旭川市の小学校における排泄の失敗事例に関する調査
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第別巻 第1号. 平成15年 9 月. JournalofHokknidoUniversityofEducation(Education)Vol.54,No.1. September,2003. 旭川市の小学校における排子世の失敗事例に関する調査. 芝木美沙子* 松浦 和代** 安部 奈生)t**. 笹嶋 由美*. * 北海道教育大学教育学部旭川校 臨床医科学・看護学教室 **旭川医科大学医学部看護学科 看護学講座. ***北海道教育大学附属旭ノーl小学校. AStudyonCasesofExcretoryFailureofElementarySchooIChildreninAsahikawa. SHIBAKIMisako,MATSUURAKazuyo,ABENao,SASAJIMA%mi. DepartmentofClinicalScienceandNursing,AsahikawaCampus. HokkaidoUniversityofEducati()n AsahikawaO70−8621. Ⅰ.はじめに. 近年,健康への意識が高まる中で,食生活と排泄に関することや乳幼児期のトイレットトレーニングのあ り方などについては種々の調査研究がなされている1)2).また,最近は,トイレと排泄の関係に着目した研. 究もあり,学校のトイレの問題点も指摘されている3)4).しかし,排泄が自立したあとの,排泄の失敗に関 する調査研究は見あたらない.. そこで,我々は,集団生活をしている学校での失敗の原因と問題点,その時の対応などについて知ること. を目的に小学校における排泄の失敗事例に関する調査を行ったので,その結果を報告する. Ⅰ.調査対象及び方法 旭川市内の児童数300名以上の学校37校とした.学校長に対して文書で調査を依頼し,その後電話によっ て同意の有無を確認することとした. 1.聞き取り調査 児童が排泄を失敗したときの相応や着替えなどについて,養護教諭を対象に聞き取り調査を,平成11年5 月⊥7月に行った. 2.事例調査 排泄の失敗事例に関して,調査用紙を養護教諭に郵送し,具体的事例について調査用紙に記入してもら い,後日回収した.期間は平成11年4月の始業式∼6月末日までとした. 207.
(3) 芝木美沙子・松浦 和代・安部 奈生・笹嶋 由美. Ⅱ.結 果. 聞き取り調査に関して協力が得られたのは31校で,そのうち,事例調査に協力が得られたのは28校であっ た.. 1.学校について. 学校規模は,「300∼400人」9校(29.0%),「400∼500人」9校(29.0%),「500∼600人」8校(25・8%), 「600人以上」5校(16.1%)であり,平均496.7人であった.. 養護教諭の経験年数は,12∼36年で「25年以上」14校(45.2%),「20∼25年」13校(41.9%),「20年以 下」4校(12.9%)であり,平均24.1年であった. 小学校の養護教諭としての経験年数は,1∼30年で30校が10年以上で,1校だけが1年であった. 2.平成10年度の失敗事例について 平成10年度,排泄の失敗事例があったかについては,「あり」が23校,「なし」が1校で,転勤などのため. 把握できなかったものが7校あった.失敗の内訳は,排尿の失敗が20校であり,排便の失敗が12校であっ た.. 平成10年度の失敗事例の人数及び件数は,排尿が186人,平均7.8人で,件数は240件,平均10.0件であっ た.排便が30人,平均1.3人で,件数は47件,平均2.0件であった.. 3.具体的失敗事例について. 調査を行った28校のうち1校は失敗事例がなかったが,他の27校で113件の失敗事例があった.少ない学 校は1件であったが,多い学校では19件であり,平均4.0件であった.. 排尿は85人で87件,1校平均3.0人,3.1件であった.排便は20人で23件,1校平均0.7人,0.8件であり, 不明3件であった.. 1)対象者について. 表1‡椚世の失敗事例 全 男子. 体 女子. 排. 合計. 男子. 件(%) 排. 尿 女子. 合計. 男子. 便 女子. n=60 n=53 n=113 n=41 n=46 n=87 n=17 n=6 37. 41. 28. 34. 62. 8. 6. 14. 1年生. (61.7ト (77.4) (69.0) (68.3) (73.9) (71.3) (47.1) (100.0) (60.9). 2年生. (23.3) (7.5) (15.9) (17.1) (8.7) (12.6) (35.3). 14 4. 4. 3. 18 7. 7. 3. 6. 4. 3. (6.7) (5.7) (6.2) (7.3) (6.5) (6.9) (5.9). 4年生. (3.3) (3.8) (3.5) (2.4) (4.3) (3.4) (5.9). 2. 2. 4. 3. 2. 2. 3. 3. 0. (1.7) (3.8) (2.7) (2.4) (4.3) (3.4). 6年生. (3.3) (1.9) (2.7) (2.4) (2.2) (2.3) (5.9). 3. 6. (26.1). (4.3) 0. 5年生. 2. 0. 0. 6. 3年生. 2. 208. 78. 合計. n=23. 2. (4.3) 0. 0. 0. (4.3).
