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J.-J. ルソーにおける自然界の認識 : 考察序説

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(1)

J.函J.ル

ソ ー.に.おけ る 自 然 界 の 認 識

、察.序

説 一 一.1

荒..井

J. -J.

Rousseau's

Perspective

on Nature

Hirosuke

ARAI

Abstract

This paper elucidates Rousseau's attitudes toward nature, both his range of knowledge

about the natural world and his sensibilities toward it. It compares them with those

existing in England during the 18th century, and concludes by offering suggestions to

hlep us confront our contemporary environmental problems.

First, Rousseau viewed nature with a subjective, selective, imaginative and recollective

attitude.

He tried to discov . er "signs" in,.nature.- which. supported his critique,of

the

ancien r6gime".

Second, one study of Rousseau has argued that his view of nature did not extend

beyond the forest. In my opinion, the visual range of Rousseau's mind was so wide

and deep that it encompassed even the inorganic world and cosmic laws.

Third,

I argue that Rousseau's

way of thinking

about mountains

(including

the

Alps), the art of garden design, and the life of animals and plants was distinctive and

influential in changing the way people thought about nature in the 18th century.

Finally, after examining the applicability of two hypotheses- (biophilia and topophilia)

to clarify the significance of his perspective on nature,

I conclude that Rousseau's

charming,

vivid insights into nature and strong descriptions

of the natural world

encourage us today to preserve and protect the natural world..

は じめに一本稿の目.的

J」一J.ル ソ「(知ah-JacquesRousseau,1712鳧1778)の 著 作 た は 自然 界.の描 写 が盗 れ.るば か り.に満 ち.てお り、 あ た か もそ れ らは 、 彼 め 自.然界 に対 す る視 界 の成 り..立.ち.と.広が.り.の探 求一に 向 け て 、 人 を い ざな うよ うで も.あ.・る。 小 稿 は、 ル ソ.一」に お け る 自然 界 認 識 の態 度 特 性 とと も に∼ そ の視 界 の及 ぶ と・ころ を 、 二 つ の 整 理 軸 を仮 設 して 吟 味 を試 み る。 ま た 、 彼 と ほ ぼ 同時 代 の イ.ギリス に お け.る自然 観 の変 遷 と の 比 較 'を例 示 して 、.ルソー の視 界 の 背 景 を成 す 、 自然 観 の時 代 状 況 を探.る.とと もに 、.彼の 自然 観 研 究 に

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関 す る今 後 の 課 題 の 一 つ を示 唆 す る 。 さ らに 現 代 の 「自然 と人 間 」 観 と の関 連 を 、"バ イ オ フ ィ リア"と`ト ポ フ ィ リア"の 二 説 を 中 心 に 一 見 して 、 ル ソー の 自然 界 に対 す る認 識 の 、現 代 的 意 義 の一 端 に触 れ る。 なお 今 回 の 考 察 は 、 膨 大 な彼 の 著 作 の 一 部 を対 象 と して い る とい う意 味 に お い て も 、 第1次 的 な もの で あ る・ また 引 用 邦 訳 名 と略 詑 は ・ 本 文 中 に逐 次 示 す ほ か 関 連 の原 著 名 と 略 記 を ・ 注1に 掲 げ る(1)。

1認

識態度 の特性 と視界の広 が り

1態

度特性

(1)主 観 性 ・選 択 性 R.グ リム ズ レイ(RonaldGrimsley)は 、「ル ソー と空 間 の想 像 力 」 の 中 で 、「外 部 世 界 の 見 方(Conception)に 自 らの 個 性 が 深 い 影 響 を与 え た こ とを 認 め た 最 初 の 人 間 こそ 、 ル ソー そ の 人 で あ る」(A.J.J.R,tαne39, 、1972∼77,P.47.)と 述 べ て い る。 この 見 方 の 最 初 の 特 徴 は 、 ル ソー が外 部 世 界 を 感 覚 的 、主 観 的 に と ら え る こ とに あ る。 彼 自身 「わ た しの うち に あ る感 覚 と わ た しの外 に あ るそ の 原 因 、・つ ま り対 象 、 と は 同 じもの で は な い と い う こ とが は っ き りとわ た し に わ か る」(今 野 一 雄i訳 『エ ミール 』'(中)岩 波 書 店 、1997年 、129頁 。 以 下 『エ ミー ル 』)、と述 べ て い る ほ か 、 あ る書 簡 の 中 で 次 の よ うに 言 っ て い る。 「心 を 動 か さ れ るか ぎ り見 る こと が で き ま す 。 無 関 係 な こ と は私 の 眼 に は な きに 等 しい(加ls amesyeux)の で す 。 注 意 を 呼 び さ ます 関 心 に応 じて の み 注 意 を 払 う」(原 好 男 訳 『書 簡 集 』 (下)小 林 善 彦 、 樋 口謹 一 監 修 『ル ソー 全 集 』 白水 社 、 第14巻1985年 、 一 以 下 『白水 社 全 集 』、 97頁 。C.C.,tomeXV;P.48,rl2440.)。 A.ト リペ(AmauldTripet)は 、 「ル ソー と 風 景 の 美 学 」 の 中 で ル ソー の こ の見 方 を 「主 観 的 な相 対 主 義 の 見 地(laPerspectived'unrelativismesubjectif)」 と呼 び 、 ル ソー の 「世 界 に対 す る主 観 的 な関 係 の極 端 な 表 現 の一 つ が こ こに あ る」(A.」.J.Rt.40,1992,P.65)と 言 っ て い る。 ち な み に 、 外 部 世 界 を この よ うに 主 観 的 に と らえ よ う とす る態 度 は 、 現 代 の環 境 記 号 論 の 見 方 、 つ ま り 自然 と は 、 人 間 と 自然 と の 間 の 「イ ソ ター フ ェー ス に 現 わ れ た環 境 か ら概 念 的 に 構 成 され た もの 」(2)と して 、 自然 を と ら え る見 方 と通 底 す る と こ ろ が あ ろ う。 と こ ろ で 自然 界 に は周 知 の通 り、 二 面 性 が あ る。 即 ち 、美 し くな ごや かで 平 和 的 な:自然 で 、 人 間 に友 好 的 、好 意 的 な 自然 と、大 地 震 な ど の 自然 災 害 や 毒 蛇 、 毒 虫 、 毒 草 な ど 、人 間 に 危 害 を 与 え る、 攻 撃 的 、 破 壊 的 な 自然 で あ る。 ル ソー の主 観 的 な 自然 界 把 握 が よ り徹 底 さ れ 、 ほ と ん ど選 択 性 とい って も よい態 度 特 性 と して あ らわ れて い る点 は 、 管 見 の範 囲 で は 、 前 者 の好 意 的 自然 描 写 の方 が 、 後 者 の攻 撃 的 自然 描 写 よ り も量 的 に 多 い と感 じ られ る こ とで あ ろ う。 噴 火 、 地 震 、雷 害 、 洪 水 、 旱 天 な どの 荒 らぶ る 自然 は 、 『言 語起 源 論 』 の 中 で の 「は る か な遠 い 昔 」 に お け る 自然 界 の 変 動 描 写 にあ らわ れて い る が 、 そ れ は 「は るか な 遠 い昔 」 で あ る。 ヴ ォル テ ー ル は リス ボ ソの 大 地 震(1755年)に 大 き な シ ョ ッ ク を受 け、 現 世 の 不 幸 や悪 の存 在 を強 調 した。 しか しル ソー は 、 被 害 の 原 因 を都 市 人 口 の過 剰 集 中 と住 居 形 態(「 自然 の ほ うか らす れ ば 、 な に もそ こ に六 階 や 七 階 建 の 家 を二 万 軒 も集 合 さ せ る こ と は ま った くな か う た」 一 浜 名 優 美 訳 「ヴ ォル テ ー ル 氏 へ の 手 紙 」 『白水 社 全 集 』 第5巻 、14

