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エレクトロニクス産業と経営者の役割

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Academic year: 2021

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(1)Title. エレクトロニクス産業と経営者の役割. Author(s). 石井, 耕. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 47(1): 17-31. Issue Date. 1996-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2097. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 平成 8年8月. 北海道教育大学紀要 (第1部B) 第47巻 第1号. Au印J t s , 1996. Se i l i i do Un i i t t lofHokka t Journa c on1B)Vo on( ver s y ofEduca .1 .47 , No. エ レク トロニクス産業 と 経営者の役割. 石. 井. 耕. The Ro l eof Top Managementin E1ectronics工ndustry Ko工 i shi. は じめ に. l. 「日 本企 業 の 転 機 と いわ れる 時 に 次 のよう な議 論 がな さ れる 」 . , *. エ レク トロ ニク ス 産 業 特 に パ ソ コ ン産業 にお い て日 本企業 は出 遅 れて いる‐. *. 一 方 で, アメ リ カ の ベ ンチ ャ ー ビジネ ス と競 争 し, 他 方 で ア ジ アの 企業 と競 争 しな け れ ばな らな い.. *. パ ソコ ン産 業 にお い て は, ソ フ トウ エ ア を は じめ と して事 実 上 の 標準 (デフ ァ ク トス タ ン ダー ド) を 開 発 する こ と が重 要 であ る.. *. こ れ ら は, アメ リ カ のベ ンチ ャ ー ビジネ ス の 活力 が勝る (以 下 で は, シリ コ ンバ レー モ デル と 呼ぶ)-. *. 日本企業は, 新しい標準を開発する力が弱い.. *. 日 本人 には, 創 造 性 がな い‐. *. こ れ は, 日 本企 業 の 閉鎖 性 による ところ が大 きい‐ パ ソ コ ン 産業 だ けで なく, あ らゆる 日 本企業 は, 構. 造を変えなければならない‐ *. ま た, 日 本の 教育 制 度 は, こ れま で創 造 性 を養う 教育 を して こな か っ た‐ こう した議 論 に は, どれほ どの 実 証 的 裏付 け がある の だろう か‐ ほと ん どは, パ ソコ ンのOS にお ける マ. イ ク ロ ソフ トの成 功, マイ ク ロ プロ セ ッ サ ー にお けるイ ンテ ル の成 功 だ けを 論拠 に して議 論さ れてい る の で はな い だろう か. 上 記 の議 論 の 全て が誤 っ てい る と は い え な い が, もう 少 し実証 的な 議 論 がなさ れ ても よ い だ ろう‐ 自動 車産 業 と並 んで 日 本の貿 易 黒 字 の 大 宗 を 占める エ レク トロ ニクス 産 業 は, 生 産 シス テ ム による 競 争優. 位とともに技術開発力に基づいた競争優位の獲得という, 日本の製造業としては新しい特徴を持つ‐ 80年代 後半まで急速な成長を遂げてきたが, 円高の進展ととも に成長速度は急速に鈍り同時に海外進出を迫られて いる‐ また大規模エレクトロニクス企業は多角化展開した総合メーカー (総合電機, 総合家電なども含めて 以下では総合エレクトロニクス企業と呼ぶ) として知られ, 製品分野別の事業部制組織を採用 していること も 多 い‐ 一 方, アメ リ カ の エ レク トロ ニク ス 企 業 は 「シリ コ ン バ レー モ デル」 ) 993 ris and Ferguson l. t i ll990, Mor ei sperger and Dan e ‐. と いう 専 門化 ・ 流 動 化 した 組 織 が 中 核 を しめつ つ ある (シリ コ ン バ レー モ デル は,. シリコンバレー地域に立地する企業だけを対象にしたコンセプトではない) - 技術革新.製品の融合化.低 本研究は, 文部省科学研究費一般研究C (平成7年度-9年度継続研究) の助成による研究成果 「経営者選 任の国際比較」 の一部である‐ 記して感謝したい‐ 17.

(3) . 石 井. 耕. 価 格化 ・ ソフ トウエ アの ウ エイ トの増 加 な ど に よ っ て 環境 が急変 する と とも に, そ れ が世界 規模 で 波 及 して いく‐ その 中 で アメ リ カ では専 門化 した シリ コ ン バ レー モ デルの 技術 革 新 のス ピー ドや アー キ テク チ ュ ア の 優 位, デフ ァ ク トス タ ン ダー ドの確 立 が市 場 をリ ー ドす る. ま た 急 成 長 し た シ リ コ ン バ レ ー モ デ ル の 特 徴 は フ ァ ブ レ ス (Rappapor l 1 ) で あり, 生 産 tand Ha evil99 ,. 設備 を外部 特 にア ジ アメ ー カー に依存 して いる. 開発 志 向 型 で技術 ・ 市 場 の展 開ス ピー ドに対応 し 低コス ,. トの標準部品をその都度調達する. いわば中枢機能だけの企業である. しかし, それは同時にアメリカのエ レク トロニク ス 産 業 の 空洞 化 を意 味 し, 巨額の貿 易 赤 字 を 生 む一つ の 要 因とも な っ て いる‐ アメ リ カ で は, こ れま で の歴 史的条件 す な わち60年代 にお ける GE ・ RC A な どの コ ン ピ ュ ー タ か ら の撤 退 によ っ て, エ レク トロ ニク ス 企 業 の 総 合 化 へ の 道 が 阻ま れ た‐ ゼ ロ ッ ク ス ( PARC), A T &T (ベ ル研). などの研究成果が製品化に到らず, 外部へ拡散したことも大きい. こう した経緯をふまえて, シリコンバレ ーモ デルは, 企業内組織における知識の蓄積・経験・熟練といった組織能力を重視しない. アメ リ カ にお い て シリ コ ンバ レー モ デル が成功 し, 一方 で 「日 本 では」 と いう 議 論 がよく な さ れる. しか し, こ の こ と は日 本で専 門化 したベ ンチ ャ ー が育 たな い という こ と は意 味 しない (例 え ばこ の10年 間の新 規 1 ) 日 本の エ レク トロニ クス 産業 で も ベ ンチ ャ ー ビジネ ス 店 頭 登 録企 業 にエ レク トロ ニク ス 企 業 は多 い)( . ,. は専門化から出発し成長 してきたのである. ただ, それがやがて総合化, 総合エレクトロニクス企業への道 を た どっ たの である‐ 同 時 に「電 卓 戦 争」(相 田 1992 ), VT R の 開発 競争, D RA M の 設備 投 資 競 争 (Borrus l988, okimot ) な どを 通 じて, 日 本の 総 合 エ レク トロ 1 oand Ni shil994), 工 BM と の市 場 競 争 (F amm l993. ニクス企業は市場での大きな位置づけを占め続けるための経営資源を, 企業内に獲得することに成功してき た. (エ レク トロニ ク ス 産 業 にお ける 企 業 間 競 争 の 意 味 につ い て は, 沼 上 他 ( ) 「対 話 と して の 競争」 1992 ,. 新宅 ( 1 99 4 ) 「脱成熟と技術革新競争」 1992 ) 「並行競争」 ) 「規格競争」 などさ 199 3 , 米山.野中 ( , 山田 ( ま ざま な 考 え方 があ る. 特 に デフ ァ ク トス タ ン ダー ドの 重 要性 につ い て は, 山 田 が 参考 になる) も ち ろ ん, 総 合化 へ の 道 に失 敗 した 企 業 も ある (例 え ば, オー ディ オメ ー カ ー の 一 部)- ま た, 現 在 も 専 門化 で成功 して いる 企業 も 多 い. シリ コ ンバ レー モ デルと は, 成 功 した企 業 は, や がて 企 業 と して 衰退 する, そ の か わり に, 別 の 企業 が成功 す る, そ して, そのサイ ク ル が早 い, と いう こ とを意 味 している. とこ ろ が, 日 本で は, ベ ンチ ャ ー と して成 功 した企 業の 中 か ら, 総 合化へ 成 長する 企 業 がある の である‐ そ れ は, 最 初 に登場 した専 門ベ ンチ ャ ー のう ち ごく 一部 である が, 成 長 した 結 果, 大企 業 となる の である‐ こ こ が, シリ コ ンバ レー モ デル と 総 合エ レク トロ ニクス 企業 の 大き な 違 いである.. 現在, 総合エレクトロニクス企業は, 成長速度の鈍化, 円高, 海外進出, 技術革新のス ピー ドへの対応な どの 複 合 的な 課題 に, シリ コ ンバ レー モ デルと競 争 ある い は提 携 しな が ら, コー ポ レー トレベ ル での 新 た な. 経営戦略を企画・実行していくことが求められている‐ 本研 究 で は, 「シリ コ ンバ レー モ デルは ソフ トに強く, 総合 エ レク トロ ニクス 企業 はハ ー ドに 強い.」 と い う 見 方 を採用 してい な い. 例 え ば ゲーム コ ン ピ ュ ータ ー にお ける 日 本 企業 の 競争優 位 は ゲーム ソ フ トにあ る から であ る. ま た, 「シリ コ ンバ レー モ デル は 基礎研 究 に強く, 総 合エ レク トロ ニク ス 企 業 は応用 研 究 に強 い.」 という 見 方も 採用 して い ない‐ 前 述 したよう に, 現在 シリ コ ンバ レー モ デル が競争優 位 に立 っ て いる 製 品の 多く は,. 彼らが開発したのではなく, ゼロックス・AT&Tという大企業で開発された基礎技術が, 研究者とともに 2 ) 流動 化 したも の だか ら である‐( シリ コ ン バ レー モ デル と 総 合エ レク トロニ クス 企業 の 競争 は,む しろ 全社 レベ ルの 経営 戦 略の競 争 であ り,. その戦略的選択のキーファクターである経営者の競争である というのが, 本研究の立場である‐ 本研 究 は エ レク トロ ニクス 企業 の こう したコ ンテクス トにお い て, 経営 者 と企業 の ガバナ ンス 構 造 の 関連 18.

