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万葉集巻十四の編纂資料の実態

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Academic year: 2021

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(1)文 学 ・芸 術 ・文 化12巻1号2001.1. 万 葉 集 巻 十 四 の編 纂 資 料 の実 態. ﹁ 東 歌 ら しく な い東 歌 ﹂ の問 題. を 考 察 す る。. 村. 瀬. 憲. 夫. ま た 東 国 特 有 の 言 葉 、習 俗 、発 想 、 感 性 等 々 が 豊 か に. 巻 十 四を 順 に読 ん で いく と 、東 国 語 の誰 り が頻 出 し 、 巻 十 四 に 収 め ら れ た 、 東 歌 と 言 わ れ る歌 々 は 、 い っ. が あ る のだ ろ う 、 例 え ば 巻 十 一 ・巻 十 二所 収 の歌 々 と. 歌 わ れ て い て 、 い か にも ﹁東 歌 ﹂ と 実 感 で き る も の が. か新 し い の か 、 あ る いは そも そ も 古 新 な ど 問 題 にす べ. 並 べ て み ても 、 一向 に差 異 の見 出 せ な い歌 も 、 数 は そ. た いど の よ う な 人 々 に よ って 、 ど のよ う な 場 で 、ど の. き で な い ほど に 、諦 詠 と 享 受 の自 在 な 時 間 的 広 が り を. れ ほど 多 く は な いも の の 、 確 か に存 在 す る 。 これ は ど. 多 い。 し か し な が ら な か に は 、 ど こ に ﹁ 東歌 ﹂ らしさ. 有 し て い る の か 。 そ し て そ の歌 々 はど のよ う に し て 記. う した こと か 。. よ う な 時 に 、 歌 わ れ た も の な の か 。 そ の歌 々 は 古 い の. し留 め ら れ 、 ど のよ う な かた ち で継 承 さ れ 、 万 葉 集 に. 一口 に 巻 十 四 所 収 歌 の 実 態 と 言 って も 、 以 上 のよ う. れ て い た か 、 あ る いは ま た 都 び と が 東 国 に来 て歌 を 作. ら れ 歌 わ れ て い た歌 が 、 東 国 へ伝 播 し そ の地 で も 歌 わ. ( 主 と し て都 ) で作. に さ まざ ま な 側 面 か ら の 、 解 明 す べ き 課 題 が 残 さ れ て. り 、 そ れ が 東 国 に残 さ れ て いた た め で あ ろ う 。 ﹁東 歌 ﹂. お そ ら く これ は 、 東 国 以外 の地. いる 。 本 稿 で は 、 そ の 諸 側 面 の中 でも 、 巻 十 四 編 纂 の. 採 録 さ れ る こ と に な った の か 。. た め の 資 料 の実 態 ( 編 者 の目 の前 に は 、 ど のよ う な 姿. いの で あ る。. に そ う い った 性 格 の 歌 が 混 じ って い て も 一向 に構 わ な     . の 資 料 と し て 、歌 が 積 ま れ てあ った の か ) と いう 側 面. 一25一.

(2) し く な い歌 々を 、 ど の よ う に し て 巻 十 四 に 収 め 得 た の. よ う と し て い る 本 稿 に と って は 、 いわ ゆ る ﹁東 歌 ﹂ ら. た だ 、 巻 十 四 の 所 収 歌 を 、編 纂 と いう 側 面 から 考 え. あ る。. の こ と を 、本 稿 は 改 め て確 認 し納 得 し て お き た い の で. る こ と が 少 な い であ ろ う と は 、 本 稿 も 考 え る 。 た だ そ. の意 味 で、 編 纂 資 料 と いう 面 でも 両 者 は お そ ら く 交 わ. 以 上 の よ う な 趣 旨 で 、 本 稿 で は 、 巻 十 四 所 収 歌 の中. へ. いう の は 、 前 稿 で 見 た よ う に 、 巻 七 、 巻 十 、 巻 十 一、.     . か は 、 や は り 検 討 し な け れ ば な ら な い問 題 であ る 。 と. ヘ. の 、 ﹁東 歌 ら しく な い東 歌 ﹂ を 取 り上 げ て 、 検 討 を 加 え. ヘ. 巻 十 二 、 そ し て 一部 は 巻 十 三 も 、 編 纂 資 料 を 共 有 し て. ヘ. て み た い。 な お 、 本 稿 で い う ﹁東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂. へ. と は 、 (一) 東 国 の方 言 、 誰 り を 含 ま な い 、 (二 ) 巻 十. ヘ. いる 場 合 が あ る と 判 断 さ れ る か ら で あ る 。 つま り 共 通. ヘ. の資 料 の中 か ら 、 そ れ ぞ れ の 巻 、 そ れ ぞ れ の部 立 、 そ. ヘ. 四 所 収 歌 に ほ と んど 限 定 さ れ て 用 い ら れ て いる 、 いわ ヘ. ば 巻 十 四 特 有 の言 葉 を 含 ま な い、 ( 三 ) 東 国 の地 名 を 含.   ユ. れ ぞ れ の分 類 項 目 に合 致 し た 歌 を 、抽 出 し て いく と い. へ. う 編 纂 実 態 が 観 察 さ れ る の で あ る 。 同 じく 作 者 未 詳 歌. ヘ. ま な い、 ( 四 ) 巻 十 四 所 収歌 に 特 徴 的 な 発 想 、習 俗 、 生 ヘ. 活 形 態 を 含 ま な い等 を 判 断 規 準 と し た 。 も と よ り こ の. ヘ. 巻 で あ る 巻 十 四 の 編 纂 資 料 も 、 巻 七 、 巻 十 、 巻 十 一、. へ. 巻 十 二 、 そ し て 一部 は 巻 十 三 の そ れ と 重 な る部 分 が あ. い面 が あ る 。 個 々 の事 例 に そ く し て 判 断 す る こ と と す. 規準 は、とりわ け ( 四) の規準は、 主観性 を払拭 し難. ヘ. る かも し れ な い の であ る 。 も し そ う だ と す る と 、 ﹁東 歌. ︹ 国 土判 明歌︺. ︹ 国 土 不明 歌 ︺ 中 の ﹁東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂. 巻 十 四 所 収 歌 は 、 国 名 の明 ら か な 歌. 二. る。. ヘ. ら し く な い東 歌 ﹂ を 、 ど のよ う に し て巻 十 四 に 収 め 得 た の か と いう 疑 問 が 生 じ る の であ る。 も っと も 、 巻 十 四 の編 纂 資 料 と 、 巻 七 、 巻 十 、 巻 十 一、 巻 十 二 、 そ し て 一部 は 巻 十 三 の編 纂 資 料 と は ま っ た く 別 で、 編 者 が 手許 に 置 いた 編 纂 資 料 と いう 面 では 、 両者 は 決 し て交 わ る こ と は な いと 考 え る 向 き も あ ろ う 。. 一. と 、国 名 の 明 ら か で な い歌 ︹ 国土不明歌︺ ( 巻 十 四 の末. ニ. 言 葉 遣 い、 歌 の内 容 と い った 点 で 、両 者 の醸 し出 す 世. レ. 尾 に 記 さ れ た ﹁以 前 歌 詞 未 得 勘 知 国 土 山 川 之 名 也 ﹂. レ. 界 に は 大 き な 差 異 が あ る と い った 印 象 は 否 み 難 く 、 そ. 一26一. 村瀬 万葉集巻十四の編纂資料の実態.

