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テキスト「低地の利用」の構成と実践―科学的思考をうながすテキストの開発―

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(1)

テキスト「低地の利用」の構成と実践―科学的思考

をうながすテキストの開発―

著者

知久馬 義朗, 小野寺 淑行

雑誌名

東北教育心理学研究

5

ページ

15-33

発行年

1992-12

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121875

(2)

テキスト「低地の利用」の構成と実践

一一科学的思考をうながすテキストの開発一一一

知 久 馬 義 朗 ・ 小 野 寺 淑 行

(熊本大学)

I はじめに

(

1

)何を教えたいか 学校で、子供たちに科学をわざわざ教えるのは,彼らが 広大で未知の大自然、の中で主体的に行動できるようにな ることを願ってである。大自然の中での判断の土台,行 動の基準となるのは,人間の多年にわたる生産活動の結 果として生まれた科学である。生産活動は自然の法則に 従うことで発展してきたが,同時に自然認識は生産活動 (つまり技術)の発展に支えられて革新されてきた。自 然の法則性は,人間に役立つようにみた自然の姿にほか ならないのである(高橋, 1973)。それゆえ,科学を知 ることなしには,大自然を人間に都合よく変革すること も,生活や文化をそのときなりによりよいと思われる方 向に発展させることもできなし、。だから,学校では,科 学の基本的な概念・法則を教えなければならない。日常 の生活経験を通して自然に身につくことは,わざわざ学 校で教える必要も意味もない。 筆者は,

r

人聞は低地で活動する

J

という法則を,学 校で教える価値のある,つまり広範な人間の活動を支配 しているが, 日常経験によってだけでは身につかない基 本的法則のーっと考え,子供たちにぜひ伝えたいと願っ ている。ここでの「低地」は「沖積層j,すなわち扇状 地,自然堤防帯,後背湿地,三角洲などを含む広義の「氾 濫原」を意味する。日常生活に浸りきった我々には,

I

氾 濫原で暮らしている」という意識はほとんどないであろ う。我々の暮らす土地は「乾いた堅し、」土地であり,河 川は堤防で我々の活動域から隔離されているように見え るからである。時に洪水に接してさえ,洪水の常襲地帯 でない限り,我々は,

I

乾いた堅い土地」に暮らしてい ることをまず疑わない。しかし,我々は氾濫原で暮らし ているし,氾濫原で暮らさざるをえない理由がある。 大量の水と広く平らかな土地の確保は大,生産活動に とって必須である。日本における水の総使用量は,年間 約900億tに達する。また,たとえば製鉄所の敷地の広 (千葉大学) 大な平らかさを想い起こせばよいが,工業にせよ農業に せよ,広く平らかな土地を必要としている。ここで,ど の程度の水が得られるかを土地の「利水性j,どの程度 の広さの平らかさを得られるかを土地の「平地性」と呼 ぶことにすれば,農業と工業とをとわず,生産活動が営 まれるのは,ごく限られた例外1)を除けば,利水性と 平地性がともによい土地においてである2。) 利水性,平地性がともによい土地は,主に平野である。 楯状地や卓状地で出来上がった大陸には広大な構造平野 が存在するが,急峻な山地が海までせまる日本列島の平 野は,規模の小さな沖積平野(沖積層)だけである。こ の事実は,生産活動にとって必要な利水性と平地性のよ さが, 日本列島では氾濫原すなわち低地でしか得られな いことを意味する。「大江戸八百人町」が墨田川の氾濫 原から出発したこと(内藤, 1982)や,大坂が大湿地帯 の上に成立したこと(宮上, 1984;森, 1985)の理由は, この点にあろう。 低地はもともと河川の領分であるから,そのままでは 当然洪水が頻発し,人間は生産活動を営みづらい。利用 しづらい低地をなんとか利用しようと,治水のためのあ らゆる努力を積み重ね,いまなお続けているのが,人間 1) 植物生理の観点から,平地よりは山の斜面の方が 栽培に適した作物が存在する。山の斜面を利用すれ ば,直射日光や反射光等の光量を多くできるし,逆 に日陰の確保も容易になる。あるいは,水を多く必 要とせず山の斜面でも栽培できる作物が存在するの で,農家経済の観点からは,山の斜面を遊休地にし ておくよりは,耕作地にした方がよい場合もある。 ミカン,茶,シイタケ,ナシなどの栽培が好例とな る。また,木材などは山地でなければ入手できず, 林業は山地で営まれることになる。 2) 少し以前まで頻繁に使われていた「里j(対義語は 「山j)とし、う言葉の存在は,人間の活動が利水性, 平地性ともによい土地で営まれていることと関係す る。「里」が今では死語に近くなっていること自体が, 経済環境の変化に伴う人間の低地への集中によ勺て, 人間の活動する場所とそうでない場所とをわざわざ 区別させて考える必要がなくなったことに起因して し、ょう。

(3)

の歴史であろう。たとえば, 2,000年以上の時をかけて, 治水の比較的容易な谷間や山麓の平坦地から,小河川流 域(中世),大中河川流域(近世以降)へと,治水の困 難度が増す場所に少しずつ水田を拡げてきたのが,水田 稲作の歴史である(岩城, 1979)。一夜塘,銭塘といっ た地名や人柱伝説の存在は,その名残である。 このように考えれば,現在は洪水の心配があまりなく, 多くの人間が活動している「乾いた堅しづ土地も,実は, かつては洪水が頻繁に起こっていたが,人間の努力の結 果として,洪水の危険が小さくなった土地だと言うこと ができるし,いまなお洪水に襲われる土地は,治水の努 力が有効には実を結んでいない土地だと言うことができ る。実際,農業土地生産性の高い所,工業生産額の大き い所,人口密度の高い所は,みな同じ場所に位置しそ れは洪水による浸水面積の大きい所とほぼ一致する(日 本国勢地図帳)。そして,国土の14%にも満たない狭い 低地でしか,利水性と平地性のよい土地を得られないこ とが,今日の日本で問題になっている農工商業間,産業 と居住地問の競合を惹き起す原因にもなっている。 それゆえ,日本列島における治水は,治水の観点から だけではその役割を果たしにくい。狭い低地で

L

か利水 性と平地性のよさが得られないから,日本では,河川の 氾濫を前提にして,氾濫原である低地を舞台に生産の基 盤を整備し,生活と文化を築いてきた。当然,河川への 働きかけは,治水だけの観点で動機づけられているので はなく,水と平地の獲得のための治水という観点で動機 づけられていることになる。 「乾いた堅し、」土地の上で暮らしていると思っている 現代の我々にとっての治水は,ややもすれば治水のため の治水という観点しか持たない。いきおい我々は,

I

治 水=堤防を造る」とし、う単純な図式を成立させてしまい がちである。しかし,河川の氾濫する場に氾濫を前提に して生産活動の場を求めざるをえないという,それ自体 が矛盾に近いものを字み,それゆえ解決困難な問題事態 に直面した場合,我々にとって馴染みのあるこの図式は, 無条件で有効な治水策にはならない。実際,堤防を築く ことで水の行き場がなくなり,それまで大きな洪水が起 きたことのない流域で大きな洪水が起こったり,堤防に 囲い込まれたことで水の力が強くなり,いったん洪水が 起こると被害がかえって大きくなったりする事態が,い まなお生じているのである。 これに対して,たとえば近世前期の治水策には,当時 の基幹産業である自給肥料中心の稲作にとって一石二鳥 といえる巧妙さがある。すなわち,河川の中流域で人工 的に洪水を静かに溢流させ,流量の調節を図ることに よって,中流域だけではなく下流域の洪水も未然、に防ぐ と同時に,溢流させた洪水に含まれる肥料分を沿岸の耕 作地に客土したので、ある(旗手, 1976)。治水の最終目 的は,洪水を防ぐこと自体ではなく,生産の場を確保す ることにある。狭い低地の有効利用を考える場合,治水 と水・平地の確保を別々にではなく,絡めてとらえる必 要がある。 生産活動にとって,利水性と平地性のよさは不可欠で ある。それゆえ,活動の場は地形に強く束縛され,地表 のごく限られた部分に限定されている。しかし同時に, 地形の持つ意味や景観も,よりよい利水性と平地性を求 める人間の働きかけによって,歴史的に変わってきた。 人聞は,

