学校と地域社会をつなぐアートプロジェクトの研究
学校と地域社会をつなぐアートプロジェクトの研究
A STUDY OF ART PROJECTS THAT CONNECT SCHOOLS TO COMMUNITIES
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谷口 文保 先端芸術学部クラフト・美術学科 講師
Fumiyasu TANIGUCHI Department of Crafts and Arts, School of Progressive Arts, Assistant Professor
………. 要旨 本研究の目的は、学校と地域社会をつなぐアートプロジェ クトの方法と仕組みを明らかにすることである。本研究では、 次の5 つの事例を調査した。「IZUMIWAKU プロジェクト」、 「エイジアス」、「町ぢゅう美術館」、「ホタルキノコ」、「加古 川市立山手中学校におけるアートプロジェクト」である。5 つ の事例の調査によって、3 つの有効な方法が明らかになった。 それは、「プロジェクトを開く」、「プロジェクトを共有する」、 「プロジェクトを育む」である。学校と地域社会をつなぐア ートプロジェクトの仕組みは、連携と共創と継続によって構 成され、共創は、表現と交流の循環によって成立しているこ とが分かった。 Summary
The purpose of this study is to clarify the methods and mechanisms of art projects that connect schools to communities. Five cases were investigated in this study. The names of art projects are “IZUMIWAKU project”, ”ASIAS”, "The town like an art museum”, “Big mushrooms and fireflies" , and "Art project of Kakogawa municipal Yamate junior high school”. The study revealed three methods, clarified by five undertaken case studies: Opening of a project, Sharing of a project, and "Development of a project. The above mentioned mechanisms consist of cooperation, collaboration, and continuity. Expression and communication rely on collaboration.
1. 研究の背景と目的 1990 年代か ら実験的 に実 施されは じめ たアートプ ロ ジ ェ クト は 、2000 年代以降、全国各地で展開される よ う に なっ た 。 こ う した 活 動 は 、 まち づ く り や 福祉 、 環 境 、 医療 な ど 、 社 会の さ ま ざ ま な領 域 と 連 携 して 実 施 さ れ てい る 。 竹 田 直樹 は 、 この 2000 年頃からのア ート プ ロジ ェ クト の 拡が り の理 由 を 、「9.11 構造」に よ っ て 自ら の 作 品 に 社会 性 を 育 む よう に な っ た 芸術 家 と 、 ア ート に よ る 地 域振 興 を 期 待 する 自 治 体 、 そし て 文 化 振 興に よ る 社 会 貢献 を 模 索 す る企 業 の3 者の「思 惑 」が 重 な っ た た め と考 察 し て い る 。1 )こ う し た 動 向 に つ い て工 藤 安 代 は パブ リ ッ ク ア ート 研 究 の 観 点か ら 、 そ れ ま での 公 共 事 業 とつ な が る パ ブリ ッ ク ア ー トと 異 な り、「 実 社 会 と の つな が り を 強 く持 つ 芸 術 活 動」で あ る と 指 摘し て い る 。2 )こう し た ア ート プ ロ ジ ェ クト の 中 に は 、教 育 と 連 携 して 実 践 さ れ てい る も の も 多い 。 近 年 、 学 校 で 芸 術 家 が 授 業 を 行 う 活 動 を 支 援 す る NPO 組織の設立や、地域住民と児童・生徒の共同制作 に よ る プロ ジ ェ ク ト など 、 学 校 と 地域 社 会 を つ なぐ ア ー ト プ ロジ ェ ク ト が 、全 国 各 地 で 実施 さ れ る よ うに な っ て き てい る 。 こ の よう な ア ー ト プロ ジ ェ ク ト の多 く は 、 総 合的 な 学 習 の 時間 や 図 画 工 作・ 美 術 の 授 業の 一 環 と し て学 校 が 中 心 とな っ て 実 施 され て い る 。 この よ う な 状 況は 、 学 校 と 地域 社 会 の 可 能性 と し て 、 アー ト プ ロ ジ ェク ト が 評 価 され 、 期 待 が 寄せ ら れ て い るこ と の 証 明 であ る と 言 え よう 。 学 校 に 芸術 家 を 招 く こと に よ っ て 授業 や 学 校 組 織を 活 性 化 す る。 プ ロ ジ ェ クト に よ っ て 地 域 社 会 と 学 校 を つ な ぎ 、「 開 か れ た 学 校 」3 ) を 実 現 する こ と で 、 地域 社 会 と 連 携し た 教 育 体 制を 再 構 築 す る。 疲 弊 し た 商店 街 や 、 落 書き の 目 立 つ 公園 を 児 童 ・ 生徒 の 壁 画 で 再生 し 、 町 の 活性 化 に つ な ぐ。4 ) 学 校 内 の授 業 で は 体 験で き な い 、 アー ト プ ロ ジ ェク ト を 通 し たリ ア リ テ ィ のあ る 社 会 参 画は 、 児 童 ・ 生徒 に 社 会 の 一員 と し て の 自覚 と 、 自 信 を培 う 機 会 を 与え る も の と なっ て い る の では な い だ ろ うか 。 ま た 、 こう し た 活 動 を、 既 存 の 地 域資 源 の 再 構 成に よ っ て 新 しい 価 値 を 創 出し て い く 「 持続 可 能 な 共 生社 会 」 の 構 築の は じ ま り と捉 え る こ と はで き な い だ ろう か 。 全 国 各 地で 、 こ う し たア ー ト プ ロ ジェ ク ト が 一 般的 な 活 動 とし て 実 施 で きる よ う に な れば 、 学 校 教 育や 地 域 づ く りに お い て 、 大き な 成 果 が 期待 で き る だ ろう 。 し か し 、こ う し た プ ロジ ェ ク ト の 多く は 、 高 い 実践 力 を 有 す る 一 部 の 教 師 や 、 社 会 的 関 心 の 高 い 芸 術 家 や NPO によって支えられているのが実情である。学校教 育 と 芸 術創 造 の 可 能 性を 拡 大 し て いく た め に は 、汎 用 性 の あ る理 論 の 構 築 が課 題 で あ る と思 わ れ る 。 芸 術 や 教育 、 地 域 づ くり な ど 、 異 なる 分 野 が 連 携す る こ う した 活 動 は 、 成果 も 複 合 的 であ る た め 、 その 考 察 に は 総合 性 が 求 め られ る 。 本 研 究で は 、 こ の よう な 観 点 か ら、 学 校 と 地 域社 会 を つ な ぐア ー ト プ ロ ジェ ク ト の 企 画・ 運 営 に つ いて 、 効 果 的 な方 法 を 抽 出 し、 そ の 仕 組 みを 明 ら か に する こ と を 目 指す 。 2. 学校と美術 学 校 と地 域 社 会 を むす ぶ ア ー ト プロ ジ ェ ク ト を考 え る た め には 、 学 校 と 美術 の 関 係 を 振り 返 っ て お く必 要 が あ る 。本 章 で は 、 学校 教 育 に お ける 図 画 工 作 ・美 術 の 歴 史 や教 育 的 意 義 を確 認 し 、 美 術教 育 や 学 校 の課 題 を ア ー トプ ロ ジ ェ ク トの 観 点 か ら 考察 す る 。 2-1 日本の美術教育 学 校 教 育に お け る 美 術は 、 時 代 と とも に そ の 目 的や 意 義 も 変化 し て い っ た 。日 本 の 学 校教 育 は 、1872 年(明 治5 年)の学制公布にはじまるが、1879 年(明治 12 年 ) に は、 東 京 師 範 学校 に 図 画 科 が設 置 さ れ て いる 。 当 時 の 図画 教 育 は 、 天気 図 や 幾 何 学な ど の 作 図 に向 け て の 基 礎的 学 習 が 目 的で あ っ た 。 この よ う な 実 学的 な 教 科 と して 始 ま っ た 美術 教 育 は 、 内外 の 教 育 運 動に 影 響 を 受 け な が ら 少 し ず つ 現 在 の 姿 に 近 づ い て い く 。 1904 年(明治 37 年)の図画取調委員会の報告書には、 「 凡 ソ 普通 教 育 ニ 於 ケル 学 科 ハ 精 神的 ナ ル 手 段 ヲ以 テ ス ル モ ノト 形 体 的 ナ ル手 段 ヲ 以 テ スル モ ノ ト ノ 外ニ 尚 ホ 直 接 ニ心 身 両 者 ノ 働ヲ 結 合 ス ル 所ノ モ ノ ア ル ニア ラ ス ン ハ 決シ テ 完 全 ナ リト 云 フ ヘ カ ラス 」と し て、「図 画 」
