系統農協の農村管理体制への発展(4)
― 1 9 7 0 年 代 の 日 本 の 農 業 問 題 ( 5 ) ― 目 次Ⅰ
序説 農協の理論的解明の課題Ⅰ
Ⅰ 農村 の変貌 と農協組織Ⅰ
I
l 農村経済の変化 と農協運営 (以上,前号掲載)Ⅰ
Ⅴ
流通機構 としての系統農協 (1) 農 村経済 と流通問題 (以上,本号掲載)(
2
)
系統農協 と農村流通 (3)農協運合会Ⅴ
農村管理体制への発展 以上Ⅰ
Ⅴ
流 通 機 構 として の系 統 農協 (1)農村経済 と流通問題 系統農 協 の流通機構側 面 農 民協 同組合 は本 莱,農民の私的経済的利益 にこたえて経済的役割 をはたす団体 である。商 品経済社会 においては, 家族経営農業 とい う生産単位は,一定の規模の連 合,集積 に よっては じめて商品取引単位 を実現す ることがで きる。農産物 の販売,農家用品の購入 のいずれ もそ うである。 これは農民協同組合の も っとも基礎 的 な経済的機能であ る。農民の私的経 済的利益 が協 同組合による商品取引単位 として実 現 される場 合 は,連合,集積 された私的利益であ る。 なお農 民協同組合の私的利益団体 としての側 面は,例 えは員外利用制限原則 にみ ることがで き る。 この原 則 は協 同組合が閉鎖的な私的利益団体 であることを しめ している。 しか し,iっが国の農協 の実際 にみ るよ うに,協 同組合は単 な る閉鎖的な私的利益団体ではな く, 社会的に公 開 された側面がある。例 えば,農産物 の販売事業 についての販売委託者は組合員に限定 され るが,農産物 の買手 は何 らの限定 もな く,そ菅
沼
正
久
の意味で公開的である。農村向け工業 品の購買事 業 において,その買手は組合員に限定 され るが, 協 同組合 に対す る供給者は限定がな く公開的であ る。その公開的側面においては,協 同組合は社会 的 な経済的機能をはたす商企業であ り,他の同校 の企業 と同様に売買を通ず る流通機能 をはた し, 企業間競争の関係にもある。 本来,構成員の私的利益 に立脚す る協同組合が, 社会的経済的機能をはたす ことは矛盾 である。協 同組合が構成員の私的利益 の要求に こたえて, よ り多 くの経済的利益を実現 しようとす るには, よ り効率的 な社会的経済的機能を遂行す る必要があ る. しか し,社会的経済的機能の遂行 は必 らず L ち,その構成員の私的利益の要求に こた えるもの ではな く,協同組合員の企業的利益を充足す る限 りにおいて,しば しは社会的経済機能 の遂行 を優 先 させ る。 わが国の系統農協の歴史的事実には,その よ う な数多 くの例証がある。農協経済事業の代表的品 目である米,肥飼料の取扱いでは,農協 は食糧管 理法にもとず く米の指定集荷団体であ り,また, 肥料産業独 占の もとでの肥料の配給機構である。 配合飼料の供給 も同様である。 ともに物流が商流 と分離 され,所定の価格体系 のもとで,系統農協 は物流機能を遂行す る。 この代表3品 目に類似 した関係が,連合会 と農 協 の経済関係にある。一般的 に農協 は農家の私的 経済的利益の連合,集積体である以前 に,連合会 の在村エージェン トとして社会的経済的摸能 を遂 行す る.例 えは農協は連合会購買事業 毎事業推進 の対象であ り,連合会販売事業の集荷単位であ り, 連合会信用事業の資金吸収機構である とい う,一 つの側面を もつ。い うまで もな く,連合会 と農協 の関係は単 なる流通機構ではな く,社会的経済的 側面だけではない。そ こには農協法 に もとづ く連 合会 と会員の関係,つ ま り会員によって連合会が-1
5-組織 される法制的関係があ り,連合会理事は会員 の中か ら選任 され る とい う組織的関係がある。 こ の法制的,組織的関係は,連合会が農協を単位 と す る,農家の私的経済的利益の連合,集積体をな す とい う形式的保証であるo 連合会 と農協 のあ いだの社会的流通機構 の関 係,社会的経済的関係は,社会的経済的にす ぐれ た機能 を発揮す るものでな くてはならない。連合 会のす ぐれた社会的経済的機能によって,農協に 集積 された農家の私的経済的利益の追求に貢献で きるか らである
。1
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年代の半ば以来の農業恐慌 の深化す る状況 の もとでは,農家の私的利益 の追 求はよ り一層 きび しさをましている。農産物価格 の有利 な実現,低落す る価格に対抗 した増産を背 景 とした農産物販売の処理 とい う要求がある。諸 要因によるコス トの上昇を価格に転嫁 した農村向 け工業品の価格上昇-の対抗,抑制 とい う要求が ある。 この要求 は農家の私的経済的利益の集積体 としての農協 に集積 され る。 他方,社会的経済的状況は きび しく,連合会の 経営環境は悪化 の一途 をた どることになる。都市 勤労者の所得低迷に由来す る農産物需要の停滞, 農家所得の低迷 に由来す る農家向け工業品の需要 の停滞 によって,市場規模は縮少 し,物財の移動 は鈍化す る。市場をめ ぐる企業間競争の激化 は, 連合会企業を例外 とす るものではない。社会経済 的に自立 した企業の側面において,連合会の企業 戟略はたえざる革新,転換が不可避である。例 え は,近年,農協連合会が 「協 同会社」 の形式を利 用す るな どして,大都市 における農畜産物の卸売 業分野に進 出 した。 これは一部の農協資本の都市 卸売商業資本への転化 を意味するもので, これに よって系統農協 の事業 は産地側の出荷販売か ら, 集荷買付の側へ移行す ることになる。 また,1
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0
年 に全農が重要野菜の需給調整事業 に着手 し,1
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1
年 に全中が農産物の需給調整,計 画生産 の指導 に着手 した。 これは農協中央枚関が 農畜産物の生産者 と消費者の関係を超 えた第三者 の調整機関の立場に移行 した ものであ り,従来, 米の例 にみ るよ うに国家の名において執行 されて きた社会的機能 を敢 えて担 当す る こ とを意味す る。農協連合会が第三者的な社会的琉能を遂行す ることによ り,農協 に集積 された農家の私的経済 的利益 との対立面を形成す ることになる。 農業恐慌 と農業問題1
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7
0
年代の中期以来,農 畜産物需給 における過剰が顔著 となった。 これは 農業恐慌 の現象であ り, 日本の資本主義経済恐慌 の農業部門での表現であ り, また,世界経済恐慌 の一部分である. 経済の変調 は1
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71年のニクソン ・シ ョックを き っかけ として生 じ,7
3
年のオイル ・シ ョックが一 つの頂点 となって,世界的 な規模 の経済恐慌が進 行 した。1
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-7
5
年,恐慌 は主要 な先進資本主義 国における同時不況 として現われ,7
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年の小 康状態をはさんで,1
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年 に深刻 な不況 とな り,1
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2
年半 ばには多 くの発展途上 国を もま きこん だ,文字通 りの世界同時不況の局面を迎 えた。 先進資本主義国の不況は過剰生産恐慌の-局面 であ って,各国の国内市場 の縮小,狭陰化,途上 国経済の沈滞による市場縮小 と途上国向け貿易規 模の縮小 とい う,二重の市場縮小の傾向を ともな っている。1
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年代の高度成長期 に膨張 した生産 力が,激烈 な対外輸出,市場嘉争 を くりひろげ, 各国は 自国市場 の保護に狂奔 した。 日米関係では 輸 出産業 として育成 された 日本工業 品 の対 米輸 出, アメ リカの対 日貿易赤字の累増をめ ぐって, 貿易摩擦が表面化 し, アメ リカ側の対 日農産物輸 出圧力を誘発 した。わが国の穀物輸入依存率6
8
%
とい う需給関係の背景をなす事情である。 わが国の農業恐慌 にはい くつかの重要 な特徴が ある。国民経済の主要部分を しめ る産業,流通部 門における不況,勤労者の所得伸 び悩み,消費購 買力の停滞,それに由来す る農産物市場の縮小は 一般的現象である。それに対 し特徴の第1
は農産 物需給 における過剰が,国内産農産物の過剰 と輸 入農産物の過剰 との合成によって生 じていること である。 この ことは過剰の解決において,輸入問 題が異常 な重要性を もつ ことを しめ している。 第2
の特徴は,1