I

一貫して大地に働きかけてこれを人為的に改 良し,特に水の制御を巧妙に推しすすめることにより発 展

J

(岩城, 1979, p.24)してきたのである。田畑や河 川が一見どんなに自然そのものにみえても,あるいは逆 に人間の営為が一見どんなに自然、とかかわりないように 見えても,それらは互いに無関係ではない。人聞は,自 然に規定されながら生活と文化を築き,同時にそれに よって自然の変革も行ってきたのである。 「人間は低地で活動する」とし寸法則は,以上のこと を簡潔に表現しようとした試みの産物で、ある。生産財で ある土地の利用と地形との聞に成り立つこの関係を,子 供たちに考えさせる教材をつくりたし、というのが,本研 究を営む動機である。 (2)

i

低地」か「平地」か 「低地」とし、う言葉は,今日なお洪水と関連しながら 発達しつつある沖積層のための言葉であり,構造平野に は適用できない。極地方式研究会(1970,1973, 1985a ) は,地層・地形・地図学習のために,山地と平地の区別 を人間の生活と結びつけて考えさせようとする教材を開 発している。「平地」は,土地の平地性に焦点を当てた 言葉であり,沖積層のみならず,構造平野にも適用でき るが,論議領界を日本列島に限ってしまえば,

I

低地」 と「平地」の外延はほぼ同じになる。だから,

I

低地」 と「平地」のどちらの言葉を使うかとし寸問題は,つづ めれば,土地のー属性である「高度性」と,同じくー属 性である「平地性」のどちらに焦点を当てて言葉を使う か,とし、う問題に置き換えることができる。 「平地」とし、う言葉の利点は,特に「山地」との対比 で用いられた場合に平地性を強調できる点と,構造平野 へそのまま適用できる点の,

2

点であろう。欠点は,

3

点 考えられる。第1に,等高線がもっとも直載に示すのは 土地の高低であり,地図から高度性を読み取ることはた

(4)

やすいが,平地性はそれと比べではるかに読み取りにく い。第2に,

1

乾いた堅L、」土地に暮らしているという 我々の思い込みのために,利水性のよさがすぐには結び つかない。第3に,人聞が手を入れたから土地を利用で きるようになったこと

(

1

人為性」と呼んでおく)を考 える必然性が生じにくい。 これに対して,

1

低地」を用いた場合,利点としては, 地図との対応がつきやすい点,言語感覚で「低地→ジメ ジメ」とし寸図式が成立しやすし利水性のよさと結び つきやすい点,それゆえ人為性も考えやすい点の,

3

点 が考えられる。逆に欠点は,

1

乾いた堅し、」土地に暮ら しているという我々の日常感覚と一致しない点,構造平 野への適用がそのままではできない点の, 2点であろう。 「平地」を用いれば,確かに平地性には気づきやすく, より普遍的でもありえよう。しかし,その一方で平地性 だけが強調され,利水性と人為性には気づきにくい事態 が生じるとも考えられる。菅原(1989)は, I平地で人 聞がつくったものでないものがあるか」とし、う発聞に対 して,子供たちが

1

m

の堤防は人聞がつくった」と答え, このことが「平地は人間がつくったものだらけ」とし寸 法則の確認に役立ったと報告している。しかし「人聞 の生活の場が平地である」ことはわかっても,子供たち の発言とその背後にある

I

Jl

I

→堤防」とし、う単純な図式 は,平地利用の可否自体が治水の成否に左右されてきた ことの確認まではできていないことを示じている。 その原因が,平地性と利水性が子供たちの中で、結びつ いていなし、点にあることは,利水性のよさの原点である 平地の河成性が授業のずっと後の時点でも明白でないこ とによって示唆されている。子供たちは,

I

昔の人も平 地で

)

1

1

のそばにすむ」と言える一方で,平地を形づくる 大量の土砂は

1

)

1

1

が山から運んできた」とは考えていな し、。平地の河成性が子供たちにとって考えづらいことは, 和田(1986)も報告している。 また,地図を読み取る際に,子供たちがまず気づく属 性は「高度性」であり,

1

低い所→等高線の間隔が広 L、→ゆるやか→人が住むのに適している」としづ段階を たどってようやく平地性を認めるようになることも,大 西(1980)の報告が例示している。そして安河内(1990)の 報告は,

I

平地」とし、う言葉がただちには平地性の認識に 繋がらないことさえ示す。「平地は平らな所だというのが わかった」旨の感想を述べる子供がし、るのである。 菅原にしても大西にしても,人為性を考えることまで を直接の目標としてはいないから,そこでの結果を直ち に一般化することは慎むべきであるが,

I

平地」という言 葉が利水性,人為性と結びつきにくい危険を含んでいる ことは,人為性の検討までしてみたいと考えている筆者 には,都合が悪い。「低地」とし、う言葉は,

1

平地」と違って, それのみでは何の価値も持たないし,我々の日常感覚と 一致しない欠点もある。しかし現実の低地には,つねに 平地性と利水性のよさが備わっている。言葉としての「低 地」が持つ欠点には目をつむり,まず高度性に着目した上 で,低地の特徴に平地性と利水性のよさがあると話を進 めた方が,地形と土地利用との関係に含意される平地性, 利水性,人為性を検討することにとって,より適切ではな いかと思われる。しかも,地図を用いての学習なら,1低 地」の方が地図との対応もつけやすい。 「低地」を使い,法則を「人聞は低地で活動する」と表現 した場合,この法則の適用範囲は当面日本列島に限定さ れる。しかし論議領界を日本列島に限定することは,欠 点ばかりを持つわけではない。沖積層のみが対象となる ことで,話が単純になり,日本における土地利用の原則も わかりやすくなるであろう。沖積層についての理解が確 実になされれば,それとの対比的発問群を設定すること で,構造平野における土地利用の検討にも,道が聞けよ う。 「低地」とし、う言葉を使いたし、理由は,し、ま一つある。現 行各教科書3)では,これまで述べてきたことに関連する 単元が,小学校4年に設定されている。しかしその記述 は,

1

低地のくらし」を「普通のくらし」と異なる「特色ある くらし」のーっと見倣す観点に立つてなされており,1低 地のくらし」が「高地のくらし」と同等に扱われている。し かし我々の「普通のくらし」は「低地のくらし」であって, それとは異質の「普・通」があるわけではないで、あろう。我 々の「普通のくらし」と「低地のくらし」に相違があるとす れば,その相違は,第(1)節で、述べたように,いまの時点で 治水がうまくいっているか否かに起因するものととらえ られる。そうとらえてこそ,生産活動の場が変化してきた 歴史的経緯を踏まえ,その将来を予測することが可能に なる。「低地のくらし」を「普通のくらし」と対立させる観 点は,人間と自然環境との力動的な相互規定関係を考え ることにとって,結果的には妨害の方向に働こう。そうだ とすれば,

1

低地のくらし」と同じ範権奪に分類するべきは 「普通のくらし」であって,

1

高地のくらし」ではないこと になる。「低地」とし寸言葉を使うことで,

1

低地のくらし」 を「普通のくらし」とは異質の「例外的なくらし」と見倣す 考え方を,子供の中からなくしたいと考える。 以上の理由により,先の法則を,

1

平地で活動する」では なく,1低地で活動する」と表現した。ここでの「低 3) 1988年度現在。

17

(5)

-地」は内包的に,

1

河川の氾濫によって形成された堆積地 島全体と一地域の両方を取り上げることもできるが,生 であり,平地性と利水性がよく満たされ,生産活動のほと 産活動が地形に規定されていることが主な検討内容な んど唯一の場となる」と定義される概念である。 ら,前者のみで十分であろう。

E テキス卜の構成

(

1

)授業目標 原則卜

2

.