(3) 文 学 ・芸 術 ・文 化12巻1号2001.1. 地 名 は 無 き に ひ と し く 、従 って先 の ( 三 ) の判 断 基 準. る ので あ る か ら 、 巻 十 四 への採 録 と いう 面 か ら 言 え ば 、. も あ る が 、 これ は 編 者 自 身 が 国 土 不 明 歌 と 認 定 し て い. み た い。 な お ︹ 国 土 不 明 歌 ︺ 中 に は 、 地 名 を 含 むも の. す る こ と に よ って 、 巻 十 四 の編 纂 資 料 の実 態 を 探 って. ﹁ 東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂ の ひ と つひ と つを 取 り 上げ 検 討. る 。 本 節 で は 、 こ の ︹国 土 不 明 歌 ︺ の申 に 見 ら れ る. から ︹ 未 勘 国 歌 ︺ と も 呼 ぶ ) と の 二群 に 分 け られ て い. の ﹁東 国 歌 を 集 め た 資 料 ﹂ も 、 ほ と ん ど が 相 聞 歌 で占. 所収歌 のほと んどが相聞歌 であ ることからす れば、 こ. 数 の雑 多 な 資 料 群 ) が あ った も の と 想 定 す る 。 巻 十 四. 料 ( も ち ろ ん 一種 類 で は な く 、 種 々 の 様 相 を 呈 す る複. 四 の編 者 の手 許 に 、 未 整 理 な が ら 、 東 国 歌 を 集 め た 資. 歌 と し て 、 安 心 し て採 用 し た の で あ る 。 本 稿 は 、 巻 十. た め に 、 編 者 は こ の歌 を 、 巻 十 四 ﹁東 歌 ﹂ に 収 め得 る. 東 国 の 地 名 を 含 む 歌 々 の 収 め られ た 資 料 の中 に あ った. であ ろ う 。 つま り 、 こ の歌 が 、東 国 の言 葉 、 あ る いは. 歩め我が駒. ( ⑭ 三 四 四 一). ( 2 ) ま 遠 く の雲 居 に 見 ゆ る妹 が 家 に い つか 至 ら む. 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群﹂ と呼 ぶ こ と と す る 。. め ら れ て いた で あ ろ う 。 本 稿 は これ を ﹁東 国 に 関 わ る. す . に は 該 当 し な い。 まず ︹ 国 土 不 明歌 ︺ の ﹁雑 歌 ﹂ 部 の歌 か ら 見 て いく 。 (1) 鈴 が 音 の駅 家 の堤 井 の水 を 給 へな妹 が直 手 よ ( ⑭ 三 四 二九 ). 柿 本 朝 臣 人麻 呂 の歌 集 に 曰 く 、 ﹁遠 く し. こ の歌 は 、 お そ ら く 旅 の途 中 の さ る 駅 家 で の 詠 であ ろ う 。 ﹁鈴 が 音 ﹂ と あ る の で 、 官 人 の公 務 出 張 の旅 が 想. こ の歌 は 、 巻 七 ﹁雑 歌 ﹂ 部 の ﹁行 路 ﹂ の項 に 、 ほ と. て ﹂、ま た 曰 く 、 ﹁ 歩 め 黒駒 ﹂. 面 か ら 見 た 時 、 こ の歌 に は 、 東 国 を 想 定 でき る も の は. ん ど 同 一歌 が 、 柿 本 朝 臣 人 麻 呂 歌 集 所 出 歌 と し て 採 録. 定 さ れ て いよ う 。 と こ ろ で 、 巻 十 四 東 歌 の編 纂 と いう. 何 も な い。 東 国 語 は な い 、 作 者 は お そ ら く 都 の 官 人 、. さ れ て いる 。. 遠 く あ り て 雲 居 に 見 ゆ る妹 が家 に早 く 至 ら む歩 め. 駅家 は全国 に設置さ れて いて、東国 に限定 できるも の で は な い。 で は 、 巻 十 四 の編 者 が 、 こ の 歌 を 東 国 の歌. ( ⑦ 一二 七 一). 黒駒. こ の歌 に も 東 国 と 認 定 でき る 言 葉 等 は な い。 左 注 に. .. と し て 、巻 十 四 に収 め得 た 、 そ の 拠 り 所 は何 か 。 そ れ は こ の歌 が 東 国 に 関 わ る 歌 々 と 共 に あ った か ら. 一27一.