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頁)や 財 産 の執 着 に よ る避 難 の 遅 れ な ど社 会 的 、 経 済 的 原 因 に求 め て い る。 彼 は ま た この 大 地 震 発 生 以 前 に も別 の 箇 所 で 「火 事 や 地 震 」 に つ いて 「わ れ わ れ が 自然 の 教 訓 を軽 蔑 した こ とに 対 し て 、 自然 が い か に 高 い 代 価 を わ れ わ れ に 支 払 わせ て い る か が感 じ られ るで あ ろ う」(本 田喜 代 治 、 平 岡 昇 訳 『人 間 不 平 等 起 原 論 』 岩 波 書 店 、1990年 、 一 以 下 『不 平 等 論 』、'151頁。)と 述 べ て い る。 『新 エ ロイ ー ズ』 に、 冬 の 自然 の 荒 涼 た る風 景 描 写 が い くつ か 見 られ る が、 これ は 恋 人 を失 な い つ つ あ る主 人 公 の 悲哀 感 と と もに 描 か れ て お り、「ち ょ うど わ た しの心 の 奥 で 希 望 が 死 ん だ よ う に 、 わ た しの 眼 に は 自然 の全 体 が 死 ん だ もの の よ う に見 え る の で す 」(安 士 正 夫 訳 『新 エ ロ イ ー ズ』(一)岩 波 書 店 、1997年 一 以 下 『新 エ ロイ ー ズ』、145∼146頁)と して い るの で あ る。 ま た ル ソー は 「植 物 に は わ た した ち の 毒 に な る もの が あ り、動 物 に は わ た した ち を食 べ る もの 」 (『新 エ ロイ ー ズ』(三)、231頁)が い る こ と を認 め て い る。 しか し彼 は 、 ご く少 量 で も毒 に な る 「恐 るべ き ヤ ナ ギ バ グ ミ」 を 「十 五 あ る い は 二 十 粒 も」 飲 み こん で も 「朝 に は完 全 な健 康 状 態 で 目 を覚 ま した」(今 野 一 雄i訳 ・『孤 独 な散 歩 者 の夢 想 』 岩 波 書 店 、1998年 。 以 下 『夢 想 』、125頁)。 ま た ル ソー が 当時 滞 在 して い た モ チ エ の村 に あ る城 を取 りま く 「森 や岩 山 に は 毒 蛇 が た くさ ん い る … … が 、 そ の … い た る と ころ を 歩 きま わ り、 ∴ … 腰 を 下 ろ'し・∴た が 、 今 まで お 目に か か っ た こ と が あ けま せ ん 。」(前 出 『白 水 社 全 集 』 第14巻 、113頁)と 言 って い る。 これ らは ま るで 有 毒 な 動 植 物 は 、 自然 の善 性 を信 じ るル ソ ー に は被 害 を 与 え な か っ た り、避 け て通 って い る か の よ うで も あ る。 前 出 のA.ト リペ も 「ル ソー に あ っ て は 自然 の荒 れ 狂 う暴 力 の 口調 を持 つ詩 人 の イ メ ー ジ は 見 い 出 され な い 」(A.J.J。R.t.40,1992、P.77)と 述 べ て い るあ ち な み にル ソー の 良 き理 解 者 で あ り、「ル ソー が私 を 正 して くれ た(3)」 と言 った 哲 学 者 の カ ソ トは 、「自然 が 人 間 を そ の 特 別 の 寵 児 と して 受 け い れ 、 あ らゆ る動 物 に もま して 親 切 に好 遇 した とい う こ とは 、 ま った くあ りえ な い … 自然 は 人 間 をむ しろ 、 自然 の破 滅 的 な 作 用 … …悪 疫 、飢 餓 、 水 害 、 凍 害 、'・・三…動 物 の 襲 撃 そ の 他 に お い て 、 あ ら ゆ る他 の 動 物 と 同様 ぐ 甘 や か して は い な い(4)」 と述 べ 、 ル ソー とは 反 対 に 自然 界 の攻 撃 的 側 面 を直 視 して い る。 (2)回 想 性 別 の 態 度 特 性 は 、 ル ソー の 自然 界 に は 、 い わ ば 彼 が眼 前 して い る光 景 を リアル タ イ ム に近 い状 態 で描 写 した もの とい うよ り も、 過 去 を 回想 した 時 に想 い 描 か れ た もの が あ る こ とで あ ろ う。 ル ソ ー は 「わ た しは 自分 の記 憶 の 中 に しか知 性(resprit)が は た らか な い … … 後 に な って … み な よ み が え っ て くる。」、 「そ の 時 、 そ の場 所 … …大 気 の 温 度 、 そ の 香 気 、 そ の 色 彩 、 そ の 場 所 固 有 の 印 象 まで よ み が え るの だ」(『告 白』 上164頁 、175頁 、0.C.,t.1,P.115,P122.)と 言 って い る。 この 回 想 され る 自然 界 は 、 ル ソー の 「快 感 回 帰 」 とで も呼 べ そ うな 心 性 とた や す く結 び つ く よ うで 、 あ る時 は 、 愛 す る女 性 た ち と の楽 しい 遊 び 場 所 を提 供 す る田 園 や 彼 の 好 き な 「め ま い」 を十 分 味 わ わ して くれ る、"デ ィ オ ニ ソス 的 自然"の 形 を取 っ た り、 あ るい は 晩 年 の 散 歩 中 偶 然 見 つ け た 「ツ ル ニ チ ニ チ草 」 が 一 瞬 の うち に 約30年 前 の ヴ ァ ラ ソス 夫 人 との 「本 当 た生 きた と い え る」 最 高 の幸 福 感 を ま ざま ざ と蘇 生 させ て くれ る至 福 の 自然 で もあ った り して い る。 我 々 は こ う した 多 くの例 を 『告 白』 や 『夢 想 』 な ど に見 い 出す こ と が で き る。 (3)空 想 性 ・想 像 性 ル ソー が描 く自然 界 は 、す で に指 摘 され て い る よ うに 「空 想 で ふ くら んだ 自然 」 で 、 彼 は7才 の 頃 か ら 「異 常 な まで の 夢 想 癖 、空 想 癖(5)」 が あ った よ うで あ る。 彼 自身 も 「わ た した ち の 目

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に ふれ る も の に想 像(1'imagination)が 魅 力 を 添 え な け れ ば 」 と述 べ 、 「対 象 が そ う な る よ うに で は な く、 そ うな って ほ しい よ うに 見 る。 そ れ を選 ぶ の は 想 像 の 自 由 な の だ か ら。」(『エ ミー ル』 上 、271頁 ∼272頁 、0.C.t.IV,P.418>と 言 って い る 。 も っ と も こ う した 空 想 の 、 あ る い は 想 像 の 自然 の ベ ー ス に は 、 実 際 の 自然体 験 が関 与 して い る 時 もあ る よ うで 、友 人 や そ の 家 族 な ど との 湖 水 め ぐ りの折 に受 け た 「対 岸 の 景 色 … … の鮮 明 な 印 象 が … 数 年 後 に 『新 エ ロイ ー ズ』 の な か 」 の描 写 とな った(『 告 白』 中 、182頁)な どい くつ か の例 を あ げ る こ とが で き る。 また これ まで の ル ソー研 究 の 中 に は 、 若 き 日の ル ソー が 「トリノ を高 い 丘 か ら見 下 した小 さな 驚 きが 、 サ ヴ ォ ワ の助 任 司 祭 の告 白 の 中 で ル ソー に よ って な され た道 徳 的 啓 示 を用 意 した はず で あ る6」 と の 意 見 もあ る(6)。 (4)非 実 利 性 ル ソー は 、 植 物 界 を 厂食 料 倉 庫 の よ うな もの だ と考 え た こ と は あ る。 け れ ど もそ こ に薬 品 や 医 療 品 を も と め よ う と は 、 い ち ど も思 い つ い た こ と は な い。」(『夢 想 』、113頁)と 言 っ て い る 。 す で に拙 稿 で 触 れ た 所(7)だ が 、 彼 に は 自然 界 の認 識 に あ た っ て 、 実 利 目的 に基 づ く認 識 の 排 除 が 見 られ る。 「す べ て をわ た した ち の 物 質 的 な 利 害 に 結 び つ け 、 い た る と ころ に利 益 や 薬 を捜 し も と め、 い つ も健 康 で あ りさ えす れ ば 、 自然 を い っ さ い 無 関 心 に な が め よ う とす る、 そ うい う考 え 方 は、 決 して わ た しの考 え方 で は な か っ た。 この 点 に つ い て は 自分 は ほ か の 人 た ち と は ま った く 逆 だ と い う気 が す る。」(『夢 想 』114頁)と 述 べ て い る 。 この 点 は、 当時 の 百 科 全 書 派 の実 用 主 義 的 、 人 間 中 心 主 義 的 な 自然 観 と は 、 一 線 を画 す る もの で あ ろ う(8)。 (5)記 号 性 ル ソ ー に は 、 自然 界 全 体 や 自然 物 を い わ ば 宗 教 的 あ るい は 政 治 的 、 社 会 的 な記 号 を含 む もの と して 見 直 し、 後 述 の よ うに 独 自 の宗 教 的 観 念 な ど を 自 らに 与 え る もの と して 、 あ るい は文 明社 会 批 判 な ど 自説 の 正 し さを例 証 す る もの と して眺 め よ う とす る と ころ が あ る。 この 点 もす で に 拙 稿 で 指 摘 した 所 で あ る(9)。 例 え ば 土 地 は 、 私 有 化 に よ って 制 度 的 に は 不 平 等 を 拡 大 す る もの で あ る と同 時 に 生態 系 を宿 す 土 壌 で もあ り、 これ を破 壊 す る文 明 化 は 、・ます ます批 判 され る べ き もの で あ っ た の で あ る。 これ まで の ル ソー 研 究 で も この 点 を 、 自然 は 「ル ソー の 思索 の も っ と も力 強 い バ ネ で あ った(10)」 と表 現 して い る。 以 上 、 ル ソー の 自然 界 の 認 識 態 度 の 特 性 と して 、 主 観 性 ・選 択 性 、 回想 性 》空 想 性 ・想 像 性 、 非 実利 性 、記 号 性 の 五 例 を 示 して み た 。 以 下 引用 す る 彼 の 自然 界 の描 写 に は 、 こ う した 特 性 が反 映 され て い る こ と を あ らか じめ 承 知 して お く必 要 が あ ろ う。

2視

界の広が り

(1)整 理 手 順 ル ソー の膨 大 な 著 作 に お け る、 さ ま ざ ま な 自然 界 の諸 相 を 一 定 の方 式 で整 序 を試 み る一 つ の 方 法 は 、 プ レイ ヤ ー ド版 全 集 の 『用 語 集 ・索 引 』(11)をも とに 、 関 連 の字 句 ・表 現 を そ の文 脈 に従 っ て再 整 理 す る こ とで あ ろ う。 しか し これ に は か な りの 研 究 資 源 と 『用 語 集 ・索 引』 編 集 当 局 の協 力 が必 要 で あ る。 第1次 的 考 察 で あ る この 小 稿 で は そ の た め の 準 備 作 業 の意 味 も含 め 、 と りあ え ず 、以 下 の よ うな二 つ の 整 理 軸 と各 三 つ の 項 目を仮 設 し、 そ れ ら に該 当す る と思 わ れ る語 句(ル

