役会決議によるほか株主総会決議によっても代表取
締役を定めることができる旨の定款の定めは有効で
あるとされた事例
著者
岩城 円花
雑誌名
東北ローレビュー
巻
7
ページ
239-259
発行年
2020-03-31
URL
http://hdl.handle.net/10097/00128861
取 締 役 会 設 置会 社 で ある 非 公 開 会 社に お け る,取 締 役 会 決 議に よ るほ か 株 主 総 会決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め は 有 効 で あ る と さ れ た 事 例 最 決 平 成 29 年 2 月 21 日 民 集 71 巻 2 号 195 頁 東 北 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 博 士 課 程 前 期
岩 城 円花
Ⅰ 事 案 の 概 要 Ⅱ 決 定 要 旨 Ⅲ 研 究 一 本 決 定 の 意 義 二 過 去 の 裁 判 例 三 条 文 と 学 説 の 動 向 ⒈ 旧 商 法 下 に お け る 議 論 ⒉ 現 行 会 社 法 下 に お け る 議 論 四 決 定 要 旨 の 評 価 ⒈ 決 定 要 旨 ① に つ い て ⒉ 決 定 要 旨 ②― 1に つ い て ⒊ 決 定 要 旨 ②― 2に つ い て 五 本 決 定 の 射 程 ⒈ 他 の 取 締 役 会 設 置 会 社 に も 当 て は ま る か ⒉ 代 表 取 締 役 の「 解 職 」に も 当 て は ま る か ⒊ 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め は 認 め ら れ る かⅠ 事案の概要
本 件 の 事 実 関 係 は , 原 審 ま で の 認 定 か ら 明 ら か で な い こ と が 多 い た め 詳 細 に 紹 介 す る ( 図 1 に 時 系 列 に 沿 っ て ま と め た )。 Y1 株 式 会 社( 以 下「 Y1 社 」)は ,発 行 済 株 式 総 数 6 万 株 の 非 公 開 会 社 か つ 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 。 平 成 13 年 11 月 29 日 ,A 株 式 会 社( 以 下「 A 社 」)は ,Y1 社 の 株 式 6 万 株 を 譲 り 受 け , 平 成 17 年 3 月 31 日 , Y1 社 か ら 1000 株 券 60 枚 ( 以 下 「 平 成 17 年 株 券 」)の 発 行 を 受 け た 。以 降 A 社 は ,Y1 社 の 100% 株 主 で あ る 。ま た ,平 成 17 年 当 時 , Y2 は , A 社 の 代 表 取 締 役 で あ っ た1。 1 Y2 が A 社 の 取 締 役 及 び 代 表 取 締 役 を い つ ま で に 退 任 し た か は 認 定 さ れ て い な い も平 成 17 年 , X は , Y1 社 の 取 締 役 に 選 任 さ れ た2。 平 成 20 年 12 月 1 日 ,Y1 社 は ,臨 時 株 主 総 会 で 定 款 変 更 を 決 議 し た3( 以 下「 平 成 20 年 認 証 定 款 」)。平 成 20 年 認 証 定 款 に は ,株 主 総 会 決 議 に よ っ て 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 め ( 以 下 「 本 件 選 定 規 定 」) が あ っ た4。 平 成 21 年 1 月 20 日 , X は , Y1 社 の 代 表 取 締 役 に 選 定 さ れ た 。 平 成 25 年 11 月 17 日 , Y1 社 は , 平 成 20 年 認 証 定 款 と は 別 の 新 た な 定 款 を 作 成 し た と 認 定 さ れ て い る( 以 下「 平 成 25 年 認 証 定 款 」)5。平 成 25 年 認 証 定 款 に , 本 件 選 定 規 定 は な か っ た 。し か し な が ら ,平 成 25 年 認 証 定 款 は ,作 成 時 に 株 主 総 会 特 別 決 議 が な い 等 の 理 由 か ら , 無 効 な も の で あ っ た 。 平 成 26 年 8 月 8 日 , Y2 は , Y1 社 の 取 締 役 兼 代 表 取 締 役 に 選 任 さ れ た6。 平 成 26 年 9 月 18 日 , Y1 社 は , B 株 式 会 社 ( 以 下 「 B 社 」) か ら 2000 万 円 を 借 り 入 れ た ( 以 下 「 平 成 26 年 債 務 」)。 平 成 26 年 10 月 17 日 , Y1 社 は , 平 成 26 年 債 務 の 担 保 の た め Y1 社 の 株 式 6 万 株 に 質 権 を 設 定 し た 。 そ の 上 で , Y1 社 は , B 社 に 対 し 1000 株 券 60 枚( 以 下「 平 成 26 年 株 券 」)を 交 付 し た 。し か し ,前 述 の 通 り , Y1 社 の 株 主 は A 社 で あ り こ れ ら の 株 式 発 行 は 無 効 な も の と 認 定 さ れ て い る7。 ま た , Y1 社 は , 平 成 27 年 3 月 19 日 ま で に B 社 に 対 し 平 成 26 年 債 務 を の の , 少 な く と も 現 在 は 取 締 役 で は な い こ と が 認 定 さ れ て い る 。 2 日 付 は 認 定 さ れ て お ら ず , 不 明 で あ る 。 3 株 主 総 会 決 議 が あ っ た か 否 か は 認 定 さ れ て お ら ず , 不 明 で あ る 。 ま た , 同 時 に 取 締 役 会 も 開 催 さ れ て い る よ う で あ る 。 4 な お , Y1 社 ら は , Y1 社 の 設 立 か ら 平 成 20 年 認 証 定 款 ま で の 連 続 性 を 訴 訟 上 明 ら か に し て い な い こ と か ら , 原 始 定 款 は 社 内 で 紛 失 し た 可 能 性 が あ る と い う 見 解 が あ る ( 松 井 智 予 「 本 件 判 批 」 論 究 ジ ュ リ ス ト 23 号 ( 2017) 158 頁 参 照 )。 5 平 成 25 年 認 証 定 款 が 作 成 さ れ た 理 由 に お い て , X は , 平 成 25 年 10 月 30 日 に Y1 社 が 訴 外 信 用 金 庫 か ら 融 資 を 受 け る 際 に 定 款 の 提 出 を 求 め ら れ た た め だ と 主 張 す る が , 認 定 さ れ て い な い 。 6 Y2 の 取 締 役 選 任 時 期 が 同 日 か 否 か は , 原 審 文 言 上 明 ら か で な い 。 7 平 成 26 年 株 券 は , 平 成 17 年 株 券 の 株 券 執 行 手 続 き が 取 ら れ た 事 実 が な い こ と や , 平 成 26 年 株 券 に つ い て 株 券 執 行 手 続 き が 取 ら れ た 事 実 が な い こ と 等 の 理 由 か ら 無 効 で あ る と 認 定 さ れ て い る 。 平 成 26 年 株 券 が 発 行 さ れ た 理 由 と し て , Y1 社 ら は , Y1 社 と 訴 外 人 物 と の 間 の 訴 訟 の 和 解 金 の 担 保 と し て , 訴 外 人 物 が 平 成 17 年 株 券 を 譲 渡 担 保 に 設 定 す る こ と が 決 定 し て い た た め で あ る 旨 を 主 張 す る も の の , 認 定 さ れ て い な い 。 た だ し , Y1 社 と 訴 外 人 物 と の 訴 訟 上 の 和 解 ( 平 成 26 年 10 月 10 日 ), Y1 社 取 締 役 会 で の 譲 渡 担 保 の 承 認 ( 同 月 27 日 ), 訴 外 人 物 が Y1 社 か ら 平 成 17 年 株 券 の 交 付 を 受 け た こ と ( 同 月 30 日 ), 及 び 和 解 金 の 返 済 を 受 け 平 成 27 年 10
全 額 弁 済 し た に も か か わ ら ず ,B 社 は ,そ の 後 も 平 成 26 年 発 行 株 券 を 返 却 し な か っ た 。 平 成 27 年 1 月 14 日 , Y2 は , Y1 社 の 取 締 役 兼 代 表 取 締 役 を 辞 任 し た8。 平 成 27 年 4 月 10 日 , Y1 社 は , C 有 限 会 社 ( 以 下 「 C 社 」) か ら 3000 万 円 の 貸 付 け を 受 け た ( 以 下 「 平 成 27 年 債 務 」)。 し か し な が ら , Y1 社 が 期 限 ま で に 返 済 で き な か っ た こ と か ら , 同 年 7 月 9 日 , C 社 は , Y1 社 が 100 万 円 を 返 済 す る こ と で 平 成 27 年 債 務 の 返 済 期 限 を 同 年 8 月 9 日 ま で 猶 予 す る こ と に し た 。 そ の 際 , Y1 社 は , C 社 に 対 し , 同 年 7 月 10 日 を 振 出 日 と す る 額 面 3000 万 円 の 約 束 手 形 を 交 付 し た 。 平 成 27 年 8 月 12 日 , Y1 社 は , B 社 と の 間 で , Y1 社 が 平 成 27 年 債 務 の 「 権 譲 譲 渡 等 」9を 異 議 な く 承 諾 し , そ の 債 務 の 担 保 と し て 質 権 に 設 定 さ れ た Y1 社 の 全 株 式 6 万 株 を ,B 社 が 取 得 す る 旨 の 合 意 書 を 作 成 し た 。Y1 社 は ,同 日 ,B 社 に 対 し 株 式 譲 渡 を 承 認 し た 旨 の 書 面 を 交 付 し , B 社 が Y1 社 の 株 式 6 万 株 の 株 主 で あ る 旨 の 記 載 さ れ た 株 主 名 簿 を 作 成 し た10。 同 日 , B 社 は , Y1 社 か ら , B 社 の 保 有 し て い た 平 成 26 年 株 券 を 簡 易 の 引 渡 し の 方 法 に よ っ て 引 渡 し を 受 け た 。 平 成 27 年 8 月 17 日 ,Y1 社 は ,臨 時 株 主 総 会( 以 下「 8/17 臨 時 株 主 総 会 」)を 開 催 し た 。8/17 臨 時 株 主 総 会 に お け る 招 集 者 と 出 席 者 は ,認 定 さ れ て お ら ず 不 明 で あ る 。 8/17 臨 時 株 主 総 会 で は , B 社 の 代 表 取 締 役 で あ る D 及 び 同 社 の 関 係 者 で あ る E を Y1 社 の 取 締 役 に 選 任 す る 旨 を 決 議 し た 。 そ の 上 , 同 日 , 取 締 役 会 を 開 催 し ,「 同 人 」11を Y1 社 の 代 表 取 締 役 に 選 任 す る 旨 を 決 議 し た 。 同 月 20 日 , そ の 旨 の 登 記 が さ れ た 。 月 26 日 ま で に 平 成 17 年 株 券 が Y1 社 に 返 却 さ れ た 旨 は , 認 定 さ れ て い る 。 8取 締 役 兼 代 表 取 締 役 を 辞 任 し , 平 取 締 役 と な っ た の か , 取 締 役 を も 辞 任 し た の か は , 原 審 文 言 上 明 ら か で な い 。 9 原 審 文 言 そ の ま ま 。 こ れ は , B 社 が C 社 か ら 平 成 27 年 債 務 を 譲 り 受 け た 旨 を 意 味 す る と 思 わ れ る ( X は , 平 成 27 年 8 月 12 日 に B 社 が C 社 の 平 成 27 年 債 務 に 対 す る 債 権 を 譲 り 受 け た 旨 を 主 張 す る )。 た だ し 原 審 は , B 社 が C 社 か ら 平 成 27 年 債 務 を 譲 り 受 け た 事 実 を 認 定 し て い な い 。 ま た , C 社 又 は B 社 に よ り 平 成 27 年 債 務 が 完 済 さ れ た か 否 か は , 合 意 書 作 成 以 前 も 合 意 書 作 成 以 降 も 認 定 さ れ て お ら ず 不 明 で あ る 。 10 平 成 26 年 株 券 が 有 効 で あ る か の よ う に 見 え る が , 依 然 と し て A 社 が Y1 社 の 100% 株 主 で あ る 。 11 「 同 人 」 が D 又 は E も し く は そ の 両 方 を 指 す か ど う か は , 原 審 文 言 上 明 ら か で な い 。