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-7
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年代の高度成長期 に極 端 に進 んだ農工業不均等発展 とい う,農業構造 に 由来す るもので,過剰に対す る農業の 自律的な適 応が鈍化 していることである。 この農工業不均等 発展の もとで,都市の農産物消費購買力が国内農 業生産力を超 える規模で形成 された。それゆえあ る程度の輸入依存が不可避である。そ して輸入農-1
6-産物価格が農産物価格問題の基底 とな り,価格政 策を拘束 して い る。 また,製造業,素材産業の独 占価格が農村 向け工業品価格の上昇を通 じて,農 産物生産費,農家生計費の増嵩圧力をな してい る ことも看過 しえない。 農工業不 均 等発展 が農業構造 問題 に投 じた 影 は,農地 の高地価 と農家の兼業労働であ る。 この 二つの要素 が農地の流動化を阻害 して,農地の集 積 にもとづ く労働生産性の高い経営体, いわゆ る 土地利用型農業の発展す る道を閉 ざした ことは周 知の如 くで あ る。他方,輸入飼料にた よる畜産, 施設園芸な ど,土地利用の基礎 を欠いた分野で労 働生産性の相対的に高い農業経営が発展 した。 こ の よ うに農業 内部で労働生産性の不均等発展が進 んだ。 二つの傾 向の農業経営は,それぞれの事情に も とづいて,恐慌 の深化に伴な う過剰,交易条件 の 悪化 とい う事態 に対 して, 自律的な減産 の方向で はな く,む しろ増産による所得絶対額 の確保を志 向 した。一方 の兼業農家が主力をなす米作は,1970 年 と1978年 の二度 にわた って強化 された減反政策 の もとで,新たな展開を しめ した。多 くの兼業米 作農家は所在 の専業農家の協力を得て,各種の農 業生産組織 を創造 し, また耕作受委託の方法を と り入れて,単位面積当 り収量の向上 を基礎 とした 省力,労働 生産性の向上をはかる,米作農業生産 力 の新たな展開に進 んだ。 また,1978年 の水 田利 用再編,転 作 とい う政策要求に対 しては,野菜作 を主 とした転作のなかで積極的な増産意欲 を発揮 した。 他方,畜産,園芸に傾斜 した専業農家 は,畜種, 作 目の選択 と専門化 に進み,交易条件の悪化 に対 しては多頭 羽飼育経営,施設拡大 と周年栽培 な ど の方法に よる,経営規模 の拡大に向 った。経営規 模 の拡大 は所与の交易条件の もとでの限界経営の 水準をお しあげ,農家の陶汰,分解 を促進 した。 そ して限界 以上 の経営 は積極 的 な増 産 を志 向 し た。 これは恐慌 の もとで形成 された新 しい生産力 であ り,一 部 の農家は自立的な商品取引単位 の能 力を実現す るにいた った。 以上の よ うに恐慌の もとで,農業 のすべての分 野で農業生 産力の新たな展開がみ られた。 この新 しい生産力 の基調が増産 にあることは言 うまで も ないが,その増産基調は過剰 とい う市場条件 と矛 盾す る。 しか し,その矛盾は一面では過剰 とい う 市場条件 と対立す る性質 の ものであ るが,反面, 過剰の重要 な要素をなす輸入農産物 と対立す る性 質の矛盾であ る。 こ うして輸入農産物 に対す る新 たな抗体が形成 された ことが,最近 数年 らい, ア メ リカ政府の牛 肉, オレンジを代表 とす る農産物 の対 日輸 出拡大圧力に対抗 して,粘着 力のある反 対運動の根源をな してい ることを看過す ることが で きない。 農産物流通価格政策の破綻 進展す る農業恐慌 の過程 の第3の特徴は,従来 の農産物流通価格政 策の破綻である。高度経済成長政策 の一部 をな し た農産物流通価格政策は,過剰の深化す る事態 の もとで,機能面か らも財政面か らも破綻 し,検討 が迫 られた。 その直接の きっかけは政府 の財政危 機 にあ って,政策費用の削減が要求 された ことで あ った。経済の高度成長 の もとで工農業不均等発 展が進むなかで,農業生産を維持 し,都市人 口に たいす る食料農産物の供給を保証す るため に各種 の価格政策が提起 され,農業粗生産額 の70%に及 ぶ広範囲で価格政策が携能 した。農業恐慌,供給 過剰の影響はさまざまの形で価格政策 に及 んだ。 米に関す る食管制 については,生産者米価 と消 費者米価の間の逆 ざや現象による食管会計赤字, 食料消費支 出の伸 び悩み と主食消費構成の変化を 反映 した米在庫 の累積 に よる在庫関連費用 の増加 と食管会計赤字の増加を指摘で きる。他の農産物 については,野菜供給安定基金や鶏卵価格, ブロ イラー価格,肉用牛仔牛価格な どの各安定基金が, 価格下落 に ともな う補てん,交付金が増 した こと によって,基金 が枯渇 し機能が低下 した ことを指 摘で きる。 また,原料乳価不足払 い法 にも とづ く 保証乳価 は,政府の不足払い分の助成 を得 て,原 料乳の生産 と供給を保証す る制度であ る。しか し, 原料乳の増産が進み,乳製品輸入が増加す るにつ れて,乳製品の在庫が増加す るとい う過剰現象が 出現 した。政府 は1978年以来,保証価格を据置 き, 79年以来,不足払い対象の乳量 に限度数量 を設 け て,原料乳生産 の制限措置 を とった。 こ うして不 足払 い法 は,原料乳の増産奨励の制度 か ら,生産 調整の制度に転換 したわ けである。 - 1
7-上述の農産物価格,流通政策 と制度は, いずれ も農産物の増産 と都市への供給 を促進す る 目的で 制定 された。財政資金 の支 出は,いわばそのため の社会的 コス トであ ったo Lか し,過剰に由来す る増産 と価格下落 があいつ ぎ,補 てん,交付金支 出が増額を迫 られ る事態が出現す るや,その政策 と制度は機能が まひ し,財政的に破綻せ ざるを得 な くな った。その本質的 な矛盾 は,一方では従来 の生産 と供給を保証す る政策,制度は継続 しなけ ればならず,他方 では価格の低落,補てん交付財 源 の枯渇 とい う事態 にせ ま られ, この事態 を打開 す るには生産制限,計画化 に着手 しなければな ら な くなった ことであ る。 農業恐慌 の過程 についての第4の特徴は,恐慌 に固有な現象であ る供給過剰 と価格下落が,ひき つづ き増加す る輸 入農産物の圧力を うけて, よ り 深刻 なもの となった ことである。すでに指摘 した よ うに,高度経済成長政策 は一方では工農業の不 均等発展,農業の発展の立 ちお くれ とい う事態を 生 じ,他方では都市 に勤労者の膨大な人 口を集中 して,巨大 な食料需要 をつ くり出す とい う矛盾 に みちみちていた。 高度成長期 に急増 した農産物 と その加工品の輸入 は この矛盾を解決す る方策であ り, また工業品輸 出によって取得 した外貨が農産 物輸入を可能に した。 しか し, アメ リカをふ くむ 世界的な規模での農産物 の需給緩和,過剰傾向の もとでは,農産物輸入はわが国に世界的な過剰を もち込み,わが国における農産物 の過剰を激化す るもの となった。 現在進行 してい る世界恐慌 との関係でい うと, 農産物輸入は特異 な地位 を占めている。第
1
にわ が国の工業品輸出に伴な う貿易摩擦を緩和す る手 段 に供 されている。 したが って,わが国の資本主 義経済の発展が,工業 品の輸 出に依存 して,国内 市場の狭隆を補充す る方式を とりつづける限 り, 農産物輸入を拡大す る基調がつづ くことになる。 第2
に輸入農産物は政府の独 占的な食塩政策, 価格政策の手段 として利用 され 政府 はこれによ って経済的方法を用いて市場 に介入す る。食管法 によって輸入米麦 は政府が独 占的 に管理 し,政府 が定める価格によって供給す る。 また畜産物価格 安定法に もとづいて,畜産振興事業団は輸入畜肉, 乳製品につ いて,市場価格が基準 を超 えて高騰す ると放 出 し,基準以下 に低落す ると買付け,市場 隔離を して価格を維持す る。 第3に輸入農産物 は輸入商社,食肉加工 メーカ ー,食肉問屋の市場 占有率の維持に貢献 している。 畜産振 興事業 団の1981年度輸 入豚 肉取扱 い調 査 (1982年10月)によると,輸入は食 肉輸入商社協 議会会員商社29社 と他の1社,計30社が92%を占 有 した.輸入品の87%が食肉加工 メーカーに供給 された。食 肉問屋は仕入れの90%を国産 に依存 し ているが,輸入品の仕入れの57%は商社依存であ る(