(4) . エレクトロニクス産業と経営者の役割. につ い て実 証的 に 検 討する‐ そ の 問 題 意 識 と して は, コー ポ レー トレベ ルの 経営 戦 略 はクリ ティ カ ルな H R (Human Re ) であ る 経営 者 と いう 経営 資 源 の マ ネ ジメ ン トに依存 す る と いう 考 え 方 で あ る‐ ま た, ce s sour. 経営者の交代は企業の ガバナンス構造に規定されるという考え方である. さらに, 組織の収穫という観点か 3 } らは, 経営 者 は組 織文 化 の チ ェ ン ジエ ー ジ ェ ン トであ る と いう 考 え方 であ る.{ 以 下, 第 2節 にお い て, 世界 の パ ソコ ン産業 の 産 業 組 織 につ い て 分析 し, 第 3節 にお い て, パ ソコ ン産業 をは じめ とする エ レク トロ ニク ス 産業 にお ける 経営 お よ び 経営 者 の役 割 につ いて 実 証 的 に分 析する. そ れ ら. の実証的な分析を通じて、 はじめにあげた最近のエレクトロニクス産業に関する議論について検討を加えた し\. 2 世界パソコン産業の産業組織@ ー. 2-1. r. コン ピューター・その意昧の変容. 新 しい 技術 革新 の 時代 がき て いる と い わ れて 久 しい‐ ハイ テク 産業 の代 表選 手 と してマイ ク ロ エ レク トロ. ニクス, 新素材, バイオの三つが取り上げられ, あらゆる企業が研究開発に走りはじめ, 投資機会として資 金 が集 中 した. 「ニ ュ ーメ ディ ア」 「工N S」 な どが勢 いよ く 語 ら れた. しか し, ハイ テク ブーム が去 っ た後. に有効な回収がなされた場合は少なく, 結果のでない研究開発, 稼働しない設備も残されている‐ 平成不況 の 深刻 さ の 一 つ の 要 因 と してハイ テク ブー ム の 反動 をあ げても よ い‐ 一 方, ブー ム と して の 議 論 で はなく, マイ ク ロ エ レク トロ ニク ス が コ ン ピ ュ ー ター ・ エ レク トロ ニクス 産. 業を変えてしまっ たのも事実である‐ 情報による新しい価値が, あらゆる局面で利用可能な形で, 生み出さ れている と い っ て も よ い‐ コ ン ピ ュ ー タ ー の歴 史 をふ り かえ っ て みる と, 1946年 にJ. P. エ ッ カー ト&J. W. モ ー ク リ ー が 世 界 初 の 真 空 管 式 コ ン ピ ュ ー タ ー を 開発 し, 1954年 か ら I BMが主導的立場に立っ た‐ 1964年 の 工 B M360シリ ー ズ の 開 発, 第 三 世代 コ ン ピ ュ ー タ ー (I C利用) でその優位は決定的になっ た. .. こ れ ら は大 型 汎用 コ ン ピュ ー ター の 時代 の歴 史 であ っ た. 1975一76年 に パ ー ソ ナ ルコ ン ピ ュ ー タ が登 場 した こ と に よ っ て, ある い はマイ ク ロ プロ セ ッ サ ー がイ ンテ ル の 技 術 者 や 日 本 か ら 参加 した 嶋正利 氏 によ っ て 開 発 さ れた こ と によ っ て, 歴 史 は変 わ っ たの である. ア ッ プルの 登場, フロ ッ ピ ー ディ ス ク の利 用, 表 計算 ソ フ トの 開発, マイ ク ロ ソ フ トのM S - D O S採用 (こ こ で も 西和 彦 氏 の 参加 がある), 電 子メ ー ル の 発達, そ して 日 本 で は 日 本 語 WP の 開発 に よ っ て マイ ク ロ エ , 5 ) レク トロ ニク ス は コ ン ピ ュ ー タ . エ レク トロ ニクス 産 業 の 世 界 をか え た の で ある.( コ ン ピ ュ ー タ ー の利 用 形態 はス タ ン ドア ロ ン, 集 中 処 理 とい っ た 汎用 大型 機 中心 の 時代 か ら 分 散処 理 ネ , ッ トワ ーク, サ ー バー の 時代 へ と 変 わ っ た. さ ら には, 社 会 的ネ ッ トワ ーク が拡 大 し, パ ソ コ ンを持 つ 意 味 が飛 躍 的 に変化 しつ つ ある. こう した コ ン ピ ュ ー タ ー利 用 へ の ニ ー ズ の変 化 は 汎用 機 か らパ ソコ ンへ と需 要. 構造を変えていく‐ 技術革新がこれほど急激にニーズの変化を導いた事例も少ない. しかもまだ進行中なの である‐ 情 報化 の 新 時代 と い えよう. 多 く の 人 が プロ グラム 言 語 を 学ぶ こ とな く コ ン ピ ュ ー タ ー を使 い は じめ てい る‐ 家 庭 や オ フィ ス で文 書 を作 成 す る とき に ペ ンを 持 た ず に画 面 に向 かう よう にな っ たの は ほ ん の こ こ 数年 であ る. 組 織 内 の 文 書 が ほと ん ど活 字 にな っ た のも こ こ 数年 で あ ろう‐ 情 報検索 に気 楽 にコ ン ピ ュ ー タ ー を 用 い は じめ たの も そう である. 多く の 人々 の 特 に事務 活動 を根 本 的 に変 えつ つ ある の であ る ‐. さらには産業の情報化を促している側面もある‐ 合理化・効率化のためのコンピューター利用から戦略的 な コ ン ピ ュ ー タ ー利 用 へ と 変 化 して い る の で ある‐ 例 え ば流 通 プロ セス にお い て 「最 終カス タ マ ー の ニ ー ,. ズの情報の起点は市場にある」 という当たり前のことに対して これまでその情報を有効 に把握できなかっ , 19.