一 方 , 平 成 27 年 8 月 30 日 , Y1 社 は , 臨 時 株 主 総 会 ( 以 下 「 8/30 臨 時 株 主 総 会 」)を 開 催 し た 。8/30 臨 時 株 主 総 会 に は ,A 社 ,Y2,Y1 社 取 締 役 F,監 査 役 G が 出 席 し た が , 招 集 者 は 認 定 さ れ て お ら ず 不 明 で あ る 。 8/30 臨 時 株 主 総 会 で は , 平 成 20 年 認 証 定 款 を 変 更 し 新 た な 定 款 を 定 め た ( 以 下 「 平 成 27 年 変 更 定 款 」)。 平 成 27 年 変 更 定 款 に は , 本 件 選 定 規 定 が 定 め ら れ た12。 ま た , 8/30 臨 時 株 主 総 会 で は ,Y2 を 取 締 役 及 び 代 表 取 締 役 と す る 旨 も 決 議 し ,同 日 そ の 旨 の 登 記 が さ れ た 。 平 成 27 年 9 月 30 日 ,Y1 社 は ,定 時 株 主 総 会( 以 下「 9/30 定 時 株 主 総 会 」)を 開 催 し た 。 9/30 定 時 株 主 総 会 に は , A 社 , Y2, F, G が 出 席 し た が13, 招 集 者 は 認 定 さ れ て お ら ず 不 明 で あ る 。 9/30 定 時 株 主 総 会 で は , 同 日 時 点 の Y1 社 の 取 締 役 全 員 が 同 総 会 の 終 結 を も っ て 任 期 満 了 退 任 し た た め ,X,Y2,F を 取 締 役 に 選 任 し た 。そ の 上 で ,Y2 を 代 表 取 締 役 に 選 定 す る 旨 を 決 議 し ,同 年 10 月 15 日 ,そ の 旨 の 登 記 が さ れ た 。 平 成 27 年 10 月 24 日 ,Y1 社 は ,臨 時 株 主 総 会( 以 下「 10/24 臨 時 株 主 総 会 」) を 開 催 し た 。 10/24 臨 時 株 主 総 会 に お け る 招 集 者 と 出 席 者 は , 認 定 さ れ て お ら ず 不 明 で あ る 。10/24 臨 時 株 主 総 会 に お い て ,X は ,取 締 役 を 解 任 さ れ ,同 月 26 日 , そ の 旨 の 登 記 が さ れ た 。 X は ,Y1 社 及 び Y2 に 対 し ,Y2 の 取 締 役 兼 代 表 取 締 役 の 職 務 執 行 停 止 及 び 職 務 代 行 者 選 任 の 仮 処 分 命 令 の 申 立 て を し た14。 第 一 審 及 び 原 審 で は , 8/30 臨 時 株 主 総 会 及 び 9/30 定 時 株 主 総 会 ( 以 下 「 本 件 各 株 主 総 会 」)時 点 で の 株 主 が A 社 で あ る か B 社 で あ る か に つ い て も 争 点 と さ れ , 本 件 各 株 主 総 会 時 点 の 株 主 は A 社 で あ る と 認 定 さ れ た 。ま た ,最 高 裁 で 争 点 と な っ た 本 件 選 定 規 定 の 効 力 は , 原 審 よ り 争 点 と な っ て い る 。 12 X の 主 張 に よ れ ば , 平 成 27 年 変 更 定 款 第 22 条 は ,「 当 会 社 に 代 表 取 締 役 一 人 以 上 を 置 き , 取 締 役 会 の 決 議 に よ っ て 定 め る も の と す る 。 た だ し , 必 要 に 応 じ 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て こ れ を 定 め る こ と が で き る も の と す る 。」 と 定 め る 。 た だ し , 裁 判 所 は こ の 事 実 を 認 定 し て い な い 。 13 9/30 定 時 株 主 総 会 の 議 事 録 に よ れ ば X も 出 席 し た と さ れ て い る が , 原 審 は X の 出 席 を 認 定 し て い な い 。 14 本 件 各 株 主 総 会 当 時 の Y1 の 株 主 が B で あ る と し た 上 で , B へ 本 件 各 総 会 の 招 集 手 続 き が な さ れ ず , B が 本 件 各 株 主 総 会 に 出 席 し な か っ た た め , 本 件 各 株 主 総 会 決 議 は 不 存 在 で あ る こ と , 及 び , 本 件 選 定 規 定 の な い 平 成 25 年 認 証 定 款 を 有 効 な 定 款 と し た 上 で , 定 款 で 特 に 定 め が な い の に 株 主 総 会 で 代 表 取 締 役 を 選 定 し た 本 件 各 株 主 総 会 決 議 に は , 法 令 違 反 が あ り 無 効 で あ る こ と を 主 張 し た 。
第 一 審15は , 事 実 認 定 よ り X の 申 立 て を 却 下 し た 。 原 審16も 「 代 表 取 締 役 の 選 任 ・ 解 任 権 限 を 株 主 総 会 に 認 め た か ら と い っ て , 取 締 役 会 の 監 督 機 能 が 失 わ れ る わ け で は な い か ら , 上 記 定 款 の 定 め が 無 効 で あ る と は い い が た 」 い と し て , 申 立 て を 却 下 し た 。X は ,平 成 27 年 変 更 定 款 の 本 件 選 定 規 定 は 無 効 で あ る と し て 許 可 抗 告 申 立 て を 行 っ た 。 15 千 葉 地 木 更 津 支 決 平 成 28 年 1 月 13 日 民 集 71 巻 2 号 199 頁 。 16 東 京 高 決 平 成 28 年 3 月 10 日 民 集 71 巻 2 号 217 頁 。
図 1 .本 件 事 案 の 概 要17 17 Y2 の 取 締 役 の 選 任 時 期 が , 平 成 26 年 8 月 平 成 27 年 1 月 14 日 の 代 表 取 締 役 選 定 時 期 と 同 日 か 否 か 明 ら か で な い こ と か ら , 点 線 で 表 記 し た 。 同 様 に , 平 成 27 年 1 月 14 日 の Y2 の 辞 任 が , 代 表 取 締 役 の み な の か , 代 表 取 締 役 と 取 締 役 と の 両 方 な の か が 明 ら か で な い こ と か ら , 点 線 で 表 記 し た 。 ま た , 平 成 27 年 8 月 30 日 の 株 主 総 会 に F が Y1 社 の 取 締 役 と し て 参 加 し て い る こ と か ら , F が そ れ 以 前 に 取 締 役 で あ っ た こ と が 窺 わ れ る 。 し か し 選 任 時 期 が 認 定 さ れ て い な い た め , 破 線 で 表 記 し た 。 (取締役/代表取締役推移) H13.11.29 A社がY1社から6万株譲受け H17.03.31 「平成17年株券」発行 to A社 X H17 Xが取締役に選任される H21.01.20 Xが代表取締役に選定される H26.08.08 Y2が代表取締役兼取締役に選任される H26.09.18 Y1社がB社から2000万円借入れ(平成26年債務) H26.10.17 「平成26年株券」発行 to B社 ∵B社への債務担保 Y2 H27.01.14 Y2が辞任 H27.03.19 Y1社がB社への債務をここまでに返済(B社は平成26年株式返却せず) H27.04.10 Y1社がC社から3000万円借入れ(平成27年債務) H27.07.09 Y1社がC社へ100万円返済し,8/9まで返済期限猶予 H27.07.10 Y1社のC社に対する3000万円の約束手形振出日 H27.08.09 Y1社のC社への債務猶予期限 H27.08.12 Y1社-B社間での合意書作成,B社が平成26年株券の簡易の引渡し受ける E D H27.08.17 8/17臨時株主総会(参加者不明) H27.08.20 8/17の変更を登記 F H27.08.30 8/30臨時株主総会(A社,Y2,F,G参加) E D F X H27.09.30 9/30定時株主総会(A社,Y2,F,G参加) E D F X H27.10.15 9/30の変更を登記 X H27.10.24 10/24臨時株主総会(参加者不明) X H27.10.26 10/24の変更を登記 . . . . . . . . . . . . . . . . . . _ _ _ _ _ Y2 Y2 Y2 =代表取締役終了 =代表取締役開始
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同人?・
H27.8.30 平成27年変更定款 (株主総会決議あり・本件選定規定あり) H20.12.1 平成20年認証定款(臨時株主総会あり・本件選定規定あり)・
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H25.11.17 平成25年認証定款(株主総会特別決議無し・本件選定規定無し) (日付不明) X Y・
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Ⅱ 決定要旨
