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珠江デルタ地帯における西洋近代法と伝統的宗法規範の対立と同化に関する研究 利用統計を見る

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(1)

珠江デルタ地帯における西洋近代法と伝統的宗法規

範の対立と同化に関する研究

著者

井上 貴也, 深川 裕佳, 李 芝妍, 後藤 武秀, 朱

大明

雑誌名

アジア文化研究所研究年報

50

ページ

312(35)-309(38)

発行年

2016-02-29

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00010882/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

研究所プロジェクト

平成27(2015)年度 事業報告

珠江デルタ地帯における西洋近代法と

伝統的宗法規範の対立と同化に関する研究

A Study on the Conflict and the Assimilation of Western Modern Law and Traditional Chinese Law in the Zhujiang River Estuary Area

(3)

珠江デルタ地帯における西洋近代法と伝統的宗法規範の対立と同化に関する研究    ─  ─(  )312 35

〔報告〕研究所プロジェクト

珠江デルタ地帯における西洋近代法と

伝統的宗法規範の対立と同化に関する研究

研究代表者:井上貴也(法学部企業学科教授) 研究分担者:深川裕佳(法学部法律学科准教授) 研究分担者:李 芝妍(法学部法律学科准教授) 研究分担者:後藤武秀(法学部法律学科教授) 研究分担者:朱 大明(アジア文化研究所客員研究員) 1 研究概要  中国会社法珠江デルタ地帯は,中国大陸,マカオ,香港が近距離で接している地域である。その 地域における法制度は,香港,マカオが1990年代末に相次いで中国大陸に返還されたとはいえ,特 別行政区として高度の自治権が認められている。  特に,私法分野は中国大陸の社会主義法が導入されることなく,西洋近代法と伝統中国の法すな わち宗法が共存している。つまり,マカオにおいてはヨーロッパ大陸法の中でもフランス法の影響 を強く受けたポルトガル民法典法(1867年制定)が1879年より導入されたが,一方で,マカオの華 人社会の家族法については,ポルトガル法の導入を拒み1909年に宗法の体系化とも言うべき華人風 俗習慣法典が編纂され,これが華人社会に適用された。また,会社法に関しては,1888年のポルト ガル商法典がマカオに導入されたが,マカオに多い小規模同族会社の実態とは適合しないことか ら,1901年に有限会社法を制定してマカオの華人社会に適用した。  他方,香港においては,イギリス統治が行われたことから,不文法であるイギリス法が導入され た。しかし,民事法は不文法であるために,香港の華人社会にはこれを直接適用することはせず, 家族に関しては依然として伝統的な不文慣習法である宗法が行われた。このように,珠江デルタ地 帯においては,ヨーロッパ近代法の双璧とも言うべきヨーロッパ大陸法とイギリス法,そして伝統 中国の宗法が併存してきている。  そこで,本研究においては,第1に,マカオにおけるポルトガル法と伝統中国の宗法との対立, 同化の過程を明らかにし,実際の裁判において,華人の紛争のどの分野にポルトガル法に基づく判 決が下されたか,そしてそれは華人社会にどのような反応を生み出したかを明らかにする。第2に, 香港において,華人社会の紛争が常に宗法に依拠して解決されたのかどうか,イギリス法が柔軟に 変質しつつ適用されることはなかったのかどうかを明らかにする。そして第3に,珠江デルタ地域 全体として,西洋近代法がどのような抵抗と同化の過程を経て導入されたかの一般理論を構築し, 東アジアの他地域,すなわち日本,台湾,韓国における西洋近代法の摂取に関する理論と比較検討 していきたい。

(4)

珠江デルタ地帯における西洋近代法と伝統的宗法規範の対立と同化に関する研究 2 平成27年度活動状況 ⑴ 平成27年度の設定課題・研究組織  本共同研究は,マカオ,香港において実際に機能しているレベル,すなわち動態としての法及び 法現象を研究対象とするものである。先にも記したように,珠江デルタ地帯の私法は,ヨーロッパ 大陸法の系統に属するポルトガル法(マカオ),イギリス法(香港),伝統中国法である宗法が機能 している。これらの相互関係,特に西洋近代法と伝統的秩序との対立と同化を主たる関心事項とし て,これらの法体系が裁判の場においてどのように適用され,どのような摩擦を生じているかを検 討する。  このような問題関心に基づいて研究を遂行していく上で,必要となる研究者の資質は,ヨーロッ パ大陸法特にポルトガル法の母法であるフランス民法に造詣が深いこと,イギリス法に造詣が深い こと,及び,伝統中国の宗法及び法慣行に造詣が深いことである。幸い,本共同研究の参加者は, 一人でこの条件をすべて満たすことはできないが,各自がそれぞれの専門領域において,これらの 資質を有してきている。すなわち,研究代表者である井上貴也はイギリス会社法を重点的に研究し てきており,深川裕佳はフランス民法上の制度を研究してきている。また,李芝妍は,専門とする 保険法の性格上イギリス法に造詣が深いだけでなく,宗法の多くを受容している韓国の伝統的法文 化に詳しい。さらに,後藤武秀は中国の伝統的法文化が専門であり,宗法について研究している。 これに加え,珠江デルタ地帯の中国本土である深センに設立された清華大学深セン研究生院法学院 において教鞭を執り,本学アジア文化研究所客員研究員でもある朱大明は,珠江デルタ地帯の事情 に詳しく,すでにマカオ法,香港法の研究では中国の有数の研究者としての地位を占めるに至って いる。 ⑵ 平成27年度に行った研究作業  平成27年度に行った具体的作業については以下のとおりである。  第1に,日本国内において,マカオにポルトガル法が導入される際に華人のために編纂された華 人風俗習慣法典の分析を進めた。その際,清律の影響がどの程度認められるかを検証した。次に, そこに現れた伝統中国法である宗法がどのようなものであるかを共同研究者全員で確認した。以上 の作業のために,後藤武秀が毎月1回研究会を開催し報告した。次に,平成27年度夏期休暇を利用 して香港およびマカオの法事情について調査を行った。  第2に香港会社法については,5月に1週間,朱大明,井上貴也が中心となって研究会を連続し て開催し,その成果として,朱大明『香港会社法研究』(法律出版社2015年8月)が出版された。 初年度の最大の成果であると言える。目下,その日本語版を準備している段階にある。これは平成 28年度の出版を予定している。

(5)

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