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為家書礼とその妖艶幽玄体 : 付、越部禅尼消息等の伝本ならびに紫明抄のことなど (開學記念特輯)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

Kobe Shoin Women’s University Repository

Title

為家書礼とその妖艶幽玄体 : 付、越部禅尼消息等の伝本なら

びに紫明抄のことなど

Author(s)

谷山 茂(Taniyama Shigeru)

Citation

文林(BUNRIN)

,No.1:92-110

Issue Date

1966

Resource Type

Bulletin Paper / 紀要論文

Resource Version

URL

Right

(2)

幽玄

1

便

.

.

l

O

-条 々 御 詠 所 存 少 々 注 進 候 。 自 二 先 度 一彌 見 二 御 詠 一者 、 地 躰 殊 神 妙 之 上 、 被 二 思 食 入 一候 、 姿 詞 尤 珍 重 々 々 候 。 凡 計 一 字 事 、 父 祖 庭 訓 と て は か み \ し く 存 分 た る 事 も 不 レ 候 。 只 為 レ 先 二 理 世 一 廻 二 風 情 一 、 叶 二 義 理 一兼 二 華 実 一。 思 二 比 類 一、 取 二 讐 喩 一候 も 妖 艶 幽 玄 躰 を 存 候 は 窄 、 を の つ か ら 不 レ 可 レ 背 二 六 義 一 。 且 者 、 古 今 序 ﹁ 花 を た つ ね 月 を こ ふ と て ﹂ と 賢 愚 を 書 顕 候 欺 。 又 、 千 載 集 序 に ﹁ 本 文 法 門 を も さ と ら ず 、 只 仮 名 四 十 七 字 之 内 、 思 ふ こ と を 詞 に 計 一 字 に い ひ つ ら ぬ る 故 に 、 八 雲 の 底 を し の ぎ 敷 嶋 の さ か ひ に 入 す ぎ た り と の み 思 へ る 成 べ し 。 し か は あ れ ど も 、 ま 事 に は き れ ば 弥 か た く 仰 ぱ 一一92一

(3)

弥 た か き 物 は 嵜 道 也 ﹂ と 書 候 。 寂 蓮 、 ﹁ い な ば を わ た る さ ほ し か の 聲 ﹂ と よ み て 自 讃 つ か ま つ り 候 け る を ば 、 祖 父 俊 成 、 ﹁ 末 代 の 再 損 ぜ む ず る 肝 也 。 誠 す く な し 。 恋 . 述 懐 な ど に は 利 口 も ゆ る す 事 な れ ど 、 四 季 岳 は 虚 誕 は 不 レ 可 レ 然 候 ﹂ 由 、 申 候 け る 。 千 載 集 に い れ ず 候 け る を 、 絵 に な く ノ \ 申 け る 不 便 さ に 、 父 定 家 、 平 に 申 入 て 候 き 。 ﹁ 今 思 食 候 へ ば 、 猶 よ く 申 候 け る 。 近 代 寄 、 此 風 出 来 て 、 ひ た 虚 言 に 成 に た り ﹂ と 申 候 き 。 如 レ 此 事 、 此 中 風 、 い と 穿 手 振 候 て 委 不 レ 申 候 。 又 、 新 勅 撰 の 比 、 橘 長 政 と 申 候 し 好 士 、 自 讃 再 に ﹁ さ き に け り 雲 の は た て の 山 ざ く ら あ ま つ 嵐 に 物 思 へ と て ﹂ と 詠 候 て 、 平 に 可 レ 入 之 由 、 懇 望 候 き 。 亡 父 、 い と を し げ に ﹁ さ く ら 程 の 物 を 、 人 の 物 思 へ と て さ く と い ひ な さ む 、 い ま / \ し ﹂ と 申 候 き 。 就 レ 之 、 近 年 見 及 候 へ ば 、 春 の 明 ぼ の ・ 秋 の 夕 暮 ・ 秋 の 夜 の 月 、 み な 此 義 に 罷 成 候 。 只 、 時 節 す ご く 身 に し み 、 景 物 の 心 を う こ か し 、 た へ が た き 事 を 賞 翫 ご と く 思 給 候 へ 。 是 等 事 、 次 、 私 存 知 申 候 。 不 レ 可 レ 有 二 御 披 露 一候 。 如 レ 此 事 は 、 祖 父 に 亡 父 四 十 除 年 、 亡 父 に 融 覚 四 十 鯨 年 、 承 を き 候 し 間 、 さ す が に 多 候 へ ど も 、 老 病 相 侵 、 心 神 衰 疲 、 無 下 に よ は く 罷 成 候 て 、 忘 脚 候 し 上 、 右 筆 不 レ 合 レ 期 候 し 間 、 き と 存 事 を 申 候 し 。 返 々 片 腹 痛 も 候 鰍 。 愚 鮎 之 事 、 師 匙 な ど 無 二 左 右 一合 候 。 撰 寄 之 時 、 臨 レ 期 、 吾 次 第 も 違 齪 、 作 者 つ 宰 き も 無 骨 候 し 時 、 相 違 出 来 候 し 間 、 ﹁ さ て や 、 い か に 師 鮎 は 合 た り し そ ﹂ と つ め ら れ 候 。 難 レ 堪 に 候 し 間 、 少 々 略 候 を 、 被 レ 庭 二奇 惟 不 審 一、 公 私 難 レ 堪 候 也 。 一 、 九 品 事 、 凡 無 二 才 學 一候 。 吾 事 は 、 只 重 代 好 士 、 構 々 面 々 に 勇 を な し 興 を も よ ほ し て 、 い よ く 道 の た め 広 大 な る べ き 事