18 抗 告 棄 却 。 「 取 締 役 会 を 置 く こ と を 当 然 に 義 務 付 け ら れ て い る も の で は な い 非 公 開 会 社( 法 327 条 1 項 1 号 参 照 )が ,そ の 判 断 に 基 づ き 取 締 役 会 を 置 い た 場 合 ,株 主 総 会 は , 法 に 規 定 す る 事 項 及 び 定 款 で 定 め た 事 項 に 限 り 決 議 を す る こ と が で き る こ と と な る が ( 法 295 条 2 項 ), 法 に お い て , こ の 定 款 で 定 め る 事 項 の 内 容 を 制 限 す る 明 文 の 規 定 は な い 。 そ し て , 法 は 取 締 役 会 を も っ て 代 表 取 締 役 の 職 務 執 行 を 監 督 す る 機 関 と 位 置 付 け て い る と 解 さ れ る が , 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 に お い て , 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る こ と と し て も , 代 表 取 締 役 の 選 定 及 び 解 職 に 関 す る 取 締 役 会 の 権 限 ( 法 362 条 2 項 3 号 )が 否 定 さ れ る も の で は な く ,取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 実 効 性 を 失 わ せ る と は い え な い 。 以 上 に よ れ ば , 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 に お け る , 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め は 有 効 で あ る と 解 す る の が 相 当 で あ る 。」Ⅲ 研究 (判 旨 賛 成 )
一 本決定の意義
本 件 は , 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 に お い て , 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め こ と が で き る 旨 の 定 款 の 効 力 が 有 効 で あ る と 認 め た 事 案 で あ る 。 本 件 の 事 実 関 係 は 複 雑 で あ っ た が 、 争 点 に 必 要 な 限 り で ま と め る と 以 下 の よ う に 整 理 で き る 。Y1 社 は ,非 公 開 会 社 か つ 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ り ,Y 社 の 定 款 に は , 株 主 総 会 決 議 に よ っ て 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 め が あ っ た 。 X は , 平 成 17 年 か ら Y1 社 の 取 締 役 で あ り , 平 成 21 年 1 月 20 日 か ら Y1 社 の 代 表 取 締 役 で あ っ た 。Y1 社 は ,平 成 27 年 8 月 30 日 に 臨 時 株 主 総 会 を ,平 成 27 年 9 月 30 日 に 定 時 株 主 総 会 を 開 催 し , Y2 を 取 締 役 及 び 代 表 取 締 役 に 選 任 ・ 選 定 す 18 最 三 小 決 平 成 29 年 2 月 21 日 民 集 71 巻 2 号 195 頁 。る 旨 を 決 議 し た 。X は ,こ れ ら の 決 議 が 無 効 で あ る こ と 等 を 主 張 し ,Y2 の 取 締 役 兼 代 表 取 締 役 の 職 務 執 行 停 止 及 び 職 務 代 行 者 選 任 の 仮 処 分 命 令 を 申 立 て た 。 取 締 役 会 設 置 会 社 に お い て 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 定 款 に よ り 株 主 総 会 の 権 限 と す る こ と が で き る か と い う 論 点 は , 旧 来 よ り 学 説 が 対 立 し て い た 。 か か る 背 景 の も と , 本 決 定 は , 最 高 裁 が 当 該 論 点 に つ い て 初 め て 行 っ た 判 断19と し て 意 義 を も つ 。 ま た , 本 決 定 の 実 質 的 理 由 付 け と し て 「 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 実 効 性 が 失 わ れ な い こ と 」 が 挙 げ ら れ て い る こ と は , モ ニ タ リ ン グ 機 能 を 果 た す た め の 一 手 段 で あ る 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 取 締 役 会 以 外 に も 与 え て よ い か と い う 議 論 や , 非 公 開 会 社 に は 定 款 自 治 を 無 限 に 認 め る 理 解 が あ り う る 一 方 で 非 公 開 会 社 に も 定 款 自 治 の 内 在 的 制 約 を 与 え る こ と を 示 唆 し て い る と い う 見 解 に 繋 が り う る 。本 決 定 は ,か か る 意 味 に お い て も 重 要 な 意 義 を 有 し て い る と 考 え ら れ る 。
二 過去の裁判例
取 締 役 会 設 置 会 社 に お い て 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 定 款 に よ り 株 主 総 会 の 権 限 と す る こ と が で き る か と い う 論 点 に 関 す る 公 表 判 例・裁 判 例 は ,昭 和 25 年 改 正 商 法 以 降 , 会 社 法 制 定 後 も 含 め て 本 件 以 外 に は 見 当 た ら な い よ う で あ る20。 類 似 の 判 例 で あ る 最 判 平 成 4 年 12 月 15 日 民 集 46 巻 9 号 2787 頁 は ,「 中 小 企 業 等 協 同 組 合 法 に 基 づ い て 設 立 さ れ た 組 合 の 代 表 理 事 は , 理 事 会 の 決 議 を も っ て 定 め る こ と を 要 し ( 中 小 企 業 等 共 同 組 合 法 42 条 , 商 法 261 条21), 総 会 の 決 議 を も っ て 選 任 す る こ と は で き な い 」 と し た 。 し か し な が ら , こ の 事 案 で 問 題 と な っ た の は 株 式 会 社 で は な く 組 合 で あ り , ま た 代 表 理 事 を 総 会 で 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め は 無 か っ た た め , 本 件 と は 事 案 が 異 な る 。三 条文と学説の動向
取 締 役 会 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め の 効 力 に 関 す る 論 点 は ,平 成 17 年 改 正 前 商 法( 以 下「 旧 商 法 」)下 に お い て ,取 締 役 会 と 代 表 取 締 役 の 機 関 の 位 置 づ け に 関 す る 学 説 に 関 連 付 19 大 塚 和 成 「 本 件 判 批 」 銀 法 2161 巻 7 号 ( 2017) 68 頁 参 照 。 20 川 島 い づ み 「 本 件 判 批 」 金 商 1531 号 ( 2018) 3 頁 参 照 。 21 原 文 マ マ 。 改 正 前 の 条 文 で あ る こ と に 注 意 。け て 議 論 さ れ て い た 。 一 方 , 現 行 会 社 法 下 に お い て , 旧 商 法 下 の 議 論 は 現 行 法 下 の 議 論 に も 繋 が っ て い る も の の , そ の ま ま 展 開 さ れ て い る わ け で は な く , 法 的 性 質 論 と 切 り 離 し モ ニ タ リ ン グ 機 能 確 保 の 観 点 か ら 定 款 自 治 の 限 界 を 示 唆 し て い る 説 も 見 ら れ る 。 ⒈ 旧 商 法 下に お け る議 論 旧 商 法 下 で は , 株 式 会 社 に は 取 締 役 会 が 必 置 と さ れ て お り , 代 表 取 締 役 は 取 締 役 会 に お い て 選 定 す る も の と さ れ て い た( 旧 商 法 261 条 1 項22)。そ の 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 を 定 款 の 定 め に よ り 株 主 総 会 の 権 限 と す る こ と が で き る か ( 旧 商 法 230 条 ノ 1023) に つ い て , こ れ を 株 主 総 会 に 留 保 で き る と す る 肯 定 説 と , 留 保 で き な い と す る 否 定 説 と が 対 立 し て い た24。 肯 定 説 が 通 説 で あ っ た と さ れ る が , 否 定 説 も 有 力 で あ っ た と さ れ る25。 肯 定 説 は ,「 株 式 会 社 の 業 務 執 行 機 関 は , 意 思 決 定 の 機 関 と し て の 取 締 役 会 と , 執 行 お よ び 代 表 と し て の 代 表 取 締 役 の 二 つ に 分 か れ 」26る と す る 説( 並 立 機 関 説 ) を 前 提 に , 取 締 役 会 に は 執 行 行 為 の 監 督 が 期 待 さ れ る こ と や27, 業 務 執 行 の 意 思 決 定 と そ の 執 行 と を 区 分 す る こ と が 合 理 的 経 営 方 式 と し て の 分 業 組 織 ( 権 限 の 分 配 )の 表 れ で あ る こ と28,代 表 取 締 役 は 会 社 の 代 表 で あ り ,代 表 取 締 役 選 定 を 株 主 総 会 で 行 う 旨 を 定 款 で 定 め て も 取 締 役 会 は 命 令 監 督 の 権 限 を 失 っ て し ま う わ け で は な い こ と29, 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 が 株 主 総 会 の 決 議 事 項 と さ れ て も 取 締 役 会 は そ の 解 職 を 議 題 と し て 株 主 総 会 を 招 集 可 能 で あ る こ と30等 を 理 由 と し た 。 一 方 の 否 定 説 は , 所 有 と 経 営 の 分 離 の 観 点 か ら 株 主 総 会 の 権 限 を 縮 小 し , 業 務 22 旧 商 法 第 261 条 1 項 「 会 社 ハ 取 締 役 会 ノ 決 議 ヲ 以 テ 会 社 ヲ 代 表 ス ベ キ 取 締 役 ヲ 定 ム ル コ ト ヲ 要 ス 」 23 旧 商 法 第 230 条 ノ 10「 総 会 ハ 本 法 又 ハ 定 款 ニ 定 ム ル 事 項 ニ 限 リ 決 議 ヲ 為 ス コ ト ヲ 得 」 24 そ の 他 , 所 有 と 経 営 の 分 離 が 生 じ な い 株 主 の 数 が 少 な い 閉 鎖 会 社 に の み 肯 定 す れ ば よ い と い う 見 解 が あ る ( 川 浜 昇 「 株 主 総 会 と 取 締 役 会 の 権 限 分 配 」 法 教 194 号 ( 1996) 29 頁 参 照 )。 25 高 橋 聖 子 「 本 件 判 批 」 ひ ろ ば 70 巻 9 号 ( 2017) 59 頁 参 照 。 26 鈴 木 竹 雄 ・ 竹 内 昭 夫 『 会 社 法 [第 3 版 ]』( 1994, 有 斐 閣 ) 265-266 頁 。 27 石 井 照 久 『 会 社 法 ( 上 )』( 1967, 勁 草 書 房 ) 300-301 頁 参 照 。 28 石 井 照 久 , 前 掲 註 27, 300-301 頁 参 照 。 29 鈴 木 竹 雄 ・ 竹 内 昭 夫 , 前 掲 註 26, 228 頁 参 照 。 30 鈴 木 竹 雄 ・ 竹 内 昭 夫 , 前 掲 註 26, 228 頁 参 照 。
