高齢がん患者の入院リハビリテーションの実態
─ 一施設における後方視的検討からの報告 ─
Current Status of Inpatient Rehabilitation for Elderly Cancer Patients:
A Single Institution-based Retrospective Study
関 淳子
1,2)平野 大輔
2,3)谷口 敬道
2,3)Astuko SEKI, OTR, MS1,2), Daisuke HIRANO, OTR, PhD2,3), Takamichi TANIGUCHI, OTR, PhD2,3)
1) Department of Rehabilitation, International University of Health and Welfare Atami Hospital: 13-1 Higashikaigancho,
Atami-shi, Shizuoka 413-0012, Japan TEL +81 557-81-9171 E-mail: [email protected]
2) Graduate School of Health and Welfare Sciences, International University of Health and Welfare
3) Department of Occupational Therapy, School of Health Sciences, International University of Health and Welfare
Rigakuryoho Kagaku 36(2): 203–211, 2021. Submitted Oct. 16, 2020. Accepted Nov. 17, 2020.
ABSTRACT: [Purpose] To clarify the current status of rehabilitation for elderly cancer patients admitted to the study
facility. [Participants and Methods] A total of 109 inpatients aged 65 or older, treated with oncology rehabilitation, were included to collect information mainly on primary lesions and the details of rehabilitation from their medical records. [Results] The rates of patients with primary lesions in the digestive and respiratory systems, those at the palliative care phase, and those living with other family members were high. They had received rehabilitation until immediately before discharge and 92% had maintained their physical/mental functions throughout hospitalization. As for the details of rehabilitation, more than 80% of all patients received gait and bed-to/from-wheelchair transfer trainings during physical therapy, range-of-motion and bed-to/from-wheelchair transfer trainings during occupational therapy, and eating, swallowing, and communication trainings during speech-language-hearing therapy. [Conclusion] In inpatient rehabilitation for elderly cancer patients, interventions to maintain their physical/mental functions throughout hospitalization, focusing on their lives after discharge, are required.
Key words: elderly, cancer, rehabilitation
要旨:〔目的〕当院入院中の高齢がん患者に対するリハビリテーションの実態を明らかにする.〔対象と方法〕がんリ ハビリテーションを受けた65歳以上の入院患者109名を対象に,診療記録から原発巣やリハビリテーション内容等 について抽出した.〔結果〕消化器と呼吸器の原発巣,緩和期,家族同居の患者が多く,退院直前までリハビリテーショ ンが行われ,92%の患者は入院時の機能が維持されていた.理学療法では歩行練習と起居移乗練習,作業療法では関 節可動域練習と起居移乗練習,言語聴覚療法では摂食嚥下練習とコミュニケーション練習が80%以上の患者に行わ れていた.〔結語〕高齢がん患者の入院リハビリテーションにおいては,入院時の機能の維持と退院後の生活を見据 えた介入が求められる. キーワード:高齢者,がん,リハビリテーション 1) 国際医療福祉大学熱海病院 リハビリテーション部:静岡県熱海市東海岸町13-1(〒413-0012)TEL 0557-81-9171 2) 国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 3) 国際医療福祉大学 保健医療学部 作業療法学科 受付日 2020 年 10 月 16 日 受理日 2020 年 11 月 17 日
I.はじめに
