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強固な3次元張り子構造をもったグラフェン構造体の創製に世界で初めて成功

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布) 1

強固な 3 次元張り子構造をもったグラフェン構造体の創製に世界で初めて成功

——吹き飴技法から着想を得た「ケミカル風船法」の開発—— 配布日時:平成25年12月16日 14時 解禁日時:平成25年12月16日 19時 独立行政法人 物質・材料研究機構 概要 1.独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長:青野 正和)の板東義雄フェロー、王学斌(ワン シュェビン)博士研究員、ゴルバーグ・デ ミトリ(GOLBERG Dmitry)ユニット長らの研究グループは、超極薄のグラフェン1)(単層もしくは数層) を、張り子のように3次元的な骨格に貼り付けた構造体を創製することに世界で始めて成功した。本合 成法は、吹き飴技法2)から着想を得た「ケミカル風船法」とも言うべき独特な方法である。 2.グラフェンは超極薄物質で、カーボンでありながら従来知られているグラファイトやダイヤモンド、 カーボンナノチューブ3)とも異なる特異な物性を示すことから注目を集めており、その発見者には 2010 年にノーベル物理学賞が贈られている。特異な物性のため、いろいろな応用が期待されている一方、そ の物質が極薄なため、機能を発揮させるための 3 次元構造体を作ることが容易ではなく、多くの研究者 がグラフェンの 3 次元構造体化に挑戦してきたものの、特性を損なわずに 3 次元構造体を作ることには 成功していなかった。 3.本研究では、これまで報告例のない斬新な手法、すなわち吹き飴技法に着想を得た「ケミカル風船 法」を用いて、3次元グラフェン構造体の合成に世界で始めて成功した。この構造体は構造的に安定な 細い骨格にグラフェンを貼り付けた提灯や張り子を思わせる構造をしている。この手法では、グルコー ス(砂糖)と塩化アンモニウムを混ぜ、約250℃で加熱すると溶融したグルコースポリマーが生成す る。この際に発生したアンモニアガスがポリマーを内側から圧力をかけることで膨らませ、数十ミクロ ンサイズの小さな風船を多数発生させる。同時にまた、構造体を安定化するための骨格が形成され、3 次元張り子構造が作り上げられる。張り子構造の形成後、さらに1350℃の高温で加熱することで、 張り子の皮に相当する部分をグラフェンに変化させる。「ケミカル風船法」は、短時間、簡便、かつ安 価に 3 次元構造を持ったグラフェン構造体を合成できる画期的な手法である。 4.この研究で合成された 3 次元張り子構造を持つグラフェン構造体を電極として用いたキャパシタは 高い出力密度を示すことから、高性能なキャパシタ材料としてポータブル電子機器や電気自動車の急速 充電・放電や航空機の電磁発射装置等への応用が期待される。また、今回開発した「ケミカル風船法」 はグラフェン以外の超薄膜の新規な創製法としても広く利用することができる。 5.本研究は、世界トップレベル研究拠点(WPI プログラム)の成果で、英国の科学ジャーナル「Nature Communications」のオンライン版で、日本時間の平成25年12月16日(月)19時に発表される。

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2 研究の背景: 2 次元結晶であるグラフェンは、電気的、光学的、力学的に優れた物性を持つことから、電池材 料、吸着剤、触媒担持体、様々な複合材の要素として大きな期待が寄せられる注目の素材である。 実際の応用を考えたとき、グラフェン同士の縁をつなぎ合わせ、大きな構造体を作る必要があるが、 そもそも鱗片上のグラフェンは、ファンデルワールス力によってその面同士が互いにくっつきやす くグラファイト状の構造を作りやすいため、極薄のグラフェン状態を保ったまま縁をつなぎ合わせ、 かつ、機械的強度を持った 3 次元構造体を作りだすことは極めて困難な課題であった。 これまで、グラフェンを用いた 3 次元構造体を作製する試みとして、カーボンナノチューブを支 柱とした構造や、金属や酸化物の構造体を用いたグラフェン複合材、表面張力による自己形成を利 用したグラフェンを含むゲル材などが提案されてきているが、いずれの場合も、強固な3次元の構 造体を作製することができなかった。 成果の内容: 本研究では、これまで報告例のない斬新な手法、すなわち吹き飴技法に着想を得た「ケミカル風 船法」を用いて、3次元グラフェン構造体の合成に世界で始めて成功した。この構造体は構造的に 安定な細い骨格にグラフェンを貼り付けた提灯や張り子を思わせる構造をしている。この手法では、 まず出発原料であるグルコース(砂糖)と塩化アンモニウムの混合物を約250℃で加熱し、溶融 したシロップ状のポリマーを作製する。このとき、塩化アンモニウムから化学的に放出されたアン モニアガスが、ポリマーを風船のように膨らませ、吹き飴のごとく多数の気泡ネットワークを形成 する。気泡が大きくなるとともに、気泡の皮が薄くなる。ガスの発生により薄くなった気泡の皮は、 その後1350℃での高温処理によってグラフェンに変化する(図1)。 図1 吹き飴技法に着想を得た新しいグラフェン3次元構造体の製造方法「ケミカル風船法」の模 式図。グルコース(砂糖)と塩化アンモニウムの混合物をポリマー化し、化学反応で発生するアン モニアガスを利用してポリマーを膨らませ、ポリマーの泡を多数生成する。その後、高温で加熱す ることで、ポリマーをグラフェンに変化させる。 できあがった構造体は、気泡が集まった構造をしており、その密度はわずか 3.0mg/cm3程度と極め て軽量であった(図2左)。各気泡は多面体をしており、多面体の辺は 3 個ないし 4 個の気泡に共 有されている。各辺はグラファイトで構成されており、十分な機械強度を持っている。さらに、多 面体の面は、極薄の単層もしくは数層のグラフェンから成っており、辺を形成するグラファイトで 強固に支えられており、まさしく、張り子のような構造を持っていることが分かる(図2右)。