執 行 の 権 限 を 取 締 役 全 体 に 与 え , そ の 取 締 役 全 員 に よ っ て 構 成 さ れ た 取 締 役 会 に こ そ 会 社 本 来 の 執 行 権 限 が あ り , 代 表 取 締 役 の 権 限 は 取 締 役 会 の 権 限 に 由 来 す る と す る 説( 派 生 機 関 説 )31を 前 提 に ,業 務 執 行 機 関 は 取 締 役 会 で あ る か ら ,代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 は 取 締 役 会 に 専 属 す る こ と や32, 取 締 役 会 は 命 令 監 督 の 権 限 を 有 し , こ の 権 限 は 取 締 役 会 が 代 表 取 締 役 の 解 職 権 を 有 す る こ と に よ り 裏 付 け ら れ , 株 主 総 会 に 解 職 権 を 認 め る と そ の 実 効 性 が 妨 げ ら れ る こ と33等 を 理 由 と し た 。 ま た , 否 定 説 の 立 場 か ら は , 肯 定 説 の 取 締 役 会 が 解 職 を 議 題 に で き る と い う 説 に 対 し て , 監 督 の 実 を 挙 げ に く い と い う 反 論 も さ れ て い る34。 た だ し , こ れ ら の 議 論 は , 株 主 総 会 の み が 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 有 す る ( 以 下 「 権 限 専 属 型35」) 定 款 の 定 め が 暗 黙 の 前 提 と さ れ て い た と 思 わ れ る36。 ま た , こ れ ら は い ず れ も 株 式 会 社 が 取 締 役 会 を 必 置 の 機 関 と し て い た 法 制 下 で 展 開 さ れ た 議 論 で あ り , 現 行 会 社 法 に お け る 非 公 開 会 社 の よ う に 取 締 役 会 の 設 置 を 定 款 自 治 に 委 ね て い る 法 制 下 の 議 論 で は な い37。 な お ,登 記 実 務 で は ,「 定 款 に 取 締 役 会 の 決 議 に よ る 旨 を 明 示 し て あ る 場 合 は 勿 論 , 何 ら 定 め の な い 場 合 で も , 総 会 の 決 議 を も っ て 代 表 取 締 役 を 選 定 す る こ と は で き ず ,定 款 を も っ て し て も そ の 旨 を 定 め え な い 。」と の 通 達38が あ り ,定 款 の 定 め を も っ て 代 表 取 締 役 の 選 定 を 株 主 総 会 に 留 保 す る こ と は で き な い も の と 説 明 さ れ ,否 定 説 に 立 っ た 運 用 が さ れ て い た39。そ の た め 登 記 実 務 で は ,代 表 取 締 役 の 選 定 に 係 る 登 記 は , そ の 旨 の 記 載 の あ る 取 締 役 会 議 事 録 を 添 付 し な け れ ば 受 理 さ れ な い も の と さ れ て い た40。 31 大 隅 健 一 郎 ・ 今 井 宏 『 会 社 法 論 (中 )[ 第 3 版 ]』( 1992, 有 斐 閣 ) 146-147 頁 参 照 。 32 大 隅 健 一 郎 ・ 今 井 宏 『 会 社 法 論 (中 )[ 第 3 版 ]』( 1992, 有 斐 閣 ) 147 頁 参 照 。 33 大 隅 健 一 郎 ・ 今 井 宏 , 前 掲 註 31, 209 頁 参 照 。 34 川 浜 昇 , 前 掲 註 24, 29 頁 参 照 。 35 中 村 信 男 「 本 件 判 批 」 TKC Watch 商 法 No.10( 2017) 2 頁 の 表 現 に よ る 。 36 前 田 雅 弘 「 意 思 決 定 権 限 の 分 配 と 定 款 自 治 」 浅 木 慎 一 ・ 今 井 克 典 ほ か 編 浜 田 道 代 先 生 還 暦 記 念 『 検 証 会 社 法 』( 2007, 信 山 社 ) 96 頁 参 照 。 37 若 林 泰 伸 「 本 件 判 批 」 法 教 445 号 ( 2017) 43 頁 参 照 。 38 法 務 省 民 事 局 長 通 達 昭 和 26 年 10 月 12 日 甲 第 1983 号 民 事 月 報 6 巻 11 号 132 頁 。 39 寺 田 逸 郎 「 代 表 取 締 役 を 株 主 総 会 で 選 任 す る こ と と す る 定 款 の 定 め の 有 効 性 」 鴻 常 夫 ・ 清 水 湛 ほ か 編 『 商 業 登 記 先 例 判 例 百 選 』( 1993, 有 斐 閣 ) 113 頁 参 照 。 40 川 島 い づ み , 前 掲 註 20, 4 頁 参 照 。
⒉ 現 行 会 社法 下 に おけ る 議 論 会 社 法 は , 株 主 総 会 の 権 限 に つ い て 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る か 否 か に よ っ て 異 な る 定 め を 置 き , 取 締 役 会 設 置 会 社 の 株 主 総 会 は , 会 社 法 に 規 定 す る 事 項 及 び 定 款 で 定 め た 事 項 に 限 り 決 議 す る こ と が で き る ( 会 社 法 295 条 1 項 , 2 項 )41。 取 締 役 会 設 置 会 社 を 除 く 株 式 会 社 に お い て , 代 表 取 締 役 を 株 主 総 会 で 選 定 で き る こ と は , 会 社 法 295 条 1 項 , 3 項 よ り 明 ら か で あ る も の の , 取 締 役 会 設 置 会 社 に お い て 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 定 款 で 株 主 総 会 に 付 与 す る こ と が で き る か ど う か に つ い て は , 必 ず し も 文 言 上 明 ら か に な っ た と は い え ず , 解 釈 に 委 ね ら れ て い る42。 現 行 法 下 で 両 学 説 の 対 立 を そ の ま ま 引 き 継 ぐ こ と は で き な い と し て も , 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め を 否 定 す る 見 解 が 今 日 ま で 有 力 に 主 張 さ れ て い る こ と や , 登 記 実 務 で 旧 商 法 下 の 議 論 に お け る 否 定 説 の 立 場 が 現 行 会 社 法 制 定 直 後 ま で 維 持 さ れ た こ と を 踏 ま え る と43, 旧 商 法 下 の 議 論 は , 現 行 法 下 の 議 論 に も 繋 が っ て い る と 考 え ら れ る 。 た だ し , 旧 商 法 下 に お け る 学 説 が そ の ま ま 展 開 さ れ て い る わ け で は な く , モ ニ タ リ ン グ 機 能 の 確 保 の 観 点 か ら 定 款 自 治 の 限 界 を 意 識 し た 議 論 も な さ れ て い る よ う に 思 わ れ る こ と に 留 意 す る 必 要 が あ る 。 こ の 論 点 に 関 し て 立 案 担 当 者 は ,「 株 式 会 社 に 関 す る 一 切 の 事 項 」が 株 主 総 会 の 権 限 と な り う る こ と を 前 提 と し , 取 締 役 会 設 置 会 社 が 定 款 で 株 主 総 会 の 決 議 事 項 と す る こ と が で き る 事 項 に つ い て 特 に 制 限 を 設 け て い な い と し た 上 で , 代 表 取 締 役 に 対 す る 選 定 ・ 解 職 権 限 を 取 締 役 と 株 主 総 会 の 双 方 に 認 め る ( 以 下 「 権 限 重 複 型44」)定 款 の 定 め は ,公 開 会 社・非 公 開 会 社 の 別 を 問 わ ず 有 効 で あ る と 捉 え て い 41 こ れ は , 旧 会 社 法 下 の 株 式 会 社 と 有 限 会 社 を 一 本 化 す る に あ た っ て , 取 締 役 会 の 設 置 の 有 無 と い う 基 準 で 株 式 会 社 を 区 分 し , 非 取 締 役 会 設 置 会 社 の 株 主 総 会 に つ い て は 旧 有 限 会 社 の 社 員 総 会 と 同 様 の 権 限 を 認 め , 取 締 役 会 設 置 会 社 の 株 主 総 会 に つ い て は 旧 株 式 会 社 の 株 主 総 会 と 同 様 の 権 限 を 認 め る こ と と さ れ た も の で あ る ( 相 澤 哲 編 『 立 案 担 当 者 に よ る 新 ・ 会 社 法 の 解 説 』( 2006, 商 事 法 務 ) 76 頁 参 照 )。 42 松 本 展 幸 「 本 件 解 説 」 法 時 71 巻 5 号 ( 2019) 136 頁 参 照 。 43 高 橋 真 弓 「 本 件 判 批 」 判 時 2362 号 ( 2018) 165 頁 参 照 / 平 成 18 年 3 月 31 日 付 民 商 第 782 号 民 事 局 長 通 達 参 照 。 44 前 掲 註 35 同 様 , 中 村 信 男 「 本 件 判 批 」 TKC Watch 商 法 ( 2017) 2 頁 の 表 現 に よ る 。
