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交流及び共同学習の現状と今後の展望 ―2004年以降の特別支援学級における交流及び共同学習に焦点を当てて―

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(1)Title. 交流及び共同学習の現状と今後の展望 ―2004年以降の特別支援学級に おける交流及び共同学習に焦点を当てて―. Author(s). 藤嶋, さと子; 細谷, 一博. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 66(2): 65-76. Issue Date. 2016-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7878. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.2. 平 成 28 年 2 月 February, 2016. 交流及び共同学習の現状と今後の展望 ― 2004年以降の特別支援学級における交流及び共同学習に焦点を当てて ―. 藤嶋さと子・細谷 一博* 北海道教育大学大学院教育学研究科 *. 北海道教育大学函館校 障害児臨床研究室. The Present Situation and the Future Prospects of Inclusive Activities and Collaborative Learning FUJISHIMA Satoko and HOSOYA Kazuhiro* Graduate School of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education *. Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,交流教育から交流及び共同学習へと名称が変更されてから11年が経過したこと を期に,双方の比較を行い,現在の交流及び共同学習の「実施状況と体制」,「教師間の連携・ 支援の在り方」,「活動内容と児童生徒の変容」,「障害理解教育」の項目から整理することによ り, 現状と今後の展望について検討することを目的とした。その結果,①障害のある児童生徒, 障害のない児童生徒の双方にとって意義があり,楽しい活動であること,②交流に付き添った 教師は,交流級の児童生徒,教師のモデルとしての役割を担うこと,③長期的な視点に立ち, 継続的に計画・実施することの3点が重要であることが明らかとなった。よって,今後は,障 害理解教育やインクルーシブ教育の推進における位置付けを明確にし,障害のある児童生徒の 正しい理解並びに,児童生徒同士が互いに助け合って生活することができる場作りや支援方法 を検討していかなければならない。. Ⅰ はじめに. 立特別支援教育総合研究所,2008)。交流及び共 同学習について文部科学省(2009)は,障害のあ. 従来の交流教育は,2004年の障害者基本法の一. る児童生徒の経験を広め,社会性を養い,豊かな. 部改正に伴い,その名称を交流及び共同学習へと. 人間性を育てる上で,大きな意義を有していると. 変更した。そこから11年経過した現在,約96%の. ともに,双方の児童生徒にとって,意義深い活動. 児童生徒が交流及び共同学習を実施している(国. であると述べている。また,障害のある子どもと. 65.

(3) 藤嶋さと子・細谷 一博. 障害のない子どもが一緒に参加する活動は,相互. れぞれに個々の特性に応じた教育を十分に保障し. の触れ合いを通じて豊かな人間性をはぐくむこと. つつ,できる限り障害児と健常児が同じ場で教育. を目的とする交流の側面と,教科等の達成を目的. を受け,共に育ちあうことをめざすものと述べて. とする共同学習の側面があるとし,この両方の側. いる。また,統合・交流教育をすることで,障害. 面が一体としてあることを明確に表したものであ. 児にとっては,「普通学級の友達と調和していく. る。. 能力を増進する」,「特殊教育諸学校や特殊学級で. 2004年以前から,交流教育に関する研究は数多. は得られない刺激が得られる」,「安定感や満足感. く報告がなされており,交流及び共同学習へと名. が得られ,明るさ,落ち着きなどの良いパーソナ. 称が変更になった後も実態調査や教師間の連携,. リティーが養われる」利益があり,健常児にとっ. 交流後の児童生徒の変容など,非常に多くの成果. ては,「障害児に対する正しい理解や認識をもつ. が報告されている。しかし,成果や効果が報告さ. ことができる」,「いろいろな人間に対しても仲間. れる一方で,いくつかの課題も述べられている。. 意識をもつことができる」, 「老人,子ども,病人,. そこで本研究では,名称変更後の研究を振り返り,. 障害者等に対して,思いやりの心をもち,適切な. 「交流教育との比較」 「交流及び共同学習の実施. つきあいのしかたを身につけることができる」と. 状況及び体制」 「教師間の連携・支援の在り方」. いう利益が得られると述べている。. 「活動内容と児童生徒の変容」 「障害理解教育と. 一方で,特別支援学校学習指導要領解説総則等. 交流及び共同学習」の項目に分けて整理すること. 編( 幼 稚 部・ 小 学 部・ 中 学 部 )( 文 部 科 学省,. により,交流及び共同学習の現状と今後の展望に. 2009)では,交流及び共同学習は「障害のある児. ついて検討する。. 童生徒の経験を広め,社会性を養い,豊かな人間 性を育てる上で,大きな意義を有しているととも. Ⅱ 2004年以降の交流及び共同学習. に,双方の児童生徒にとって,意義深い教育活動 である」と示されている。また,交流及び共同学. 1.交流教育との比較. 習は,相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を育. 交流教育は,特殊学級や特殊教育諸学校に在籍. むことを目的とする交流の側面と,教科等のねら. する児童生徒と通常の学級や学校,地域社会の. いの達成を目的とする共同学習の側面があり,こ. 人々が学校教育の一環として活動を共にすること. の二つの側面を分かちがたいものとしてとらえ,. である(細谷・大庭,2001a)。また,幼稚部教育. 推進することの必要性を述べている。同様に,交. 要領,小学部・中学部学習指導要領,高等部学習. 流及び共同学習を実施する意義について,児童生. 指導要領(1999)においても,児童又は生徒の経. 徒が他の学校の児童生徒と理解し合うための絶好. 験を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊かな. の機会であるとし,同じ社会に生きる人間として,. 人間性をはぐくむために,学校の教育活動全体を. 互いを正しく理解し,共に助け合い,支え合って. 通じて,小学校の児童又は中学校の生徒及び地域. 生きていくことの大切さを学ぶ場でもあると示し. の人々などと活動を共にする機会を積極的に設け. ている。. るようにすることが示されている。さらに,細谷・. 以上のことから,従来の交流教育と交流及び共. 大庭(2001b)は,2001年までにおける交流教育. 同学習を比較すると,名称の変更はなされても「障. の変遷と課題を整理する中で,通常の学級の児童. 害のある児童生徒の経験を広める」,「小学校の児. 生徒と特殊教育対象児の両者に焦点を当てた交流. 童又は中学校の生徒及び地域の人々と活動を共に. 教育の実施が必要であると述べている。. する機会である」という点では,変わっていない. 統合・交流教育の意義について,位頭(1993). ことがわかる。しかし,交流及び共同学習へと名. は,障害をもつ子どもと障害をもたない子どもそ. 称が変更になってからの学習指導要領には,従来. 66.

