社
会
系
教
科
教
育
学
会
「社
会
系
教
科
教
育
学
研
究
」
第22
号 2010
(pp.121-130)
価値のもつ社会の分断化作用を探究する社会科の授業構成
一中等歴史単元匚
太平洋戦争中の
日系アメ
リカ人」を事例
として−
Constitution of Teaching Plan of Social Studies Aiming at Inquiry into Values Which Divide the
Society: The Case of Developing
a History Lesson Plan about Japanese-American
during
the Pacific War
1。問題の所在
匚
日本
人
」や厂
外国
人」
、匚
他
民族
」といった社
会認識の枠組み
は社会的な構築物であり
、時代や
社会によって変化するものである
。
しか
し、
「 ̄
外
国人
」や匚
他
民族」の存在は私たちの認識の
うち
にのみ存在す
るというよりは
、社会的に
リアル
な
ものであり
、現に外国人労働者問題や他民族排斥
運動という社会的対立が存在する
。この
ような社
会的対立が発生す
るとき
、匚
日本人」という枠組
みは
、日本
人
(ウチ)と日本
人ではな
い匚
外国人」
や匚
他民族
」
(ソ
ト)とを区分
し、匚
ソ
ト」を排除
する論理
と
して機能
している
。
しか
し生徒たちは
、
自らのもつ社会
認識の枠組みが絶対的なものでは
ないことにも
、その枠組みが
「 ̄
ソ
ト」とみ
なされ
た他者
このような問題意識か
を排除
しうる
ことにも無自覚である
ら、社会科教
育学研究の
。
立場か
らは
、認識の枠組みが絶対的なものではな
いことを生徒に認識
させる授業1や
、生徒が
自
分自身の価値や正当化の
論理
をつくりあげていく
ことを目標
とする授
業2が提案されてきた
。前
者は
、厂
外国人」や匚
他民族」という社会認識の
枠組み
が社会的に構築
されたものだということを
生徒が説明できるようになっている
。後者は、社
会的対立の背後には異なる価値の対立が
あるとい
う認識か
ら
、生徒が社会の
あり方についての
自主
的自立的判断基準
をつくりあげることが
できるよ
うになって
いる
。しか
し、どち
らの授
業によって
も
、生徒は
自らのもつ社会認識の枠組みや正当と
考
える価値が
、匚
ソ
ト」とみなされた他者を排除
す
る論理と
してはたらきうることは認識できてい
ない。したがって、生徒が自らのもつ価値や認識
岩
野
清
美
(兵庫教
育大学大学院)
の枠組み
を真剣に問い返す契機
とはな
りに
くい
。
そこで本研究では
、他者
を排除する社会認識の
枠組み
の背後にある価値に着目する
。そ
して、日
本思想史研究家のひ
ろたまさきの論に依拠
し
、
匚
よいもの
」を提示する価値
を受容することが
、
匚
よいもの
」の対極にある匚
よくないもの」を排
除する論理と
してはた
らき
、社会
を分断化させる
とい
う仮説を設定
し
、価値のもつ社会の分断化作
用
を探究する社
会科の授
業構成について考察する
。
社会
的に構築
された社会認識の枠組みに基づい
て匚
ソ
ト
」の
人間であるとみなされ
た他者と自分
との間に本質的な差異はないことや
、自らが正当
とする価値に基
づいて不当とされ
る他者を排除す
ることが不合理であることに気づけば
、社会問題
に対
し合理的な判断を下す
ことが
でき
、自分たち
の
力で差別
をなくそ
うとす
る市民的行動ができる
と期待できる。
2。価値の
もつ社会の分断化作用
(1)価値のもつ社会の分断化作用とは
価値の提示による社会の変化については
、特に
近代国
民国家の
形成が
もた
らす影響を事例に
、歴
史学の分野で
多くの研究が積み重ね
られ
てきた
。
その結果
、近代国家によって提
示された厂
文明」
が匚
よいもの
」を示す価値であること
3や、国
民国家形成め過程で厂
国
民
」が提示され
た
ことが
、
その
対極に匚
非国民
」をつくりだ
し、外国人や下
層の民衆を排除
した
こと4が明らかになってい
る。
日本思想史研究家のひろたまさきは
、価値の提
示による社会の
変化に
ついて、民衆の
「近代文明
― 121
−
への反乱
」の動きを例