る4546。ま た ,取 締 役 会 に お け る モ ニ タ リ ン グ 機 能 の 確 保 に つ い て は ,特 に 考 慮 し て い な い よ う に 思 わ れ る 。 登 記 実 務 で は , 定 款 に 「 代 表 取 締 役 は 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て 定 め る こ と が で き る 」 旨 の 定 め を 置 い た と き に は , 取 締 役 会 ま た は 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て 代 表 取 締 役 を 選 定 す る こ と が で き る こ と を 前 提 と し て い る47。 し た が っ て , 登 記 実 務 は , 立 案 担 当 者 の 見 解 と 同 様 , 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め を 有 効 と す る 肯 定 説 を 取 っ て い る と 考 え ら れ る 。 一 方 の 学 説 は , 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 を 定 款 の 定 め に よ り 株 主 総 会 に 留 保 で き る と す る 肯 定 説 と 留 保 で き な い と す る 否 定 説 と が 対 立 し て お り , さ ら に 肯 定 説 は 権 限 専 属 型 と 権 限 重 複 型 と に 区 分 さ れ る 。 権 限 専 属 型 の 肯 定 説 は , 解 職 権 が 株 主 総 会 に 属 し て も そ れ に よ り 監 督 命 令 権 が 失 わ れ る わ け で は な く , 取 締 役 会 は 代 表 取 締 役 等 の 解 職 案 を 議 題 と す る 株 主 総 会 を 招 集 で き る か ら , 当 該 定 款 の 定 め を 無 効 と 解 す る 必 要 は な い こ と や48, 基 本 的 に 定 款 自 治 を 広 く 許 容 す る 会 社 法 の 下 で の 解 釈 と し て は 規 定 を 可 能 と 解 す る の が 妥 当 で あ る こ と49等 を 理 由 と す る 。す な わ ち ,権 限 専 属 型 の 肯 定 説 は ,代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 取 締 役 会 が 失 っ た と し て も , 取 締 役 会 の モ ニ タ リ ン グ 機 能 は 維 持 可 能 で あ る と 考 え て い る よ う に 思 わ れ る 。 な お , 権 限 専 属 型 の 肯 定 説 の 立 場 は , 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め に つ い て も 有 効 性 を 認 め る と 解 さ れ る50。 ま た , 権 限 重 複 型 の 肯 定 説 は , 取 締 役 会 と と も に 株 主 総 会 が 選 定 ・ 解 職 権 限 を 有 す る 旨 の 定 款 の 定 め 否 定 す る 理 由 は な い こ と51,取 締 役 会 が 代 表 取 締 役 の 選 定・ 解 職 権 限 を 有 し 続 け る と 解 す れ ば 問 題 が な い こ と52,剰 余 金 の 配 当 権 限 の よ う に , 同 一 事 項 の 決 定 権 限 を 二 つ の 機 関 に 重 畳 的 に 属 さ せ る 形 を 取 る こ と は 既 に 認 め ら 45 相 澤 哲 ・ 細 川 充 「 株 主 総 会 等 」 商 事 1743 号 ( 2005) 19 頁 参 照 。 / 相 澤 哲 ・ 葉 玉 匡 美 ほ か 編 『 論 点 解 説 新 ・ 会 社 法 』( 2006, 商 事 法 務 ) 262-264 頁 参 照 。 46 仮 に 混 乱 が 生 ず る 場 合 に は , 非 取 締 役 会 設 置 会 社 に な れ ば よ い と す る ( 葉 玉 匡 美 『 新 ・ 会 社 法 100 問 [ 第 2 版 ]』( 2006, ダ イ ヤ モ ン ド 社 ) 273 頁 参 照 )。 47 松 井 信 憲 『 商 業 登 記 ハ ン ド ブ ッ ク [ 第 3 版 ]』( 2015, 商 事 法 務 ) 390 頁 参 照 。 48 江 頭 憲 治 郎 『 株 式 会 社 法 [ 第 7 版 ]』( 2017 年 , 有 斐 閣 ) 318-319 頁 参 照 。 49 落 合 誠 一 編 『 会 社 法 コ ン メ ン タ ー ル 8 機 関 ⑵ 』( 2009, 商 事 法 務 ) 220 頁 参 照 。 50 江 頭 憲 治 郎 , 前 掲 註 48, 318-319 頁 参 照 。 51 森 本 滋 「 株 式 会 社 に お け る 機 関 権 限 分 配 法 理 」 浜 田 道 代 ・ 岩 原 紳 作 編 『 会 社 法 の 争 点 ( ジ ュ リ 増 刊 )』( 2009, 有 斐 閣 ) 95 頁 参 照 。 52 弥 永 真 生 ,『 リ ー ガ ル マ イ ン ド 会 社 法 [ 第 14 版 ]』( 2015, 有 斐 閣 ) 119 頁 ( 註 11) 参 照 。
れ て い る こ と53等 を 理 由 と す る 。す な わ ち ,権 限 重 複 型 の 肯 定 説 は ,代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 が 取 締 役 会 に 残 っ て い れ ば , 取 締 役 会 の モ ニ タ リ ン グ 機 能 は 維 持 可 能 で あ る と 考 え て い る よ う に 思 わ れ る 。 一 方 の 否 定 説 は , 会 社 法 が , 定 款 の 規 定 に 基 づ き 株 主 総 会 が 取 締 役 の 中 か ら 代 表 取 締 役 を 選 定 す る こ と を 非 取 締 役 会 設 置 会 社 に 限 定 し て 認 め ( 会 社 法 349 条 3 項 )54,取 締 役 会 設 置 会 社 に お い て は 取 締 役 会 が 代 表 取 締 役 の 選 定・解 職 を す る も の と 定 め て い る こ と ( 会 社 法 362 条 2 項 3 号 ) や55, 取 締 役 会 が 代 表 取 締 役 を 解 職 で き な い 結 果 , こ の 監 督 の 職 務 ・ 権 限 は 裏 付 け を 失 い , 実 を 挙 げ る こ と が で き な く な る こ と56,取 締 役 会 の 監 督 機 能 が 弱 体 化 す る こ と57,公 開 性 の 高 い 会 社 を 念 頭 に 置 い た 場 合 , 取 締 役 会 の 監 督 機 能 を 形 骸 化 す る 可 能 性 が あ る こ と58等 を 理 由 と す る 。 す な わ ち , 否 定 説 は , 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 が 取 締 役 会 に 無 い 場 合 , モ ニ タ リ ン グ 機 能 を 維 持 で き な い と 考 え て い る よ う に 思 わ れ る 。 た だ し , 否 定 説 の 立 場 が 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め ま で を 無 効 と す る か は 明 ら か で な い 。 代 表 取 締 役 に 対 す る 取 締 役 会 の 監 督 の 実 行 性 確 保 を 根 拠 に し て い る 立 場 か ら は , 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め が 有 効 と さ れ る 可 能 性 あ る と 解 さ れ る5960。
四 決定要旨の評価
本 決 定 は , ① 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 に お い て , ②― 1 株 主 総 会 で 53 前 田 雅 弘 , 前 掲 註 36, 98-99 頁 参 照 。 54 岩 原 紳 作 編 『 会 社 法 コ ン メ ン タ ー ル 7 機 関 ⑴ 』[ 松 井 秀 征 ]( 2013, 商 事 法 務 ) 41-42 頁 参 照 。 55 弥 永 真 生 「 本 件 判 批 」 ジ ュ リ 1507 号 ( 2017) 2 頁 参 照 。 56 大 隅 健 一 郎 ・ 今 井 宏 ほ か 『 新 会 社 法 概 説 [ 第 2 版 ]』( 2010, 有 斐 閣 ) 219-220 頁 参 照 。 57 酒 巻 俊 雄 ・ 龍 田 節 編 『 逐 条 解 説 会 社 法 4 機 関 ・ 1』[ 前 田 重 行 ]( 2008, 中 央 経 済 社 ) 35-36 頁 参 照 。 58 岩 原 紳 作 , 前 掲 註 55, 41-42 頁 参 照 。 59 渡 辺 邦 広 「 本 件 判 批 」 金 法 2070 号 ( 2017) 5 頁 参 照 。 60 そ の 他 , 非 公 開 会 社 を 選 択 で き る 状 況 に も か か わ ら ず あ え て 公 開 会 社 を 選 択 し て い る よ う な 公 開 会 社 や , 取 締 役 会 の 監 督 機 能 を 弱 体 化 さ せ , 取 締 役 会 と 株 主 総 会 と で 異 な る 者 を 代 表 取 締 役 と し て 選 定 し た 場 合 に 混 乱 が 生 じ う る 株 式 の 流 動 性 の 高 い 公 開 会 社 で は , 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め で あ っ て も 無 効 と 考 え る べ き だ と い う 見 解 も あ る ( 若 林 泰 伸 , 前 掲 註 37, 46 頁 参 照 )。決 議 で き る 法 令 及 び 定 款 の う ち , 定 款 で 定 め る 事 項 の 内 容 を 制 限 す る 明 文 の 規 定 は な い こ と( 形 式 的 理 由 ),②― 2 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る こ と と し て も , 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 に 関 す る 取 締 役 会 の 権 限 は 否 定 さ れ ず , 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 実 効 性 が 失 わ れ な い こ と ( 実 質 的 理 由 ) と い う 理 由 付 け に よ り , 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 に お け る , 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め を 有 効 で あ る と 判 示 し た 。 ⒈ 決 定 要 旨① に つ いて 会 社 法 に お い て , 取 締 役 会 設 置 会 社 は , 公 開 会 社 で あ る 場 合 ( 会 社 法 327 条 1 項 1 号 ),監 査 役 会 設 置 会 社 ,監 査 等 委 員 会 設 置 会 社 ,指 名 委 員 会 等 設 置 会 社 で あ る 場 合( 会 社 法 327 条 1 項 2~ 4 号 ),非 公 開 会 社 で あ っ て ,定 款 で 取 締 役 会 を 定 め る と し た 場 合 ( 会 社 法 326 条 2 項 ) で あ る 。 本 決 定 は ,「 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 」 と い う 文 言 を 用 い て い る こ と か ら , 非 公 開 会 社 に 限 定 し そ の 定 款 の 定 め の 効 力 を 認 め , 公 開 会 社 に つ い て 直 接 の 判 断 を 示 し て な い と い え る 。 