(5) . 石 井. 耕. たのである. ところが小売店におけるPOSなどの普及は, 一挙に市場情報を把握することを可能にしたの である‐ 市場情報を把握しうる企業とそうでない企業, 情報の蓄積ができる企業とそうでない企業の経営戦 略 が異 な り は じめ たの である. 情 報 を もつ 企 業 がシ ェ ア拡 大 に成功 する. こ れ がコ ン ピュ ー タ ー の 戦 略 的活 6 } 用である (S 工 S と い わ れる).( ここ でもう 一度 コ ン ピ ュ ー タ ー 産 業 の歴 史 を振 り返 っ て み よう. コ ン ピ ュ ー ター のよう に技術 革 新 の 早 い. 産業は企業の栄枯盛衰の歴史も早く進行する. 撤退と参入の歴史が急テンポで進むのである‐ 新分野が拡大 すれば新規参入があり, 衰退分野からは撤退するのである. 汎用大型機であれほど市場を支配したI B M と いえども, 急速な業績悪化を免れないのである‐ 市場の勝利者となるのは新分野での事実上の標準 (デファ ク トス タ ン ダー ド) を確 立 した 企業 である が, そ の標 準 もま た 次の 段 階で は と っ て代 わ ら れる の であ る‐. 2-2. 日本のコン ピューター産業の構造変化. 日 本の コ ン ピ ュ ー タ ー 産 業 はこ れま で継 続 的な高成 長 を遂 げて き た‐ 70年 以 降第 一 次オイ ル シ ョッ ク, 第 二 次 オイ ル シ ョ ッ ク の 二 年 を 除い て1989年ま で10% を超 える 高 成長 を 記 録 して き た ので ある‐ 名 目 G NP 成. 長が5%前後というこの時期に他産業を遥かに上回る高成長だっ たのである. その結果, 89年に生産額5.6 兆 円, 内需 額3‐8兆円, 輸 出 額2‐4兆 円 に達 したの である. と ころ が90年 か ら3度目の不況局面に 、入り, それが4年も続く というはじめての深刻な状況となっ たので あ る (生 産 額伸 び率 ベ ース で, 90年2.8%, 91年4.6%, 92年 -11%, 93年 -11‐6%, 94年5.7%)‐ 特 に 内需 89年 の 生 産 額1‐4兆 円 か の 大 幅 な 減 少 が不 況 の 深刻 さ を 表 して いる‐ 製 品別 に みる と 汎用 コ ン ピ ュ ー タ ー ( ら94年の 生 産額 7 千 6 百億 円へ と ほ ぼ半 減), オ フィ ス プロ セ ッ サ の 減 少 がま ずあ げら れる‐ こ れは, 「汎用 大 型機 の 世界一 の 終 痔を 意 味 して いよう‐ 次 い で, FD D, プリ ンター の 減 少も あ り, こ れら は円高 対 応 で の 海外 生 産へ の 転 換 が起 こ っ て いる た め と 考え ら れる. さ ら に端 末装 置の 減 少 が大 き い. こ れは コ ン ピ ュ ー. ター需要の大きな部分であっ た金融機関需要が急速に減退したためである‐ 一 方, こう した 中 で パー ソ ナ ルコ ン ピ ュ ー ター は成 長 しつ づ けて いる の である‐ こう した こ と か ら, 今 回. のコン ピューター産業の不況の要因は, 日本企業の競争力の喪失ではなく, 「汎用大型機の世界」 からパソ コ ンの 世 界 へ の 変化 一 とり あ え ずこ れを ダウ ンサイ ジ ン グと 呼 ぼう 一 とコ ン ピ ュ ー タ ー 産 業も 需 要側 (とり. わけ金融機関) の不況の影響を受けることになったという二つのことにある, と考えられる‐ 94年5 94年1 特に競争力という観点からみると, 依然として輸出比率 ( 6%) は高く, 大幅な貿易黒字 ( ‐9 兆円) は続 いて いる の である. この不 況 ・ 円高局 面 でも 競 争力 は維持 さ れて いる. 日本 の コ ン ピ ュ ー タ ー 産. 業の輸出の特徴は周辺装置の構成比の高さである (プリンター・表示装置・記憶装置) . 94年に輸出 (部品 除く) の8 6%が周辺装置である‐ しかもFDDなどは海外生産へ移行しはじめている‐ 周辺装置の仕向け地 は最大市場であるアメリカ向けである. これは日本の半導体および精密加工・組立の技術力の強さを示して い る‐. 逆 にコ ン ピ ュ ー タ 本 体 は弱 い. こ れ は主 にマイ ク ロ プロ セ ッ サー の弱 さ であ り, イ ンテ ル に圧倒 的な 主 導 権 を握 ら れて いる こ と を反 映 して いる. しか し, こ の こ と は日 本のコ ン ピ ュ ー タ ー 産業 の 技術 開 発力 の弱 さ, 特 に ソフ トウ エ ア の 開発力 の弱 さ を 意 味 しな い. 周 知 の よう にマイ ク ロ プロ セ ッ サー の 開 発当 初 の 主 導 権 は. 日本企業側にあっ たわけであり, 後にインテルに権利を売り渡した経緯がある. その後の知的所有権を巡る 法廷闘争, 198 4年の半導体チッ プ保護法などによっ て, インテルが独占的地位を築くことが可能になったと いう 見 方も と ら れて いる.. また, アジアをはじめ と して世界のほとんどの地域に対して大幅な貿易黒字であることも強調されるべき であ る‐ 20.

(6) . エレクトロニクス産業と経営者の役割. 2ー3. 日本のパソコン産業の特徴. 市 場 デ ー タ に は は っ きり と ダウ ンサイ ジン グが進行 して いる こ と が示 さ れて いる‐ 1993年 には パー ソナ ル コ ン ピ ュ ー タ ー の 国内 生 産 額 が 汎用 コ ン ピ ュ ー タ ー の 国 内 生 産 額 を 上 回 っ た‐ (つ い5 年 前 に は 汎用 コ ン ピ ュ ー ター が4倍 であ っ た.) 1994年 に, パ ソ コ ン 本体 で ほ ぼ1‐1兆 円 の 生 産 規 模 に な っ た が, そ の 内 容 は 急 速 な 技 術 革 新 に よ っ て急 ピ ッ チ で変 化 して いる. 第一 は高 機 能 化 である‐ 例 え ば, マイ ク ロ プロ セ ッ サ ー の進 歩 ととも に16ビ ッ トから 32ビ ッ トへ, わ ず か 2 年 間 で の 急 激 な 変 化 を 示 した‐ 90年 の 上 半期 に は 国 内 出 荷 台 数 ベ ー ス で16ビ ッ ト機 65%, 32ビッ ト機31% であ っ た の に対 し, 91年 の 下半期 には32ビ ッ ト機89%, 16ビ ッ ト機11% にま で 製 品 構 成 が変 わ っ た (デー タ は日 本 電 子 工 業 振 興協 会 ベ ース). 第 二 に デス ク ト ッ プか らラ ッ プ ト ッ プ, そ して ラ ッ プ ト ッ プからノ ー トへ, あ る い は 多彩 な周 辺 機 器 の装 備 な ど小 型 化 ・ 多様 化 が進 ん だこ と である‐ 第 三 に, こ れ だ け新 製 品 がで て いる にも かか わ ら ず, 価 格競 争 の激 化 が進 行 して いる こ と である‐ 例 え ば 92年 の32ビ ッ ト機 の 国内 出荷 台 数 は前 年比16%増 加 して いる にも か かわ ら ず, 出 荷 金 額 は- 2% に と どま っ たの である‐ 円高 による アメ リ カ ・メ ーカ ー と の 価 格競 争 に入 っ た93年 以 降 はさ ら に顕 著 に製 品出荷 単価 が. 下降している‐ さらに末端小売り価格の値引きも甚だしい‐ これは, 技術革新による価格・性能比の向上と 市場競争の二つの要因による. 特に93年以降, 日本市場におけるシェアの50%以上を持つ日本電気が本格的 に対 抗 的な 価 格 競 争 に入り は じめ た こ と が大 き な 影響 を及 ぼ して いる. 日 本電 気 はそ れま で汎用 コ ン ピ ュ ー タ 部 門や ホ ーム エ レク トロ ニクス 部 門 (連 結 ベース) の 収益力 の弱 さ を半 導 体部 門・ 通 信 機 器部 門や パ ソ コ ン部 門の 寡 占利 益 によ っ て補 っ てい た と 考 え ら れる‐ しか し, アメ リ カ ・メ ーカ ー あ る い は富 士 通の 攻 勢 に. 対して, 全体の業績数値を犠牲にしても ( 93年3月期の連結経常利益は38 0億円の赤字), パソコンの価格競 争 に対 応 しは じめ たの である‐. 今後, こう した価格競争がどのような影響をもちは じめるかが注目される‐ 価格競争はコスト削減競争に つ な がる‐ 製造 コス トの 面 で は, す で にF D D な どで進 行 して いる ア ジ ア を 中心 と した 海外 生産 へ の 移行 が よ り 本 格化 する 可 能 性 が強 い‐ 「パ ソ コ ン産 業の 家 電 化 (コ モ ディ ティ ー 化)」 と と らえ ら れる ‐. 2ー4. 世界のコンピューター産業における競争. 次に世界全体のコン ピューター産業の市場構造を把握すると, まず特徴的なことは, 現在は市場としては アメ リ カ ・ 日 本 で 世 界 の 半 分 以 上 を 占め て いる という こ と である‐ コ ン ピ ュ ー タ ー が典 型 的 に先 進 国型 の需 要 を持 つ 製 品 であ り, 経 験 的な デー タ か ら は, 1 人当 たり GD Pの増 加 に対 して対 数 曲 線 で1 人 当 た りコ ン. ピュータ内需額が増加するのである‐ ということはアメリカ市場が景気好転で成長すれば アメリカ市場で , の シ ェ ア が高 いメ ー カ ー の 売 上 は増 加 する という こ と である. 92一93年 の 状 況 は そ の よう な 状況 であ っ た ‐ アメ リ カ 市 場 が順調 で そ こ に パ ソコ ン本体 を供 給 して いる アメ リ カメ ーカ ー は業 績 がよく な り 日 本の周 辺 , 装 置メ ー カ ー も 輸 出 を伸 ば したの で ある‐ 一 方, 長期 間の 傾 向 を見 れ ば 生 産 で は日 本 が急 速 に シ ェ ア 拡 大 を して き たの である 1980年代 の 世 界 の , . コ ン ピ ュ ー ター 供 給 の シ ェ ア を みる と, 規模 全体 が拡 大 した 中 で 日 本企 業 がアメ リ カ 企 業 の シ ェ ア を奪 っ , て い っ た10年 間 であ っ たこ と が最 大 の 特 徴 である‐ た だ し, ま だ トッ プ で はな い. 次い で 韓 国 は じめ 東 ア , ジ ア の 国 が追い 上 げて いる が, ま だそ の シ ェ ア はあ わせ て も 大 きく な い 92・93年の 日 本市 場 と アメ リ カ市 .. 場の好対照から, コン ピューター産業においてアメリカ企業の勝利を述べる意見があるが それは二つの意 , 味で 間 違 っ ている. 一 つ は従 来 か ら コ ン ピ ュ ー タ ー 産 業 で は, アメ リ カ 企業 が優 位 にた っ て いる の で ある .. 二つは日本企業がそれを追い上げ続けている‐ 90-93年は国内不況で日本企業は苦 しい局面を迎えたが 依 , 21.

