均72.1%だった。
◎ 4人に1人が精密検診を受けていない現実がある。抜本的対策 をたてなければならない!! B.喀疾検診 1.高検診率の自治体 櫛形町 ◎ 愛育会組織を利用。厚生大臣表彰を受けた!! 富士吉田市 大月市 都留市 ◎ ミニドックなどの従来からある検診組織を利用。 2.未実施、低実施率の自治体 春日居町 増穂町 須玉町 白州町 甲府市 石和町 中道町 ◎ 喀疾検診の意味を周知徹底すること。厄年検診、人間ドックな どを利用すべきだ。 一30一C.検診発見肺癌 39人の肺癌が発見された。他に17人の肺癌疑いが存在する。組織 型、臨床病期、治療内容などの情報が得られていない。 ◎ 評価可能な情報を得る手段、システムを創り出さなければなら ない。市町村、検診機関への医師、医師会の協力、地域癌登録の 実施がどうしても必要であろう。 肺癌検診ではレ線検診と喀疾検診を含み、検診に従事する人も職種も他 の検診に比べ多く、精度管理もより複雑となるといわれている。今回の検 討からも、その複雑性は充分感じられたが、検診体制や情報収集システム がまだ未発達であり、肺癌検診そのものが発展途上にあるようである。山 梨肺癌研究会には県内の肺癌の治療、研究にあたっているほとんどの医療 機関、その従事者が含まれている。肺癌登録の導入をはじめとして、今後 の肺癌検診に対する正面、側面からの肺癌研究会の果たす役割は実に大き なものであろう。会員諸氏の肺癌検診への積極的な参加、援助をお願いし て結語とする。 一31一