そ の た め , 本 決 定 が 公 開 会 社 に も 及 ぶ か は 明 白 で は な く 検 討 を 要 す る ( 以 下 , 五 ⒈ で 検 討 す る )。 ま た 本 決 定 は ,「 取 締 役 会 を 置 く こ と を 当 然 に 義 務 付 け ら れ て い る も の で は な い 非 公 開 会 社 が , そ の 判 断 に 基 づ き 取 締 役 会 を 置 い た 場 合 」 と の 文 言 を 用 い て い る 。 こ れ は , 本 決 定 が 「 必 ず し も 取 締 役 会 を 置 く こ と は 求 め ら れ て い な い 非 公 開 会 社 が , あ え て 取 締 役 会 を 選 択 し た 」 と い う 形 式 を 重 視 し て い る と す れ ば , 非 公 開 会 社 は , 取 締 役 会 を 選 択 し た 以 上 , 取 締 役 会 の モ ニ タ リ ン グ 機 能 を 確 実 に 維 持 す べ き だ と い う 趣 旨 で あ る と 解 さ れ る よ う に 思 わ れ る 。 一 方 , 本 決 定 が 「 そ も そ も 非 公 開 会 社 が 取 締 役 会 を 置 く こ と は 当 然 に 義 務 付 け ら れ て い る も の で は な く , ま た 非 公 開 会 社 に お い て 取 締 役 会 は 必 ず し も 機 能 し て い な い 」 と い う 実 質 を 重 視 し て い る と す れ ば , 非 公 開 会 社 は , 取 締 役 会 の モ ニ タ リ ン グ 機 能 が 不 十 分 で も 致 し 方 な い と い う 趣 旨 で あ る と 解 す る こ と が で き る よ う に も 見 え る 。し か し な が ら , 本 決 定 の 以 降 の 理 由 付 け で は , 取 締 役 会 の モ ニ タ リ ン グ 機 能 は 守 ら れ る べ き で あ る と の 前 提 の 下 ,そ れ に 矛 盾 し て い な い か の 判 断 が ②― 1,②― 2で 展 開 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 し た が っ て , 本 決 定 は , 非 公 開 会 社 が あ え て 取 締 役 会 を 選 択 し た と い う 形 式 を 強 調 し て い る と 考 え ら れ る 。 ⒉ 決 定 要 旨②― 1に つ い て 株 式 会 社 の 原 始 定 款 に お け る 掲 載・記 録 以 降 に 関 す る 規 定( 会 社 法 27~ 29 条 ) に お い て , 株 式 会 社 の 機 関 内 の 権 限 分 配 に つ い て 手 掛 か り に な る 規 定 は 存 在 し な
い61。 ま た 会 社 法 29 条 は , 株 式 会 社 の 定 款 が ,「 こ の 法 律 の 規 定 に よ り 定 款 の 定 め が な け れ ば そ の 効 力 を 生 じ な い 事 項 」 及 び そ の 他 の 事 項 で 会 社 法 の 規 定 に 違 反 し な い も の を 記 載 し , ま た は 記 録 す る こ と が で き る と し て い る 。 会 社 法 295 条 2 項 で , 取 締 役 会 設 置 会 社 に お け る 株 主 総 会 決 議 事 項 は 定 款 で 拡 張 す る こ と が 認 め ら れ て お り , 前 者 の 「 こ の 法 律 の 規 定 に よ り 定 款 の 定 め が な け れ ば そ の 効 力 を 生 じ な い 事 項 」 に 当 た る62。 か か る 条 文 に よ り , 本 決 定 は , 形 式 的 理 由 付 け に お い て 肯 定 説 の 形 式 的 理 由 付 け 同 様 ,会 社 法 295 条 2 項 に い う「 定 款 で 定 め ら れ た 事 項 」に つ い て 直 接 に 制 限 す る 規 定 は な い と 解 し た と 考 え ら れ る 。 よ っ て , 定 款 で 株 主 総 会 の 権 限 を 自 由 に 定 め る こ と が で き る か ら , 代 表 取 締 役 を 定 め る に あ た っ て 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め を 置 く こ と は 有 効 で あ る と 解 し て い る と 思 わ れ る 。 こ れ は , 非 公 開 会 社 は そ も そ も 取 締 役 会 を 設 置 す る か 否 か の 選 択 が 認 め ら れ て い る た め , そ の 中 間 で あ る ア レ ン ジ を 否 定 す る 必 要 は な い と の 趣 旨 を 含 み う る63と 解 す る こ と も で き る 。ま た , 否 定 説 が 主 張 し て い た 形 式 的 理 由 付 け は ,「 明 文 の 規 定 」と は 評 価 さ れ な か っ た と 考 え ら れ る6465。 ⒊ 決 定 要 旨②― 2に つい て 本 決 定 は , 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と は , 取 締 役 会 の 権 限 を 剥 奪 す る こ と な く 株 主 総 会 の 定 款 上 の 権 限 と 併 存 す る66と の 立 場 を 取 る 。 こ れ は , 本 決 定 が 派 生 機 関 説 を 採 用 し た と の 見 方 も あ る が67,単 に 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め を 認 め た と み る べ き で あ ろ う68。な お ,代 表 61 原 弘 明 「 本 件 判 批 」 関 法 68 巻 3 号 ( 2018) 160 頁 参 照 。 62 松 中 学 「 本 件 判 批 」 民 商 153 巻 6 号 ( 2018) 158 頁 参 照 。 63 松 中 学 , 前 掲 註 62, 159-160 頁 参 照 。 64 松 井 智 予 , 前 掲 註 4, 161 頁 参 照 。 65 た だ し , 否 定 説 の 主 張 し て い た 会 社 法 362 条 2 項 3 号 を , 取 締 役 会 か ら 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 奪 う こ と は で き な い こ と を 含 意 し て い る に す ぎ ず , 定 款 で 「 株 主 総 会 の 決 議 を も っ て も 」 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 が で き る と 追 加 的 に 認 め る こ と を 排 除 す る も の で は な い と 解 し , ま た 会 社 法 349 条 3 項 を , 取 締 役 会 設 置 会 社 に つ い て は 何 ら 規 定 し て い な い と 解 す る と , 本 決 定 と 矛 盾 す る と は 言 え な い ( 弥 永 真 生 , 前 掲 註 55, 3 頁 参 照 )。 66 高 橋 聖 子 , 前 掲 註 25, 62 頁 参 照 。 67 鳥 山 恭 一 「 本 件 判 批 」 法 セ 62 巻 6 号 ( 2017) 95 頁 参 照 。 68 派 生 機 関 説 を 採 用 し た と す る 場 合 , 理 論 構 成 に お い て , 派 生 機 関 説 の 考 え 方 に よ り つ つ 業 務 執 行 行 為 を 行 う 代 表 取 締 役 の 選 定 を 株 主 総 会 の 権 限 と す る こ と が 整 合 的
取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 を 議 題 と す る 株 主 総 会 の 招 集 手 続 き 履 践 が 現 行 の 代 表 取 締 役 や 取 締 役 に よ り 行 わ れ る こ と か ら , 本 決 定 は , 株 主 総 会 が 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を も つ 定 款 の 定 め を 置 い て も 経 営 陣 の 了 承 を 得 ず し て の 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 す る こ と は 困 難 で あ り , 取 締 役 会 の 監 督 権 限 は 失 わ れ な い と い う 趣 旨 を 含 む 可 能 性 も あ り う る と 考 え ら れ る69。 ま た , 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 に 限 ら ず , 取 締 役 会 が 依 然 と し て 有 す る 権 限 全 体 を 通 じ て 十 分 に 監 督 す る こ と が 可 能 だ と 評 価 で き れ ば , 定 款 を 通 じ た 自 由 な 権 限 分 配 が 認 め ら れ る と 読 む こ と も 可 能 で あ る と い う 見 解 も あ る70。し か し な が ら , 「 監 査 」「 監 督 」の 文 言 が 業 績 評 価 を 確 保 す る た め の エ ン フ ォ ー ス メ ン ト の 有 無 に よ っ て 使 い 分 け ら れ て い る と す る 見 解 を 用 い れ ば71,本 決 定 が「 監 督 」と い う 文 言 を 用 い て い る 以 上 , 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 重 視 し て い る と 見 る べ き で あ る よ う に 思 わ れ る 。 こ の と き , 株 主 総 会 に よ っ て も 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 が で き る と し て も 「 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 『 実 効 性 』 を 失 わ せ る と は い え な い 」 と の 文 言 か ら , 本 決 定 は , 株 主 総 会 に も 選 定 ・ 解 職 権 限 を 与 え る こ と が モ ニ タ リ ン グ 機 能 の 縮 小 に な り う る こ と を 認 め つ つ も , そ の 影 響 は モ ニ タ リ ン グ 機 能 の 実 効 性 が 失 わ れ る ほ ど で は な い と す る 趣 旨 を 含 む よ う に 思 わ れ る 。 さ ら に , 本 決 定 は ,「 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て 『 も 』 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 が で き る と し て も 」 と 判 示 し て い る 。 