に、民衆を三層構造でとら
えるべ
きだ
と主張
している
。つま
り、
「 ̄
近代文明
を自己のもの
とする
ことによって自己解放を図
ろ
うと
した民衆上層
と
、まさにその近代文明のため
に自らの生活
を破壊
され
、それに対す
る反発
・怨
恨を抱
えなが
ら
、圧倒
的な文明の優越性の
前に呻
吟す
る下層
民衆
、さらにそ
うした
民衆に
さえも文
明の
名に
よって差別
され
ることに
なる被差別
民衆
」
5の三層構造である
。この三層構造
を、彼は、
匚
容易に
一致
しえない存在
として近代に立ち現れ
た
」ものと
してとらえ、匚
文明的諸価値を追求す
る者にとって
、その対極にある野蛮は否定さるべ
き存在であろうし
、野蛮的諸現象に対する蔑視は
必然的であったといえよう
。たんなる蔑視に
とど
まらず
、文明的諸価値をおびやかす
ものと
してお
それ
られ排除されていく
」6
と説明する。この
「 ̄
文明
」という価値の
受容が必然的に民衆の分断
をももたらすというひろたの
主張は
、さらに
以下
の
点で重要な
示唆
を含んでいる。
文明という価値が人々の
行動
を変えるとき
、文
明は人々を文明化の度合
いに
よって序列化する尺
度
と
して働
く
。そのため
、序列の下位にある者は
文明という価値を積極
的に受容
し
、その規範に従
うことで
、自
らの社会的地位
を上昇させ
ようとす
る
値はよ
。こう
り多くの人に受容され
して、いったん形成
された文明という価
、拡大再生産
され
る
(2
)探究のための方法原理
価値のもつ社会の分断化作用につ・
いて探究す
る
ために
、授業の
プロセス
を以下の
ように設定
し、
これに従って事例
を選定する
ことにす
る。
段階
1
社会的に匚
よいとされるもの
」と
して
の価値が社会によって異なることに
気づく。
段階
2
匚
よ
い
とされ
るもの
」と
しての価値が社
会認識の枠組み
の
背後
に
ある
こと
を探究す
る
。
段階
3
厂
よ
い
とされ
るもの
」と
しての価値の提
示が
、社会の分
断をも
た
らす
こ
と
を解明す
る
O
段階
4
社会が分断
した結果、提示され
た価値
によって差別され
、社会か
ら排除され
る人々
の声が届かなくなることを解明する
。
段階5
価値が
人々を序列化す
る尺度
と
しては
た
ら
くとき
、序列の
下位に
あ
る者が提
示され
た
価値
を積極的に受容す
る
ことで
、自らの社会
的地位
を上昇させ
よ
うとす
る
こ
と
を解明す
る。
-本
研
究で
は
、社
会
認識の
枠組み
の
背
後に
ある価
値
に着
目
し
、
「よ
いもの
」
と
「よ
くないもの
」と
い
う認
識枠組
み
を構
築
し
、社
会
を分
断
させ
る価
値
の
作
用
を探
究
させ
る
。
しか
し、価値
や
社会
関係
は
目に
見
え
な
いもの
で
ある
ため
、それ
を生徒
に
探
究
可能
な
もの
にす
る
ため
に
は
、探
究の
た
めの
方
法や
教
材の
選
択
に
工
夫が
必要
で
ある
。その
ため
、社
会
的に
「よ
いもの
」
とされ
る価
値
に従
う
ことが
で
き
な
いため
社
会か
ら排
除
され
る
人々の
存在
に
着
目さ
せ
る
。
社
会
事象
に
つ
いての
表
象は
、社会
が
も
つ価
値や
社
会
関係
の
産
物で
あ
る
。人
々は
、自
身の
社
会
的
地
位
や
立
場に
よ
りなが
ら
自身の
声
を
生成
する
。社
会
的に
「よ
いもの
」と
して提
示
され
た価値
は
、
「よ
くな
い
もの
」
と
され
た
人々
を排
除す
る
論理
と
して
は
た
らき
、人
々の社
会
関係
を分
断化
す
る
。その
結
果
、分
断
され
た
人
々に
よ
っ
て
さま
ざま
な声が
つ
く
られ
る
。つ
ま
り、社
会
的
地位
や
立場の
異
なる
多く
の
人
々の
さま
ざま
な声
に
よ
って
、社
会
に
つい
ての
表
象
は構
成
され
て
いる
。
したが
って
、排
除
され
る
人々
に着
目
し
、その
声
を通
して社
会
事
象
を探究
す
れ
ば
、社
会の
変化
、分
断の
背
後
に
ある価
値
と
認識
枠組
み
を解
明す
る
ことが
で
きる
