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法務担当者による民事訴訟制度の評価1

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(1)Title. 法務担当者による民事訴訟制度の評価1. Author(s). 今在, 慶一朗. Citation. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編, 57(2): 103-109. Issue Date. 2007-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/845. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第57巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(HumanitiesandSocialSciences)Vol.57,No.2. 平成19年2月 February,2007. 法務担当者による民事訴訟制度の評価1 今 在 慶一朗 北海道教育大学函館枚社会文化情報コース. EvaluationoftheCivilActionSystembyLegalAffairsPersonnelintheOrganization IMAZAIKei−ichiro. DepartmentofPsychology,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 要 旨 公的規制は行政が設定する目標によって問題の発生を事前に抑制する制度であると同時に,経済の停滞を 招くものとされ,近年の日本ではその横和が進められてきた.この結果,何らかの問題が発生した場合には,. それを事後的に処理することが必要になりつつあると考えられる.司法制度改革ではそうした規制横和に伴 う紛争を効率よく解決することが目標とされている.本研究では,日常業務として組織の法務担当者と一般 の勤労者を対象とする質問紙調査を行い,民事訴訟制度の利用経験,訴訟に伴う不安,手続きに関するわか りにくさ,利用しやすさなどについてたずねた.分析の結果,法務を担当した経験がある人々は,経験のな い人たちと比較して,制度に対して好意的な態度を持っているが手続きが長期化することに不安を感じやす いこと,また,経験者はその経験にもかかわらず,裁判官の判断基準がわかりにくいと回答した者の割合が 未経験者と同じ程度であることが示された.. わが国では過去10年あまりにわたって規制横和. いは,新たな時代に必要な商品・サービス等を提. 政策が継続されてきた.資本主義社会においては,. 供しようとする企業の活動を妨げるという作用が. 一般的に,企業間の競争を通じて商品やサービス. ある.政府は,この公的規制による作用が経済の. などの質の向上が図られるが,公的規制が設けら. 停滞をもたらしており,経済活動を活性化させる. れた経済活動については,行政が目標を設定し,. ためには従来からある規制を横和する必要がある. 企業がこれに従うことによって商品・サービス等. と考え,これを媛和する立法活動を行ってきた(規. の質を維持・向上することになる.ところが,公. 制改革・民間開放推進会議,2006;吉出,1995).. 的規制を設けることには,企業を監督する行政組. 近年進められている司法制度改革は,こうした. 織を維持するための財政負担が肥大化する,ある. 規制横和政策の一環ともいえる(佐藤・竹下・井. 1.本研究は,平成18年度科学研究費補助金(若手研究(B))「司法制度のわかりヤすさと公正感,および傍聴経験に関する社 会心理学的研究」(課題番号17730360)による助成を受けた.. 103.

(3) 今 在 慶一朗. 上,2002;首相官邸,2002).公的規制は,行政. した先行研究の知見をみると,人々の訴訟に対す. が目標を設定することによって,あらかじめ目標. る印象は一様ではなく,訴訟に関与した経験や立. にそぐわない事態を排除する制度であるが,これ. 場の違いによって多様であると考えられる.. は経済活動によって生じる問題をあらかじめ防止. 本研究では,規制横和の進むわが国において,. するものである.たとえば,商品の品質に関して. 職務として民事訴訟制度を利用する人々を取り上. 公的規制を設け,欠陥商品を排除しておけば,欠. げる.これまで,訴訟制度に対する人々の評価に. 陥にもとづいて生じる事故を事前に防止すること. ついて行われた研究では,広く国民一般,もしく. ができる.ところが,公的規制を横和することに. は,社会生活の中で例外的に訴訟を経験した人々,. なれば,このように問題を事前に抑制することは. 全く訴訟を経験したことがない人々が調査対象者. できない.このため,公的規制を横和しようとす. として取り上げられることが多かった.広く人々. れば,必然的に問題を事後的に処理しなければな. に利用しやすい制度を考える上で,司法制度に詳. らなくなる.