(4) 交流及び共同学習の現状と今後の展望. の文言に加え, 「交流の側面」と「共同学習の側面」. らかにした。そして,今後は特別支援学級担任が. が示されており,この両側面を分かちがたいもの. 積極的に通常学級に関わり,モデルとなるような. として推進していくことの必要性が述べられてい. 支援方法等を提示することで,通常学級担任が無. る。さらに,交流及び共同学習を推進することで. 理なく支援方法を学べる機会を増やしていくこと. 障害のある者とない者が互いを正しく理解し,共. が重要であると述べている。星野・佐藤(2011). に生きていくことを学ぶ場でもあると記載されて. は,特別支援学級担任に対してアンケート調査を. いる。. 実施した結果,特別支援学級児童に直接的にも間. このように,交流及び共同学習へと名称が変更. 接的にも手立てを尽くしきれないという交流及び. されて以降は,障害のある者だけに焦点を当てた. 共同学習の限界を明らかにし,「行く交流」より. 教育を行うのではなく,障害のある者とない者の. も「招く交流」の方が,児童の意欲が高まると指. 双方に焦点を当てた教育を行うことの重要性が明. 摘している。また,遠藤・佐藤(2012)も, 「招. 確に示されている。さらに,そのねらいも,従来. く交流」の方が,特別支援学級児童の目的が明確. の豊かな人間性に加えて,教科などのねらいを達. になり,手立てを尽くしやすいことを指摘し,今. 成するものとして示されている。. 後,交流の一つのありようとしてさらなる検討の 必要性を指摘している。. 2.交流及び共同学習の実施状況と体制. 一方で,交流及び共同学習に関する多くの課題. 従来の交流教育は,当時の分離教育を改善する. も指摘されている。久保山(2007)は,全国の盲・. 一つの方法として提案されていた(細谷・大庭,. 聾・養護学校と小・中学校の特殊学級設置校を対. 2001a) 。この当時の課題として,溝上(1990)は,. 象に交流及び共同学習の現状と課題について調査. 特殊学級の生徒がどうしても交流学級の集団に中. を行った結果から,交流及び共同学習を教育活動. に入ることを拒否したために中止した現状を明ら. として深めていくためには,その活動に参加する. かにした。また,関戸・岡島(2000)は,特殊学. 者同士の相互理解の促進が不可欠であると述べて. 級の児童生徒が交流に「喜んで行っている」と回. いる。また,交流及び共同学習を実施する際の児. 答した者は,小で34.8%,中で29.5%であり,特. 童生徒への付き添いが大きな課題であると述べて. 殊学級の児童生徒は交流を必ずしも喜んでいると. いる。また,熊崎・坂本(2005)は,障害のある. は言えない現状を明らかにした。. 児童・生徒がそのもてる力を発揮できる場とはほ. こ れ ら の 課 題 か ら15年 経 過 し た 現 在, 国 語. ど遠く,交流教育や共同学習が本来としている障. (24.9%) ,算数・数学(12.7%),英語(12.7%). 害のある児童・生徒が社会経験を広げ,障害のな. に関してはまだまだ低い実施率であるのに対し,. い児童・生徒が障害のある児童・生徒を理解して. 実技系の教科では70%前後の児童生徒が交流及び. いく教育的営みの役を十分に果たしていないと述. 共同学習を行っていることが明らかになってい. べ,今後は,障害のある児童・生徒がそのもてる. る。また,その中でも特に,音楽では80.7%と最. 力を十分に発揮できる教育の場の確保が重要な課. も高い実施率である(国立特別支援教育総合研究. 題であると述べている。さらに,藤岡・宮田・前. 所,2008) 。さらに,山本・佐藤(2008)は,特. 川(2010)は,小学校における通常学級と特別支. 別支援学級担任及び通常学級担任へ行った質問紙. 援学級との間で生じている状況を分析した結果か. 調査から,交流及び共同学習の目的・ねらいの第. ら,障害者が主体として生きるために,どのよう. 一について,特別支援学級担任は「集団生活で社. に他者とかかわるかを学ぶ教育活動が必要である. 会性を培う」を挙げており,通常学級担任は「交. と共に,教師自身も相互に支援し合う状況が必要. 流している児童生徒に特別支援学級の児童生徒に. であり,学校全体の総体として教師集団のキャパ. ついて理解をしてもらう」を挙げていることを明. シティーを高めていくための仕組みが必要である. 67.