F日本農業新聞』1983年5月12日,13日,14日)0 農業恐慌はすでに高度経済成長期 に農村内部で 進行 していた農家の兼業化,農家労働力の高齢化 を一層促進 したこその反面,労働生産性を向上 し,早 位面積当 り収量を向上 させた農業生産組織による, 新たな農業生産力の発展を促進 した。経済恐慌 の す こぶ る重要 な現象 としての貿易摩擦は,農産物 輸入増大の圧力 とな り,輸入農産物の増加 は過剰 傾 向を よ り深刻的な もの としている。そ して輸入 農産物 は政府 と独占的商社,加工 メーカーの,良 業 の分野における優勢を保証す る手段 とな り,農 家 との対抗局面をつ くり出 している。農民 と農業 団体が農産物輸入の 自由化拡大に反対 し,食品産 業をは じめ とす る財界が 自由化促進 に動 き, きび しい対立関係に入 った ことは,今回の農業恐慌が もた らした新たな事態である。 過剰 と需給調整策 国内産 と輸入の両面か ら形 成 された農畜産物の供給過剰状態は,1970年代の 半 ば以降に深刻の程度 を増 し,政府 と農業団体が 積極的 に需給調整策を講ず るまでにいた った。需 給調整策は農産物の種類によって異な り, 出荷供 給 の調整か ら生産制限にいた る多様 な方策が試み られている。今回の調整は二つの側面が並行 して いる。 まず,恐慌 による過剰 の処理策 としての調 整が一面である。 また,世代交替,年齢構成の変 化が もた らした消費需要構成 の変化 に対応 した生 産,供給の調整がいま一つの側面である。二つの 性質を異 に した調整が重複 して進め られなければ な らなかった。 他方,消費購買力の低下に ともな う過剰 とい う 一般的条件の もとで,流通機構の不備 に伴 な う, 具体的市場 における過剰 と不足の並存 とい う状況 - 18-に も対処す る必要 もあった。野菜 の需給状況の例 にみ る如 くである。高度経済成長政策は都市人 口 の集中 と膨 張を招 き,近郊におけ る宅地,工場用 地 の急増 に よる近 郊野菜産地 の崩 壊 を ひ き起 し た。近郊産地 に替 る供給をはか るため,野菜生産 出荷安定法
(
1
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6
6
年施行) は指定産地制度を通 じ て,遠隔地 に作付品 目の専門化 した大産地の発展 を促進 した。 この大産地 の共販に よる大量 出荷 は い きおい, 大消費地域中央市場 に集中 して,そ こ に供給過 剰 を形成 し,他方,荷捌 き容量の小規模 な地方市場 における入荷不足をつ くりだ した (山 口照雄「野菜過剰の構造 とその打開策」
『農業 と経 済』1
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8
1
年11月号)。 また過 剰 にたいする需給調整策は,一つの作 目に ついての産地の交替,新 しい生産力について考慮 す る必要 が あった。例 えは米の第2
次生産調整 と しての水 田利用再編対策(
1
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7
8
年開始)は,水稲 の転作 として野菜作を促進 した。転作野菜 は1
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7
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年8
万ha
,1
9
8
1
年1
0.
8
万h
a
に及んだが,野菜総作 付面積6
4
万h
a(
1
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7
8
年)の1
0
%
以上に相当す る面 積であ り, 当然,-野菜の品 目ごとの産地分布 の変 更をせ ま る ものであった。 農業恐慌 の深化 につれて,農業 の主要部門にお いて,1
9
7
0
年代の後半期以降,あいついで需給調 整,つ ま り出荷供給の調整,そ して生産調整が試 み られた。 米。1
97
8
年,水田利用再編対策。 野菜。1
9
7
8
年,全農 「中期5
カ年計画」に よる 需給調整。1
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8
0
年 「重要野菜需給調整特別事業」。 温州み かん。1
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7
9-8
3
年みかん園転換計画。 生乳。1
9
7
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年,不足払 い制度の保証価格の対象 数量 -限度数量の規定。 豚肉。1
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年養豚経営安定推進会議が繁殖牝豚 の頭数淘汰。 鶏卵。1
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7
4
年,採卵成鶏めす3,
0
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0
羽以上生産者 の増羽抑 制。 供給調 整か ら生産調整にいた るさまざまの程度 の過剰対策 が各方面か ら講 じられたが,系統農協 は一般的 に この措置に同調 し, また中央機関が調 整の推進 者 となった。調整機関に転化 した ことに よって, 農協中央機関は農家の私的経済的利益 の 集積体の立場か ら,社会的な管理者の立場に移行 した。それは系統農協を農村経済 の管理体制 に転 化 させ ることを意味 した。農業恐慌 の深 ま りにつ れて,系統農協が農村管理の機能 を遂行す るよ う になった ことは,それが成功 した場合,一つの転 機 となることは否定で きない。 こ との成否 は予断 し難 い。 なぜ な らは生産手段 と土地 の農民的私有 制 を基礎 とした農村経済を,資本主義経済 の条件 のもとで計画の軌道にのせ ることは,協同組合 と しては協 同組合原則に対す るい くつかの背理 を解 決 しなければな らないか らである。1
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0
年代農業問題 と農協 農業恐慌 が進展す る 情勢 が系統農協 の事業 の環境 を悪 化 させ た状 況 を,全農 はつ ぎのよ うに概括 した。 「低成長経済の定着,米の生産調整 の進行,主要 農産物 の需給不均衡の拡大 と価格 の低迷,金融 自 由化の進展,各事業分野における他企業 との競合 の激化 な ど,農協各事業をめ ぐる諸環境は,近年 一段 と厳 しさを増 している」(全農,1
9
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2
年11月, 全国県連会長会議)。 現状にたいす るこのよ うな認識 に立 って,全農 は農協 の各種事業の伸 び率が鈍化 し,経営収支が 悪化す る傾向にあると判断 したのであ る。全農 の 行なった現状認識 と発展方向の観測 は,全 国農協 中央会の1
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年8
月,
『
1
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0
年代 日本農業の課題 と 農協の対策』 と基調を同 じくす る ものであ る。 こ の 「課題 と対策」は同年1
0
月の第1
5
回全国農協大 会の決議 として採択 された文献であ って,1
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7
0
年 代の 日本農業問題を分析 し,8
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年代 の農協戦略を 提起 した ものである。「課題 と対策」が「
1
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0
年代 の農業問題の性格」 と題 した現状認識 は大要,つ ぎの如 くである。 日本経済。1
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7
0
年代の前半以来,経済成長率は 年5-6%
と鈍化 し,以前の半分 の水準に低下 し た. これは国際経済環篤 の変化 と技術進歩 の停滞 に起因 している。1
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年 の中頃か ら貿易摩擦が表 面化 した。そ こで1
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0
年代 に成長 を維持す るには, 海外投資の拡大 と個人消費支 出の増大が求め られ る。- 〔世界経済恐慌 もしくは景気循環 の視点 の欠落, したが って個人消費支 出の増大の根拠 が 不明〕。 高成長か ら中成長-移行。
1
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3
年 と7
9
年の石油, 資源価格の急騰が成長を制約す る。高成長か ら中ー1
9-成長への移行に伴 ない,所得増 による需要増 とい う要因は失 なわれ る。 コス ト増大 を価格に転嫁す ることが難 しくな り,企業収益,賃金,雇用 も伸 び悩む ことになる- 〔換言す ると経済恐慌の脱 出が石油,資源価格 の上昇 によって困難 となる。 総 じて経済活動は縮小傾 向をた ど り,加 えて恐慌 の もとで企業経営 は不振,失業の圧力を受 けて実 質賃金 の上昇は期待で きない〕。 農産物の需給。食料農産物 の供給 は
1
9
6
0
年∼7
7
年間に1.
8
倍に増加 したが,輸入増のため国内農業 生産は1.