と考
える
。
3。価値
もつ社会の分断化作用
を探究す
る単元モ
デル
剛
事例
と
しての
日系
アメ
リカ人
本研究では
、価値の提
示による社会の分断の事
例
と
して
、太平洋戦争中の
日系アメ
リカ人を取
り
上げる
ことにする。
よく知られ
ているよ
うに
、第二次世界大戦中の
日本では
、匚
よい日本人」という価値が提示され
た
。その結果、匚
非国民」と
して排除
された人々
が
いただけでなく
、
「 ̄
よい日本人」という価値に
従
おうとするあま
りに
、特攻や玉砕
などで自らの
存在
自体
を消
して
しまった人々もいた
。同様に、
アメ
リカでも
、匚
よいアメ
リカ人」という価値が
権
力によって提
示され
、その対極に
あるもの
と
し
て匚
野蛮な
日本
人
」が描かれ
た
。この
ような風潮
の
なか
で
、近代
以降に
日本か
らアメ
リカに移住
し
た
日系アメ
リカ人は差別
・排除の対象となり、日
系人に対する強制収容が行われ
た
り、日系人だ
け
122−
の
部隊
の
編
成が
行われ
、危
険
な
ヨー
ロッパ
戦線
に
送
られ
た
り
した
。
この
価
値の
提
示
によ
る社
会の
分
断
を
、
さきの
ひ
ろたの
論
に則
って
以下の
3つの
層
に分
けて
示す
。
A
提示され
た価値に従って行動する人
B
提
示され
た価
値に
よって自
らの
アイデ
ンティ
テ
ィを破壊され
、呻吟する人
C
提示された価値に
よって差別され
、社会か
ら排除され
る人
Aは匚
よいアメ
リカ大
」という価値に従
って、
ア
メリカ大と
して戦った人々
、Bは
「 ̄
よいアメ
リ
カ大
」という価値の提示によって、自らの匚
ア
メ
リカ大
」としてのアイデンテ
ィティを破壊
され
、
苦
しむ人々
、Cは匚
よいアメリカ大」という価値
によって差別され
、アメ
リカ社会か
ら排除
された
人々である。
事例
と
して挙げる日系アメ
リカ人の
一家では
、
Aにあたるのがアメリカ陸軍に従軍
した
エ
ドの長
兄である
。一家の
三男であるエ
ドは
Bに
あたる
。
アメ
リカで生まれ
育った
エ
ドは
、太平洋戦争の開
戦まで匚
アメリカ大
」というアイデンティティを
もっていた
。ところが開戦により、
「 ̄
日系大」と
み
なされ
るように
なり
、日系大だけの部隊に入れ
られ
る
。そこでエ
ドは
、自分が厂
よいアメ
リカ大」
である
ことを示そ
うと
してアメ
リカのために危険
な戦線で戦
い
、日本海軍に従軍
した次
兄について
は匚
許せ
ない
」と感
じるよ
うになる。Cに
あたる
のが
、日系2世で床屋
を営み
なが
ら日本のスパイ
とみ
なされ
たエ
ドの
父
、強制収容
され
たエ
ドの妻
、
山口の祖
父のところに帰省
しているときに戦争が
始韋
ったため日本海軍に従軍することになったエ
ドの次兄である。
エ
ドの
家族に典型的に示され
るように
、匚
よい
アメ
リカ大
」という価値が
示されたために
、上記
の
A
∼Cに示
した社会関係の分断化かもた
らされ
た
。その結果
、匚
よいアメ
リカ大」という価値を
受容
しようと
したエ
ドに日本海軍に従軍せ
ざるを
得
なか
った次兄の
声が届か
なくなった
り
、自由と
いう価値
を尊重するはずのアメ
リカ大に強制収容
され
たエ
ドの妻の声が届か
なくなった
りした
。つ
ま
り
、社会か
ら排除され
る人々の声が価値
を受容
しよ
うとする大に届かな
くなり、価値を受容でき
-ない大は価値を受容する人々か
ら構成
され
る社会
の
一員とはみ
なされ
なくなって
いく。
この
ように
、太平洋戦争中の
日系アメ
リカ人の
経験は
、価値の提示と個人による受容が社会関係
の分断をもたらす
ことを
、生徒に
も理解可能なか
たちで示す
ことが
できる事例
であると考えられ
る
。
(2
)学習過程の構成
本研究では
、目に見えない価値や社会関係
を生
徒に探究可能なものにす
るために
、社会的に匚
よ
いもの
」とされ
る価値に従
うことができないため
社会か
ら排除
される人々の存在に着目させ
る
。
具体的には
、段階
2で、
「 ̄
よいアメ
リカ大」と
いう価値と認識枠組みが太平洋戦争中のアメリカ
で示された
ことを解明させた後の段階3で
、匚
よ
いアメ