司法制度改革は,公的規制嬢和に伴っ. しくない人々の評価を研究することも重要である. て生じる問題を当事者が解決しやすいようにする. が,ここでは規制横和に伴い,従来よりも多くの. こと,効率よく問題を解決できるようにすること. 紛争を解決しなければならなくなることが予想さ. を目標としている.. れる人々による民事訴訟制度評価について検討す. ところで,現行の司法制度に対しては,わかり. る.日常業務の一環として民事紛争の解決を担当. にくい,費用がかかる,時間がかかるといった否. する人々にとって現行の制度はどのようにとらえ. 定的な評価が下されることが少なくない.しかし. られているのであろうか.. ながら,そのような印象は,実際にはどのような. 人たちが抱いているのであろうか.司法制度改革. 方 法. 審議会(2000)が行った「民事訴訟利用者調査」. 調査の手続きと回答者 札幌,東京,名古屋,大. によれば,訴訟過程のわかりやすさをたずねた質. 阪,福岡の上場企業,非上場企業,自治体・団体,. 問について,わかりやすいという回答(45.9%). 合計1,500団体の法務担当者を対象とした郵送に. が,わかりやすいとは思わないという回答. よるアンケート調査を行った.また,アンケート. (30.1%)を上回っていた.また,原告が訴訟を. を送付する際,アンケート用紙を2部入れ,同じ. ためらった理由についてみると時間を理由とした. 職場で法務を担当した経験のない一般勤労者に対. 回答は33.3%,費用を理由とした回答は31.0%で. しても回答するよう依頼した.さらに,法務担当. あり,さらに実際に訴訟を経験した後で時間がか. 者が存在しない場合には,2部とも一般勤労者が. かると感じたものは35.9%,費用がかかったと感. 回答するよう依頼した.312名の法務担当経験者. じたものは33.3%であった.いずれの回答につい. と428名の法務担当未経験者から回答を得た.. ても訴訟に対して否定的な回答は全体の1/3程度. 質問項目 回答者は,仕事上の紛争とプライベー. であり,過半数の回答者の印象は否定的ではな. トの紛争それぞれについて,裁判所にかかわった. かったといえる.また,司法制度改革審議会の調. 際の制度の種類(複数回答可),訴えを起こした. 査データと裁判を利用したことがない人々のデー. /起こされた経験の有無,裁判所を利用する際の. タを比較した研究(今在・菅原・今在,2006)に. 不安・心配(複数回答叶),手続き上のわかりに. よれば,訴訟を経験したことがない人々は訴訟経. くさ(複数回答可),法律問題に直面した際に裁. 験者よりも相対的に,司法制度や裁判官に対して. 判を利用しようと思う程度(6段階評価)につい. 好意的な評価をしやすい一方で,弁護士に対して. て回答した.また,仕事とプライベートの区別な. は非好意的であり,訴訟をわかりにくく,費用と. く,裁判所の利用しやすさ(6段階評価)につい. 時間がかかると感じやすいことが示された.こう. て回答した.. 104.

(4) 法務担当者による民事訴訟制度の評価 表1 裁判所での経験 民事訴訟 少額訴訟 民事調停 支払い督促 家事調停 刑事訴訟 その他 法務押当. 40. 167. 経験者 54.4%. 13.0%. 85 27.7%. 72 23.5%. 21. 4. 1.3%. 6.8%. 1. 1. 9. 2.9%. 仕事上の紛争 法務担当 未経験者 8.5% 法務担当. プライベートの紛争. 経験者. 17. 36 4.0%. 12 3.9%. 法務担当 未経験者 3.8%. 25. 1.7%. 5.9%. 0.2%. 6. 3. 4. 2. 2. 1.3%. 0.6%. 0.6%. 8. 3. 3. 1.9%. 0.7%. 0.7%. 5. 1.6%. 16. 7. 1.9% 3. 0.7%. 1.0% 3. 0.7%. 5. 1.2%. 結 果. 原告・ 被告・ 申し立て 申し立てられ. の比較 仕事上の紛争を処理するために「民事訴 法務担当. 訟」「少額訴訟」「民事調停」「支払い督促」「家事. 経験者 44.2% 法務担当. れの手続きについても,「経験あり」と答えた者. 未経験者 10.7%. 法務担当. の割合は,法務担当経験者の方が未経験者よりも. 験と手続きの経験有り・無しの関係についてズ2. 150. 136. 48.7%. 仕事上の紛争. 験の有無をたずねた.表1に示したように,いず. 大きかった.各手続きについて,法務経験・未経. 1.4%. 0.2%. 表2 原告・被告の経験. 法務担当経験者と未経験者の手続きに関する経験. 調停」「刑事訴訟」「その他」の当事者になった経. 6. 8.3% 11. プライベートの 経験者 3・5% 紛争. 法務担当. 6. 1・9%. 17. 未経験者 4.0%. 検定を行ったところ,「家事調停」と「その他」. 35. 45. 16 3.8%. を除いて1%水準で有意とされた.法務担当経験 者が最もよく経験していた手続きは,「民事訴訟」. 申し立てを行った経験についてたずねた質問につ. であり,次いで「民事調停」,「支払い督促」,「少. いてみると,表2に示したように,法務担当経験. 