が 心 身 を結 合 し て 実 施さ れ る 教 育 であ り 、 普 通 教育 に な く て はな ら な い 教 科で あ る と 指 摘さ れ て い る 。5 )さ ら に 長 野県 神 川 小 学 校に お け る 講 演「 児 童 自 由 画の 奨 励」(1918 年)から始まる山本鼎による「自由画教育 運 動 」 によ っ て 、 子 ども 中 心 の 美 術教 育 が 確 立 され 、 現 在 の 美術 教 育 に つ なが る 基 礎 が 形成 さ れ て い った 。 6)戦 後 は、 学 習指 導要 領 の 公布 によ っ て 、民 主主 義 に 基 づ く 図画 工 作 ・ 美 術教 育 が 実 践 され た 。 近 年 では 、 従 来 の 絵画 、 彫 刻 、 工芸 、 デ ザ イ ン、 鑑 賞 と い った 分 野 以 外 に、 映 像 メ デ ィア が 導 入 さ れ、「 写 真 、 ビデ オ 、 コ ン ピ ュー タ ー 等 」 の授 業 へ の 活 用が 進 ん で い る。7 ) そ の た め、 美 術 の 教 科書 に は 従 来 の絵 画 や 彫 刻 と並 ん で 、 漫 画や ア ニ メ ー ショ ン の 作 品 が掲 載 さ れ る よう に な っ て いる 。 2-2 美術教育の特性と意義 こ の よう に 学 校 教 育に お け る 図 画工 作 や 美 術 は、 そ の 目 的 を発 展 さ せ な がら 現 在 の よ うな 形 に な っ てき た が 、 そ の教 科 と し て の特 性 は ど の よう に 位 置 づ けら れ て い る のだ ろ う か 。 図画 工 作 や 美 術は 、 数 学 や 歴史 と い っ た 理論 や 知 識 を 学ぶ 教 科 と 異 なり 、 手 を 動 かし て 作 品 を 制作 し 、 表 現 する と こ ろ に 教科 の 特 性 が ある 。 フ ラ ン ツ ・ チ ゼ ッ ク (1865-1946)やジョン・デュー イ (1859-1952)の子ども中心の教育の提唱は、現在 の 美 術 教育 の 根 本 を 支え る 基 礎 と なっ て い る 。 米国 の 哲 学 者 ジョ ン ・ デ ュ ーイ は 、 そ の 経験 主 義 に よ る教 育 哲 学 に おい て 、 手 工 や理 科 な ど と とも に 図 画 を 重要 な 教 科 と して 取 り 上 げ てい る 。 彼 は 著書 「 学 校 と 社会 」 (1899 年)の中で学校を、「小型の社会、胎芽的な社 会 」 に 変革 し て い く こと を 目 指 し 、そ れ ま で の 知識 中 心 の 受 動的 な 学 習 か ら、 作 業 を 通 した 子 ど も の 主体 的 学 び と 社会 と つ な が った 学 校 の 実 現を 提 唱 し た 。彼 は 学 校 が、「 一 つ の 有 機的 な 全 体 で ある よ う な も の」と な る た め に、「学 校 を 生 活と ど う い う 工合 に む す び つけ た ら よ い か」 を 実 践 的 に検 討 し て い るが 、 そ こ で は芸 術 が 大 変 重 視 さ れ て い る 。8 )「 絵 画 と 音 楽 、 す な わ ち 造 形 芸 術 と聴 覚 芸 術 は 、学 校 で お こ なわ れ る す べ ての 作 業 の 頂 上で あ り 、 理 想化 で あ り 、 洗練 ・ 純 化 の 極点 で あ る 」と 述 べ 、生 活 か ら 発 生 し 、発 展 し た 芸 術 を、「 思 想 と 表 現手 段 と の 生 きた 結 合 」 で ある と 高 く 評 価し て い る 。9 ) 小 学 校 学 習 指 導 要 領 に お い て 図 画 工 作 の 目 標 は 、 「 表 現 及び 鑑 賞 の 活 動を 通 し て、感 性 を 働 か せ なが ら 、 つ く り だす 喜 び を 味 わう よ う に す ると と も に 、 造形 的 な 創 造 活 動 の 基 礎 的 な 能 力 を 培 い 、 豊 か な 情 操 を 養 う。」と 表記 さ れ て いる 。そ し て 解説 で は、そ の 内 容 を 説 明 す る中 で 、「 基 礎的 な 能 力 」は「 他 者 や 社 会 、自 然 や 環 境 など の 多 様 な 関係 の 中 で 活 動す る こ と に よっ て 培 わ れ る」と し、図 画 工 作 の 学 習 が、「 生 活 や 社会 に 主 体 的 に 関 わ る 態 度 を 育 て る 」 と 指 摘 し て い る 。1 0 )そ こ に は 確か に 、 学 校 にお け る 美 術 教育 を 高 く 評 価し た デ ュ ー イら の 思 想 が 継承 さ れ て い るの で あ る 。 2-3 美術教育の課題とアートプロジェクト 現 在 、 わ が 国 の 中 学 校 、 高 等 学 校 の 美 術 の 授 業 は 、 時 間 数 の削 減 や 専 任 教員 の 減 少 な どが 続 き 、 現 場に 立 つ 教 員 には 危 機 感 が 高ま っ て い る 。1 1 )平 成 10 年に 公 布 さ れた 学 習 指 導 要領 に お い て 、総 合 的 な 学 習の 時 間 や 情 報な ど 、 新 し い教 科 が 導 入 され 、 学 校 完 全 週 5 日 制 の 実施 に よ っ て 学校 全 体 の 授 業時 間 数 が 少 なく な っ て い った 。 ま た 、 少子 化 に 伴 う 学校 の 統 廃 合 によ っ て 教 員 数が 削 減 さ れ つつ あ る 。 こ のよ う な 中 で 、学 校 教 育 に おけ る 図 画 工 作や 美 術 は 、 その 存 在 意 義 を再 確 認 し 、 教科 と し て の 可能 性 を 探 る こと が 重 要 な 課題 と な っ て いる 。 総 合 的 な学 習 の 時 間 は、2002 年(平成 14 年)から 正 式 に 導入 さ れ た 教 科で あ る 。 そ の目 標 は 、 中 学校 学 習 指 導 要領 解 説 に、「 横 断 的・総 合 的 な 学 習 や 探求 的 な 学 習 を 通し て 、 自 ら 課題 を 見 付 け 、自 ら 学 び 、 自ら 考 え 、 主 体的 に 判 断 し 、よ り よ く 問 題を 解 決 す る 資質 や 能 力 を 育成 す る と と もに 、 学 び 方 やも の の 考 え 方を 身 に 付 け 、問 題 の 解 決 や探 求 活 動 に 主体 的 、 創 造 的、 協 同 的 に 取り 組 む 態 度 を育 て 、 自 己 の生 き 方 を 考 える こ と が で きる よ う に す る。」と 表 記 され て い る 。1 2 )その
学 び は 、調 べ 、 考 察 し、 表 現 す る こと で 実 現 さ れ、 他 教 科 と の連 携 や 総 合 が重 要 で 、 協 同作 業 や 、 地 域連 携 も 有 効 であ る と 指 摘 され て い る 。 以上 の こ と か ら、 図 画 工 作 や美 術 と 総 合 的な 学 習 の 時 間の 連 携 は 、 効果 的 で あ り 、大 き な 可 能 性を 孕 ん で い ると 思 わ れ る 。 1987 年(昭和 62 年)の臨時教育審議会第 3 次答申 で は、「 開か れ た 学 校」が 提 唱 さ れ、学 校 施 設 の社 会 教 育 へ の 解放 や 、 学 校 運営 に 地 域 社 会が 関 与 し て いく こ と の 重 要性 が 指 摘 さ れた 。1 3 )2006 年(平成 18 年) に 改 正 され た 教 育 基 本法 の 第 12 条は、社会教育に関 す る 条 文で あ る 。 そ こに は 学 校 を 含む 公 共 施 設 の利 用 が 社 会 教育 を 推 進 す る方 法 と し て 明記 さ れ て い る。 ま た 、 第 13 条には、学校と家庭および地域住民の相互 連 携 や 協力 に つ い て 記述 さ れ て い る。 こ れ ら は 、生 涯 学 習 社 会の 実 現 が 現 代社 会 の 課 題 であ る こ と を 示し 、 学 校 と 地域 社 会 の 変 革を 求 め る も ので あ る と 考 えら れ る 。 こ うし た 学 校 を とり ま く 課 題 に、 図 画 工 作 や美 術 は さ ま ざま な 貢 献 が 可能 な の で は ない だ ろ う か 。図 画 工 作 や 美術 は 、 表 現 を通 し て 他 者 との 交 流 を 創 出し 、 現 実 の 生活 と つ な が って い く こ と が容 易 に 実 現 でき る 教 科 で ある 。 さ ら に 、総 合 的 な 学 習の 時 間 と 連 携す る こ と で 、学 校 と 地 域 社会 を つ な い だ学 習 を 実 現 する こ と が で きる だ ろ う 。 それ は 正 に ア ート プ ロ ジ ェ クト で あ る 。 こ の よ うに 、 近 年 、 アー ト プ ロ ジ ェク ト が 盛 ん に試 み ら れ てい る 背 景 に は、 こ う し た 美術 教 育 や 学 校の 課 題 が 影 響し て い る こ とが 推 察 さ れ るの で あ る 。 3. 研究の方法 本 研 究 は、 学 校 と 地 域社 会 を つ な ぐア ー ト プ ロ ジェ ク ト に つい て 、 効 果 的な 方 法 を 抽 出し 、 そ の 仕 組み を 明 ら か にす る こ と を 目指 す も の で ある 。 学 校 と 地域 社 会 を つ なぐ ア ー ト プ ロジ ェ ク ト は 、異 な る 分 野 が連 携 し た 複 合的 活 動 で あ るた め 、 複 眼 的検 証 を 行 い 、総 合 的 に 考 察す る 必 要 が ある 。 そ こ で 本研 究 で は 、 学校 教 育 、芸 術 表 現 、地域 づ く り の3 つの観点から実践事例 の 成 果 を検 証 す る。こ れ ら を 総 合 的に 考 察 す る こと で 、 そ の 方 法や 仕 組 み を 明ら か に す る 。 先 ず 、 実践 事 例 の 検 証に 入 る 前 に 、こ う し た ア ート プ ロ ジ ェク ト を 大 き く3 つに分類する。分類について は、活 動 が ど こ で 行 われ て い る か とい う 点 に 注 目す る 。 す る と、「学 校 の 中」「学 校 の 外 =地 域 社 会」「 学校 と 地 域 社 会 の両 方 」の3 つに分類することが出来る。この 分 類 に 基づ い て 本 研 究で は そ れ ぞ れの 活 動 を、「 学 校共 創 プ ロ グラ ム 」「 地 域 共 創 プ ロ グ ラム 」「 学 校 ・地 域 共 創 プ ロ グラ ム 」 と 表 記す る 。 学 校 共 創プ ロ グ ラ ム は、 学 校 の 校 内に 芸 術 家 や 地域 住 民 な ど外 部 の 人 々 を招 き 入 れ 、 児童 ・ 生 徒 お よび 教 師 と 連 携し た 活 動 を 創出 す る プ ロ グラ ム で あ る 。