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子どもに食と農をどう教えるか (敬愛大学総合地域研究所 第5回公開シンポジウム報告 フード(食)とアグリ(農)を子どもにどう教えるか!)

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Academic year: 2021

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こんにちは。私は、パワーポイントは使いません。“使えません”といった方が正確かも しれませんが、パワーポイントの欠点は話し手の顔からスクリーンの方に皆さんの視線が いくということで、私に注目していただきたいということですので、できれば私の方を見 ながらお話を聞いていただければと思います。 私は千葉県の南房総市、館山市をぐるっと囲んで白浜の野島崎の灯台がある、ご存じの 方は少ないと思いますが、千葉県の最南端におります。私どもの掛け声としましては、「最 南端は最先端。周回遅れでも先頭を走ろう」ということで、色々なものに取り組んでおり ます。なぜそのような危機感をもっているかということは、おいおいお話していきたいと 思います。 私は最初に、「今、思うこと」ということで 3 点挙げましたが、まず一つが「そこにある ものを活かす生活」。 私ども南房総市は、ベルギーと交流をしております。3 月・ 5 月のお互いのウォーキング 大会、私どもも「フラワーマーチ」ということで、国内の 15 くらいあるメジャー大会の一 つとなっております。ベルギーのブランケンベルグというところで国際メジャーリーグで 世界の大きな大会の一つになっているものがあって、その姉妹大会として交流をもってお ります。 夏に中学生と高校生が 8 人ほど向うに行って八泊くらいし、こちらにもホームステイで 同じように泊まって帰るわけですが、私もおととしベルギーに行きました。そこでベルギ ーについて少し調べたら、農業人口が 3 パーセントということです。ですが食料の自給率 は 7 割だということを聞いて、ちょっと驚きました。 4 日間ホームステイしまして、朝食を食べたのですが、見事に同じものが出てきますね。 総 合 地 域 研 究 第 5 号   2 0 1 5 年 3 月 12 [シンポジウム報告 ②]

三 幣 貞 夫

南房総市教育委員会教育長

子どもに食と農をどう教えるか

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シ ン ポ ジ ウ ム 報 告 子 ど も に 食 と 農 を ど う 教 え る か 13 同じパン、同じジャム、そしてミルク、そして卵をゆで卵か何かに変えるだけなのですが、 4 日間ぴったり同じなのです。 要するに自給率が高いのは、こういうことかと。自分の国でとれるものを食べる。あそ こはブドウができないので、ワインはありません。そのかわり、ビールは種類が多い。そ んな生活をしているのだなということを改めて感じたところであります。 ひるがえって私の生活を見ても、毎日の食卓にあがるものを見た時に、日本に無いもの にいかに依存しているか。パンがそうだと思いますし、ほとんどのものが外国からのもの。 あるいは、肉そのものは日本で生産されていても、飼料は果たして日本のものなのか。そ んなところもあると思います。いかに日本に無いものに依存する生活をしているか、そん な思いをもっています。 3 つ目ですが、私どもは今ちょうど議会中でありまして、10 日ほど前の一般質問で 1 時 間ほど議員さんとやりあったのですが、それは、小中学校の普通教室にエアコンを付ける ことについての議論です。これは財政的な問題ではなくて、人間が本来もっている発汗作 用、あるいは体温調整機能は、小学生くらいから体の成長が止まるところまで発達してい くと。人工的な環境の中にいると、本来、人間がもっているそういった力が出せないまま 成長してしまう。それはまずいだろうということで、保育所や幼稚園にはエアコンを付け て必要があれば使う。ただ、小中学生については普通教室では使わない。暑ければ汗をか く。それでも暑ければ下敷きであおぐとか、色々な方法で暑さに耐える力を人間は本来も っているのですから、そういったものを活かしていくことが教育としては大事だろうとい うお話をしました。 もう一つ大きな観点で言えば、私ども高齢社会になって、データが少し古いかもしれま せんが、千葉県で市民の平均年齢が一番低いのが浦安市で 39 歳くらい。私ども南房総市は 下から 3 番目で 54 歳です。65 歳以上が約 4 割です。ですから、超高齢社会に入っています。 従って、不耕作地が非常に増えています。土地のもつ可能性、里山というのがありますが、 里山の機能はもう失われています。人が入らなくなっています。田んぼや畑であったとこ ろも、セイタカアワダチソウが非常に伸びている。本来その土地がもっている可能性、力 が発揮できない状況になってきています。 そんなようなことを今、根底に思っています。具体的には、資料 2 つ目の「農業科への 挑戦」ということで、平成 12 年から 14 年までの 3 年間、今、南房総市に合併されたわけで すが、その中の一つの町で、文部科学省の研究開発校の指定をいただきました 3 つの小学 校、一つの中学校、一つの高等学校・農業高校ですが、この 5 校で研究開発を進めました。 私はどんな役割だったかというと、研究開発の構想を立てて、文部科学省の指定をいた だいて 3 月に異動だということで県の教育委員会に帰されたわけですが、具体的な研究は お前にやってもらわなくても良いということで、一応、私が立てた構想で 3 年間やってい ただきました。そこで農業科というものをつくりました。これは学習指導要領にとらわれ なくて良いわけです。その設定の趣旨としては、そこに書いてあるとおりでございます。 「地域の基幹産業である農業を小・中・高等学校が連携して教科として取り組む。発達段 階に応じて農業の知識や技術にふれ、農業に対する理解を深めるとともに生命の大切さを 学ぶ。土にふれ、汗を流す体験を重視し、心豊かな児童生徒を育てる。」ということで農業 科というものを立ち上げました。