額訴訟」であった.法務担当未経験者については,. 者の44.2%が「原告・申し立て経験あり」と答え. いずれの手続きも経験していないものがほとんど. たのに対して,未経験者で同様の経験をしたもの. であり,相対的に経験者が多かった「民事訴訟」,. は,10.7%であった ゎ<.01).また,「被告・. 「支払い督促」,「少額訴訟」についてみても10% に満たなかった.. 仕事上の紛争と同様に,プライベートの紛争に. 申し立てられた」経験については,法務担当経験 者の48.7%が経験ありと答えたのに対し,未経験 者で経験ありと答えた者は8.3%であった.. ついて分析を行ったところ,法務担当経験の有無. プライベートの紛争については,「原告・申し. にかかわらず,ほとんどの回答者がいずれの手続. 立て」の経験,「被告・申し立てられた」経験と. きについても経験したという回答はわずかであ. もに,経験したものはわずかであり,法務担当の. り,経験したという回答が最も多かった「民事訴. 経験者,未経験者の間に統計的な差は確認されな. 訟」についてみても,法務担当経験者,未経験者. かった.. とも4%未満であった.なお,法務担当の経験者. 民事裁判を利用する際の不安 仕事上の紛争とプ. と未経験者の間に統計的に有意な差は確認されな. ライベートの紛争それぞれについて,紛争を解決. かった.. する際に不安や心配を感じることについてたずね. 次に,仕事上の紛争の原告になった,あるいは. た.表3に示したように,仕事上の紛争では,経. 105.

(5) 今 在 慶一朗 表3 民事裁判を利用する際の不安 経済的負担 労 力 法務押当 経験者. 時 間 相手との関係 世間の評判 弁護士を探す 171. 109 35.3%. 55.3%. 239 77.3%. 77 24.9%. 61. 14. 19.7%. 4.5%. 107. 26. 仕事上の紛争 法務担当. 226. 145. 未経験者 34.4% 法務担当. プライベートの紛争. 経験者. 53.6% 183. 222 71.6%. 法務担当. 59.0% 265. 342. 未経験者 80.5%. 62.4%. 297 70.4% 205 66.1% 280 65.9%. 129 30.6%. 25.4%. 79 25.2% 112 26.4%. 6.2%. 27. 56 18.1%. 8.7%. 55 12.9%. 157 36.9%. 弁護士費用 法律知識 手続き 結果の予測 その他 102 33.0% 129 30.6% 192 61.9% 310 72.9%. 50 16.2% 129 30.6% 71 22.9% 200 47.1%. 35 11.3% 74 17.5% 53 17.1% 172 40.5%. 58 18.8%. 11 3.6%. 69 16.4%. 1. 0.2%. 55 17.7%. 6. 1.9%. 76 17.9%. 2. 0.5%. 験者,未経験者とも過半数が「時間」,「労力」を. かりにくいと感じていた.また,ズ2検定による. あげた.ズ2検定を使用して,法務担当経験者と. 分析を行ったところ,表4に示したように,「手. 未経験者を比較したところ,時間 仏<.05),そ. 続きの種類」,「手続きの流れ」,「法律用語」,「書. の他仏<.01)については経験者の方が,法律. 類・会話の表現」,「常識との違い」,「法律家(裁. 知識仏<.01),手続き 仏<.05)に関しては未. 判官,弁護士,検察官)のやりとり」について,. 経験者の方が不安を感じると答えた者の割合が高. 法務担当経験者よりも未経験者の方が判りにくい. かった.. と回答したものの割合が多かった仏s<.01).「裁. プライベートの紛争については,経験者,未経. 判官の判断基準」については,経験者と未経験者. 験者とも過半数の回答者が「経済的負担」,「弁護. の差は確認されなかった.. 士費用」,「時間」,「労力」を挙げた.ズ2検定を. 裁判の利用しやすさと,利用に対する態度 利用. 使用して,法務担当経験者と未経験者を比較した. しやすさの評価(1∼6の6点尺度)について法. ところ,「経済的負担」(♪<.01),「弁護士を探す」. 務担当経験者(∽gα〃=2.53,5月=.96)と未経. 仏<.01),「弁護士費用」(♪<.01),「法律知識」. 験者(∽gα〃=1.99,5月=.83)の平均得点を算. 仏<.01),「手続き」(♪<.01)について,不安. 出したところ,図1に示したように,両群とも利. を感じると答えた未経験者の割合が経験者の割合. 用しにくいと感じていたことが示されたが,分散. よりも多かった.. 分析を使って,両群を比較したところ,相対的に. 手続き上のわかりにくさ 裁判の手続きの諸側面. 未経験者の方がより強く利用しにくいと感じてい. のわかりにくさについてたずねたところ,経験者,. ることが示された(ダ(1,629)=59.53,♪<.01).. 未経験者とも過半数の回答者が手続きの種類をわ. 106. また,仕事上の紛争とプライベートの紛争のそ.