4
倍の伸 びに とどまった。米の需給不均衡 が生 じ,1
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7
8
年度 に水 田利用再編対策に着手 した。 この対策は土地利用型 の作物を軸 に して,本格的 な農業再編成 に取 り組 む必要 を示 唆 して い る。1
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7
3
年の石油危機 を転機 に農産物需要 は停滞をつ づけている。今後,需要 に見合 った計画的生産 を 進め る必要がある。近年国民 の食料最終消費支 出 構成 の うち,国内農業 の取得分は29%にす ぎない。 流通,加工,サ ー ビス経費が3分の2を しめ る。 この ことは農産物流通が付加価値 の問題を併せ解 決すべ きことを示唆 している- 〔経済恐慌 の深 化は総 じて農産物市場 を狭陰な もの とし,加 えて 輸入農産物圧力が市場問題を激化 させている。過 剰資本が食品産業部門に流入 し,農民は新たに食 品加工資本 と対立す る関係に入 り込 む ことになっ た〕。 農民 の兼業化 と高齢化。農業の基幹的従事者 は1
9
7
8
年 に4
5
4
万人 とな り,6
0
年代 と比べて半減 し た。農 業就業者 の 高 齢 化 が進 み,今後1
0
年 間 に3
0-4
0
歳代 は著減 し,
5
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歳以上の高齢層がふ える。1
9
8
0
年代後半 には農業労働力の減少 によって農業 構造が変化す る。すでに農家は 自立 した営農単位 でな く,1
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7
5
年農業 セ ンサスによると,農業生産 組織参加の農家が33%を しめ,相対の農作業受委 託依存 の農家 も25%に達 した- 〔兼業化 と高齢 化 は農業危枚の深化を しめす指標である。経済の 高度成長政策は伝統的 な生産様式であ った家族経 営を崩壊にみちび き,過渡的 に農業生産組織を生 みだ したが,それ に替 る新たな生産様式を創造す るに至 っていない とい う意味で,農業の現状を農 業危機 と規定す る ことがで きる〕。 系統農協 と農業再編成。1
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8
0
年代半ばに,8
0
万ha
の稲作を他作 目に転換す るとい う農業再編成の課 題 に直面す る。系統農協が この課題 にこた える方 法 は次の通 りである。第1は農協が地域農業振興 計画を立てる。第2
は農業経営の安定のため,地 域農業振興計画を基礎に して需給調整機能を強化 す る。 このため生産,流通 ,価格,輸出入 の国貨 調整な どの農業施策の改定 が必要 となる- 〔一 方で近 い将来 に世界的な食料需給 の不安定化を予 想 し,他方で米の減産を提 唱す ることは不可解 な ことである。米作をふ くむ農畜産物 の過剰供給(棉 入 と国内産の合成)に対処 して,農協中央税関が 需給調整税関に転化す るこ とは,系統農協の歴史 的転換 である。 なぜ なら農協連合会が需給調整事 業 に着手す ることは,生産者 団体の立場か ら生産 者 と消費者の中間に位置す る第三者の立場 に公然 と移行す ることを意味す るか らである。 また,逮 合会は連合会不利用の農協 を アウ トサイダーとし て規制力を行使す ることが不可避 となる。農協事 業 の集積 としての連合会事業 とい う性質か ら,逮 合会事業の構成部分 として の農協事業 とい う性質 への転換を意味す る。 この意味で も歴史的転換で あ る〕。 農産物過剰の事情1
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0
年代後半期以来 の農産 物需給 の基本的特徴は過剰 であるが,それは以下 の複雑 な事情によって形づ くられている。 まず, 基本的 な事情は都市勤労者 の消費購買力の低迷で あ る。 これは実質賃金の伸 び悩み と,所得税 な ど の高額負担 による可処分所 得 の低迷 に由来す る。 第2
はひきつづ き増大す る輸入農産物 の圧力であ るが, これは 日本工業品の輸 出増加,貿易摩擦の 緩和措置に由来す る。第3は農産物価格の下落に 対抗 した,所得維持策 としての増産,供給増であ る。 農産物価格問題 にはさま ざまの側面があ るが, その一つは政府の低農産物価格政策による価格低 下であ り,それは政府財政 の危機 と価格政策費支 出の削減 に由来す る。いま一 つは農村向け工業品 (農業生産資材 と農家生活資材) の値上げに伴 な う,農業生産物財費の増大,農産物販売の実質所 得の低下であ り,家計費の増嵩 に対す る追加所得 の必要 である。 さらに農業生産 の硬直化が,価格 低迷の条件下での増産ない し生産量維持を招いて いる。 それは主 として農家 の兼業化,高齢化に由ー2
0-釆す る。 また,米の減産政策 が他作物への転換 を 誘導 し,転換 作物での生産過剰を招 いている。 第
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に,市 場流通機構 の不備 と産地 出荷団体 の 出荷販売方式 が,特定市場 におけ る局部的 な需給 不均衡,供給過剰を ひき起 してい る。 この具体的 な取 引上 の不 均衡 は,過剰問題 と区別す る必要 が あ るが,現在 では過剰問題 の一部 であ り,過剰 の 現わ れ方 を きび し くす る もの として看過 しえ な い。 ここで言 う市場流通機構 の不備 とは,卸売能 刀,市場価 格形成 における大消費地市場 と地方都 市市場 の格 差 であ り,それが大消費地市場への過 度 の入荷 を招 き,過剰を生 んでい る。過剰 を招 く 産地 出荷団体 の出荷販売方法 は,産地形成 に由来 してい る。 つ ま り,単純少数品 目に集中 した大量 生産産地が大都市 か らの遠隔地 に荷状況 に適合 し た 出荷調整 が困難 とな り, また荷 さば き数量 の少 ない地方市場 出荷,地場流通を回避す る傾 向にあ ることであ る。 第5に系統 農協 の特殊 な事業運営を指摘す る必 要 があ る。 農協 の事業運営 は伝統的 に米集荷 の販 売事業,肥 料供給 の購買事業,余裕金 の中金吸収 の信用事業 にみ るよ うに,中央機 関集中の運営 で あ る。 これ は米,肥料お よび余裕金運用の事業 の よ うに,中央機関が中心 とな って運営す る事業 の み に偏侍 して きた習慣 の結果であ る。 この習慣 に もとづいて,本来,多様 な運営方法の可能 な事業, 品 目も中央 機関集中,系統全利用の方 向に誘導 し た。例 えば青 果物,畜産物がそれであ って,そ う した中央機 関集中的 な事業運営方式 のために,農 協 の事業 は いち じるしく硬直的な もの とな り,前 述 の よ うな大消費地域市場への過度の集中 に拍 車 をかけるこ ととな った。 他方,中央機関集中的 な事業運営方式 はそのた めに農家の農協利用,農協 の連合会利用を低調 と す る結果を招 いた。近年,農業恐慌 が深 ま るなか で,価格低 迷,実質販売所得 の低下 に抗 して,規 模拡大に よ って経営を改善 し,生産力 を高めて き た少数の富 裕農家層 もしくは農家集団は農協利用 を回避 し, 独立 した商 品販売活動 を展開す る傾 向 にあ る。 この農家層 は地方市場流通 に参加す る限 りでは,単 独で商 品取引単位 の条件を具備 してい る。恐慌 の条件下で前進 した農家層,農家集団の 農協不利用 の傾 向をふ くめて,農村市場 におけ る 農協事業 の占有率 の高 くないのは,中央機関集中 的 な伝統的な事業運営方式の所産であ る。 農業生産 と流通動向 1970年代か ら現在 にいた る最近年 の,代表的 な農産物 にみ る生産 と流通の 動 向はつ ぎの通 りである。 米 1978年 の新生産調整政策 の根拠 とされた資 料 によると,米の潜在生産量1,340万 トン,総需要 量1,170万 トン,余剰170万 トンであ る。総需要量 の内訳 は農家消費340万 トン,政府米575万 トン, 自主流通米255万 トンである (需給計画数値)。 凶 作年 の1980年 には生産量975万 トソ,うち農家保有 322万 トン,政府米367万 トン,自主米287万 トンで あ った。自主米は改正食管法の言 う政府 管理米653 万 トンの44%を しめ るにいた った。 