(5) 藤嶋さと子・細谷 一博. と指摘している。細谷(2011)は,特別支援学級. 3.教師間の連携と支援の在り方. に在籍する児童が通常学級での学習の効果を高め. 井坂・川林(2004)は,難聴学級児童と通常学. るためには,通常学級での学習と特別支援学級で. 級児童の合同授業を分析し,通常学級児童と難聴. の学習の2つの場面で獲得していくスキルについ. 学級児童が共に学び合う授業を行うためには教員. て系統性をもたせる方法やそのための教師間の情. 相互の連携が常に重要であることを明らかにし. 報交換の方法について検討する必要があると述べ. た。また,教員相互・児童相互の信頼関係の構築. ている。また,参加児童の学習過程を把握するた. が求められるとし,児童相互に共有したコミュニ. めの方法として,記録カードを採用したが,自由. ケーションモードの確立と共に授業に参加するこ. 記述で記録していくと時間がかかってしまうこと. とが重要であると指摘している。また,田島・都. が予想されるため,今後は記録方法についても検. 築(2006)は,特殊学級に在籍する子どもが通常. 討を深めていく必要があると指摘している。また,. 学級における交流学習を学ぶ際の特殊学級担任の. 川合・野崎(2014)は,障害のある児童生徒と障. 支援の在り方を検討し,可能な限り特殊学級の担. 害 の な い 児 童 生 徒 が ペ ア を 組 む 場 合 に は,. 任が交流先に児童と一緒に出向く条件を確保しな. friendshipにも多様性があるということを考慮し. がら交流学習を進めていくことの必要性を述べて. ながら組む必要性があることを明らかにし,単純. いる。よって今後は,交流学習を進めていくにあ. に障害のある児童生徒とない児童生徒が同じ場所. たり,事前に特殊学級で当該の学習に触れた後に. で活動をするのみでは,共同学習における双方の. 交流先において同年齢集団で一斉指導を受けるこ. 学習目標の達成には結びつかず,場の共有が図ら. と が 重 要 で あ る と 指 摘 し て い る。 松 岡・ 納 富. れたとしても,相互の関わりもなく,それぞれが. (2008)は,交流学級の体育科の授業に部分的に. 目的の異なる活動をしているのならば,交流及び. 参加できていない知的障害のある自閉症児に対し. 共同学習の活動として成立しないと指摘した。. て,交流に参加するための効果的な手立てについ. よって,障害のある児童生徒とない児童生徒が相. て検討し,児童に役割をもたせることが交流教育. 互の関わりをもちながら,双方の学習の目的を達. を促進させるプログラムとして有効であることを. 成させる工夫を行うことが必要であると述べてい. 明らかにした。また,教師は自閉症児のマイナス. る。. 面のみがイメージとして定着しないように,低学. このように,交流及び共同学習については, 「集. 年の段階からそれぞれの自閉症児のもつ良さが出. 団生活」や「障害理解」の促進を図ることが目的・. せる場面を設定していくこと,その場面を通して. ねらいとして挙げられていることが明らかとなっ. 健常児に意識の啓発を試みていくことの重要性を. た。また,障害のある児童生徒の意欲の面から,. 指摘している。さらに,篠原・杉谷(2007)は,. 「行く交流」よりも「招く交流」が注目され始め. 音楽の教師が特殊学級の子どもに行うべき支援と. ている現状も明らかになった。一方で,障害のあ. して「特殊学級の子どもが音楽の授業で,安心し. る児童生徒への付き添いの問題や障害のない児. て“表現できる環境”整える」,「子どもが自分の. 童・生徒が障害のある児童・生徒を理解していく. 思いを“表現できる”ようにする」,「共に育てる. 教育的営みが十分ではないという課題が指摘され. 体制を作る」の3点を明らかにし,今後は,他の. ている。また,学習に系統性をもたせることの必. 障害のある子どもたちに対しての教師の支援方法. 要性や教師間の情報交換の方法についての検討,. を見ていくことの必要性を指摘している。その後,. 障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の双方. 篠原・杉谷(2008)は,教科交流において,音楽. が目標を達成できる授業を工夫することの必要性. は言葉がなくてもコミュニケーションがとれるな. が指摘されている。. どの理由から頻繁に行われているが,現実には 様々な問題を抱えているため,様々な個性を持つ. 68.

(6) 交流及び共同学習の現状と今後の展望. 子どもたちが,音楽を,仲間と心から楽しめるよ. 解し,その上で普段のかかわりの中から動機づけ. うにすること,そしてそのような学びの場を決し. を高めるようなかかわりを継続的に行っていくこ. て失わせないことを考えていかなければならない. とが大切であると述べている。さらに,下鳥・都. と述べている。. 築(2011)は,特別支援学級在籍児童が交流学習. 宮脇・阿部(2009)の調査研究からは,各教師. を行うにあたって,対象児童と交流学級全体への. が,共通理解したい意思があっても,多忙な毎日. 働きかけが,対象児の交流での生活や学習を支援. の中でその機会をどのように確保するかが大きな. することに有効であることを明らかにした。その. 課題であることが明らかになり,その解決方法と. ための課題として,どのような協力の体制であっ. して,短時間で能率の良い連絡・調整ができるよ. ても,学級担任との共通の認識をもって支援する. うに工夫していることが分かった。なお,今後の. こと,学級担任と連絡を密にとり,対象児童らの. 展望として,特別支援学級児童へのかかわり方が. 実態に合わせた支援を検討することが必要である. 周囲に分かるように意図的に指示したり,モデル. と論じている。また,行方(2013)は,特別支援. を示そうとしたりすることで,その児童へのかか. 学級に在籍する児童の交流場面への参加を促す際. わり方を知ってもらい,誰もが適切なかかわりを. には,朝の会などの集団規模の小さい日常交流か. できるように拡大していくことの必要性を述べて. ら,集団規模の大きい学校行事へと,段階を踏ん. いる。また,特別支援学級担任が,交流及び共同. だ交流場面への参加を促すことが有効であると述. 学習の授業に付き添った際は,単にT2として学. べ,今後は,自己決定感の側面からも,有能感と. 習の補助を行うだけでなく,特別支援学級児童に. 交流感との関連を考えた支援方法を検討すること. 対する支援の実際を,交流級の担任に伝えること. の必要性を指摘している。尾崎(2014)は,音楽. を意識して指導に当たることの必要性についても. 科教育において,教員が,何のために音楽科での. 指摘している。また,渡辺(2010)は,特別支援. 学習を「交流及び共同学習」の形態で行っている. 学級担任と交流学級担任が指導に共通理解を図る. のかについて,明確な意図をもっていない可能性. 上で必要な要因について調査をしたところ,「担. を明らかにした。しかし,因子として「人とのか. 任同士の共通理解」という教師間の連携に関する. かわり」に意識があることから,今後は,子ども. 項目が挙げられているにもかかわらず,忙しい学. 同士がかかわる場面を充実した授業構成の確立が. 校現場においては話し合いをもつ時間を設定する. 重要であると指摘している。中原・今岡・中村・. ことが困難な状況であることを明らかにした。そ. 武田・堀・堀・中禮・尾西・登・吉本・林田・土. の上で今後は,交流及び共同学習を特別支援学級. 器・高山・姫島・最所・高浪・吉本・藤金(2015). と交流学級の双方の学級経営にしっかりと位置づ. は,交流及び共同学習では,最小限かつ最大限有. け,特別支援学級担任と交流学級担任が協力し. 効な合理的配慮が必要であると指摘している。ま. 合って計画的に実践することが必要であると述. た,教員の支援が増えることにより,ペアの積極. べ,そうすることで,教師間に連帯感や責任感が. 的なかかわりが減退してしまう可能性を示唆し,. 生まれ,児童同士の相互理解が深まる交流及び共. 今後は,支援のフェイディングを意識する必要が. 同学習を推進することができると述べている。. あると述べている。さらに,特別支援学級の生徒. 石本(2011)は,特別支援学級に在籍する児童. と通常学級の生徒が交流して授業を行っていく上. の交流学級における活動参加を促すための支援方. で必要なことは,生徒の詳細な実態把握と教科の. 法を検討した中で,対象児にとって安心して親密. 学習内容の分析であるとし,生徒と教員が何を目. にかかわることのできる共同活動者を学校の中で. 的として「交流及び共同学習」をしているのかを. 増やしていくことが必要であることを明らかに. 確認することが必要であると述べている。. し,そのために,教員間で対象児について共通理. 以上のように,特別支援学級の教師が交流及び. 69.