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これは“農業ごっこ”ではありません。おぜん立てができていて、田植えの準備ができ たところに子どもたちが行って田植えだけするとか、そういったものではなくて、可能な 限り土に触れて、できる限り種を蒔く段階から作物を穫り入れるところまでやるといった、 そのような体験を考えてやりました。 直接、土にまみれる。汚い言葉ですが“うんこまみれにしろ”という話もしました。土 づくりをするためには、やはり肥料が大事だ。そのようなことで、最初の土づくりの段階 から子どもたちにやらせよう、という思いをもってやりました。 何かを育てるということが、他の教科とは違った農業科の一番大切なところかと思いま す。作物が子どもたちと共に成長していくプロセスと結果が見られるところが農業科の一 番素晴らしかったところではないかと思っています。 残念なところは、3 年間の研究開発の指定が終わりましたら、携わった 5 校の先生方が疲 れたようなのですね。それで、研究開発の指定が終わった段階で農業科をやめてしまった ということです。 このあと何年かして、福島県の喜多方市が特区の指定を受けまして、市内の小・中学校 だったと思いますが、すべての学校で農業科というものを今、始めております。 私とすると、「始めたのが少し早かったのかな…」と、そんな思いをもっています。後で 申し上げますが、今、15 年たちまして、私は立場が変わりまして、市内の学校で「南房総 学」ということで「第一次産業の体験を」ということでやっております。ただ、この段階 では、3 年間の実践で終わってしまいました。 レジュメの(2)の下の方に書いてありますが、どのくらいの農業科の時数をやったかと いうと、小学校 1 年∼ 2 年で年間 10 時間、3 年生から 6 年生までで 40 時間。中学校 1 年∼ 2 年で 35 時間。中学校 3 年生で 28 時間です。これは基本の時間なのですが、校門の前に畑を 借りるといった工夫をしました。 もう一つは、グループの土地と個人の土地というと大げさですが、私の畑とみんなの畑 の両方があるということです。やはり子どもたちにとって、私の畑で私の作物をつくると いうことへのこだわりは非常に強いです。夏休みに入っても、お母さんと一緒に水やりに 来たり、あるいは、ピーマンなどできたものをお母さんと一緒にとって家にもって帰ると か、そういう姿を見られるようになりました。ですから、授業時間が 40 時間、50 時間とあ ろうとも、それとは別に、いつでも行って見られるようなところに畑があるということが 極めて大事であると、つくづく思いました。遠いところにあれば、やはり学校で決められ た時間にみんなで行くしかない。それだと本当の農業科の学習にはならないのかなと、こ の 3 年間で思っています。 レジュメの 3 つ目ですが、今、私の方でやっていますのは、「日本一おいしいごはん給食」 です。レジュメの 2 枚目にちょっと品のない宣伝があるかと思いますが(笑)、この本です。 全国の書店で絶賛発売中です。最近、書棚から引き上げられていますが、11 月に発行しま して、そのあと私は幾つか結婚式に出たのですが、結婚式の主賓の挨拶の中で必ずこれを 宣伝しました。「平積みされているものを迷うことなく手にとって、そのままレジにお進み ください」ということで。 当初は、食べ物の本として青という寒色系はどうなんだ? ということだったのですが、 これはこれで目立ちました。中には献立も載っております。チラシの中にはないですが、 総 合 地 域 研 究 14