リカ大
」という価値に従
うことの
できない
日系アメ
リカ人の存在に着目させ
、日系アメ
リカ
人の家族が分断化
した事実をつか
ませる
。さらに
段階
4では
日系人の強制収容
を扱った当時の映画
の分析や
、分析対象と
した映画には描かれていな
か
った事実が
ある
ことを伝
え
、社会が分断
した結
果
、価値に従
うことのできない人々の本当の姿が
見
えなくな
り
、それが排除を正当化
した
ことを解
明する
。段階5では、日系アメ
リカ大の
エ
ド・イ
チヤマさんが
、匚
よいアメ
リカ大」という価値を
内面化
したために
、日本海軍に従軍
した次兄を
匚
許せ
ない
」と感
じ、日系大部隊の442
部隊で必死
に戦った
ことか
ら
、価値の内面化か社会関係の
を
引き起
こす
と同時に
、提示された価値に従
うこと
で自らの社会的地位
を上昇させ
ようとする
ことを
探究させる。
段階
3∼5の資料
とおもな発問
を次ペー
ジの表
1に示す
。
123
−
表 1 本 単 元 の資 料 と 問 い 、 学 習 方 法 段 階 資 料 お もな 発 問 段 階 3 匚よ い とさ れ る も の」 と し て の価 値 の 提 示 が 、 社 会 関 係 の 分 断 を もた ら す こ と を 解 明 す る 。 「 エ ド の 物 語」 O 「 よ い ア メ リ カ 人 」 と い う 価 値 の 提 示 が エ ド の 家 族 に ど の よ う に 影 響 し た の か 考 え て み よ う 。 段 階 4 社 会 関 係 が分 断 し た結 果、 提 示 さ れ た価 値 に よ っ て 差 別 さ れ、 社 会 か ら 排 除 さ れ る 人 々 の 声 が 届 か な く な る こ と を 解 明 す る。 ニ ュ ー ス 映 画 匚日 本 人 の 移 転 」 ○ 当 時 の ア メ リ カ で は 、 日 系 人 の 強 制 収 容 につ い て ど の よ う に 考 え ら れ て い た だ ろ う 。 映 画 「 ア メ リ カ ン バ ス タ イ ム 」 ○ ニ ュ ー ス 映 画 厂日 本 人 の 移 転 」 を 見 た 大 が、 日 系 人 の 強 制 収 容 に つ い て 知 ら な か っ た こ と は 何 だ ろ う。 段 階 4 5 価 値 が 人 々 を 序 列 化 す る 尺 度 と し て は た ら く と き 、 序 列 の下 位 に あ る 者 が 提示 さ れ た価 値 を 積 極 的 に受 容 す る こ と で 、 自 ら の 社 会 的 地 位 を 上 昇 さ せ よ う とす る こ と を 解 明 す る 。 匚エ ド の物 語 」 ○ ア メ リ カ 人 に よ っ て 差 別 さ れ て い た に も か か わ ら ず 、 エ ド が 厂よ い ア メ リ カ 人 」 に な ら な け れ ば な ら な い と 感 じ て い た の は ど う し て だ ろ う 。
(3) 単 元の 目標
① 太平 洋戦争 中 のア メリカ にお け る、 匚よい アメ リカ大」 という 価値 の提示 が、 価値 の もつ 分断 化作
用 により、 日系大 とアメリ カ大や 日系 人家 族 の関係を分 断し たこ とを 説明 でき る。
② 社会 が分 断し た結果、 排 除さ れた日系 アメリカ人 の声 が アメリカ 社会に 届かな くな ったた めに、 ア
メ リカ社 会で 日系 人 の強制収 容が正 当化さ れた ことを説 明でき る。
③ 匚
よい アメ リカ大」 とい う価値 に従う ことがで きない 日系 アメリ カ大 は、 自身 が受 け た差別 に もか
かわ らず、 匚よい ア メリカ大」 という 価値 を受 容し、 そ の価値 に従 う ことで、 自 ら の社 会的 地位を 上
昇 させよ うとし たこ とを 説明 でき る。