(4) る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ か ら 採 録 さ れ た も の. な い。 参 照 し て い る の であ る 。 こ の 歌 も 、 ﹁ 東国 に関わ. 朝 臣 人 麻 呂 歌 集 か ら 巻 十 四 へ採 録 し た と いう 意 味 で は. ﹁柿 本 朝 臣 人 麻 呂 の歌 集 に 曰 く ﹂ と あ るが 、 こ れ は柿 本. の中 にあ った こと に依 る と考 え る の が適 切 で あ る 。. こ の歌 が 、﹁東 国 に関 わ る相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂. 十 四 に収 め た の は 、 地 名 の存 在 に 依 った わ け で はな い。. 身 に と って も 所 在 未 詳 の 地 であ り 、 従 って こ の歌 を 巻. 土 不 明 歌 ︺ の項 に いれ て いる こ と か らす れ ば 、 編 者 自. ( ⑭ 三 四 五 二). ﹁内 容 と い い調 子 と い い、東 歌 ら し く な い。 京 人 の作 で. 断 は主 観 の占 め る 部 分 も 多 い。 ﹃ 増訂萬 葉 集 全 註 繹 +﹄ は. こ の 歌 が 、 東 歌 ら し い か東 歌 ら し く な い か 、 そ の判. 生 ひは 生 ふ る が に. (5) お も しろ き 野 を ば な焼 き そ古 草 に新 草 交 じ り. と 思 わ れ る。. ( ⑭ 三 四 四 二). ( 3 ) う らも な く 我 が 行 く 道 に 青 柳 の萌 り て立 て れ ば 物 思 ひ出 つも. ﹁う ら も な く ﹂ の語 を 詠 んだ 歌 は 、 万 葉 集 に も う 一首 あ る 。 巻 十 二 の三 一八 〇 番 歌 であ る。 う ら も な く 去 に し君 ゆゑ 朝 な 朝 な も と な ぞ恋 ふ る. あ ろ う﹂ と し 、 一方 ﹃萬 葉 集 繹 注 七﹄ は 、 こ の歌 に ﹁東. 国 の農 民 ら し い、 自 然 への行 き 届 いた 目﹂ を 見 て いる 。. ( ⑫ 三 一八 〇). 当 面 の三 四 四 三 番 歌 に も 東 国 特 有 の言 葉 、 発 想 は な. 巻 十 四 の編 纂 と い う 視 点 か ら 言 え ば 、 東 国 語 も 東 国 の. 逢 ふ と は な けど. い 。 に も か か わ ら ず 、 巻 十 四 に収 め ら れ た の は 、 こ の. に 関 わ る 相 聞 歌 を 中 心 と し た ]大 歌 群 ﹂ に こ の歌 が あ. 地 名 も 含 ま な い、 こ の歌 を 巻 十 四 に収 め た の は 、 ﹁東 国. った こと に依 る と 考 え る の が よ いだ ろ う 。 な お 、 こ の. 歌 が ﹁東 国 に 関 わ る相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ に. (4) 臼 楮 の衣 の袖 を 麻 久 良 我 よ 海 人漕 ぎ 来 見 ゆ 波. あ った か ら で あ ろ う 。. ﹃萬 葉 集 繹 注 七﹄ は ﹁﹁白 楮 ﹂ や ﹁∼見 ゆ ﹂ と いう の は. て いる 。 ﹃ 伊 勢 物 語﹄ が 、 こ の歌 を 採 り ﹁ 武 蔵 野 は﹂ と. ま た 初 句 を ﹁武 蔵 野 は ﹂ と し て ﹃ 伊 勢物語﹄ に採られ. 歌 は 、 初 句 を ﹁春 日 野 は ﹂ と し て ﹃古 今 和 歌 集 ﹄ に 、. 東 国 の歌 に は こ こ の み で 、 一首 は 、 全 体 に都 風 の感 じ. し た の は 、本 歌 が 万 葉 集 の 東 歌 と し てあ る こ と も 影 響. ( ⑭ 三四四九). が 強 い﹂ と 指 摘 す る 。 ま た ﹁ 麻 久 良 我 ﹂ は 地 名 であ る. し て いよ う 。. 立 つな ゆ め. が 、 所 在 は 未 詳 で あ る 。 巻 十 四 の編 者 が こ の 歌 を ︹ 国. 一28一. 村瀬 万葉集巻 十四の編纂資料 の実態.

(5) ・文 化12巻1号2001.1 文 学 ・芸 術. ( ⑭ 三 四 五 三). ( 6 ) 風 の音 の遠 き 我 妹 が 着 せ し衣 手 本 のく だ り ま よひ来にけり 巻 七 ﹁雑 歌 ﹂ 部 の ﹁ 臨 時 ﹂ の項 に 、 次 のよ う な 歌 が ある。. ( ⑦ 一二六 五 ). 今 年 行 く 新 島 守 が 麻 衣 肩 のま よ ひは 誰 れ か取 り 見 む 巻 七 の こ の歌 は 、 防 人 を 詠 ん だ も の であ る か ら 、 当 面 の 三 四 五 三 番 歌 も 防 人 の詠 ん だ 歌 と 見 る こ と も 可 能 であ る 。 し か し 袖 の ほ つれ を 詠 ん だ 歌 は 巻 十 一にも あ る。. ( ⑪ 二六〇九). 白 拷 の袖 はま ゆ ひ ぬ我 妹 子 が家 の あ た り を や ま ず 振り しに. そ れ に ﹁風 の音 の遠 き ﹂ と いう 表 現 も 、 ﹁京 人 の作 ﹂ (﹃増訂萬 葉 集 全 註 繹 +﹄) を 思 わ せ 、 三 四 五 三 番 歌 単 独 で は 、 巻 十 四 に採 録 す べ き か否 か 、 編 者 は 迷 う 歌 であ る 。. こ の歌 は 、 一面 で は東 国 の 土 の香 り 豊 か な 、 東 歌 ら. し い歌 と も 言 え よ う が 、 一方 で ﹁女 が 男 を ﹁夫 ﹂ と客. 観 的 に 称 す る の は 、 東 国 の歌 で は こ こ だ け で あ る ﹂. ( 大 宝元 年 の紀伊 国行幸 時 の作). (﹃萬 葉 集 繹 注 七﹄) と いう 指 摘 も あ り 、 ま た 巻 九 に次 の よ う な 都 人 の旅 の歌. も 見 られ 、 東 国 の歌 と も 断 定 でき な い。. ひな が ら 芸 妻賜はにも妻といひながら. 紀 伊 国 に や ま ず 通 は む 妻 の社 妻 寄 し こせ に妻 と い. ( ⑨ 一六 七 九 、 或 云 、 坂 上 忌寸 人 長 作). 結 局 この歌を 巻十 四に収 め る ことを保 証し た のは、. こ の歌 が 属 し て いた 資 料 (﹁ 東 国 に 関 わ る相 聞 歌 を 申 心. と し た 一大 歌 群 ﹂) に 依 る と 判 断 さ れ る。. 以上 ﹁ 雑 歌 ﹂ 部 の歌 を 見 て き た が 、 次 に ﹁ 相聞﹂ 部 に入る。. ( ⑭ 三 四 七 〇). こ の歌 に は 、 人 麻 呂 歌 集 に出 て い る由 の注 記 が 付 せ. ふ君 待 ち が て に柿本朝臣人麻呂歌集随 っ. (8) 相 見 て は千 年 や去 ぬ る いなを かも 我 や し か思. き こ と を 示 唆 す る 、他 の歌 々 ( ﹁東 国 に関 わ る相 聞 歌 を. ら れ て い る が 、 実 際 に は 巻 十 一の出 典 不 明 歌 群 中 に 見. こ の歌 が 巻 十 四 に 採 録 さ れ た の は 、 巻 十 四 に 収 め る べ. 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂) と 共 に 、 編 者 の手 許 に あ った か. 出 す こと が でき る。. 待 ち か てに. ( ⑪ 二五 三 九 ). 相 見 ては 千 年 や 去 ぬる いな を かも 我 や し か思 ふ 君. らであろう。. ( ⑭三四五四). (7) 庭 に 立 つ麻 手 小 裏 今 夜 だ に夫 寄 し こ せね 麻 手 小金. 一29一.