(6) 法務担当者による民事訴訟制度の評価 表4 手続き上のわかりにくさ 手続きの種類 手続きの流れ 法務担当 経験者. 157 51.5%. 法務担当 未経験者. 337. 法律用語 書類・会話表現 137. 44.9% 310. 89 29.2% 209. 85 27.9% 164. 79.7%. 73.3%. 49.4%. 38.8%. 常識との違い. 判断基準. 法律家の会話. その他. 94 30.8% 184 43.5%. 区= 利用しやすさの評価. 99 32.5% 134 31.7%. 57 18.7% 127 30.0%. 5. 1.6% 5. 1.2%. 図2 裁判利用についての態度(仕事). れぞれについて,法律問題が生じた際に裁判を利 用すべきだと思う程度(1∼6の6点尺度)をた ずねたところ,仕事上の紛争については,図2に 示したように法務担当経験者(∽gα〃=4.54, 5β=1.07)と未経験者(∽gα〃=4.62,5β=1.00). の間に差は認められず,両群とも裁判の利用につ いてやや積極的な態度を示していた.プライベー トの紛争については,図3に示したように,両群 ともやや否定的な態度を示していたが,未経験者 (∽gα〃=3.45,5β=1.54)は経験者(∽gα〃=. 3.69,5月=1.40)よりも,相対的により消極的 な態度を示していた(ダ(1,728)=4.64,♪<.05).. 図3 裁判利用についての態度(プライベートの問題). 107.

(7) 今 在 慶一朗. 考 察. 法務担当経験者と未経験者を比較した結果,ほ. 配しやすいためと考えられる.さらに,プライベー. トの紛争において,未経験者よりも経験者につい. とんどの未経験者がいかなる手続きも経験してい. て,経済的負担,弁護士を探すこと,弁護士費用,. ないのに対して,法務担当経験者は裁判所の各種. 法律知識,利用すべき手続きに対する不安を挙げ. 手続きを多く経験していることが示された.また,. る者の割合が小さいことは,民事訴訟に関する実. 経験者は訴えた経験も訴えられた経験も多かっ. 体験によって,それまで漠然と抱いていた訴訟の. た.ただし,経験者であってもプライベートの問. イメージに基づく不安が抑制されやすくなること. 題については未経験者同様,経験がないとする回. を示唆している.. 答が大部分を占めた.さらに,経験者であっても,. 手続き上のわかりにくさについては,全体的に. 手続きを略すことがない正式の民事訴訟を経験し. 未経験者が経験者よりもわかりにくいと回答して. た者は,全体の半数に過ぎないことも示された.. いたが,経験者であっても半数以上の回答者が手. このことから,法務担当者は,法律問題に対応す. 続きの種類がわかりにくいと回答し,また,裁判. ることを職務としながらも,日常的に正式な裁判. 官の判断基準に関しては経験者と未経験者の間に. を体験しているわけではなく,自分たちで直接問. 差は確認されなかった.経験者であっても手続き. 題を処理する,あるいは代理人による交渉や. の種類がわかりにくいと回答したことについて. ADR機関を利用するなどして,簡便な方法で紛. は,経験者が利用する手続きはいつも決まったも. 争を解決している様子がうかがわれる.. のに限られており,他にどのような手続きがある. 民事裁判の際に不安に思うことがらについてみ. のかを理解し,最適と思われる手続きを選択した. ると,仕事,プライベートに関わらず,経験者,. 上で裁判所を利用しているわけではない可能性が. 未経験者ともに過半数の回答者が労力と時間を挙. あると考えられる.また,裁判官の判断基準がわ. げていた.法務担当経験者であっても未経験者と. かりにくいと回答した経験者の割合が未経験者と. 同様に労力と時間を挙げていたことから,これら. 同じ程度であったことについては,法務の経験が. は訴訟手続きに関する経験によっても不安が払拭. 判断基準の予測しやすさにはつながりにくい様子. されにくい事柄であると考えられる.