典型例を選ぶ。 典型例は,当該概念の重要な特徴がはっきりしている ので,適切な一般化が容易である(高橋,1967)。 決定卜2-1.平野を取り上げる。 生産活動が地形に規定され,地形が人間によって変え 生産活動は,直接的には平地性と利水性に規定される られることを検討する教材(以後「テキスト」と呼ぶ)をつ から,平野だけでなく,盆地や谷地でも営まれる。盆地も くりたい。法則は,現象法則と因果法則の2種に分類でき 谷地も,

1

低地」の内包的定義に従えば,その外延となる。 る。平野,河川1,平地性と利水性のよい場所,生産活動の しかし,平野は,平地性と利水性が最も高水準で、満たさ 場,洪水地帯がすべて重なるというのは,現象法則であ れ,単独での面積も広く,低地の中に占める割合も高い。 る。河川が山を浸食し堆積地を造る,利水性と平地性のよ それゆえ,絶対数でも人口密度でも,人間が最も多く活動 さが生産活動を可能にするというのは,因果法則である。 している場所である。その上,低地を操作的に「海抜高度 あることがわかったというためには,現象法則と因果法 の低い土地」と定義する(決定H-1-1)とすれば,平野は低 則をともに把握し,相互の変換を行いえなければならな 地であることを最も考えやすい場所となる。 いが,一般に,前者を認識することなしに,後者を認識す 平野は低地の典型例である。平野についての学習がう ることは困難であろう(細谷,1977)。本研究では,前者の まくいけば,上の諸特徴が平野ほどに端的で、なかったり 理解をめざす。 一部欠けていたりする盆地や谷地も,発展例としてとら 授業目標は,法則「人聞は低地で活動する」の獲得とな えることができる。また,全国有数の蜜柑産地である熊本 るが,具体的には次の3点を考慮、した判断がで、きるように 県では,

1

蜜柑山」のイメージにもとづ、き子供たちが「農業 なることとしたい。①人間の活動域は,低地に限られてい は山地で営まれる」と考えていると予想されるが,山地利 る。②人間の活動は,平地性と利水性のよさを不可欠とす 用が例外例であることも正しく認識されよう。 る。③低地の利用は,河川管理が成功して可能になる。 決定卜

2

-

2

.

大きな河川の下流域を取り上げる。

(

2

)テキストの内容 授業目標は,

1

項(1)節の内容を受けて成立しており,そ の達成には同節の内容を取り上げる必要がある。次の5点 が,その内容を現象法則の形にまとめたものである。①人 と産業は,低地に分布する。②低地は,平地性と利水性の よい唯一の場所である。③低地の用途は,競合する。④低 地は,洪水が起こりやすい。⑤水と平地を確保する治水 が,必要である。 (3)事例選択の原則 本節から (5)節においては,テキストの構成原則を述べ る。本節では,事実から事例を選択する原則について述べ る。 原則

J

-

1.日本列島を巨視的にみる。 現行教科書はどれも,特定の一地域(海津町,車力村な ど)を取り上げ,

1

低地のくらし」の中身を事例研究する方 法を取っている。本研究では,特定一地域の事例研究を行 うことはせず,日本列島全体を一纏めにして扱いたい。そ のほうが,一地域の事例研究より,人間の活動域と低地が 重なることの一般性に気づきやすいと思われる。また,列 平地性と利水性の規定因は河川の浸食堆積作用である から,河川流量は,そのまま平地性と利水性の程度の指標 になる。大きな河川は,その下流に大きな平野を造る。そ れと同時に,河川流量は,洪水の起こりやすさ,水害の大 きさ,治水の困難さの指標にもなる。大きな河川の下流域 は,長い間人間の手が入るのを拒み続けてきた。それゆ え,そこは,生産活動と自然環境との力動的な相互規定関 係を検討する絶好の例となる。上流域や小河川流j成での 生産活動は,発展例と位置づけたい。 決定卜2-3.耕地面積,工業生産額,人口の大きな場所を 取り上げる。 実際の生産活動は,大平野から山地にいたるまでの 様々な場所で営まれている。しかし,活動の水準は場所に よって様々であり,その程度は農業,工業,人の集まりの 各規模に端的に示される。農業,工業,人の集まりの規模 の指標には,それぞれ耕地面積,工業生産額,人口の大き さをあげることができる。これらの大きな所は,生産活動 が活発な所であり,実際にそのほとんどすべてが大平野 に位置する。「村おこし」や「一村一品運動」が叫ばれるよ うな所は生産活動が低いことを示しており,取り上げな し、。

(6)

原則卜3.基本例を取り上げる。 典型性だけでは,すべての事実を記述できない。上述の 窓味で典型とし、う言葉を使えば,たとえば「産業の典型 例

J

とし、う表現は,意味をなさない。生産活動は,人聞が自 然に働きかけて必要なものを作り出す活動であるが,現 実の生産は分業化された協働の過程として営まれてお り,どの産業も一定の役割を果たしているからである。し かし同時に,どの産業も同じ役割を果たしているわけで、 はなし、。どのような分業化がなされていても,人間が自然 の資源を利用することは欠かせず,この点,

1

ものを作り 出す」活動と「ものを運ぶ」活動は,明らかに異なる。後者 は,前者の成立を前提にして,成り立つ。 ここで,事実が当該概念の本質を直接的に備えている か否かに着目し,この性質を「基本性」と呼び,この属性の 取る値によって,事実を「基本例J,I展開例」に分類した い。第

l

次産業,第

2

次産業は,自然の資源を利用しでもの を作り出す活動そのものであり,生産活動の「基本例」と なる。第3次産業は,第1次産業,第2次産業の作り出したも のを運ぶ活動であり,自然への働きかけが間接的になる。 第3次産業は,

1

展開例」になる。基本例は,概念の本質を直 接的に備えているので,概念の把槌が容易であろう。 決定卜3-1.第1次産業と第2次産業を取り上げる。 第1次産業と第2次産業は,自然、に対する働きかけが直 接的であり,生産活動が利水性と平地性に規定されてい ることを,第3次産業より,理解しやすいはずである。 決定卜3-2.水の使用量を取り上げる。 生産活動が利水性と平地性のよさを必要としているこ とは,日常生活の中で自成的にわかることではない。平地 性は,子供たちの感覚に腹接訴えることが比較的容易で あろうが,利水性についてそれは困難である。「利水性」概 念が必要なのは,我々が生産や生活で大量の水を使うか らである。水の使用量は,利水性が生産活動を規定してい ることを示すよい指標となる。第1次産業と第2次産業が いかに多くの水を消費するか(全用水量の83%)を,はっ きりさせたい。河川流量も利水性の指標であるが,それ自 体は人聞が水を必要とする側関を明らかにしない。水の 使用量は,この点を直載に示す。 原則卜

4

.

過去の事実との対比を行い,不可能なら現在 の事実を取り上げる。 事実には,過去の事実と現在の事実がある。現在に生き る我々の問題は現在の問題であるが,過去を背負わない 事実は存在しない。現在だけに焦点を当てていては見え ないことが,現在を過去と対比することで見えてくるこ とがある。過去から現在への歴史的変遷の検討は,現在の 事実が抱える問題をはっきりさせる。 I項(1)節からすれば,2種の歴史的変遷が考えられる。 利用可能な土地が小河川流域から大河川流域へと拡大し てきたことと,同一土地の利用内容が変わってきたこと とである。決定卜

2

-

2

により,前者の変遷は取り上げる対 象にならなし、。内容①,②,④については,現在の事実を取 り上げ、たい。しかし,後者の変遷,すなわち利用可能にな って以降,大河川下流域がどう利用されてきたかは,取り 上げることができる。内容③については,産業間,職住聞 の競合とし、う現在の問題を検討するために,平野の用途 が農地から工業用地,宅地,道路などへ変化してきたこと を,取り上げたし、。 以上,事例選択の原則とそれに基づく決定を述べた。こ れ以外に,事実が子供たちの身近な事実か否かに着目し た原則の設定もあろう。テキストは日本列島を巨視的に 扱い(原則