(6) 歌 は 巻 十 四 へ取 ら れ る こ と は な か った はず で あ る。 東. と 共 通 の 編 纂 資 料 の中 に あ った と す れ ば 、 三 四 七 〇番. こ の三 四 七 〇 番 歌 が 、 も し例 えば 巻 十 一、 巻 十 二等. 集 の歌 で は な い。. あ る 。 た だ し柿 本 人 麻 呂 の 作 と な っ て い て 、 人 麻 呂 歌. こ の 歌 は 左 注 で断 って いる よ う に 、 巻 四 に 小 里ハ 歌が. ( ⑭ 三 五 二八 ). ( ⑳ 四 二三 七 ). 見 ら れ な い こ と が 了 解 さ れ る 。 し か る に こ の三 四 七 五. な い、 つま り 三 四 七 五 番 歌 に東 国 の歌 と し て の特 性 は. 四 の 編 者 は 、 人 麻 呂 (人 麻 呂 歌 集 ) の歌 の存 在 を 知 り. 群 ﹂ に 収 録 さ れ て いた の で あ ろ う 。 だ か ら こ そ 、 巻 十. 本 稿 で いう ﹁東 国 に関 わ る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌. お そ ら く 東 国 で歌 わ れ て いた歌 な の で あ ろ う 。 そ し て 、. こ の 二首 の歌 か ら判 断 し て 、当 面 の 三 四 八 一番 歌 も 、. き. 水 鳥 の立 ち の急 ぎ に 父 母 に物 言ず 来 に て 今 ぞ 悔 し. か ね つも. 水鳥 の 立 た む 装 ひ に妹 の ら に物 言 はず 来 に て 思 ひ. 駿 河 国 の防 人歌 に 次 の よ う な類 歌 があ る 。. 巻 十 四 ︹国 土 不 明 歌 ︺ の ﹁ 相 聞﹂部 および巻 二十 の. ( ④ 五 〇 三). ひ か ね つも. 玉 衣 の さ ゐ さ ゐ しづ み家 の妹 に物 言 はず 来 に て 思. ま. ( ﹁東 国 に関 わ る相 聞 歌 を中 心 と し た. ふ. 国 を 指 し示 す 資 料. ゆ. 一大 歌 群 ﹂) の中 にあ った が ゆ え に 、 巻 十 四 に そ の位 置 を 占 め る こと に な った の で あ る 。. ( ⑭ 三 四 七 五). (9) 恋 ひ つ つも 居 ら む と す れ ど 遊 布 麻 山隠 れ し君 を 思 ひ か ね つも ふ ま や ま. ( ⑫ 三 一九 こ. よ しゑやし恋ひじとすれど木綿間山越えにし君が. ゆ. こ の歌 に は巻 十 二 ﹁悲 別 歌 ﹂ 部 に 類 歌 が あ る 。. 思ほゆらくに. 番 歌 が 、 巻 十 四 に 採 録 さ れ た の は 、 こ の歌 が 収 め ら れ. な が ら も 、 三 四 八 一番 歌 を あ え て 巻 十 四 に 採 録 し 得 た. こ の 二首 を 並 べて み る と 、 両 者 に は ま った く 差 里ハが. て い た資 料 が 、 東 国 に 関 わ る 歌 を 一括 し た も の で あ っ. ( ⑭ 三四九〇). ﹁は し に 置﹂ く と い った 言 い方 は 、他 に は 巻 十 の 一八. は し に 置 け れ 柿本朝臣人麻呂歌集に愚っ. ( 11) 梓 弓末 は寄 り寝 むま さ か こ そ 人 目を 多 み 汝 を. のである。. た か ら であ ろ う 。 (10) あ り 衣 の さ ゑ さ ゑ し づ み 家 の妹 に物 言 はず 来 ( ⑭ 三四八 こ 柿 本朝 臣 人 麻 呂 歌 集 の中 に 出 づ 。上 に. に て思 ひ苦 し も. 見 ゆ る こと す で に訪 り ぬ。. 一30一. 村瀬 万葉集巻十 四の編纂資料の実態.

