現代不当利得法の研究
著者
山田 幸二
号
28
発行年
1985
轄
山
学 位 の 種 類 学 位 言己 番 与 . 学 位 授 与 年 月 日 学 位 授 与 の 要 件 だ田
6
幸
じ一 法 学 博 士 法 第28号 昭和61年3月7日 学 位 規 則 第5条 第2項 該 当 学 位 論)ζ 題 目 論 文 審 査 委 員 .現代 不 当利 得 法 の研 究 (主査) 教授 鈴 木 禄 彌 教授 廣 中 俊 雄 教 授 幾 代 通論
文
内
容
の
要
旨
1.本 論 文 の 構 成 は、 以 下 の ご と くで あ る。 1序 H不 当 利 得 制 度 の 基 礎 理 解 を め ぐる論 争 皿 不 当利 得 成 立 の要 件(要 件 論) -占 9 μ Q U 4 凸 5 6 は じめ に 利 得 の 方 法 につ いて 1「その 者 の 損 失 に お いて 」 の メ ル ク マ ー ル を め ぐ って(学 説) 「法 律 上 の 原 因 な しに」 の メ ル クマ ー ル を め ぐ って(学 説) 「その 者 の 損 失 に お いて 」 及 び 「法律 上 の 原 因 な しに」 の メ ル ク マ ー ル に関 す る判 例 の態 度 以 上 の要 約 と展 望 IV不 当利 得 の効 果(効 果 論) 1不 当利 得 責 任 の変 遷 概 観 2ド イ ッ民 法 典 編 纂 過 程 に お け る818条3項 法123818条3項 を め .ぐる判例の状況 4818条3項 を め .ぐる学説の展開 5以 上 の要 約 と展 望 V補 論 1ヴ ィル ブ ル ク及 びv.ヶ メ ラー の各 論 文 が 公刊 され る以 前 と以 後 の 不 当 利 得 の 学 問 状 況 につ いて . 2差 額 説 の 要 点 3日 ・独 の 不 当 利 得 に関 す る問 題 状 況 2.今 日、 わ が 囲 で も、 不 当利 得 法 の再 構 成 が試 み ちれ 、 ドイ ツ にお け る不 当 利 得 類 聖 論 が あ る程 度 紹 介 され て い るが 、 本 論 文 提 出者 は、 それ を不 十 分 と して 、 今 日の ドイ ツ.にお け る不 当 利 得 論 の 展 開 を で き る だ け客 観 的 か つ詳 細 に フ ォ ロ「 しよ う と して い る。・ ドイ ツ にお い て は、 か つ て は、 不 当利 得 制 度 を統 一 的原 理 に も とつ い て基 礎 づ け よ う と す る立 場 が 支 配 的 で あ っ たが 、 今 日で は、 不 当利 得 を類 型化 し、 各 類 型 に応 じて そ の要 件 効 果 を 論 じよ う とす る立 場 が 、 通 説 と な って い る。 本 論 文 に お い て は 、以 上 の1及 びIIに お け る簡 単 な導 入 部 につ づ いて 、 皿の 要 件 論 とIVの 効 果 論 とに つ い て の諸 学 説 の紹 介 と解 説 が 、 それ ぞ れ ほぼ なか ば つ つ の 分 量 を 占 めて い る。 3.「 法 律 上 の原 因 な しに他 人 の 給 付 ま た は そ の他 の方 法 に よ りそ の者 の損 失 に お い て何 か を 取 得 した 者 は 、 そ れ を返 還 す る義 務 を 負 う」 とい う ドイ ツ民 法812条1項1文 の 文理 か ら い って 、 ドイ ツで は、 不 当 利 得 に 「給 付 に よ る」 場 合 と 「そ の他 の方 法 に よ る 」場 合 と が あ る、 と され て い る こ と は、 明 らか で あ る。 しか し、 他 面 、 同 じ く同条 文 の 文理 か ら、 不 当 利 得 の 成 立 の た め に は 、 「他 人 の 損 失 に お いて 」 と 「法 律 上 の原 因 な しに 」 との二 つ の 要件 の も とに 利 得 が 生 じた こ とを 要 す る と され て い る こ と もま た 、 明 白で 毒 る。 ドイ ッ民 法 の 立 法 者 は 、・多 様 な不 当 利 得 現 象 が 、 この統 一 的 な 諸要 件 に よ って統 括 され る と考 え て いた レ、 その 後 の 学 説?判 例 も ほ ぼ それ に したが って きた ので あ る。 す な わ ち 、 旧 時 の 通 説 に よ れ ば、 「他 人 の 損 失 に お いて 」 と い う要 件 は 、 損 失者 と利 得 者 との あ い だ で 「直 接 的 に財 産 が 移 転 す る ことユ な い し 「単 一 の 利 得 現 象 の存 在 」 を意 味 し、 この要 件 は 、 給 付 不 当 利 得 と その 他 の 方 法 に よ る不 当利 得 と に共 通 に要 求 され て い る と考 え られ 、 ま た 、・「法 律 上 の 原 因 な しに上 と い う要 件 も、・す べ て の不 当利 得 に共 通 に要 求 され る と、 考 え られ て きた 。・ しか し・1930年 代 以 降 ・.ヴ ィル ブル ク・ ケメ ラー等 のいわゆ る類型論者 は・給付不 当利