J

-

1),このスケール自体が子供たちに身近で、は ない。この原則に関しては,身近でない事実をたくさん取 り上げることになる。 E項(2),(3)節の決定に従えば,低地と大平野・大河川の 地理的一致,低地と農工業立地・都市立地の地理的一致, 低地における平地性・利水性のよさ,低地の用途の歴史的 変遷,低地と洪水地帯の地理的一致,水害,その対策が,テ キストの具体的な内容となる。 (4 )発問化の原則 本節では,選択した事例を問題に変換する原則につい て述べる。 原則 H-1.単純化する。 法則は,使うことを通してのみ,わかって使いこなせる ようになる。しかし,法則と事実の支配一被支配関係はつ ねに複雑である。この複雑な支配一被支配関係を最初か ら把握し,法則を事実に適用できる人間は存在しないか ら,誰でもが把極できるようにこの関係を単純化しなけ ればならなし、(細谷,1971)。 決定H-1-1.低地を「海抜60m以下の土地」と操作的に定 義する。 当該地点が低地か否かを判定することが,探究の原点 となる。I項(2)節で述べた低地の内包的定義は,子供たち の使える定義ではない。そこで,地図との対応をつけるこ とも考え,操作的定義を子供たちに与えることにする。低 地の操作的定義には,

1

周囲との相対高度が低い土地」と 「海抜高度の低い土地」の2種が考えられる。どちらに従っ ても実際の事例はほぼ共通するが,前者が局所的な低地 判定のみを可能にするのに対し,後者は日本のどの地点 についての判定も一律に可能にする。後者を採用したし、。 その際,低地と高地の分割線を海技60mにおきたし、。平

(7)

野,農地,工業地帯,都市のほとんどが,海抜60m以下に位 置しているからである。 決定H-1-2.60mの等高線が入った白地図を使う。 白地図の利用は,複雑な地形から重要なものだけを取 り出すのに有効である(極地方式研究会, 1985b)。テキス トでは,平野,河川!の下流域,農地,工業地帯,都市,洪水地 帯が海抜60m以下に分布することの確認が求められる。 極地方式研究会(1970)の白地図に手を加え, 60mの等高 線だけが描き込まれている白地図を用意する。 決定H-1-3.数値を上位の桁で概数化する。 テキストでは,農業,工業,人の集まり,利水性の指標と して,それぞれ耕地面積,工業生産額,人口,水の使用量の 大きさを取り上げるので,これらの大きさを数値として 扱う必要が生じる。子供たちにとっての課題は,原数値の 記憶ではなく,原数値の内包する意味の把握である。原数 値の詳細さは,生産活動の場と地形を対応づけることに とって,何の意味も持たない。 決定H-1-4.書き込み作業を単純にする。 後述するように,白地図への書き込みを,発問の多くで 子供たちに課す。書き込み作業の結果できあがる地図は, 各分布の様子が概観できるものであればよい。平野の書 き込みは,低地を緑色で塗り潰し,平野のおよその位置に 名前を書き込ませる。河川は,河川の下流が平野の中に書 き込まれればよい。都市,工業地帯については,人口,工業 生産額の大きさを4種の大きさの・印で記入させる。これ によって作り上げられる分布地図は,作業の単純さにか かわらず,実情を正確に反映するものに仕土がる。なお, 農地と洪水地帯の形状は複雑になるので,作成ずみ分布 地図を与える。 原則H-2.身体活動を伴わせる。 思考が,もともとはその一部でしかなかった身体運動 を代行するようになったものであることを考えれば,大 自然の中での全身的な活動は,あらゆる学習の基礎だと いえる(細谷, 1976;高橋, 1977)。学習結果の在り方を身体 活動の在り方が大きく左右することは,知久馬(1991),知 久馬・康野(1991)でも報告した。低地は平らであること, 低地には河川が貫流していること,工場も田畑も住宅も 道路もみな低地に位置することなどを直接目で確かめさ せることは,地形がし、かに人間の活動を規定しているか を納得させる上で,有効であろう。 しかしこのことをつねに実現できるわけではなし、。そ れでも,単なる文字記号の操作より,身体運動を伴わせる 方が,子供たちの学習を促進するであろう。そこで本研究 では,原則H-3も勘案し,せめて,文字記号を視覚記号に変 える作業を子供たちに課すことにした。その実施案が,平 野,河川,工業生産額,都市の各分布を,白地図に書き込ま せることである。 原則H-3.情報を視覚に訴えやすくする。 文字記号だけでは,情報の内包する意味を汲み取りに くい。子供たちが日常世界で頻繁には活用しない数字の 場合,この危険は大きくなる。この原則の採用は,直観の 援用を可能にし,情報の内包する意味の読み取りを容易 にしよう。各分布の重なりを確認する最良の方法は,各分 布域を異なる白地図に書き込み,重ね合わせることであ ろう。そのためには,決定H-1-2,H-1-4に加え,透明シート に 印 刷 し た 白 地 図 が 必 要 と な る 。 た だ し , 平 野 ・ 河川用の白地図は,通常の紙にする。これは低地を示す 地図であり,

r

人聞は低地で活動する」ことの確認は, これと他の各分布域との重なりを確かめる作業になるか らである。 原則 H-4. 事実を即物的に確かめる。理由は聞かない。 授業目標は,生産活動と地形との相互規定関係の把握 である。産業から洪水にいたるまでの各分布域と低地が 重なる事実を確認し,その重なりがし、つでも成り立つと 考えられるようになることが,大切である。現象上のこ の重なりを産み出す因果を,子供たちに直接間い札す必 要は少しもなし、。確かめた重なりに浸食堆積作用が関係 していることを,さりげなく触れるにとどめたい。 原則 H-5. 問題解決に必要な資料を出レ惜しみしない。 平野と河川の名前,工業生産額,人口,耕地面積,耕 地の他用途への転用面積,水の使用量,洪水地帯は,テ キストの求める問題解決に必要な情報である。しかし これらのほとんどすべてが,子供たちにとって日常生活 の中で接することのない情報で、あろう。従って,問題を 解決するためには,子供たちは,上の情報を何らかの形 で収集しなければならない。これらの情報をすべてテキ ストに用意しておきたい。そうすることで,資料の収集 に起因する思考のいたずらな拡散,時間の浪費,資料収 集に失敗する子供の発生を防ぐことができる。 原則H-6. 問題解決に不必要な情報は与えない。 生産活動と土地利用の関係は,

r

生産活動は低地で営 まれる」と考えるだけでは,とらえきれない。確かに生 産活動の主要な部分は低地で営まれているが,山地で営 まれる生産活動もあり,そこでの活動が低地での活動に とって不可欠の場合さえ少なからずある。木材(燃料, 原料)の生産や林間地での肥料作りなどは,そのよい例 である。生産活動と土地利用の関係がわかったというた めには,生産活動や生産技術の種類,形態,それら相互 の関係などを視野に含めた判断が,将来的にはできなけ ればならないであろう。しかし,これらは,本研究での

(8)

t

受業目標の達成にとって,とりあえずは必要ない情報で ある。法則は複数の事実を支配するが,同時にどのよう な事実もつねに複数の法則に支配されており,設定する 論議領界を閉じ切ってしまうことはまずできない。論議 領界の閉合性は擬似的なのである。それゆえに,領界外 の情報の中に当該する問題と密接に関連するものがし、く らでも存在すると同時に,それらの情報は,問題の想定 された解決にとって必ずしも必要ないのである。原則 卜2とも関連するが,このような論議領界外の情報は, 原則として省きたい。 また,原則

H

-

5

で挙げた情報が問題解決に必要といっ ても,すべての平野,河川,都市,工業生産額と人口の 正確な数値,耕地面積と転用面積の詳しい年次変化,業 種別用水量までは,これまた授業目標の達成にとって必 要ない。原則H-1とも関連するが,いたず、らに正確な4情 報は,思考の焦点をぼやけさせる。列島各地域の代表的 な平野,河川,都市,概数化した工業生産額と人口,数 年間隔の耕地面積と転用面積,産業別総用水量だけに, 提供する情報をそれぞれ限定したい。