(7) 文 学 ・芸 術 ・文 化12巻1号2001.1. 六 八 番 歌 の み に 見 ら れ る こ と から し て も 、 こ の 三 四 九. 谷 狭 み嶺 辺 に延 へる玉 葛 延 へて しあ らば 年 に来 ず. がも. ( ⑫ 三 〇 六 七). ( ⑪ 二 七 七 五). 〇番 歌 単 独 で は 、 東 国 に 関 わ る 歌 と 認定 さ れ る こと は とも. (12) 柳 こそ 伐 れ ば 生 え す れ 世 の 人 の恋 に死 な むを. な か った であ ろ う と 思 わ れ る 。. ( ⑫ 三 〇 七 一). 丹 波 道 の大 江 の山 のさ な 葛 絶 え む の心 我 が 思 はな. 巻 十 一、 巻 十 二と 世 界 を 同 じく す る と 言 って も よ さ. くに. 恋 死 を 詠 ん だ 歌 は 、巻 十 、 巻 十 一、 巻 十 二 に比 し て、. そ う な 、 こ の 三 五 〇 七番 歌 を 、 巻 十 四 に 採 録 す る こ と. ( ⑭ 三 四 九 一). 巻 十 四 に は 極 め て 少 な い。 他 に は 三 五 六 六 番 歌 が あ る. を 保 証 した の は 、 (12) の場 合 と 同 様 、 こ の歌 の収 め ら. いか に せ よ と そ. のみ で あ る 。﹁恋 死 は 同 じ く 作 者 未 詳 歌 の中 に あ っても 、. れ て いた 資 料 の性 格 であ った と 考 えざ る を え な い。. ::み空行 く. 雲 にも が も. 高飛 ぶ. ( ⑭ 三 五 一〇 ). 鳥 にもがも. こ の 歌 に は 他 巻 に 多 く の類歌 を 見出 す こ と が で き る 。. 明日帰り来む. (14) み 空 行 く 雲 に も が も な 今 日 行 き て 妹 に 言 ど ひ. と く に非 東 歌 的 、 巻 十 、巻 十 一、 巻 十 二的 世 界 のも の で あ った と い ってよ い﹂ ( 拙 稿 ﹁恋 死 - 万 葉 集 、 三代 集 ー﹂ ﹃ 和 歌 山 大 学 教 育 学 部 紀 要 ﹄ ︹人 文 科学 ︺ 第 二 六 集 、 一九 七 七 ・三 、 七頁 )。 こ の歌 を 巻 十 四 に採 録 す る こと を 保 証 した の は 、 こ. 明 日行 き て. 安 貴 王). の歌 の収 め ら れ て いた 資 料 の性 格 (﹁東 国 に 関 わ る相 聞. 大伴旅人). 妹 に 言 ど ひ ・: ・ ( ④ 五三四. 歌 を 中 心 と した 一大 歌 群 ﹂) であ った と考 え ら れ る。. ( ⑤ 八〇六. ( ⑪ 二六 七 六). ひ さ か た の天 飛 ぶ 雲 にあ り て し か君 を 相 見 む お つ. て来 む た め. 龍 の馬 も 今 も 得 て し かあ を に よ し奈 良 の都 に 行 き. ( ⑭ 三 五 〇 七). (13) 谷 狭 み峰 に延 ひ た る 玉 葛 絶 え む の 心 我 が 思 は なく に. る 日な し に. ぬ ば た ま の夜 渡 る 月 に あ ら ま せ ば 家 な る 妹 に逢 ひ. こ の 歌 に は 、 東 国 を 思 わ せ る 固 有 の表 現 は な い。 し かも 次 のよ う な 類 歌 が あ って 、 巻 十 一、 巻 十 二 と の 間. て来 ま しを. 常 陸 さ し 行 か む雁 も が 我 が 恋 を 記 し て付 け て妹 に. ( ⑮ 三 六 七 一). に 差 異 は 見 出 せ な い。 山 高 み 谷 辺 に 延 へる 玉 葛 絶 ゆ る時 なく 見 むよ しも. 一31一.

(8) 知らせむ. ( ⑳ 四三六六. 常陸国防人). こ の よ う に 、 東 国 の人 々を 含 め て 、 広 く 発 想 さ れ 歌. 三 五 四 五 番 歌 は 東 国 特 有 の 言 葉 を 持 た な い。 ﹁ 率寝 て. 象 と は な ら な い歌 であ る 。. 来 ま しを ﹂ と いう 言 い方 は ﹁東 歌 ら し い﹂ と も 言 え る 。 ぬ. た だ し ﹁率 寝 ﹂ の 語 は 、 巻 十 四 所 収 歌 以外 に も 、巻 十. ゐ. わ れ て い た 歌 で あ り 、 従 って当 面 の 三 五 一〇 番 歌 が 、. 六 の三 八 二 二 、三 八 二 三 番 歌 に も 見 られ る し、 ﹁寝 ﹂ の. し守 らす も =真母が守らしし. ( ⑫ 三 〇 〇 〇). 魂 合 へば 相 寝 る も の を 小 山 田 の鹿 猪 田 守 る ご と 母. あ って 、複 雑 であ る 。. ま た 巻 十 二 に は 、 次 の よ う な 一見 ﹁ 東 歌 ら し い﹂ 歌 も. ぬ. 巻 十 四 に あ って も 一向 に構 わ な い の で あ る が 、 編 纂 と. 語自 体は、も ちろん巻 十四以外 にも多 く見られ る語で. は. いう 視 点 か ら 見 た 時 、東 国 固 有 の表 現 を 持 た な いこ の. が. あ って 、巻 十 四所 収 歌 に 固 有 の語 であ るわ け で は な い 。. か. 歌 を 、 巻 十 四 に 殊 更 に収 め た そ の 理 由 は 、 こ の歌 が も す. と も と 東 国 に関 わ る歌 群 にあ った た め と 判 断 され る 。 あ. ( ⑭ 三 五 四 四). (15) 阿 須 可 河 泊 下 濁 れ るを 知 ら ず し て背 な な と 二 人 さ寝 て悔 しも あ す か が は. ( ⑭ 三五四五). 安 須 可 河 泊 堰 く と 知 り せば あ ま た 夜 も 率 寝 て来 ま しを 堰 く と 知 り せば. 東 歌 ﹂ と は 言 え な いも の の 、 さ り と て ﹁ 東 歌 ら し い東. 結 局 、 三 五 四 五 番 歌 は 、 典 型 的 な ﹁東 歌 ら し く な い. 歌 ﹂ とも 限 定 でき な い歌 で あ る 。 こ のよ う な 歌 を 本 節. こ の歌 の ﹁あ す か が は ﹂ が 、 大 和 の 明 日 香 川 か 、 そ. の か 、 見 解 の分 かれ る と ころ で あ る 。. 清 き 流 れ と と らえ ら れ 歌 わ れ る の が 普 通 で あ る か ら で. は 相 応 し く な いと いう 面 も 持 つ。 大 和 の 明 日 香 川 は 、. し こ の 二 首 が 、 例 え ば 巻 十 一、 巻 十 二 等 の編 纂 資 料 と. の か を 確 認 で き な か った の で あ る 。 と いう こと は 、 も. 分 類 し て いる 。 東 国 に ﹁あ す か が は ﹂ が 有 る の か無 い. さ て 巻 十 四 の編 者 は 、 こ の 二首 を ︹ 国 土不明歌︺ に. り 、 そ こを 検 討 し てみ る必 要 が あ る か ら であ る。. で こと さ ら 取 り 上 げ た の は 、 ﹁あ す か が は﹂ の地 名 があ. れ と も 大 和 の明 日香 川 と は 別 に 、 東 国 に も あ った 川 な. 三五四四番歌 の ﹁ 背 な な ﹂ は東 国 特 有 の 言 葉 であ る 。. ある ( た だ し 巻 十 四 の編 者 が そ の よ う な 認 識 を し て い. 共 通 す る 資 料 に 収 め ら れ て いた と し た ら 、 巻 十 四 の編. し かも ﹁下 濁 れ る ﹂ と い う 発 想 は 、 大 和 の 明 日 香 川 に. の明 日香 川 で な いか ぎ り 、 ﹁ 東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂ の対. た かど う か は 不 明 で あ る)。 従 って 、阿 須 可 河 泊 が 大 和. 一32一. 村瀬 万葉集巻 十四の編纂 資料 の実態.