(4) 旭川市の′ト学校における排泄の失敗事例に関する調査. 学年別では,「1年生」が78件(69.0%)と最も多く,次いで「2年生」18件(15.9%),「3年生」7件 (6.2%)と学年が進むにつれて少なくなっている.しかし,「6年生」でも3件の失敗事例があった(表. 1). 男女別では,全体としては「男子」の方が60件と多く,「女子」は53件であった.しかし排尿は「男子」 41件に対し,「女子」46件,排便は「女子」6件に対し「男子」17件であり,排尿の失敗事例では男女差が なかったが,排便の失敗事例は男子に多かった(P<0.05).. 2)発生時期. 発生した月では,「5月」が58件(51.3%)と最も多く,「6月」・30件(26.5%),「4月」25件(22.1%) であった.排泄別では,排尿は「5月」が41件(47.1%)と最も多く,「6月」25件(28.7%),「4月」21. 件(24.1%)であった.排便も「5月」が15件(65.2%)と最も多く,「4月」と「6月」が各4件 (17.4%)であった.. 発生した曜日では,「金曜日」が26件(23.0%)と最も多く,次いで「水曜日」24件(21.2%),「火曜 日」21件(18.6%),「木曜日」20件(17.7%),「月曜日」13件(11.5%),「土曜日」6件(5.3%),「日曜 日」3件(2.7%)であった.排泄別では,排尿は「水曜日」と「金曜l]」が各20件(23.0%)と最も多 く,次いで「木曜日」16件(18.4%),「火曜日」15件(17.2%),「月曜日」10件(11.5%),「土曜日」4件 (4.6%),「日曜日」2件(2.3%)であった.排便は「金曜日」が5件(21.7%)と最も多く,次いで「火 曜日」,「水曜日」,「木曜日」が各4件(17.4%),「月曜日」3件(13.0%),「土曜日」2件(8.7%),「日 曜日」1件(4.3%)であった.. 3)時間帯 排泄を失敗した時間帯は,「授業中」が53件(46.9%)と最も多く,次いで「休み時間」16件(14.2%), 「行事」13件(11.5%)などであった.授業中では,「3時間目」が17件と最も多く,次いで「4時間目」. 13件,「2時間目」10件,「1時間目」7件,「5時間目」6件であった.また,教科は,「算数」が9件と最 も多く,次いで「国語」6件,「図工」と「体育」が各5件,「生活科」2件,「音楽」1件で,残り2件は 不明であった.排泄別では,排尿は「授業中」が44件(50.6%)と最も多く,次いで「休み時間」12件 (13.8%),「行事」11件(12.6%)などであった.授業中では,「3時間目」が16件と最も多く,次いで. 表2 排泄を失敗した時間帯 全体. n=113 授業中. 53. 排 泄 別. 年. 給食. その他. 性. 別. n=87 n=23 n==78 n=18 n=7 n=4 n=3 n=3 n=60 n=53 44. 7. 42. 3. 3. 2. 29. 2. 24. (46.9) (50.6) (30.4) (53.8) (16.7) (42.9) (50.0) (66.7) (33.3) (48.3) (45.3) 12. 下校時. 別. 排 尿 排 便 1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 男 子 女 子. 4. 8. 6. 0. 休み時間 16 行事. 件(%). 0. 13. 2. 6. 3. 2. 0. (11.5) (12.6) (8.7) (7.7) (16.7) (28.6) 7. 5. 2. 6. 0. 9. 8. 7. 4. 3. 5. 13. 8. 3. 7. 5. (33.3) (33.3) (13.3) (9.4) 0. 0. 0. (6.2) (5.7) (8.7) (7.7) (5.6). 6. (1.7) (11.3). 0. (6.2) (4.6) (13.0) (6.4). 7. (33.3) (15.0) (13.2). (25.0). 0. 0. (14.3) (25.0) 5. (11.5) (9.2) (13.0) (9.0) (27.8) (14.3). 0. 3. 4. (5.0) (7.5) 0. 0. 8. 5. (13.3) (9.4). 209.