(

5

)系列化の原則 本節では,作成した問題を配列する原則について述べ る。 原則K-1.先行する問題群の解答が後続する問題解決 の前提となるようにする。 新たな情報の取り込みは,その情報と子供たちの既有 知識との聞に接点があって可能になる。処理を求められ る情報のほとんどが未知である場合,処理済みの知識化 された情報群を使って次の情報群を処理させることで, 多くの新しい情報が相関連するものとして取り込まれる 問[1J低地を縁色で塗る 間[2J平野は緑色の所にある 問[3J河川は緑色の所にある 河川と平野は同じ所にある 問[4J都市は緑色の所にある 間[5J工業は緑色の所で盛ん 問[6J田畑は緑色の所にある 図1 であろう。この原則は,知久馬・小野寺・岩崎(1989), 知久馬・小野寺 (1989) でも採用された。 原則K-2. 分布域を確かめる問題の配列は,事例枚挙 型とする。 類似した事例について, Aもそうか, Bもそうか・・・と 推理していく型の発問系列を,細谷(1970) に従い「事 例枚挙型」と呼んでおこう。本研究の場合,平野,河川, 都市,農業,工業,洪水の各分布域が低地と重なる事実 を確認することが大切であり,そのためには事例枚挙型 系列が適切と考えられる。

E

項の諸原則に従って,本研究では,テキストを図

l

のように構造化した。

E

テキスト「低地の利用」

[lJ地図lの海岸線から60mまでを緑色でぬろう。 [2J 次の平野を地図帳で調べて,その場所を地図lに 書き込もう。【平野名略。北海道1,東北5,関東1,東海2, 北 陸3,近畿2,中国2,九州 L 計 17平野】/[問題]平野 は,何色の所にあるだろう? [3J次の川を地図帳で調べて,その場所を地図1に書 き込もう。【河川名略。北海道L東 北6,関東3,東海2, 北 陸6,近 畿2,中国2,九州什州歩j1'十付i卜

H

仏 │ 川の下流は,何色の所にあるだろう?

/C

イ)川のない平 野は,あったかな? [4J 次の都市は,人口が25万人以上の都市だ。地図 帳で調べて,その場所を地図2に書き込もう。/人口が 500万人以上の都市は,特別大きな赤丸/人口が100万 人 問[7J 産業が低地で営まれるのは 低地が大量の水と広い平地 を手に入れうる唯一の場所 だから [まとめ3J 競合の理由は、利用可能 な土地が低地に限られる ことにある

(9)

地図1 極地方式研究会 (1970b) から 400m,1200mの等高線 を削除したもの。地図

2

3

は地図

1

と閉じ。 499万人の都市は,大きな赤丸/人口が 50万人 ~99万人 の都市は,中くらいの赤丸/人口が 25万人~49万人の都 市は,小さな赤丸【指定した・印の大きさ,都市名,人 口略。北海道3,東北6,関東21,甲信1,東海10,北陸4, 近 畿 18, 中 国 5, 四 国 4, 九 州 8, 計 80市 】 / [問題](ア)緑色以外の所に位置する都市は,いくつある だ ろ う ?/(イ)人口の多い都市は( )色の所にあ 地図

4

がたくさんあるし,平たし、土地もある。/日本では,工 業も農業も低地(平たくて,水がたくさんある土地)で 主に営なまれている。工業も農業も低地で営なまれてい るから,とうぜん人もたくさん低地で暮らしている。 [7J工業や農業のことを「度業」とし、う。産業が低 地で営なまれるのは,産業のために必要なもので,低地 でしか手に入らないものがあるからだ。高地では手に入 らないが,低地でなら手に入るものは何だろう?【資料. 昭和59年に使われた水の量(円グラフ):農業用水 =585 る! 億t,工業用水 =156億 t,生活用水 =150億t,総量 =891 [5J 次の都市の工業生産額を,地図3に書き込もう。/ 億t】 生産額が40兆円以上の都市は,特別大きな赤丸/生産額 が 10兆円 ~39兆円の都市は,大きな赤丸/生産額が 1 兆 円 ~9兆円の都市は,中くらいの赤丸/生産額が 9000億 円以下の都市は,小さな赤丸【・印の大きさ,都市名, 工業生産額略。北海道4,東北4,関東6,甲信1,東海7, 北 陸 3,近畿 7,中国 4,四国 3,九州 6,計 45市 】 / [問題]工業の盛んなところも,やっぱり( )色の所だ! [6J 田や畑の場所をかし、た地図4を,地図1に重ねて みよう。田や畑が多いところは,( )色の所だろう? [まとめ 1J緑でぬった所は,低い土地(低地)だ。「水 は高きより低きに流れる

J

から,低地には大きな川の下 流がある。だから,低地には水がし、っぱいある。/大き な川の下流には,かならず平野ができる。だから,低地 は平野(平たし、土地)と言ってもよい。/低地には,水 [8J 日本全体の面積は約3,700万haだが,低地の面 積は約480万haしかなし、。 /(1)480万haのうち,田の面 積はどのくらいあるだろう? 資料1で調べよう。/昭 和40年 ( )万ha/昭和55年 ( )万ha/田の面 積は,増えたのだろうか,減ったのだろうか?

/

(

2

)

田の 面積は,昭和40年から昭和55年の聞に,何万ha減った ことになるだろう?

/

(

3

)

昭和40年から昭和55年の聞に工 場や住宅になった耕地は,全部で、何万haになるだろう? 資料2で調べよう。/田でなくなった土地は,何になっ たのだろう?【資料1.田の面積の移り変わり:昭和40 年 =339万ha,昭和45年 =342万ha,昭和50年 =317万ha, 昭和55年 =306万ha;資料2. 工場,住宅,道路などにな った耕地の面積(棒グラフ):昭和40年 =6.9万ha,昭 和 45年 =10.1万 ha,昭和 50年 =8. 9万ha,昭和 55

(10)

22-年=4.5万ha】 人聞は,洪水を防ぐ様々な工夫を,昔から続けてきたの [まとめ幻工場や住宅が増える分だけ,田が減る。 だ。 日本では,農業や工業や生活のために利用で、きる土地が[l

l

J

洪水を防ぐための工夫を,できるだけたくさん 低地だけだからだ。 考えてみよう。 [9J低地には,大きな川があった。大きな川のおか げで,産業や生活を営なむために必要な「たくさんの水J

N

評価基準と研究課題

と「平たい土地」とが,手に入った。でも,大きな川は, 人聞に恩恵ばかりをもたらすのだろうか。/[問題]洪 (1)授業の評価 水が起こりやすいところは,低地だろうか,高地だろう E項(1)節で、述べた3点の判断基準はどれも,日常生活 か?/地図5は,洪水の起こりやすい場所を表わしたも の中で自成的にわかることではない。子供たちは,

I

乾 のだ。地図5を地図1'""4に重ねてみよう。/背低地(緑 いた堅し、」土地で暮らしていると思っているのであり, 色の所)=田や畑のある所=工業の盛んな所=人がたく 自分たちが低地にくらしているとも,産業の場が低地で さん暮らしている所は,洪水が( 。) あるとも思っていないであろう。「蜜柑山」の印象から, 地図5 極地方式研究会 (1970b)による。 [10J人聞が産業を営なんだり,暮らしたりする上で, 洪水はどんな困ったことをもたらすのだろう? [まとめ