(9) 文 学 ・芸 術 ・文 化12巻1号2001.1. 者 は 、 こ の 二首 、 少 な く と も 三 五 四 五 番 歌 を 、 共 通 資. ま た 巻 十 一に類 歌 が あ る。. 定 で き る 地 名 で は な い 。 東 国 特 有 の表 現 も 持 た な い。. 白 真 砂 御 津 の埴 生 の 色 に出 で て 言 は な く の みぞ 我. 料 の中 か ら 抽 出 し 、 巻 十 四 に 採 録 す る こ と は し な か っ た で あ ろ う 。 大 和 の明 日香 川 は 、 誰 知 ら ぬ こと のな い 、. (﹁ 東 国 に関 わ. こ の 二 首 が 巻 十 四 に 収 め ら れ る こ と に な った の は 、. あ った か ら こそ 、 巻 十 四 に 置 かれ る こと に な った の で. 同様、 ﹁ 東 国 に関 わ る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ に. 以 上 のよ う な 点 か ら し て 、 こ の 歌 も 、 ( 16) の場 合 と. ( ⑪ 二七 二五 ). が恋ふらくは. ( こ の 二首 が ) 東 国 に 関 わ る 歌 の資 料 群. あろう。.  ら . 著 名 な 川 で あ った のだ か ら 。. る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂) に あ った た め に 、編. であ る。 : :荒 磯 に ぞ. ( ⑭ 三 五 六 二). 靡 き寝. 柿本人麻呂). 玉藻 なす. ( ② 一三 五. 水 底 に生 ふ る 玉 藻 の う ち 靡 き 心 は 寄 り て 恋 ふ る こ. し子 を : :. 玉藻 は生 ふる. 似 し た 表 現 を 持 つ歌 を 万 葉 集 中 に 求 め る と 、 次 の よ う. こ の歌 に も 、 東 国 を 感 じ さ せ る 表 現 は 何 も な い。 類. む我 を 待 ち か ね て. ( 18) 荒 磯 や に 生 ふ る 玉藻 のう ち 靡 き ひ と り や寝 ら. 者 は 二 首 に 見 え る ﹁あ す か が は﹂ が 、東 国 に あ る 川 の 名 と 判 断 せざ るを 得 な か った か ら であ ろ う 。. ( ⑭ 三 五 四 七). (16) あ ち の棲 む 須 佐 の入 江 の隠 り 沼 の あ な息 づ か し見ず久にし て. こ の歌 に は 巻 十 一に次 の よ う な 類 歌 が あ り 、 ま た 東 国 の歌 で あ る こと を 主 張 す る 表 現 も 見 ら れ な い。. ( ⑪ 二七 五 こ. あ ち の棲 む 須 沙 の入 江 の 荒 磯 松 我 を 待 つ子 ら は た だ ひ と り のみ. 三 五 四 七 番 歌 が 巻 十 四 に採 録 さ れ た のは 、 ﹁ 東国 に関. ( ⑪ 二五 六 四 ). 人麻呂歌集). の ころ. ( ⑪ 二四 八 二. から であ る 。. わ る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ に こ の歌 が あ った. るかも. ( ⑬ 三 二六 七). 明 日香 川 瀬 々 の 玉 藻 の う ち 靡 き 心 は 妹 に寄 り に け. 寝らむ. ぬば た ま の妹 が 黒 髪 今 夜 も か 我 が な き床 に 靡 け て. ( ⑭ 三五六〇). (17) ま 金 吹 く 丹 生 の ま朱 の 色 に出 て 言 は な く のみ ぞ我が恋 ふらくは. 丹 生 は 全 国 各 地 に散 在 す る地 名 であ っ て、 東 国 に 限. 一33一.

(10) こ れ ら の歌 と 並 べて み る と 、 当 面 の三 五 六 二 番 歌 は ﹁別 に東 歌 ら し い特 色 は 見 当 た ら な い﹂ 8 (﹃ 萬 葉 集 全 注 巻第 +四﹄)、 ﹁優 腕 な歌 で 東 歌 ら し さ は 感 じ られ な い﹂ (﹃ 萬葉 集 繹 注 七﹄) と 、 評 さ れ る の も も っと も であ り 、 そ のよ う な 歌 が 巻 十 四 に採 録 さ れ た の は 、 ﹁ 東 国 に関 わ る相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ に収 め ら れ て いた か ら で あ ろう。 では次 に ︹ 国 土 不 明 歌 ︺ の ﹁防 人 歌 ﹂ 部 で あ る が 、 ( ⑭ 三 五 六 七 ∼ 三 五 七 一). に あ った が ゆ え に 、 巻 十 四 に そ の位 置 を 占 め る こと に な った も のと 考 え ら れ る 。. つぎ に ︹ 国 土 不 明 歌 ︺ の ﹁挽 歌 ﹂ 部 であ る が 、 こ の. ( ⑭ 三 五 七 七). (20) 愛 し妹 を いつ ち 行 かめ と 山 菅 のぞ が ひ に寝 し. かな. 部 立 に 収 め ら れ た 歌 は 一首 ( ⑭ 三 五 七 七 ) であ る。. く 今 し悔 しも. こ の歌 に は東 国 に 固 有 の表 現 は な い。 た だ ﹁ 愛 し妹 ﹂. と いう 言 い方 が 、 東 国 的 であ る と いう 程 度 であ る 。 巻. 七の ﹁ 挽 歌 ﹂ 部 に次 の よ うな 歌 が あ る。. 我 が背 子 を い つ ち 行 か め と さ き 竹 の ぞ が ひ に 寝 し. この部立 に収 め られた 五首. は 、 三 五 六 七番 歌 に 間 題 が 残 る も の の 、 そ れ 以 外 は す. く今し悔しも. こ の こ と も 考 え合 わ せ て 、 こ の歌 は ﹁東 歌 ら し く な. ( ⑦ 一四 一二 ). べ て ﹁東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂ で あ る 。 こ の ﹁防 人 歌 ﹂. い作 だ ﹂ (﹃ 萬 葉 集 全 繹 第四冊﹄) と見 てよ いだ ろ う 。 ﹁ 東国. の で あ ろ う 。 な お こ の三 五 七 七 番 歌 に つ いて は 、 拙 稿. 四 ﹁ 防 人歌 ﹂ の 編 纂 ﹂ (﹃ 万葉学論孜﹄ ︹ 松田好夫先生追. 部 五首 の編 纂 上 の問 題 に つ い て は 、 拙 稿 ﹁万 葉 集 巻 十. ﹁ 万 葉 集 巻 十 四 の編 纂- ﹁雑 歌 ﹂ 部 を 中 心 にー ﹂ (﹃萬 葉. に 関 わ る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ の中 に あ った. 次に ︹ 国 土 不 明 歌 ︺ の ﹁譬 喩 歌 ﹂ 部 であ る が 、 こ の. 集 研 究 ﹄ 第 一九 集 、 一九 九 二 ・ 一 一) の第 四 節 で 詳 し. 悼 論 文 集 ︺ 一九 九 〇 ・四 ) で考 察 した 。. 部 立 に収 め ら れ た 五 首 ( ⑭ 三五 七二∼三 五七六) のう. 以上、 ︹ 国 土 不 明 歌 ︺ の中 の ﹁東 歌 ら しく な い東 歌 ﹂. く述 べた。. ち 、 東 国 に 特 有 の表 現 を 持 た な い歌 は 一首 であ る 。 (19) 小 里 な る 花 橘 を 引 き 墓 ぢ て折 ら むと す れ ど う. を あ げ て 、 そ れ ら が い った いど の よ う な 性 格 の 資 料 群. ( ⑭三五七四). こ の 歌 単 独 で は 、巻 十 四 に 採 録 さ れ る べき 根 拠 を 持. の 中 に あ った の か を 推 し て み た 。 ち な み に 、 歌 数 は 、. ら若み こそ. た な い。 ﹁東 国 に 関 わ る 相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂. 一34一. 村瀬 万葉集巻十 四の編纂 資料 の実態.

