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アフリカの障害と開発 -- 障害包摂的な開発へ (特集 TICAD VI の機会にアフリカ開発を考える)

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Academic year: 2021

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アフリカの障害と開発 -- 障害包摂的な開発へ (特

集 TICAD VI の機会にアフリカ開発を考える)

著者

森 壮也

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

253

ページ

14-15

発行年

2016-10

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002851

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アジ研ワールド・トレンド No.253(2016. 11)

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特 集

TICAD VI の機会に

アフリカ開発を考える

  一般に政治・社会的不安を抱え ているというイメージが強いアフ リカ諸国にも、ともすればそうし たことの原因である紛争や貧困の なかでさらに見逃されがちな人た ちがいる。そうした開発の世界で 「 脆 弱 な 人 た ち 」 と 呼 ば れ る な か に障害者がいる。図1は、アフリ カ諸国の政府発表の各国の障害者 比率のグラフであるが、障害者比 率が一%未満の国から、五%近く と な っ て い る 国 ま で 様 々 で あ る。 アフリカに限らないが、そもそも 障害者の実態が分かっていない。

  また、障害者については、二〇 一五年までの国連のミレニアム開 発 目 標( M D G s )、 そ し て 一 六 年からの持続可能な開発目標(S DGs)というグローバルな貧困 削減の取り組みのなかでも、各国 内での開発プロセスや貧困削減戦 略でも、意識的な取り組みが遅れ た。これについては、アフリカ各 地で取り組まれた、エイズやHI Vポジティブに関する啓蒙活動に も事例がある。たとえば、二〇一 六年七月に南アフリカのダーバン で開催された国際エイズ会議では、 障害に関するセッションが第二一 回目になってようやく設けられた。 そこでは、エイズ・HIVポジテ ィブ啓蒙キャンペーンが障害者に 届いていなかった問題が取り上げ ら れ た ⑴ 。 意 識 的 な 取 り 組 み が な かったために、非障害者の間では キャンペーンの成果があがってい た一方、障害者たちは取り残され てしまったのである。キャンペー ンが車イスの入れない場所で行わ れれば車イス利用者は情報を得ら れない。手話通訳がなければ、ろ う者には情報が届かない。点字の ない印刷文字だけのパンフでは盲 人たちは読むこともできない。こ うして取り残された障害者の間で、 むしろエイズやHIVポジティブ の比率が高まっていたという事実 が浮かび上がったのである。

  このような取り残しが起きない ことを目指し、国連の枠組みにお いては、障害者の権利条約(CR PD)と呼ばれる彼らの人権をそ れ以外の人たちと同等のものにし ていくための取り組みと併せての 包摂的な開発が目指されている。   サハラ以南のアフリカでは、こ のCRPDに署名以上の形で関わ った国が四九カ国中四三カ国、批

障害

開発

︱障害包摂的

開発

准まで済ませている国は三二カ国 あ る( 二 〇 一 六 年 七 月 二 七 日 現 在 )。 最 も 批 准 が 早 か っ た の が 二 〇〇七年三月のガボンであり、最 も新しい批准国は、一六年一月の コモロである。国際条約の力も借 りながら、各国は国内の障害当事 者の権利保障を目指すことで、障 害者を貧困者のなかの最後の貧困 者にしないための努力を行ってい る。これは、障害者もまた各国の 開発に貢献する主体とし、アフリ カで障害者を開発への関与から排 除しないための仕組みということ になる。

  障害者への福祉ではなく、彼ら の権利を保障するための障害者法 への取り組みも進みつつある。た とえば、ガーナの障害者法はCR P D 以 前 に 制 定 さ れ て い る た め、 改訂中である。ナイジェリアでも 障 害 者 法 の 審 議 が 遅 れ て い た が、 二〇一六年七月にようやく上院で 承認された。他にも同月、東アフ リカ立法会議(EALA)が域内 のCRPDにあたる二〇一五年東 アフリカ障害者法を採択するなど、 法制面で近年、急速に進展がみら れる。 06_特集.indd 14 16/09/22 13:11

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アジ研ワールド・トレンド No.253(2016. 11)