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ソー の記 号 的 自然 の表 現 を 含 む)を 暫 定 的 に 例示 して み た。 ア 自然 界 に お い て 自然 物 な ど が 存 在 す る位 置 。 こ こで は地 下 か ら地 上 、 天 上 に 至 る 自然 界 の 垂 直 的 な段 階 の 軸 と し、 これ を 「位 置 的 自然 」 の 軸 と呼 ぶ。 これ は、 ① 地 下(水 底)・ 地 中 (水 中)、 ② 地 表(水 面)・ 地 一上(水 上)、 ③ 天 上 の三 層 に分 かれ る。 イ 自然 界 に お い て 自然 物 な ど が存 在 す る態 様(個 、 集 合 、 全 体)。 こ こで は 厂態 様 的 自然 」 の 軸 と呼 ぶ 。 これ は① 個 物 的 自然(花 や 草 な どの 一 つ一 つ ま た は そ れ らの 部 位)、 ② 集 合 的 自然(何 らか の通 有 性 を持 つ種 や類 、 属 と して の① また は 、異 種 の① が 多様 に混 在 す る 自然)、 ③ 全 体 的 自然(② か ら成 る世 界 、 宇 宙 や 生 態 系 な ど)の 三 区 分 に分 か れ る。 最 後 に、 この 二 軸 を交 叉 させ て 、 ル ソー の 自然 界 認 識 に お け る視 界 の広 が りを例 示 的 に確 認 す る。 (2)位 置 的 自然 ア 地 下(水 底)、 地 中(水 中)の 自 然 物 の 認 識 ま ず 化 石 や 地 下 の 鉱 物 な ど の 指 摘 が あ る か ど う か だ が 、 ル ソ ー は 、 「庭 の 台 地 を ふ か く堀 り さ げ て い る と 、 化 石 の 貝 が ら(descoquillagesfossiles>」 が 出 て き た こ と(『 告 白 』 中 、 152頁.0.C.,t.1,P.373)、 ま た 「博 物 学 に … 趣 味 を も っ て い る な ら … … 化 石 を さ が さ な い で 石 塚 を 過 ぎ て 行 く気 に な れ る だ ろ う か 」(『 エ ミ ー ル 』(下)、124頁)な ど と 述 べ て い る 。 こは く さ ら に 「琥 珀(1'ambre)… な ど … は 摩 擦 す る と ワ ラ を ひ きつ け る こ と … に 気 が つ い た 」 (『エ ミー ル』(上)、299頁 、0.C.,t.IV,P.437)と 言 って い る。 こ の ほ か 鉱 山 や 、鉱 物 な ど の地 下 ・地 中 の金 属 材 料 へ の 言 及 もあ る(『 不 平 等 論 』、154頁)。 一 方 地 中 に つ い て は、 「土 壌 の 破 壊 、 す な わ ち植 物 に適 した物 質 の損 失 」(『不 平 等 論 』、 140頁)を 指 摘 した り、「化 学 論 」 で 「全 植 物 の 必 要 物 を根 に 供 給 す るの は 、土 壌 で あ る。 そ こ か ら まだ 未 純 化 、粗 製 の汁 液(SUCS)が 、 そ の た め に奉 仕 す る小 さ な、 数 限 りな い運 河 の な か で 自 ら を浄 化 し… 、 植 物 の さ ら に微 小 な 部 分 部 分 を 養 うの に適 した もの と な って い く」 (A.J.J.R,t.12,1918∼1919,P.48)な ど と 言 って い る。 ま た 水 系 で は まず 、 水 底 ・海 底 に つ い て 「貝 殻 が ば ら まか れ て い る」 粘 土 層 が 「小 川 の川 床 」(『新 エ ロ イ ー ズ』(三)、133頁) を成 す とか 、 「大 河 に ふ さわ しい 川 床 」(『新 エ ロ イ ー ズ』(三)、198頁)な どの表 現 が あ る。 また よ り豊 か な植 物 標 本 を 作 るた め 「いず れ は海 の底 … … のす べ て の植 物 」(『夢 想 』、108頁) を採 集 した い と言 って い る。 一 方 、 水 中 へ の 言及 で は、 湖 の 漁 で 取 れ た 魚 を 「苦 しんで い る 生 き物 」 な の で 「み ん な 水 中 に」(『新 エ ロイ ー ズ』(三)、198頁)戻 した り、 研 究 対 象 と し て採 集 しに くい もの の一 つ に 「水 に 住 む 魚」(『夢 想 』、118頁)を あ げ て い る例 が あ る。 これ らか らル ソー の視 界 は 、 地 下(水 底)や 地 中(水 中)に 及 ん で い た こ と が わ か る。 イ 地 表(水 面)、 地 上(水 上) 位 置 的 自然 で は 、 この 層 に属 す る事 例 が も っ と も多 様 か つ精 彩 に 富 ん で い る よ う に思 わ れ る。 そ の 内 容 の 一 部 を 次 の 簡 単 な 区 分 の も とで例 示 す る(出 典 略)。 ①'無 機 的 自然 陸 系 で は 、 「地 面 と 同 じ平 面 に あ る土 」、 土 壌 、 土 床.地 平 線 、大 地 、 砂 、 岩 、 石 、断 崖 絶 壁 、 火 山 、 砂 礫 、 山の 空 気 な ど。 また 水 系 で は、 「眼 に映 る広 大 な水 の原 」、 水 面 、 水 平 線 、 氷 、波 、 露 、 水 、 雪 、 雨 、滝 、 水 流 、霧 しぶ き、 水 蒸 気 な ど。 ② 有 機 的 自然 植 物 系 で は 、花 、 草 、 樹 木 、灌 木 、 森 、 蔓 、葉 、枝 、 苔 、噛木 陰 、 木 立 、果 物 な ど。 また 動 物 系 で は 、 犬 、 猫 、 兎 、鳥 、狐 、 牛 、 馬 、 羊 、狼 、 山 羊 、 鹿 、虎 、 ハ エ な

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ど。 ③ 無 機 物 、 有 機物 の 混 在 的 自然 陸 系 で は、島 、 谷 、 山岳 、丘 、 山 腹 、 山 脈 、 平 野 、緑 野 、 大 陸 、林 間 の 空 地 、 大 平 原 な ど。 ま た水 系 で は 、 湖 、 池 、 沼 、 河 川 、 泉 、 海 、 海 峡 、 水 辺 な ど。 ④ そ の 他(自 然 現 象 、一景 観 な ど)季 節 、 気 候 、 大 気 お よ び そ の温 冷 ・乾 湿 、 風 土 、香 気 、 色 彩 、天 候 、 洪 水 、 地 震 、 雷 、 旱 天 、稲 妻 、噴 火 、 自然 の景 観 、 人 気 の な い 場 所 、暴 風 雨 な ど。 な お 、 人 工 の 手 が 入 った もの と して 、 畑 、 果 樹 園 、 噴 水 、 運 河 、庭 園 、 牧 場 、 田園 、 動 物 飼 育 場 、 鳥 小 屋v養 魚 池 、 野 菜 、 麦 、 家 畜 な ど が あ る。 ウ 天 上 大 空 、 星 、 惑 星 、 星 座 、 太 陽 、地 球 、 天 体 の 運 行 、 宇 宙 、蝕 、朝 焼 け 、 日の 出 、 日光 、闇 、 「こ の世 の 圏 外 」(12)(Audesusdecetatmosph6re-0.C.,t.1,P.1049、 『夢 想 』、91頁) な どQ 以 上 の ほ か ル ソー は 自然 誌 、 宇 宙 誌 に も興 味 を寄 せ た 。 彼 の 自然 界 の認 識 は 、地 下(水 底)か ら天 上 、 宇 宙 に まで及 んで お り、位 置 的 自然 の 三 段 階 を カバ ー して い る こ と が わ か る。 従 来 「ル ソー は 、 風 景 を賞 賛 し、 熱 心 に 山腹 を 見 た が、 そ の範 囲 を 森 林 限 界 以 上 に広 げ る こ と は皆 無 と は い わ ず と もめ った に な か っ た(13)」 と の意 見 も あ っ た。 しか しル ソー の 視 界 は 、位 置 的 自然 の領 域 で も、 もっ と広 い こ とが わ か る。 彼 の 化 石 な ど地 下 ・地 中 へ の関 心 は、19世 紀 以 後 の地 質 学 の 発 展 が 継 承 す る こ とに な る。 な お ル ソー は 、 厂人 間 の い る所 か ら上 の 方 へ の ぼ って ゆ く と き卑 しい地 上 的 な 感 情 は す べ て そ こに棄 て て ゆ く よ うに 思 わ れ 、 清 浄 界 に近 づ くに つれ て魂 は 清 浄 界 の 変 質 す る こ との な い純 粋 さ を持 っ あ る物 に染 ま る よ う に思 わ れ ます。」(『新 エ ロイ ー ズ』(一)、126頁)と 言 って 、 位 置 的 自 然 を下 方 か ら上 方 へ 向 か う上 昇 感 の魅 力 を伝 え て い る。 .(3)態 様 的 自然 ア 個 物 的 自然 上 記 の 位 置 的 自然 に 属 す る 自然 物 の 一部 は 、 個 物 的 自然 で もあ るが 、 こ こで は ル ソー が個 物 の 一 つ一 つ 、 例 え ば 花 の 内 部 組 織 ま で 、 よ り ミク ロに 見 て い る こ と を 例 示 した い 。 「完 全 な植 物 は 、 根 、茎 、枝 、 葉 、 花 、果 実 に よ って 構 成 」 され て い る。 と くに 「結 実 の 部 位 、 つ ま り花 と果 実 」 が重 要 で 、 「自然 はみ ず か らの 作 品 を要 約 して 隠 した … … この 部 位 に よ って 、 … … そ の作 品 をい つ まで も存 続 させ る」(高 橋 達 明訳 「植 物 学 に つ い て の手 紙 」 一 以 下 『手 紙 』、『白水 社 全 集 』 第12巻 、13頁)と 彼 は 述 べ て い る。 ル ソー は つ づ け て ユ リや エ ソ ドウ豆 な ど につ い て 、 い わ ば 花 の解 剖 学 を講 義 して お り、 「植 物 学 は ど うい う教 育 に お い て も忘 れ られ て い ます が … …子 供 た ちの 教 育 の も っ と も重 要 な部 門 と な る べ き で す。」(『手 紙 』、40頁) と 言 って い る。 そ の他 「植 物 用 語 辞 典 の た め の断 片 」(前 出 『白水 社 全 集 』 第12巻,89頁 ∼ 136頁)に は 、 花 弁 、 花 柄 、 葉 柄 、 め しべ 、 気 管 な ど の 詳 し い解 説 が 、 ま た 『夢 想 』 で も 「イ ラ クサ の オ シベ 」 な どの 「無 数 の微 細 な 繁 殖 作 用 を わ た しは初 め て 観 察 した 」 こ と が述 べ られ て い る。 こ う した 観 察 は 「他 に く らべ る もの もな い く らい に 異 常 な」 「恍 惚 と陶 酔 」 を ル ソー に もた ら して い る(『 夢 想 』83頁)。