また,農家保 有米 の一部 と超過米 をふ くむ 自由米 は200万 トン を下 らない と推定 され る。す なわち, 米の流通 に は政府米, 自主米, 自由米の3形態 が あ り,価格 は政府米17,674円(60キ ロ), 自主米20,850円 (節 潟 コシ ヒカ リ),自由米15,891円の3種 の水準で形 成 されている。つ ま り,米市場 は三層構造 をな し, 各層の流通 と価格は相互 に影響 しあい,有機的に 結 びつ いている。 米はいぜ ん として農業 の根幹の作 目であ り最 も 多 くの農家が生産す る作 目である。1980年の水稲 作農家 は383万戸,総農家数466万戸 の82%を しめ る。 また販売農家は295万戸である (「農業セ ンサ ス」)。そ して食糧庁調査 によると,販売農家260万 戸 の うち1ha経営以下 の農家が77%を しめ,販売 量661万 トソの うち40%を占有 してい る。この こと は水稲作の主力 が経営規模 の小 さい兼 業農家であ ることを物語 っている。 農協 は集落組識 を単位 に零細経営農 家 の米販売 を統括 し, その うえに経済連,全農 の集荷が成立 してい る。政府米集荷 において系統 農協3段階 は 95%を 占有 し, 自主流通米の集荷 にお いて も94% を占有 している(1980年産米)。系統農 協 の米集荷 の占有率の高 さ,系統利用率の高 さは食管制度 と 不可分の関係にあ る。 近年 の新 しい動向は,系統農協 の精 米卸売小売 分野- の進 出で ある。系統農協 は卸売業者 の13%, 小売業者 の17%を掌握 し,精米販売 の18%を占有 してい る。 この ことは系統農協が米生産者団体 の-21-性格 と併せて,都市米穀商業資本の-21-性格を もつ よ うになった ことを しめ している。 青果物 野菜 生産 の規模 は1980年 に64万ha, 1,622万 トン,輸入をふ くむ供給量1,669万 トン, うち卸売市場扱 い1,244万 トン(中央卸売市場扱い 643万 トン)である。果実は41万ha,618万 トン, 766万 トン,776万 トン(403万 トソ)である。中央 卸売市場セ リ価格が標準 となって,全国の卸売市 場価格に影響を与 えている。上位10県の生産集中 率は野菜が41% (は くさい)ない し81% (たまね ぎ),果物が74% (ぶ ど う) ないし99% (りんご) である。 この主産県の青果物が中央卸売市場に集 中的に出荷 され ることによって,中央卸売市場価 格が青果物市場価格の形成に影響 を与 える結果を 生む。主産地の形成は,産地間競争の所産である が
,
「野菜生産 出荷安定法」(1966年施行)の定め る指定産地制度 (14品 目,1,075産地)によって促 進 された。 青果物の卸売市場 における取引規模は零細であ る。市場卸売会社数1,624社 (中央市場127社,也 方市場1,497社)にたい し, 6万余の小売商が買参 入 として参加す る。産地 の市場出荷は野菜が出荷 団体5,845,出荷業者1,630人,産地市場48であ り, 果実がそれぞれ3,357団体,1,385人,19市場であ る。1971年の卸売市場法改正 によって予約相対取 引の道が開かれたが,主たる取引形態はセ リ取引 きであって,出荷者が価格形成に積極的に介入す る可能性は低 く,卸売会社セ リ人 の主導 によって 価格が形成 され る。 出荷量の集積が必 らず Lも有 利 な価格を形成 しないのはセ リ取引形態のためで あ る。 産地出荷団体の市場出荷をめ ぐる競争が価格問 題 にあることは言 うまで もないが,競争は出荷 占 有率の向上を通 じて行われ る。産地規模が大 きく な り,出荷数量が大量 になるほど,その全量の出 荷販売が主た る課題 となる。そ して占有率が向上 す るならは,一つの作柄 の出荷 シーズンの全期 を 通 じて,出回 り期,最盛期,端境期の高低各価格 を享受 し,平均的売 り値 を高めることがで きる。 青果物の出荷 における系統農協利用率は高 くな く,個人出荷,任意組合 出荷が地方市場 に対す る 「地場出荷」 において優勢である。1979年産の野 菜 出荷 における系統農協の占有率は農協53%,県 経済連47%,全農27%であった。果実のはあい, それぞれ49%,26%,15%であった。農家の農協 利用率の低位 は,個人お よび任意組合出荷の優勢 を しめ し,農協の県経済連利用率の高位,県経済 連 の全農利用率の低位は,県経済連が中央市場 に 対す る主要 な産地出荷団体であ り,競争主体であ ることを しめ している。 ちなみに主産県連合会の全農利用状況は,野菜 の上位10県の うち全農利用率の高位は北海道,千 葉,群馬お よび熊本の4道県連合会であって,長 野県経済連 は4%の水準 にある。果実のはあい青 蘇,山形の りんごと愛媛,熊本のみかんが80-90 %の全農利用率を しめすに とどまっている。そ こ で系統農協の青果物共販の現状を概括す ると,吹 の如 くである。 1.農家の農協利用率は50%程度 である。共同 販売の実質的内容は産地立地条件,農協の実務体 制 によって さまざまであ り,農協が出荷販売条件 のすべてを委任 されているとは言 えない。 2.農協の県経済連利用率は一般 に高いが,刺 用の内容は県連が出荷指図権を掌蛭 し,価格,出 荷運搬費の共同計算を実施 しているものか ら,市 場か らの送金取扱い程度の ものまで さまざまであ る。 3.県経済連の全農利用率は50%未満 と低位で ある。利用内容 も名 目的利用の程度か ら,分荷指 図権を委任 し代金回収,支払 いの全業務を全農 に 委任す る程度 まである。県経済連は一面では単独 の産地 出荷団体 として中央 と地方の卸売市場で販 売事業を営 なみ,反面では全農の地方集荷実務を 担当す る機構である。4
.全農の市場販売業務は,産地団体の集合体 として卸売市場 に対す る分荷を行な う業務 と,大 都市の卸売商業資本 として小売商に卸売を行 な う 業務の2系列 に分れ る。1980年度の事業実績 によ ると,前者が事業量 の87%を しめ,後者が13%を しめている。分荷業務 については,市場 のセ リ取 引形態 のために,大量集積の取引上の効果を期待 し難 く,各産地の出荷競合を回避す る役割 に とど まる。卸売販売業務は近年の新規業務にぞ くす る が,例 えは首都圏5
中央市場 (東京,千葉,船橋, 横浜,川崎)の卸売高の12%であって,市場 にお - 22-いて指導的役割をはたす には至 っていない。
5.
総 じて大消費地域市場での共販の入荷割合 は高い。例 えは東京中央市場入荷 における県経済 連の出荷量 は70%を しめ る。統計上のこの占有率 は,県連合会 の取扱いに よる出荷 とい う取扱形態 の共通性を意味す るもので,産地集荷人 もしくは 産地 出荷市場 の送 り荷 とい う取扱形態 との相異 を 意味す るにす ぎない。 しか し, これを占有率 と理 解 して,その内実が 「各県連合会 ごとのは らは ら の市場対応ゆ え,共販の占有率に応 じた力を発揮 していない」 と論ず る見解がある。全農関係者 の 見解である。 しか し,全農経済事業研究会が卸売市場取引 き は 「セ リ取引主体であ り,出荷者側が直接に価格 決定 に対 して介入す ることはほ とん どない
」
(『系 統経済事業方式 と段階機能j1975年3月) と言 う ように,70%を占有率 として とらえ,運営方式 の 如何によっては価格上の効果があると考 えるのは 現実的でない。各県連合会の出荷 は単一の数量 と しての占有率 を論ず るべ きものでな く,相互に対 抗産地を想定 した厳 しい競争関係にある。それを 象徴す るのが市場駐在員制度であって,1972年4 月現在で,県連派遣326人,県庁派遣110人,合計 436人の多数 に及 んでいる。市場駐在員は駐在市場 における毎 日の入荷状況を分析 し, とくに対抗関 係にある主産地か らの入荷情報をつかみ,分荷配 置を誘導す る業務を担当 している。 この ことは大 消費地域中央市場 向けの青果物流通においては, 各県連合会 が名実 ともに産地 出荷団体であ り,読 争 の単位をな していることを現わ している。 した が って,各県 が中央市場 出荷 にあた って全農を利 用す るはあい,利用が名 目的 とな り,販売代金 の 回収機能 を期 待す る程度 に とどま らざるを得 な い。 肉畜 肉畜流通 の特徴 は零細生産 と零細消費で あ り,枝肉,精 肉業者の零細経営である。1980年 に肉牛生産者 は36万戸,飼育頭数216万頭,肉豚 は 14万戸,1,000万頭である。それぞれ一戸平均5.9 頭,70.8頭であるが,多頭飼育の割合がふえて, 牛10頭以上飼 育が戸数の13%,飼育頭数の59%を 占め,豚100頭以上飼育が戸数の21%,頭数の64% を占め,一部 に自立 した取引単位 となるものも出 現 した。