(11) 文 学 ・芸 術 ・文 化12巻1号2001.1. 三. 1釜 セ 形 ン 異 ト伝 に 歌 あ ゴ. た 音. 掩 含 を. の う ち の 二〇 首. 豊. ︹国 土 判 明 歌 ︺ 中 の ﹁東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂. 五 首 パ. 過ぎにけり. ( ⑭ 三 一二四 八 、上 総 国 ). ( ⑭ 三一 二四 九 、下総 国 ). ( ⑭ 三一 二五 二 、信 濃 国 ). ( C ) 信 濃 な る 須 我 の荒 野 に ほ と と ぎ す 鳴 く 声 聞 け ば 時. も. ( B ) 葛 飾 の真 間 の浦 廻 を 漕 ぐ 舟 の舟 人 騒 く 波 立 つら し. けり. (A) 夏 麻 引 く 海 上 潟 の沖 つ渚 に舟 は 留 め む さ 夜 ふ け に. る 表 現 が 見 ら れ な い歌 も あ る 。 以下 、歌 を 列 挙 す る 。. た だ し 地 名 の部 分 を 除 け ば 、 ど こ に も 東 国 を 思 わ せ. ある。. に お い ては 、 ﹁ 東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂ は 一首 も な い の で. 従 って ︹ 国 土 判 明 歌 ︺ は 、 東 国 の地 名 を 含 む と いう 点. な いし は 歌 中 に国 名 そ の も の を 含 む 歌 を 集 録 し て い る。. の国 に 属 す る の か を 、 巻 十 四 の編 者 が 判 定 で き た 歌 、. ︹ 国 土 判 明 歌 ︺ は 、 歌 に 詠 み込 ま れ た 地 名 が 、 ど こ. 約 四 が嘆かむ. ( ⑭ 三一 二五 七 、駿 河 国). (D) 霞 居 る 富 士 の山 び に 我 が 来 な ば いつ ち 向 き て か妹. や 乱 れ そ めけ む. ( ⑭ 三 三 六 〇 、伊 豆 国 ). 或 本 歌 日 、 白 雲 の絶 え つ つも 継 が む と 思 へ. 乱れしめめや. ( E ) 伊 豆 の 海 に 立 つ白 波 のあ り つ つも 継 ぎ な む も のを. じ. ( ⑭ 三 三 六 五 、相 模 国 ). ( F ) 鎌 倉 の見 越 の崎 の岩 崩 え の君 が 悔 ゆ べき 心 は持 た. ( ⑭ 三 三 六 七 、相 模 国 ). ( G ) 百 つ島 足 柄 小 舟 歩 き 多 み目 こ そ離 る ら め心 は 思 へ. ど. ( ⑭三一 二七 七 、武 蔵 国 ). (H ) 武 蔵 野 の草 葉 も ろ向 き かも かく も 君 がま に ま に 我. は寄りにしを. ( ⑭三一 二八 〇 、武 蔵 国 ). (1 ) 埼 玉 の津 に居 る舟 の風 を いた み綱 は絶 ゆ とも 言 な. 絶えそね. ( ⑭三一 二八 一、武 蔵 国 ). (J ) 夏 麻 引 く 宇 奈 比 を さ し て飛 ぶ鳥 の至 ら む と そ よ 我. が 下 延 へし. ( ⑭ 三 一二九 一、常 陸 国 ). (K ) 筑 波 嶺 に そ が ひ に見 ゆ る葦 穂 山悪 し か る と が も さ. ね見えなく に. ( ⑭ 三 一二九 二、常 陸 国 ). (L ) 筑 波 嶺 の岩 も とど ろ に落 つる水 よ に も た ゆ ら に 我. が 思 はな く に. ま され 柿本朝臣人麻呂歌集に出づ. ( ⑭ 三 四 一七 、 上 野 国). (M ) 上 つ毛 野伊 奈 良 の沼 の大藺 草 外 に 見 し よ は 今 こそ. (N ) 伊 香 保 風 吹 く 日 吹 か ぬ 日 あ り と 言 へど 我 が 恋 の み. 一35一. で 全.