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3 今回創製したグラフェン構造体を電極として用いたキャパシタ(蓄電器)は市販スーパーキャパ シタ4)のエネルギー密度のレベルを維持しつつ、最大出力密度 893 kW/kg という極めて高い性能を 持っていることが明らかになった。この値は、これまでにカーボン系材料を用いたキャパシタで報 告されている値の 1 桁以上の高い値を示すものである。 図2 3次元張り子構造を持ったグラフェン構造体の生成物(重さ 70mg)の写真(左)と、グラフ ェン構造体の走査電子顕微鏡像(右)とその 3 次元構造体モデル(図中に挿入)。 波及効果と今後の発展: 本研究で用いた、吹き飴技法から着想した新しい合成法である「ケミカル風船法」は、従来3次元 構造体を作るために提案されてきた手法に比べ、いくつかの点で優れている。一つに、原材料として 用いているグルコース(砂糖)が極めて安価(0.3円/g)であること、さらに、生成効率が良く、キ ログラムやトンといった量産も容易なことである。また、この手法はグラフェンの超薄膜を創製する だけでなく、窒化ホウ素、炭窒化ホウ素など様々な組成を有する3次元ナノ構造体を合成する新しい 合成法として広く利用することが可能である。 3次元グラフェン構造体はスーパーキャパシタの電極材料としての応用だけでなく、触媒担持体、 吸着剤、水素吸蔵材料、ガスセンサー、ガスフィルター、吸音材など、現行のポーラスカーボンを置 き換える新素材としての幅広い応用が期待できる。 掲載論文

題 目 : Three-dimensional strutted graphene grown by substrate-free sugar blowing for high-power-density supercapacitors

著者:Xuebin Wang, Yuanjian Zhang, Chunyi Zhi, Xi Wang, Daiming Tang, Yibin Xu, Qunhong Weng, Xiangfen Jiang, Masanori Mitome, Dmitri Golberg & Yoshio Bando

雑誌:Nature Communications (Volume 4, 2905, 2013 年 12 月 16日号)

用語解説

1) グラフェン

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4 トと異なり、極めて高い電気伝導度を持つほか、光学特性、熱特性、力学特性に優れている。グラ フェンの発見者は、2010 年にノーベル物理学賞を授賞している。 2)吹き飴技法 飴を加工して花や動物、果物の造形を作り出す飴細工技法の一種。息で吹いたりポンプを用いた りして、飴の中に空気を送り込み丸みを帯びた立体形状を成形していく。飴細工の中でも難しい技 術で、16世紀頃に中国で発展したと言われている。 3)カーボンナノチューブ: 炭素原子から成る六員環ネットワークを筒状にした細長い物質。直径は0.4から数十nmであるが、 長さは数μm 以上、数 mm に達することもある。構成元素が炭素であるにもかかわらず、よく知ら れるダイヤモンドや黒鉛とは全く異なる性質を持っており、様々な応用が期待される材料。 4)スーパーキャパシタ 電気二重層コンデンサーとも呼ばれ、正負の電荷が互いに向き合った平面を多数構成することで、 大容量電力を小さな電池の中に蓄えるための仕組み。ポータブル電子機器、電気自動車、家庭用蓄 電池などに応用されている。再生可能エネルギーの利用が叫ばれる中、より大容量のスーパーキャ パシタの開発が望まれている。 問い合わせ先: 独立行政法人物質・材料研究機構 企画部門 広報室 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 TEL: 029-859-2026 FAX: 029-859-2017 研究内容に関すること: 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス拠点(WPI-MANA) 無機ナノ構造ユニット長 板東 義雄 (Bando Yoshio) E-mail: [email protected] TEL: 029-851-3354 (内線4426) URL: http://www.nims.go.jp/synthesis/mail-e.html 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス拠点(WPI-MANA) 無機ナノ構造ユニット博士研究員 王 学斌(ワン シュェビン) E-mail: [email protected] TEL: 029-851-3354 (内線8599)

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