また,肉畜 の産地間競争の激化 につれて, 主産地の形成が進み,上位10県の生産集中率は牛 46%,豚52%にた っした0 1981年,全国の屠場数は477場 (1県に10場平均) であった。 また1979年商業統計表 による と食肉卸 売業者6.3万店,小売業者43.9万店である。1人の 卸売業者が7人の小売業者 に対す るにす ぎない と い う,零細 な卸売業の実態である。 したが って卸 売市場 も地方分散的であ って,中央卸売市場 (10 場)の取扱 占有率は牛20%,豚9%にみ るように, 国内産 に関す る限 り肉畜流通 の主流は地方市場流 通である。つま り,地方生産,地方消費の地場流 通である。 この零細分散の流通に加わ った近年 の新 しい要 素は輸入食肉の増加である。流通に しめ る割合は 牛28%,豚13%である。食肉輸入商社が新 しい流 通形態を もって登場 した。いま一つの新 しい要素 は食肉加工 メーカーであ って,主 として加工 に供 される部分肉は流通量の牛56%,豚59%である。 食 肉輸入商社 と加工 メーカーを結ぶ流通が,屠場 を中心 とした卸小売業者流通 と並び, 肉畜 -食 肉 流通の重層構造を形成す るに至 った。食 肉流通に 規制力を もつ加工 メーカーのあいだでは,生産の 集積,集中が進み,上位10社が加工品生産量 に占 め る占有率は1970年の62%か ら79年 に69%まで上 昇 した。 肉畜流通の重層構造に照応 して,系統農協 の肉 畜取扱 にも二つの傾向が並存 している。系統農協 の肉畜流通-の参入は,1980年度の実績 によると, 肉牛のはあい農協 が52%,県経済連が35%,全農 が20%であ った。 肉豚ではそれぞれ38%,31%, 13%の割合であった。 この数値を系統農協の占有 率 として解釈す る向きがあるが,必 らず Lも当 ら ない。例 えは農協の肉牛出荷63万頭が流通総量124 万頭の52%を占め る数値 は,何千 もの農協が個 々 に全 く別の屠場 -市場で取引 した ものの総和であ って,それ以上の意味はない。経済連 も47連合会 がそれぞれの市場で取引 したのであ るか ら,総和 の数値 は取引上の意味はない。全農取扱い肉牛24 万頭 も,指図権その他販売の全権が全農 に委任 さ れた もの以外は,総和の数値 に取引上 の意味はな い。 この数値は農家の肉畜販売 において,農協委託 - 23-出荷が少な く, 肉牛の48%,肉豚の62%が業者に 売 ら九,業者の手によって小売商 に供給 されてい ること, しか も,それが肉畜の主要 な流通形態で あることを しめ している。 しか し,農協 に販売委 託 された肉畜はその大部分が県経済連 に再委託 さ れたO農林省 F総合農協統計表』 によると,農協 の県連利用率は肉牛81%, 肉豚89%であ った。 し か し県経済連 がその肉畜 の販売 において,全農を 利用す る割合は肉牛35%,肉豚31%に とどまる。 この利用関係は一般的に系統農協 の肉畜販売は, 県経済連が主要 な販売主体 とな り,農協はその集 荷斡旋機能をはた していることを しめ している。 県経済連が受託 肉畜を全農 に販売委託す るのは, 主要な形態ではない。 これを要約す ると, 肉畜は 屠殺解体,枝 肉販売 までの限 りでは,各県内の地 方屠場を中心 とした地場流通品であると言 うこと がで きる。 各県の地方屠場で生産 された枝 肉の流通 を農協 傘下 (系統主導型)の全国の食 肉セ ンター69場 (各 県 に 1ないし2場開設) の1980年度 の取扱実績 に もとづいて考察す る。各センターの平均1日当 り 屠畜能力は418頭 (豚換算,以下同 じ)である。年 間の屠畜量638万頭であって,うち58%が枝 肉 とし て地場の精 肉流通に入 り,42%が部分肉として加 工 メーカーな どに流れた。 またセ ンターが処理 し た居畜量638万頭 の うち,農協経 由で県経済連に委 託 された ものは68%であ った。 つ ま り残 り32%は 農家の直接搬入か,あるいは県内の家畜商に よる 出荷搬入であ った。 注意すべ きことは畜産 における階層分化,多頭 羽飼育の傾向の もとで,農協を経 由せず に単独で 商品取引単位 の能力を もち,直接 に市場出荷す る 例が出現 した ことである。例 えば長野県篠 ノ井農 協管内のK養豚組合 (7戸協同)は年間700頭の出 荷能力を もち,長野食肉センターに直接出荷 して いる(名俵は同農協出荷分)。 ちなみに同セ ンター の標準取引価格 は全農建値 (前 日の芝浦,横浜, 立川,大官の 4市場 の加重平均)である。 食肉セ ンターにおける屠畜 -取引の実績 は,そ の地元産の肉畜が屠殺処理 され,大部分が枝肉 と して地元 の精 肉商の手 に よって小売 に流れ るこ と, また,相当量が部分肉 として生産 されて,加 工 メーカーの手 に渡 ることである。屠畜量の うち 全農向けが28%にすぎないことは,食肉セ ンターが 地場流通を主たる役割 としていることを しめす。そ して食 肉センターと同 じく,地方屠場 も地場流通 の扱構である。地方屠場 の取扱量が全国流通の肉 牛80%, 肉豚91%を占め ることは,わが国におけ る肉畜流通 の主たる部分が地場流通であることを 物語 っている。 肉畜流通 の主 た る部 分が地場流通 であ る こと は,系統農協の肉畜販売 において,農協 もしくは 県経済連 による販売が主要 な形態 をなす ことを意 味す る。そ して地場流通が主た る流通であること に よって,農家集団が 自立的 な商 品取引単位た り 得 る条件があ るのである。 こうした流通事情にお いては,全農が流通 に関与す ることは難 しい。 ま た,肉畜の過剰 とい う事態において,全農が需給 調整機関 となることも難 しい。1979年秋以降の豚 価低落は,畜 肉の需給不均衡 に原因がある とされ たが,その生産調整 (種牝豚の陶汰)は生産者団 体が組織 した 「養豚経営安定推進会議」の活躍に 待たなければならなか った。 畜産 と配合飼料流通 配合飼料 はわが国農業の 矛盾の結節点に位置 し,農業問題 と農協問題の解 明において枢要 な位置を しめてい る。 まず畜産物 生産費において52% (生乳),35% (把育牛),39 % (肉豚),63% (鶏卵),69% (ブロイラー)の 割合を しめ,畜産経営のかなめである (1980年)0 また,配合飼料の主原料をなす とうもろこし(1980 年1,031万 トン),こうりゃん (369万 トン),大豆油 かす(249万 トン)は大部分を輸入に依存 している。 そ して系統農協購買事業量の うち,1品 目として最 高額を しめている。1980年度に農協のはあい18%, 経済連19%,全農39%を しめ る戟略性の事業品 目 である。しか も,配合飼料生産2,225万 トンの うち 全農が884万 トン,40% (1980年度)を しめて業界 の トップの地位にあたる。 また,配合飼料価格安 定基金制度 にもとづ き,一部を財政資金の助成に まつ価格補 てんによって,価格引上げ操作を行な うなど,全農 と政府が緊密な関係が成立 している。 配合飼料の需給事情 1980年 の生産量 は2,225 万 トン,その うち全農が884万 トン(40%)を しめ, 全農をふ くむ10社が1,753万 トン(79%)を しめ る,