(4) 展 開 プ ロ セ ス おもな発問・ 指示 予想される発 言・思 考 指 導上 の留 意点 資 料 導 入 ・/jヽ学校 のころから、 社会 科 の授 業 や 平 和 学 習 のなか で 、太 平 洋 戦 争につ いて学 んできました ね。 ・ 太 平 洋 戦争 につ いて 、ど のよう なことを知っていますか。 ・ 空襲 や 原 子 爆 弾で、 多くの 方 が亡くな った。 ・ 原 子 爆 弾 は、 小倉 に落ちたかもしれ な かった。 ・ 戦時 中や 戦 後は 食 べ物 がなく、子ども たち は学 童 疎 開などをして、不 便 な思 いをした。 ・ 沖 縄 からの 疎 開 児童 を乗 せ た対 馬 丸 が、アメリカ の潜 水 艦 によって撃 沈し、 1400 人以 上の人 が犠 牲になった。 ・ これまで の学習 内容を 想 起させ、 戦 争 が「国 と国 との戦 い」 のた め に 、個 人 の 生 命 や 生 活を 犠 牲 にし たことを 押さえる。 段 階 ]. ・ 次の写真 を見てください。 ・ 二対 の 写真 に は、ど のようなち がいかおるのだろう。 ・ 原 爆 死 没 者 慰 霊 碑 と対 馬 丸 記 念 館 は、 戦 争 の悲 惨さと平 和 の尊さを訴え、 戦 争 で 亡くなった方 の冥 福を祈ってい る。・ アリゾナメモリアルや ボウフィン 号 の 展示など、 アメリカでの 太平 洋戦 争 に 対 する展示 は、 太 平洋 戦争 の勝利 の大 きさを誇示している。 ・ 班ごとに、写真 を配布 し、 観 察させる。 ・ アメリカの 展示 物 につ いて は適 宜 補足し、 太 平洋 戦争 や ボウフィン 号に 対する評 価 が、日 米 で大きく異なることに 気 づ かせる。 1 2 3 4 ― 124・ 二対 の写 真 は 、私た ちが 戦争 に対して抱いているイメージと同 じたろうか、 違うだろうか。 違うな らば、 どういう点が違うのだろう。 ・ このような 写 真を 見て、疑 問 に 思うこと・もっと知りたいことは 何 で すか。 ・ 違う。 ・ 対馬 丸を撃沈したボウフィン 号を、 太 平 洋 戦 争 の 記 念とし て保 存・ 展示 す るな んて考えられない。 ・ 日本 では「 戦争 はいけない」と考えられ ているのに、アメリカ では「 国 防 は 大 切 だ」と考えられている。 ・ どうして、 太 平洋 戦争 に関 する写真 に、 アメリカと日本 で 大きなち がい があるの か。 ・ 太 平洋 戦争 につ いて、 私たちが知らな いことは何だろう。 ・ 太 平洋 戦争 やボウフィ ン 号 に 対 す る評 価 の 違い が、 価値 の違い に 根 ざし てい ることに 気 づ かせる。 段 階 2 ・ 太 平洋 戦 争 中にアメリカで つく られたポ スターを 見て 、考 えて みよう。 ・ ポスターを、 分 析の視 点 に基づ いて読 みとろう。 / ・ 生 徒 たちにこれ から、 アメリカ で 太 平洋 戦 争 中 に作 成されたポスク ーを見ることを伝える。 ・ 生 活 班を利 用し 、1班 に1 枚 ず つ ポスターを 配布 する。 ・ ポスター の語 句 、色 、 目 本( 人) や ア メリカ (人) がどのように描 か れているか、 戦争 に 与 えられている理 論 的 根 拠( ポスター の 中 心的 なメッセ ージ)を 明らか にさせる。 ・ ポスターをじっくり見さ せ た後 で、 左 の4 つ の 問い( 分 析 の 視 点) に 班ごとに取り組 ませる。 ・ 班 の 代 表 者 に発 表 さ せる。 ・ こ れらのプロパガ ンダ が、 戦 争 の大 義名 分と 国 のた め に 戦うことを 訴 え てい ることを お さ える。 5 6 7 アメリカ の国旗 Fight for Freedom 日本人 のイラスト ・ どうい う素 材 が、どのように描 かれているか。 ・ こ の ポ スタ ー は 、だ れ に 対し て、何を 訴 え て いるのだろう(中 心 的 なメツセ ー ジ は何か)。 ・ このポ スター は な ぜ つ くられた のか。 ・ 描 か れ て い な いもの はない だ ろうか。 ・ 真 珠 湾 攻 撃 の 際 に 爆 撃 を受け九太 平 洋 艦 隊 総 司 令 部 の 国 旗 が、 青 空の 下 はためいてい る様 子。 ・ 亡くなった 方 の 死 を 無 駄 にし ないた め にも、真 珠 湾 攻 撃 の悔しさ を 忘 れ ず に いこうというメ ツセ ージ。 ・ アメリカ が誇 り高く戦 っ て いる様子を示 す ため。 ・ 実 際 に 戦っ てい る兵 士 の こと。 ・ 戦 争 に つ い て報じた新 聞 を手 にし た父 親と母親 が安 らか に眠る子 どもたち を見 守る様 子。 ・ 私 た ち の 愛 す るもの と自 由を 守るため に戦 わなけれ ば ならない と い うメツセ ー ジ。 ・ 戦 争 が 、恐 怖からの 自由 という大 義 名 分 に 基 づ い たもの で ある ことを示 す た め。 ・ 日・本 にも、 戦 場 にいるわが 子 のことを 心 配してい る親 がいるというこ と。 ・ 凶 暴 な 日 本 人 が、アメリカ の 安 全 を脅 かし てい る様 子。 ・ 日本 人 に攻 撃さ れるという恐怖 か ら守るために、 戦 わなくて はならな いというメツセ ー ジ。 ・ 日 本という国 に 対 す る恐 怖を 再 確認させるため。 ・ 日本 にも安 全 を 脅 かされ た女 性 が おり、アメリカ にも 敵 と戦 っ て い る兵 士 がい る こと。 犬 ・ これらのポスターで示 された「よ いアメリカ人」とはど のような 人だ ろう。 ・ 自 分たち の愛 するものを 守るた めに、 勇 敢 に戦う人 。 ・ 野蛮な 日本人とは異なる人。 125 ―
・ このようなポスター は、 だれ が、 何のためにつくったのだろう。 ・ み んなも知っているように、 第 二 次 世 界 大戦 中 の 日本 で は「よい 日本人」という価値 が提示されま した。 ・ このような価 値を提 示 するた め のスローガン には 、どのようなも の がありましたか。 ・ このような 価 値 が提 示された結 果 、日本 ではどのようなことが 起 こりましたか。 ・ 太 平 洋 戦争 中 のアメリカで 、「よ い アメリカ 人」という価 値 が提 示 された 結果 、どのようなことが 起 こったのかを探究してみよう。 ・ 政 府 が、人 々 に「アメリカ のために戦い たい」、「戦争 に協 力したい 」と思 わせる ため。 ・ 軍 が、「アメリカ軍 はアメリカのため に戦 ってい るの だ」とみ んな に 思 わ せるた め。 ・「進 め一 億、 火 の玉 だ」 ・「ぜいたくは敵 だ」 ・「非 国民 」とみなされた大 が特 高警 察に 殺された。 ・ 神 風特 攻 隊が、 敵の飛 行機 につっこん だ。 ・ 「玉 砕 」が 起こり、特 に沖 縄で は多くの 人が 亡くなったに ・「 よいアメリカ人」 という 提 示 さ れ た 価 値 が 、 「よいアメリカ 人」と「そ うでない人」 という認 識 の 枠 組 みとし ては たら くもので あることをおさ える。 段 階 3 ・ こ の 写 真 を 見 て、 わ か るこ とを 出 し あ お う。 ・ こ の お じ い さん は 、エド・ イ チ ヤ マ さ ん とい っ て 、ア メリカ に 住 む 日 系 ア メリカ 人 で す 。 ・ エド の お 父 さ ん が ハ ワ イ に 来 た 頃 の ハ ワイ の 様 子 に つ い て 知 る う。 ・ エド は 日 本 人 だ ろ うか 、ア メリカ 人 だ ろ うか 。 ・ 「エ ド の 物 語 」を 読 ん で、 感 想 や わ か ら な い こ と・も っ と知 りた い こ とを 出 し あ お う。 a4 − 4- -aヨー/吾巵l、.9丶こn.rS ・ おじいさんの顔 は 日本人 のようだ。 ・ 首 にレイをかけている。 ・ 下 の名 前 が先 、名 字を後 にしているか ら、日本人 ではない ので はないか。 ・ 名 字からして日本 の大だろうか。 ・ 名 前は、 アメリカ人 のようだ。 ・ どうしてアメリカ に、日本 人 の 名 字で 、 日本 人 の顔をした大 が住 んで いるのだ ろう。 ・ さとうきび の栽 培がさかんになるにつ れ て、 ハワイでは人 口 が増 加した。 ・ 1900年 代 のハワイで は、たくさん の日 系 大が住んでいた。 ・ 日本人 ・ アメリ力人 ・ 日本 人とかアメリカ大とかいう区 別 に、 意 味かおるのだろうか。 ・ どうしてアメリカで 生まれ 育ったエド が、 太 平 洋 戦 争 中にアメリカ 大 によっ て差 別されたのだろう。 ・ どうしてエド は、 アメリカ軍に志 願したの だろう。 ・ エド が次 兄と会ったとき、エド はどんな 気 持ちだっただろう。 ・ なぜエド は、日本 海 軍 に従 軍した 次兄 を許 すことができなかったのだろう。 ・ 日本 人 と外 見 は 変 わ ら な い イ チ ヤ マ さ ん が、 アメリカに住 んでい て、アメリカ人 であると いう事 実 から、生 徒 の 学 習 に対 する興 味・ 関 心を高 めるようにする。 ・ わからないこと・もっと 知りたいことを 出しあう なかで、 私たちの 日系 アメリカ人 につ い て の 知識 が十 分でないこと に気づ かせる。 ・ 生 徒から出てくる疑 問 に答 えな がら、 探 究 す る 問 い に つ な げ させ る。 8 9 限 ぜエド は、日本海 軍 に従軍した次兄を許すことができなかったのだろう。 - 126 −