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イ 集 合 的 自 然 ル ソ ー は ま た 、 上 記 の よ う な 「植 物 の 繁 殖 器 官 の 営 み 、 … そ の 系 統 」 の 観 察 か ら 「そ れ ま で は 思 い も及 ば な か っ た 植 物 の 通 有 性 を み わ け 」(『 夢 想 』、83頁)て い る 。 つ ま り彼 は 個 物 的 自然 の 一 つ 一 つ の 吟 味 に つ づ い て 、 よ り 一 般 的 な 「植 物 の 構 造 や 組 織 」 の 観 察 を 経 て 、 種: 類 と して の 集 合 的 な共 通 性 を持 つ 、 「植 物 の 通 有 性 」(caract6resg6nさriques-0.C.,t.1,P.1043) を 感 知 し て い っ た わ け で あ る。 こ こ で い う 集 合 的 自 然 に は 、 前 述 の 通 り 、 無 機 物 ・有 機 物 の 混 在 的 集 合 や 、 異 な っ た 無 機 物 や 有 機 物 同 志 の 混 合 的 集 合 が 含 ま れ て い る。 こ れ ら の う ち と く に ル ソ ー が 好 ん だ 集 合 的 自 然 は 、A.ト リペ に よ る と 「複 数 の 眺 め と 気 候 、 今 日 な ら複 数 の 生 態 系 ・(ses6cosystemes) を 持 つ と で も 称 され る よ う な 、 山 の 中 腹(lamontagneami-cδt6)、 そ れ 自 身 が 一 つ の 自 然 の コ ソ パ ー トメ ツ トを 成 し て い る 島 、 水 の 緑 取 り の な い 、 ジ ュ リ の エ リ ゼ の よ う な 庭 園 (Jardin)、 そ れ に 厂『告 白 』 の 若 い 散 歩 者 か 『夢 想 』 の 年 老 い た 散 歩 者 の た め の 田 園 」 の 四 つ で 、 ト リ ペ は こ れ ら を 「ル ソ ー 的 な 愛 す べ き 場 所 」(locztsAmoenzesrousseauiste)と 呼 ん だ(A.J.」.R,tome4◎,1992年 、P.66∼67)。 こ こ で ト リ ペ が 山 の 中 腹 に 、 厂複 数 の 生 態 系 」 を 認 め て い る ご と は 、 後 述 す る ル ソ ー の 生 態 系 認 知 と の 関 連 で 注 目 さ れ る 。 以 上 の 四 つ は 、 位 置 的 自 然 の 「地 表 ・地 上 」 に も 属 し て い る が 、 態 様 上 の 特 色 の 一 つ は 、 混 在 的 あ る い は 混 合 的 自 然 に あ る 。 ま ず 山 の 中 腹 に つ い て ル ソ ー は 厂さ わ や か な 木 陰 の あ る 気 持 ち の い い 丘 の 中 腹(lepenchant)に … 小 さ な 家 を … … 、 中 庭 は 家 畜 を 飼 う場 所 … 牛 小 屋 … … 庭 園 は 野 菜 畑 … … 、屋 敷 の 周 辺 は … 果 樹 園 」(『 エ ミー ル 』(中)、301頁,0.C.,t.N, P686∼7.)を 持 ち た い と 言 っ て い る 。 ま た 島 に 関 し て は 、 サ ソ ・ ピ エ ー ル 島 で ル ソ ー が 坐 っ う さぎ せ いそ く た 「丘 は 芝 草 や … …花 … に 覆 わ れ て い て 兎 を棲 息 させ る の に適 した場 所 で … … わ た しが 島 を 去 る まえ に繁 殖 しは じめ て い た 」(『夢 想 』、84∼85頁)と 述 べ て い る。 さ らに 庭 園 は、 そ の 中 に あ る果 樹 園 に は 「木 陰 … … 緑 葉 …咲 き盛 る花 々や … 水 の せ せ ら ぎ や 数知 れ ぬ鳥 の 歌声 」 が聞 え 、「自然 界 の 中 で 最 も未 開 の…場 所(1elieuIeplussauvage…de lanature)を 見 る」(『新 エ ロ イ ー ズ 』(三)、128頁,0.C.,t.II,P.471)と の 描 写 が あ る。 こ の果 樹 園 は 元 は、 か な り乾 燥 した草 と まば らな 木 、 とて も少 な い 木 陰 を持 ち 、 水 が な か っ た 場 所 に 手 を加 えて で きた もの で あ っ た 。 そ の さ い 人 工 の手 が加 わ った あ と が 全 く見 られ な い よ うに 「非 常 に 注 意 した 」 結 果 、 厂自然 の一 切 の 魅 力 は こ こ に封 じ込 め られ て い る」(『新 エ ロイ ー ズ』(三)、146頁) .と感 じられ る と ころ で あ る。 な お、 現 代 の ドイ ツには 、 荒 れ果 て た 自然 に手 を加 え て元 通 り生 態 系 を復 活 させ 、再 び生 々 と した場 所 に戻 した 厂ビオ トー プ(Biotop)」 と 呼 ば れ る と こ ろ が あ る と伝 え られ る。 上 記 の 果 樹 園 の 成 立 過 程 に関 す るル ソー の叙 述 に は、 一 部 、 この ビオ トー プの コ ソセニプ トを想 起 させ る もの が あ る ので は な か ろ うか。 最 後 に 「田園 」 だ が 、 トリペ が あ げ る 『告 自』 に は 「か な り高 い二 つ の 丘 に は さ まれ た … 小 さな谷 … そ の 底 を小 川 が 石 や 木 々 を ぬ って 流 れ … … 築 山 に な った庭 、 … ブ ドウ園 、 … 果 樹 園 …小 さ な栗 林 …泉 … 山 へ 登 る と … 小 さ な牧 場 が あ る」(『告 白』 上 、320頁)田 園(14>の 描 写 が 見 られ る。 ル ソー が 「も っ と も愛 した(15)」 レ ・シヤ ル メ ッ トの 風 景 で 、 彼 は 「これ こ そ 幸 福 と無 邪 気 の す み か … わ た しの生 涯 の 、 短 い幸 福 の 時 … … 真 に 生 き た と い い う る資 格 を さず け て くれ た 」(『告 白』 上 、320∼321頁)と ころ と言 っ て い る。 トリペ が あげ た 以 上 の 四 つ は 、 い つ れ も異 種 の 個 物 的 自然 が混 在(合)的 な態 様 を示 す 集

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合 的 自然 だ が、 これ らに 共 通 す る点 は 、 どれ もル ソー に幸 福 感 を与 え る トポ ス(場 所)で あ る こ とで あ ろ う。 これ は 後 述 す る"ト ポ フ ィ リア"の ル ソ ー版 で もあ ろ う。 ル ソー は こ う し た 平和 で や さ しい集 合 的 自然 の 描 写 に よ って 自己 の み な らず 、 彼 の い わ ゆ る":水 晶 の よ うに 透 明 な心"を 持 つ人 間 に と って の 理 想 郷 を示 唆 し よ うと した の で は な か ろ うかQ ウ 全体 的 自然 全 体 的 自然 の イ メー ジは 、 ル ソー に あ って は まず 、 「水 の 流 れ と鳥 の歌 声 に取 り巻 か れ た かいちょう 大 地 」 に は 、 動 物 界 、 植 物 界 、 鉱 物 界 か ら成 る 「自然 の 三 つ の 領 域 の 階 調(1'harmonie destroisr6gnes)」(『 夢 想 』、110頁 、0.C.,t.1,P.1062)が あ り、 そ れ ら が 生 々 と した 魅 力 に満 ち た 自然 の光 景 を織 りな して い る と い う観 察 に あ らわ れ て い る。 彼 は次 に こ う した 調 和 を持 つ 「大 地 の表 面 か ら、 自然 の あ らゆ る存 在 へ 、 万 物 の 普 遍 的 秩 序 へ 、 す べ て を包 容 して い う 理 解 しが た い存 在 者 へ と …観 念 を高 め る」(厂マ ル ゼ ル ブ へ の 手 紙 」、 『エ ミー ル 』 (下)、309頁)。 ま た ル ソー は 、 は じめ て 時 計 の 内 部 を見 た 人 の よ うに 「宇 宙 を 構 成 して い る存 在 が そ れ に よ って た が い に助 け あ っ て い る 内 密 の 対 応 関 係 を み と め る」(rエ ミー ル 』 (中)、139∼140頁)。 そ して この 宇 宙 は規 則 正 しい 、 一 様 な不 変 の 法 則 に 支 配 さ れ て運 動 し て お り、 位 置 的 自然 の 「天 上 」 の 区 分 で 見 た天 体 の 運 行 は、 実 は この 結 果 で あ る こ とを知 る。 ま た天 体 は 生 命 の な い 物 体 な の で 、 時 計 の運 動 が 自発 的 な 運 動 で な い よ うに 、 「な ん らか の 意 志 が 宇 宙 を 動 か し、 自然 に 生 命 を あ た えて い る もの と信 じる」(『エ ミー ル 』(中)、136頁)。 そ して 「地 球 が廻 って い る な ら、 そ れ を 回 転 さ せ て い る者 の 手 が感 じ られ る」(『エ ミー ル 』 (中)、135頁)。 また これ ら が一 定 の 法 則 に従 って 動 い て い る こ と か ら 「あ る英 知 」、 「能 動 的 な 、 もの を考 え る存 在 者 」 が は っ き り感 じ ら れ る。 宇 宙 の 秩 序 は 「至 高 の 英 知 」(Une supr6meintelligence-0.C.,t.IV,P.579.)の 存 在 を 示 して お り、 「宇 宙 を 動 か し、 万 物 に 秩 序 を あ た え て い る存 在 者 … … を わ た しは神 と呼 ぶ 」(『エ ミー ル 』(中)、143頁)と して い る 。 こ こで は、 形 而 下 的 な機 械 論 的 宇 宙 観 が 、形 而 上 的 な,神 の宇 宙 論 的 存 在 証 明 を生 み 出 して い る こ と、 即 ち ル ソー の 自然 界 の 物 理 的 な認 識 が 、 自然 宗 教 とい う抽 象観 念 を生 じ させ た こ とが うか が わ れ よ う。 実 は この 「あ る英 知 」(Uneintelligence)の 観 念 は 、 『エ ミー ル 』 に先 立 つ 十 数 年 前 に書 か れ た 「化 学 論 」 に あ らわ れ て い る。 ル ソー に と って の全 体 的 自然 、 即 ち 世 界 を構 成 す る各 部 分 が お互 い に助 け 合 って い る 内 密 の 対 応 関係 を 持 つ 自然 の も う一 つ の姿 が 、 彼 の生 態 系 の認 識 で あ ろ う。 こ の点 は す で に平 岡 昇 に よ り、『不 平 等 論 』の翻 訳 、 解 説 に 関 連 して少 な くと も二 度 に わ た って 指 摘 さ れ て い る(16) が 、『不 平 等 論 』 に 先 立 つ 約10年 前 の 「化 学 論 」 の 草 稿(1745年 ∼1747年)の 中 で も述 べ ら れ て い る(17)。彼 は 、 水 分 が 太 陽 熱 で 蒸 気 と な っ て 上 昇 し、 雨 に な つて 緑 を蘇 生 さ せ 、 土 壌 が 全 植 物 の 必 要 物 を根 に供 給 した り、大 気 か ら必 要 な糧 を受 け 取 る こ と、 ま た植 物 は 動 物 に 栄 養 を供 給 す るが 動 物 の排 泄 物 は め ぐ りまわ っ て植 物 を通 じて 土 壌 を 豊 か にす る こ と な ど 、 無 機 物 と有 機 物 また は有 機 物 問 の 相 互 依 存 関 係 を指 摘 して い る。 ル ソー は これ らを 「一 つ の す ば ら しい経 済(une6conomieadmirable)」 と か 「循 環(Circulation)」 、「思慮 深 い 交 互 継 起(prudentsAlternatives)」 な ど とい う、 い わ ば生 態 学 的 意 味 を持 つ 言 辞 を ま じえ な が ら説 明 し、.これ らの 働 きが 自然 をた えず 新 し く生 まれ 変 らせ て い る と して 、 これ に 気 候 、 寒 熱 、 乾 湿 の程 度 な どが 外 部 的 条 件 と して か か わ る と分 析 して い る。 ま た 彼 は これ らの 説 明 に 入 る少 し前 に 、 「万 物 の 能 動 的 原 理 」 は 、t「一 つ の 知 的 存 在(UnEtreintelligent)」 で 、