(7) . 石 井. 耕. 然として追い上げ中であるという考え方が正しい‐ 当然 の こ と な が ら, 世 界 の コ ン ピ ュ ータ ー 市 場 にお い ても ダウ ンサイ ジ ン グは進 行 している の であ り, コ ン ピ ュ ー タ ー 市場 の 中核 はパ ソコ ン に移 りつ つ ある. 世 界 の パ ソコ ン市 場 の 大 き な特 徴 は, . コ ン ピュ ー タ 本 体 にお い て シ ェ ア は 混 戦模 様 にあ る と いう こ と である. こ れは最 大 の市 場 である アメ リ カ 市 場 での 大 混戦 を. 反映したものであり, I B M ・ ア ッ プル ・コ ンパ ッ ク ・ パ ッ カ ー ドベ ル・ デルな どが激 しく 競 いあ っ ている (その他が世界全体では60%, アメリ カでは50%) . こう した混戦模様 は必然的に価格競争へと展 開する‐ 世界全体では, 日本電気は約5%のシェアだが, 前述したように国内では50%前後の高シェアでこれまで寡 占価格を維持してきた. これがアメリカ市場での価格競争の激化の影響を受けて, 国内でも維持できなくな り は じめ て いる の が 現在 の局 面 であ る‐. 世界のパソコン産業のもう一つの大きな特徴は, 本体市場は混戦だが, キーパーツ市場は独占に近い寡占 93年) を だ という こ と である‐ そ の 一つ がマイ ク ロ プロ セ ッ サ ー であ り, イ ンテ ル が世 界 の74% の シ ェ ア ( も っ ている‐ もう 一 つ が OS であ り, マイ ク ロ ソフ トの O S の シ ェ ア も 高 い‐ キ ー パー ツ で独 占 となる と, 価 格競 争 を強 い ら れる 本 体メ ー カ ー は ア ッ セ ン ブラ ー と して き わめ て苦 しい 立 場 に立 たさ れる. こ れま で の 負 債 を 持 た な い 新 規 参入メ ー カ ー である コ ン パ ッ ク, デル な どはそ れほ どで はな い が, IB M は, 汎用 機 の. 構造的減少とあわせてきわめて苦しい立場に立つ. こう したことから, I B M・ ア ッ プル ・モ トロー ラ の 提 携 によ る パ ワ ー P C の 開 発な どのイ ンテ ル対 抗策 が とら れる の であ る.. このまま価格競争が続けば, 下位メーカーから淘汰される局面 がくる可能性もある. ただ, 依然として続 く技術革新, 拡大が続く市場 (特にアジア市場) を考えると, 現在の市場シェアを固定したまま, 淘汰がお こる の で はなく, ま た新 た な新 規 参 入メ ーカ ー が登 場 してく る こ とも 考 え ら れ, 現在 の有力メ ー カ ー も あ っ. という間に衰退することも考えられる (かっての有力企業ワ ングやDECの事例もある.) 淘汰の時代を生き残るには, 技術革新の波に乗り続けること, 特にデファクトスタンダー ドの見極めが重 要 である‐ しか し, コ ン ピ ュ ー タ 産 業 にお い て は, 先 行 した デフ ァ ク トス タ ン ダー ドが次の 時代 に は 逆 に 重. 荷になるということがしばしば起こりうる. ユーザーソフト資産の継承性を武器にシェアを守りつ づけるト ッ プメーカーが, その継承性ゆえに次の戦略展開に失敗するのである. また, 世界規模で混戦模様になっ ている中で, 世界規模での戦略的提携による生き残りも模索される. 自 社の経営資源を どこまで保有するのかという課題に, 提携によって対応していくのである‐ ある意味でその ). 技 術 革 新 が早 く, デ フ ァ ク トス タ ン ダー ドが 変 極 限 が, フ ァ ブ レス で あ る (Rappapor tand Halevil991. 化する中で, 研究開発機能と営業機能だけを持ち, 製造機能を全て外部に求めるという考え方である‐ その 時にもっとも安価な部品を調達し, 安価な人件費で組立る‐ ただし, この場合, 部品は一般に調達可能な部 品を多用 せざるをえず, 本格的な価格競争すなわちコスト削減競争に突入したときに, 部品メーカーのコス ト削減努力に期待することはできない. また, 継続した取引がなければ, 品質向上・納期遵守の水準向上も 期 待 でき な い‐ 「パ ソコ ンの家 電 化」 がもう 少 し進 行 した とき に, こ の 問題 がさ ら に重 要 にな っ てく る. フ ァ ブレス の 進 行 は, レー ガン 政権 の 「強 い アメ リ カ」 に よる80年代 初 頭 の アメ リ カ 産業 の 空洞 化 の再 来. の可能性 がある. 生産技術が定着せず, 製品開発に反映されず, 付加価値が残らない‐ 当時, コンピュータ ー産業だけは圧倒的に強い競争力 を持っていたため, 貿易収支が赤字になることはなかったが, 他のエレク トロニクス産業においてアメリ カは大幅な貿易赤字を招いてしまっ た (図1参照) ‐ さ ら に, 1992一1994年 の アメ リ カ のエ レク トロニクス 産 業 の貿 易 赤 字 は, 急速 に拡 大 して お り, 特 に今 回 はコ ン ピ ュ ータ 産業 にお い て著 しい‐ 個々 の企 業 と して は, 当 面 は 海 外投 資 ある い は海 外調 達 によ っ て 低 コ. ストの競争力のある 製品を販売できたとしても, 長期的には生産技術の空洞化は免れ得ない.. 22.

(8) . エレクトロニクス産業と経営者の役割. 82一91年) アメ リ カ ・ エ レク トロ ニク ス 産 業 の貿 易 収支 (. 図1. ( , o億ドル) 80 70. . ・ 機灘 灘圏灘園美 繊 細圏 綴キ ,滋 馨 機 織 、. 6 0. ‐ ‐=‐ ‐‐ ‐-- --輸出 ------. 5 5. 一 .… -. 藤義翻灘園瞳 獲園膨 ず. 輸入. 5o. w. 雑 ≧ 織圃 蓑 ま牢鵬 圃蒙圏 腰 ‐ ・ 灘 膿 窯李 薫灘 園 柵 膿糟圃. 4 0. . 璽鰯 璽 灘圏 膨 班 灘 麟 鵬 灘園 圏 灘 瞳 圏 醒 鰍 . ・ ・ ご 綴}. 灘襲 灘圏 瞳萎 裟 瞳 鵬灘園雛鵬 ・繊麗 繊 麗鯵 璽. 琳 逐謙影… 駆謎 艦 w 琳 鯖 w. 3 。 25. ・. 園 璽 璽 醗 萎 園灘醗ー 酵拶 ‐. 麗 .嬬 翻 繊 .圏. 45. 20. 総慈騨瀦耀. 播騨 } 騨} 艶 綴播 醒 園園 顧圃 圃 圃艶 醒 翻 襲 園綴. く 黒字 y \. 15 lo. 82. 85. 84. 83. 87. 86. 88. 90. 89. 91. 資料: 1992 E1ectronic MarketDataBook (EIA). 表1. アメ リ カ ・ エ レク トロ ニク ス 産 業 の 輸出 入 ( 92一94年) (百万ドル) 輸 1992. 電. 子. 入. 1993. 輸 1994. 1992. 出. 1993. 貿易収支 1994. 1992. 1993. 1994. 管. 619. 651. 801. 693. 851. 1166. ‐ 74. 200. 365. 受. 動. 部. 品. 8840. 9583. 11392. 5731. 6192. 7326. ‐3109. ‐3391. ‐4066. 固. 定. 回. 路. 15489. 19569. 26091. 16180. 19384. 25466. 691. ‐185. ‐625. 家. 庭. 電. 器. 16291. 17830. 18163. 3081. 3210. 3838. 通. 信. 機. 器. 8279. 9058. 11239. 8453. 10325. 12907. 174. 1267. 1668. 防 衛 用 通 信. 1120. 1068. 1111. 2496. 2510. 2460. 1376. 1442. 1349. コ ン ピュー タ. 32384. 38961. 47160. 30355. 30965. 35026. ‐2029. 産 業 用 電 子. 3143. 3436. 4202. 7511. 8309. 9384. 4368. 4873. 5182. 2270. 2359. 2287. 3388. 3619. 4304. 1118. 1260. 2017. 88435 102515 122446. 77888. 医 合. 療. 機. 器 計. 85365 101877. ‐13210 -14620 ‐14325. ‐7996 -12134. ‐10547 ‐17150 ‐20569. 資料:1995 E1ectronic MarketData Book(EIA) アメ リカ商務省 データをアメ リ カ 電子工業 会 (EIA) がま とめ た.. 次に安定化の時代は来るのだろうか‐ 技術革新の早さと市場規模拡大のテンポの早さを考えると, ここし ばらくは混戦状態が続くとみることの方がありうるシナリオであろう‐ 淘汰される企業と新規参入する企業 が交錯し, 支配的なシェアをとりうる企業は登場しない. しかもそれが世界規模で続く. 汎用機やミニコン と いう 従 来 型 の 資 産 を持 つ 企 業 はそ れ が負 債 に転 化 し キ ー パ ー ツ であ る マイ ク ロ プロ セ ッ サー や 0 S にお , い ても, デフ ァ ク トス タ ン ダー ドの 変 化 によ り, 現在 の 高 シ ェ ア が続行 する 保 証 はな い‐. その中で, 日本企業も世界市場での優位を持ちうるポイントを見いだせないでいる‐ 「パソコンの家電化」 は日 本企 業 の 得 意 パ タ ー ン に持 ち 込 むチ ャ ンス で はあ る が, こ の 円高 で は そう も い っ て ら れな い. 家 電 と 同. じくア ジアでの生産に活路を見いだしていくことが求められる. その中で総合電機企業あるいは総合エレク 23.