O「 よい アメリカ人」という価値 の 提示 がエド の家 族 にどのように 影 響したのか考えてみよう。 ・ 次 のメンバ ーを、「よいアメリカ 人として 行 動した人」 、「よいア メリカ人 になろうとしている人」 、 「アメリカ人 ではないとみなされ た人」に分類してみよう。 〔 エド の父、 長兄、 次 兄、 エド エド の妻 〕 O 「 よい ア メリカ 人 」という価 値 の 提 示 が 、社 会 関 係 の分 断をもたら したことに気づ か せ る。 「よいアメリカ人として 行 動した人」 エド の長兄 「よいアメリカ人 に なろうとしている人」 エド 「アメリカ人 で はない とみなされた人」 エド の父 エド の妻 エド の次兄 段 階 4 ・ 太 平洋 戦争 中 のア刈 力社 会 の変 化につい て調 べてみよう。 ○ 当時 のアメリカで は、日系 人 の 強制 収容 につ いて、どのよう に考えられていただろう。 ・ アメリカ 戦時 疎 開局(U.S. War Relocation Authority)によって 制 作され、1943 年 にアメリカ の 映 画 館で 上 映された「 日本 人 の 移 転」というニュース映 画 を 分 析しよう8. ・ 各グ ル ープ で 、以 下 の5 つ の 点 について分 析してみよう。 ・ アメリカでは、日本との戦争 開始 後数 時 間 で、日系 人社 会の指 導者 は逮捕された。 ・ 太平 洋 戦 争 開始 後 のアメリカで は 、日系 人 は 強制 収容され、 鉄条 網 の柵の 中で銃 を向けられている生活を送った。 ・ 生 徒 たち を5 つ のグ ル ー プ に わ け、「語の 選択」、 「音楽」 、「画 像 の 選択」 、「日系アメ リ力人 の 描 写」 、 「 日 系 アメリカ 人 の 収 容 に 与 えら れ た 理 論 的 根 拠」 のな か から1 つ ず つ を 、映 画 分 析 の 視 点 とし て わりふる。 ・ 与えられ た視 点 に 基 づ い てメモ をとりな がら映 画 を視聴 する。 ・ 視 聴 後 、各 グル ープ でそ れ ぞ れ の 視 点 につ い て まとめる。 ・ 各 分 析 視 点 のメ ン バ ー が1人 ず つ 入るようにグル ープ を 再 構 成 す る。 ・ それぞ れの 分析 視 点 で の分 析 結 杲 を 交 流し 、映 画で 強 制収 容 が ど のように 描 写さ れ て い るの か 考 える。 10 語 の 選択 ・ 移 転ないし疎 開 ・ 新しい 地 域へ の 自発 的 な移動 ・ 集 会所 音 楽 ・ 移 住の場 面で は勇 壮な マーチ ・ 強 制 収容 所 のシーンで は優雅 な曲 画像 の 選択 ・ 見送りの大 に 笑顔 で 手 を振る ・ きれ いな 服を着 てバ ス から降りる ・ カレッジ の 生 徒 は 教 育 を続けられる ・ 自 治 政 府 がつくられ 、 治 安 は 日系 人 の手で 守 られる ・ チ ルドレンセンターで子 どもは世 話をされる。 ・ 日系三 世 は外 へ 働きに 出る。 日系ア メリカ 人 の描 写 日 系ア メリ カ 人 の 収 容 に与 え ら れ た理 論 的根 拠 ・ 日本 人 がパー ルハ ーバ − を攻 撃し、太 平 洋 岸 は危 険地 帯となった。 ・ 太 平 洋 岸 に住 んでいる 日 系 人 は、 海 軍や 空 軍 の 動きを 見ることができ る。 ・ 映 画 の中 心的なメッセ ージ は何 だろう。 ・ 日系 人 は強 制収 容されているが、 収 容所 で の人 権 は十分 配慮されている。 ・ この映 画の作られた意 図は 何だろう。 ・ 日系人 の強制 収容 が不 当なものではない とアメリカ市 民に訴えること。 卜 強制 収 容 所 は、 どのように : ・ 日系 人 が安 全 に 生 活す ることができ、 か 127