(5) 芝木美沙子・松浦 和代・安部 奈生・笹鴫 由美. 「4時間目」11件,「2時間目」8件,「5時間目」6件,「1時間目」3件であった.排便では,「授業中」 が7件(30.4%)と最も多く,次いで「休み時間」4件(17.4%),「給食」3件(13.0%)などであった. 授業中では,「1時間目」が3件と最も多く,次いで「4時間目」2件,「2時間目」と「3時間目」が各1 件であった(表2).. 4)場 所 排泄を失敗した場所は,「校舎内」が89件(78.8%),「校舎外」が20件(17.7%)であり,その中でも 「教室」が54件(47.8%)と最も多く,次いで「トイレ」19件(16.8%),「校地外」12件(10.6%)などで あった.排尿では「校舎内」が71件(81.6%),「校舎外」が13件(14.9%)であり,その中でも「教室」が 46件(52.9%)と最も多く,次いで「トイレ」16件(18.4%),「校地外」8件(9.2%)などであった.排. 便では,「校舎内」が16件(69.6%),「校舎外」が6件(26.1%)であり,その中でも「教室」が6件 (26.1%)と最も多く,次いで「校地外」4件(17.4%),「トイレ」3件(13.0%)などであった(表. 3). 表3 排泄を失敗した場所 全体 n=113. 排i世 別. 学. 件(%) 年. 性. 別. 別. 排 尿 排 便 1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 男 子 女 子. n=87 n=23 n=78 n=18 n=7 n=4 n=3 n=3 n=60 n=53 54. 教室. 46. 6. 41. 6. 2. 2. 31. 2. 23. (47.8) (52.9) (26.1) (52.6) (33.3) (28.6) (50.0) (66.7) (33.3) (51.7) (43.4). トイレ 校. 19 6. 国. 16. 3. 12. 4. 2. 0. 0. (16.8) (18.4) (13.0) (15.4) (22.2) (28.6) 4. 2. 5. 0. 8. (33.3) (13.3) (20.8) 0. 0. 0. 10. 内. 5. 5. 6. 4. その他 (8.8) (5.7) (21.7) (7.7) (22.2) 89. 計. 71. 16. 64. 15. 3. 3. (5.0) (5.7). (5.3) (4.6) (8.7) (6.4) (5.6) 0. 0. 0. 0. 5. 5. (8.3) (9.4) 4. 2. 2. 47. 2. 42. (78.8) (81.6) (69.6) (82.1) (83.3) (57.1) (50.0) (66.7) (66・7) (78.3) (79.2) 校地外 校 国 にコ. 12. 8. 4. 7. 2. 2. 0. 8. 5. 2. 6. 0. 計. 20. 13. 6. 13. 3. 0. 0. (33.3) 2. (17.7) (14.9) (26.1) (16.7) (16.7) (28.6). 6. 5. 0. 9. (33.3) (33.3) (18.3) (17.0). 失敗した理由としては,「間に合わなかった」22件(19.5%),「何かに夢中になっていた」19件 (16.8%),「トイレに立ちにくい,言い出しにくい状況だった」19件(16.8%),「おなかをこわしていた」 14件(12.4%),「トイレで排泄したが,洋服を汚してしまった」「トイレが近くになかった」「我慢しすぎ た」「遺糞症,遺尿症などの疾病またはその疑い」「緊張など精神的な理由が考えられるもの」が各4件など であった.排泄別では,排尿は,「間に合わなかった」20件(23.0%),「何かに夢中になっていた」19件 (21.8%),「トイレで排尿したが洋服を汚してしまった」「トイレが近くになかった」「我慢しすぎた」が各 4件,「緊張など精神的な理由が考えられるもの」3件などであった.排便は,「おなかをこわしていた」が 14件(60.9%)と最も多く,その他「トイレに立ちにくい,言い出しにくい状況だった」「緊張など精神的. 210. 3. (8.3) (5.7). 5)理 由. な理由が考えられるもの」などがあった.. 6. (33.3) (10.0) (11.3). ・校庭 (7.1) (5.7) (8.7) (7.7) (5.6). 外. 0. (10.6) (9.2) (17.4) (9.0) (11.1) (28.6).