(9) . 石 井. 耕. トロニクス企業という日本企業に顕著な事業構造の是非が問われて行くであろう. 事業の多角化により, シ ナジー効果が発揮でき, 景気変動のリスクもカバーできる反面, 多くの投資分野を抱え分散投資になりがち であったり, 他事業の事業活動による制約を受ける (例えばキーパーツの社内調達をうちきれない) ことも ありうる. とりわけ, これまでの高成長にもかかわらず, 低収益に甘んじざるをえず, 不況抵抗力が強くな い こ と が今 回露呈 した こ と が大 き い.. 2-5 アジアのパソコン産業 前 述 したよう に, 世界の パ ソ コ ン産 業 は, ダウ ンサイ ジ ン グによ っ て, コ ン ピ ュ ー タ 産 業 の 主流 とな っ た. が, その中でも急速な技術革新, 市場リーダーの不在による混戦, 価格競争の激化などによって, 市場構造 の変化が著しい‐ 80年代 初 頭 の レー ガン の 「強 い アメ リ カ」 「強 い ドル」 政策 によ っ て, ア ジ アへ 進 出 した アメ リ カ コ ン ピ ュ ーターメ ー カ ー (台 湾 ・ シ ン ガポー ル 中心) に続 い て, 市場 構造 の 変 化 の早 さ に フ ァ ブ レス によ っ て対 応 しよう と している アメ リ カ の新 規 参 入メ ーカー による OE M調 達, 円高 対 応 でア ジア に進 出 した 日 本の コ ン ピ ュ ー ターメ ー カ ー (周 辺装 置 が多 い) の 現地 生 産 拠点, そ れ に続く 日本 の部 品メ ー カ ー, 世 界 の パ ソコ ン 産業 の流 れは ア ジアへ と 展 開 しは じめ て いる.. 価格競争の激化とそれに続く 「パ ソコンの家電化」 の流れが元へ戻らない以上, アジアへの流れも元へ戻 らな い. そ のア ジ ア も, 韓 国・ 台湾 ・ シ ン ガポー ルな ど 「フォ ー ドラ ゴン」 か ら は じま っ たパ ソコ ン生 産 か. ら, 香港を通じた中国での生産, さらには直接投資, シンガポールを中核とした拡大AS E A NIOで の 生 産 な ど, 「ア ジ ア の拡 大」 がお き ている の である. ま た, 「ア ジ ア の拡 大」 は, 経 済 発展 と とも に パ ソ コ ン市 場 の増 大 にもつ な が っ ている‐ パ ソコ ンの 生 産・ 市場 い ず れ をと っ ても ア ジ アへ の 流 れ が顕 著 にあ らわ れている の である‐ もちろ ん, そこ に は政治 的 な 強 権. 性, 民族対立, 社会主義からの脱皮に伴う混乱などの乗り越えるべき多くの課題がある. ここ10年間の対応 如何では大きな危機を生む可能性もある. しかし, 市場経済化による経済発展の歯車はすでに回りはじめて い る.. 今後のアジアのパソコン産業の全体の基調はこのように楽観的に語りうる‐ ただ, 個々の問題を取り上げ れば, そこにはま だ多くの解決すべきことがある. 第 一 に, 「パ ソ コ ンの 家 電 化」 の 進 行 と と も に必 要 な部 品・ 加 工 基 盤 産 業 の ア ジ ア で の 形成 であ る. こ れ はパ ソコ ン に 限ら ず, 全て のエ レク トロ ニクス 産業 ある い は機 械 産業 の 共通 の 課 題で ある‐ こ れま で, 日 本. 企業が機械産業での優位を獲得した一つの要因は, 生産システムにおける組立メーカーと部品・加工下請け メーカーのQ (品質) ・C (コスト) ・D (納期) における効率の良さである‐ 国内生産であれ ば, 部品・ 加工基盤産業の蓄積があり, 競争優位を持続できるのである. しかし, 日本企業が円高によって海外特にア ジアへの直接投資を余儀なくされた段階から, この部品・加工基盤産業のアジアでの形成が課題となっ たの である‐ 単なる組立だけであれ ば問題は少ない. 日本から部品をもっていき, 低賃金の従業員による組立で コストを削減するのである. ただ, この段階はすでに多くの日本企業は通り過ぎている‐ 現地政府からのロ ー カ ル コ ンテ ンツ 要請 も あ り, ま た部 品も 含め ての コス ト削 減 を 考える と, 現 地 ある い は周 辺 国 からの部 品 調 達 ・ 加 工 が どう しても 必 要 にな っ てく る の であ る. (部 品・ 加 工メ ーカ ー の 海 外 直 接 投 資 につ い て は, 鵜. 飼( ) な ど参照.) 19 94 ) 199 3 ,関( この ため, 日 本企 業 はハイ エ ン ドの部 品 につ い て は日 本の部 品メ ー カ ー へ の 現地進 出 を 要請 する こ と にな る の である. た だ し, その 決定 はあく ま で部 品メ ー カ ー の 独 自の 決 定で あり, 組立メ ー カー による 経営 に関. する保証は一般になされない‐ この部品メーカーの決定は, 一方では国内の生産・技術基盤の空洞化につな 24.

(10) . . エレクトロニクス産業と経営者の役割. が り か ねず, 一 方 で は現地 経営 の 困難 に直 面 する と いう きわめ て 厳 しいも の であ る‐ 日 本の 組立メ ー カ ー の 競 争力 の 維 持 の ため に は, 特 にハイ エ ン ドの部 品 につ い て は, こう した厳 しい経 営 状況 を のり こ え て, Q ・. C・Dを維持しなけれ ばならないのである. また, 欧米系の組立メ ーカーも, 特に品質水準の重要な部品に つ い て は, こ れま でも 日 本 の部 品メ ー カ ー か ら調 達 してお り, 日 本 の部 品メ ーカ ー の 現地進 出 を 歓迎 する. ロー エ ン ドの 部 品 につ いて はコス ト重 視の 対 応 を 図り, ア ジア 地場 の部 品メ ー カ ー を 活用 しよう とする‐ こ れは 日 本 ‐ 欧米 あ る い は韓 国・ 台 湾い ず れの 組 立メ ー カー も 共 通 である‐ ま た, ア ジ ア各 国政府 も そ れを. 歓迎する‐ さらに日本企業はこのようなコスト重視の調達から, 自らの競争力を維持する ために, Q・C・ Dいずれにも現地部品メーカーからの調達で満足できる水準に到達するために努力する‐ そのためにはア ジ アの企業と長期的・継続的取引関係を構築することが必要になってくる. 香港・シンガポールの日本企業の I P0 (国際調達事務所) の最大の役割 は, もっ ともコストの低い部品を調達する ことにある だけではなく, ) 7 { 現地 の 部 品 ‐加 工下 請 け企業 の 育 成 にあ る‐ (こ の部 分 は, 図2 参照. ). 図2. Q ・C ・D につ い ての セ ッ トメ ー カー ・ 部 品メ ーカ ー 関係. セッ トメーカー. 部品メーカー. セッ トメーカー. -……--……--……ー… ! …-………-……-……--←……………-………-……… ホ - - - -ニー -------- -= 一 皿 -……- -- --”…- ー ri. 「. 葦灘 灘灘灘蕪雑圏淋 滋 綴 袈 鞘・ 11. 資料:三菱総合研究所 市川幹人氏作成. こ の 点が フ ァ ブ レス でも とも と 生 産 機能 ・ 生産 技 術 を もつ 必 要 を認 め て いな いアメ リ カ ・メ ーカ ー との ,. 根 本的 な 違 い であ る‐ 「パ ソ コ ンの家 電化」 が 進 行 した とき に こ の差 が どの よう にで てく る か が注 目 さ れる‐. それはパソコンだけでなく, ア ジアの機械産業全体の課題である‐ 第 二 に, ア ジア の企 業 の 内部 にお ける 知 的熟 練 の 形成 である. こ れ には 工場 従業員 とホ ワ イ トカ ラ ー のそ. れぞれの知的熟練の形成の問題がある‐ 低賃金の組立労働でコストを削減する段階では, 工場従業員の知的 熟練はそれほど必要とされない‐ しかし, Q・C・Dいずれにおいても日本企業の要求水準を満たすあるい は日本企業と競争するようになると, 生産現場の改善努力, 生産現場と製品開発部門の連携な どが必要にな っ てくる‐ そのことを可能にするのは, その企業特有の知識にもとづき, 工場従業員みずからが改善努力を 行う仕組みである. そのためには, 長期雇用慣行の形成, 内部昇進・定期昇給な どの人事制度な どによって, 工 場 従 業員 にイ ンセ ンテ ィ ブを持 たせ ね ばな ら な い‐ ま だ, ア ジ ア の企 業 で は, 一般 に ジ ョ ブホ ッ ピ ン グが. 多く, こう した工場従業員の努力を促す仕組みは形成されていない‐ ホワイトカラー についても同様に, 長期雇用慣行の形成, 内部昇進・定期昇給などの人事制度によっ て知 的熟練を高める仕組みが求められる‐ さらに, 企業の経営構造においても転換が必要であると考えられる. 経営構造は株主・経営者・従業員の関係をもって示される が, 日本企業において, ホワイ トカラーの従業員 が内部昇進競争の中で能力を発揮してきたのは将来的に経営者となりうることを期待していたからである. 25.