姿

(4)

殿

一候

一繊

本 云 故 了 俊 奥 書 云 此 一 帖 、 貞 世 得 二 古 今 説 一之 時 、 自 二 爲 秀 卿 一 相 傳 也 。 此 外 更 々 無 二 類 本 一 、 可 二 秘 藏 一云 々 。

一者

一者

一候

慮 永 廿 二 年 卯 月 十 二 日 、 以 二 了 俊 庵 主 本 一 不 レ 違 二 一 字 一書 鳥 了 。 彼 本 爲 秀 卿 自 筆 也 云 々 。 94

(5)

1

0

1

架蔵本

は、

写の一

秀歌・

歌十体・

月抄・

来記・

中吟・越

尼消息

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-次

注 ⑧ る 。 そ の 一 つ は 、 吾 妻 鏡 に ( 弘 長 三 年 七 月 五 日 ) 將 軍 家 今 年 中 御 詠 歌 数 巻 中 、 抄 -出 三 百 六 十 首 一、 致 清 書 一。 是 為 二合 点 一可 レ 被 レ 遣 二 入 道 民 部 卿 (為 家 卿 ) 一 云 々 。 と 見 え る も の で あ り 、 今 一 つ は 同 じ く 吾 妻 鏡 に 、 し か も 同 月 中 の 記 事 に 、 注 ⑨ ( 弘 長 三 年 七 月 二 十 三 日 ) 將 軍 家 五 百 首 御 詠 歌 、 付 二 前 右 兵 衛 督 教 定 卿 一、 為 二合 点 一被 レ 遣 二 入 道 民 部 卿 之 許 一。 範 元 清 書 之 。 と あ る も の で あ る 。 が 、 三 百 六 十 首 ・ 五 百 首 な ど と い う 大 量 の 詠 歌 に 対 す る 合 点 を 、 同 月 中 に 引 き 続 い て 求 め る と い う こ と は 、 い さ さ か 異 常 で あ る 。 あ る い は 、 七 月 五 日 の 三 百 六 十 首 は 更 に 増 補 さ れ て 同 二 十 三 日 の 五 百 首 に ま と め ら れ た の で は な い か と も 考 え ら れ る 。 そ れ は と も あ れ 、 二 十 三 日 の 五 百 首 は 、 親 王 の 近 臣 で も あ り 、 為 家 の 縁 者 で も あ る 教 定 を 通 じ て 、 確 か に 為 家 の 許 に と ど け ら れ 、 そ れ に 対 す る 為 家 の 合 点 ・ 返 状 が 到 来 し た こ と も 、 吾 妻 鏡 に 、 ( 弘 長 三 年 十 月 二 十 八 日 ) 將 軍 家 五 百 首 御 詠 、 民 部 卿 入 道 融 覚 加 点 返 上 。 則 副 ・二 巻 状 、 六 義 奥 旨 一、 猶 可 レ 被 レ 凝 二御 沈 思 一之 由 、 申 二 條 々 訊 諌 一云 々 。 と 明 記 さ れ て い る 。 こ の 吾 妻 鏡 、 弘 長 三 年 十 月 二 十 八 日 の 記 事 に 見 え る 為 家 の コ 巻 状 ﹂ が 、 直 ち に 本 稿 の 為 家 書 札 に 当 る な ど と は 、 も ち ろ ん 言 え ま い 。 し か し 、 こ の 将 軍 五 百 首 合 点 の こ と も 明 ら か に 教 定 を 取 り つ ぎ 役 と し て い る 。 ま た 本 書 札 の 第 一 奥 書 ( 為 秀 奥 書 ) に い う と こ ろ は そ の こ と に 矛 盾 し な い 。 だ か ら 、 か り に 本 書 札 が こ の 弘 長 三 年 十 月 ご ろ に 成 立 し た と し て も 、 決 し て 不 都 合 で は な い 。 の み な ら ず 、 前 掲 の 吾 妻 鏡 記 事 中 の ﹁ 六 義 奥 旨 ﹂ な ど の こ と ば は 、 こ の 書 札 本 文 中 に ﹁ 妖 艶 幽 玄 躰 む む を 存 候 は ば 、 を の つ か ら 不 レ 可 レ 背 二 六 義 一﹂ な ど と あ る こ と と も 、 い さ さ か 符 合 し て い る よ う に も 思 わ れ る 。 一96一

(7)