(7) 藤嶋さと子・細谷 一博. 共同学習に付き添う場合は,対象の児童生徒のみ. い知的障害のある自閉症児に対して役割を持たせ. に焦点を当てて支援をするのではなく,同時に,. ることは,活動への参加の動機づけになるととも. 同じ場にいる通常学級の児童生徒との関係も考え. に,健常児との相互の関係を良いものにすること. ていく必要がある。そのためには,教師が対象と. が可能であることを明らかにした。また,自閉症. なる児童生徒の側に常時寄り添い続けるのではな. 児に対し個別支援を行うことで,周りの児童の自. く,子ども同士が互いにかかわりをもてるような. 閉症児に対する認識を,好転させる波及効果もあ. 環境調整を行うことや,自然と協力したり接触し. ると指摘している。さらに,松本(2008)は,中. たりすることができる授業内容,あるいは教材教. 学校の実践から,特別支援学級の生徒が活躍でき. 具を提示する必要があると考えられる。また,特. る場を設定し,活動の中で彼らのよさやがんばり. 別支援学級の教師は,通常学級の教師や児童生徒. を認めることができるようにすることで,上下関. に対し,障害のある児童生徒との適切なかかわり. 係のある交流ではなく,友達同士として対等の立. 方や正しい障害理解へと導いていく役割を担って. 場での交流をする必要があると述べている。また,. いることから,単に対象の児童生徒の交流及び共. 知的障害特別支援学級と通常学級との望ましい交. 同学習に付き添い支援をするだけではなく,通常. 流の在り方として「生徒が楽しむことのできる活. 学級の教師や児童生徒のモデルにもなる役割を. 動」, 「場の共有だけでなく,生徒同士の触れ合い」,. 担っていく必要がある。. 「互いのよさを認め合い,対等な立場での活動」, 「トラブルの際の,教師の適切な支援」の4点を. 4.活動内容と児童生徒の変容. 挙げている。森田・是永(2008)は,交流学級が. 交流及び共同学習の実施における障害のある児. ない学年に比べ,交流学級のある学年の方が特別. 童生徒と障害のない児童生徒の行動面や心理面で. 支援学級児童への意識・態度が好意的であること. の変容についての研究が報告されている。. を明らかにした。また,特別支援学級児童と交流. 長曽我部(2006)は,インクルーシブ体育の授. 頻度の高い方が特別支援学級児童への意識態度が. 業から,健常児と障害児の間で「まさつ」が生じ. 好意的であることが分かった。この結果より,児. ていたからこそ,子どもたちの対人関係が高まっ. 童の変容のきっかけは,自発的,友達の影響,教. たと述べている。しかし,学習中に生じる「まさ. 員の働きかけ,教員の影響などさまざまあるが,. つ」を解決するためには,子ども同士のかかわり. その中でも特に,教員の働きかけが大きな影響を. 方だけでは十分ではないため,学習者全員が学習. 与えていると述べている。. に参加できるようにすること,健常児と障害児が. さらに,池川・戸ヶ崎・大山・猪俣・小野・木. かかわる場面を作ること等の配慮を行う必要があ. 原・押川・木村(2009)は,通常学級の子どもと. ると指摘している。また,益山・東原・河内(2008). 特別支援学級の子どもとがかかわりをもちやすい. は,異なる友人関係の中で示される知的障害児に. 距離やかかわる必要のある関係で交流及び共同学. 対する態度に及ぼす影響を調査した結果,情報が. 習を実施することによって,障害児とのコミュニ. 提供されることによって,日常交流経験,行事交. ケーション力が高まる可能性が考えられると述べ. 流経験,教科交流経験における対応がスムーズに. ている。また,特別支援学級と通常の学級のそれ. 行き,交流対象児に対する好意的イメージ得点が. ぞれの場での学びと交流及び共同学習での学びと. 高くなったと報告した。しかし,今後の課題とし. の相乗効果によって特別支援学級の子どもは集団. て,情報の内容検討や情報を与える方法,情報を. に適応する力を,通常の学級の子どもは障害児と. 流す適切な時期などの要因について検討する必要. のコミュニケーションを高めることを意識するこ. があると述べている。松岡・納富(2008)は,交. とが大切であると報告している。小西(2011)は,. 流学級の体育科の授業に部分的に参加できていな. 障害児との継続的な接触が健常児の障害児に対す. 70.