地 域 共 創 プ ログ ラ ム は 、 児童 ・ 生 徒 お よび 教 師 が 学 校を 出 て 、 地 域社 会 に 入 り 、地 域 住 民 と 連携 し た 活 動 を行 う プ ロ グ ラム で あ る 。 学校 ・ 地 域 共 創プ ロ グ ラ ム は、 学 校 と 地 域社 会 を 児 童 ・生 徒 や 教 師 、そ し て 地 域 住民 や 芸 術 家 が行 き 来 し て 、連 携 し た 活 動を 行 っ て い くプ ロ グ ラ ム であ る 。 本 研 究 では 、 学 校 共 創プ ロ グ ラ ム の実 践 事 例 と して 、 事 例1「芸術家と小学生プロジェクト(ASIAS=エイ ジ ア ス)」( 以 下 、 エ イジ ア ス と 表 記す る )、 事 例2 「IZUMIWAKU プロジェクト」を取り上げ、検証する。 地 域 共 創プ ロ グ ラ ム につ い て は 、 事 例3「町ぢゅう美 術 館 」 を取 り 上 げ 、 学校 ・ 地 域 共 創プ ロ グ ラ ム につ い て は 、 事 例4「ホタルキノコ」と、事例 5「加古川市 立 山 手 中学 校 の ア ー トプ ロ ジ ェ ク ト」 を 実 践 事 例と し て 検 証 する 。 こ れ ら の事 例 を 検 証 の対 象 と し た 理由 は 2 つある。1 つ目の理由は、事例 3、4、5 が筆者の在 住 す る 兵庫 県 内 で 実 施さ れ た プ ロ ジェ ク ト で あ るた め 、 聞 き 取 り調 査 や 現 地 調査 な ど 、 詳 しい 検 証 作 業 が実 施 可 能 だ った た め で あ る。な お 、事 例4 は筆者自身が参 画 し た プロ ジ ェ ク ト であ る 。 そ こ で、 検 証 の 一 般性 を 確 保 す るた め に 、 学 校・ 地 域 共 創 プロ グ ラ ム の 検証 事 例 と し て、 事 例5 を対象に加えることとした。もう 1 つ の 理 由は 、 学 校 共 創プ ロ グ ラ ム につ い て 、 筆 者の 近 隣 に 研 究対 象 と し て 適切 な 事 例 が 確認 で き な か った た め 、 全 国的 に 著 名 で 、参 考 文 献 も 豊富 な 事 例1、2 を
対 象 と する こ と と し た。 な お 、 学 校共 創 プ ロ グ ラム に は 、 芸 術家 を 学 校 の 授業 に つ な ぐ 活動 と 、 学 校 施設 の 新 た な 活用 を 実 践 す る活 動 が あ る ため 、 そ れ ぞ れの 代 表 的 事 例で あ る 「 エ イジ ア ス」、 と 「IZUMIWAKU プ ロ ジ ェ クト 」 の2 つを取り上げることとした。 5 つの事例は全て、国内で普通教育を実施している 学 校 で の実 践 で あ る 。ま た 、 そ の 開始 時 期 は 、1994 年 か ら2007 年である。こうしたことから、5 つの事 例 は 、1990 年代後半から 2000 年代にかけての地域社 会 の 問 題や 学 校 教 育 の課 題 な ど を 共有 し て い る と思 わ れ る 。 よっ て 本 研 究 は、 上 記 の 年 代に 国 内 の 学 校に お い て 実 施さ れ た 、 学 校と 地 域 社 会 をつ な ぐ ア ー トプ ロ ジ ェ ク トに つ い て の 検証 と し て 適 切な 成 果 が 得 られ る も の と 考え る 。 一 方 で本 研 究 は 、 学校 区 分 や 実 施地 域 と い っ た観 点 か ら 検 証事 例 を 選 定 して い な い 。 これ が 本 研 究 の限 界 で あ る 。 本 研 究で は 、5 つの実践事例について、文献や聞き 取 り に よる 調 査 を 実 施し た 。 事 例 1、2 は、文献調査 を 実 施 した 。主 な 参 考文 献 は 、関 連す るweb サイトや 出 版 物 であ る 。事 例3、4、5 は、それぞれプロジェク ト の 中 心と な っ た 人 物に 1~2 時間の聞き取り調査を 実 施 し た。さ ら に 事 例5 は、プロジェクトを体験した 生 徒1 名(現在、大学 3 年生)に、聞き取り調査を実 施 し た 。 4. 学校共創プログラム 学 校 共 創プ ロ グ ラ ム は、 校 内 に 芸 術家 や 地 域 住 民を 招 き 入 れる こ と で 、 学校 を 開 き 、 従来 の 学 校 教 育の 幅 を 広 げ る活 動 で あ る 。こ の プ ロ グ ラム は 、 学 校 教育 に 地 域 住 民の 参 画 を 促 進し 、 学 校 に 対す る 地 域 の 認識 を 変 革 す る活 動 に も 展 開で き る 。 米 国や 英 国 で は 創造 性 を 育 む こと を 目 的 に 、国 や 州 が 芸 術家 を 学 校 に 派遣 す る 活 動 を支 援 し て い る。英 国 で は、2002 年から芸術家 を 学 校 に派 遣 す る 「 クリ エ イ テ ィ ブ・ パ ー ト ナ ーシ ッ プ 」 が 設立 さ れ 、 全 国的 に 実 施 さ れて い る 。 わ が国 に お い て も 、1990 年代後半から NPO などの中間組織に よ っ て 、学 校 と 芸 術 家を 結 ぶ 社 会 的活 動 が 始 ま って い る 。現 在 では 、「S-AIR」(札幌、1999 年)、「芸術家と 子 ど も たち 」( 東 京 、1999 年)、「芸術資源開発機構」 ( 東 京、1999 年~)、「CANVAS」( 東 京 、2002 年~)、 「 ア ー トサ ポ ー ト ふ くお か 」( 福 岡 、2002 年~)「 子 ど も と ア ーテ ィ ス ト の 出会 い 」( 京 都 、2004 年~)「 ハ ー ト ・ ア ート ・ お か や ま」( 岡 山 、1999 年~)など、全 国 の 主 要な 都 市 に こ のよ う な 社 会 活動 を 展 開 す る NPO の存在を確認することができる。1 4 )学 校 に 地 域 住 民 を 招き 入 れ 、 学 校を 起 点 に ア ート プ ロ ジ ェ クト を 展 開 す る活 動 と し て は 、1994 年の東京都杉並区立和泉 中 学 校 にお け る「IZUMIWAKU プロジェクト」が、有 名 で あ る。 名 古 屋 市 立千 種 台 中 学 校で 実 施 さ れ た「 千 種 台 コ ミュ ニ テ ィ ー 美術 館 プ ロ ジ ェク ト 学 校 が美 術 館」(1998 年、2000 年)も地域の大きな話題となった。 こ う し た活 動 は 、 ま さに 「 開 か れ た学 校 」 の 実 現で あ り 、 地 域に お け る 学 校の 潜 在 的 可 能性 を 示 す 活 動で あ っ た 。同 様 の 活 動 と して は 、小 学 校 の100 周年事業と し て 地 域を 巻 き 込 ん でア ー ト プ ロ ジェ ク ト を 実 施し た 、 「 ア ー トワ ー ク み の」(岡 山 市 立 御野 小 学 校、1995 年) や 、 芸 術家 と 中 学 生 が共 同 制 作 を 行い 、 そ の 作 品を 展 示 す る こと で 学 校 を 美術 館 化 し た、「 とが び ア ー トプ ロ ジ ェ ク ト」( 千 曲 市 立戸 倉 上 山 田 中学 校 、2004 年~) な ど が ある 。 本 研 究 では 、「IZUMIWAKU プロジェクト」と「エ イ ジ ア ス 」を 検 証 し た 。以 下 に 記 す2 つの検証は、関 連 出 版 物や 個 人 お よ び団 体 のweb サイトの掲載情報 な ど に 基づ い て 作 成 した も の で あ る。 4-1 事例 1「芸術家と小学生プロジェクト」 4-1-1 事例 1 の概要 実 施 時 期:1999 年発足、2001 年から NPO 法人とし て 活 動 を展 開 し て い る。 実 施 会 場: 小 学 校 、 中学 校 、 幼 稚 園、 保 育 園 主 催 団 体:NPO 法人芸術家と子どもたち 活 動 概 要:
ASIAS(Artist’s Studio In A School:エイジアス) は、「 プ ロ の 現 代 ア ーテ ィ ス ト が 小・ 中 学 校 や 保育 園 、
幼 稚 園 など へ 出 か け てい っ て 、 先 生と 協 力 し な がら ワ ー ク シ ョッ プ 型 の 授 業等 を 実 施 す る活 動 」1 5 )で あ る。 NPO 法人芸術家と子どもたちのコーディネーターは、 教 員 や 自治 体 か ら の 依頼 に 基 づ い て派 遣 す る ア ーテ ィ ス ト を 検討 し 、 ア ー ティ ス ト と 学 校教 員 の 打 ち 合わ せ や 、 ワ ーク シ ョ ッ プ の実 施 を 支 援 する 。 活 動 は 、企 業 や 各 種 財団 か ら の 助 成や 寄 付 で 運 営さ れ て い る 。堤 康 彦 代 表 は、 学 校 教 員 との 対 話 を 通 して 外 部 の 人 間が 学 校 で 授 業を 行 う こ と の価 値 と 可 能 性を 感 じ 、 企 業か ら の 協 賛 を得 て こ の 活 動を 開 始 し て いる 。 学 校 現 場に 不 足 し て いる 芸 術 家 と のネ ッ ト ワ ー クや 活 動 資 金 を、 NPO が支援することで、学校と芸術家をつないだ授業 が 実 現 した の で あ る。芸 術 家 は、美 術 だ け で な く音 楽 、 ダ ン ス 、映 画 、 パ フ ォー マ ン ス な ど多 様 で あ る 。宮 島 達 男(2001 年、東京都大田区立久原小学校)や島袋道 浩(2001 年、東京都練馬区立和光小学校)など、著名 な 現 代 美術 作 家 も 多 数参 加 し て い る。 活 動 が 始 まっ た 2000 年度に参加者 350 人、実施校 7 校、芸術家 9 人 だ っ た 実績 は 、2010 年度には、参加者 2,900 人、実施 校65 校、芸術家 36 人にまで拡大している。さらに NPO 法人芸術家と子どもたちでは、地域をテーマに親 子 を 対 象と し た 活 動 を始 め る な ど 、事 業 に 幅 が 出て き て い る 。 