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道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討

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Academic year: 2021

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(1)Title. 道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討. Author(s). 星, 裕; 福岡, 真理子; 梅本, 宏之; 越川, 茂樹. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 9: 165-174. Issue Date. 2019-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10429. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第9号. 自由投稿論文. 道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討 星 裕*1・福岡真理子*2・梅本 宏之*3・越川 茂樹*4. 概 要 本研究は、必修科目「道徳の指導法」における模擬授業の実践後にみられる学生の課題の検討を目 的とした。今回の科目における学生の学びは模擬授業の実施をゴールとし、 「逆向き設計」の3段階 に沿ってデザインされた。 実践の結果、模擬授業実施後の学生は、①展開、②発問、③板書、④教材・教具の4点に関して課 題意識があることが示された。これら4点は、授業について具体的なイメージを持てるようにするた めにさらなる積み重ねが必要という課題を示す一方で、本時のねらいと方法、そして実際に受けた子 供がどうであったのかという部分に目が向くようになった学生の成長も示していたと考えられる。 今後の課題としてねらいを意識した指導を学生ができるようになるために、教員養成課程全体のカ リキュラムをどのように構想していくかということがあげられた。. Ⅰ.問題と目的 昭和33年に道徳の時間が特設されて以来、約60年間実施されてきた道徳の授業が、平成29年告示の 学習指導要領より教科として実施されることとなった(文部科学省、2017) 。これは、いじめ問題等 への対応を機に教育再生実行会議(2013)が道徳の教科化を提言したことが大きな契機となっている。 道徳の教科化に向けては文部科学省より多くの報告等が出されており、その中では、学校現場におけ る道徳教育の課題だけではなく、大学における教員養成に関する課題についても指摘されている。道 徳教育の充実に関する懇談会(2013)や中央教育審議会(2014)は大学の教員養成課程の充実に向け、 「道徳の指導法」 の授業を理論面・実践面・実地教育面の3つの側面から改善・充実を図るとともに、 大学における道徳教育に係る教育研究組織の改善・充実に向けた積極的な取組の必要性を示した。こ れは、1つの授業として「道徳の指導法」の充実を図ることに加え、教育実習等も踏まえた大学全体 のカリキュラムの中で改善・充実を図ることを求めているといえるだろう。 これまでの「道徳の指導法」の改善・充実に関して、すでに藤永(2000)は、具体的な指導法を含 んだ講義内容と、その実施に向けた担当する教員の質・量とも充実させることの必要性を指摘してい る。また、牧崎(2013)は、教員養成段階における指導の在り方の問題が、学校教育において道徳の 時間の指導が十分行われていないことに関連していると指摘している。これらは、 「道徳の指導法」 の理論面に加えて実践面に関する充実を図ることが以前から求められていたということに加え、 「道 ───────────────────── *1. 北海道教育大学釧路校学校臨床(北海道教育大学教職大学院2016年3月修了生). *2. 北海道教育大学釧路校学校臨床. *3. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路. *4. 北海道教育大学釧路校学校カリキュラム開発専攻保健体育研究室. 165.