(8) 交流及び共同学習の現状と今後の展望. る認知面でポジティブな影響を及ぼすこと,継続. は,①交流及び共同学習の実施頻度や実施スケ. 的な接触には特に給食場面でのかかわりをもちた. ジュールの検討,②すべての生徒にとって有意義. いという心情を高める効果があり,その心情は長. で楽しい交流及び共同学習になるような内容に関. 期的に持続することを明らかにした。よって今後. する検討,③実際の活動の進め方等の実施計画の. の展望として,障害児理解を促す教育活動や交流. 検討といった,様々な観点からの検討が必要であ. 活動の充実を図るなど,さらなる積極的な働きか. ると述べている。なお,今後の課題として,すべ. けを加えていくことの必要性を指摘している。ま. ての生徒の交流及び共同学習に対する意識の向上. た,稲垣・小西(2011)は,障害のある子どもに. を図るためにはどのような内容の活動をしたらよ. 対して積極的にかかわろうとする子どもの実態や. いのか,学年あるいは学校全体で取り組む大規模. 接触理由を把握するとともに,彼らがもつ障害の. な交流及び共同学習の質を高めるためにはどのよ. ある子どもに対する主観的な認識を把握した結. うな工夫や配慮が必要なのかについて検討を重ね. 果,交友選択の理由として「かわいいから」,「好. て い か な け れ ば な ら な い と 述 べ て い る。 河 野. きだから」という好感が大半を占めながらも,対. (2015)は,交流学級の児童に対して,障害理解. 障害児特有の「援助・優越」という向社会的行動. 授業や交流活動を実施することにより,対象児の. に帰属した理由が挙げられたことを明らかにし. 得手不得手やできることや頑張っていることを知. た。この結果より,障害のある子どもに対してポ. り,同じ学年の友達としてかかわろうとする姿を. ジティブな認識をもつことができるように交流教. 目指したところ,交流級の児童は,対象児が困っ. 育を進めることの重要性が指摘され,障害のある. ていたら積極的に声をかけたり,困らないように. 子どもに対して「明るい・楽しい」というイメー. 配慮した行動をしたりする子が多くみられるよう. ジを育てるための教育的支援が必要であると述べ. になってきた様子を明らかにした。一方で,交流. ている。小野・重山・富山・戸ヶ崎(2013)は,. 学級の児童や担任の負担を考え,休み時間など無. 障害児との交流及び共同学習に関する意識評価尺. 理なく取り組める活動を組まないと継続が難しい. 度の改定を行い,まず第1因子として「特別支援. ことから,今後は,自然に,楽しい活動を設定す. 学級の子どもに対する積極的受容」の得点が高い. ることが大切であると報告している。また,小野・. ほど,交流及び共同学習に積極的に参加しようと. 児玉・日野(2015)は,今後の交流及び共同学習. しており,特別支援学級の子どもと共に活動する. では,「積極的受容」において,どのような手立. ことに積極的であることを明らかにした。また,. てを取っていくことで,すべての学級が特別支援. 第2因子として「特別支援学級の子どもに対する. 学級の生徒と交流及び共同学習に積極的に取り組. 消極的受容」の得点が高くなるほど,交流及び共. んでいくかを検討していかなければならないこと. 同学習や特別支援学級の子どもに対する否定的な. を指摘している。さらに,イベント的でなく定期. 捉え方が強くなり,第3因子として「特別支援学. 的な交流及び共同学習の推進,そして学校生活で. 級の子どもとの消極的コミュニケーション」の得. の日常的な交流及び共同学習につなげていく指導. 点が高くなるほど,特別支援学級の子どもとのコ. や手立ての工夫が必要であると述べている。. ミュニケーションに自信をもっていることを明ら. 以上のことから,交流及び共同学習を実施する. かにした。さらに,今後の課題として,交流及び. 際には,単発的ではなく長期的な視点に立ち継続. 共同学習の実施前後の得点の変化を比較検討する. 的に計画,実施していくことが必要である。また,. ことによって,本尺度の弁別力の検討を行わなけ. 障害のある児童生徒あるいは障害のない児童生徒. ればならないと述べている。. のどちらか一方に重きを置いた交流内容を考える. また,小野(2014)は,通常学級の生徒との充. のではなく,双方が一緒に楽しめる活動,双方に. 実した交流及び共同学習を推進していくために. とって意味のある活動を計画していかなければな. 71.

(9) 藤嶋さと子・細谷 一博. らない。なお,実際の交流活動のみで終わらせる. 『ネガティブな感想』,『スティグマ的な感想』か. のではなく,交流活動の事前・事後を有効に活用. ら,児童が障害へのマイナス面にのみ着目してい. することで,障害のある児童生徒には「活動への. る様子が見られる。さらに,子どもたちは疑似体. 見通しをもたせる」こと,そして障害のない児童. 験をしたことにより客観的に障害と触れただけで. 生徒へは「障害,あるいは交流する相手の特徴や. はなく,自分の経験として障害を経験したといえ. 特性を正しく理解させる」ことが必要であると考. るが,その体験に基づく感想がネガティブなもの. える。交流及び共同学習を実施する際,このよう. になることについては,障害受容の疑似体験とし. な配慮を行うことで,障害のある児童生徒または. て捉えてみることにより説明することができると. 障害のない児童生徒双方にとって,意味があり正. 述べ,ネガティブな感想を,障害を我がこととし. しい理解へとつながることが示唆される。. て捉えた関心や気づきと捉えることができると報 告している。岩橋・相本・藤原・井上(2012)は,. 5.障害理解教育と交流及び共同学習. 交流児童に対して,知的障害児童への適切なかか. 近年,障害理解教育の視点から交流及び共同学. わりを促すための障害理解授業を計画・実施し,. 習の充実の必要性が指摘されている。. 授業前後の交流学級児童の意識の変化,実際の交. 文部科学省(2007)は,障害のある幼児児童生. 流場面での交流学級児童のかかわり行動の変容,. 徒と障害のない幼児児童生徒との交流及び共同学. 及び知的障害児童の自発的行動の変容を分析し. 習は,障害のある幼児児童生徒の社会性や豊かな. た。その結果,知的障害児童に対して交流児童28. 人間性を育む上で重要な役割を担っており,また,. 名中11名が適切なかかわりを示し,授業で取り上. 障害のない幼児児童生徒が,障害のある幼児児童. げていない場面へのかかわり行動の般化と,知的. 生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深め. 障害児童の自発的行動の増加が確認されたこと明. るための機会であると提言している。また,文部. らかにした。さらに,授業の事前と事後で行った. 科学省(2012)は,共生社会の形成に向けたイン. A児に関する意識調査においても,「かかわり」. クルーシブ教育システム構築のための特別支援教. に関するカテゴリーの平均得点が,有意に増加し. 育の推進(報告)の中においても,共生社会の形. ていることが明らかになった。このような,児童. 成に向けた障害者理解を推進していくことの必要. の変容から,障害のある児童への適切なかかわり. 性を述べている。. 方を増加させるためには,障害理解授業の中で①. 山本・池田・永田・金森(2007)は,障害理解. 事前のアセスメントにより,交流児童から障害の. 学習の現状と実践的課題を整理する中で,障害理. ある児童へのかかわり行動が生起しやすい場面と. 解学習の基盤は,すべての子どもたちが直接に触. ターゲットスキルを設定すること,②交流児童自. れあう交流体験が大切であり,そのための入念な. らが具体的なかかわり方を考えたり,実際にロー. 事前指導として取り組まれるようになった学習が. ルプレイを実施できる主体性のある授業を構成す. 障害理解学習の始まりであると述べている。また,. ることの重要性を提示している。. 小学校第6学年2クラスの児童を対象に,総合的. 今枝・楠・金森(2013)は,インクルーシブ教. な学習の時間において4つの障害種( 「肢体不自. 育システムの構築のため通常の学校における障害. 由」 , 「知的障害」,「視覚障害」,「聴覚障害」)を. 理解教育は今後重要な課題であると述べ,そのた. 取り上げ,障害理解学習を行った。その結果, 『体. めに小・中学校を対象とし,障害理解教育の実施. 験的な学習そのものへの興味』 , 『見え方への興. 状況及び教員の意識を調査した。その結果,障害. 味』 , 『ネガティブな感想』, 『ポジティブな感想』,. 理解教育の実施内容として,小学校で最も実施し. 『社会的要因』 『 ,手助け』, 『スティグマ的な感想』. ているのは,障害シミュレーション体験・在籍児. の7つのグループに分けることができた。なお,. 童生徒説明(54%)であり,次いで交流及び共同. 72.