(11) . 石 井. 耕. ア ジ アの 企 業 で は, 韓 国・タイ を は じめ と して財 閥の力 が強く, ま たそ の な かでも個 人 株主 の オー ナ ー 経. 営者の権力が強い (経営史学会 ( ) 1 993 ) ) 199 3 ‐ トッ プダウンの管理統制型の経営が主流で , 末広・南原 ( あり, ミ ドルのホワイトカラーの発言力が弱い‐ 意思決定は早く, 資源配分も強弱がつけやすいが, 組織全 体の 努力 がえ ら れにく い‐ ミ ドルクラ ス の優 秀な ホ ワイ トカ ラ ー が経営 の 発 言力 をも ちう る に は ス ピ ンア ,. ウトによっ て, 自らの企業を起こす必要がある. そうなると企業内に知的熟練が蓄積されない. こ のこ と は, 日本企 業 の 「集 団 主義」 を持 ち 込め とい っ ている わ けで は ない. む しろ 内部 昇進 な どの 人 ,. 事制度にもとづく長期の内部競争メカニズムを確立することの必要性を強調しているのである. さらにこの ことは初中等教育から高等教育にわたる教育制度全般についての課題である. また, 日本をまねることでも ない. それぞれの国において, 多くの人々の知的熟練の形成と能力発揮の機会をつくる仕組みが求められる と いう こ と である.. 技術の形成とはこう した企業システムあるいは労働市場・教育制度にかかわる社会全体からなしうるもの であ る.. 8 ) 総合エレク トロニクス企業とシリコンバレーモデル 一 経営者交代の実証研究(. 3. 3ー1. シリコンバレーモデルの経営者交代. Boeker and Go i t ods n e. ( 1993 ) によ れ ば, シリ コ ンバ レー の67の 半 導 体 企 業 の C E O の 交代 は, 企 業 の 成. 果 によ っ て 外 部 ・ 内 部 か ら の 選任 が き ま る‐ こ れ は ガバ ナ ンス 構 造 を 反 映 す る 取 締 役 会 が Norma i t ve Are nasと な っ て いる アメ リ カ の 他 の 産 業 と 異 な り, シリ コ ン バ レー モ デ ル で はベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル に 依存 し てお り, ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ルの 発 言力 の 強 い 取締 役 会 が, 所有 と コ ン トロー ル の一 致 した 統 治 機 構 と して 機 能 して いる ため で は な い かと 考 え ら れる (ocas ). 単 純 にい え ば, 成 果 の あ が らな い CE O は, 外 i ol996 部 か らの 後 継 者 に, 所有 者 である ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル の意思 決定 によ っ て, 代 え ら れて しまう と いう こ と である‐ もう 一 つ 重 要な こ と は, シリ コ ンバ レー モ デルは企 業 と して の盛 衰 が早 い, という こ と である. 円高 の は じ ま っ た1985年 の Datamat i oの北 米 コ ン ピュ ー タ 企 業 (ソ フ トウ エ ア企 業 を 含 む) のう ち, 1993年 にラ onlo. ンキングにとどまっ ている企業は半数にも満たない‐ これは, 失敗した企業は, ただちに市場からも株主か らも見捨てられ, 同時に従業員はレイオフされる, ということを意味する. こう した盛衰の早さによっ て, 最 適 な 資 源 配 分 がな さ れる, と 考 え ら れて いる の であ る. 確 か に, 株主 であ る ベ ンチ ャ ー キ ャ ピタ ル に と っ て, 最 適 な 「資 金」 配 分は なさ れる の であろう‐ そ れ は, かつ て の コ ン グロ マリ ッ トの経 営 と 同 じ考 え方 で ある‐ こう した こ と を, 企 業 の 流動 化 とい え ば, 流動 化 の 対 象 はあ らゆる 企業 の 経営 資源 であ る. シリ コ ンバ レ ー モ デルで は中枢 機能 さ えも 流動 化する の であ る. こう した シリ コ ン バ レー モ デルのあ り 方 は,「企 業」 と は, 9 ) 同 時 に た っ た8 年 「経 営 と は どの よう な 意 味を 持つ の か と いう 興 味深 い 研 究 課 題 を提 起 して いる( 」 . , ,. 間に半数の企業に勤務する従業員が職を失い, 新たな職につくということが, 所得の安定性, 所得格差, 社 会の安定性などの問題に, どのような影響を与えているか, よく研究する必要があろう. この 議 論 を展 開す る 時 に注意 しな け れ ばな らな い こと は, シリ コ ンバ レー モ デル と いう コ ンセ プ トがたぶ ん に日 本 向 けに使 わ れて いる こ とであ る. ま ず, 全て の アメ リ カ の 産業 が, シリ コ ンバ レー モ デル で はな い, と いう こ と を確 認 してお き たい‐ シリ コ ンバ レー モ デル は, アメ リ カ 企 業 の 一 般 的な モ デル で はな い. シリ コ ンバ レー モ デル があ て はまる の は, エ レク トロ ニク ス 産業 や 遺 伝 子産 業 な どのハイ テク 分野 に 限ら れてい る. ま た, アメ リ カ の 経営 学 研 究 にお い て, シリ コ ン バ レー モ デル に 関す る 研 究 論文 は 数える ほ どしか なく, 26.

(12) . エレクトロニクス産業と経営者の役割. ほ と ん ど研 究対 象 にさ れて いな い.. 3-2. 総合エレク ト□ニクス企業の経営者交代. 日 本 の 総 合エ レク トロ ニク ス 企 業 は, 企 業 全 体 と して は誰 によ っ て い か に 経営 さ れて いる か. 企業 の重 要. なコーポレートレベルの戦略的選択としての経営者選任を手がかりに検討する. 日本の総資産額上位200社 1993年 の フォ ー チ の非 金 融・ 上 場 大企 業のう ち, 広 義の エ レク トロ ニクス 産 業 に属 する 企 業 は23社 であ る (. 0社売上高ランキングの対象企業とほぼ等しい‐ ここでは多角化度の違いを検討せずに, ュ ン製造業世界50 こ れ ら の23社 をす べ て 総 合 エ レク トロ ニクス 企 業 と 呼ぶ). こ の23社 で 日 本 の エ レク トロ ニク ス 産 業 の最 終. 製品生産・輸出・設備投資・研究開発投資・海外投資などに高い構成比を占めており,その影響力は大きい. こ の23社 につ い て, 94年 6月 ま での有 価 証 券 報 告書 な どの 公 表 デー タ に 基 づ い た, 社長 の キ ャ リ ア と, 企. 業のガバナンス構造を見るための株主の分析を行った‐ 方法としてはサンプル数の少なさ, 長期間の観察の - ・. 必 要 性 か ら, ケ ース をパタ ー ン化 する こ と を 追 求 した‐ なお, こ の23社 のう ち, 1989年 から1994年 前 半 の5. 年半に, 社長交代のあっ た企業は13社であり, うち2社は二度の交代を実施している. (1) エ ン ジニ ア集 団のイ ンセ ンテ ィ ブと しての 内部 昇 進. 簡単に重要な結論だけまとめると, 第一に日本の総合エレクトロニクス企業において内部昇進の社長が選 任される場合には,多くの企業では大学の出身学部レベルでみると理工系出身者が社長に選任されている( 23 ⑩ 社のうち, 内部昇進者社長が10社, うち理工系出身者が7名 ). また, このうち理工系の大学院卒の新社 長も 2名 選 任 さ れて いる‐ 日 本企 業 で は, 大 学 の専 攻 と社 内キ ャ リ ア が一 致 しな い こ とも ある が この 結 果 ,. はエンジニア集団のパワーが社内で強いということを示している‐ 理工系出身の内部昇進者を社長に選任す る こ と によ っ て, エ ンジニ ア集 団 のイ ンセ ンテ ィ ブとなる の であ る‐. これは同時に全社経営 における戦略課題の選択において,研究開発課題の比重が高いことと対応している. 周知のように日本のエレクトロニクス企業は他産業と比して研究開発投資が多い‐ 研究開発課題が重視され る 企業 にお ける 経 営 者 はエ ン ジニ ア と しての判 断能力 も 求め られ, エ ン ジニ ア出 身者 が選任 さ れる と いう こ と であ る (アメ リ カ の研 究 で も 同様 の 結 果 が見 ら れる. Da )‐ t t a and Guthrie l994. しかし, これは逆に 「よいものを作れば売れるはず」 という製品開発最優先志向の組織文化というマイナ ス 面 も 醸成 して いる と考 え ら れる‐ 新 製品モ デル の 過剰 化 モ デルチ ェ ン ジス ピー ドの不 必 要 な速 さ な どが ,. その弊害として指摘される. (2) 株主の経営者選任に対する影響力 第二に経営者交代 における株主の影響力が確認される (これは経営者選任の結果から推測されることであ る). 株 主 の 影 響力 が確 認 さ れる の は次 の二 つ のタイ プである‐ 一 般 に 日 本企 業 はス ピ ンオ フ戦 略による 企業 成 長 をめ ざす が 総 合エ レク トロ ニクス 企業 にお い ても 企 , ,. 業集団の子会社が4社ある‐ 子会社といえども, これだけの大企業になると, 経営者交代にお ける自立性は 高くなり, 内部昇進の社長が選任されることもある. しかし, 筆頭株主としての親会社の持ち株比率は 単 , 独で株主総会の議決を左右できるほど高く, ある継続赤字会社では, 内部昇進社長が更迭され 親会社から , の後継者が 「株主の意思でJ 選任 さ れている. また, 創業者型の個人筆頭株主は3社でみられるが (1社は個人の株式管理会社一日本企業ではこうした 株式管理会社がよく上位株主となっ ている-) , いずれにおいても創業者は長期 間, 社長か会長の座にある‐ 戦後ベンチャーから急成長に成功してきた総合エレクトロニクス企業ではいまだに創業者が健在であり 所 , 27.