(3) 星 裕・福岡真理子・梅本 宏之・越川 茂樹. 徳の指導法」の特質として実践面に含まれる指導法に関する部分の重要性を示唆していると考えられ る。一方、学生の道徳の授業に関する意識から、永田・藤澤(2010)は、学生が道徳の授業をどのよ うに行うかというサンプルをもっていないことにより道徳の授業の実施を敬遠する傾向がみられると いう調査結果を報告している。また、菊地(2016)は大学生の講義の感想等の整理から指導案の書き 方や指導方法について学んでもそれだけでは道徳の授業はできないと指摘している。これらは、理論 面・実践面・実地教育面といった学習内容の改善・充実に向け、学生に道徳の授業に関するイメージ を持たせてサンプルを増やしていくことの必要性を示しているといえよう。中央教育審議会(2015) においても、養成段階は「教員となる際に必要な最低限の基礎的・基盤的な学修」を行う段階である ことが指摘されている。以上のことを踏まえると学生が道徳の授業のイメージを持ち実践できるよう になることは、教員養成段階に求められている基礎的・基盤的な学修の1つであるといえよう。つま り、大学における「道徳の指導法」の中で模擬授業を実践する必要性を示唆しているといえる。 大学の道徳教育に関する授業の中で模擬授業を実施した結果として高瀬(2010)は、履修者が「道 徳の授業」の難しさを実感したことを報告している。その上で、学生が感じた道徳の授業の難しさを 道徳の授業固有の課題と一般に授業を行う上での課題の2つに整理している。また、模擬授業を行っ た課題として上原(2017)は発問に焦点化した考察を行い、学生の課題を計画段階における課題と授 業を行う段階の課題に整理している。このことから模擬授業から出される学生の課題は、計画段階と 実施段階、道徳固有の課題と多くの授業に共通した課題という観点があることが示されているといえ るだろう。さらに、内海(2015)は模擬授業の実践を通して学生が道徳の授業の難しさを実感し、こ の実感を出発点に授業実践力を養成すべきであろうと指摘している。これは、1人の授業者の中のこ とだけではなく、模擬授業を実施した学生が感じている課題意識を基に教員養成課程における「道徳 の指導法」の改善・充実につなげていく必要性とも関連しているといえるだろう。 そこで本研究では、 「道徳の指導法」の中で模擬授業の実践後にみられる学生の課題を検討するこ とを目的とした。その理由の1つは、模擬授業実施後の学生の課題を検討することでその学生自身の 課題というだけでなく、授業を履修した結果としての課題、つまり実践した「道徳の指導法」自体の 課題がみえてくる可能性があげられる。もう1つはこれによって、求められている「道徳の指導法」 の改善・充実につなげていくことができるということがあげられる。. Ⅱ.方 法 1.対象学生・科目・時期 対象とした学生は、H大学3年生の男子65名(初等履修14名、中等履修51名) 、女子72(初等履修 9名、中等履修63名)名の計137名(初等履修23名、中等履修114名)である。対象の科目は、 「道徳 の指導法(初等 副免)」と「道徳の指導法(中等 副免) 」である(1)。今回履修した学生全員が、夏 季休業中に取得が必修の免許状対象校種における教育実習を履修済みであり、4年生で小学校での副 免実習を履修する予定であった。なお、本研究の実施時期は2017年度後期の2017年10月から2018年1 月までの期間であった。 2.授業実践の内容 今回、授業実践に向けて「道徳の指導法(初等 副免) 」と「道徳の指導法(中等 副免) 」の授業 の毎週のテーマと進め方の基本的な部分を揃えて実施した。前期も同様に進めており、小学校と中学 166.

(4) 道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討. 校で異なる部分がある目標や内容、教材などは、小学校と中学校の違いを説明し、それぞれの校種に 応じた指導を行った。これによってどちらの授業を受講しても学生に求められている資質・能力を共 通して育成することができると考えた。 構想した授業のテーマは、表1の通りで ある。本実践の授業計画をデザインする上 た「逆向き設計」の3段階を基盤とした。 「逆 向き設計」の3段階は、第1段階「求めら れている結果を明確にする」、第2段階「承. 週 1 2 3. 授業のテーマ 第1ユニット. で、ウィギンズ・マクタイ(2012)が示し. 表1 授業のテーマ(副免). ガイダンス・道徳の本質 海外の道徳教育と日本の道徳教育 子供の心の成長と道徳性の発達. 4. 経験と指導を計画する」という3つの段階. 5. 指導計画と教育活動全体を通じた指導. で構成されている。本実践では、学生が最. 6. 道徳科の特質を生かした多様な指導方法Ⅰ. 終的に模擬授業を実践できるようになると. 7. いうことを第1段階の「求められている結. 8. 