4-1-2 事例 1 の成果 学 校 教 育に お け る 成 果に つ い て は 、プ ロ の 芸 術 家と 小 学 生 によ る ワ ー ク ショ ッ プ や 交 流を 通 し て 、 現代 芸 術 や 芸 術家 へ の 理 解 が促 進 さ れ て いる 点 が 挙 げ られ る だ ろ う 。ま た 、 芸 術 家と の ネ ッ ト ワー ク や 、 企 業や 財 団 か ら の助 成 金 の 確 保な ど 、 学 校 で実 施 す る う えで 障 壁 と な る問 題 を 、NPO による社会事業とすることで解 決 し、継 続 的 な 活 動 を実 現 し て い るこ と も 重 要 であ る 。 芸 術 創 造に お け る 成 果は 、NPO によって企画運営さ れ て い るた め 、 学 校 現場 と 連 携 し つつ も 、 芸 術 的に 質 の 高 い 内容 を 維 持 し てい る こ と 。 その 活 動 の 多 くは 実 験 的 で 、創 造 的 で あ る。 そ れ は 、 子ど も た ち に とっ て 教 育 的 価値 の あ る 活 動で あ る と 同 時に 、「 ア ー テ ィス ト に と っ ても 刺 激 的 な 場に な る こ と 」を 目 指 し た 成果 で あ る と 言え る 。1 6 )そ の た め 、 学 校教 育 で は 得 がた い 経 験 が 得ら れ る 魅 力 的な 活 動 に な って い る 。 地 域 づ くり に 関 し て は、 学 校 を 超 えた 地 域 的 な 広が り の あ る活 動 と し て 継続 的 な 展 開 を実 現 し て い る。 こ れ は 、 従来 の 学 校 主 体の 芸 術 教 育 、美 術 館 な ど によ る 芸 術 文 化の 振 興 、 行 政や 企 業 に よ る文 化 政 策 や 文化 支 援 と は 異な る 仕 組 み であ る 。 場 所 や財 源 、 ネ ッ トワ ー ク な ど 、さ ま ざ ま な 組織 を ヨ コ に つな い だNPO なら で は の 芸術 文 化 振 興 であ る と 考 え られ る 。 4-2 事例 2「IZUMIWAKU プロジェクト」 4-2-1 事例 2 の概要 実 施 時 期:1994 年、1995 年 実 施 会 場: 東 京 都 杉 並区 立 和 泉 中 学校 主 催 団 体: 学 校 美 術 館構 想 展 実 行 委員 会 共 催 団 体: 杉 並 区 立 中学 校 教 育 研 究会 美 術 部 会 活 動 概 要: 杉 並 区 立和 泉 中 学 校 の美 術 教 師 で 、芸 術 家 と し ても 活 動 す る村 上 タ カ シ 教諭 ( 当 時 ) が展 覧 会 で 提 案し た 「 学 校 美術 館 構 想 」 がき っ か け と なっ て 実 現 し たア ー ト プ ロ ジェ ク ト 。 中 学校 の 夏 休 み 期間 を 活 用 し 、教 室 や 廊 下 など で 現 代 美 術の 芸 術 家 22 人が作品展示やパ フ ォ ー マン ス を 行 っ た。 中 学 生 や 保護 者 が 作 品 設置 や 運 営 を 手伝 い 、 地 域 から た く さ ん の来 場 が あ っ た。 芸 術 関 係 者だ け で な く 、学 校 を 美 術 館化 し た 初 め ての 試 み と し て社 会 的 に 大 きな 注 目 を 集 めた 。1996 年に開催 さ れ た 第 2 回展は、「学校アーツ・センター構想」と し て 企 画さ れ 、 地 域 の文 化 拠 点 と して の 「 学 校 」の 可 能 性 を 探る 社 会 教 育 活動 と な っ た。( 写 真1、2) 4-2-2 事例 2 の成果 こ の プ ロジ ェ ク ト の 学校 教 育 上 の 成果 は 、 機 能 して い る 学 校 を美 術 館 化 す ると い う 日 本 で初 め て の 試 みを 実 現 さ せ たこ と に あ る 。こ の プ ロ ジ ェク ト に よ っ て、 地 域 に お ける ア ー ト セ ンタ ー と し て 学校 施 設 を 活 用し て い く 可 能性 が 具 体 的 に提 示 さ れ た と言 え る 。 そ の社 会
的 影 響 とし て は 、1998 年に名古屋市立千種台中学校で 開 催 さ れた 「 千 種 台 コミ ュ ニ テ ィ ー美 術 館 プ ロ ジェ ク ト 学 校が 美 術 館」の 実 現 が 挙 げ られ る 。「 学 校 が 美 術 館 」 を 企画 し た 四 宮 敏行 教 諭 ( 当 時) は 、 村 上 から プ ロ ジ ェ クト 運 営 の ノ ウハ ウ を 学 び 、参 考 に し て いる 。 四 宮 は、「村 上 さ ん と の出 会 い が な けれ ば 、私 た ち の「 学 校 が 美 術館 」 は 実 現 して い な か っ ただ ろ う 」 と 述べ て い る 。1 7 ) 学 校 に おけ る 「 地 域 との 連 携 」 や 「開 か れ た 学 校」 に 向 け た事 業 と し て も成 果 が あ っ た 。PTA のサポート や 、 多 数の 地 域 住 民 の来 場 は 、 地 域に お け る 学 校の 印 象 を 大 きく 変 え る も ので あ っ た と 思わ れ る 。 作 品の 設 置 や 会 場の 運 営 を 通 して 、 中 学 生 と芸 術 家 や 地 域住 民 と の 交 流が 実 現 し た こと も 、 中 学 生の 社 会 参 画 への 一 歩 と し て評 価 で き る 。特 に 芸 術 家 との 直 接 的 交 流は 、 現 代 美 術の ア ウ ト リ ーチ 事 業 と し て効 果 的 で あ るこ と を 示 し てい る 。 芸 術 創 造の 面 で は 、 実際 に 使 用 さ れて い る 学 校 を表 現 の 舞 台と し た こ と で、 パ ブ リ ッ クア ー ト の 可 能性 や 意 義 に つい て 考 え る きっ か け を つ くっ た こ と が 成果 で あ る と 言え よ う 。 こ のプ ロ ジ ェ ク トは 、 公 共 空 間に お け る 芸 術表 現 と 言 え ば「 彫 刻 の あ るま ち づ く り 」で あ っ た わ が国 の パ ブ リ ック ア ー ト の 状況 に 対 し て 、全 く 異 な る アプ ロ ー チ を 提示 し た 。 ま た、 美 術 館 や ギャ ラ リ ー と いっ た 美 術 専 門で は な い 施 設で の 展 示 と いう 観 点 か ら 捉え れ ば 、 オ ルタ ナ テ ィ ブ スペ ー ス と し ても 興 味 深 い 事例 で あ る 。 空ビ ル や 廃 校 を、 美 術 館 化 した オ ル タ ナ ティ ブ ス ペ ー スは 米 国 の「P.S.1」(1971 年設立) を 代 表 に、 国 内 外 に 先行 事 例 が あ るが 、 機 能 し てい る 学 校 を 美術 館 化 す る 試み は 、 少 な くと も わ が 国 では こ の プ ロ ジェ ク ト が 初 めて の 事 例 で ある 。 ア ー ト プロ ジ ェ ク ト とし て も 時 期 的に 早 く 、 重 要な 実 践 と 位 置づ け ら れ る 。 (写真1)IZUMIWAKU プロジェクト(村上タカシ撮影) 地 域 づ くり の 成 果 と して は 、 幅 広 い人 々 を つ な ぐ事 業 と な った こ と が 挙 げら れ る だ ろ う。 こ の プ ロ ジェ ク ト は、村 上 の 個 展 会 場で の 提 案 が 来場 者 の 話 題 とな り 、 具 体 的 なプ ロ ジ ェ ク トに 発 展 し て いっ た も の で ある 。 その ため プ ロ ジェ クト の 運 営に は、OL や学芸員、芸 術 家 な ど、 学 校 や 周 辺地 域 と は 直 接関 係 の な い 市民 も 参 加 し てい る 。 つ ま り、 ア ー ト プ ロジ ェ ク ト に よっ て 学 校 の 内外 だ け で な く、 地 域 の 内 外を も 結 ぶ こ とと な っ て い るの で あ る 。 (写真2)IZUMIWAKU プロジェクト(村上タカシ撮影) 4-3 学校共創プログラムの方法と仕組み 先 ず 、こ れ ま で の 事 例1、事例 2 の検証から、学校 共 創 プ ログ ラ ム の 仕 組み を 考 察 す る。 こ れ ら の プロ ジ ェ ク ト は、 地 域 社 会 にお け る 学 校 が、 そ の 内 部 に芸 術 家 や 地 域住 民 を 招 き 入れ 、 児 童 ・ 生徒 と の 表 現 を通 し た 交 流 を創 出 す る こ とに よ っ て 展 開さ れ て い る 。つ ま り 、 学 校共 創 プ ロ グ ラム は 、 ア ー トプ ロ ジ ェ ク トの 実 施 に よ って 学 校 に 外 部の 人 々 が 入 り、 内 部 の 人 々と の 共 創 の 場を 創 出 す る 仕組 み と な っ てい る 。 そ れ を図 示 す る と ( 図 1)のようになる。点線で示された円は、 プ ロ ジ ェク ト の 現 場 であ る 。 そ こ には 、 児 童 ・ 生徒 と