3

J

大きな川が上流から土砂をたくさん運ん でくれることで,下流に広い平らな土地(平野)ができ あがった。平らな土地は,大きな川が造ったものだ。/ そして,大きな川は,水もたくさん恵んでくれる。産業 を営なむためには,平野(低地)を利用するしかない。/ しかし,同じ川のせいで,洪水も起こる。低地は,洪水 が起こりやすい。洪水が起これば,産業や生活を営なむ 上で,いろいろ因る。/洪水の起こりやすい低地を安定 的に利用するために,つまり大きな川と共存するために, 農業は山で営むものとさえ考えていよう。自分たちのく らす土地が平らであること,水が豊富であることも,こ とさらには意識していないであろうし,農地から宅地へ の転用は知っていて・も,それが低地しか利用で、きないこ とに起因する産業間・職住聞の競合の現れの一つだと は,考えてもいないであろう。低地は洪水が起こって当 たり前とも思っていないであろうしいまの景観の多く は人聞が作り出したものとも思っていないであろう。 テキストを学ぶことで,子供たちが,身の回りのあり ふれた事実を再検討しそこから新たな問題を発見し, ついでにその解決への展望を持ってくれたなら,と考え る。上に掲げ、た様々なことをはっきり意識してもらいた いが,お題目を唱えるようにそれらを言葉で言えるよう になることを,求めてはいない。必要な条件を考慮した 判断を,できるようになって欲しいのである。授業目標 達成の判定基準は,子供たちの様々な発言が,人間の活 動が利水性と平地性のよさを不可欠としており,河川管 理の成功が必須の低地に活動域が限られていることを, 考えに入れているか否かという点にある。仮にテキスト が妥当であれば,これを考慮した発言が,授業の進行に 伴ってなされるようになるであろう。 治水策を考えさせる問題は, 1I項(2)節内容⑤のための 設問であると同時に,このことをより確実に確かめるこ とのできる評価問題でもありうる。 I項(1)節で、述べたよ うに,日本列島における治水は,水と平地の獲得のため の治水でなければ意味をなさない。河川管理の成功が必 要となる低地しか利用できないこと,平地性や利水性の よさが生産活動にとって不可欠であることをわかってい れば,河川を人間の活動域から隔離するだけの治水策で はなく,狭い低地を効率的に活用し,利用可能な土地を できるだけ良い条件でできるだけ広くする治水策を,考 えようとするであろう。

-

(11)

23-乾いた堅い土地で暮らしていると錯覚できる程度には 治水が有効な「普通」の我々は,治水のための治水とい う観点しか持てず,生産に必要な条件を忘れ,河川の隔 離だけを考えてしまいがちである。結果として,

I

治 水 = 堤防を造る」と単純に考えてしまってもいよう。子供た ちだって,事前には同じであろう。この問題に対して「堤 防を造ればよし、」としか判断できないとすれば,子供た ちは日本の土地利用の在り方を少しも理解しなかった, つまり日常世界から一歩も踏み出すことができなかった と,判断してよし、。 もちろん,

I

正しし、」治水策を子供たちが述べるかど うかを,調べようとしているのではない。河川は個性が 強く,どの河川にも画ーに適用可能な治水策は成立しに くい。現実の河川管理は,河川ごとに成立した経験法則 を核にして体系づけられている(宮村, 1987)。河川の 個性も経験法則も知らない子供たちは当然,河川ごとの 「正しし、」治水策を考え出せるはずはない。しかし治 水策自体が「正ししづものである必要は,ここではまっ たくない。判断の根底に,利用可能な土地が狭い氾濫原 つまり低地に限られるという認識が,あればよいのであ る。テキストで扱われる土地利用に関する様々な情報を 子供たちが体系化された知識として獲得で、きたなら,そ こで、提供される情報がこの問題の解決にとって論理的に 必要十分な前提にはならないとしても,彼らは,利用可 能な土地はどこなのかを念頭に入れた治水策を提案で、き るはずである。このような反応が子供たちによって実際 に示されるか否かに,着目したい。

(

2

)研究の課題 第lの課題は,開発したテキストの妥当性を検討する ことである。第2の課題は,テキストの構成原則,決定 の適否を検討することである。第3の課題は,

I

低地」と し、う言葉を使用したことの適否を検討することである。 これらの検討は,テキストを用いた授業と作文における 子供たちの反応を素材にして行う。

V

実践記録

( 1 )授業記録 熊本市立尾ノ上小学校4年34人を対象に, 1989年1月

3

月に,

1

4

時間の授業を行った。授業者は学級担任であ る。 Tは授業者, Cは子供, CCは複数の子供である。 <第1"'2時 > [lJ [2J C:平野つてなん? T:海岸線から 60mまでの所で,平らな所のこと。 [問題

J

CC: (すんなり)緑色。 <第

3

時 > [3J(書き込んでいる時点では,

J

I

!

と緑色の対応は付い ていない様子だった。) [問題

J

CC: (すんなり)緑色。 CC:ない。 <第

4

"

'

8

時 > [4J (書き込み作業に4時間もかかった。子供の地図帳4) では地方図で調べなければならず,地方図と地図2との 対応が困難だった。経線,韓線で作り出される枠は,大 まかすぎて地点特定の手がかりにはならなかった。多く の子供が, 60m以上に印をたくさんつけている。子供が 2名,途中で書き込み作業に飽きた。) [問題(ア)

J

(7"'8個・・・ 3名。 4個...1名。 5個...1名。数 えきれない・..多数。) T:正解は7個だよ。 CC:えーっ!

C:

おれ,まちがえとった。 [問題(イ)

J

CC: (すんなり)禄色。 C:関東平野の所だ。 C:東京だ。 <第

9

"

'

1

1

時 > [5J(この作業も3時間かかった。今度はうまく対応さ せており,間違えていても, 1~2箇所ほどだった。)

T:

島を手がかりにして,気をつけて塗りなさい。 C:あったばい。 C:ゲーッ,熊本少ねえー!

T:

(書き込み作業中)工業の盛んな都市はどこにある と思う? C:おれは,平野にあると思うな。 C:関東平野に多し、ょ。 C:東京って,特別大きいやつでしょ? C:もろくそでかい,東京。 C:社会,簡単。面白いたい。 [問題

J

C :海の傍に集まっている。

C:

緑の所。 C:先生,北海道って,町の所は小さいとに,なんでこ んなに広いと? 東京とか,こんなに狭いのに? <第12時 > [6J C:先生,これ,平野のとこ,黒くなっとる。 4) 帝国書院刊「小学校社会科地図帳三訂版」

-

(12)

24-T:地図4の黒い所は,田や畑の多い所です。何色の所 と重なってる?

C

C

:

緑。平野。

T:

田や畑の多い所は,緑色,つまり平野なんですね。

C

C

:

先生,なんか,みんな緑色みたい。 T:Y君やK君がし、L、こと言ってた。みーんな縁色じゃ ないか,平野じゃないかつて言ってたけど,プリン トの[まとめ1J 見て。 C:山んとこ,住めんもん(聞き取れない)。

T:

そうだね,山は不便だもんね。低地の方がし九、もん ね。じゃあ,なんで,低地で農業も工業も盛んなの か。

C:

農業は,山の方が盛んなんじゃない? C:蜜柑とか。 C:高し、から,運ぶのが不便。(低地派)

C:

だけん,クボタ・トラクターで行かなん。 C:けど,蜜柑山とかあるたい。 C: 日当たりがし、し、でしょ。 C:あっ,わかった。水が流れて来るけんたい。(低地 派) [7J

C

C

:

わからーん。 T:答えは, [まとめ 1J に書かれています。 C:水だ。 CC:ああ,わかんない 。

T:

わかんない人。低地っていうのは,どんな土地だっ た ? [まとめ1J に書いてあるよ。 C:水だと思います。 C:平たし、土地だと思います。

T:

書いてあっど, [まとめ1J に。低地はどんな所かと し、うと,平たくて,水もたくさんある土地だ。どう してかというと,高い所から低い所に流れている。 だから,低い所には,水がたくさんあるわけです。 C:だから,農業が盛んなんです。 T:円グラフ見てごらん。これは, 1984年に必要だった 水の量です。産業にも生活にも両方必要です。 1984 年に使われている水の量は, 891億

t

。うちのプール でし、くと, 1億8295万倍もある。 C:なーに,それ。 C:うっそー! C:すご い。

T:

そのうち,農業に使われた水の量は585億

t

。 C: じゃあ,もうほとんどが農業に使われてる。

T:

そうだね。ほとんどまず,農業に使われてる。つぎ, 工業に使われてる水, 156億t。プールの3200万倍。 C:あと残りが,生活。

C

C

:

飲み物。 トイレ。 T:生活に必要な水は,プールでいくと3100万倍。工業 と農業を併せると,グラフの半分以上いくでしょ? そんなに,工業と農業でいるわけよ。水は,工業と 農業を行う上で絶対に必要なものだから,低地に工 業と農業が盛んに行われているわけ。 CC: .b.~ ん。(他の子供も,わかったという顔をしてい る)

T:

人聞は工業や農業が盛んな所へ住んで,だから,み んなが描いた地図は,きれし、に平野の緑の部分で重 なっているわけ。 CC:わかった,わかった。(各種書き込み作業がお互い に繋ったとし、う雰囲気。) <第13時 > [8J (1)

C

:減ってきているね!