(6) 旭川市の′ト学校における排泄の失敗事例に関する調査. 6)来室時の状況. 「担任と来室した」が70件(61.9%)と最も多く,次いで「ひとりで来室」25件(22.1%),「担任が着替 えを取りに来た」6件(5.3%),「他児の知らせで現場に行った」「担任以外の教師と来室」「担任以外の教. 師の知らせで現場に行った」が各2件(1.8%),その他が6件であった.排泄別では,排尿は,「担任と 来室した」が56件(64.4%)と最も多く,次いで「ひとりで来室」20件,(23.0%),「担任が着替えを取りに 来た」3件(3.4%),「他児の知らせで現場に行った」「担任以外の教師と来室」が各2件(2.3%),「その 他」が4件であった.排便は,「担任と来室した」が12件(52.2%)と最も多く,次いで「ひとりで来室」 5件(21.7%),「担任が着替えを取りに来た」3件(13.0%),「担任以外の教師の知らせで現場に行った」 2件(8.7%),「その他」が1件であった. その時の様子では,「ふつう」が83件(73.5%),「落ち込んでいた」14件(12.4%),「泣いていた」9件 (8.0%),「その他」7件であった.排泄別では,排尿は,「ふつう」が64件(73.6%),「落ち込んでいた」. 11件(12・や%),「泣いていた」8件(9・2%),「その他」4件であった.排便は,「ふつう」が16件 (69.6%),「落ち込んでいた」3件(13.0%),「泣いていた」1件(4.3%),「その他」2件であった. 4.失敗時の対応ついて 1)体の汚れに対して. 児童の身体の汚れに対しては,排尿の場合,「そのまま」13校(41.9%),「タオルなどで拭く」12校 (38.7%),「汚れ具合によっては拭く」5校(16.1%)であった.排便の場合,「タオルなどで拭く」が25 校(80.6%)とほとんどであった.その他「洗う」「保護者に連絡し帰す」「親に対応してもらう」「タオル などで拭くが,その後帰宅させ,入浴させてもらう」がそれぞれ1校あった.また,このことに関連し, シャワーの設置を望む学校が18校(58.1%)あった.. 2)着替えの用意 児童の着替えは全ての学校で用意していた.「以前からあったものだけでは不足し,さらに用意した」15. 校(48.4%),「以前からあったものをそのまま使用している」13校(41.9%),「学校に用意されてなく,新 たに用意した」3校(9.7%)であった.どのような形で用意したかでは,「新たに校費などで購入した」8. 校,「養護教諭自身や他の教師・親などからの寄贈」6校,「購入と寄贈」3校であった. 貸した衣類の返却については,下着以外は,全ての学校で「洗って返却してもらう」であった.下着の返. 却については,「洗って返却してもらう」26校(83.9%),「新品を貸し,新品を購入して返却してもらう」 5校(16.1%)であった.. 3)汚れ物の取り扱い. 汚れた衣類の処理では,排尿の場合,「そのまま持たせる」26校(83.9%),「時と場合による」3校 (9.7%),「洗って持たせる」2校(6.5%)であった.排便の場合,「そのまま持たせる」10校(32.3%), 「洗って持たせる」10校(32.3%),「時と場合による」4校(12.9%),「汚れがひどいときは処分する」2 校(6.5%),「その他」5校(16.1%)であった.. 4)失敗時の配慮,困難点 特に配慮していること,因っていることを聞いたところ,特に配慮していることとしては,「他児童に気 づかれないようにするなど,他児童に対する配慮」13校,「失敗した児童への精神的な援助」10校,「担任と 211.