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注 ⑩

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一者

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注 ⑮ の 父 俊 成 に 、 自 分 ( 為 家 ) ば 父 定 家 に 、 そ れ ぞ れ 四 十 余 年 も 付 き 随 っ て 庭 訓 を 受 け た と い う こ と な ど で あ る 。 し か し 、 こ れ ら は い わ ゆ る 老 の 繰 り 言 で あ ろ う え に 、 文 応 と 弘 長 と で ば 数 年 を 隔 て ろ に 過 ぎ な い の で 、 両 者 間 に そ れ ぐ ら い の 細 似 が あ っ て も 不 思 議 で は あ る ま い 。 け れ ど も 、 全 体 と し て は 、 資 平 宛 書 札 に は 歌 説 と い う ほ ど の も の が 見 ら れ な い が 、 こ の 教 定 宛 書 札 に ば い ち お う 歌 説 と し て も ま と ま っ た 見 解 を う か が う こ と が で き る 。 と く に 、 そ の は じ め に 、 100一

(11)

只 為 先 理 世 廻 風 情 、 叶 義 理 兼 華 実 。 思 比 類 取 壁 口喩 候 も 妖 艶 幽 玄 躰 を 存 候 は 亨 、 を の つ か ら 不 可 背 六 義 。 ︹ た だ 理 世 を 先 と な し て 風 情 を め ぐ ら さ ば 、 義 理 に か な ひ 華 実 を 兼 ぬ ( べ け む ) 。 比 類 を 思 ひ 讐 喩 を 取 り 候 ふ も 、 妖 艶 幽 玄 の 体 を 存 し 候 は ば 、 お の つ か ら 六 義 に 背 く べ か ら ず 。 ︺ な ど と 述 べ て い る あ た り は 、 や や 慨 念 的 な } 般 論 で は あ る が 、 和 歌 師 範 家 の 継 承 者 た る 為 家 の 、 中 庸 を 行 く 無 難 な 姿 勢 を お も わ せ る 。 ﹁ 理 世 を 先 と し て ﹂ と い う の は 、 む し ろ 文 学 自 体 に 対 す る 自 信 を 喪 失 し か け た 当 時 の 人 び と ↓ 般 の う た い 文 注 ⑯ 句 で も あ ろ が 、 一 方 こ こ に ﹁ 妖 艶 幽 玄 躰 ﹂ と い う こ と ば を 端 的 に 提 示 し て い る こ と は 、 注 目 に 値 す る 。 幽 玄 が 感 覚 的 に 具 象 化 し 、 妖 艶 が 余 情 的 に 抽 象 化 す る 傾 向 は 、 か な り ふ る く か ら も あ っ た 。 そ れ ら の 傾 向 を 受 け て 、 と く に 為 家 の 世 界 で ば 、 色 調 的 属 性 に お い て も 、 妖 艶 の 幽 玄 化 、 幽 玄 の 妖 艶 化 が 著 し く 、 そ の こ と は 、 彼 の 判 詞 な ど か ら 、 だ い た い に 帰 納 さ れ る と こ ろ で は あ っ た 。 が 、 そ の 妖 艶 と 幽 玄 と の 結 合 を 、 こ こ に ﹁ 妖 艶 幽 玄 躰 ﹂ と い う 一 語 で 明 示 し て い る こ と ば 、 単 に 為 家 研 究 の 立 場 だ け で は な く 、 妖 艶 美 や 幽 玄 美 の 展 開 史 研 究 の 立 場 か ら も 、 大 き く 取 り あ げ て い い の で な い か と 思 わ れ る 。 ま た 、 次 に 、 古 今 序 と 千 載 序 と を 特 に 援 用 し て い る あ た り も 、 い か に も 為 家 ら し い 。 寂 蓮 の 自 讃 歌 ﹁ 稲 葉 を 渡 る 小 男 鹿 の 声 ﹂ に つ い て の 定 家 の 言 談 は 、 す で に 先 達 物 語 に も 見 え ろ と こ ろ で あ り 、 信 用 し て い い 伝 承 で あ ろ う 。 し か も 、 こ の 部 分 に 引 用 さ れ た 祖 父 俊 成 の こ と ば の う ち に は 、 ﹁ 恋 ・ 述 懐 な ど に は 利 口 も ゆ る す 事 な れ ど 、 四 季 再 は 虚 誕 は 不 可 然 候 -一 と あ る が 、 夜 の 鶴 で は 、 こ れ に 相 似 た こ と を 、 ﹁ 四 季 の 歌 に は そ ら ご と し た る は わ う し 。 ( 中 略 ) 恋 の 歌 に は 利 口 そ ら ご と 多 か れ ど 、 わ ざ と も 苦 し か ら ず 。 ( 中 略 ) 四 季 の 歌 に 異 る べ し と 申 さ れ 候 ひ き -と 述 べ て い る 。 そ こ に 阿 仏 尼 が ﹁ と 申 さ れ 候 ひ き ﹂ と し て 引 用 し て い る の は 、 も ち ろ ん 夫 為 家 の 言 説 で あ る 。 が 、 そ の 為 家 の 言 説 は 、 こ の 為 家 書 札 の 出 現 に よ っ て 、 実 は 祖 父 俊 成 の 訓 説 を 敷 術 し た も の に 過 ぎ な か っ た こ と が 判 明 す る 。

参照

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