果」として実施した。第2段階の「承認で きる証拠」として、模擬授業を評価するた した(表2)。第3段階の「学習経験」とし. 10 11. 道徳教育及び道徳科の目標と内容. 道徳科の特質を生かした多様な指導方法Ⅱ 指導方法の工夫 道徳科の教材 道徳科の評価. 第3ユニット. めにルーブリックを用いた自己評価を実施. 9. 第2ユニット. 認できる証拠を決定する」、第3段階「学習. 学習指導案の作成Ⅰ. ては、教職課程コアカリキュラム(教職課. 12. 学習指導案の作成Ⅱ. 程コアカリキュラムの在り方に関する検討. 13. 会、2017)に示された内容と平成29年告示. 14. 模擬授業Ⅱ. の『小学校学習指導要領解説編特別の教科. 15. まとめ. 模擬授業Ⅰ. 道徳』を参照して設定した。それを基に、 第1ユニットは道徳教育全般に関する理論、第2ユニットは道徳科に関する理論、第3ユニットは学 習指導案の作成と模擬授業の実施を含む実践編として構成した。第15回には、15回を通した学習のま とめを実施した。 本実践における模擬授業は、4~5人一組でグループを作り、グループごとに教室を分け、授業者 以外の3名は児童・生徒役をしながら授業の観察を行い、交代で全員が模擬授業を行った。教材の選 定は、学生が行い、各自が選定した教材を基に11・12週で学習指導案を作成し、1人15分間の模擬授 業を実施した。 3.記録・分析の方法 記録・分析の方法は、2つの方法を実施した。まず、模擬授業の自己評価を分析した。模擬授業の 自己評価を分析することにしたのは、学生自身がルーブリックに示された観点を基に自分自身の授業 をどのように評価しているのかを明確にすることで、学生の授業に関する課題意識を読み取ることが できるのではないかと考えたためである。 2つ目は、模擬授業を終えた学生が今後の授業実践に向けた課題とその改善策を記述したものを分 析した。分析には、フリーのソフトウェア「KH Coder3」を用い、本研究では、このソフトウェアで 用いることができる「階層的クラスター分析」を使用した。樋口(2014)によると、 「階層的クラスター 分析」は、出現パターンの似通った語の組み合わせにはどのようなものがあったのかについてデンド 167.

(5) 星 裕・福岡真理子・梅本 宏之・越川 茂樹. 表2 模擬授業自己評価用ルーブリック S(秀)※. A(優). B(良). C(可). D(要改善). 導入 展開. 学習指導過程. 導入の意図の2観点の. 導入の意図の2観 導入の意図の2観 導入がない。. いずれかを踏まえた発. 点のいずれかを踏 点のいずれも踏ま. 問がされており、工夫. まえた発問がされ えていない。. がある。. ている。. 本時のねらいを意図し. 本時のねらいを意 本時のねらいを意 展開が、本時のね. た展開がされており、. 図した展開がされ 図した展開がされ らいを達成する上. ねらいに即した指導の. ており、ねらいに ている。. で不適切な内容で. 工夫が2つ以上ある。. 即した指導の工夫. ある。. がある。 終末. 終末の意図を踏まえて. 終末の意図を踏ま 終末で意図してい 終末がない。. おり、工夫がある。. えた実践がされて る「今後の発展に いる。. つなぐ」を踏まえ ていない。. 考える必然性や切実感 本時のねらいを意 本時のねらいと、 発問が、ねらいを のある発問、自由な思 図した中心発問と 中心発問・基本発 達成する上で不適 考を促す発問、物事を 基本発問がされて 問のいずれかに、 切な発問になって 発問. 多面的・多角的に考え いる。. ずれが見られる発 いる。. たりする発問など、指. 問が含まれている。. 導の意図に基づいて多 様な発問で構成されて いる。 児童・生徒の発言に対 児童・生徒の発言 児童・生徒が発言 児童・生徒が発言 して問い返すなど、多 を受け止め、指導 する機会がある。 発言. する機会がない。. 面的・多角的に考え考 に生かしている。 えを広げ、深めさせる 工夫がある。 教材の内容が、ねらい. 教材の内容が、ね 教材の内容が、意 教材の内容が、意. 教材・. に適したものであり、. らいに適したもの 図した学年に適し 図した学年には不. 教具. 複数の活用・教具の活. である。. たものである。. 適切である。. 用等の工夫が見られる。. 板書. 板書を生かす工夫を踏. 板書を生かす工夫 板書を生かす工夫 板書がされていな. まえており、さらに工. を踏まえている。. 夫がある。. を踏まえておら. い。. ず、板書の意図が 不明確である。. 堂々と聞いている人を 視線や声量、話す 視線、声量、話す 表現. 視線、声量、話す. 見ながら声量も十分に 速さともに一定の 速さに少し改善が 速さを改善する必 適切な速さで発表でき レベルに達してい 必要である。 ている。. 要がある。. る。 ※A(優)以上に特筆すべきものがある場合をS(秀)とする。. 168.