(7) 芝木美沙子・松浦 和代・安部 奈生・笹嶋 由美. 連携をとる」6校等があげられていた.. 因っていることとしては,「着替えの不足」や「洗ってあるとはいえ,他人が使用した下着を使用させる ことへの抵抗感」,特に排便の場合,「処置する場所の問題」「身体をきれいにするにも,学校では限界があ る」等があげられていた.. Ⅳ.考. 察. 1.具体的失敗事例について. 調査期間の約3カ月では,失敗事例がない学校もあったが,27校で平均4.0件の失敗事例があり,1年間 で考えると,相当数の失敗事例があるものと思われる.入学直後の1年生が約70%と多かったが,高学年で も失敗することはあり,失敗事例は全学年でみられた.. 男女別では,排尿の失敗事例は男女差がなかったが,排便の失敗事例は男子に多かった.これは,排便の 失敗事例の原因の多くは下痢によるものであり,下痢になることは女子よりも男子に多い4)ことが関係して いるものと思われたぃ. 発生時期は,この3カ月では,5月が多かったが,これは,緊張が解ける時期ということもあると思われ るが,遠足・運動会など学校行事が集中していることも原因として考えられた. 発生時間では,学校で多くの時間を過ごす授業中が最も多く,特に排尿では,3時間目が最も多かった.. これは2時間目と3時間目の間に20∼25分ぐらいの長い休み時間を設定し,遊びの時間としていることが多 いが,ぎりぎりまで遊んでしまい,トイレに行く時間がか−(トイレに行くことも忘れ遊んでしまう)こと が原因と考えられた.排便では,1時間目が多かったが,これは排便反射との関係が考えられた. 排泄を失敗した場所では,教室が最も多かったが,次いでトイレが多く,トイレまで行きながら間に合わ なかったことや洋服の下げ方が悪く,洋服を汚してしまったものがあった.校地外では,登校途中・下校途 中で間に合わなかったものもあるが,遠足時,現地のトイレ不足が原因と考えられるものがあった.遠足な ど学校外での活動時には,トイレの場所・数などについては十分注意して,実地踏査を行う必要があると思 われた.. 失敗した理由では,排泄行動が確立されておらず,未熟な面が考えられるもの,遺糞症や遺尿症などの疾 病によるものまたはその疑いがあるものもあった.しかし,低学年では,入学後,間もないために言い出せ. なかったもの,自由にトイレにいける状況の中,何かに夢中になっていてその場で失敗してしまう,また は,あわててトイレに向かうが間に合わなかったものが多かった.そして,高学年では,授業中や行事の途 中でトイレに行きにくかったことが原因として考えられた.. 2.失敗時の対応について. 児童の汚れたからだの処置では,排尿の場合は「そのまま」というものが13校と多く,「タオルなどで拭 く」,「汚れ具合によっては拭く」があわせて17校であった.排便の場合は,「タオルなどで拭く」が25校と 多かった.どちらも拭くことが多いが,その場合保健室には給湯設備がないことも多く,水で拭かざるを得. ない学校があった.また,下痢の場合,タオルで拭いただけではきれいにできず,自宅に戻って入浴をさせ てもらっている学校もあった.しかし,「家族と連絡が取れず,冬季であったが,お湯もない状況で,トイ. レで水をかけて流さざるを得ず,児童にも申し訳なく,自分自身もつらかった」としている養護教諭もい た.現在,保健室には給湯設備がないことも多いが,このような場合だけでなく,葛法や傷口をきれいに洗 うためなど,保健室ではお湯が必要とされる場面は多く,給湯設備は早期に設置されることが望まれる.ま 212.