芸 術 家 や地 域 住 民 に よる 、表 現 と 交流 の 循 環 が 生ま れ 、 共 創 の 場が 成 立 し て いる 。 (図1)学校共創プログラムの仕組み(筆者作成) 次 に 事例1、事例 2 に共通している方法を考察する。 共 通 し てい る 方 法 は 2 つある。1 つは、どちらもプロ ジ ェ ク トの 企 画 運 営 が、NPO や、実行委員会のような 学 校 の 外部 組 織 に よ って 行 わ れ て いる こ と で あ る。 学 校 内 部 の活 動 に し よ うと す る と 、 職員 会 議 な ど を通 し た 調 整 作業 が 膨 大 に なっ て し ま う が、 外 部 の 組 織が 届 け を 出 して 使 用 す る 形に し た り 、NPO が学校教育を支 援 す る 形に し た り す るこ と で 、 ス ムー ズ な 進 行 が可 能 に な り 、プ ロ ジ ェ ク トの 創 造 性 を 担保 す る こ と がで き て い る。共 通 す る も う1 つの方法は、どちらの事例も、 学 校 の 外か ら プ ロ の 芸術 家 を 招 き 、そ の プ ロ ジ ェク ト を 通 し た児 童 ・ 生 徒 との 交 流 を 実 現し て い る こ とで あ る 。 芸 術家 と の 連 携 は、 プ ロ ジ ェ クト 全 体 の 表 現の 質 を 高 め 、芸 術 関 係 者 やマ ス メ デ ィ アか ら の 評 価 や注 目 に つ な がっ て い る 。 その こ と が 、 地域 住 民 な ど 、外 部 か ら の 観客 を 増 や す こと に つ な が った と 思 わ れ る。 以 上 の こ とか ら 、 学 校 共創 プ ロ グ ラ ムの 企 画 運 営 には 、 「 外 部 組織 に よ る 企 画運 営 」と 、「 芸 術 家 と の 連 携」が 有 効 な 方法 で あ る こ とが 明 ら か に なっ た 。 5. 地域共創プログラム 地 域 共 創プ ロ グ ラ ム は、 児 童 ・ 生 徒や 教 師 が 学 校を 出 て 、 地域 社 会 に お いて 表 現 活 動 や、 表 現 を 通 した 地 域 住 民 との 交 流 を 行 うプ ロ グ ラ ム であ る 。 こ う した 地 域 共 創 プロ グ ラ ム は 、近 年 で は 総 合的 な 学 習 の 時間 や 美 術 部 の活 動 と し て、各 地 の 学 校 で取 り 組 ま れ てい る 。 公 園 の 遊具 や 商 店 街 のシ ャ ッ タ ー を彩 色 し 、 地 域の 活 性 化 に 貢献 す る と い った 活 動 は 、 この プ ロ グ ラ ムに 分 類 さ れ る。 本 研 究 で は兵 庫 県 立 龍 野実 業 高 校 デ ザイ ン 科 で 実 施さ れ て き た 「町 ぢ ゅ う 美 術館 」 を 実 践 事例 と し て 取 り 上 げ る 。 活 動 が9 年間継続していることや 、 町 づ く りと し て の 展 開な ど か ら 、 学校 と 地 域 社 会を つ な い だ 成功 事 例 で あ ると 思 わ れ る 。 学 校 地 域 児 童 ・ 生徒 ・ 教 員 地 域 住 民・ 芸 術 家 本 研 究 では 検 証 の た め「 町 ぢ ゅ う 美術 館 」 を 第 1回 か ら 指 導さ れ て き た 兵庫 県 立 龍 野 北高 校 の 清 水 浄教 諭 に 聞 き 取り 調 査(2011 年 7 月 19 日実施)を実施した。 ま た、筆 者 は ほ ぼ 毎 年、「 町 ぢ ゅ う美 術 館」を 見 学 し て い る 。 こう し た 経 験 も考 察 を 進 め る上 で 役 に 立 った 。 実 施 時 期や 会 場 数 な どの デ ー タ は 、龍 野 北 高 校 総合 デ ザ イ ン 科 のweb サイトの掲載情報に基づいて作成し た も の であ る 。 5-1 事例 3「町ぢゅう美術館」 5-1-1 事例 3 の概要 実 施 時 期:2003 年~2011 年 実 施 会 場: た つ の 市 景観 形 成 地 区 主 催 団 体: 兵 庫 県 立 龍野 実 業 高 校 デザ イ ン 科 ( 同校 は 2010 年に、新宮高校と統合して閉校となった。「町ぢ ゅ う 美 術館 」 は 、 統 合に よ っ て 誕 生し た 龍 野 北 高校 総 合 デ ザ イン 科 に 引 き 継が れ て 、 継 続さ れ て い る ) 活 動 概 要: 「 町 ぢ ゅう 美 術 館 」 は、 兵 庫 県 立 龍野 実 業 高 校 デザ イ ン 科 が2003 年から実施している卒業制作展である。 文 化 ホ ール の ギ ャ ラ リー で 開 催 し てい た 卒 業 制 作展 の 観 客 数 を増 や そ う と 、町 中 の 空 き 店舗 を 利 用 し た作 品 展 示 を 行っ た の が 活 動の き っ か け とな っ た。毎 年2 月 中 旬 に 、城 下 町 の 風 情を 残 す 景 観 形成 地 区 で 開 催さ れ て い る 。デ ザ イ ン 科 の生 徒 作 品 の 展示 ( 写 真3)が中 心 で あ るが 、 期 間 中 は保 育 園 や 幼 稚園 と の 共 同 制作 の
展 示 ( 写 真4)や、地域の芸術家や高齢者のグループ 展 な ど 、地 域 連 携 に よっ て 展 覧 会 が多 数 開 催 さ れる 。 2011 年 2 月に開催された「町ぢゅう美術館」では、公 民 館、商 店 街 の 空 き 店舗 、企 業 の 資料 館 、寺 院 な ど50 カ 所 で 展示 が 行 わ れ た。 龍 野 北 高 校へ の 統 合 が 進め ら れ て い た2009 年 2 月の「町ぢゅう美術館」では、景 観 形 成 地区 に 加 え て 閉校 さ れ る 龍 野実 業 高 校 の 校舎 も 展 示 会 場と な り 、 卒 業生 や 地 域 住 民が 多 数 訪 れ た。 こ う し た 活動 は 、「 朝 日 の び の び 教 育賞 」( 朝 日 新聞 社 、 2006 年)や「学生街づくり部門特別賞」(日本都市計 画 家 協 会、2009 年)の受賞につながっている。 5-1-2 事例 3 の成果 地 域 づ くり の 成 果 と して は 、 プ ロ ジェ ク ト を 通 して 保 守 的 だっ た 地 域 が 開か れ 、 町 の 活性 化 に 大 き く寄 与 し て い るこ と が 挙 げ られ る 。 当 初 、地 域 住 民 は 空き 店 舗 の 使 用に 消 極 的 で あっ た が 、 高 校生 と の 交 流 が生 ま れ 、 プ ロジ ェ ク ト が 継続 し て い っ たこ と で 、 理 解や 協 力 が 得 られ る よ う に なっ て い っ た 。地 域 の 恒 例 事業 と し て 認 知が 進 み 、 来 場者 も 増 加 し 、た つ の 市 の 商工 観 光 課 か ら、「 若 い 力 で市 の 活 性 化 に貢 献 し て く れて い る 」 と 評価 さ れ る よ うに な っ て い った 。1 8 )第1 回の 観 客 動 員 数200 人が、第 9 回には 12,000 人となり、 地 域 の 観光 政 策 の 面 から も 注 目 さ れて い る 。 地 域づ く り と し ては 、 高 齢 者 の工 芸 教 室 の 展覧 会 と の 連 携も 注 目 さ れ る。 こ の 「 町 ぢゅ う 美 術 館 」の 活 動 は 、 同じ 地 域 に 暮 らす 表 現 者 同 士が 、 世 代 や 専門 性 の 違 い を超 え て 連 携 し、 展 覧 会 の 同時 開 催 を 実 現し て い る 。 その こ と で 、 高齢 者 と 高 校 生の 文 化 交 流 が生 ま れ て い る。 地 域 の 展 覧会 で は 、 出 品者 の 家 族 や 関係 者 が 主 な 観客 と な る 。 その た め 、 そ れま で 高 齢 者 のグ ル ー プ 展 に、 高 校 生 が 訪れ る こ と は なか っ た そ う であ る 。 こ う した 年 齢 層 に よる 文 化 交 流 の分 断 が 、 こ のプ ロ ジ ェ ク トに よ っ て 崩 され て い る 。 学 校 教 育面 で の 成 果 とし て は 、 高 校生 の 地 域 社 会に 対 す る 意識 の 高 ま り が確 認 で き た 。展 示 作 業 や 公開 制 作 な ど を通 し て、地 域 住 民 と 高 校 生の 交 流 が 創 出さ れ 、 (写真4)町ぢゅう美術館の展示風景 (兵庫県立龍野北高校HP より転載) (写真5)幼稚園との連携で制作された壁画 (兵庫県立龍野北高校HP より転載) 相 互 理 解が 深 ま っ て いっ た 。 景 観 形成 地 区 は 、 龍野 実 業 高 校 の通 学 路 で あ った た め 、 こ のプ ロ ジ ェ ク トが 始 ま っ て から 高 校 生 と 地域 住 民 と の 間に 「 あ い さ つ」 が 交 わ さ れる よ う に な った 。 芸 術 表 現の 面 か ら は 、町 を 表 現 の 場に 変 容 さ せ てい く こ と に大 き な 成 果 があ っ た 。 幅 広い 地 域 連 携 によ っ て 世 代 や専 門 性 を 超 えた 芸 術 文 化 関係 者 の 参 画 を実 現 で き た こと は 、 地 域 交流 に 留 ま ら ず芸 術 文 化 振 興の 面 か ら も 効果 的 で あ っ たと 言 え る 。 この 点 に つ い ては 、 芸 術 家 を中 心 と し た プロ ジ ェ ク ト では な く 、 地 域の 高 校 生 が 中心 と な っ た こと の 意 義 も 大き い と 思 わ れる 。 個 々 の 作品 の 完 成 度 や専 門 性 の 高 さ以 上 に 、 地 域の 若 者 の 頑 張り が 、 地 域 から の 支 援 や 連携 を 引 き 出 して い