こ の 「 も 」 を , 並 立 の 「 も 」 と 捉 え る か , 強 調 の 「 も 」 と 捉 え る か に よ っ て , 本 決 定 の 射 程 が 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め の み な ら ず 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め に ま で 及 ぶ か と い う 点 で , 異 な る 結 論 が 導 か れ る と 考 え ら れ る 。 す な わ ち , 本 決 定 が 並 立 の 「 も 」 を 意 味 す る 場 合 , 取 締 役 会 決 議 も 株 主 総 会 決 議 も 両 者 が 代 表 取 締 役 を 選 定 ・ 解 職 で き る こ と を 意 味 し ,も っ ぱ ら 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め の み を 認 め る こ と と な る 。一 方 で , か 問 わ れ る ( 若 林 泰 伸 , 前 掲 註 37, 47 頁 参 照 )。 派 生 機 関 説 に お い て , 代 表 取 締 役 の 権 限 は 取 締 役 会 に 由 来 す る 以 上 , 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 は 取 締 役 会 に 専 属 す る こ と に な る た め ( 上 柳 克 郎 ・ 鴻 常 夫 ほ か 編 『 新 版 注 釈 会 社 法 ⑹ 』[ 山 口 幸 五 郎 ]( 1987, 有 斐 閣 ) 142 頁 参 照 ), 本 決 定 が 派 生 機 関 説 に 立 っ て い な い の は 明 ら か で あ る と す る 説 も あ る ( 来 住 野 究 「 本 件 判 批 」 明 治 学 院 大 学 法 学 研 究 104 号 ( 2018) 319-320 頁 参 照 )。 69 松 井 智 予 , 前 掲 註 4, 162 頁 参 照 。 た だ し , 全 員 出 席 総 会 屋 招 集 手 続 き の 省 略 が 可 能 な 場 合 , 代 表 取 締 役 及 び 取 締 役 会 の 認 識 し な い と こ ろ で , 代 表 取 締 役 の 選 解 任 が 行 な わ れ る 可 能 性 が あ る ( 松 井 智 予 , 前 掲 註 4, 162 頁 参 照 )。 70 松 中 学 , 前 掲 註 62, 160-161 頁 参 照 。 71 得 津 晶 「 会 社 法 上 の 監 査 概 念 に つ い て 」 法 学 80 巻 4 号 ( 2016) 26-29 頁 参 照 。
本 決 定 が 強 調 の 「 も 」 を 意 味 す る 場 合 , 取 締 役 会 決 議 で は な く 株 主 総 会 決 議 が 代 表 取 締 役 を 選 定 ・ 解 職 す る こ と が で き る こ と を 意 味 し , 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め を も 認 め る こ と と な る 。 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め を 認 め る か 否 か は , 五 ⒊ で 詳 し く 検 討 す る 。 留 意 す べ き 点 と し て , 本 件 が 代 表 取 締 役 の 解 職 の 規 定 に 何 ら 触 れ て い な い こ と か ら , 本 決 定 の 「 代 表 取 締 役 を 『 定 め る 』 こ と が で き る 」 に 解 職 が 含 ま れ て い る か は 定 か で は な い こ と が 挙 げ ら れ る 。 し た が っ て , こ の 部 分 に つ い て も 検 討 が 要 さ れ , 以 下 , 五 ⒉ で 行 う 。
五 本決定の射程
⒈ 他 の 取 締役 会 設 置会 社 に も 当 ては ま る か72 本 決 定 は , 非 公 開 会 社 に お い て , 取 締 役 会 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め の 効 力 を 認 め た も の で あ る が , 本 決 定 の 射 程 は , 公 開 会 社 に も 及 ぶ だ ろ う か 。 原 審 と 異 な り 文 言 上 「 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 」 に 限 定 さ れ て い る こ と や73, 特 に 流 動 性 の 高 い 公 開 会 社 に あ っ て は , 所 有 と 経 営 の 分 離 が 図 ら れ て お り 専 門 的 な 経 営 者 と し て 適 切 に 権 限 を 行 使 す る こ と が 期 待 さ れ る こ と74あ あ あ あ あ あ 非 公 開 会 社 の 場 合 , 元 来 , 取 締 役 会 を 設 置 す る こ と は 強 制 さ れ て い な い の だ か ら , 取 締 役 会 を 設 置 し た と き で あ っ て も 可 能 な 限 り 定 款 自 治 を 認 め る の が 穏 当 で あ り , 取 締 役 会 に 権 限 を 独 占 さ せ な け れ ば い け な い 理 由 は な い と い う 価 値 判 断 が 背 景 に あ る こ と75, 公 開 会 社 の 取 締 役 会 と 非 公 開 会 社 の 取 締 役 会 と は そ の 性 質 を 異 に し , 株 主 総 会 が 果 た せ る モ ニ タ リ ン グ 機 能 の レ ベ ル が 異 な る た め , 本 決 定 の ②― 1,②― 2の 理 由 付 け が 公 開 会 社 に も 当 て は ま る と は 限 ら な い こ と 等 を 理 由 と し , 本 決 定 の 射 程 が 公 開 会 社 に は 及 ば な い と す る 見 解 に 立 て ば , 公 開 会 社 に つ い て 異 な る 解 釈 が 妥 当 す る 余 地 が あ り う る 。 72 過 去 の 学 説 は , 特 に 公 開 会 社 か 否 か を 問 わ ず 議 論 さ れ て お り , 公 開 会 社 に つ い て の み 定 款 を も っ て 株 主 総 会 が 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を 有 す る 旨 を 定 め る こ と が で き な い と い う の は 立 法 論 と し て 主 張 さ れ て き た に す ぎ な い 。 上 柳 克 郎 ・ 鴻 常 夫 ほ か 編 [ 江 頭 憲 治 郎 ], 前 掲 註 68, 26 頁 参 照 。 73 鳥 山 恭 一 , 前 掲 註 67, 95 頁 参 照 。 74 村 上 康 司 「 本 件 判 批 」 愛 学 60 巻 1・ 2 号 ( 2019) 129 頁 参 照 。 75 弥 永 真 生 , 前 掲 註 55, 3 頁 参 照 。し か し な が ら , 取 締 役 会 決 議 で 代 表 取 締 役 を 選 定 ・ 解 職 で き る 限 り 取 締 役 会 が 監 督 権 限 を 実 効 的 に 行 使 で き る と 解 す る の で あ れ ば , 公 開 会 社 に も 当 て は ま る と す る の が 自 然 で あ る こ と や76, ② ― 1, ②― 2 の 理 由 付 け は , 他 の 取 締 役 会 設 置 会 社 に も 当 て は ま る と 読 め る こ と77,株 主 が 定 め た 定 款 の ア レ ン ジ メ ン ト で あ る 以 上 , そ の ア レ ン ジ メ ン ト を 広 く 認 め る べ き で あ り 株 主 の 希 望 を 超 え て ま で 規 制 す る 必 要 は な い こ と 等 を 踏 ま え , 本 決 定 の 射 程 が 公 開 会 社 に も 及 ぶ と 考 え て 問 題 は な い と 思 わ れ る 。 さ ら に , 監 査 役 会 設 置 会 社 , 監 査 等 委 員 会 設 置 会 社 , 指 名 委 員 会 等 設 置 会 社 で あ る 場 合 , 本 決 定 の 射 程 は 及 ぶ だ ろ う か 。 ②― 1,②― 2の 理 由 付 け は ,他 の 取 締 役 会 設 置 会 社 に も 当 て は ま る と す れ ば ,射 程 が 及 ぶ と 解 す る こ と が で き る 一 方 , 文 言 上 「 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る 非 公 開 会 社 」 に 限 定 さ れ て い る こ と や , 上 記 会 社 が 取 締 役 会 に よ る 業 務 執 行 者 の 監 督 が 必 要 ・ 有 益 と 考 え ら れ て い る 会 社 で あ り , 株 主 総 会 の 監 督 に は 一 定 の 限 界 が あ る こ と78を 踏 ま え れ ば , 射 程 は 及 ば な い と 解 す る こ と が で き る よ う に 思 わ れ る 。 た し か に ②― 1,②― 2の 理 由 付 け は 他 の 取 締 役 会 設 置 会 社 に も 当 て は ま る よ う に も 思 わ れ る が ,上 記 会 社 が 監 督 権 限 に 特 化 さ せ た 仕 組 み を も つ 以 上 ,監 査 役 会 設 置 会 社 , 監 査 等 委 員 会 設 置 会 社 , 指 名 委 員 会 等 設 置 会 社 に は 本 決 定 の 射 程 は 及 ば ず , 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と は 認 め ら れ な い と す べ き で あ ろ う 。 ⒉ 代 表 取 締役 の 「 解職 」 に も 当 ては ま る か 本 決 定 は , 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 「 定 め る 」 こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め の 効 力 を 認 め た も の で あ る が , 本 決 定 の 射 程 は , 代 表 取 締 役 の 選 定 の み な ら ず 「 解 職 」 に も 及 ぶ だ ろ う か 。 契 約 の パ タ ー ン は 複 数 考 え ら れ る た め79,一 律 に 選 定・解 職 を 一 括 り に 考 慮 す る 必 要 は な く ,そ の 理 由 付 け が 求 め ら れ る 。 こ れ は , 後 述 の 五 ⒊ も 同 様 で あ る 。 特 定 の 業 務 執 行 行 為 で は な く , 会 社 代 表 者 の 地 位 を 巡 っ て 会 社 の 利 害 関 係 者 に 76 弥 永 真 生 , 前 掲 註 55, 3 頁 参 照 。 77 大 塚 和 成 , 前 掲 註 19, 68 頁 参 照 。 78 大 杉 謙 一 「 本 件 判 批 」 リ マ ー ク ス [56]< 2018[上 ][平 成 29 年 度 判 例 評 論 ]> ( 法 時 別 冊 )( 2018) 93 頁 参 照 。 79 単 純 な 例 に 絞 れ ば , 取 締 役 会 に 選 定 ・ 解 職 権 限 を 残 す , ど ち ら も 残 さ な い , 選 定 権 限 だ け を 残 す , 解 職 権 限 だ け を 残 す 計 4 パ タ ー ン に 加 え , そ れ を 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め に す る か 又 は 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め に す る か の 選 択 肢 ( = 8 通 り ) が あ る と 考 え ら れ る 。