(12) し時 な かり けり. ( ⑭ 三 四 二 二 、上 野 国 ). ( ⑭ 三 四 二 九 、遠 江 国 ). (0) 遠 江 引 佐 細 江 の みを つく し 我 れ を 頼 め てあ さ ま し も のを 以 上 の歌 が ﹁東 歌 ら し く な い東 歌 ﹂ か ど う か は 判 断. よう な資料 群 から でも採 る ことが でき たとも 言え る。. そ う い った 場 合 も あ った で あ ろ う 。 し か し大 部 分 は 、. 他 の国 土 判 明 歌 と 共 に あ った の で あ ろ う 。確 か に ﹁東. 歌 ら しさ ﹂ を 示 す 表 現 に欠 け る と は いえ 、格 段 の差 異. ︹ 国 土 判 明 歌 ︺ の 場 合 は 、 所 在 の は っき り し た 地 名. が あ る わ け で は な いか ら で あ る 。. い等 、 第 一節 で挙 げ た 四 つの要 件 (た だ し ︹ 国 土判明. が 詠 ま れ て いる だ け に 、 そ の 所 収 資 料 の実 相 を 説 こう. の分かれ る面もあ ろう。東国 の方言 、誰りが 見られ な. 歌 ︺ の場 合 は 、 (三) 東 国 の地 名 を 含 ま な い、 の要 件 は. 歌︺ も ︹ 国 土 不 明 歌 ︺ も 、 ご く 大 雑 把 な 物 言 いで あ る. と し て誠 に歯 切 れ が 悪 いが 、 結 局 の と こ ろ 、 ︹ 国土判明. が 、 ﹁東 国 に 関 わ る 相 聞 歌 を 中 心 と した 一大 歌 群 ﹂ を も. 除 く ) に該 当 す る歌 を 挙 げ て みた 。 東 国 を 旅 す る 都 人 の 歌 、 あ る いは 序 詞 の中 に東 国 の. と に編 纂 がな さ れ た も の と考 え ら れ る 。. を め ぐ ってー. ぐっ. (﹃ 松 村 博 司 先生 古 稀 記念 国 語国 文 学論 集﹄. ・﹁ 万葉 集巻 十 一 ・十 二 の編 纂 に関 す る 一考察- 季 節関 係歌. てー (﹃ 名古屋 大 学国 語国 文学 ﹄ 第四 二号 一九 七八 ・七). ・﹁ 万葉 集 巻七 と巻 十 の編纂 -特 に巻七 の季 節歌 をめ. 研 究論 集﹄ ︹ 文 学 21︺ 一九七 四 ・三). ・﹁ 万葉 集巻 七譬 喩 歌 と巻 十 一 ・十 二﹂ (﹃ 名古 屋大 学文 学部. ( 2) 次 の拙稿 で述 べた 。. 広 い視 野 のも と で柔 軟 に説 いて いる 。. そ して そ れを 記録 し た 人 と場 と時 と が 多 様 で あ る こ とを 、. ( 二〇〇 〇 ・二、塙 書房 刊) は 、東歌 を作 り 、歌 い、享受 し、. ( 1)加 藤静 雄 著 ﹃ 万葉 東 歌 の世 界﹄ ︹ 塙新書 ︿ 美 夫君 志 リブ レ﹀︺. 注. 風 土 、 事 象 を 詠 む も 、 か な り 一般 化 普 遍 化 さ れ た 詠 み. ( 全 形 異 伝 歌 五首 を 含 む) のう ち の 一五 首 、 約. ぶ り にな って いるも のが 多 い。ち な み に 、︹ 国 土 判 明歌 ︺ 九五首. 一六 パ ー セ ン ト にあ た る。比 率 と し て は 、︹ 国 土 不明 歌 ︺ の場 合 と ほ ぼ同 じ であ る。 さ て こ の 一五 首 はど の よ う な 性 格 の資 料 群 の中 に あ った の で あ ろ う か。 いず れ も 東 国 で あ る こ と の所 在 が は っき り した 地 名 を 含 ん で いる 歌 で あ る か ら 、 第 二 節 で 検 討 した ︹ 国 土 不明 歌 ︺ の場 合 の よ う に 、 ﹁東 国 に 関 わ る相 聞 歌 を 中 心 と し た 一大 歌 群 ﹂ の存 在 を 声 高 に 主 張 す る 必 要 は な い し、 逆 に 、 極 端 な こと を いえ ば 、 東 国 の所 在 の は っき り し た地 名 を 含 む歌 で あ れ ば 、ど の. 一36一. 村瀬 万葉集巻十 四の編纂資料の実態.

(13) 文 学 ・芸 術 ・文 化12巻1号2001.1. 一九 七九 ・一一) 年 退 官記 念 国 語国 文学論 集﹄ 一九八 四 ・四). ・﹁ 万 葉集 巻 七 ・巻十 一の旋 頭歌 の編 纂 ﹂ ( ﹃ 後藤 重 郎教 授 停. る。 こと は出 典 不明 歌 に つ いても 、同 様 の ことが 言 え ると 、. (3 ) そ の典型 的 な例 が柿本 朝 臣人 麻呂歌 集 か ら の抽 出 、採録 であ. 本 稿 は考 え て いる。 た だ し出 典 不 明歌 の場 合 は 、 人麻 呂 歌 で、 あ まり 単 純化 し て考 え る こと は で きな い。 ただ 、 各 巻. 集 と 異 な り、 そ の所 出 資 料 は単 一で な く複 雑 多様 であ る の が 編纂 資料 を かなり 多く 共有 し て いる ことは 確 かであ る。 歌 が 、 万葉 集 の巻十 四 と し て定 着 し た のは 、 そ の資 料 が 大. (4 ) 加藤 静雄 著 ﹃ 万葉 東歌 の世界﹄ は ﹁ 東 国 にお いて歌 わ れた 東. 伴 家 持 の手 に 入 った 時 、 東歌 集 団 と 認識 さ せ るも のが あ っ に思う 。. た か ら であ る﹂ (一七 六頁 )と 述 べ て いる。 本稿 も そ のよ う 背 な な﹂ の語 の存 在 によ って 、 (5 ) ただ し、 巻 十四 の編 者 は、 ﹁ ﹁ あ す か がは ﹂ を詠 む 三 五四 五 番 歌も 、 (﹁ 率 寝 て来 ま し を﹂. 三 五 四 四番 歌 を 巻 十 四 に収 め る べ き 歌 と 判 断 し 、同 じ く と いう表 現 が あ る こと も 考 え合 わ せ て) 巻 十 四 に収 め る べ き 歌 と判断 した のだ と考 え る ことも でき る。 し かし 本稿 は 、 の存 在 によ って 、編 者 の判断 を 左 右 さ せる こと は な か った. 大 和 の明 日香 川 の存 在 は絶大 な も のが あり 、 ﹁ 背 な な﹂ 一語. なお こ の二首 に つ いての詳 細な 考察 が 、加藤 静 雄著 ﹃ 万葉. と考 え る。 東歌 の世界﹄ にあ る。参 照願 いた い。. 一37一.

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