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シ ン ポ ジ ウ ム 報 告 子 ど も に 食 と 農 を ど う 教 え る か 15 生産者のコメントと写真も載っています。給食の食材を提供してくれた、たとえばここで すとレンコンを提供してくれた方の写真とコメントが出ています。ぜひ、機会があれば皆 さんに買っていただきたいのですが、私が一番買っていただきたいと思ったのは南房総市 内の人たちです。 南房総市には、こんな素晴らしい食材がある。こんな素晴らしいことをしている人たち がいるのだ。あるいは、こんなものを食べて子どもたちは育っているのだということを、 まずは南房総市内の人たちに知って欲しい。そんな思いをもっています。 南房総市は、日本で一番“道の駅”が多い市です。高山市と同じ八つあります。多けれ ば良いというものでもないですが、その道の駅でも、この本を扱っております。売れ行き 悪いので、最近はもう下げられたかもしれませんが、ぜひ、内容をご覧いただければと思 います。 それでは、「日本一おいしいごはん給食」ですが、何をもっておいしいかというと、これ は宣言したものが勝ちだということで、根拠は何もないです。 3 年前になりますが、五日間ぜんぶごはんにしました。ごはんにすれば、おかずが変わ る。おかずが変われば、地域の食材が使える。そういう思いで、すべてごはんに変えまし た。 私も教員をやっておりましたので、給食を食べるわけです。ところが、だんだん年齢が あがってくると給食が食べられなくなってきたのです。油が多い。砂糖が多い。若いうち はおいしいと思ったのですが、年齢とともに給食がきつくなってきて、最後の頃にはほと んど食べませんでした。違うものを食べたりとか、ふりかけをかけてごはんを少し食べた りして、自分の机の中に色々なものが入っていました。 更に言いますと、食は文化だという思いがある。だけど、目の前の給食を見ると、「俺は 何人なのだ?」と思う。要するに、やきそばとアメリカンドッグですか、そういうものが 出るわけです。あるいは、うどんとコッペパンとか、「何が主食なのだ?」という感じで。 幕内さんという方が「変な給食」という本を出していますが、パンとみそラーメンとか、 学生さんは好きだと思いますが、ものすごく違和感というか、「俺は何人なのだ?」という 思いをもつようになりました。 そして今の立場になりましたので、何も相談せずアンケートもとりませんで、来年 4 月 1 日から全部ごはんにすると変えたのですが、それで「給食レストラン」というのをやって おります。これは、多いところで 100 食の試食会ですね。地域の人たちに先着 100 名とい うと、電話ですぐ一杯になります。そこに来た方に食べていただいて色々なご意見をいた だく。それで改善に努めております。 そして、レジュメ 2 つ目の丸にありますが、「“地産池消”から“自産自消”へ」という ことも考えております。 子どもたちは、色々なものを栽培しています。お米、サツマイモ、大葉ワカメとか、そ ういったものを給食の食材にということで、もちろんすべてまかなえるわけでないですが、 キャッチフレーズを“自産自消”として子どもたちの作ったものを食材として使えるよう な状況を少しでも多くしようと思っています。 3 つ目の丸ですが、「農業が風景(環境)を支える」ということです。一番最初に申し上 げましたが、超高齢社会ですので、手が回らなくて耕作放棄地がたくさんあるわけです。

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完全米飯給食にした時の抵抗勢力というのは、ここにも女性がおられて大変申し訳ない ですが、女性教員と 30 代のお母さん方が一番の抵抗勢力です。子どもたちを前にして、 「パンが食べたいね」とか、「たまにはスパゲッティが良いね」とか、軽く言うわけです。 その影響力は大きいわけです。そこで、昨年 8 月の市内の研修会で言いました。「ドイツ人 は、国産のりんごジュースを好んで飲む。おいしいからですか? 違う。安全だからです か? 違う。安いからですか? 違う。私たちがあのりんごジュースを飲まないと、あの 美しいりんご畑の風景がなくなるからだ」と。 ちょうど 8 月でしたので、私たちの周りでは、田んぼの刈り入れが進んでいたわけです。 そこで、「田んぼの刈り入れをよく見ると、セイタカアワダチソウだらけの田んぼや畑がた くさんあります。ああいうものを美しいと思いますか?」と、そこで話は終わったのです が、ただ、私は地元のコシヒカリではなく、冷めてもおいしい“つや姫”を食べているこ とがバレまして、説得力なくなってしまったんですが(笑)、いずれにしてもそのような形 で、ごはん給食をやっています。 3 つ目のところに“認定農家”とありますが、今回、給食に協力している方に、認定農 家のシールを提供します。直売所などでレタスなどがくるまれたビニールに貼られるわけ ですが、バーコードがついているところに色のついた“認定農家”というシールが貼られ ます。同じ店頭に並んだときに、消費者はおそらくだまされるだろう。「このシールは何 だ? あ、給食協力農家か。では、安全だろう」と。そのような形で、私どもは何の根拠 もありませんが、少しでも給食に協力してくれることを願っております。少しでも、給食 センターにおさめてくれる高齢者の農家が多くなってくれればと思っております。1 人で は無理だが、3 人、4 人、5 人とチームをつくりジャガイモをつくって給食センターにおさ めようとか、そういうことがちょっとでも広がってくれれば、私どもとしては大変有難い と思っています。 レジュメの 4 つ目になりますが、今、「南房総学」ということですべての小・中学校でや っておりまして、ここには 2 つありますが、一つは、南房総を離れてどこに行っても通用 する学力の向上を図ろうということ。子どもの 7 割、8 割は出ていくだろうけれど、しっか りとした力をつけてやろうと。 2 つ目は、南房総に残っても、離れても、どこへ行っても支えとなる、故郷への誇りと 強い思いを涵養しようということです。このような中で、農業への思いということで、そ こに書いてあるような作物づくりに取り組んだり、あるいは、海の方へ行ってワカメを採 ったりなどのことをしております。 あともう一つ、自信がなかったんですが、農業をやらせるときにふと手にとったのが、 今西祐行さんの『土ってあったかいね』という本なのです。この本を本屋で探しまして、 「あ、自分のやっていることは間違ってないな」と思いましたので、機会がありましたらこ の本もお読みいただければと思います。 どうも有難うございました。 総 合 地 域 研 究 16 さんぺい・さだお Sadao Sanpei

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