(6) 道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討. ログラムを作成できるとしている。そこで、今回は模擬授業を終えた学生の今後の授業実践に向けた 課題を「階層的クラスター分析」により定量的に捉えることとした。. Ⅲ.結 果 ⑴ 模擬授業の自己評価の分析 13・14週で実施した模擬授業の学生による自己評価を検討した。不備があったものは除き、回収で きたのは、133名分であった。自己評価の結果は表3の通りである。自己評価はルーブリックを用い、 8つの観点をS(秀)~D(要改善)の5段階で学生に自己評価させた。S(秀)を5点、D(要改善) 、B(良)を肯定的評価、C(可)とD(要 を1点として割り振った(2)。そのうち、S(秀)とA(優) 改善)を否定的評価として分類し、1×2の両側直接確率計算を行った結果、いずれの項目も偏りは有 意であった。自己評価の結果、学生は模擬授業の実施状況を肯定的に捉えていると推察される。 次に、項目ごとの平均について検討した。3.00点を上回った項目は大きい順に3.10点の「導入」 、 3.08点の「表現」であった。特に表現は、A(優)以上を選択した学生が40名おり、堂々と聞いてい る人を見ながら声量も十分に適切は速さで実施できたと感じている傾向がうかがえる。一方、2.90点 を下回った項目は小さい順に2.84点の「板書」 、2.86点の「発問」 、2.88点の「展開」と「教材・教具」 であった。いずれも、C(可)を選択した学生が30名以上と多くなっている。展開部分における本時 のねらいを意図した発問や板書、教材の活用等に課題意識を持っている傾向が捉えられた。 表3 模擬授業の学生による自己評価の結果 4. 3. 2. 1. (秀・優). (良). (可). (要改善). 導入. 31. 76. 14. 展開. 21. 74. 終末. 20. 発問. 肯定. 否定. 3. 3.10. 107. 17. 0.000. ***. 34. 1. 2.88. 95. 35. 0.000. ***. 62. 22. 1. 2.97. 82. 23. 0.000. ***. 22. 73. 36. 2. 2.86. 95. 38. 0.000. ***. 発言. 28. 75. 29. 1. 2.98. 103. 30. 0.000. ***. 教材・教具. 26. 65. 34. 4. 2.88. 91. 38. 0.000. ***. 板書. 21. 73. 36. 3. 2.84. 94. 39. 0.000. ***. 表現. 40. 64. 27. 1. 3.08. 104. 28. 0.000. ***. 学習過程. 平均. p. ***. p< .001. ⑵ 今後の課題に関する記述の分析 今後の授業実践に向けた課題を記述したものから抽出されたキーワードを階層的クラスター分析に かけた。分析に使用される語として、総抽出語(使用)130,174(50,157) 、異なり語数(使用)4,668 (3,916)が抽出された。樋口(2014)は、 「総抽出語数」について、 「分析対象ファイルに含まれて いるすべての語の延べ数であり、異なり語数とは何種類の語が含まれているかを示す数である」とし ている。 また、「使用」については、 「これらの内、助詞や助動詞のように、どのような文章の中にでもあら 169.