(10) 交流及び共同学習の現状と今後の展望. 学習(37%) ,読書教材(25%)であることを明. る。さらに,インクルーシブ教育を進展させてい. らかにした。一方,中学校では,交流及び共同学. くためには,交流及び共同学習が中核を担ってお. 習(54%)が最も実施されており,次いで在籍児. り,障害のある人に対する捉え方の前向きな変化. 童生徒の説明(45%)であった。また,対象学年. や,特別支援学校の児童にとっての社会参加への. として小学校においては,第3学年(21%),第. 積極性の育成という成果が考えられるのではない. 4学年(18%) ,第5学年(16%)の順に高い割. かと述べている。. 合で実施されており,中学校においては,第1学. 以上のように,近年では障害理解教育の必要性. 年(39%) ,第2学年(32%),第3学年(25%). が指摘され,多くの実践が報告されている。これ. の順に高い割合で実施されていることが明らかに. までの障害理解学習は,視覚障害や聴覚障害,肢. なった。さらに,障害理解教育を実施している教. 体不自由などを中心に行われてきているが,発達. 科・領域については,小学校・中学校共に総合的. 障害や知的障害といった領域での実践について. な学習の時間(小:39%,中:44%)で最も高い. は,まだ少ないのが現状である。今後はこれらの. 割合で行われており,次いで道徳(小:26%,中:. 領域も含めて,障害理解学習と交流及び共同学習. 24%) , 特別活動(小:14%,中:11%)の順であっ. を一連の流れの中で,実践を積み重ねていく必要. た。障害理解教育で取り扱われている対象障害種. がある。特に小学校では総合的な学習の時間など. については,小学校で肢体不自由(26%),発達. を活用した取り組みが多いことからも,障害理解. 障害(20%) ,知的障害(18%)の順に高い割合. 教育を学校の教育活動に明確に位置づけ,その中. で行われており,中学校では肢体不自由(31%),. で障害理解学習や交流及び共同学習を取り組む必. 次いで知的障害(22%) ,視覚障害(17%)とい. 要がある。. う順であることが明らかになった。教員の障害理 解教育に対する意識では,小・中学校共に「障害 のある児童が在籍しないクラスでは,障害理解教. Ⅲ おわりに. 育を行う必要はない」が最も高い項目であり,次. 2004年の障害者基本法の一部改正に伴い,従来. いで「これからの教育には障害理解教育は必要で. の交流教育はその名称を交流及び共同学習へと変. ある」が挙げられたことを明らかにした。. 更した。交流及び共同学習へと名称が変更されて. 鈴木(2015)は,A市内にある知的障害特別支. から11年経過した現在では,その目的を障害のあ. 援学校の教員に対しインタビュー調査を行い,交. る児童生徒の経験を広めること,そして障害のあ. 流及び共同学習を実践していくうえで重要なこと. る児童生徒及び障害のない児童生徒が同じ社会に. や今後のインクルーシブ教育の進展との結びつき. 生きる人間として,共生社会の形成に向けた教育. を検討した。その結果,知的障害のある児童が交. 活動の一環として相互に理解し合うための絶好の. 流中に不安定になった時こそ, “障害を理解して. 機会として積極的に推進されている。また,2008. もらうチャンス”であると捉えていることが明ら. 年の国立特別支援教育総合研究所の結果にも見ら. かとなった。また,これまでの交流及び共同学習. れるとおり,交流及び共同学習の実施率は飛躍的. の積み重ねから,児童が「楽しかった」,「仲良く. に伸びており,その中でも実技系の教科では高い. なれた」 , 「友達になった」,「上手に発表できた」. 実施率を示している。しかし,一方で教科特性と. 等の実感をもつことができ,同学年の知り合いを. して系統的・理論的な学習内容が必要とされる国. 広げることができたという成果も挙げられてい. 語や算数などの教科に関しては,未だに高い実施. る。この結果から,児童の自然なかかわり合いを. 率とは言えない現状も明らかになっている。全て. 深めていくために,交流及び共同学習を早い段階. の教科での実施が,交流及び共同学習のねらいを. から継続的に実施することの重要性を述べてい. 達成するものではないが,障害のない子ども達と. 73.

