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健常若年日本人女性におけるβ3アドレナリン受容体のTrp64Arg多型と脂質嗜好性との相関

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Academic year: 2021

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健常若年日本人女性におけるβ3アドレナリン受容

体のTrp64Arg多型と脂質嗜好性との相関

著者

渡辺 圭

53

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

歯博第910号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130101

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論 文 内 容 要 旨

β3アドレナリン受容体(ADRB3)はヒトにおいてカテコールアミン依存性脂肪分解を仲介する因 子である。T/C塩基置換を伴うADRB3遺伝子のTrp64Arg多型は,脂肪分解と基礎代謝量を減らすと 考えられている。本研究では,健常若年者(平均年齢24.3歳, n = 53。この53名には,25名の男性被 験者を含む)における,このTrp64Arg置換の食嗜好に対する未知の役割を検討した。4つの基本味(苦味, 酸味,塩味,甘味)を呈する食品と脂っこい食品(高脂肪食品)に対する嗜好について,自記式アンケー トを用いて調査した。その結果,この食嗜好に関して明確な男女差は認められなかった。Trp64Argの 遺伝子型頻度については,偶然にも,女性被験者群においてのみ,ハーディー・ワインベルグ平衡が 成立したことから,本研究では,女性被験者群についてさらなる分析を実施することとし,女性被験 者群を遺伝子型がTT(Trp64Trp,野生型)の群の属する被験者18名と,遺伝子型がTCの群(Trp64Arg, ヘテロ接合型)の群に属する被験者10名との2つのグループに分割した。4基本味を呈する食品の嗜好 については,この2つのグループの間において有意差は認められなかった。しかし,甘味食品を高甘 味脂肪食品と甘味脂肪食品のサブグループに分けると,ヘテロ接合型のグループの高脂肪食品に対す る食嗜好は,野生型のそれに比べ有意に高かった。さらに,被験者を脂っこい食品に対する嗜好に基 づいて2つのクラス(好む,n = 16,好まない,n = 12)に分けると,高脂肪食品を好んだヘテロ接合 グループ(n = 5)における嗜好度は,これに対応する野生型グループ(n = 11)の嗜好度に比べて有 意に高かった。Trp64Arg置換が遺伝的に高脂肪甘味食品に対する嗜好を促進する可能性を示唆するも のである。ゆえに,ADRB3遺伝子におけるTrp64Arg置換と脂質嗜好性との間の関係を今後さらに研 究することは,肥満予防推進のために有用であるものと考えられる。 氏 名(本籍)   : 渡わた 辺なべ   圭けい(宮城県) 学 位 の 種 類  : 博 士  ( 歯 学 ) 学 位 記 番 号  : 歯 博 第 9 1 0 号 学位授与年月日  : 令和 2 年 9 月 25 日 学位授与の要件  : 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻  : 東北大学大学院歯学研究科(博士課程)歯科学専攻 学 位 論 文 題 目  : 健常若年日本人女性におけるβ 3 アドレナリン受容体の Trp64Arg 多型 と脂質嗜好性との相関 論 文 審 査 委 員  : (主査)教授 洪     光 教授 若 森   実   教授 中 井 淳 一

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審 査 結 果 要 旨

β3アドレナリン受容体(ADRB3)はヒト脂肪組織においてカテコールアミン依存性脂肪分解を仲 介する主たる因子であると同時に他因子との組合せにより肥満を誘導し得る肥満関連遺伝子の1つであ る。T/C塩基置換を伴うADRB3遺伝子のTrp64Arg多型は基礎代謝量自体を抑制し,肥満症やこれに 伴う糖尿病を含む生活習慣病発症に関連する要因の1つであると位置づけられている。このため,肥満 症患者に対する個別化医療の一環として同多型の食事療法等への取り組みも一部で既に行われている。 一方Trp64Arg多型が摂食行動調節に深く関与する食嗜好といかなる関係にあるかは多くが不明であっ た。

本研究は,ADRB3遺伝子におけるTrp64Arg多型が,ADRB3が本来有する機能を介して,ヒトの摂 食行動調節機構と関連する可能性に着目し,Trp64Arg置換の食嗜好に対する未知の役割を健常若年成 人53名において検討したものである。 4つの基本味(苦味,酸味,塩味,甘味)を呈する食品と脂っこい食品(高脂肪食品)に対する嗜好 については,既存の自記式アンケートを用いて評価した。ADRB3遺伝子の遺伝子多型については,被 験者の頬粘膜サンプルから抽出したDNAを用いてPCR-CTPP法により評価を行った。加えて身長と体 重,体脂肪率を測定され,栄養状態の評価に供された。また,本研究のTrp64Argの遺伝子型頻度につ いては,女性被験者群においてのみ,ハーディー・ワインベルグ平衡が成立したことから,筆者は女 性被験者群に焦点を当てた分析を実施することを選択し,これにより女性被験者28名について,遺伝 子型がTT(Trp64Trp,野生型)の群の属する被験者18名と,遺伝子型がTCの群(Trp64Arg,ヘテ ロ接合型)の群に属する被験者10名との2つのグループに分割し,かつ両者の各指標における統計的 有意差を評価した。 本研究により,4基本味を呈する食品の嗜好については,この2つのグループの間において有意差が 認められなかった一方で,甘味食品を高脂肪甘味食品と低脂肪甘味食品のサブグループに分けると, ヘテロ接合型のグループの高脂肪食品に対する食嗜好が,野生型のそれに比べ有意に高いことが示さ れた。さらに,女性被験者28名を高脂肪食品に対する嗜好に基づいて2つのクラス(好むクラス16名, 好まないクラス12名)に分割すると,高脂肪食品を好むクラスにおいて,ヘテロ接合グループ(5名) におけるその嗜好度は,同じクラスの野生型グループ(11名)の嗜好度に比べて有意に高いことも示 された。 これらの知見は,ADRB3のTrp64Arg置換が遺伝的に高脂肪食品に対する嗜好を促進する可能性を 示唆するものであり,今後のTrp64Arg置換による肥満誘導機序のさらなる理解に大きく貢献すると同 時に,有害な摂食行動の予防に向けて,個別化医療を前提とした方途を考える上で大いに示唆に富む ものであることから博士(歯学)の学位論文として相応しいと判断する。

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