(7) 星 裕・福岡真理子・梅本 宏之・越川 茂樹. われる一般的な語は分析から除外され る。そうした語を除いて、語の延べ数や 種類数をカウントした値が「 (使用) 」の 箇所に表示されている」と示している。 階層的クラスター分析を実行する際に は、Jaccard距離を用いたward法にて分 析を行った。出現回数の制御を行ってお り、最小で100回と設定している。最小 を設定しているのは、出現回数が多く、 使用頻度が高く共通性がある語を抽出で きるようにするためである。さらに、何 を学んだのかがわかりやすいように品詞 による語の取捨選択を行い、名詞とサ変 名詞・ナイ形容詞を抽出するように設定 した。上記の条件により、47語、12クラ スターに整理された。分類されたクラス ターは図1の通りである(n=137) 。 次に、分類されたクラスターに含まれ る語同士の類似性から、学生が何を学ん だのかについて「KH Coder3」のKWIC コンコーダンス(以下、KWIC)のコマ ンドを参考に検討した。KWICは、調べ たいキーワードが表れる場所を示し、そ の前後の文脈も取り出して表示する機能 に加え、直前または直後の5語以内に含 まれる語とその出現回数を表示する機能 があるため、分析対象のファイル内で抽 出語がどのように用いられていたのかと いう文脈を探ることができる(樋口、 2014) 。各クラスターに含まれる語がど の語と接続していたのか探ることで、用 いられた意図を捉えることができると考 えた。なお、クラスター1、2、3、7、 9、10、11は、構成する語の数が少ない ことに加え、語同士を組み合わせること. 図1 学生の振り返りの樹形図. で特定の言葉になると考えられる。すな わち、クラスター1は「問題解決(的な学習) 」 、 クラスター2は「導入、 展開と中心部分」 、クラスター 3は「(子供の)発言と板書の工夫」 、クラスター7は「教科教育」 、クラスター9は「評価の効果的 な方法」、クラスター10は「 (課題)設定の理由」 、クラスター11は「模擬授業の課題」を示している と推察される。 170.

(8) 道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討. ⑴ クラスター4:読み物教材の活用 クラスター4は、 「教材」 、 「読み物」 、 「人物」 、 「理解」 、 「資料」 、 「自身」の語で構成されていた。 まず、これらの語の用いられ方についてKWICで探ってみた。最初に「読み物」を調べてみると出現 回数は105回であり、そのうち、左右5語以内に接続する回数が多かった順に、 「教材」が85回、 「授業」 が25回、「資料」が17回であり、授業の中で用いる読み物教材(資料)として多く用いられていた。 次に「人物」を調べてみると出現回数は125回であり、 「登場」と93回、 「心情」と28回、 「気持ち」と 26回接続していた。登場人物の心情(気持ち)として用いられていることが示されている。3つ目に 「自身」を調べてみると出現回数は135回であり、 「自分」と54回、 「子供」と44回接続しており。自 分自身、子供自身という用いられ方がみられた。したがって、クラスター4では、授業の中で読み物 教材を活用して、登場人物の心情理解等を通していかに子供自身(自分自身)の考えをもたせるかと いうことが課題として示されていると推察される。 ⑵ クラスター5:子供の考えの深まり クラスター5は、「思考」、「学び」、「主体」の語で構成されていた。まず、 「思考」についてKWIC で探ってみると、出現回数が110回、そのうち「子供」と26回、 「深める」と20回、 「授業」と15回接 続していた。次に「学び」について探ってみると、出現回数が136回、そのうち「深い」と38回、「対 話」と17回、「子供」と16回接続していた。3つ目に「主体」を探ってみると、出現回数が111回、そ のうち「子供」と43回、 「考える」と21回、 「対話」と20回接続していた。これらから「学び」と「主 体」は、主体的・対話的で深い学びを指していると推察される。したがって、主体的・対話的で深い 学びという視点から、いかに子供の思考を深めていくかということを示していると考えらえる。 ⑶ クラスター6:道徳的価値について考え、自己を見つめる学習指導 クラスター6は、「学習」、「指導」、「価値」 、 「自己」の語で構成されていた。 「学習」について KWICで探ってみると、出現回数が309回、そのうち、 「問題」と49回、 「解決」と「指導」は48回接 続していた。問題解決学習や学習指導として多く用いられていた。