(13) . 石 井. 耕. 有 と 経営 の 分離 に至 っ て いな い, と いう こ と を示 している‐ こう した創 業 者 指 導型 の企 業 で は, つ ぎの 経営. 者交代が大きな分岐点となる. 既に創業者が社長・会長から退任した他の総合エレクトロニクス企業のうち 5社では同族 (主に創業者の子息) が社長 に選任されている‐ 同族社長も内部勤続期間は長いが, 一般の従 業員 と は異 なる フ ァ ース ト トラ ッ ク の キ ャ リ ア パス を歩 ん でいる‐. 親会社・創業者型株主以外の16社では, ガバナンス構造としては金融機関の安定株主化が進んでいる‐ そ のうち, 独禁法によっ て株式の10%まで保有可能な生命保険会社が筆頭株主となっ ている企業が10社ともっ とも 多 い‐ 5 %まで保有可能な都市銀行が筆頭株主である企業が2社, 信託銀行が筆頭株主である企業が2. 社, 相互持ち合いが2社である‐ いずれにせよ, 金融機関の安定株主化が進むと, 平常時には株主の経営者 交代 へ の 影 響力 はチ ェ ッ ク 機能 に と どまる.. ところがこれらの安定株主型の企業でも, 前述のように創業者の同族から社長が選任されている事例が5 社となっている. さらに他にも会長に同族が残ったり, また内部昇進の社長から同族の社長へと 「大政奉還」 さ れた 事例 も ある. こ れ ら の企 業 にも 内部 昇進 の 役員 が多 数いる‐ しか し, 総 合 エ レク トロ ニクス 企業 にお. 2 3社中10社) いては, 日本企業の全般的傾向と異なり, 内部昇進社長は少数派なのである ( . この少数派の 多く は戦前 から の 総 合エ レク トロニ ク ス 企 業 で ある. そこ で は, 前 述 した エ ン ジニ ア 集 団のイ ンセ ンテ ィ ブ. が重視されている‐ 多数派は, 創業者・同族からの社長選任である‐ こ れ らの こ と をま とめる と, 株主 の 影響力 で社 長 が選任 さ れる こ と につ い て は シリ コ ンバ レー モ デルも 総 合エ レク トロ ニクス 企 業も 表 面 的 に は類似 して いる‐ しか し, そ の 背 景 とな る ガバ ナ ンス 構造 は違う‐ シリ コ ンバ レー モ デルで は, ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル による 所 有 とコ ン トロー ルの 一 致 で ある‐ 総 合エ レク トロ ニ. クス企業では親会社・創業者・金融機関による安定株式所有という三つのタイプのガバナンス構造がある. そ れをふ ま え て, 少 数派の 戦 前 か ら の 総 合 エ レク トロニク ス 企 業 で は, 安 定株主 がお り, エ ン ジニ ア 出 身の. 内部昇進社長が選任される‐ 多数派である戦後, 専門化から総合化への急成長に成功してきた総合エレクト ロニクス企業では, 会長・社長に創業者・同族出身者が多いという特徴を持つ‐ (3). 経営 者 交代 の 遷 移 構 造. ,. エ レク トロニクス 産業 は戦 後 の 急成 長 産 業 であ り, 日 本 でも 専 門 ベ ンチ ャ ー か ら 出発 し, 総 合エ レク トロ ニク ス 企 業 と して成 功 した 事例 が多 い 産業 であ る (他 に はス ー パ ー, 住 宅な どの企 業 に多 い)‐ こ の こ と は,. 企業のガバナンス構造と経営者交代のフレームワークを検討する絶好の素材を提供していることを意味す る‐ な ぜな ら ば, つ ぎの段 階 を 短期 間 に経験 し, そ の コー ポ レー ト レベ ルの 戦略 的 選択 の結 果 を見 せ てく れ. るからである. 所有と経営の分離は, 歴史的な変化の問題であるとともに, このような個別の企業の規模の 拡大にともなう問題でもあるのである. 第一段階 小規模専門ベンチャー段階 創業者による多数株式の所有と創業者による経営 (所有と経営の一致) 第二段階 多角化・総合化による成長段階 上場・株式発行による資金調達で株式所有の分散化, 創業者による経営の持続・内部昇進従業員の成長 第三段階 総合エレクトロニクス企業段階 一層 の株式発行で金融機関の安定株主化 (筆頭株主の交代), 創業者の退任 (あるいは死去). この第三段階の次に, 経営者選任についての, 重要な戦略的選択がある. 28.

(14) . エレクトロニクス産業と経営者の役割. 戦略的選択A. ) I 同族への経営者交代Q. 戦略的選択B. 内部昇進社長への交代. い っ た ん こ の 戦 略 的 選 択 を 通 過 す る と, そ れ以 降の 経 営 者 選 任 は, Norma i t ve Ar enasと して の 取 締 役 会 によ っ て, ほと ん どルー ティ ン化 す る 可 能性 がある (ocas i )‐ o l996. ある企業がどのような要因によって, 戦略的選択Aと戦略的選択Bの分岐点を決定するのだろうか‐ この こ と は, 戦 前 か らの 日 本企業 で は 戦後 の 財 閥 解 体 な どによ っ て, B を 選 択する こ とで 解 決 済みの こ と である‐. また, これは, 多くのアジアの急成長企業が今後通過しなければならない分岐点でもある. 3ー3. イ ン プ リケ ー シ ョ ン. 本節 は, 総 合 エ レク トロ ニクス 企業 と シリ コ ン バ レー モ デルの優 劣 を 論 じる こ と を目 的 と して いる わ けで. はなく, コーポレートレベルの経営戦略や組織文化に経営者交代とその規定要因としてのガバナンス構造が どのような影響を与えるかについての論点を提出することに目的があっ た. 最後にここで提出された論点が 総 合 エ レク トロ ニクス 企 業 に どのよう なイ ン プリ ケー シ ョ ンを持 っ て いる か につ い て 若 干 の 議 論を進 め て , お き たい. 技術 革 新ス ピ ー ドが速く, 世界 レベ ル で の事業 展 開 が 求め ら れる エ レク トロ ニク ス 産 業 にお いて は コー , ポ レー ト レベ ル の 経 営 戦 略 にお い て, メ リ ハリ の つ いた 資 源 配分 と そ れ を実 行する 強 いリ ー ダー シ ッ プが必 要 である‐ 総 合 エ レク トロ ニ クス 企 業 の 中でも, エ ン ジニ ア集 団のイ ンセ ンテ ィ ブを重 視 した経営 者 交代 と いう 戦 略的 選 択 を 行 っ ている 企 業 は, 研 究 重 視 と いう 組織 文 化 はつ く りえ ても 事 業 間のメ リ ハリ のつ い た , 資源 配 分 を, ト ッ プ のリ ー ダー シ ッ プ によ っ て 実 施 しう る か につ い て は 多く の 課題 を抱 え て いる そ の結 . , 果, 専 門化 した 分 野 で 技術 革 新 に対 応 し, デフ ァ ク トス タ ン ダー ドを確 立す る シリ コ ンバ レー モ デル に常 に 遅 れ をとる. な ぜ な ら ば, コー ポ レー トレベ ルの 資 源 配 分 にリ ー ダー シ ッ プを と る 機 構 が弱 いか らで ある ‐ しか し, 分権 化 した各 セク シ ョ ン (事 業部 ・機 能部 門) の 従業員 の平 均 的 な レベ ルの高 さ によ っ て シ ョ ー , トラ グの 製 品 開発, シ ョ ー トラ グの コス ト ダウ ン を継 続 的 に実 行 して 決 定 的な 敗北 に は到 らな い(脚 技 術 , 開発 のス ピ ー ドが弱 ま っ た 時 に, コス トダウ ンと 低価 格 戦 略 そ して 激 しい企 業 間競 争 によ っ て 「家 電化 , 」 , した 分 野 の シ ェ ア を, い っ き に拡 大 す る 可 能 性 を秘 め て いる ‐ 一方, 創 業 者 によ る 強 いリ ー ダー シ ッ プを維 持 して いる 企 業 は ト ッ プ ダウ ンの意 思 決定 によ っ て 場 合 , , によ っ ては, シリ コ ン バ レー モ デルよ り速 い意思 決定 が可 能 であ り 独 自性 をも っ た 製品 で デフ ァ ク トス タ , ン ダー ドを確 立 し, 寡 占的 なパ ワ ー を 持つ こ とも 可 能 で ある しか し メ リ ハリ のつ い た資 源 配分 に失 敗 す ‐ ,. ると惨めな敗北を喫する‐ 問題は前述した第三段 階における戦略的選択Aと戦略的選択Bである Aを選択 ‐ す れ ば, 創 業 者 によ る 経営 以 上 に, 同族 後 継 者 によ っ て 強 いリ ー ダー シ ッ プが と ら れる 可 能性 がある し , ‐. かし, それは同時に独裁のリスクがある‐ 創業者よりは 企業家精神をもたず なおかつ企業に特有の知識 , , を持たない後継者の意思決定は, 極端な成功と極端な失敗のいずれかに帰結する確率が高くなる . B を選 択 す れ ば, エ ン ジニ ア 集 団のイ ンセ ンテ ィ ブ重 視 によ っ て 意思 決定 が後 追 い 型 にな り メ リ ハリ , ,. のついた資源配分ができない可能性がある. 一つの突破口は この段階でエンジニアのインセンティ ブ重視 , の経営者交代を目指さないことかもしれない. エンジニ ア重視の組織文化に 異質性を導入するのである , . 従 来 の 意思 決定 と の 異 質 性 を 生 む基 盤 をつ く る と いう こ と である そ れ が 総合 エ レク トロニクス 企 業 の 経 ‐ ,. 営者の新しい役割かもしれない‐. 29.