描 か れ てい た か 。 つ 、教 育 や 養 育 を 受 け たり、仕 事をし たり す ることが できる場 所 。 ・ 映 画「 アメリカ ン パ スタ イム」 の 導 入 部 分 を 見 せ 、 ニュ ー ス映 画「 日 本 人 の 移 転」と比 較 させ る。 ○ 太 平 洋 戦 争 の 開 戦 に より 日 系 大 が 排 除 さ れ た こ と、排 除 さ れ る 日 系 人 の 声 が 、 排 除 す る 一 般 の アメリカ 大 に は 届 い てい な かっ たこ とを お さえ る。
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・ 日 系 ア メリカ 人 は 、ど のよう に 描 か れて い た か。 ・ 強 制 収 容 に 自 発 的 に 協 力 し、 収 容 前 にア メリカ で 築 い た 財 産 七十 分 に 保 全 され て い る。 ・ 映 画 に よると、強 制 収 容 を 表 す の に ふ さ わ し い 言 葉 (形 容 詞) は 何 だ ろう。 ・ 自 発 的、 粛 々 、自 治、 安 全、 など 。 ○ ニ ュ ー ス 映 画「 日 本 人 の 移 転」 を 見 た 大 が 、日 系 人 の 強 制 収 容 に つ い て 知 らな かっ たこと は 何 だ ろう。映 画「 アメリカン パ スタイム」と比 較して 考 え よう。 ・ 日 系 大 が 、そ れ まで の 生 活 で 築 き上 げ て きた 生 活 や 社 会 的 地 位 を 、強 制 収 容 によ っ て 失っ たこと。 ・ 強 制 収 容 所 で は 鉄 条 網 に 囲 まれ 、自 由を 奪 わ れ た生 活 で あっ たこと。 ・ 強 制 収 容 所 で の 日系 人 の人 権 は 十 分 に 守 られ てい な かっ たこと。 ・ 強 制 収 容 に反 対し た 日 系 大もい たこと。 段 階 4 段 階 5 ・ イチ ヤ マ 家 の 人 々 が 戦 後 、パ ン チ ボ ウル で 再 会し たとき の 様 子 を 想 像 し て 、そ れ ぞ れ の 立 場 に 分 か れ て 、ロ ー ル プ レ イを しよう。 立 場 [エド の父、 長 兄、 次 兄、 エド 、⊇ 、 エド の 子 ども ]犬
住 ん で い る場 所 アイデ ン ティティ 周りからどう 見 ら れ て い た か 当 時 の状 況 エド の 上 の 兄 アメリカ アメリカ 人 アメリカ 人 アメリカ 陸 軍 に 従 軍。 アメリカ の 学 校 で 教 育 を 受 け 、自 分 は アメリカ 人 だ と思 っ てい た が、 真 珠 湾 攻 撃 後 、差 別 を 受 けるように なり、自 分 は「 日 本 人 」だ と感じ た。 エド アメリカ アメリカ 人 日 系 人 真 珠 湾 攻 撃 後、 ス パ イや アメリカ へ の 裏 切りを し て い ると疑 わ れ た。 アメジカ ヘ の 忠 誠 を 示 す た め に は、442 部 隊 に 参 加し、 第 二 次 世 界 大 戦 で 命 を捧 げ て 戦うし かな かっ た 。 エド の 父 アメリカ 日本 人 日 本 人 日 本 軍 の 真 珠 湾 攻 撃 後 、日 本 の 信 仰 や 晉│貫を 否 定 す る「ア メリカ 化( 同 化)」 運 動 が おこっ た。ニミF-が 親 に反 発 や 軽 蔑 の 態 度を 示し、 家 族 の なか で 亀 裂 が 走っ たりした。 戦 争 中 は 、音 信 が とれ なく な った 次 兄 を 心 配し てい た 。 エド の 妻 アメリカ ア メリカ 人 日 系 人 戦 争 が 始 まっ たことで、 学 校 を 辞 めざ るを 得 な くなっ た 。強 制 収 容 さ れ た 収 容 所 はも ともと家 畜 を 展 示し てい た 場 所 を 作り替 え たも の で、 馬 房 を 区 切 っ たも の が 住 居 となっ た 。周 囲 に は 鉄 条 網 か おり、監 視 され 、自 分 たち に 銃 口 が 向 け られ て い る生 活 を 送っ た 。 1282 3 4