ミソバチ科学23(1) 12-16 HoneybeeScience(2002)
横浜市 にお ける ミツバチの生息状況
亀井 昭夫,小菅 皇夫,中曽根 恵子,金山 彰宏
ニホ ン ミツバチは北海道を除 く日本全土の山 野 に広 く分布 してお り,古来 よ り採蜜 のために 伝統的な方法 によって飼育 されて きた.一方, セイ ヨウ ミツバチは管理 しやす く蜜の生産量が 多いとい う理由か ら,明治期 に導入 された.本 市内における養蜂業者 は高度成長期以降減少 し たに もかかわ らず, ミツバチに関す る市民か ら の相談 は近年増加傾向を示 している.横浜市 の 保健所では, ミツバチの相談が増加 している理 図1 営巣群と分蜂群 上:二ホンミツパテが洞の中 に営巣 しているケヤキ (横浜市港北区),下:信号機 に集合 した二ホンミツパテの分蜂群 (横浜市神奈川 区).後者は今回の調査対象ではないが,珍 しい事例 と思 われ る. 由は何なのか, いかに して ミツバチは都市部 に 適応 しているのかなどを探 る目的で調査 を行 っ たのでその結果 を報告 したい. 調 査 方 法 1999年度 と 2000年度 において,市民 の方 か ら相談があった場合 に,現地 に赴 いて営巣 ・ 分蜂群の確認 を行 い, その場所,種の確認等の 調査を した (図 1).営巣群 と分蜂群の区別 は, 巣板が確認 された ものを営巣群, その他 を分蜂 群 としたが,巣板が確認 されな くて も閉鎖空間 (例えば天井裏,換気 口)内に存在 あるいは侵入 した事例 は営巣群 とした. 本市 は18の行政区よ り成 る (図2)が,諸般 の事情 によ り全ての区で調査 を行 うことはで き なか った.1999年度 は 13区, 2000年度 は 8 区において調査を行 った (図 3). 図2 横浜市の行政区配置調査結果
1 調査件数 市 全 体 の相談 件 数 は1999年 度 が 297件, 2000年度が 423件であった. 区別の相談件数 を図4に示 した. この うちの1999年 度 72件,2000年 度 78 件,合計 150件 につ いて調査を行 った.これ ら について, ミツバチの種および営巣 ・分蜂群 の 内訳 を表 1に示 した.分蜂 とは一次分蜂を意味 している.また,
「営巣 十分蜂群」は,営巣 と分 蜂の両方が観察 された群である. 2 巣,分蜂群を確認 した場所 巣や分蜂群 を確認 した場所 を図3に示 した. 埋 め立て地や最沿岸部 を除 き,調査区内でほぼ 凡例:⊂=)調査区 ⊂=)未調査区 ●ニホンミツバチ ○セイヨウミツバチ ●未同定種 図3調査区と巣,分蜂群を確認 した場所 図 4 区別の相談件数 (相談数を円の直径の大きさで示 した)14 表1 調査 の内訳 種 営巣群 分蜂群 表3 営巣群の発見時期 芸還表 合計 月 二ホンミツノヾチ 4 7 50 セイヨウミツバチ 11 3 未同定 1 7 15 合 計 75 68 表2 分蜂群の発見時期 月
ミ
ニ
ツバ チホ ン て!,/3<三 乗 同定 5 32 8 3 3 1 4 4 5 6 7 8 9 10 9 41 9 4 5 3 4 3 7 1 1 2 2 0 まんべんな く確認 された.3
分蜂群発見の時期,二次分蜂 までの期間 分蜂群発見の時期 を表2
に示 した.二ホ ン ミ ツパ テの分蜂群 は4月上旬 か ら10月下旬 の間 に発見 され,5
月が最 も多 か った.また,25
群 において二次分蜂が確認 され,発見 よ り二次分 蜂 までの期間 は,1日間が最 も多か った. セイ ヨウ ミツバチの分蜂群 は4月下旬か ら5 月下旬 に発見 された. 2群 において二次分蜂が 確認 され,発見 日よ り二次分蜂 までの期間 は,2
日間が 1群,3
日間が1
群 であ った. また,未同定種 の分蜂群 は4
月下旬か ら9
月 中旬 に発 見 された.12群 にお いて二 次分蜂 が 確認 され,発見 日よ り二次分蜂 までの期間 は, 0日間が最 も多か った. 4 営巣群発見の時期 営巣群 を発見 した時期 を表3