(11) 藤嶋さと子・細谷 一博. 共に学ぶ機会は,特別支援学級では経験すること. 長期的な視点に立ち,学校生活の中で日頃から継. ができない場であり,障害のある子どもたちが自. 続的に双方の児童生徒がかかわることができる活. 分の持っている力を存分に発揮できる場を設定す. 動や場を提供,実施あるいは計画していく必要が. ることや,障害のある子どもと障害のない子ども. あると考えられる。. の双方が互いのよさを認め合える授業機会の確保. なお,近年では,文部科学省(2007)の提言や. を考えていく必要がある。. 文部科学省(2012)の報告により,障害理解教育. また,交流及び共同学習を行う際の教師間の連. やインクルーシブ教育の必要性が多く述べられて. 携や子どもへの支援の在り方について,障害のあ. いる。今枝・楠・金森(2013)の調査から,障害. る児童生徒が交流に参加する際,担任は「伝える」,. 理解授業の実施内容として小・中学校共に「交流. 「話す」 , 「説明する」などの方法で概念的な理解. 及び共同学習」が高い割合で行われていることか. を促すことが中心であり,直接的なかかわりスキ. ら,今後は,交流活動をするに当たっての事前指. ルに関する体験的な学びの機会は少ないとの指摘. 導や事後指導,あるいは中間指導を含めた障害理. がなされていることからも(宮脇・阿部,2009),. 解授業を計画的に検討していく必要がある。また,. 今後は,障害のない児童生徒や交流級の担任に対. 障害のある児童生徒の特徴や特性を正しく理解す. し,障害のある児童生徒との適切なかかわり方や. る,交流及び共同学習の中で児童生徒の良さを発. 支援の仕方についてのモデルを示していく役割を. 揮できる場や頑張りを認め合える場をしっかりも. 担っていかなければならない。さらに,特別支援. たせた活動内容を考えていかなければならない。. 学級,学校並びに,交流級の児童生徒の情報を密. 本報告では,交流及び共同学習へと名称が変更. に交換することで,双方の児童生徒が自然にかか. になった2004年以降の先行研究を「交流及び共同. わり,一つの目標に対し,協力して取り組むこと. 学習の実施状況と体制」,「教師間の連携・支援の. ができるようにするための「集団構成」や「活動. 在り方」,「活動内容と児童生徒の変容」,「障害理. 内容」について,検討していく必要がある。. 解教育と交流及び共同学習」の4つの観点で整理. さらに,交流及び共同学習では,障害のある児. しまとめた。今後は,これまでの先行研究で明ら. 童生徒と障害のない児童生徒との触れあいを通し. かにされている成果や課題をもとに,障害理解教. て豊かな人間性を育むことも目指しているため,. 育やインクルーシブ教育を積極的に推進していく. 活動を通した双方の児童生徒の意識,態度,行動. ことで,障害のある児童生徒に対する正しい理解,. の変容もこれまでの先行研究から多く明らかにさ. そして,障害のある児童生徒と障害のない児童生. れてきた。障害のある児童生徒,そして障害のな. 徒が互いに支え合い,自然とかかわっていくこと. い児童生徒にとって意義のある交流及び共同学習. ができるような教育活動を展開することが望まれ. を実施するためには,どちらか一方のみの教育的. る。. ニーズに合わせた教育目標やどちらか一方のみが 楽しめる活動内容を設定するのではなく,双方の. 文 献. 児童生徒にとって意味のある活動を展開していく 必要がある。そのためにも,学校の教育活動に明. 1)長曽我部博(2006)インクルーシブ体育における「ま. 確に位置付ける必要がある。また,障害のある児. さつ」が子どもの相互理解に及ぼす影響.障害者スポー. 童生徒と障害のない児童生徒が互いを正しく理解 し, 支え合って活動に臨むことを目指すためには,. ツ科学,4⑴,37-46. 2)遠藤恵美子・佐藤愼二(2012)小学校における交流 及び共同学習の現状と課題-A市の通常学級担任と特. 一定の期間が必要であることが示唆される。そこ. 別支援学級担任への質問紙調査を通して-.植草学園. で,小西(2011)や小野(2014)らが指摘してい. 短期大学研究紀要,13,59-64.. るように,単発的な活動を計画するのではなく,. 74. 3)藤岡恭子・宮田延実,前川澄江(2010)通常学級と.

(12) 交流及び共同学習の現状と今後の展望. 特別支援学級との「交流及び共同学習」の問題-現場. 及び共同学習-自閉症・情緒障害特別支援学級在籍児. 教師の葛藤に焦点をあてて-.生活指導研究,27,92-. 童の障害理解の実践を通して-.教育実践研究,25,. 109.. 217-222.. 4)星野謙一・佐藤愼二(2011)特別支援学級における. 17)国立特別支援教育総合研究所(2008) 「交流及び共同. 交流及び共同学習に関する実態調査~交流及び共同学. 学習」の推進に関する実際的研究.国立特別支援教育. 習の形態に焦点を当てて~.植草学園短期大学研究紀 要,12,85-89. 5)細谷一博(2011)小学校特別支援学級に在籍する児 童の教科交流時における学習過程に関する実践記録. 発達障害支援システム学研究,10⑵,109-116. 6)細谷一博・大庭重治(2001a)小学校特殊学級に在籍 する児童を対象とした教科交流(体育)の実施形態に 関する試論.特殊教育学研究,38⑷,21-28. 7)細谷一博・大庭重治(2001b)交流教育の変遷と今日 における実践的課題-特殊学級と通常の学級を中心に -.上越教育大学障害児教育実践センター紀要,7, 9-16. 8)池川由美・戸ヶ崎素子・大山正子・猪俣千夏・小野. 総合研究所,1-45. 18)小西一博(2011)交流教育における障害児との継続 的な接触が健常児に及ぼす影響について.皇學館論叢, 44⑸,1-10. 19)久保山茂樹(2007)交流及び共同学習の現状と課題 ~平成17年度 交流及び共同学習に関する調査研究の結 果から~.特別支援教育研究,25,10-15. 20)熊崎のぞみ・坂本裕(2005)知的障害特殊学級にお けるより豊かな交流教育の実践を求めて.岐阜大学教 育学部研究報告,7,287-292. 21)益山篤子・東原文子・河内清彦(2008)通常学級に おける知的障害児に対する級友の態度に及ぼす接触及 び性別の影響について.障害科学研究,32,1-10.. 智弘・木原伸幸・押川あかね・木村素子(2009)障害. 22)松岡恭平・納富恵子(2008)小学校体育科における. のある子どもと障害のない子どもとの交流及び共同学. 自閉症児に対する支援-特殊学級での個別支援のあり. 習が子どもの相互理解行動に及ぼす影響.