(15) . 石 井. 耕. }王 :. (1) 店頭登録企業約6 00社中, エレクトロニクス47社, ソフトウエア40社. 19 1 9 )参照. (2) ゼロックスのPARCL(パロアルト研究センター)からの技術流出については多くの文献があるが, 例えばブラウン( (3) 組織文化のチェンジエージェントとしての経営者の役割については塩次 ( 19 86A, B, C) 参照. (4) 本節は, 石井 ( 9 4 ) をもとにした. 19 (5) マイクロプロセッサーの開発は, 「電卓戦争」 の中で, 日本の中小企業 ビジコン社の依頼によって, インテルで行われた. その使 用権は当初ビジコン社にあり, 後にインテルに譲り渡された. また, ビジコン社は, 発注したのみならず, 技術者を派遣した. それが, 嶋正利氏であり, 開発の経緯全般に従事した唯一の人物であり, 後にインテルのマイクロプロセッサーの首席デザイナーな どを務めて 2 ) ) などに詳しい. 199 5 199 いる. こう した開発についての状況は, 嶋 ( , 相田 ( マイクロソフトのMS-DOS採用は, 工BMのパーソナルコンピューター市場への参入局面で, 行われた. パソコン参入に出遅れた I BMは, ドン.エストリ ッジ率いる開発チームが, 「ほとんど外部メーカーから調達した部品ばかりで, 製品を組み立てる」 方針を. 8を採用 した. OSには, デジタルリサーチのCP/Mを採用する予定であった‐ こ 打ちだし, マイクロプロセッサーにインテルの808 れ がう ま く い か ず, マイ ク ロ ソフ トにO S を 依 頼 した の で ある. そ こ で, ビル ・ ゲイ ツ は, シ ア トル・ コ ン ピ ュ ー ティ ン グか らO S の. 著作権を買い取り, MS-DOSに改良して, IBMに納入したのである. ただし, OSの権利はマイクロソフトにあり, IBMは使 用料を払うという合意であった. この当時, 西和彦氏はマイクロソフトの副社長であり, この意様決定に関わっている. この経緯は, 93 19 9 4 19 ) ) などに詳しい. ファーガソン・モリス ( , 富田 ( パソコン産業の開発の歴史を読むと, それは日米の企業間競争の激しさ, 急速に変化する産業組織の状況に, 企業がどのように対応し てきたか, という歴史であることがわかる. マイクロプロセッサーと0Sにおけるインテルとマイクロソフトの優位は, 決してアメリ カ人と日本人の創造性の違いなどではない‐ 「やや」 創造的であった企業 (ビジコン, シアトル・コンピューティング) から権利を買 い取った企業であるインテル, マイクロソフトが, その経営における戦略的選択の正しさによって, 現在勝利しているのである‐ 同じ ことば, VCR, ファクシミリ, CD, 液晶などでも起こった訳であり, これらでは日本企業が制覇したわけだが, パソコンでは目前 にあった大魚を逸してしまったのである, といったらいいすぎであろうか. (6) S エS (戦略的情報システム) の議論で, もっとも重要なことは, コンピュータを用いて, 経営の仕組みを変えるということであ る. これは, 合理化・効率化, 生産性の向上, 業務改善などとは決定的に異なる. 産業組織, 企業間競争のコンテキストで語られなけ ればならない. 顧客を獲得・維持するために, 競争に勝つために, 競争力を強化するために, コンピュータを用いてなにをするべきか, ) などが参考になる‐ 5 ) 小川 ( 19 93 19 93 日本では, こう した観点からの研究が少ない. 戸田 ( , 199 (7) 本稿は, 筆者の前職の同僚であった三菱総合研究所 尾高悠子主任研究員, 市川幹人研究員等との共同研究によるところが大きい (三菱総合研究所 ( 19 91 ) など) . 特に, 図2に関わる叙述は, 市川研究員に負っている. (8) 本節は, 19 95年組織学会研究発表大会報告 「総合エレクトロニクス企業とシリコンバレーモデル‐経営者交代の実証研究」 に基づ い て いる. (9) シリ コ ン バ レー モ デルのメ リ ッ ト・ デメ リ ッ トは 何 か と いう こ と であ る. 成 功 した マイ ク ロ ソ フ ト・ HP ・ ア ッ プル・イ ンテ ル に. 共通性は本当にあるのか, 今後こうした成功企業は大規模化とともにどのような方向に進むのか, 等興味深い研究課題は多い. 10 ( ) 大手5社 (日立・東芝・三菱電機・日本電気・富士通) は全てそうである. ( ) 同族への経営者交代を, カナダの学生に説明すると, 「それはネポティズムではないか」 と必ず言われる. 11 ( 1 2 ) 結果として 「利益なき繁忙」 が続く.. 参考文献: 92 相田 洋 ( ) 『電子立国日本の自叙伝』 日本放送協会 19 94 ) 「アジアのパソコン産業の現状と日本との関わり」 機械振興協会経済研究所報告 『アジアの関係深化と技術交流』 19 19 9 4 石井 耕 ( 年4月 ) 『現代日本の製造業-変わる生産システムの構図』 新評論 19 9 4 鵜飼信一 ( ) 『POSとマーケティング戦略』 有斐閤 小川孔輔編 ( 199 3 1993 )『第29回大会報告集 統一論題 財閥における所有者・経営者関係の比較研究』 特に服部報告 (韓国) 末広報告 (タイ) 経営史学会 ( 87 ) 『人材形成の国際比較一束南アジアと日本』 東洋経済新報社 小池和男, 猪木武徳編 ( 19 ) 『コンピューター』 日本経済新聞社 佐野紳也, 出川 淳 ( 19 93 塩次喜代明 ( 1986A) 「会社支配と経営者交代」 『松山商大論集』37巻3号 7巻4号 塩次喜代明 ( 1986B) 「経営者交代論の系譜と仮説 (エ)」 『松山商大論集』 3 「 『 7巻5号 塩次喜代明 ( 1986C) 経営者交代論の系譜と仮説 (D)」 松山商大論集』 3 19 95 ) 『次世代マイクロプロセッサ』 日本経済新聞社 嶋 正利 ( 4 199 4 ) 『世界のコンピュータマッ プ9 ジャストシステム出版編集部編 ( 』 ジャストシステム 新宅純二郎 ( 19 9 4 ) 『日本企業の競争戦略』 有斐閣 南原 真( 199 3 ) 『タイの財閥-ファミリービジネスと経営改革』 同文館 末広 昭, 30.

参照

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