に示 した.5月 および 6月が多か った. 図5 歩道脇のコンクリー ト壁に集合 した ニホンミツバチの分蜂群 (緑区) 二ホン セイヨウ ミツバチ ミツノヾチ 1 4 17 13 2 2 2 1 11 -4 -義 1 7 22 21 7 6 2 1 15 0 3 2 5 3 3 0 0 2 表4 分蜂群の場所 場所 ミ㌍ 定 言!,,3号 未同定 合計 木の幹 ・枝 30 3 11 44 軒,ベランダ の下 壁,棉 キンリョウ へン(ラン) 外階段の下 街灯 スクーター 自転車置 き 場の屋根 物置の中 跨線橋 の下 不明 9 0 1 10 5 0 4 9 3 0 0 3 1 1 1 1 l 1 3 0 0 0 0 0 0 0 5 分蜂 の場所 分蜂 の場所 を表 4に示 した.セイ ヨウ ミツバ チは 3例 とも 「木 の枝 ・幹」であ った.ニホ ン ミツパ テ,未同定種 も 「木 の枝 ・幹」が最 も多 か ったが, そ の他 に も 「軒, ベ ラ ンダの下」, 「壁,演 (図5)
」等 いろいろな場所 に分蜂す る ことがわか った. 図6 民家の梅の木に営巣 した ニホンミツパテ (港北区)蓑5 営巣の場所 ・1,u1- ∫ . ●:1」T 計 合 定 同 未 天井裏 6 0 換気扇 ダク ト内 木の幹 ・枝 軒下 納骨スペース内 床下 電 柱 内 湧水排水管内 よう壁の 割 れ 目内 木の洞 壁内 石 の隙間 外 階段 の隙 間 塀 の隙間 変電器 内 戸袋 内 ガス栓内 鳥巣箱の下 崖の穴内 小型焼却炉内 ダンボール箱内 浄化槽 内 鉄 柱 内 井 戸蓋 の裏 瓶 の中 換気孔 不明 6 1 3 4 5 2 4 0 3 0 3 1 3 0 9 9 9 7 5 5 5 5
3
2 2 0 1 2 1 2 2 1 0 3 3 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 1 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 6 営業の場所 営巣の場所 を表5に示 した.このよ うに ミツ バチ,特 にニホ ンミツバチの営巣場所 は非常 に 多様であ った.「木の幹 ・枝 (図6
)
」
,
「軒下 (図7
)」
,
「鳥巣箱 の下」 という開放空間の巣 も1
7
例 あった.考察
本市 における ミツパテの相談件数 は1
983
年 皮, 1
9
84
年度 には一桁であ ったが, その後増 加 を続 け,1
9
85
年度か らは二桁 とな り,1
992
年度か らは三桁 となった.1
99
7
年度が6
32
件 で最 も多 か ったが,その後 ははやや減少 した (図 8参照). 本調査ではセイ ヨウ ミツバチ とニホ ンミツバ チの比率 は1
:
7
.4であ った.相談件数 の増加が ミツバチの自然界における個体数 あるいはコロ ニー数 の増加 を反映 した ものであるとす ると, 図7 マンションの軒先に営巣 した ニホンミツパテ ニホ ンミツバチの増加が相談件数 の増加 の大 き な要因であると思われ る。 本来 「森の ミツバチ」 と呼ばれるニホ ンミツ バチが都市部 で増加 している要因 としては,那 市環境の変化,ニホ ンミツパテの特質あるいは セイ ヨウ ミツバチやスズメバチなど他の生物 と の関係 などが考え られる. まず,都市環境の変化 としては,一般家庭や 公園で栽培 され る花や花 をつける街路樹が増加 し,餌が豊富 にな ったことや,温暖化が越冬 を 容易 に していることなどが考え られる. トウヨウ ミツバチの-亜種であるニホ ンミツ バチば,セイ ヨウ ミツバ チと形態的に異 なるだ けでな く,生態的に も多 くの違 いが見 られる. 元来 日本 に分布 していたニホ ンミツバチが,近 年 にな って移入 されたセイ ヨウ ミツパテに較べ てわが国の風土 に適応 しているのは当然の こと と思われ る.特 に, ニホ ンミツバチは巣の条件 が悪 くなると,今 までの巣 を捨て新たな場所で 巣を造 る 「逃亡」 の習性が発達 している.分蜂 群の発見時期 は5月が最 も多いが,ニホ ン ミツ バチや未同定種では6
月か ら1
0
月 にか けて も 発見 されている.夏期や秋期の分蜂の中には逃 亡の事例が含 まれていると思われ, これ も相談 数増加 の一因 とな っていると考 え られる. 次 に,本市 におけるスズメバチと ミツバチの 相談件数の推移を図8に示 した.スズメバチの 相談件数 は増減を繰 り返 しなが らも増加傾向を 示 していて,1
9
91
年度,1
99
4
年度,1
999
年度 に ピークが あ った.1