宮崎大学教. 方の検討-.福岡教育大学障害児治療教育センター年. 育文化学部附属教育実践総合センター紀要,17,99-. 報,21,37-46.. 113. 9)今枝史雄・楠敬太・金森裕治(2013)通常の小・中 学校における障害理解教育の実態に関する調査研究(第 Ⅰ報)-実施状況及び教員の意識に関する調査を通し て-.大阪教育大学紀要第Ⅳ部門,61⑵,63-76. 10)稲垣応顕・小西一博(2011)特別支援学級の友達に. 23)松本和久(2008)知的障害特別支援学級と通常学級 との交流及び共同学習の在り方に関する研究.The Asian Journal of Disable Sociology,7,9-15. 24)宮脇恭子・阿部美穂子(2009)交流及び共同学習の 実践における教師の工夫-T市小学校教師のアンケー ト調査から-.富山大学人間発達科学部,3,31-39.. 対する健常児の対人的かかわり-小学校1年生を対象. 25)溝上脩(1990)交流教育の現状と問題点-小学校・. として-.上越教育大学特別支援教育実践研究センター. 中学校における特殊学級の場合-.佐賀大学研究論文. 紀要,17,19-23.. 集,39⑴,63-86.. 11)井坂行男・川林まり子(2004)難聴学級児童と通常 学級児童がともに学び合うための学習支援について- 小学校低学年における合同授業の分析を通して-.大 阪教育大学紀要,52⑵,283-297.. 26)文部科学省(2009)特別支援学校学習指導要領解説 総則編(幼稚部・小学部・中学部) . 27)文部科学省(2007)特別支援教育の推進について(通 知).. 12)石本悠(2011)交流学級における活動参加を促すた. 28)文部科学省(2012)共生社会の形成に向けたインク. めの支援方法に関する事例的研究.発達支援研究,. ルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推. 15,1-3.. 進(報告) ,中央教育審議会初等中等教育分科会.. 13)岩橋由佳・相本広幸・藤原秀文・井上雅彦(2012). 29)文部省(1999)盲学校,聾学校及び養護学校(幼稚. 知的障害のある児童に対する交流学級児童の関わり行. 部教育要領,小学部・中学部学習指導要領,高等部学. 動を促進させるための障害理解授業の効果.特殊教育 学研究,49⑸,517-526. 14)位頭義仁(1993)交流教育の実際.教育出版.Pp.114.. 習指導要領) . 30)森田有理沙・是永かな子(2008)通常学級と特別支 援学級の交流教育の取り組み-小学生の障害の理解を 中心に-.高知大学教育実践研究,22,13-22.. 15)川合紀宗・野崎仁美(2014)インクルーシブ教育シ. 31)中原真吾・今岡千明・中村国広・武田巨史・堀浩二・. ステムの構築に向けた交流及び共同学習の課題と展望. 堀修二・中禮裕子・尾西洋平・登由美子・吉本悟・林. -今後の共同学習のあり方を中心に-.広島大学大学. 田眞姫・土器修・高山剛・姫島和久・最所健太・高浪. 院教育学研究科紀要,63,125-134.. 伊織・吉本眞也・藤金倫徳(2015)インクルーシブ教. 16)河野進之介(2015)かかわることで互いに育つ交流. 育システム構築を目指した合理的配慮の検討(Ⅰ)-. 75.

(13) 藤嶋さと子・細谷 一博. 交流及び共同学習での検討-.特別支援教育センター. する児童・生徒の交流及び共同学習に関する調査-特. 研究紀要,7,13-18.. 別支援学級担任と通常学級担任を対象として-.上越. 32)行方桃子(2013)特別支援学級に在籍する児童を対. 教育大学障害児教育実践センター紀要,9,63-75.. 象とした学校生活の交流場面における他者とのかかわ. 45)山本壮則・池田聡・永田忍・金森祐治(2007)障害. りを促すための支援方法に関する事例的研究.支援研. 理解学習の現状と実践的課題についての基礎的研究.. 究,17,7-9.. 大阪教育大学障害児教育研究紀要,30,33-44.. 33)小野智弘(2014)中学生の障害児との交流及び共同 学習に対する意識-3年間の継続的な取り組みの成果 -.宮崎大学教育文化学部附属教育協同開発センター 研究紀要,22,39-52. 34)小野智弘・重山孝雄・富山友加里・戸ヶ崎泰子(2013) 障害児との交流及び共同学習に関する意識評定尺度の 改定,宮崎大学教育文化学部附属教育実践総合センター 研究紀要,21,67-78. 35)小野智弘・児玉かおり・日野文貴(2015)特別支援 学級の生徒との交流及び共同学習に対する中学生の意 識-定期的な交流及び共同学習を通して-.宮崎大学 教育文化学部附属教育協働開発センター研究紀要, 23,13-25. 36)尾崎祐司(2014)音楽科における「交流及び共同学習」 の開発視点-音楽科担当教員の意識調査を通して-, 教育実践研究,24,19-24. 37)関戸英紀・岡島育雄(2000)小・中学校における交 流教育の現状と課題:横浜市立小・中学校特殊学級担 任への意識調査を通して.横浜国立大学教育人間科学 部教育実践研究指導センター紀要,16,67-80. 38)下鳥和佳子・都築繁幸(2011)特別支援学級担任の 交流学習における支援.障害者教育・福祉学研究,7, 75-85. 39)篠原秀夫・杉谷怜子(2007)音楽科の教科交流にお ける教師の支援についての一考察-小学校特殊学級の 児童が参加している授業を対象として-.金沢大学教 育学部教育工学研究・実践研究,33,69-78. 40)篠原秀夫・杉谷怜子(2008)音楽科の教科交流にお ける教師の支援についての一考察(Ⅱ)-子ども同士 のかかわりに焦点を当てて-.金沢大学教育学部教育 工学研究・実践研究,34,1-12. 41)鈴木達也(2015)知的障害特別支援学校における交 流及び共同学習の実践に関する調査研究.教育実践高 度化専攻成果報告書抄録集,5,109-114. 42)田島広嗣・都築繁幸(2006)自閉症児の交流学習補 助の試み-特殊学級に在籍する自閉症児が通常学級で 学ぶ際の特殊学級担任の支援-.治療教育学研究, 26,57-65. 43)渡辺淳(2010)小学校における児童同士の相互理解 が深まる交流及び共同学習の推進に関する一考察-特 別支援学級担任と交流学級担任との連携の在り方を通 して-.特別支援教育長期研修員報告書. 44)山本亜紀子・佐藤愼二(2008)特別支援学級に在籍. 76. (藤嶋さと子 函館校大学院生) (細谷 一博 函館校准教授) .

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