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この 知 性 は 賢 明 に も 「自然 の 中 に け して 否認 しえ な い 一 般 的 な諸 法 則 を 確 立 し、世 界 と そ こ に 含 ま れ るい っ さ い の も の の 維 持 を 十 分 満 た す だ け の結 果 を も た ら した 」(A.J.J.R,tome 12,1918-1919,P.46)と 述 べ て い る。 そ の た め 、 文 脈 上 は 、 「そ こ に含 ま れ る い っ さ い の も の」 に 生態 的 自然 も含 まれ る と考 え て よ い もの と思 わ れ る。 ま た ル ソー は 、前 出 の リス ボ ソの大 地 震 に つ い て の ヴ ォル テー ル の意 見 に反 対 す る手 紙 の 中 で 厂宇 宙 の 体 系 に お い て 、 人 類 の保 存 の た め に は 、 人 間 と動 物 と植 物 との あ い だ に物 質 の 循 環 が存 在 す る こ とが必 要 で あ る な ら、 そ の 場 合 に は 、 一 個 人 の 特 殊 な 不幸 は 全 体 の幸 福 に 寄 与 しま す。 私 が死 ぬ 、 す る と私 は蛆 虫 に食 べ られ る。 だ が 私 の 子 供 た ち や 兄 弟 は 、私 が 生 きて き た よ う に生 きて い くだ ろ う。」(前 出 『白水 社 全 集 』 第5巻 、22頁)と 言 って い る。 こ こで は 厂化 学 論 」 に見 る よ う なル ソー の 「循 環 」 と い う生態 学 的 な 知 見 が 、 ヴ ォル テ ー ル へ の 反 論 の一 つ の 材 料 に な って い る。 これ を 前 述 した 、 ル ソー が 自然 界 の 事 象 の 中 に 自説 を補 強 す る材 料 を 求 め る例 の 一 つ に かぞ え る こ と もで き よ う。 ち なみ に 、 今 日 「土 地 倫 理 」 の 主 張 な どで 著 名 な アル ド ・レオ ポル ドは 「土 地 は … 土 、 植 物 、 動 物 と い う回 路 を巡 るエ ネル ギ ー の源 泉 で あ る。 … …死 と腐 朽 に よ っ エ ネ ル ギ ー は ま た 土 に還 る(18)」 と述 べ て い る。 な お 、 イ ギ リスの 自然 観 の 変 遷 を研 究 した 、 キ ー ス ・ トマ ス(KeithThomas)は 、 こ う した 「自然 の バ ラ ソ ス と い う近 代 的 観 念 は 、 科 学 的 根拠 が あ た え られ る以 前 に は 、 神 学 的 根 拠 に依 拠 して い た … 生 態 学 的 連 鎖 の概 念 に先 立 ち 、 そ の 基 礎 とな っ た の は、 神 の デ ザ イ ソの 完 全 性 と い う信 念 で あ り… … 自然 保 護 論 者 の 強 力 な 主 張 が こめ ら れ て い た 」(山 内 昶 監 訳 『人 間 と 自然 界 近 代 イ ギ リス に お け る 自然 観 の 変 遷 』 法 政 大 学 出版 局 、1997年 一 以 下 『自 然 界 』。419∼420頁)と 述 べ て い る。 この 「「存 在 の連 鎖 」 は ライ プ ニ ッ ツ を は じめ 、 当 時 流 行 した 考 え 方 で 、 生 物 世 界 か ら人 間 世 界 ま で の す べ て の 存 在 を一 つ の 連 鎖 とみ なす 」(前 出 『白水 社 全 集 』 第5巻 、34頁 、 浜 名 優 美 訳 注(14))と の こ とで あ る。 ル ソー も ポ ー プ の 詩 を紹 介 し 「そ れ ぞ れ の 種 が、 与 え られ て い る優 越 性 と完 全 性 の程 度 に応 じて 、 そ の位 置 を 占め て い る 、 あ らゆ る存 在 か ら構 成 され る連 鎖 が あ る」(原 好 男訳 「書 簡 集 」(上)、 『白 水 社 全 集 』 第13巻 、257頁)旨 を 解 説 して い る。 彼 は ま た 「人 間 よ 、 … 自然 が万 物 の 鎖(la chainedes6tres)の な か で きみ に あ た え て い る地 位 に と ど ま るの だ 」(『エ ミー ル 』(上)、 111頁 、0.C.,tIV,P.308)と も言 っ て い る。 この 「万 物 の 連 鎖 」 の 観 念 は 、 ル ソー の 生 態 学 的 知 見 の 獲 得 に一 つ の 刺 激 と な った の で あ ろ うか 。 以 上 、 ル ソ ー の全 体 的 自然 に は 、 そ れ ぞ れ が集 合 的 自然 と もい え る、 動 物 界 、 植 物 界 、鉱 物 界 の 三 界 の 階 調 が あ り、 自然 界 の物 理 的 法 則 、 動 植 物 な ど生 物 問 の'協同 、無 機 物 ・有 機 物 間 の 生 態 的循 環 の様 相 な どが 含 ま れ るば か りか 、 これ らの秩 序 の 創 造 者=神 の 観 念 が あ る。 また ル ソー は後 述 の よ うに 、 「万 有 の 広大 無 辺 」(1'immensit6des6tres一 『告 白』 上 、.232頁 。 0.C.,t.1,P.162)と い う表 現 も使 って い る。 な お 、 上 述 の 「自然 宗 教 」Ga.Religionnaturelle-0.C.,t,IV,P.607)は 、 自然 現 象 や天 文 学 、 博 物 学 、 物 理 学 、地 理 学 、 化 学 な ど と と も に、 自然 宗 教 教 育 と して エ ミマ ル に対 す る ヵ リキ ュ ラ ム の一 つ を構 成 して い る。 以 上 、 態 様 的 自然 の 内容 の 一 部 を例 示 して み た 。 ル ソー の 次 の 一 文 に は、 彼 が個 物 的 自然 か ら 集 合 的 自然 へ 、 さ らに全 体 的 自然 へ と、態 様 的 自然 を 連 続 的 に 見透 して い る様 子 が認 め られ よ う。

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草 か ら草 や 、 植 物 か ら植 物 へ と さ ま よ い歩 い て 、 そ れ らを くらべ 、 そ の さ ま ざ まの 特 徴 を くら べ て み て 、 そ の 異 同 に 注 意 を は らい 、 こ う して植 物 組 織 を観 察 して 、 これ らの生 け る器 械 の動 き と営 み を 追 及 し、 と きに は そ の 一 般 的 法 則 や 、 さ ま ざ ま の構 造 の原 因 と 目的 の探 求 に 成 功 し、 そ うい う楽 しみ の い っ さい を あた え て くれ る者 に た い す る感 謝 に み ち た 驚 嘆 か ら生 まれ る魅 惑 に浸 るQ(『 夢 想 』119頁) (4)視 界 の 大 要 上 記 の通 り、 ル ソー に お け る 自然 界 認 識 の一 端 を二 軸 と各 三 区分 の も と に一 見 した 。 両 軸 を交 叉 させ て 、 主 要 な項 目 と例 示 事 象 を簡 単 に 示 した もの が、 次 の 図で あ る。 図 自然界 に対 する ル ソLの 視界 の広 が り (骨子) 態 様 的 自 然 位 置 的 自 然 注 隅 の 四 つ の □ は 、 ル ソー の 記 号 的 自 然 を 示 す 。

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ル ソー は 「い わ ば 万 有 の広 大 無 辺 の 中 に わ た しを 投 げ こん で … … 存 在 す る もの を 結 合 、 選 択 さ せ 、 思 い の ま ま に 自 分 に した が わ せ る の で あ る 。 わ た し は 全 自 然 を 自 由 に 処 理 す る(jedis poseenmaitredelanatureenti6r6)。 」(『告 白』 上 、232頁 一〇.C.,t.1,P.162)と 述 べ た。 ま た 鹽「誰 が あ え て 自然 に つ い て 明 確 な限 界 を つ け 、 人 間 は そ こ まで は行 き得 る が 、 そ れ 以 上 は行 き得 な い と言 え る の か ね 。」(『新 エ ロイ ー ズ』(一)、16頁)と も主 張 して い る。 彼 の 自然 界 は 、 彼 の 魂 の活 動 の 反 映 で あ り、 そ の 意 味 で は 、 ル ソー に あ って 自然 の諸 相 を語 る こと は 、 自己 を語 る 「告 白」 の 一 つ の 表 現 形 式 に な って い る とい え よ う。 彼 は 「視 覚 は す べ て の 感 覚 の な か で 精 神 の判 断 と も っ と も切 りは な せ な い も の だ か ら、 見 る こ と を学 ぶ に は長 い 時 が か か る」(『エ ミー ル 』上 、240頁)と 述 べ 、「い っそ う正 確 な 目、 し っか り した 手 、 動 物 、 植 物 、 自然 の物 体 の あ い だ に 見 られ る大 き さや 形 の正 しい割 り合 い に つ い て の 知 識 、 そ して 遠 近 の 効 果 に つ い て の い っそ う鐓 感 な経 験 」(『エ ミー ル』 上 、242頁)の 習 得 を奨 め て い る。 ル ソー の 自然 界 を見 る視 覚 とは ま さ に こ の よ うな もの で あ る こと が知 られ よ う。 R。 グ リム ズ レイ は 「ル ソー が そ の 中 に没 頭 す る こ とを 望 ん だ 光 景 と は 、彼 の 個 性 、 感 覚 、 感 動 、 宗 教 的 熱 望 が 要 求 す るす べ て を 満 足 させ る こ と が で き る もの で な けれ ば な ら な か っ た。 そ れ ゆ え 彼 は、 お び た だ し さ、 多 様 性 ・豊 か さ、 コ ソ トラス トが は っ き り して い る土 地 に身 を置 く こ と を 好 ん だ 」(A.J.J.R,tome39,1972年 ∼77年 、P.55。)と 述 べ て い る。 ル ソー 自身 も 『新 エ ロ イ ー ズ』 の 主 人 公 が住 む場 所 の 条 件 の 一 つ と して 「地 形 の 対 照 、 ゆた かで 変 化 に とむ 風 景 、感 覚 を魅 し、 心 情 を ゆ り う こか し、 魂 を た か め る秀 麗 荘 厳 な全 景 」(『告 白』 中 、237頁)を あ げ て い る 。 ま た グ リ ム ズ レイ は 「ル ソー が 風 景 を か く も魅 力 的 に 見 るの は 、 自然 が 無 垢 と純 粋 の 観 念 (1'idるede1'innocenceetdelapuretの を示 唆 す る か らで あ る。 彼 は常 に無 垢 の 魅 力 に 魅 惑 され て い た 」(A.J.J.R,tome39,1972年 ∼77年.P.50)と も言 って い る。 ル ソー の 自然 界 描 写 に は この ほ か に も人 跡 の見 え な い 断 崖 の 下 に工 場 が あ るな ど 「野 生 の 自然 と人 間 の 技 術 との … 混 じ り合 い 」(『夢 想 』、123頁)と い う 自然 と人 為 の 境 界 的 空 間 や 「三 界 の 階 調 」 な ど、 異 種 の 調 和 、 そ れ に 迫 害 に疲 れ た ル ソー を や さ し く包 み こむ 厂万 物 の母 の ふ と ころ 」 (『夢 想 』、115頁)、 「な に よ り も安 らか な静 け さ」(『夢 想 』、126頁)な どが 登 場 す る。 これ ま で の 管 見 の範 囲 で 言 え ば 、 ル ソー は 、 少 な くと も前 出 の 荒 らぶ る 自然 と後 述 の 幾 何 学 式 デ ザ イ ンの 庭 園 の よ うな人 工 化 され た 自然 の 二 つ を の ぞ く、 自然 界 の 万 相 を愛 した とい え るの で は な か ろ うか。