次に「価値」について調べてみる と、出現回数が242回、そのうち、 「道徳的」と152回、 「子供」と50回、 「考える」と30回接続していた。 道徳的価値について子供が考えるということを示していると考えられる。3つ目に、 「自己」を探っ てみると、出現回数が153回、そのうち、 「課題」と64回、 「授業」と25回、 「生き方」と「見つめる」 と21回接続していた。自己課題という語の他、授業の中で自己(の生き方)を見つめるということを 示していると考えられる。したがって、問題解決学習等の学習指導を通して、子供がいかに道徳的価 値について考えたり、自己(の生き方)を見つめたりしていく授業をしていくかということと推察さ れる。 ⑷ クラスター8:教材の活用、実践意識をもたせる工夫 クラスター8は、 「活用」 、 「場面」 、 「具体」 、 「実践」 、 「意識」 、 「改善」 、 「内容」 、 「活動」の語で構 成されていた。「活用」についてKWICで探ってみると、出現回数が107回、そのうち「教材」と19回、 「授業」と12回接続しており、授業での教材活用として用いられていた。 「具体」と「場面」は具体 的な場面、 「実践」と「意識」は実践意識、 「内容」と「活動」は活動内容を指していると推察される。 したがって、具体的な教材活用の方法や、子供に実践意識をもたせるためどのような活動内容を用い るかという授業改善の視点が示されていると考えられる。 ⑸ クラスター12:発問と子供の意見の取り上げ方 クラスター12は、 「考え」 、 「意見」 、 「発問」 、 「子供」 、 「自分」 、 「道徳」、 「教師」の語で構成されて いた。「考え」は、出現回数が301回、そのうち、 「自分」と83回、 「深める」と「子供」と59回接続し 171.

(9) 星 裕・福岡真理子・梅本 宏之・越川 茂樹. ていた。子供が自分の考えを深めるということを意図していると推察される。次に、 「子供」は、出 現回数が1235回、そのうち、「考える」と143回、 「授業」と137回、 「自分」と76回接続していた。子 供が自分ごととして考える授業を示していると推察される。3つ目に「道徳」は、 出現回数が693回、 そのうち、「授業」と243回、 「教育」と70回、 「行う」と46回接続していた。道徳教育(授業)を行う ことを示していると考えられる。したがって、子供が自分ごととして考えを深める道徳教育(授業) のために、教師の発問や子供の意見の取り上げ方をいかに工夫していくかということを課題としてあ げていると考えられる。 学生の今後の課題に関する記述を分析したところ、下記のように分類することができた。 まずは、学習指導過程に関する課題意識である。クラスター2・5・6からは、道徳的価値につい て考え、自己を見つめる学習指導をどのように実現することで子供の考えを深めるか、そのために導 入、展開と中心部分をどのように設定するかという学生の課題意識が示されていた。実際の模擬授業 については、15分という時間的制約がある中で実施しており、 終末を実施した学生は少なかったため、 終末に関する記述は少なかったと考えられる。また、クラスター1からは、問題解決的な学習に関す る内容が示唆されていた。 2点目は、具体的な指導方法に関する課題意識である。クラスター3、12からは、発問の仕方、子 供の発言の取り上げ方、板書の仕方が課題として示されている。授業場面における指導方法の工夫と して、これらの内容をどのように実施するかという点に学生の課題意識があることがうかがわれた。 3点目は、教材の活用に関する課題意識である。クラスター4、8に教材の活用に関する学生の課 題意識がみられた。 4点目としては、評価である。クラスター9に評価の方法に関する学生の課題意識がみられた。 これらの結果を整理すると、学生の課題意識として、学習指導過程、具体的な指導方法、教材の活 用、評価の4つに関して課題意識があることが示された。. Ⅳ.全体考察 本研究では、 「道徳の指導法」の授業における模擬授業実施後の学生の授業実践に向けた課題意識 がどこにあるのかを検討してきた。ここでは、ルーブリックに基づく自己評価の結果と学生による今 後の課題に関する記述の分析の共通点から、学生の課題を考察していく。 自己評価と記述の分析の結果に共通してみられた課題意識は、 「展開」 、 「発問」 、 「板書」 、 「教材・ 教具」という視点が示された。 学習指導過程の展開に課題がみられたことは、星(2017)が示すように、 道徳の授業に関するイメー ジの希薄さと関連していると考えられる。