-24-高い集中度 を しめす。316社434工場 とい う大中小 規模の企業 が乱立 し,過 当競争を くりひろげる環 童の もとで,供給過剰の傾 向にあ る.そのなかで 全農 は原料 の輸入か ら加工製造,農村への供給, 製品の研究開発にいたる全分野を包摂 し, 自己完 結す る事業 体制を うち立 てている。 この事業体制 は製品の生産 占有率40%以上の影響力の行使を可 能 としてい る。 しか し, 配合飼料各社 の激 しい市場競争 と実需 者である畜 産農家への くい込みによって, また, 多頭羽飼育 の商品取引能力をそなえた畜産農家の 出現によって,農家の農協離れの傾向が生 じ,全 農系 -系統 農協の市場占有率が低下す る傾向があ る。 また,畜産農家の技術水準が向上 して,農協 営農指導 の水準を超 える傾向 もあ って,農協 の農 家離れをひ き起 している。 全農建値制 と価格競争 全農は40%の生産 占有 率 と系列的 な関係にある農協の市場 -畜産農家掌 握 を基礎 に して, 6カ月価格の建値制を とり,価 格主導権 を に ぎってい る。 ちなみ に系統農協 の 1980年度 の市場 占有は農協53%,県経済連46%, 全農40%で ある。農家段階で47%が農協以外,つ ま り商人系 か らの購入があ り,農協が県経済連 占 有率 との差13%,県経済連が全農 占有率 との差6 %をそれぞれ系統外,商人系か らの仕入れにた よ っている。 これはいずれ も商人系の価格攻勢 によ る。 商人系の価格攻勢は一般的 には安値に よるもの であるが,それは全農の建値の盲点を突いた もので あ るO全農建値の内訳はつ ぎの如 くである。原料 費73%,全 国ブール計算。搬入費は輸入基地 (全 国11カ所) か ら各県工場 までの搬入費で,県別, 工場別の実 費。加工製造費5%,全国 ブール計算。 供給経費9%, 3段階手数料,価格安定基金積立 金,畜産対策費,奨励費をふ くみ実費。配送費5 %,各県工 場 の農村 までの配送で県内 ブール計算。 この建値制の市場競争上の弱点は,例 えば搬入 費であって,輸入基地がすべて太平洋岸に偏在 し ているため,裏 日本への搬入実費が嵩む ことであ る。 また製造原価 の面では,各県協同会社工場53 工場の施設老朽化 (平均稼動経過年数15年)が進 衣,稼動率 が低 くコス トが高いことも指摘 されて いる。配送費も10年以前の畜産の産地分布に適応 し た工場立地のため,産地移動 につれて配送費が嵩 む傾向にあ る。 ちなみに工場 の設備稼動率は商人系 と比べて, 低位 にあるだけでな く低下の傾向にあ る。1973年 当時配合飼料工場は141社221工場, うち全農系59 工場 (占有率42%)であったが,1980年 には129社 210工場, うち全農系56工場 (占有率48%)と減少 した。全農系の設備 占有率の向上 は設備減少のお くれに よるもの と思われ る。配合飼料生産高は近 年 停滞 の傾 向にある。生産高 は1977年1,987万 ト ン,1978年2,107万 トン,1979年2,244万 トン,1980 年2,225万 トン,そ して1981年2,216万 トソと,1979 年 を ピークに減少傾向にある。 これは畜産 の飼育 頭羽数の伸 び悩みを反映 している。 配合飼料の市場 占有率は価格,決済条件 に左右 されるが, また畜産物取扱い とも関連 のあ ること が指摘 されてい る。全農系 メーカーの生産 占有率 は,農協の畜産物販売の割合 と比較的 に照応 して いる (1980年度実績)0 生産 占有率 畜産物販売割合 肉 牛 用 64.180 51.5(狗 乳 牛 用 40.2 57.1 豚 用 47.9 38.0 採 卵 鶏 用 30.0 20.5 ブロイラー用 26.1 19.7 す なわち,農協の畜産物販売が農家販売額 に し め る割合が比較的高い肉牛,生乳お よび肉豚 に対 して,その畜種向け配合飼料の生産 占有率 も高い。 しか し,鶏卵, ブロイラーな ど,農協販売割合が 低 く,商人系の集荷割合の高い分野ではその畜種 向け配合飼料の生産 占有率 も低い。 これは農家が 畜産物 の販売で 日常緊密 な関係のあ る相手 か ら, あ るいはその斡旋に よって飼料 も購入す る傾向が あ るか らである。 以上 の考察にみ るよ うに,全農が配合飼料 の分 野 において
,
「全農建値」による価格主導権 を掌瞳 す ることので きる状況は, さまざまの事情 の重複 した結果である。 これを要約す る と, まず,配合 飼料生産において40%を占有 して,業界 トップの 地位 にあることである。そ して,そのための巨額 - 25-の資本動員 と投下,原料輸入体制 (在米国倉庫企業, 輸送手段,輸入集積基地),各県地方分散の工場網 の配置 における 「自己完結」事業体制 は群 を抜 い ている と言 うべ きであ る。 第2は工場 の各県地方分散 と結合 した製 品の配 送網で ある。 この カナ メは県経済連 であ る。県経 済連 は県地方 に配置 された工場 と運送業
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「協 同 会社」 の有力 な出資者であ り,会社重役の派遣母 体であ る。 そ して県経済連 は工場 の販売実績 の観 点 か らも,製 品の販売,競争相手 との対抗 に責任 を分担す る。 こ うして協 同会社工場 は,工場 -県 経済連 の責任関係 か ら,各県連管 内に強力 な製 品 供給網 を設 け るこ とがで きる。 しか も全農 は一元 的 な飼料原料 の供給者 として,協 同会社工場 の死 命 を制す る立場 にあ る。 第3
は配合飼料 の最終需要者の掌握であ る。そ の主体 は農協であ る。農協 は このはあい,協 同会 社工場 -県経済連 の在村 エージ ェン トとして,製 品販売,代金 回収 の責任主体であ る。商系 との価 格,決済方法 をめ ぐる競争の主体で もあ る。 その 競争力 は品質,価 格,決済方法 にあ ることは言 う まで もないが,それ は農協 の権限の及ぶ ところで はない。農協 の独 自な競争力 は多分に,畜産物販 売事業 の業務能力 であ り,畜産物販売価格 の優劣 にかか ってい る。 配合飼料価格 安定基金制度 農協 の配合飼料小 売市場 での競争上,
「全農建値」とい う価格主導権 は優点 であ る と同時 に欠点で もある。二重 の意味 で欠点 であ る。一つ には供給価格引 き上 げが, コ ス トその他の事情 に よる とは言 え,全農主導 に よ って実行 され,商人系 はそれ に同調す るかた ちに な るこ とであ る。農村では農協 が価格引 き上 げの 先行者 とな らざるを得 ない。二つには前述 の よ う に,建値 の構成上 の弱点であ って,商人系 は搬入 費,配送費部分 にた い しては柔軟 に対抗 し,安値 攻勢 をかける手段 を留保 している。搬入費実費の 高 い県,県内 プールの配送費の高 い県では, この 安値攻勢 の圧力が きび しい。 全農建値 の引 き上 げ について,配合飼料価格安 定基金制度 は農家 -実需者 にたいす る緩衝装置で あ る。 あ るいは配合飼料製造原価 を製品価格 に転 稼す るための緩衝装置であ る とも言 える。主原料 であ る と うもろ こし,マイ ロは全量 を輸入 に依存 してい るが, その価格はシ カ ゴ定期相場,FOB
プ レ ミアム, フレー ト,外 国為替相場 な どの変動 性 の極 めて高 い要素か ら成 り立 ってい る。 これは 最終的 には製品価格 に吸収 す る以外 には方法はな い。 基金 は現在,全農系の全 国配合飼料供給安定基 金 (加 入農家1
3
9,
8
2
5
戸,1
9
8
1
年度契約数量8
4
8
万 トン),全酪系 の全 国畜産 配 合飼料価 格安定基 金(
7
3,
0
0
0
戸,1
0
2
万 トン), 商 系 の全 日本配合飼料 価格安定基番(
7
8,
2
71戸,1,
1
8
0
万 トン)の3
自主 基金, お よび異常基金制度 として配合飼料供給安 定機構(
2
9
1
,
0
0
0
戸,2,
1
3
0
万 トン)が設 け られて い る。 基金制度 は1
9
6
8
年,全農,全 酪両系で創設 され,1
9
7
3
年畜産危機時 に政府 の配 合飼料価格安定対策 事業 の実 施 を きっか けに商 系 基 金 も発 足 した。1
9
7
4
年, この 自主基金の補 て ん財源では対処で き ない事態が発生 したため,異 常補 てんを行 う安定 琉構 (異常基金制度)が創 設 された. 基金制度 は配合飼料価格 の高騰 に さい し,その 高騰差額分にたいす る補 て んを行 うもので,補 て ん財源 は基金 の種類 によって ちが うが,全農系 は 農家,県連,全農 の3
着,商 系 は農家 と配合飼料 メーカーの2
者が積立て る。補 てんは通常補 てん のはあい, 3月末 の配合飼 料価格が上 まわ った と き (8%以内),その差宅酌こつ いて行な うもので,3
カ月を期限 とす る。異常補 てんは原料価格が1
5
%以上上昇 し,配合飼料価 格 が8%
以上上昇 した 場合,値上 り幅の8%
を超 え る部分につ いて補 て んす る。 この場合,8%
以 内分は通常補 てんに よ る。補 てん期間が3
カ月 と定 め られたのは, 3
カ 月の経過 の うちに飼料価格 の上昇が畜産物価格 の 上昇に吸収 され る とみな したためであ る。 なお異 常基金 はその事業年度の政 府 の補助金額 を下限 と して,政府 と民間が半額づ つ を積立て る。民間 は 上記の3自主基金 を指す。 異常基金が発足す るに及 び, 自主基金 は異常基 金 と連動 して運営 され るこ とにな った。 これ に伴 ない, 自主基金制度 と価格政 策 に重要 な変化 の生 じた ことが指摘 されてい る。 まず, 自主基金 の運 営が これ に対 して,政府が異常基金 の運営 を通 じ て介入 し,行政 の指導下 に編 入 され るよ うにな っー2