II近

代 初 頭 の イ ギ リス にお け る 自然観 とル ソー の 自然 界

以 上 、 ル ソー に お け る 自然 界 の 諸 様 相 を 一 見 した 。 と こ ろで ル ソー と ほぼ 同時 代 の イ ギ リス の 自然 観 は どん な もの で あ っ た ろ うか。 これ は 仏 ・英 の 自然観 比 較 、 あ るい は18世 紀 ヨー ロ ッパ に お け る 自然 界 と人 間 と い う大 き な テ ー マ に な り、 到 底 この 小 稿 の 残 りの 紙 数 で カ バ ー で き る と こ ろ で は な い 。 今 回 は と りあ え ず 、 この比 較 が ど ん な 結 果 を 示 す か を例 示 的 に確 め るた め 、 イ ギ リ ス の 自然 観 の 変 化 を大 量 の 史 料 を博 捜 して 探 求 した 一 書 に よ り暼 見 して み た い。 そ れ は 前 章 で も引 用 した キ ー ス ・ トマ スのr人 間 と 自然 界 』 で あ る。

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1山

岳観

「頂 上 か らの 眺 め を 楽 しむ と い う こ と だ け の た め に 、 山 と い う もの に 登 っ た 最 初 の 人(19)」 は ペ トラル カ(1304∼1374)だ と の こ とで あ る が、 あ る研 究 で は ヨー ロ ッパ に お け る山 岳 観 の変 化 を 「神 の 住 ま う場 所 、 地球 の 滑 らか な体 にで き た醜 い い ぼ 、崇 高 な 自然 、風 景 、 保 養 地 及 び観 光 地(20)」 と要 約 して い る。 いぼ トマ ス に よれ ば17世 紀 中 葉 ま で は 、 お お む ね 山 々 は 「不 毛 で 《醜 い もの 》、《疣 》、《お で き》、 《化物 じみ た突 起 物 》、《大 地 の屑 》、《自然 の恥 部 》 と忌 み嫌 わ れて きた」(圈 点 原 著 者 一『自然 界 』、 391頁)。 しか し1760年 代 で の エ デ ィ ソバ ラ の あ る講 演 で は 「精 神 を高 揚 させ 崇 高 な気 持 ち に昇 華 させ る 自然 の光 景 」 と して 「雪 を 頂 く山 、 静 寂 に包 まれ た 湖 、 年 ふ る森 林 、 岩 に くだ け る滝 」 (『自然 界 』、391頁)が あげ られ る な ど、18世 紀 中葉 まで の 「一 世 紀 か そ こい らで 最 高 の 美 的 賞 讚 を え る対 象 に まで 変 貌 を と げ た 」(『自然 界 』、391頁)。 この 劇 的 変 化 の 背 景 に は 、 山 岳 が 、 草 な どつ ね に有 益 な もの を 人 間 や 獣 に提 供 す る と い う有 用 性 の 認 識(1621年)や 「人 間 の 目 に悦 ば し い 多 様 性 」 を 持 つ とい う主 張(1635年)、 そ れ に 神 の 被 造 物 の 一 つ と して の 山 に つ い て 「神 の デ ザ イ ソの正 当 化 」 を図 る神 学 者 の弁 護 な どが しだ い に 力 を増 して い き、1709年 に は理 神 論 者 の シ ャ フ ッベ リは 「野 生 こそ が 人 間 に喜 び を あた えて くれ る。 わ れ わ れ は 自然 との み 共 存 して い る の で あ って 、 そ の も っ と も奥 深 い 内 側 か ら人 間 は 自然 を 見 て い る」 と語 る に 至 っ た(『 自然 界 』、392 頁)。 そ して 「1760年代 に は 心 と きめ く景 勝 を 求 め て 湖 沼 地 方 、 ワ ィ川 渓 谷 … ス コ ッ トラ ソ ド高 原 へ旅 行 者 が 押 し寄 せ て き た」(r自 然 界 』、392頁)。 さ らに18世 紀 後 半 に な る と 自然 は 「精 神 的 な治 癒 力 も兼 備 して い た 」 の で 、 山 は 「自然 美 が最 高 の か た ち で 現 われ 、神 の 至 高 性 を 想 起 させ る場 」 と な り、 「野 生 の 景 観 に な か ば 宗 教 的 に 心 酔 す る この 現 象 は 、 全 ヨー ロ ッパ的 な … 現 象 」 (『自然 界 』、394頁)と な って い っ た との こ とで あ る。 トマ ス は 、 こ う した 現 象 の 予 言 者 の 一 人 と して ル ソー を あ げ て い る。 な お 、 トマ ス に よれ ば 、 こ う した 山 岳 熱 の 高 揚 の 一 因 と して 、 道 路 や ウマ 、 地 図、 標 識 の 整 備 、 大 型 四輪 馬 車 の 定 期 便 開 設 な ど の交 通 、 観 光 面 の発 展 の ほ か 、 豊 か な 中産 階 級 が 休 日登 山 で ほ ん の少 しの 危 険 を味 う魅 力 な ど が あ げ られ る と の こ とで あ る。 若 きル ソー の ア ル プ ス越 え は1728年 だ が 、 「フ ラ ソス文 学 の 中 に 至 高 の幸 福 の 場Gelieudelasupr6mef61icit6)と して の 山 を導 入 した 最 初 の 小 説(21)」 で あ る 『新 エ ロイ ー ズ』 は 、「ア ル プ ス の 麓 の 一 小 都 会 に 住 む 二 人 の 恋 人 の手 紙 」 と い う タイ トル を持 っ て 、1760年 か ら1761年 に か け て ロ ソ ドソや パ リで 発 売 され た。 この書 が 大 き な人 気 を 得 た 背 景 の一 つ に は、 以 上 の よ うな 、醜 か ら美 ・聖 へ とい う山岳 観 の変 化 の胎 動 が あ り、'ルソー は 結 果 的 に は この 変 化 を さ らに 加 速 させ た もの と も考 え られ よ う。

2庭

園観

ル ソー の先 行 研 究 の 一 つ は 、 『新 エ ロ イ ー ズ』 に は 当 時 の 「ア ク チ ュ ア リテ ィ(引 用 者 注 「生 活 に切 実 な テー マ」)が 大 幅 に取 り上 げ られ て お り」 そ の 一 つ が 「庭 園論(書 簡11)」 で あ る と し て い る(22)。ル ソー は この 書 簡 で 庭 園 の幾 何 学 式 設 計 に反 対 して 「自然 は絶 え間 な く直 角 定 規 や 直 線 定 規 を 用 い る で し ょ うか 」(『新 エ ロ イ ー ズ』(三)、145頁)と 言 って い る。

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トマ ス に よ る と、 こ う した 庭 園 の規 格 化 は 、 イ ギ リス で は16世 紀 か ら17世 紀 に か け て の 「土 地 の 開 墾 が文 明 の 象 徴 」(『自然 界 』、385頁)と な り、 そ れ が耕 地 や 果 樹 園 の定 形 栽 培 に及 ん だ と の こ と で あ る。 しか しや が て 画 一 性 へ の反 肇 が芽 生 え 、厂18世紀 初 頭 以 後 、 風 景 式 庭 園 の 様 式 は 自 然 的 形 態 一 直線 よ り も曲線 を 、 そ して1740年 代 に な る と 、 開 墾 と野 生 を 明確 に 対 立 させ る よ り も 周 囲 の 田園 に微 妙 に と け こま せ よ う」 と し、 イ ギ リス は 「この 《自然 様 式 》 で 有 名 に な り、 風 景 式 庭 園 が この 国 の も っ と も顕 著 な 文 化 的 達 成 の一 つ と な った … … 幾 何 学 性 と は反 対 の 不 定 形 性 が そ こで は最 大 の美 的 魅 力 を作 り出 した」(『自然 界 』、396頁)と の こ とで あ る。 トマ スは ま た庭 園 の脱 画 一 化 の 一 因 と して 、 「時 代 主潮 に共 感 で き な い 一 種 の疎 外 感 な ど、 を あ げ る こ とが で き る だ ろ う… … 野 生 の 自然 の 索 引 力 は 、反 社 会 的 情 感 の 本 質 的 な源 泉 と して つね に認 め られ る」(『自 然 界 』、404頁)と 述 べ 、 これ に属 す る者 と して ル ソー の 名 を あ げ て い る。 ま た プ ロテ ス タ ソ トの 聖 職 者 た ち な どが 「定 期 的 な 独居 こそ精 神 に望 ま しい 状:態だ と …推 奨 しは じめ …17世 紀 中 葉 以 後 、 この孤 独 へ の 欲 求 は 、 詩 的 主 題 と して しだ い に顕 著 に な り」(『自然 界 』404頁)、18世 紀 後 半 の ル ソー の著 作 な どの翻 訳 に よ って 「大 流行 し… … ヴ ィ ク トリア女 王 が 自然 風 景 に深 く感 動 した と き、 そ の最 大 の 特 色 と して つ ね に 孤 独 な場 所(圏 点 原 著 者)を あ げ た」(『自然 界 』、404頁)と の こ と で あ る。 また 彼 に よれ ば 、 イ ギ リス の実 業 家 の 中 に は 景 観 を破 壊 す る開 発 に よ っ て得 た利 益 で 、 風 景 式 庭 園 や 緑 地 帯 な どを作 る者 が居 た が 、 そ れ は彼 ら に と って 「私 的 感 性 を楽 しま せ る… …人 工 の オ ア シ スで あ り、理 想世 界 の 覗 き穴 で … 一 般 社 会 の 基 本 的 諸 価 値 との 根 本 的 対 立 を 強 く明示 して くれ た」(『自然 界 』、433頁)も の と な った 。 こ う した18世 紀 初 頭 以後 の イ ギ リス に お け る庭 園 の脱 幾 何 学 式 設 計 や 自然 界 の 中 へ孤 独 な 場 所 を 求 め る欲 求 は 、 同時 に ル ソー の テ ー マ で も あ る。 『新 エ ロ イ ー ズ』 に お け る 「自然 の 一 切 の 魅 力 が、 封 じ込 ま れ て い る」 「孤 独 な場 所 」 の 「エ リゼ」 は そ の 具 体 的 イ メー ジ を如 実 に伝 え て い る。 そ れ は 「人 工 の オ ア シス 」 と もい え る が 、 そ の 設 計 は 人 工 の 跡 が全 く見 え な い よ うに 完 全 に 自然 化 す る こ とが 人 間 の手 に よ って 可 能 で あ るが 如 くに 描 か れ て い る。 この 場 所 は 厂理 想 社 会 の 覗 き穴 」 と も考 え られ 、文 明社 会 の 中 で も人 間 は 本 来 の 自然 善 性 を取 り戻 す こ と がで き る とい う 『エ ミー ル 』 や 『社 会 契 約 論 』 の テ ー マ を、人 為 を尽 す こ と に よ って か え って 「自然 の 快 い 姿 を 見 る」 こと が 可 能 な庭 園 と い う形 で 自然 界 の 中 に 示 そ う と した も の と も思 わ れ よ う。 ル ソー は こ こで 、 完 全 な 自然 は完 全 な人 為 に よ って 作 り得 る と い うパ ラ ド ッ クス へ の 自信 を示 唆 して い る よ うで も あ る。'