っ た と 推察 で き る か らで あ る。景 観 形 成 地 区 で は毎 年 、 2 月は「町ぢゅう美術館」が開催され、3 月は「雛祭 り」、4 月は「さくら祭り」が開催されて、地域の内外 か ら 多 数の 観 光 客 が 訪れ る 。「 町 ぢ ゅ う 美 術 館」は 地 域 に 新 し い祭 り を 創 出 しつ つ あ る と 言え る の で は ない だ ろ う か 。 5-2 地域共創プログラムの方法と仕組み こ れ まで の 事 例 3 の検証から、「地域共創プログラ ム 」 の 仕組 み を 考 察 する 。 こ の プ ロジ ェ ク ト は 、学 校 か ら 児 童・ 生 徒 お よ び教 師 が 、 そ の外 部 で あ る 地域 社 会 に 出 て、 地 域 住 民 と表 現 を 通 し た交 流 を 創 出 する こ と に よ って 展 開 さ れ てい る 。そ れ を 図 示 す る と( 図2) の よ う にな る 。 点 線 で示 さ れ た 円 は、 プ ロ ジ ェ クト の 現 場 で ある 。 そ こ に は、 生 徒 と 地 域住 民 に よ る 、表 現 と 交 流 の循 環 が 生 ま れ、 地 域 に 共 創の 場 が 創 出 され て い る 。 (図2)地域共創プログラムの仕組み(筆者作成) 次 に 事 例 3 の検証をもとに、その有効な方法を考察 す る 。 有効 な 方 法 は 2 つ挙げられる。1 つは、プロジ ェ ク ト を通 し て 地 域 の表 現 者 の 連 携を 実 現 し て いる こ と で あ る。事 例3 では、プロジェクトの中心である高 校 生 と 、地 域 の 芸 術 家や 工 芸 を 学 ぶ高 齢 者 、 幼 稚園 児 な ど 、 経験 も 世 代 も 異な る 多 様 な 人々 を つ な ぎ 、同 時 に 作 品 発表 す る 場 を 成立 さ せ て い る。 そ れ に よ って 年 齢 層 を 超え た 文 化 交 流が 実 現 さ れ 、町 を 表 現 と 交流 の 循 環 す る場 に 変 え る こと に 成 功 し てい る 。 そ し て、 活 動 の 継 続に よ っ て 連 携が 拡 大 し 、 結果 と し て 地 域に お け る 認 知度 の 向 上 、 観客 動 員 数 の 上昇 と い っ た 成果 に つ な が って い る 。 そ れは 、 地 域 に 別々 に 存 在 し てい た 表 現 者 を、 ア ー ト プ ロジ ェ ク ト に よっ て つ な い だ成 果 で あ る 。も う1 つは、社会的評価の向上である。事例 3 は、新聞などメディアでの紹介や、来場者の増加、 朝 日 の びの び 教 育 賞 の受 賞 な ど 、 さま ざ ま な 形 で社 会 的 評 価 を受 け て い る 。そ れ は 、 高 校生 た ち を 勇 気付 け る と 同 時に 、 地 域 住 民の 認 識 を 変 容さ せ 、 プ ロ ジェ ク ト へ の 期待 を 高 め て いっ た 。 地 域 共創 プ ロ グ ラ ムは 、 プ ロ ジ ェク ト を 実 施 する 場 が 地 域 社会 で あ る た め、 地 域 住 民 の理 解 や 協 力 はプ ロ ジ ェ ク トの 成 否 に 関 わる 重 要 な 要 素で あ る 。 当 初、 保 守 的 だ った 地 域 住 民 が、 恒 例 行 事 とし て 期 待 す るよ う に な り 、協 力 的 に な って い っ た 背 景に は 、 こ う した 社 会 的 評 価の 向 上 が 重 要で あ っ た と 思わ れ る 。 以 上の こ と か ら 、地 域 共 創 プ ログ ラ ム の 企 画運 営 に は、「 地 域 の 表 現 者と の 連 携 」 と、「 社 会 的 評 価の 向 上 」 が 有効 な 方 法 で ある こ と が 明 らか に な っ た 。 学 校 地 域 児 童 ・ 生徒 ・ 教 員 地 域 住 民・ 芸 術 家 6. 学校・地域共創プログラム 学 校 ・ 地域 共 創 プ ロ グラ ム は 、 学 校と 地 域 社 会 の両 方 に 跨 って 、 表 現 や 交流 を 創 出 し てい く 活 動 で ある 。 地 域 住 民 や 芸 術 家 を 学 校 に 迎 え 入 れ る と と も に 、 児 童 ・ 生 徒が 地 域 に 出 かけ て 活 動 を 行う こ と と な る。 本 研 究 で は姫 路 市 立 安 富北 小 学 校 で 実施 さ れ た 「 ホタ ル キ ノ コ」と、加 古 川 市 立山 手 中 学 校の2004 年から 2006 年 に か けて 実 施 さ れ た「 ア ー ト プ ロジ ェ ク ト 」 を実 践 事 例 と して 取 り 上 げ る。 本 研 究 では 検 証 の た め事 例4 は、実践の中心であっ た 姫 路 市立 手 柄 小 学 校の 橋 本 忠 和 主幹 教 諭 に 聞 き取 り 調 査(2011 年 6 月 25 日実施)を実施し、橋本の博士 課 程 研 究論 文 に 基 づ いて 検 証 を お こな っ た。事 例4 は、 橋 本 と 筆者 が 連 携 し て実 施 し た プ ロジ ェ ク ト で ある こ と か ら 、筆 者 の 実 践 報告 や 記 録 資 料も 活 動 を 振 り返 る
重 要 な 資料 と な っ た。事 例5 は、実践の中心であった 神 戸 親 和女 子 大 学 の 神吉 脩 教 授 に 聞き 取 り 調 査(2011 年7 月 13 日実施)を実施した。また、当時プロジェ ク ト に 参加 し た 生 徒 に、 聞 き 取 り 調査 (2011 年 7 月 14 日実施)を実施した。文献に関しては、「学校が元 気 に な る! ア ー ト に よる コ ミ ュ ニ ティ 活 動 の 実 践」(神 吉 他 編 著、2006 年)に基づいて検証を行った。 6-1 事例 4「ホタルキノコ」 6-1-1 事例 4 の概要 実 施 時 期:2007 年 実 施 会 場: 姫 路 市 立 安富 北 小 学 校 とそ の 周 辺 地 域 主 催 団 体: 姫 路 市 立 安富 北 小 学 校 活 動 概 要: 姫 路 市 立安 富 北 小 学 校の 橋 本 忠 和 教諭 ( 当 時 ) によ る 環 境 芸術 を 教 材 と する 図 画 工 作 の授 業 や 、 ホ タル の 飼 育 放 流に よ る 環 境 教育 な ど を つ ない で 市 民 教 育へ と 展 開 す るプ ロ ジ ェ ク トに 、筆 者 が 芸術 家 と し て 連携 し 、 ア ー ト ワー ク シ ョ ッ プ「 ホ タ ル と 仲良 し 光 る キ ノコ づ く り 」 を実 践 し た 活 動。 制 作 に い たる 過 程 は 、 学校 内 で 図 画 工作 や 、 総 合 的な 学 習 の 時 間の 一 環 と し て実 施 さ れ た 。制 作 の 直 前 には 、 芸 術 家 であ る 筆 者 が 授業 を 行 い 、 児童 と 芸 術 家 の交 流 や 、 活 動目 標 の 共 有 が図 ら れ た 。 小学 校 の 体 育 館で 、 小 学 生 が古 新 聞 や 間 伐材 を 用 い て 各自 高 さ 1m のキノコを制作した。( 写 真5)出 来 た 55 本のキノコは、各自が担いで近隣の川まで運 び 、 川 沿い の 岸 辺 に 設置 し て 、 大 規模 な イ ン ス タレ ー シ ョ ン 作品 を 実 現 し た。( 写 真6)制作には保護者や中 学 生 、 大学 生 が 参 加 し、 キ ノ コ の 設置 に は 自 治 会の 協 力 も 得 られ た 。 蓄 光 塗料 を 塗 っ た キノ コ は 、 夜 にな る と ボ ン ヤリ と 光 り 、 数十 匹 の ホ タ ルと の 光 の コ ラボ レ ー シ ョ ンが 実 現 し た 。そ の 幻 想 的 な光 景 は 、 制 作し た 児 童 だ けで な く 、 活 動を 支 援 し た 大学 生 や 地 域 住民 に と っ て も感 動 的 な 体 験と な っ た 。 新聞 や テ レ ビ で紹 介 さ れ た こと も あ り、多 数 の ホ タ ル 見物 客 が 地 域 を訪 れ 、 周 辺 住 民が 作 品 紹 介 や、 作 品 の 保 全を 自 主 的 に 行う 姿 も 見 ら れた 。 キ ノ コ は一 旦 、 小 学 校に 回 収 さ れ たが 、 (写真6)川沿いに設置されたキノコ(2007 年、筆者撮影) 児 童 の 発案 で そ の 年 の 10 月に山の遊歩道に設置され た 。 こ の「 キ ノ コ の 散歩 道 」 プ ロ ジェ ク ト は 、 自治 会 と 老 人 会の 協 力 で 実 現し 、 地 域 イ ベン ト と な っ た。 6-1-2 事例 4 の成果 学 校 教育 上 の 成 果 は、 地 域 住 民 との 連 携 や 大 学生 の 参 加 に よっ て「開 か れ た 学 校」を 実 現 し て い る こと と 、 図 画 工 作と 総 合 的 な 学習 の 時 間 を つな ぎ 、 小 学 生の 社 会 参 画 を実 現 し た 点 が挙 げ ら れ る 。活 動 が テ レ ビや 新 聞 で 紹 介さ れ た こ と で、 ホ タ ル 見 物客 が 増 加 し 、地 域 の 活 性 化に 貢 献 し た 。こ の こ と は 小学 生 た ち に とっ て 社 会 参 画へ の 自 信 と なり 、「 キノ コ の 散 歩 道」の 実 現 に つ な が った 。 橋 本 は こう し た プ ロ ジェ ク ト の 展 開を 市 民 教 育 とし て の 学 習 成果 と し て 分 析し て い る 。 芸術 家 と の 連 携も 重 要 で あ った 。 ア ン ケ ート 結 果 か ら 、小 学 生 の 芸 術へ の 親 し み や関 心 が 増 進 した こ と が 判 明し て い る 。 芸 術 創 造と し て の 成 果は 、 地 域 の 美し い 自 然 環 境を 活 か し たイ ン ス タ レ ーシ ョ ン を 実 現し た こ と で ある 。 特 に キ ノコ と ホ タ ル との 光 の コ ラ ボレ ー シ ョ ン は、 多 く の 参 加者 を 感 動 さ せた 。 動 物 や 昆虫 を 表 現 の 素材 と す る 現 代美 術 作 品 は 多数 存 在 す る が、 ホ タ ル の 光を 表 現 素 材 とす る 作 品 は 見当 た ら な い 。自 分 た ち の 飼育 し た ホ タ ルと 、 自 分 た ちが 作 っ た キ ノコ 作 品 と の コラ ボ レ ー シ ョン は 、 小 学 生に と っ て 環 境学 習 と 芸 術 創造 を つ な い でい く 体 験 と して 、 効 果 的 なも の に な っ た。 地 域 づ く り と し て の 成 果 は 、「 ホ タ ル キ ノ コ 」 の 実