T:

そうね。 (2) (計算させた。) (3) C :書いてあるよ。 CC:工場用地。住宅用地。

T:

道路とかもあるよ。 [まとめ

2

J

C:尾ノ上も,昔は田圃だったの?

T:

そうね。尾ノ上も低地だもんね。 T: (地図1を見せて)緑の部分,多いね,少ないね?

C:

少ない。 C: じゃあ,山を切り開けばし、し、。 C:水が足りんけん,いかん。 C:農業って,食べ物や野菜を作るんでしょ? じゃあ, 田闘をつぶして工業ばっかりすると,食べ物がたり なくなるよ。

T:

同じ低地で,工業と農業とどっちがお金儲けになる と思う?

C

C

:

工業。

T:

だから,田闘をつぶして,工場ばかりになってる。 この前,蜜柑畑が山の中にあるって言ってたけど, それは,低地では田圃がつぶされるから,山を利用 して,水がそんなにいらない蜜柑を作っているんだ

ト 民

CC:

ふ ん。(この後 [7Jの復習をした。) [9J C:洪水。 C:でも,堤防が作ってる。

T:

洪水の起こりやすいところは,低地だろうか,高地

(13)

だろうか?

C

C

:

低地。(多数派)

C

j :高地。高地は,ダムが山の方にあって,ダムの水 が溢れるから,ひどい洪水になる。

C

z :ダムの水が溢れても,低い方に水が集まるから, 低地に流れ込むんじゃないと?

C:

低地には大きな川があるから,洪水が起こりやすい。

C

j :低地に人が住むのは,便利だと人が知っているか ら,洪水が少ないと知っているから,住んでいる。

C

C

:

・・. Cz :わからんことなった。 T: (地図5 を地図 1~4 と重ねさせる。)

C

C

:

(低地と)重なる,重なる。

T:

低地には,大きな川があるから,たくさんの水がし、 る工業や農業が盛んになる。工業や農業が盛んにな るから,人がたくさん住む。だけども,し、し、ことば かりじゃなくて,氾濫することもある。人々は,住 むために知恵を働かせる。 C:堤防を造る。

T:

堤防を造って,洪水を防いで住んでいる。だけど, まだ,洪水で悩んでいる地域もあるよ。 (授業後に, Czが「大きな川があるけど,確かに低地 には人が住んでいるから,わかんなくなった」と言いに きた。) <第14時 >

O

J

(子供たちの意見) 土地が流される。地球が削り取られる。山が崩れる。作 物が育たない。作物が流れて,生活に困る。道路が汚れ る。プールが汚れる。ゴミが流される。ガソリンが流れ て来る。ダムに汚い水が溜まる。家が流される。家の中 が水浸しになる。家が腐れる。家が壊れて,後で家を建 てるのにお金がたくさんかかる。お金が流れて行く。電 信柱が倒れて,停電になる。水道が壊れる。橋が壊れる。 道が崩れる。工場が壊れる。機械が錆びる。学校が潰れ て,学校に行けない。外で遊べなくなる。散髪墜に行け ない。家に帰れない。おかあちゃんに会えない。買い物 ができない。車が通れなし、。ペリカン使やクロネコヤマ トが配達できない。父さんたちが仕事ができない。洗濯 物が干せない。テレビが見れなくなる。今まで計画して いた仕事がで、きなくなる。洪水で死ぬ人が多くなる。生 き物が死ぬ。高い所に行かないといけなし、。洪水は火事 を消す。水遊びができる。 [まとめ

3

J

C:ちょっと待って。川は C:だってねえ,あすこの運動場にもなんかねえ,水が - 26 流れてきて,小さいのがある。

T:

そこの左側のでしょ? あれが実は運動場とかホー スだけの話じゃなくて,日本全体がね,広い土地も 全部,洪水で、流された土砂が溜まって低地になった わけ。で,大きな川は水もたくさん恵んでくれるけ ど,洪水っていって,こんな問題も起こるわけ。

C:

なるほどなあ。 [l1

J

C :

)11を広くする。そうすりや広がって

C:

川の底を深くする。

C

C

:

堤防を造る。 C:水を他の場所に行かせる。

T:

水を運び出して?

C :

)

1

1

を二つに分ける。

T:

川がくやねぐね回っているのと,真っ直ぐなのと,どっ ちが洪水になりやすい? C:真っ直ぐ。

C

C

:

ぐねぐね。 T:ぐねぐねした方がなりやすいから,川を?

C

C

:

真っ直ぐにする。

C:

要するに,そのね,あれば,少し穴を掘ってさ

C:

l

I

I

を真っ直ぐにするってね,)11幅を広くするのとー 緒じゃない?

T:

ほんと?

C:

くやねぐねしてるのを広くすると,真っ直ぐになる。

T:

ああ,ぐねぐねを広くすると,真っ直ぐになって行 くか。 C:けど,そこに家があったら,できんばい。 C:川幅を広くするのに反対。川幅を広くするとし、し、け ど,土地が狭くなるから,川底を,両方した方がし、 し、。 C:それに,あれさ。 C:深くした方がし、い。 C:他の所が多くなる。 T:他の所? C:何で川の底を深くするんですか? C:JIIの底を深くする機械があるから。 C:ここの健軍川もしてんだ。 C:ほんとねえ。 T:はい, じゃあ, 28ページ開けてごらん。教科書。堤 防を強くしています。昔からこんな風に対策が,今 はブロックになっているけど,背はこうし、う風に木 切れで堤防を強くしていたわけで、す。それから,)11 の流れを弱めるために,堰き止めるやつも置きまし た。さらには,)11の流れを変えています。くやねぐね

(14)

曲がっているのをなるべく真っ直ぐにしています。 S-11.

i

洪水は高地で起こる」という意見にも理がある・ CC:先生。嘘書いてある。 5人。 C:先生,木だったら,あれ,腐れるんじゃない? S-12. 低地の利用にはし、し、ところと悪いところがある-T:それだから,だんだん開発して,コンクリートに 26人。

(

e

g

)

平野は,はしつこ。人工も平野にかた なってきたわけ。昔からそうしづ風に頑張ってきた まっていてそこに川があり,工業や農業がさかん わけです。 でもJlIvま,洪水,命をおとすとゅうことを,低地 を勉強してわかったです。なんとなく,うれしい

(

2

)作文 授業後の作文を,内容ごとに分類しその内容を書い た人数を述べる。内容が推測しにくいと思われる項目に は,例文も一つ掲載する。例文は,誤字脱字も含めて, 子供の書いた原文どおりに記載する。 S-1.平野が低地であることがわかった :6人。 S-2.平野,川,人,工業,農業,洪水がみな低地に分 布することがわかった:18人。 S-3.農業は山でさかんと思っていた:1人。 S-4.河川の浸食堆積作用がわかった:12人。

(

e

g

)

大 雨がふって山が水をすいすぎて,それから山が だんだん雨といっしょに流れていって,それが かたまったのが低地だそうです。だから,たっ くさんの雨がふって,たっくさんの山がくずれ たんだと,おもいました。 S-5.低地は利水性と平地性がよく,それが人間の活動 に欠かせない

:

8

人。

(

e

g

)

そして,やっと平野が どういうところかよく分かりましだ。平野は,平 らな土地で大きな川があるから,水にこまらない というりゅうで,平野がベんりなことが分かりま した。だから,人がくらすのにこまらない所です。 S-6.低地は利水性がよく,それが人間の活動に欠かせ ない:6人。 S-7.水の使用量の多さに驚いた

:8

人。

(

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g

)