3動

物観

トマ ス は、 西 洋 は 「動 物 資 源 … に例 外 的 に高 度 に 依 存 して い る点 で 、 …早 くか ら特 異 な社 会 」 (『自然 界 』、26頁)で あ っ た。 また17世 紀 後 半 の イ ギ リス で は 、 人 間 の、 他 の 生 物 に対 す る無 比 性 を説 く声 が高 く 「人 間 と獣 との あい だ には 完 全 に 質 的 な差 異 が あ?た 」(『自焦 界 』、,41頁)。 最 下 級 の 労 働 者 は 「家 畜 に君 臨 し… 自分 が 社 会 階 層 の 最 底 辺 に い るの で は な い と安 心 させ … て くれ た点 で 農 場 の 動 物 は 、 一 種 、 最 下 等 の 階 級 に ほ か な らな か った 」(『自然 界 』、65頁)と 言 っ て い る。 動 物 へ の残 虐 行 為 は ヨー ロ ッパ の 各 地 で 見 られ 、.その 中 で 有 名 だ った の が 「ほ か な らぬ イ ギ リス 人 自身 」 で あ っ た。 一 方 動 物 へ の 残 虐 行 為 は悪 だ とす る 考 え 方 は プ ル タル コ スの よ うな 古 典 古 代 の 著 作 家 以 来 あ り、「神 の被 造 物 を虐 待 す る人 間 に は神 が 復 讐 す る だ ろ う」(『自然 界 』、225

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頁 〉 との 見 方 も宗 教 界 か ら起 きて い た。 また 動 物 に も感 性 や 人 間 よ りは劣 る が理 性 を持 つ と い う 考 え 方 も勢 い を増 して きた 結 果 、 「動 物 に対 して 不 必 要 な苦 痛 を あ た え、 暴 虐 を 加 え る資 格 は 、 人 間 に あ た え られ て い な い 」(『 自然 界 』、226頁)と い う考 え方 が 一 定 の 勢 力 を持 つ に 至 った 。 1745年 に は 「「動 物 が 、 人 間 の 卑 しい 奴 僕 と な るた め に 作 られ た な ど と は考 え ず 、 わ れ わ れ の 同 類 と して 尊 敬 と敬 意 を払 うべ きだ 」 と力説 」 す る人 た ち が あ らわ れ た が 、 す で に そ れ 以 前 の 「17 世 紀 後 半 に な る と人 間 が食 用 と して動 物 を 殺 す 権 利 は ひ ろ く再 検 討 を迫 られ … ピ ュ タ ゴ ラ ス の 肉 食 に た い す る道 義 的 非 難 は … 翻 訳 の お か げ で 広 く流 布 し は じめ て い た」(『自然 界 』、440頁 ∼441 頁)。 そ して18世 紀 末 の ロマ ソ主 義 の 時 代 に は 「動 物 は 、 た ん な る 《獣 》、《野 獣 》 か ら、 《仲 問 の 獣 》、《必 死 の仲 間 》、《同 類 》 を へて 、 最 後 に 《友 》、 … …《兄 弟 》 へ と昇格 して い っ た」(『自然 界 』、 258頁)と 、 トマ ス は 言 って い る。 一 方 ル ソー は す で に拙 稿(23)で も指 摘 した よ うに、 動 物 に お け る 感 覚 、 憐 れ み の感 情 、 観 念 と そ れ を 組 み 合 わせ る能 力 の 存 在 を主 張 し 「人 間 は この 点 で は 禽 獣 と量 の上 で 違 い が あ るに す ぎ な い。」(『不平 等 論 』、52頁)と 述 べ て い る。 ま た感 性 の 存 在 が 動 物 と人 間 に共 通 の もの な の で 、 動 物 は 人 間 に よ って 「無 用 に 虐 待 され な い とい う権 利 」(『不 平 等 論 』、32頁)を 持 つ は ず で あ る と して い る。 また彼 は 「エ ミー ル は… … 二 匹 の 犬 を け しか け て 噛 み 合 い を させ る よ うな こと を … け っ して した こ と が な い。 … こ うい う平 和 の 精 神 は、 … … 他 人 を 支 配 す る こ とや 他 人 の 不 幸 の うち に 喜 び を も とめ る よ うな こ と を させ な か った 教 育 の結 果 だ」(『エ ミー ル』(中)、89頁)と 言 い 、 エ ミー ル へ の 教 育 効 果 が彼 の 動 物 の扱 い方 に まで 及 ん で い る こ と を述 べ て い る。 ま た トマ ス が述 べ た ピ ュ タ ゴ ラス の 肉食 批 判 も 『エ ミー ル 』 の 中 で プル タル コ スか らの 引 用 とい う形 で 示 して い る。 この 中 には 、 「きみ は まず 、 動 物 を殺 し、 つ い で そ れ を食 い、 い わ ば 二 度 そ の動 物 を 殺 して い る」 (『エ ミー ル』(上)、266頁)と の一 節 も含 まれ て い る。 ル ソー の こ う した動 物 観 は 、 お お む ね ト マ ス が 説 く、18世 紀 の イ ギ リス の新 しい 動 物 観 と 同 じ トー ソ を持 っ て お り、 近 代 初 頭 に お け る動 物 に 対 す る新 しい感 性 を代 表 す る一 つ と考 えて よ か ろ う。 な お トマ ス は17世 紀 末 の 科 学 者 た ち は 「動 物 の階 層 性 」 を論 じ、一 般 に は 自然 界 全 体 が 天 使 一 人 間 一 動 物 な どの 「社 会 階 層 的 等 級 で秩 序 づ け られ て い る 、 と… 臆 断 さ れ て い た 。」 ま た 、 こ の 厂自然 種 の階 層 性 は 人 間 の 社 会 的 不 平 等 を 正 当 化 す るた め に ひ き あ い に だ され た 」(『自然 界 』、 80∼81頁)と 述 べ て い る。 ル ソー は 、 前 出 の二 匹 の 犬 の話 に つづ け て 「青 年 を冷 酷 に し、 感 覚 を もつ 生 き物 が苦 しん で い るの を 見 て 喜 ぶ よ うな こ と を させ るの は 、 一 種 の 虚 栄 心(vanit6)が 、 自分 は 利 巧(sagesse)だ か ら、 あ るい は え ら い(sup6riorit6)か ら、 そ う い う苦 しみ か ら は ま ぬ が れ て い る と考 え させ る か らだ 。」(圏 点 は 引 用 者 に よ る。 『エ ミー ル』(中)、89頁 、0.C.,t. ハ1,P.545)と 言 って い る。 圏 点 を つ け た 一 節 に は 、 人 間 の 社 会 的 不 平 等 の正 当 化 に つ な が る 自 然 種 の 階 層 性 の意 識 を 人 間 の 虚 栄 心 の 作 用 に帰 そ う とす るル ソー の考 え 方 が あ らわ れ て い る よ う に も思 わ れ る。

4植

物観、森林観な ど

トマ ス の語 る と こ ろ に よ る と、 「17世紀 後 半 ま で に 植 物 学 は 医 学 の た ん な る一 部 門 で は な くな ろ う と し、植 物 は 今 や そ れ 自体 の た め に しだ い に 研 究 さ れ る よ うに な っ て き た」。 植 物 を 厂可 食 性 、審 美 性 、 有 用 性 、 道 義 性 … … か ら判 断 す るの で は な く… 植 物 の 内 在 的 な特 質 … … 花 や 種:子部

(15)