現 に よ って 、 自 治 体 や老 人 会 に 、 学校 の 活 動 へ の理 解 と 協 力 姿勢 が 形 成 さ れた こ と が 挙 げら れ る 。 橋 本は 、 学 校 か らの 新 し い 提 案や 協 力 要 請 に対 し て 、 不 安よ り も 関 心 をも っ て 取 り 組ん で も ら え るよ う に な っ たと 述 べ て い る。そ し て そ の理 由 は、「 ホ タル キ ノ コ」が 実 現 し た こ とで 、 学 校 の 地域 活 動 を 視 覚的 に 共 有 で きた た め と 指 摘し て い る。最 後 に 、「 キ ノ コの 散 歩 道」は 児 童 の 発 案 と、 地 域 か ら の期 待 が 重 な った と こ ろ に 生ま れ た 活 動 であ っ た 。 こ の出 来 事 は 、 地域 の 新 し い 文化 の 芽 が ア ート プ ロ ジ ェ クト に よ っ て 誘い 出 さ れ た と考 え る こ と も可 能 で あ ろ う。 6-2 事例 5「加古川市立山手中学校のアートプロジェ ク ト 」 6-2-1 事例 5 の概要 実 施 時 期:2004 年~2006 年 実 施 会 場: 加 古 川 市 立山 手 中 学 校 とそ の 周 辺 地 域 主 催 団 体: 加 古 川 市 立山 手 中 学 校 活 動 概 要: 2002 年に加古川市立山手中学校の美術教師であっ た 神 吉 脩教 諭 ( 当 時 )に よ っ て 実 践さ れ た 「 地 域注 文 ア ー ト 」が き っ か け とな っ て 、2003 年から 2006 年ま で の 美 術と 総 合 的 な 学習 の 時 間 な どの 授 業 や 、 美術 部 の 課 外 活動 で 展 開 さ れた ア ー ト プ ロジ ェ ク ト 。 地域 の 高 齢 者 を多 数 、 絵 画 モデ ル と し て 学校 に 招 き 、 その ス ケ ッ チ をも と に 版 画 を制 作 し 手 渡 す、「高 齢 者 交 流ア ー ト」(2003 年)。地域の商店と連携して、店長の等身大 絵 画 「 店長 画 」 を 制 作し 、 商 店 に プレ ゼ ン ト し て地 域 活 性 化 に取 り 組 ん だ、「 商 店 街 ア ート 」(2004 年)。通 学 路 の 錆び つ い た 道 路フ ェ ン ス を 塗り な お し 、 花模 様 を 描 い たテ ン ト シ ー トを 設 置 し た、「 道路 ふ れ あ いア ー ト」(2005 年)。こうした活動と並行して美術部員を中 心 に 、 高齢 者 福 祉 施 設の 入 所 者 の 誕生 日 に 絵 画 を届 け た、「 ア ー ト 宅 配 便」(2004 年)などが実施された。ま た 、 総 合的 な 学 習 の 時間 の 活 動 と して 、 阪 神 淡 路大 震 災 を テ ーマ と す る 巨 大壁 画 や 陶 ラ ンプ な ど が 毎 年1 月 17 日の「震災の日」のセレモニーに向けて制作された。 こ の よ うに 、同 中 学 で は2004 年から 2006 年にかけて、 美 術 表 現を 通 し て 学 校に 地 域 住 民 を招 い た り 、 中学 生 が 地 域 に参 画 し た り する 活 動 が 継 続的 に 実 施 さ れた 。 こ の プロ ジ ェ ク ト につ い て 神 吉 は、「 小 学 校 時代 に 「 学 級 崩壊 」 や 荒 れ など の 困 難 を 経験 し 、 心 の 拠り 所 や 自 分 のよ さ を 見 い だせ な か っ た 生徒 た ち を 対 象に し (写真7)「商店街アート」が実施された商店街周辺 (2011 年、筆者撮影) (写真8)展示されている「店長画」(2011 年、筆者撮影) た 」 と 述べ て い る 。1 9 )事 例4 のような芸術家との交 流 は な く、 中 学 生 と 地域 住 民 の 交 流を 起 点 に 、 相互 理 解 と 地 域づ く り が さ まざ ま に 試 み られ て い る と ころ に 特 長 が ある 。 聞 き 取 り調 査 の 中 で 神吉 は 、 こ れ らの プ ロ ジ ェ クト が 芸 術 表 現と し て で は なく 、 中 学 生 の地 域 参 画 に よる 教 育 と し て実 施 さ れ た もの で あ る こ とを 強 調 し て いる 。 参 考 に した 芸 術 家 や アー ト プ ロ ジ ェク ト は 特 に なく 、 ジ ョ ン ・デ ュ ー イ の 思想 や 、W・H・キ
ル パ ト リッ ク (1871-1965)のプロジェクト・メソッ ド を 念 頭に お い た 活 動で あ っ た と いう 。 神 吉 は 、労 働 を 中 心 に営 ま れ て い る地 域 社 会 に 中学 生 や 高 齢 者が 本 格 的 に 参画 す る に は 、ア ー ト が 最 も有 効 な 方 法 であ る と 指 摘 して い る 。 そ れは 、 子 ど も や高 齢 者 の 社 会参 画 と い っ た観 点 か ら ア ート プ ロ ジ ェ クト の 可 能 性 と意 義 を 示 す もの で あ る 。 6-2-2 事例 5 の成果 こ の プ ロジ ェ ク ト の 教育 的 成 果 は 、中 学 生 が 地 域住 民 と の 交流 を 通 し て 、人 間 的 に 成 長し て い っ た とこ ろ に あ る 。中 学 生 と 高 齢者 の 相 互 理 解を 目 的 に 実 施さ れ た 「 高 齢者 交 流 ア ー ト」 で は 、 中 学生 と 高 齢 者 の間 に 声 を 掛 け合 っ た り 、 手紙 を 交 換 し たり と い っ た 日常 的 な 交 流 が生 ま れ て い る。「 地 域 注 文ア ー ト」や「 商店 街 ア ー ト 」で 、 地 域 の 人か ら 感 謝 さ れ、 褒 め ら れ て中 学 生 が 変 化し て い っ た と神 吉 は 振 り 返る 。 地 域 か ら注 文 を 受 け た絵 画 や 「 店 長画 」 を 、 手 渡し す る 中 で コミ ュ ニ ケ ー ショ ン が 創 出 され 、 人 間 的 な成 長 が 起 こ って い っ た と 言え る 。( 写 真7、8) 地 域 づ くり の 成 果 は 、道 路 フ ェ ン スの 装 飾 や 商 店街 へ の 「 店長 画 」 の 展 示な ど に よ っ て、 地 域 が 活 性化 し た こ と と、 そ の 活 動 を通 し て 地 域 住民 が 中 学 生 を評 価 し 、 相 互理 解 に よ る 人間 関 係 が 創 出さ れ た こ と が挙 げ ら れ る 。こ れ ら は 、 アー ト プ ロ ジ ェク ト に よ る 中学 生 や 高 齢 者の 社 会 参 画 の実 現 で あ る。事 例5 では、学校 と 地 域 社会 の そ れ ぞ れの 課 題 を つ なぎ 、 美 術 表 現に よ っ て そ の解 決 が 図 ら れて い る 。 こ れは ア ー ト プ ロジ ェ ク ト の 社会 的 可 能 性 を明 確 に 示 す もの で あ る 。 芸 術 表 現の 成 果 は 、 地域 と 密 接 に つな が っ た 表 現を 実 現 し た点 が 挙 げ ら れる 。 そ れ は 、あ い ち ト リ エン ナ ー レ2010 において制作された、ナウィン・ラワンチ ャ イ ク ンの 壁 画 ( 写 真9)や、ジョン・アーレン&リ ゴ ベ ル ト・ト レ ス の パブ リ ッ ク ア ート 、「 ウォ ル ト ン 通 り の 一 角で の パ ー テ ィ」(1985 年・米国)につながる も の で ある 。 前 者 は 、そ の 巨 大 な 画面 が 地 域 住 民の 肖 像 で 構 成さ れ て い て 、か つ て 繊 維 街と し て 栄 え た地 域 (写真9)「新生の地」ナウィン・ラワンチャイクン Navin Rawanchaikul (2010 年、筆者撮影) の 歴 史 を振 り 返 る 作 品と な っ て い る。 後 者 は 、 アフ リ カ 系 や ヒス パ ニ ッ ク 系住 民 の 協 力 で制 作 さ れ た 彩色 彫 刻 で 、 マイ ノ リ テ ィ 問題 や 公 共 空 間に お け る 芸 術表 現 の あ り 方 を 問 い か け る 作 品 で あ っ た 。2 0 )事 例5 の、 「 店 長 画」 や 、 高 齢 者を モ デ ル に 制作 さ れ た 版 画は 、 そ の 地 域に 生 き る 人 々を 作 品 の モ チー フ と す る こと で 、 こ う し た現 代 ア ー ト につ な が る サ イト ス ペ シ フ ィッ ク な 表 現 を獲 得 し て い る。「 店 長 画」は、中 学 生 らし い 素 朴 で 優 しい 表 現 で あ るが 、 商 店 街 に展 示 さ れ た 作品 の 存 在 は 、芸 術 表 現 と 地域 社 会 の 関 係を 考 え さ せ るも の と な っ てい る 。 6-3 学校・地域共創プログラムの方法と仕組み こ れ ま での 事 例4、事例 5 の検証から、「学校・地域 共 創 プ ログ ラ ム 」 の 仕組 み を 考 察 する 。 こ れ ら のプ ロ ジ ェ ク トは 、 学 校 と 地域 社 会 を 横 断し て 、 児 童 ・生 徒 お よ び 教師 が 、 芸 術 家や 地 域 住 民 と共 に 表 現 を 通し た 交 流 を 創出 す る こ と によ っ て 展 開 され て い る 。 それ を 図 示 す ると ( 図 3)のようになる。点線で示された円 は 、 プ ロジ ェ ク ト の 現場 で あ る 。 そこ に は 、 児 童・ 生 徒 と 地 域住 民 や 芸 術 家に よ る 、 表 現と 交 流 の 循 環が 生 ま れ 、 共創 の 場 が 創 出さ れ て い る 。 次 に 事 例4 と事例 5 に共通している方法を考察する。 共 通 し てい る 方 法 は2 つある。1 つは、どちらも学校 に 地 域 住民 を 招 き 入 れる 場 面 で 、 プロ ジ ェ ク ト にお け