事前に学生がこのような課題を抱えていることが想定され ていたため、本研究においても道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議(2016)が例示し たものに依拠して実践を行った。すなわち、質の高い指導方法として例示した問題解決的な学習や道 徳的行為に関する体験的な学習等に関する理論的な学習を実施することで学生の指導法についての理 解を深めるよう促した。また、授業映像の視聴も行うことで具体的なイメージを持たせ、ねらいに即 して学生がそれらの方法を用いて授業を実施することができるように学習を進めてきたが、さらなる 積み重ねが必要と考えられる部分といえる。 「発問」や「板書」 、 「教材・教具」についても、授業の中でこれらをテーマに学習を進めた。これ らは共通して「本時のねらいに即して」という部分に課題意識があることに関連していると考えられ 172.

(10) 道徳の模擬授業後にみられる学生の課題の検討. る。ルーブリックには本時のねらいを意図することに関する記述が含まれており、自由記述の分析結 果にもクラスター4や12に子供が(ねらいについて)考えを深めるためにということが示されている。 これらからは、模擬授業で実施したこれら「発問」等の視点が本時のねらいとつながっているかとい う部分を学生が意識していることがうかがえる。つまり、ただ授業を実践して終わりではなく、それ ぞれの手立てがどのようなねらいの場合に有効なのか、そして実際に授業を受けた子供がどうであっ たのかといった本時のねらいとのつながりを意識するようになってきたと考えられる。これはある意 味、学生が学習を通して成長してきたともいえる部分であるとみられる。それは模擬授業の実施や教 育実習での授業実践等を通して、実際、子供にどのような効果があったのかという部分に目が向くよ うになってきたと考えられるからである。 以上のことから、学生の今後に向けた課題意識がみられる部分として、実際の子供の姿を観察する ことが大きく影響していることが推察される。経験の不足から授業をイメージすることが難しいとい うことに加え、授業の中に取り入れた手立てが本時のねらいとしたことを子供に考えさせる上で有効 であったか検証していくためには、授業を観察する機会をより設定していくことが重要になっていく。 中央教育審議会(2015)は、養成段階は「教員となる際に必要な最低限の基礎的・基盤的な学修」 を行う段階であることを認識する必要性を示している。さらに、教員として最小限必要な資質能力の 全体を明示的に確認する科目として「教職実践演習」が設定されており(中央教育審議会、2006)、 その中に含めるべき4つの事項の1つに「教科・保育内容等の指導力に関する事項」が提示されてい る。特に「子供の反応や学習の定着状況に応じて、授業計画や学習形態等を工夫することができる」 ことが到達目標としてあげられており、子供に着目する重要性が指摘されている。また、授業方法の 例としては、「現地調査(フィールドワーク) 」も提示されており、実際の授業を観察することも重視 されている。 ただ、このねらいと方法の整合性に関しては、道徳に限った課題ではなく、高瀬(2010)が整理し た「一般に授業を行う上での課題」であり、本授業や教職実践演習のみではなく教員養成課程全体で 学生に育てていくことが必要な資質・能力と考えられる。その点からも、科目1つ1つの改善・充実 と共に、教育実習等の現場での経験の機会をも含めた教員養成課程全体のカリキュラムをどのように 構想していくかという点が、今後の大きな課題として示されたといえる。 【注】 ⑴ 対象科目の「道徳の指導法」は取得を必修とする免許によって履修の仕方が異なり、小学校教員免許状取得を 必修とする学生は前期に「道徳の指導法(初等 主免) 」を履修し、その中で中学校教員免許状の取得も希望する 学生が後期に「道徳の指導法(中等 副免) 」を履修する。また、中学校教員免許を必修とする学生は前期に「道 徳の指導法(中等 主免) 」を履修し、その中で小学校教員免許状の取得も希望する学生が後期に「道徳の指導法(初 等 副免) 」を履修する。そのため、後期の「道徳の指導法(副免)」を履修する学生は全員が前期に「道徳の指導 法(主免) 」を履修済みである。 ⑵ ただし、S(秀)を自己評価でつけた学生は1名のみであったため、実質は(優)までとなっている。. 【引用文献】 中央教育審議会:今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申),2006. www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1212707.htm(最終参照日2018年9月21日) 中央教育審議会:道徳に係る教育課程の改善等について(答申),2014. www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/10/21/1352890_1.pdf(最終参. 173.