得 とそ の他 の方 法 に よ る不 当利 得 とを異 質 な もの と して 類 別 し、 その それ ぞ れ につ いて 、 別 個 の要 件 論 を 展 開 して い っ た ので あ る。 す なわ ち、 給 付 不 当利 得 で は 、給 付 者 ・給付 受 領 者 間 に お いて 当該 給 付 を正 当化 す る法 律 関 係 の 存 在 が 前 提 と され て い た が、 の ち に この 関 係 の 不 存 在 が 判 明 す る か そ れ が廃 棄 され る に至 っ た とき に 、 「法 律 上 の 原 因 な し」 と さ れ 、す で に な され た 給 付 の返 還 が お こ なわ れ る。 これ に反 して 、 「給 付 に よ ら な い不 当 利 得 」 の 場 合 に は、 右 の よ う な基 礎 た る法律 関係 な しに 財 産 の 帰 属 状 態 に異 変 が 生 ず る と、 そ の こ と は、 法 的 に 保 護 さ れ た財 産 の 割 当 て 秩 序 の 違 反 を 意 味 す る か ら、 「法 律 上 の 原 因 な し」 と され 、 そ の 回 復 が 図 られ る、 と い うの で あ る。 これ を 要 す る に、 ドイ ツ民 法812 条1項1文 は 、 類 型 論 者 に いわ せ れ ば 、 給付 不 当 利 得 の 場 合 は、 「他 人 の給 付 に よ り何 か を 法律 上 の 原 因 な く取得 した者 は、 他 人 に対 し返 還 義 務 を 負 う」 旨 を、 ま た、 非 給 付 不 当 利 得 に つ い て は 、 「他 人 の損 失 に お いて 給 付 以 外 の方 法 によ り何 か を 法 律 上 の 原 因 な く取 得 した 者 は 、他 人 に対 し返 還 義 務 を 負 う」 旨を規 定 して い る と い うこ と に な る、 と い うわ け で あ る。 4.効 果 論 に つ いて は、 本 論 文 は、 ほ とん ど もっ ぱ ら、Aが 商 品 をBに 売 却 し、Bが 商 品 を 受 領 し、 か つ 代 金 を 支 払 った が 、や が て この 商 品 がBの 手 中で 滅 失 し、 そ の後 に 、 な ん ら か の理 由でAB間 の 売 買 が 無 効 で あ っ た こ とが 判 明 した場 合 に、Bは 、Aに 代 金 全額 の返 還 を請 求 し うるか 、 とい う設 問 に応 対 す る形 で 、 ドイ ツ諸 学 説 を紹 介 して い る。 まず 、 この 点 につ いて の ロー マ法 以 来 の処 理 お よ び ドイ ツ民 法 典 編 纂 時 の 事 情 に言 及 が な され る。 つ ぎ に 、不 当利 得 返 還 義務 は 「受 領 者 が も し利 得 して い な い とき は 、消 滅す る 」 と の ドイ ツ 民 法818条3項 の文 理 に した が え ば、 双 務 契 約 に も とづ き両 当事 者 の 給 付 が な され たの ちの 不 当 利 得 問題 に つ いて は、 いわ ゆ る二 請 求 権 対 立 説 が と られ ざ るを え な い。』 す なわ ち、AB両 者 と も給 付 され た もの の全 部 を 返 還 す る義 務 を負 う。 しか し、Aの 給付 した物 が 滅 失 した 以 上 、Bの 返 還 義務 は消 滅 し、Aの 代 金 全 額 返 還 義 務 のみ が存 続 す る こ と と な って 、 商 品 滅 失 の原 因 がABい ず れ の 責 に帰 す べ き もの で あ るか にか か わ らず 、 設 問 は肯 定 に 解 され る こ とと な るの で あ る。 民 法典 施行 後 の 学 説 中 に も、 以 上 の立 場 を 採 る もの が 少 な くは な か った。 しか し、 二 請 求 権対 立 説 の 導 出す る結 果 は妥 当 で な い こ とに な る場 合 が しば しば存 す る。 そ の た め 、 ライ ヒス ゲ リ ヒ トは、 いわ ゆ る差 額 説 の立 場 を と った 。 す な わ ち 、不 当 利 得 を 理 由 に一 方 の契 約 当事 者 が そ の給 付物 の返 還 を 請 求 した場 合 、 他 方 当事 者 の な した反 対 給 付 の 額 は当 然 に上 述 の不 当 利得 返 還 請 求額 か ら控 除 され る、 と した の で あ る。 この立 場 に よ る と、 利得 は、 両 当事 者 が 双方 的 に な した 給 付 の 価 値 の 差 額 の形 で捉 え られ る こ とに な 法14
り、 給 付 受 領 者Bは 、 そ の も とで 受 領 物 が 現 存 して い るか 否 か にか か わ らず 、 か れ は受 領 物 を 利 得 して い る もの と擬 制 され る。 した が って 、 この 受領 物 の 価 値 額 がBの 不 当 利 得 返 還 請 求 額 か ら控 除 され る こと に な り、 上 述 の設 問 は否 定 に解 され る こ とに な るの で あ る。 以 上 の 二 請求 権 対 立 説 と差 額 説 と の 差 は 、結 局 、 給付 物 の 滅 失 の 危 険 を 設 問 に お け るA Bの いず れ に帰 せ しめ る か の点 に あ り、後 説 もま た 具体 的 に 妥 当 で な い 結 果 を 生 ぜ しめ る 可 能性 が あ る。 それ ゆ え、 今 日 の有 力 説 は 、 当該 の事 態 を め ぐ って の 両 当事 者 の行 態 い か ん に よ って、 給 付 物 滅 失 の 危 険 が その いず れ か に課 せ られ る こ とに な る、 と解 して お り、 この立 場 は、 結 論 的 に は、 二 請 求 権 対 立 説 と差 額 説 と の い わ ば 中 間 に 立 つ 、 とい え る の で あ る。