また,経験. をうかがわせる.. 者,未経験者ともに経済的負担,弁護士費用に対. Tyler&Lind(1992)によれば,当事者の決. して不安を感じる者の割合は,仕事の紛争の場合. 定に対する受容的態度は決定を任された権威者に. にはプライベートの場合の半分程度であった.仕. 対する対人認知に依存し,それには信頼性,中立. 事に関する紛争では組織が経済的な負担を負うた. 性,当事者の尊重の3成分があるとされる.この. め,人々はこれらに対する不安を感じにくくなる. うち,裁判官の判断基準を明らかにすることは,. と考えられる.同様に,弁護士を探すことや法律. 「事実に基づく判断」「先入観のなさ」「誠実さ」. 知識の不足に関して不安を挙げる者の割合も,仕. を含むとされる中立性に関連する.透明性,アカ. 事の紛争の場合にはプライベートの場合の半分程. ウンタビリティを高めることは,当事者の経験を. 度であり,集団で対処できる状況が情報不足に対. 問わず受容的態度を促進しやすいと考えられる.. する不安を軽減する様子がうかがわれる.そして,. 他方,先に述べた知識不足を感じている未経験者. 経験者と未経験者の相対的な違いとしては,まず,. の場合には,専門知識を持つ裁判官に対して信頼. 経験者は仕事上の紛争を解決するためにかかる時. 性を感じやすい状態にあると考えられる.このた. 間を心配しやすいことが示された.これは,組織. め未経験者は経験者よりも信頼性によって受容的. の利益を追求する役割を負った法務担当者は,紛. 態度を促進しやすいと推測される.. 争を解決するための手続きが長期化することに よって,却ってコストがかさんでしまうことを心. 108. 裁判の利用しやすさについては,相対的に経験 者の方が未経験者よりも利用しにくいとは考えて.

(8) 法務担当者による民事訴訟制度の評価. いないことが示されたものの,両群の回答とも「非 常に利用しにくい(1)」から「非常に利用しやすい (6)」までの6段階評価のうち「利用しにくい(2)」. 前後であったことから,法務を経験したからと いって裁判所が利用しやすくなるとまではいえな いことが示唆された.しかしながら,利用に対す る態度についてみると,経験者,未経験者に関わ. らず,仕事上の紛争が生じた際には裁判所を利用 すべきと思うかという質問に対して,回答の平均 値は「少しそう思う(4)」と「そう思う(5)」の中間. の値を示したことから,裁判所を利用することに 関しては必ずしも否定的な態度を持っているわけ ではないことが推測される.ただし,プライベー. トの紛争に裁判所を利用することについては,仕 事上の紛争の場合よりも消極的であった.裁判の 際に感じる不安の分析結果を考慮すると,経済的 な負担や情報不足に対する不安が裁判所の利用を 敬遠させているのかもしれない.. 引用文献 今在慶一朗・菅原郁夫・今在景子(2006).民事裁判の印. 象に関する当事者経験者と未経験者の比較北海道教育 大学紀要(人文科学・社会科学編),5‘,69−77. 規制改革・民間開放推進会議(2006).規制改革・民間開. 放の推進のための重点検討事項に関する中間答申 佐藤幸治・竹下守夫・井上正仁(2002).司法制度改革. 有斐閣 司法制度改革審議会(2000).民事訴訟利用者調査報告書 首相官邸(2002).平成14年3月19日閣議決定「司法制度. 改革推進計画」 Tyler,T.R.&Lind,E.A.(1992).Arelationalmodelof authohrityingroups.InM.Zanna(Ed.),Advancesin EnerimentalSocial鞠chologγ.1句l.25.NewYork: AcademicPress.Pp.115−191. 舌口和男(1995).行革と規制緩和の経済学講談社現代. 新書. (函館校助教授). 109.

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