だって, こんなに水がつかわれているとは,思わなかっ たからだ。なんと日本全体で, 891億

t

これは,学 校のプールの1億8295万倍もある。水の使用量は のうぎょうが一番多い。のうぎょうがなんで, 水をつかうことが多いんだろう。私は,このこ とをはじめてきいた。 S-8.低地は平地性がよい:1人。 S-9.低地がせまいのにおどろいた

:

1

1

人。 S-10.田が減り,工場,住宅,道路が増えている:12 人。

(

e

g

)

田の面積は年々減ってきている。で,宅 地や工場の場所を増やしているんだなと思った。 日本では利用できる土地は,低地しかなし、からだ。 ということは,前は「田」に力を入れていたが, 今は「工業」に力をいれているのかなと思った。 のか, うれしくないのががったいしています。 S-13.低地利用の人為性に触れた者 :7人。

(

e

g

)¥,、ろ んなことを人聞が, じっけんして,ていぼうや, いろいろなどうぐを生み出したのだ。このことが なければ,し人も多かったし家もなくなり,平 野もしずんでいたことだろう。このことは,すご い,考えだなーと思ったぐらいすごかった。 S-14.低地の狭さを考慮した洪水対策

:

3

人。

(

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g

)

で も,川を大きくすると土地がなくなってしまう。 S-15.低地を広くする必要がある

:

3

人。

(

e

g

)

平野と 山のちがし、はだんだんひらいていく,だから,山 がみんなきらいになるかもしれない。だから,て いちにすむ人が多くなる。ひとはだんだんふえて いるから,低地をふやさなきゃいけない。いずれ 海や山はなくなるかもしれない。 S -16.書き込み作業は大変だったけど,おもしろく なった:

2

人。 S-17.書き込み作業は大変だった:1人。 S-18.書き込み作業を行わせたことの効果がはっきり 認められる作文:12人。 (eg)JIIの名前ゃいちをか くときに,平野とぜんぜんかんけいないと思った。 でも,かし、ていくうちに,なにかかんけいあるか もしれないと思いはじめた。 S-19.事例枚挙型系列の効果が認められる作文:13人。

(

e

g

)

ぼくは,最初は,日本のことをすこししか しらなかった。(中略)平野とゅうのは低地とゅう こともわかった。(中略)川の下流のところはみど りいろのところだ。川のない平野はなかった。(中 略)人口の多い都市はみどり色のところにあると わかった。(中略)工業をしらべても,やっぱりみ どりいろのところだった。田や畑が多いところは, みどり色の所だった。 S-20.情報を視覚に訴えやすくした効果が認められる 作文

:

7

人。(eg)それに人口が,いちばんあつまって いるのは,かんとうへいやとはじめてしりました。 それに,シートをみて, ¥,、ちばんへいやが大きいの は,かんとうへいやとはじめてしりました。

(15)

百 考 察

(

1

)テキストの妥当性 この課題についての結論は,テキストはまるっきりの 失敗作ではないが,改善されるべき欠陥も多くあるとい うものである。最初に,まるっきりの失敗作ではなかっ た点について述べる。テキストが妥当であれば,人間の 活動は利水性と平地性のよさを不可欠としており,河川 管理の成功を必要とする低地に活動域が限られることを 考慮した発言が,子供たちによってなされるはずである。 このような発言が多く,実践記録の中に見い出される。 まず,間口1Jで提案されている治水策の内容である。 子供たちは問 [9Jの時点では, Iでも,堤防が造ってる」 とし、う発言に象徴される呑気な考えを持ってしる。とこ ろが,洪水の起こりやすい場所(問 [9J),洪水の害(問 [10J),浸食堆積作用を含めた河川!と低地のかかわり ([まとめ3J)を知った後の問ζ11Jでは,彼らは,利 用可能な土地が狭い低地しかないことを考麗した治水策 を提案できるようになっている。

1

m

幅を広くするのに 反対。川幅を広くするとし、し、けど,土地が狭くなるから, 川底を,両方した方がし、ぃj,

I

深くした方がし、ぃj,

I

他 の所が多くなる」という一連の意見が,それである。こ の一連の意見は,その理由がI項(1)節で述べた筆者の考 えと全く同じである。もちろん,この意見が出せたから といって,子供たちが,テキストを構成した際の筆者と 同等の学力水準5)に達している保証はない。しかし このような意見が出せ,それが明確で適切な理由に裏打 ちされていることは確かな事実である。そして作文でも, これと等質の意見 (S-14,15)があることは,この事実 が単なる偶然の産物ではないことを示している。 問 [9Jに,それまでの学習を受けて「低地には大き な川があるから,洪水が起こりやすし、」と考えている子 供たちが,

I

低地に人が住むのは,便利だと人が知って いるから,洪水が少ないと知っているから,住んでいる」 というほかの子供の反対意見に接し,

I

わからんこと なったj,

I

大きな川があるけど,確かに低地には人が住 んでいるから,わかんなくなった」とその反対意見の一 面の正当性を認めるにいたり,しかし事実は「低地と重 なる,重なる」とやっぱり低地で洪水が多いことを確認 している部分がある。この反応を示した子供が1人で、な いことは作文S-11が示しているが,この思考の流れは, 自然と人為との微妙な平衡の上に成り立つ人間の活動の 本質を突いており,単に「人聞は低地で活動している」 ことを鵜呑みにしている場合と比べて,格段に優れた認 識の水準にこれらの子供たちが到達しかかっていること を示している。作文S-12,13で,このことがよりはっき り認められる。この思考の流れの存在が,間[l1

J

での 望ましい発言を産み出すーっの要因になっていると考え られる。上述の意見・理由が出せているとし、う事実は, 子供たちの少なくとも一部がテキストの提供する一群の 情報を体系的に内蔵で、きたことの証拠と,見倣してよい であろう。 より多くの子供たちが,総合的判断はともかく,少な くとも「低地しか利用できなし、j,

I

人間の活動に利水性 のよさは不可欠j,

I

低地の利用に河川管理の成功は不可 欠」と考えるようになっていることは,次θ反応から確 実である。[まとめ

2

J

において,

I

山を切り開けば,土 地が増える」とし、う意見に対して,ほかの子供から「水 が足りんけん,し、かん

J

と的確な反論がなされ,間

[

7

J

において,授業者の「低地には水がたくさんある」とい う説明を受けて,

I

だから,農業が盛んなんです」と適 切な反応が子供からなされている。間 [6Jでは,身の 回りのことについての問題提起

(

1

農業は,山の方が盛 んなんじゃない?j,

I

けど,蜜柑山とかあるたし、 J)が 子供たちからなされているが,農業が営まれているのは 低地か山地かとし、う論争において,低地派の子供の理由 づけは,

I

あっ,わかった。水が流れて来るけんたい」 と的確である。 そして,軌をーにして作文でも,全体の1/3前後の子 供が,人間の活動は水を大量に必要とすること

(

S

-

7

)

, 利水性や平地性がよいので低地は人聞が活動しやすいこ と(S-5,6, 8)を述べ,同じく1/3前後の子供が,低地 の狭さ (S-9)と,農工住聞の競合の事実 (S-10)に触 れている。また,低地に長短所の両方があることを認め ている子供は, 8割近くに達し (S-12),低地が人間の活 動域であること (S-2),人間の働きかけが低地の利用を 可能にしたこと (S-13)に触れた子供も,それぞれ5割 から2割存在する。 問[l1

J

の理由づけをふくむ授業での発言が,日常経 験や教科書情報の再生でも,テキストや授業者の与えた 命題の再生でもないことは,はっきりじている。低地に 川がある,低地に水がある,農業や工業は低地で盛んで あることは,命題として直接テキストや授業者によって 与えられている。しかし,上の発言は,これらの命題と, これら相互の関係の把握と,それに基づく推理を必要と 5) 筆者の学力水準が申し分ないとしづ意味ではない。 長い教育研究運動の成果である経験法則「教師の学 習する内容,学習形態が同時に子どもの学習内容, 学習形態である

J

(極地方式研究会, 1985b, p.19) に留意して欲しし、。

参照

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