(11) 星 裕・福岡真理子・梅本 宏之・越川 茂樹. 照日2018年9月21日) 中央教育審議会:これからの学校教育を担う教員の資質・能力の向上について~学び合い,高め合う教員育成コミュ ニティの構築に向けて~(答申) ,2015. www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/01/13/1365896_01.pdf(最終参照 日2018年9月21日) 道徳教育の充実に関する懇談会:今後の道徳教育の改善・充実方策について(報告),2013. www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/096/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2013/12/27/1343013_01.pdf (最終参照日2018年9月21日) 道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議: 「特別の教科 道徳」の指導方法・評価等について(報告), 2016. www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/08/15/1375482_2.pdf(最終参照日 2018年9月21日) 藤永芳純:大学の教員養成における「道徳の指導法」の現状と課題,道徳教育学論集,10,61-76,2000. G.ウィギンズ・J.マクタイ 著 西岡加名恵 訳:理解をもたらすカリキュラム設計-「逆向き設計」の理論と 方法,日本標準,2012. 樋口耕一:社会調査のための計量テキスト分析-内容分析の継承と発展を目指して-,ナカニシヤ出版,2014. 星裕・福岡真理子・梅本宏之・越川茂樹: 「道徳の指導法」の実施に向けた課題の検討,釧路論集:北海道教育大学 釧路校研究紀要,49,53-63,2017. 菊池裕次:道徳教育論における能動的・主体的学修の試み~教育実習で道徳の授業ができる学生の育成を目指して~, 福岡大学研究部論集B,8,53-60,2016. 教育再生実行会議:いじめの問題等への対応について(第一次提言),2013. www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai1_1.pdf(最終参照日2018年9月21日) 教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会:教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会(第5回) 配布資料3-2 教職課程コアカリキュラム(案)(反映版),2017. www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/126/shiryo/1388304.htm 牧崎幸夫:道徳の教科化に向けた大学における指導-「道徳の指導法」における指導方法の工夫改善-,龍谷教職 ジャーナル,1,70-81,2013. 文部科学省:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳編,2017. 永田繁雄・藤澤文:「大学・短大における教職科目(道徳の指導法)に関する調査」結果報告書,東京学芸大学「総 合的道徳教育プログラム」推進本部,2010. 高瀬幸恵:「道徳教育論」における実践的指導力育成の取り組み-模擬授業を通して-,Obirin today:教育の現場 から,10,129-141,2010. 内海貴子:教職科目「道徳教育の指導法」における授業実践-学習指導案の作成と模擬授業を中心として-,教職 研究,26,131-145,2015. 上原昭三:道徳の授業において対話を促す教師の発問技能-教員養成段階における指導上の課題-,教育総合研究 叢書,10,41-56,2017.. 174.

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参照

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