6-た ことであ る。 いま一つ, もともと自主基金制度 は価格改定 -全農の建値制度 と密接 な関係にあ っ たが,基金運営 に政府が介入す るよ うにな ったた め,価格政策 も政府の管理を受けるよ うになった ことであ る。 この ことは,系統農協 の配合飼料供 給機構が価格安定基金制度 と全農建値制度を通 じ て国家的 な管理機構 に転化 した ことを意味す る。 また,国家 と農協連合会の関係の展開の画期 を し めす もので あ る。 農産物流通の重層構造
1
9
6
0
年代か ら今 日にい た る20年 のあいだに, 日本農業はかつての米麦作 を主 とす る農業か ら,す こぶ る現代的な米作,育 果物お よび畜産か ら成 る農業 に変化 した。農業 の 生産構成 の変化は,中心的な大都市 と地方中小都 市の分化発展 とあいまって,農産物 の市場流通構 造に影響 をあた えた。 米に例 を とると, これは食塩管理制度 の もとに あって,典型的な国家的商品であるが,現在,≡ 種 の市場流通形態を形成 している。政府が直接的 に管理す る流通(政府米),政府が集荷団体,卸売 団体を通 じて間接的に管理す る流通 (自主流通米) および自由米の市場流通である。三種の米流通形 態は政府 の二重米価制 を軸に して,需給関係 と価 格形成の うえで,相互 に影響 しあ う,重層的 な流 通構造の関係にあ り,農家,農協お よび連合会 は それぞれの販売志向を もって流通に臨んでい る。 青果物 はそれぞれの品 目が,みかんが西南暖地, りんごが東北地方に と,生産立地の拘束 され る作 物であるため,すべての作 目が必 らず Lも全国的 普遍性を もって生産 されるわ けではない。言 い換 えると,青 果物の多 くの作 目の生産 は もともと地 方的であ り,消費 も地方的であった。 しか し,高 度経済成長期 に生 じた この理 由によって,つ ま り 人 口の集中 した大都市 における膨大 な消費需要 の 発生 と,都市近郊農業の急速 な衰退 とによって, 一部の作 目と産地は地方的流通を脱却 して, 中央 市場流通 に参入 した。 こ うして青果物の流通 も地 方市場流通 と中央市場流通に分化 し,需給 と価格 形成を通 じて相互 に影響 しあ う重層的流通構造 が 生 まれた。 肉畜の多 くはひきつづ き地方市場流通を主 とす るが,一部 は中央市場流通に登場 し, とくに部分 肉は中央市場流通 において,輸入食 肉 との競合関 係に入 り,世界市場流通の一部を構成す るよ うに なった.鶏卵, ブロイラーもだいたい類似の状況 にあって,総 じて これ らの畜産物 においては三層 の市場流通の構造が形成 されている。農家 および 系統農協 は一面ではこ うした三層 の流通構造の形 成 に積極的に参加 し,反面では この流通構造にそ れぞれの販売志 向を もって参入 している。 以上,前項の叙述 と関連 して農産物流通 の個別 的な特徴を指摘 したのであるが, これをわが国の 農産物流通の総体 について考察す ると, さらに複 雑多様 な流通構造を見出す ことがで きる。すなわ ち,その市場競争,価格形成の角度か らみ ると, 世界市場流通,全国的単一市場流通,中央市場流 通および地方市場流通が,相互に影響 しあい結 び ついて,重層的 な流通構造を形成 してい る。 世界市場流通。世界的 な範囲において需給関係 を構成 し,市場競争を展開 し,それを通 じて価格 を形成す る。わが国の場合,主 として農産物輸入 を媒介 として,輸入依存率の高い農産物が この影 響下にある。小麦,大豆,食肉,乳製品,生糸, 葉たば こおよび一部の果実があ り,特殊 な関係 に ぞ くす るが飼料原料を介 して,畜産物全般が この 流通構造 の影響を うける。 もちろん各種 の国境障 壁があ って,わが国農産物流通が直接 に世界市場 流通 と結合 しているわ けではない。 全国単一市場流通。農産物の商 品的特性,つ ま り生鮮度や保存性な どによって, この狭い国土 に おいて さえ,全国的な範囲における市場競争の関 係に入 り込む農産物は稀である。 しか し, ここに 特殊 とも言 うべ き契機が介在す ることによって単 一市場流通が形成 され る。それは中間的需要者が 一元化 され,それによって市場流通が単一化す る 場合である。政府が流通 の全量を掌握す る米,莱 たば こな どの国家的管理流通があ る。 また大手3
社が事実上独 占的な地位 にあ り, しか も不足払 い 法 に よって単 一 の価 格が形成 され る原 料乳の市 場流通がある。原料乳流通 は飲用乳流通 と交錯す るため,生乳流通が総体 として この市場流通 に包 摂 され る。 中央市場流通。大消費地域中央卸売市場 に入荷 す る農産物は伝統的に近郊産地に依存 していた。 しか し,高度経済成長 の もとで近郊農村が工場用-2
7-也,宅地化 によって破壊 され,近郊産地が崩壊 し た。政府は大都市 に集中 した勤労者人 口の需要を 充足す るため,例 えは 「野菜生産 出荷安定法」 に み るよ うな立法,行政指導 によって,遠隔地の特 定農村に農産物生産供給基地を造成 した。野菜 の 場合,指定産地 と指定消費地域を結ぶ流通構造が 発展 した。 この産地 は主 として大消費地域中央市 場 向けに生産出荷す るもので,いわゆる主産地で あるが,必 らず Lも全 国各地の地方市場-の出荷 を占有す るものではない。野菜 ほ どの大消費地域 中央市場に向けての集中度ではないが,肉畜,鶏 那, ブロイラーの場合 にもこの種 の市場流通が成 立 している。 地方市場流通。大消費地域中央市場向けの もの と同類の野菜,畜産物 が,専 ら近在の地方市場向 けの産地 として形成 されている。それは個別の地 方市場 の入荷容量が小 さ く, また多種品 目の入荷 需要があるために,多種品 目,複合,小規模の産 地 として発展 し,近在 の特定地方市場 に向けて出 荷す る。 この地方市場流通 と中央市場流通 は明確 な境界によって轟離す るものではないが,産地規 模および出荷団体 の整備の水準か らみると区別 さ れ る。傾 向 としては中央市場流通 に乗 った産地か ら地方市場への出荷はあ って も,地方市場流通の 軌道上の産地か らの中央市場出荷は稀であって, 異常 な需給緊迫の生 じた ときに限 られ る。 つ ぎに農村向け商 品流通 の構造を考察す る。 農村向け商品 としては,代表的商品である肥料, 農業放拭,農薬 お よび飼料は,それぞれの分野で 産業独占が成立 し,上位数社が生産の過半を占有 し,流通 に規制力 を有す る。 ここでは全国を範囲 とす る市場流通が形成 され,各企業は連携 もすれ ば競争 もす る関係をつ くっている。そのなかで, 配合飼料業界では大手企業 と地方的中小企業によ る重層的流通構造があ り,農薬 (製剤) も同様の 事情によって重層的流通構造を形成 している。 系統農協 は農業生産財流通において重要 な機能 をはた している。農水省 「社会勘定」推計による と,1980年度の農家の生産財購入は49,593億円 と 推定 され る。 これ にたい し農協 の生産資材供給高 は31,885億 円,64%の高い割合である。全農の品 目別推計によると,農協の取扱い割合は肥料92%, 農薬72%,飼料53%,農機52%であった。 これ ら の品 目について農協の県経済連利用率は95%,79 %,95%,79%であ り,県経済連 の全農利用率は 85%,95%,92%,63%であ った。 したが って, 系統農協 は農業生産財の産業独占に 自らを対置 し た全農を頂点 として供給機構の役割をはた し,そ して社会的 な農業生産財流通市場の背骨 ともい う べ き位置を 占めたのである。 したが って系統農協 購買事業の拡大は,同様 に農家の商 品貨幣経済化 の深化を意味す るものであった。産業独占の価格 政策 の浸透 を意味す るもので もあ った。現在,460 万戸を数 える農家経済は このよ うな流通構造の も とに置かれているのであ る。 農業生産財流通 と比べて,農産物流通には生産 と消費の双方の零細規模 にもとづいて比較 にな ら ぬ複雑性がある。すでに指摘 した よ うに主要農産 物 の米は政府管理流通 の も とにあ って特殊 で あ る。改正食管法 (1982年)によって流通の40%を しめ ると言われ る自主流通米 も政府管理米に編入 されたので,この政府管理流通の面は拡大 された。 つ ぎに生乳は大手乳業3社が集乳量の46%を占 め, とくに原料乳 については60-70%を占有 して いる。生乳は一般的に生乳処理工場(1980年,1,118 工場)と乳製品工場 (166工場)に集乳 され る。そ の中で乳業