(図3)学校・地域共創プログラムの仕組み(筆者作成) る 地 域 住民 の 役 割 を 明確 化 し て い る。事 例4 では、地 域 住 民 は児 童 の 制 作 や設 置 作 業 の 支援 者 と し て の役 割 が 設 定 され て い た 。事 例5 では、地域の高齢者が、絵 画 の モ デル と し て 学 校に 招 か れ る 形に な っ て い た。 学 校 と 地 域社 会 を つ な ぐア ー ト プ ロ ジェ ク ト に お いて 、 児 童 ・ 生徒 は プ ロ ジ ェク ト の 中 心 とし て 具 体 的 な役 割 が あ る が、 地 域 住 民 の役 割 は プ ロ ジェ ク ト に よ って さ ま ざ ま であ る 。 他 の プロ グ ラ ム で は、 観 客 や 傍 観者 で あ る こ とも 多 い 。 し かし 、 学 校 ・ 地域 共 創 プ ロ グラ ム に お い ては 、 児 童 ・ 生徒 と 地 域 住 民が お 互 い に 地域 社 会 や 学 校に 出 入 り す るこ と に な る 。そ の 時 、 そ れぞ れ の 役 割 が明 確 化 さ れ てい な け れ ば 、協 力 や 協 働 は困 難 と な る だろ う 。 特 に 地域 住 民 が 学 校で 活 動 す る 場面 で は 、 地 域住 民 の 役 割 の明 確 化 は 、 重要 な 方 法 で ある と 言 え る。も う1 つは、どちらの事例も、児童・生徒と 地 域 住 民と の 表 現 の 共有 が 図 ら れ てい る 。事 例4 では、 児 童 と 地域 住 民 が 協 力し て キ ノ コ が設 置 さ れ た が、 そ の 過 程 で、 キ ノ コ を 担い で 移 動 し てい る 。 さ ら に、 に ぎ や か な設 置 作 業 や 夜の 鑑 賞 会 は 、近 隣 住 民 を アー ト プ ロ ジ ェク ト へ 誘 う 効果 を も た ら し、 そ の 表 現 を共 有 す る き っか け と な っ てい る 。 そ の 共有 が 、 地 域 住民 の 協 力 や 理解 を 促 進 し たと 思 わ れ る。事 例5 の「商店街 ア ー ト 」で は 、「 店 長画 」を 制 作 した 生 徒 達 が 、モ デ ル と な っ た店 長 に 作 品 を贈 呈 す る 場 面が 設 定 さ れ てい た 。 「 高 齢 者交 流 ア ー ト 」に お い て 制 作さ れ た 版 画 も、 生 徒 か ら 高齢 者 へ の 作 品の 贈 呈 式 が 校内 で 開 催 さ れて い る 。 こ れら は 生 徒 に とっ て 、 地 域 住民 の 感 動 や 評価 が 目 に 見 え、 体 験 で き ると い う 効 果 をも た ら し 、 生徒 の 意 欲 や 自己 評 価 を 高 める こ と に つ なが っ て い る 。地 域 住 民 も こう し た 顔 の 見え る 活 動 に よっ て 、 地 域 の中 学 生 へ の 評価 を 変 容 さ せて い る。「 キ ノ コ 」 や 「 店長 画 」 を 、 児 童・ 生 徒 と 地 域住 民 が 共 有 する こ と に よ って 、 相 互 理 解や プ ロ ジ ェ クト へ の 参 画 が深 ま っ て い る。 以 上 の こ とか ら 、 学 校 ・地 域 共 創 プ ログ ラ ム の 企 画運 営 に は、「 地 域 住 民 の 役割 の 明 確 化 」と 、「 児 童 ・生 徒 と 地 域 住 民と の 表 現 の 共有 」 が 有 効 な方 法 で あ る こと が 明 ら か にな っ た 。 学 校 地 域 児 童 ・ 生徒 ・ 教 員 地 域 住 民・ 芸 術 家 7. 学校と地域社会をつなぐアートプロジェクトの方 法 と 仕 組み 本 章 で は、こ こ ま で 検証 し て き た 3 つのプログラム を 総 合 的に 考 察 す る こと で 、 学 校 と地 域 社 会 を つな ぐ ア ー ト プロ ジ ェ ク ト の方 法 と 仕 組 みを 考 察 す る 。 7-1 学 校 と 地 域 社 会 を つ な ぐ ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト の 方 法 学 校 共 創 プ ロ グ ラ ム に お け る 有 効 な 方 法 は 、「 外 部 組 織 に よる 企 画 運 営」と、「 芸 術 家 との 連 携」で あ っ た 。 地 域 共 創プ ロ グ ラ ム にお け る 有 効 な方 法 は、「 地 域 の表 現 者 と の連 携 」と 、「 社 会 的 評 価 の向 上 」で あ っ た 。そ し て 、 学校 ・ 地 域 共 創プ ロ グ ラ ム にお け る 有 効 な方 法 は、「 地 域 住 民 の 役 割の 明 確 化 」 と、「 児 童 ・ 生徒 と 地 域 住 民 との 表 現 の 共 有」 で あ っ た 。こ れ ら を 総 合的 に 検 討 す る と 3 つの方法にまとめられる。「プロジェク ト を 開 く」、「 プ ロ ジ ェク ト を 共 有 する 」、そ し て「プ ロ ジ ェ ク トを 育 む 」 で ある 。 学 校 と 地 域 社 会 を つ な ぐ ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト に お い て、「 プロ ジ ェ ク トを 開 く」こ と は 重 要 で あ る。そ れ は 多 様 な人 々 の 参 画 が可 能 な 企 画 ・運 営 を 行 う こと を 意 味 し てい る 。 各 事 例を ふ り か え れば 、 学 校 だ けで 取 り 組 む ので は な く 、 地域 社 会 の さ まざ ま な 組 織 や人 と
つ な が り、 協 働 し て いく こ と が プ ロジ ェ ク ト に 広が り や 厚 み をも た ら し て いた 。 芸 術 家や NPO などとの連 携 は 、 表現 の 質 を 高 め、 社 会 的 評 価を 向 上 さ せ る。 ま ち づ く り協 議 会 や 、 地域 の 表 現 者 との 連 携 は 、 プロ ジ ェ ク ト に地 域 的 な 価 値を 発 生 さ せ る。 学 校 や 町 を美 術 館 に し たり 、 地 域 住 民を 絵 画 モ デ ルと し て 学 校 に招 い た り と いっ た 工 夫 は、「 開 く 」た め の 有 効 な 方 法だ っ た と 言 え るだ ろ う 。 多 く の 人々 と 、「 プ ロ ジ ェ ク ト を 共有 す る 」こ と は 、 新 た な 連携 と 、 継 続 性の 向 上 に つ なが っ て い る 。そ の 共 有 は 、表 現 や 交 流 を通 し て 実 現 され る 。5 つの事例 は 、 ど のプ ロ グ ラ ム にお い て も 、 表現 と 交 流 の 循環 す る 共 創 の場 が 創 出 さ れて い た。( 図 4)この場を開き、 そ の 循 環を 充 実 さ せ るこ と が 、 共 有を 促 進 す る 。プ ロ ジ ェ ク トが 共 有 さ れ てこ そ 、 地 域 から 期 待 さ れ 、協 力 や 連 携 が拡 大 す る 。 地域 の 人 々 と の共 有 が 、 児 童・ 生 徒 の 成 長に つ な が っ てい る こ と も 重要 で あ る 。 (図4)共創の仕組み(筆者作成) 「 プ ロ ジ ェ ク ト を 育 む 」 こ と は 、 内 容 を 発 展 さ せ 、 継 続 性 を高 め る こ と であ る 。 プ ロ ジェ ク ト の 中 から 、 次 の 展 開が 生 ま れ る こと も よ く あ るこ と で あ る 。事 例 4 では、山にキノコを展示する新たな展開が起こった。 事 例3 や事例 5 でも、当初想定していなかった活動が、 プ ロ ジ ェク ト の 実 践 過程 で 発 想 さ れ、実 行 さ れ てい る 。 こ う し たプ ロ ジ ェ ク トの 臨 機 応 変 な育 み が 、 企 画・ 運 営 に お ける 高 い モ チ ベー シ ョ ン と 、創 造 的 発 展 につ な が っ て いる の で あ る 。 7-2 学 校 と 地 域 社 会 を つ な ぐ ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト の 仕 組 み こ れ まで の 事 例 検 証と 考 察 か ら 、学 校 と 地 域 社会 を つ な ぐ アー ト プ ロ ジ ェク ト の 仕 組 みは 、「連 携 」と「 共 創 」 と 「継 続 」 に よ って 構 成 さ れ てい る こ と が 分か っ た 。 中 でも 「 共 創 」 は最 も 重 要 で 、そ れ は 「 表 現と 交 流 の 循 環」 に よ っ て 成り 立 っ て い る。 学 校 と 地 域 社 会 を つ な ぐ ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 最 も重 要 な 仕 組 みは 、「 表 現 と 交流 の 循 環」で あ る。 そ れ は 、児 童 ・ 生 徒 と、 地 域 住 民 や芸 術 家 と の 協働 に よ っ て 創出 さ れ る 。 そし て 、 表 現 を通 し て 年 齢 や専 門 性 を 超 えた 交 流 が 生 まれ 、 次 の 表 現の き っ か け とな っ て い く ので あ る。表 現 と 交 流、ど ち ら か 一 方 で はな く 、 そ の 両 者が 循 環 す る こと が 重 要 で ある 。 本 研 究 では 、 交 流 と 表現 の 循 環 を 「共 創 」 と い う言 葉 で 表 し てき た が、こ の 言 葉 は、人 々 の 共 存 か ら 表現 と 交 流 が 生ま れ 、 創 造 的 な活 動 が 展 開 して い く こ と を想 起 さ せ て くれ る 。 正 に そ のよ う な こ と が、 学 校 と 地 域社 会 を つ な ぐア ー ト プ ロ ジェ ク ト の 中 心で 起 こ っ て いる の で あ る 。も ち ろ ん、こ う し た ア ー トプ ロ ジ ェ ク トは 、「共 創 」だけ で は 成 立 しな い 。「共 創 」の 前 後 に「 連 携 」と「 継 続 」の 仕 組 み が接 続 さ れ て 展開 さ れ る か らで あ る。「 連 携」は、 年 齢 や 専門 性 を 超 え た多 様 な 人 々 をつ な ぐ こ と であ る 。 「 継 続」は、「 共 創」に よ っ て 生 み 出さ れ た 活 動 を発 展 さ せ 、 充実 さ せ て い くこ と で あ る 。こ う し た 仕 組み を 図 示 す ると ( 図5)となる。 交 流 表 現 交 流 と 表現 の 循 環 の 場 学 校 と 地 域 社 会 を つ な ぐ ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト を 企 画・運 営 す る 場 合、( 図5)のような活動の仕組みを全 体 的 に 把握 し 、 特 に 「共 創 = 表 現 と交 流 の 循 環 」を 重 視 し な がら 、 実 践 す るこ と が 重 要 であ る こ と が 明ら か に な っ た。 7-3 学 校 と 地 域 社 会 を つ な ぐ ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト の 課 題