の配 置 や 形 態 に も っぱ ら注 意 が 向 け られ た 」、 「新 しい知 覚 様 式 」 が試 み られ た が 、 これ らは 「植 物 の理 解 の うえで 革 命 的 な こ とで あ った 」(『自然 界 』、89頁)。 ま た16世 紀 か ら19世 紀 の 間 に花 卉 栽 培 が 「社 会 的 に華 々 し く発 展 し…花 卉 園 芸 が 巨 大 な規 模 に 拡 が って い った … … つ ま り 《園 芸 革 命 》」(『自然 界 』、337頁 ∼338頁)が 起 きた 。 「異 国 の 植 物 栽 培 は 、何 もイ ギ リス に限 らず 、 全 ヨー ロ ッパ 的 な 現 象 だ っ た」(『自然 界 』、342頁)。 そ して 「花 は しば しば 女 性 の 独 壇 場 … 、 専 有 物 視 され … …19世 紀 初 頭 で は 、 と りわ け若 い女 性 に は 植 物 学 が似 つ か わ しい と一 般 にみ な され て い た」 (『自然 界 』、361頁)と の こ と で あ る 。 以 上 の変 化 を ル ソー に引 き付 け て 考 え て み る と 、彼 の 植 物 観 は審 美 的 で あ る と同 時 に 、 内 部構 造 に も 目を 向 け る と い う二 面 性 を持 っ こ と に 気 が つ く。 また 彼 の 厂植 物 学 に つ い て の 手 紙 」 は 、 「ドレ ッセ ー ル夫 人 とそ の 四 才 の娘 … の た め に 勉 強 の手 ほ ど き を す る」 目的 で書 か れ た もの で あ る。 この 著 作 の邦 訳 者 が 「これ は 、博 物 学 、 な か で も植 物 採集 の趣 味 が 市 民 階 級 の 日常 生 活 に浸 透 して い る事 態 を示 す こ と が らで あ る」(高 橋 達 明 訳 。前 出r白 水 社 全 集 』 第12巻 、151頁)と 解 説 して い るの は、 上 記 の 変 化 をふ ま え て の もの で あ ろ う。 ま た森 林 観 に つ い て は 、 野 虫 や 未 開 を 意 味 す る 厂sauvage」 の語 源 のrsilva(24)」、 つ ま り森林 はrl500年 か ら1700年 の あ い だ に …樹 林 が す さ ま じ:い勢 い で 減 少 した」(『自然 界 』、292頁)が 、 しか し減 少 した森 林 地 帯 は 「人 間 の脅 威 で は な く、 そ の反 対 に喜 び と霊 感 の 貴 重 な源 泉 」 に な り、 「1713年 に … 「森 林 愛 は ど うや らわ れ わ れ の 本 性 に植 え つ け られ た 感 情 ら しい 」 と述 べ 」 る人 も あ ら わ れ た 。 「18世紀 後 半 に は … … 繊 細 な 感 性 の 人 の 多 くは 、都 市 の 発 展 、丁森 林 の破 壊 、 農 業 の 発 展 … … を み て も 、 も は や 喜 び とは 感 じ ら れ な くな って い た 」(『自 然 界 、319頁 、430頁)し 、 厂孤 独 と瞑 想 の場 と して の森 林 観 は 、 自然 の な か に 宗 教 的 な力 が は っ き り と秘 め られ て い る とい う、新 しい考 え方 に よ って さ らに 強 化 され た 」(『自然 界 』、325頁)。 以 上 の 森 林 観 の 変 容 か らル ソー を 見 る と彼 は 『不 平 等 論 』 で 農 業 の 発 展 に よ る森 林 の 破 壊 を批 判 した こ とで 、18世 紀 ヨー ロ ッパ の 「繊 細 な感 性 の人 」 の 一 人 で もあ り、 ま た サ ソ=ジ ェル マ ソ の 森 の 中 で ρ 「瞑 想 」(m6ditations一 『告 白』 中 、175頁 、0 .C.L,P.389)に よ り 『不 平 等 論 』 の テ ー マ の 霊 感 を得 た こ と は、18世 紀 の 森 林 観 の 変 化 の 中 で の 一 つ の 出 来 事 と して も理 解 で きる の で は な か ろ うか。 な お トマ ス は 、 「田園 に た い す る郷 愁 の 本 質 的 な要 因 と して 、 自然 物 一 木 や 花 … を幼 年 時 代 の 貴 重 な想 い 出 に結 び つ け … … 自然 物 は 、 … … よ く幼 年 時 代 の 記 憶 を即 座 に生 き生 き と呼 び さ ま し て くれ るの だ が、 そ れ とい う の も、 自然 物 は 、 人 間 と ち が って 、 個 物 と して で は な く類 と して 感 知 され るか ら に ほ か な らな い 。 た と え ば 、1本 の サ ク ラ ソ ウを 見 る と 、子 供 の ころ み た 同 じサ ク ラ ソ ウをす ぐ さ ま想 起 で き るだ ろ う」 と書 い た あ る随 筆(1814年)を 引 用 して い る(『 自然 界 』、 382頁)。 ル ソー も また 幼 少 期 の 田 園 生 活 で 「田 園 を 愛 す る気 持 は た い へ ん 強 く、 これ は終 生 消 え な か っ た」(『告 白』 上 、22頁)と 言 って い る。 また 前 述 の よ うに 散 歩 中 偶 然 見 つ け た 「ッル ニ チ ニ チ草 」 が一 瞬 の うち に若 き 日の ヴ ァ ラ ソ ス夫 人 との 幸 福 の記 憶 を 「即 座 に生 々 し く呼 び起 し」 て くれ た の は 、 この 「類 」 と して の 作 用 が働 い た か ら な の で あ ろ うか 。 上 記 の トマ スの 引 用 文 は 、 ル ソー の言 説 の 解 釈 に 示 唆 的 な もの を 含 んで い る よ うに思 わ れ る。 以 上 トマ ス に 全 面 的 に依 拠 して 、17∼18世 紀 の イ ギ リス に お け る 自然 観 の 変 化 と ル ソー に お け る 自然 界 の 諸 相 を 例 示 的 に 比較 して み た。 これ らの結 果 か ら言 え る こ と は 、 さ らに広 く類 書 を 吟 味 して17・18世 紀 の ヨー ロ ッパ に お け る 自然 界 に対 す る考 え 方 の 変遷 の 中 にル ソー を位 置 づ けて 、

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そ の関 連 を検 討 し、 ル ソー が そ の 変 遷 の 中 か ら何 を 得 て 、何 を与 え た の か を さ らに 明 らか に す る 必 要 が感 じ られ る と い う こ とで あ る。 これ ま で の管 見 の 範 囲 で は 、 この 点 に つ い て は 上 述 した 「山岳 観 」、「庭 園 観 」 そ れ に 女 性 に よ る植 物 愛 好 の 流 行 との 関 連 が わ ず か に言 及 され て い る 程 度 で あ る と思 わ れ る。 ル ソー に お け る 自然 界 の 見 方 の 独 自性 と そ の社 会 、 政 治 、教 育 思 想 との 関 係 な ど を よ り広 い視 野 か ら と らえ 直 す こ と が 、今 後 の 研 究 課 題 の一 つ に な る もの と思 わ れ る。

III現

代 の 「自然 と 人 間 」 観 と

ル ソ ー一=バ イ オ フ ィ リ ア と トポ フ ィ りア

1バ イ オ フ ィ リ ア と ル ソ ー の 自 然 界 認 識 前 章4の 森 林 観 の と こ ろで 「森 林 愛 は ど うや らわ れ わ れ の本 性 に 植 え つ け られ た 感 情 ら しい」 との 発 言(1713年)を 引用 した 。 社 会 性 昆 虫 の 研 究 な ど か ら 「社 会 生 物 学 」 を提 唱 した 、E.0. ウ ィル ソ ソは 今 日、「人 間 の 本 性 に 関 す る研 究 成 果 は 、 あ る種 の環 境 倫 理 」 に 厂強 く》 か つ 新 し い 支 援 」 を もた ら した と言 って い る。 即 ち 「バ イ オ フ ィ リア(biophilia)と い う… 生 き もの の 多彩 さ に喜 び を感 じて しま う 自然 な 傾 向」 また は 「あ る種 の 自然 環 境 … に魅 力 を感 じて しま う傾 向」 で 、 これ は 「自然 の保 護 ・愛 護 に 、新 た な、深 い理 由 を提 供 」す る「社 会 生 物 学 的 な 概 念(25)」 との こ と で あ る。 また この 概 念 は 「生 命 も し くは 生 命 に似 た過 程 に対 して 関 心 を抱 く内 的 傾 向」 と も定 義 され 、 そ の 意 図 は 、「生 命 に親 しみ 、探 求 す る と い う営 為 は 、精 神 の 発 達 と深 く関 わ る 複 雑 な プ ロセ ス で あ る(26)」 こ とを 示 そ う とす る と ころ に あ る。 この 「バ イ オ フ ィ リア」 と い う言 葉 は 、 現 代 の 環 境 論 で は 「生 物 に対 す る先 天 性 愛 着 」 と邦 訳 され る こ と が あ る6こ の 先 天 的 愛 着 心 は 「人 類 の 精 神 的 ・肉体 的 進 化 の 上 で 重 要 な役 割 を 果 た し … … 入 間 … の知 的 、精神的、 あ るい は美 的 な達成 のため に、多様 な生物 の存在 は不可 欠で ある」 とす る仮 説 で 、「生 物 多 様 性 保 全 の 哲 学 的 基 盤(27)」 に な る もの と 説 明 され て い る。 ウ ィル ソ ソ は これ に よ って 「これ まで む し ろ倫 理 的 な 視 点 か ら語 られ る こ と の多 か った 自然 保 護 の 問 題 を 、 生 物 学 の 視 野 の な か に 取 り込 む こ と に成 功 し… … さ ら に人 は な ぜ 生 物 に魅 かれ る の か … と い った 問題 に まで 、議 論 の 射 程 を 伸 ば して い る(28)」 と評 され て い る。 この 「バ イ オ フ ィ リア」 仮 説 は 、 これ まで 見 た よ う な ル ソー の 上 に 、 よ く適 合 す る との 感 が 免 れ え な い と ころ で あ ろ う。 自然 は 彼 の 「思 索 の も っ と も力強 い バ ネ」 と して そ の知 的 成 長 を助 け た。 また 、 自然 界 の 諸 相 を深 く感 じ、 回 想 し、 想 像 し、 実 利 的 観 点 を 排 して 、 そ の社 会 的 意 味 を も把 握 しよ う とす るル ソー の営 み は 、独 自の 思 想 を 育 て 、 そ の 精 神 的 発 達 と不 可 分 の もの で あ っ た とい え よ うbさ ら に幼 少 時 か ら 自然 美 に親 しん だ 彼 の感 覚 は 、 自然 体 験 が増 す に つ れ て 、 植 物 の 内 部 構 造 の微 妙 な 美 しさ か ら アル プ ス な ど大 自然 の 崇 高 美 まで を深 く感 じ、表 現 す る審 美 的 感 性 を 磨 き上 げ て い った もの と考 え られ る。 また ル ソー は 「数 限 りな い 驚 くべ き光 景 の 多 様 さ、偉 大 さ、 美 し さを ご想 像 くだ さい。 自分 の 周 囲 に は全 く新 しい 対 象 、 見 知 らぬ鳥 や 奇妙 な 未 知 の植 物 しか 見 られ な い喜 び 、 言 わ ば別 の 自然 を観 察 す る喜 び 、新 しい世 界 の中 に あ る喜 び を ご想 艨 く だ さい 。 こ うい う物 の す べ て が見 る者 の 眼 に名 状 しが た い一 つ の混 合 を示 し、 そ の 魅 力 は さ らに 空 気 の 純 粋 さに よ って 増 す の で す 。」(『新 エ ロイ ー ズ』(一)、127頁)と 、 生 物 種 の 多 様 性 が有 す

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