  このような一連の取り組みは近 年、開発研究のなかで「障害と開 発」と呼ばれ、地歩を築きはじめ ている。このアプローチをはじめ、 CRPDなど国際的な枠組みにお いては、障害を個人の責任や医療 の 問 題 と し て と ら え る 従 来 型 の 「 障 害 の 個 人・ 医 療 モ デ ル 」 で は なく、障害を社会の問題としてと らえる「障害の社会モデル」の観 点がベースとなっている。 この 「障 害の社会モデル」では、社会環境 の 改 善 に よ る 障 害 者 の 社 会 参 加、 ひいては開発への参加が障害者に とっても可能になる政策が探られ る。   「 障 害 と 開 発 」 の 地 域 的 な 取 り 組みでは、アジア太平洋地域の国 連アジア太平洋経済社会委員会に よる「アジア太平洋障害者の一〇 年」という取り組みがある。一九 九三~二〇〇二年の第一次一〇年 以来、現在の第三次の一〇年の取 り組みまで、世界でも先駆的な役 割を果たしている。これに倣って 一 九 九 九 ~ 二 〇 〇 九 年 に 最 初 の 「 ア フ リ カ 障 害 者 の 一 〇 年 」 の 取 り組みが企図されたが、 OAU (ア フリカ統一機構)/AU(アフリ カ連合)および加盟各国のオーナ ーシップの希薄さから、みるべき 成果を出せないまま失敗に終わっ た。その後、二〇一〇~一九年に 新しい一〇年が、紛争、HIV/ エイズ、有害な伝統的な慣行とい ったアフリカ固有の障害課題を具 体的に盛り込んで再スタートして いる。

  「 障 害 と 開 発 」 の ア ジ ア 地 域 で の政策や実践では、①障害当事者 団体と政府との協働、②自立生活 運動(IL)に代表される地域コ ミュニティ内での生活保障、③イ ンクルージョン(包摂)とエンパ ワメント(ツィントラック・アプ ローチ) 、が成果を挙げてきたが、 アフリカでも同じ処方箋で良いの だろうか。①については各国の当 事者団体の成熟度、②については 政府からの障害者への補助、③に ついては社会的コンセンサスが前 提になるが、アフリカではいずれ も無条件に前提とするには難しい。   加 え て ア フ リ カ の 場 合 、 課 題 が 多 い 。そ れ は 先 に 述 べ た 「 障 害 者 の 一 〇 年 」 の よ う な 地 域 的 取 り 組 み の 実 施 主 体 が ど こ か 、 H I V / エ イ ズ に つ い て 障 害 と の 距 離 を ど の よ う に 考 え る の か 、 ア ジ アで 成 功 し て い る C B R ( 地 域 に 根 ざ し た リ ハ ビ リ テ ーシ ョ ン ) の 成 功 事 例 が 少 な い 、 そ し て さ ら に ア ル ビ ノ ( 色 素 欠 乏 症 ) へ の 差 別 ・ 虐 待 問 題 、 と いう ア フ リ カ 特 有 の 問 題 が あ る 。既 存 の 東 南 ア ジ ア や 南 ア ジ ア で の 「 障 害 と 開 発 」 分 野 で の 知 見 は ア フ リ カ で は必 ず し も 有 効 と は い え ず 、検 証 す べ き 課 題 も 多 い 。

  T I C A D Ⅵ で、 こ う し た 問 題は果たしてきちんと議論された だろうか。障害関係者もアフリカ 開発の議論に参加できていただろ うか。アフリカの発展に障害を持 つ人たちを包摂するための具体的 な提言は出て来ただろうか。今後 の ア フ リ カ 地 域 の 発 展 の な か で、 障害者たちが取り残されるという 事態は防がないとならない。それ がSDGsでも再三強調されてい る包摂的な開発である。アジアで の経験から、いわゆるトリクルダ ウンのみへの期待では障害者の開 発参加は実現できないことも明ら かになっている。アフリカ全体が 発展していくためには、そこに住 むより多くの人たちを排除しない 開発が求められる所以である。 ( も り   そ う や / ア ジ ア 経 済 研 究 所   開発研究センター) 《注》 ⑴ "C on fe re nc e R ev ea ls La ck o f A cc es s f or H IV P os itiv e, D isa b-le d P eo ple ," SA B C , 2 1 Ju ly 20 16 (h ttp :// w w w .sa bc .co .za / ne w s/ a/ f83 c7 d0 04 d9 3c 83 d9 78 7 d7 4b b4 56 f3 7b /C on fe re nc e-re ve als -la ck -of -ac ce ss -fo r-H IV -p os it iv e,-d is ab le d -p eo p le - 20162107). 《参考文献》 ① 森壮也編『アフリカの「障害と 開 発 」』 ア ジ ア 経 済 研 究 所、 研 究双書№六二二、二〇一六年。 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 (%) (注)アフリカ諸国で国勢調査による障害者⽐率が得られている国を抽出。 (出所)WHO (2011) の Technical Appendix A より筆者作成。

図 1 アフリカ諸国の障害者⽐率

図 1 アフリカ諸国の障害者⽐率

参照

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