9
83
年度 か ら2000
年度 の ミツパテとスズメバチの相談件数の相関係数16
8
38
48
5 868
78
8
8
9
90 91 92 93 94 95 96 97 9899 00年度 図 8 ミソバチとスズメバチの相談数の推移 は 0.21で,相 関 はみ られ なか った. しか し, 1983年 度 か ら 1991年度 で は相 関係 数 0.83で 正 の相 関, 1994年 度 か ら 2000年 度 で は相 関 係数 -0.79で負 の相 関 が見 られ た. この ことか ら, 1991年 度 頃迄 は ミツバ チ とス ズ メバ チ両 者 の相 談 件 数 を増 加 させ る要 因 が 強 く働 き, 1994年 度 以 降 は ミツパ テ とス ズ メバ チを桔抗 させ る要 因 が加 わ った, あ るい は顕 在化 した と 推 測 され る.おわ リに
本市 にお いて ミツバ チの相 談件 数 が増 加 して い る理 由 につ いて, い くつ か の考 察 を行 うこと が 出来 た. しか し, ミツパ テの 自然 界 にお け る 状況 は複 雑 で あ り,他 の要 因 が存在 す る こと も 考 え られ る. また, 将来 にお いて も増加 が続 く か ど うか も不 明 で あ る.今 後 も ミツバ チを め ぐ る状 況 を明 らか に して行 きた い と考 え て い る. 最 後 に,本稿 を ま とめ るにあた り多大 の ご指 導 , ご助言 を いただ き, また本誌 に発表 の機 会 を与 えて下 さ った玉 川 大学 ミツバ チ科学研 究施 設 の諸 先生方 に深謝 した い. (亀井 .〒225-0024横浜市青葉区市 ヶ尾町 3卜4横 浜市青葉福祉保健セ ンター,小菅 :〒222-0032横浜 市港北区大豆戸町 26-1横浜市港北福祉保健 セ ンタ ー,中曽根,金山 :235-0012横浜市磯子区滝頭 1-2 -17横浜市衛生研究所検査研究課) 参考文 献 秋元徹.2000. ミツバチ科学 21(1).31-34. 岡 田一 次.1991. ミツパテ科学 12(1):13-26,61-76. 佐々木正己 1994. ミツバチ科学 15(3):99-106 佐々木正己 1999. 二ホンミツパテ -北限のApis cerana海併 舎,東京 192pp, 菅原道夫.1997. ミツバチ科学 18(1).17-20. 菅原道夫.1998. ミツバチ科学 19(1).37-41. 菅原道夫 2000. ミツパテ科学 21(1):35-39. 菅原道夫 ・筒井克行 1998.ミツバチ科学 19(2).81 -82. 吉 田忠晴.1977. ミツパテ科学 18(1):1-8.AKIOKAMEI書,KIMIOKosUGE群*,KEIKOKosoNE***, AKIHIROKANAYAMA***.Thehabitationsituation
ofthehoneybeeinYokohama,HoneybeeScience 23(1):12-16.*Aoba Public Health & Welfare Center,3114,IchlgaO,Aoba,Yokohama,225-0024 Japan,**Kohoku PubllC Health & Welfare Center,26-1,Mamedo,Kohoku,Yokohama,222
-0032Japan
,
日
*Yokohama City lnstltute Of Health,1-2-17,TaklgaShira,Isogo,Yokohama, 235-0012Japan.SwarmingandnestlngOftheferalhoneybees areincreasinginYokohamacity.Theconsult a-tionfrom citizenwas297casein1999and423 1m 2000
WelnVeStlgated total150Casesand found thatApisceranajaponicawas7.4 tlmeSmore thanA mellifera.Detailsoftheirnesting site were described. The increase ofA. cerana
seemed due to the flexibility ofnesting site