対 し て 不 確 実 性 を 高 め る よ う な 解 釈 を あ え て 採 用 す る 必 要 性 が ど こ ま で あ る か 疑 問 で あ る こ と や80, 解 職 権 限 の 意 義 は 大 き く , 選 定 と は 異 な っ て 考 え る 余 地 が あ る こ と81等 を 理 由 と す れ ば ,本 決 定 の 射 程 が 代 表 取 締 役 の「 解 職 」に も 及 ば な い と す る 見 解 が あ る 。 一 方 , 監 督 の 実 効 性 確 保 を 強 調 す れ ば 選 定 ・ 解 職 は 切 っ て も 切 れ な い 関 係 に あ る こ と を 理 由 に , 本 決 定 の 射 程 が 代 表 取 締 役 の 「 解 職 」 に も 及 ぶ と す る 見 解 も あ る82。 取 締 役 に よ る 代 表 取 締 役 へ の 監 視 の 理 由 は , 取 締 役 が 代 表 取 締 役 を 選 定 し た か ら で は な く 株 主 総 会 か ら 取 締 役 と し て 選 任 さ れ た か ら に 過 ぎ な い た め , 理 論 上 , 選 定 ・ 解 職 は 分 離 可 能 で あ る よ う に 思 わ れ る 。 し か し な が ら , 本 決 定 の 理 由 付 け が 「 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 『 定 め る 』こ と が で き る と し て も 」に 続 き「『 代 表 取 締 役 の 選 定 及 び 解 職 』に 関 す る 取 締 役 会 の 権 限 が 否 定 さ れ る も の で は な 」 い ( 単 な る 「 代 表 取 締 役 の 選 定 」 で は な い ) と い う 文 言 を 用 い て い る こ と を 考 慮 す る と , 本 決 定 は , 解 職 を も 想 定 し て い る と 解 さ れ る よ う に 思 わ れ る 。 と は い え , 株 主 総 会 は , 取 締 役 の 解 任 権 を 有 す る 以 上 , 代 表 取 締 役 の 解 職 は で き な い も の の 取 締 役 の 解 任 を 行 う こ と が で き る 。 代 表 取 締 役 を 取 締 役 会 に 残 し た い が 代 表 取 締 役 は 辞 め さ せ た い と い う 状 況 が 無 い と は 言 い 切 れ な い も の の , 特 に 本 件 の よ う な 閉 鎖 会 社 で は , 株 主 総 会 が 代 表 取 締 役 の 解 職 権 を も つ 実 利 は 小 さ い と 思 わ れ る 。 ⒊ 権 限 専 属型 の 定 款の 定 め は 認 めら れ る か 本 決 定 は , 権 限 重 複 型 の 定 款 の 定 め , す な わ ち 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て も 代 表 取 締 役 を 定 め る こ と が で き る 旨 の 定 款 の 定 め の 効 力 を 認 め る と 判 示 し た が , 本 決 定 の 射 程 は , 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め に も 及 ぶ だ ろ う か 。 取 締 役 会 の 権 限 を 奪 っ て い な い こ と は , 監 督 権 限 の 実 効 性 を 失 わ せ な い 一 場 面 に 過 ぎ な い と 理 解 し う る し , 非 公 開 会 社 に お け る 権 限 分 配 に つ い て , 柔 軟 に 定 款 自 治 を 認 め て い る と 解 す れ ば , 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め を 認 め る と 解 す る こ と が 可 能 で あ る よ う に 思 わ れ る83。こ の と き ,四 で 検 討 し た「 取 締 役 会 の 決 議 に よ る ほ 80 若 林 泰 伸 , 前 掲 註 37, 47 頁 参 照 。 81 高 橋 聖 子 , 前 掲 註 25, 64 頁 参 照 。 82 企 業 法 実 務 研 究 会 ( 編 ・ 品 川 仁 美 )「 本 件 判 批 」 月 刊 税 務 事 例 50 巻 8 号 ( 2018) 102-103 頁 参 照 。 83 松 中 学 , 前 掲 註 62, 164 頁 参 照 。
か 株 主 総 会 の 決 議 に よ っ て『 も 』代 表 取 締 役 の 選 定・解 職 が で き る と し て も 」は , 強 調 の 「 も 」 と し て 解 さ れ る 。 一 方 , 本 決 定 理 由 付 け が 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 が 取 締 役 会 に あ る こ と を 前 提 と し て い る こ と や84, 348 条 1 項 と 異 な り 「 定 款 に 別 段 の 定 め が あ る 場 合 を 除 き 」と の 記 載 が な い こ と85,会 社 法 の 立 案 担 当 者 も ,定 款 自 治 が 認 め ら れ る 範 囲 を 明 確 化 し そ れ 以 外 の 規 定 は 強 行 法 規 で あ る と 説 明 し て お り86,こ れ が 会 社 法 362 条 2 項 3 号 に も 当 て は ま る と す る と ,権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め は 強 行 法 規 に 反 す る こ と87等 を 踏 ま え れ ば ,権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め は 認 め ら れ な い と 考 え ら れ る 。 こ の と き , 四 で の 検 討 は , 並 立 の 「 も 」 と し て 解 さ れ る 。 ま た , 取 締 役 に は 差 止 権 限 が な い 以 上 , 取 締 役 会 に 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 の な い 状 況 下 で 本 決 定 の 「 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 実 効 性 」 が ど こ ま で 確 保 さ れ る の か は , 曖 昧 で あ る よ う に 思 わ れ る 。 加 え て , 株 主 総 会 が 会 社 を 支 配 し て い た と し て も ,取 締 役 は 債 権 者 に 責 任 を 負 う こ と が あ る( 会 社 法 429 条 )。会 社 法 429 条 が 第 三 者 保 護 の 規 定 だ と す れ ば , 仮 に 権 限 専 属 型 の 定 款 を 定 め 取 締 役 会 に 十 分 な 実 効 性 が な か っ た88か ら と 言 っ て 会 社 法 429 条 の 相 当 因 果 関 係 を 否 定 す る の は 不 合 理 で あ る か ら , や は り 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め は 認 め ら れ な い よ う に 思 わ れ る 。 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め を 認 め た 場 合 , 形 式 上 は 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る が , 実 質 は も は や 取 締 役 会 設 置 会 社 で は な く 非 取 締 役 会 設 置 会 社 で あ る と み な す 余 地 が あ る だ ろ う 。 本 決 定 の 「 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 実 効 性 」 を 強 調 し , 本 決 定 が , 取 締 役 会 設 置 会 社 の 本 質 を 取 締 役 会 が 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 を も つ こ と に 見 て い る と 考 え る の で あ れ ば , 権 限 専 属 型 の 定 款 を 定 め た 会 社 は , 非 取 締 役 会 設 置 会 社 の 扱 い を 受 け う る と 考 え ら れ る 。 な お , 以 上 の 五 ⒊ の 議 論 は , 非 公 開 会 社 の み な ら ず 公 開 会 社 に も 及 ぶ と 思 わ れ る 。 代 表 取 締 役 の 選 定 ・ 解 職 権 限 が 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 一 定 の 重 要 な 割 合 を 占 め て い る こ と に 鑑 み れ ば ,本 決 定 が ②― 2の「 取 締 役 会 の 監 督 権 限 の 実 効 性 が 失 わ れ な い こ と 」 を 実 質 的 理 由 と し て 挙 げ て い る こ と は , 定 款 自 治 の 内 在 的 制 約 が 公 開 会 社 の み な ら ず 非 公 開 会 社 に も 及 ぶ こ と を 示 唆 し , 権 限 専 属 型 の 定 款 の 定 め を 84 鳥 山 恭 一 , 前 掲 註 67, 95 頁 参 照 。 85 高 橋 聖 子 , 前 掲 註 25, 62 頁 参 照 。 86 相 澤 哲 ・ 那 谷 大 輔 「 会 社 法 制 の 現 代 化 に 伴 う 実 質 改 正 の 概 要 と 基 本 的 な 考 え 方 」 商 事 1737 号 ( 2005) 16 頁 参 照 。 87 若 林 泰 伸 , 前 掲 註 37, 47 頁 参 照 。 88 取 締 役 に で き る こ と は 取 締 役 会 議 事 録 に 異 議 を 唱 え た 旨 の 記 載 を 残 す こ と く ら い で あ り , 十 分 な モ ニ タ リ ン グ ・ ボ ー ド と は 言 い 難 い だ ろ う 。