(8) 旭ノーl市の′ト学校における排泄の失敗事例に関する調査. た,シャワー設備も望まれている設備であった.このように身体が汚れたときはもちろんだが,アトピー性. 皮膚炎などの児童では,汗を流すことが皮膚炎を悪化させないために必要なことであり,シャワーの設置は その意味からも望まれることである5). 児童の着替えは全ての学校で用意していたが,小学校の場合,いろいろなサイズのものを用意しなければ ならず,用意はしてあるが,サイズが合わず,合わないサイズのものを着せざるを得なかったり,親に持っ てきてもらったりすることがあった.また,たびたび失敗する児童では,保健室に着替えを用意させている 場合もあった.予算などの関係で難しい面もあると思われるが,不要になった衣類を寄贈してもらう等工夫. して,考えられる仝サイズを用意しておくことが望まれる. 貸した衣類の返却については,下着以外は,全ての学校で「洗って返却してもらう」であった.下着につ. いても「洗って返却してもらう」学校が26校と多かったが,「新品を貸し,新品を購入して返してもらう_1 学校が5校あった.下着を洗って返却してもらっている学校では,他人が使用した下着を使用させることへ の抵抗感を述べる養護教諭もいたが,保護者に新品を購入してもらうことは,保護者に負担を強いるため難 しいという養護教諭も多かった.また,新品を購入して返却してもらっている5校でも,何度かお願いして も返却されない場合があり,校費で追加することを考えなければならないとしていた. 汚れた衣類の処理では,排尿の場合「そのまま持たせる」学校が26校と多かったが,排便の場合,「その. まま持たせる」学校と「洗って持たせる」学校とが同じ10校であった.臭気の関係もあり,洗って持たせた いと思っても,洗濯などをする設備がない学校が多く,洗濯機や汚物処理ができる設備などを望む声もあっ. た.また,持たせる場合,帰りに保健室に取りに来させるなど配慮している学校があった.. Ⅴ。ま と め. 旭川市内の小学校31校の養護教諭を村象に,排泄の失敗に対する対応について聞き取り調査を行い,その うち28校に対し,排泄の失敗事例に対する調査を行ったところ,次のような結果が得られた. (1)28校のうち1校は失敗事例がなかったが,他の27校で113件の失敗事例があった.少ない学校は1件 であったが,多い学校では19件であり,平均4.0件であった.排尿は87件,平均3.1件,排便は23件,平 均0.8件であった.. (2)学年別では,「1年生」が78件と最も多く,次いで「2年生」18件と学年が進むにつれて少なくなっ ているが,「6年生」でも3件の失敗事例があった.. (3)男女別では,排尿は「男子」41件に対し「女子」46件,排便は「女子」6件に対し「男子」17件であ り,排尿の失敗事例では男女差がなかったが,排便の失敗事例は男子に多かった. (4)発生した月では,「5月」が58件と最も多く,排尿・排便ともに「5月」が最も多かった.これは緊 張が解ける時期ということも考えられるが,遠足・運動会など学校行事が集中していることも原因と考 えられた.. (5)排泄を失敗した時間帯は,「授業中」が53件と最も多く,次いで「休み時間」16件,「行事」13件など であった.排尿では,3時間日が多かったが,中休みの遊びの時間のため,ぎりぎりまで遊んでしまう ことが原因と考えられた.排便では1時間目が多く,排便反射との関係が考えられた.. (6)排泄を失敗した場所は,「教室」が54件と最も多く,次いで「トイレ」19件,「校地外」12件などで あった.校地外では,登校途中・下校途中で間に合わなかったものもあるが,遠足時,現地のトイレ不 足が原因と考えられるものがあり,トイレの場所・数などについては十分注意して,実地踏査を行う必 要があると思われた. 213.
(9) 芝木美沙子・. 松浦 和代・安部 奈生・笹嶋 由美. (7)失敗した理由では,排泄行動が確立されておらず,未熟な面が考えられるもの,遺糞症や遺尿症など の疾病によるものまたはその疑いがあるものもあったが,言い出せなかったもの,何かに夢中になって いてその場で失敗してしまうものが多かった. (8)児童の汚れたからだの処置では,排尿の場合は「そのまま」というものが13校と多く,「タオルなど で拭く」,「汚れ具合によっては拭く」があわせて17校であった.排便の場合は,「タオルなどで拭く」 が25校と多かった.現在,保健室には給湯設備がないことも多いが,このような場合だけでなく,葛法 や傷口をきれいに洗うためなど,保健室ではお湯が必要とされる場面は多く,給湯設備は早期に設置さ れることが望まれる.. (9)汚れた衣類の処理では,排尿の場合「そのまま持たせる」学校が26校と多かったが,排便の場合, 「そのまま持たせる」学校と「洗って持たせる」学校とが同じ10校であった.臭気の関係もあり,洗っ て持たせたいと思っても,洗濯などをする設備がない学校が多く,洗濯機や汚物処理ができる設備など. を望む声もあった.. ㈹ 特に配慮している上と,困っていることでは,「他児童に気づかれないようにするなど,他児童に対 する配慮」13校,「失敗した児童への精神的な援助」10校,「担任と連携をとる」6校等があげられてい た.. 排泄を失敗することは,本人にとって,とても自尊心が傷つくことであり,周囲の児童に気づかれないよ うに村処することは,とても重要なことと思われる.多くの場合,その児童に最初に気づき,対処するのは 担任であり,担任が果たす役割は大きく,今回の調査でも,担任がすばやく適切に対処したことで,他の児. 童に気づかれずにすんだと思われる例があった.また,気づかれた場合も,担任の態度や指導は重要であ り,いじめやからかいの村象になることがないようにする必要がある.. また,失敗事例ではないが,排泄にかかわる問題点として,「洋式トイレでなければ排泄できない」「排便 は,学校のトイレでは出来ない」「みんながいる休み時間中には排便が出来ず,授業時間中に保健室に腹痛 を訴えて来室し,トイレに行く」「排便の後,自分で掛ナない」などがあった.施設設備の面で,改善が望. まれることもあるが,家庭でのしつけの問題や排泄行動がからかいやいじめの対象になっていることも原因 と考えられた.人間として,自然な排泄行動がいじめやからかいの村象になることがないように指導するこ とが望まれる.. 稿を終えるにあたり,本調査に快くご協力賜りました養護教諭の諸先生方に深く感謝致します.. 文 献 1)加藤釣・壷屋敬子.健康・食生活実態調査についての一考察Ⅲ一食物摂取状況・排便状況・肥満状況−.一一宮女子短期大学紀要1992; 31:51−61.. 2)余子龍太郎.乳児院入所児の排尿自立過程上の個人差.小児保健研究1990;49:511−515. 3)匝l本正雄他.小学生の便通とトイレに関する意識調査.日本医事新報1996;3781:49−51・ 4)松浦和代・岡本正雄.中学生の便通と学校トイレに関する意識調査.小児保健研究1999;58:599−602・ 5)笹鴫由美・芝木美沙子・飯塚一.学校生痛がアトピー性皮膚炎の児童・生徒におよぼす影響.小児保健研究1999;58:450−457・. (芝木美沙子 旭川校助教授). (松浦 和代 旭川医科大学医学部看護学科教授) 214.
(10) 旭川市の小学校における排泄の失敗事例に関する調査. (安部 奈生 北海道教育大学附属旭川小学校養護教諭) (笹嶋 由美 旭川校教授). 215.
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