我が国における2018年総人口に占める65歳以上の 高齢者人口の割合である高齢化率は28%,75歳以上の 後期高齢者人口の割合である後期高齢化率は14%であ る1).筆者が勤務する急性期病院(以下,当院)が所在 する市では,2019年の高齢化率が47%,後期高齢化率 が26%であり,国内において高齢化が進行している地 域とされる2).そのため,当院においてリハビリテー ションを受ける患者は,65歳未満の患者と比べ65歳以 上の患者の割合が高い.当院は人口4万人弱の市に所在 する二次救急の急性期病院であり,地域がん診療病院に 指定されている.2010年度診療報酬改定において,が ん患者を対象にリハビリテーションを実施した際に算定 できる「がん患者リハビリテーション料」が保険収載さ れ,当院においても2016年9月よりがん患者を対象に 理学療法,作業療法,言語聴覚療法によるリハビリテー ションが開始された. がん患者は疼痛,移動 ・ セルフケアの問題,就労,筋 力低下等のがんの種類によらない一般的な問題および嚥 下障害,認知障害,リンパ浮腫,末梢神経炎,軟部組織 や骨切除後等のがんの種類による特別な問題を有する. これらに対して二次障害を予防し,運動機能や生活機能 の低下の予防 ・ 改善することがリハビリテーションの目 的とされる3).我が国においては,がん患者を対象とし たリハビリテーションを提供する機会は増えてきており, 2013年にがん患者を対象としたリハビリテーションを 推奨するガイドラインが日本リハビリテーション医学会 から刊行され4),2019年にはその第2版が刊行されて いる5). 2012年にがんと診断された患者のうち,65歳以上の 割合は全体の70%を6),2011年度から2013年度にが ん患者リハビリテーション料が算定された患者46549 人を対象とした調査では,65歳以上のがん患者の割合 は全体の66%を占めていた7).これらの報告から,我 が国におけるがん患者の割合が高齢者に多いことがわか る.高齢がん患者は合併症を有することが多く8),全身 状態が不良であること等により標準治療が適応とならな い場合があり,高齢者が対象となるような臨床研究は限 られているため,診療ガイドライン等で明確な判断基準 が示されていないのが現状であるとされる9).また,高 齢がん患者はがんが比較的進行した状態で診断される傾 向があり,余病や体力低下が潜在し,手術療法や化学療 法の施行割合が低く,高齢がん患者の死亡率の高さに結 び付いている可能性があると言われている6). 我が国のがん患者に対するリハビリテーションの実態 の全体像を概観するために,医学中央雑誌にて「(がん or腫瘍)and(リハビリテーションor理学療法or作業 療法or言語聴覚療法)and(実態調査)」とキーワード を入力し,原著論文を検索したところ179件確認され た(2020年9月1日時点).題目と抄録の内容を確認し, 特定の病期や原発巣に関する文献,特定の治療法に関す る文献を除くと,以下の4論文10-13)が確認された. 2006年から2010年にリハビリテーション科が介入した 入院がん患者143名を対象に処方診療科別疾患群の特 徴や動向等が示されている10).2010年に作業療法士が 所属しているがん拠点病院302施設の作業療法内容としてactivities of daily living(以下,ADL)指導・訓練
18%,関節可動域訓練18%,筋力増強訓練17%,精神・ 心理面へのケア13%,歩行訓練11%が上位に示されて いる11).2009年度から2011年度に一大学病院におい てがんと診断され作業療法が処方された入院患者82名 への作業療法の関わりとして,身体機能45%,高次脳 機能22%,ADL14%が上位に示されている12).2015 年に地域がん診療拠点病院において消化器内科・呼吸器 内科・血液内科・放射線治療科からのがん処方件数142 件からリハビリテーション内容として回復的・維持的・ 緩和的リハビリテーションを目的とすることが多いこと が示されている13). これらのように,がん患者に対するリハビリテーショ ンの実態調査については報告されてきているが,65歳 以上の高齢がん患者に限定した実態調査の結果は確認さ れないため,本研究では当院入院中の高齢がん患者に対 するリハビリテーションの実態を明らかにすることを目 的とした.高齢がん患者に対するリハビリテーションに ついて,患者の特徴やリハビリテーション内容等を整 理・検討することは,今後の我が国おいて増加していく ことが予測される高齢がん患者に対するリハビリテー ションの具体的な役割を検討する際の一助になると考え られる.
II.対象と方法
1.対象 対象は,当院において理学療法,作業療法,言語聴覚 療法によるがんリハビリテーションが開始された2016 年9月から2018年9月までの25ヵ月間にがん患者リ ハビリテーション料が算定された65歳以上の入院患者 127名とした.この期間内に複数回入院した患者と期間 中に治療目的が変化した患者18名を本調査対象から除 外し,109名を分析対象とした.複数回入院した患者は 治療目的や治療内容が各入院によって異なっていたため, 本対象から除外した.当院では放射線治療を行う施設が なく,放射線治療を行う際には,近隣のがん診療連携拠 点病院で行っている.当院では手術療法の前からリハビ リテーションに対して処方が出される場合がある.当院 のがんリハビリテーションに携わる職員は,理学療法士 3名,作業療法士2名,言語聴覚士2名であり,全員ががんのリハビリテーション研修会の受講を修了してい る.経験年数では10年目以上が1名,他6名は3~6 年目であり,年齢層では30代1名,20代6名である. 本研究は本学倫理審査委員会にて承認を得た後に行わ れた(承認番号:18-Io-183).なお,当院ホームページ において患者から得られた情報の活用については公開さ れている. 2.方法 電子カルテの診療記録から後方視的に患者情報を収集 して行った.収集した項目は,池知ら14,15)とHamaguchi ら16)の先行文献を基に,性別,年齢,原発巣,治療方法,
病期,入院時のperformance status(以下,PS),Stage
分類,TNM分類,入院期間,がんリハビリテーション 実施期間,入院からがんリハビリテーション実施までの 期間,がんリハビリテーション終了時から退院までの期 間,既往歴,入院時 ・ 退院時のFunctional Independence Measure(以下,FIM),家族の有無,退院先,リハビリ テーション実施職種,リハビリテーション処方目的,リ ハビリテーション内容,HOPE(患者からの将来への希 望・願い・望みと思われる発言)の23項目とした. 診療記録から収集した項目の内容について1名ずつ項 目別に整理した.性別,原発巣,治療方法,病期,PS, Stage分類,TNM分類,家族の有無,退院先,リハビ リテーション実施職種,リハビリテーション処方目的, リハビリテーション内容,家族の有無,転帰先,HOPE については項目ごとに記述統計を行った.治療方法につ いては,放射線療法を除く手術療法,対症療法(原発巣 に対する手術療法や化学療法を行っていない疼痛コント ロールや薬物療法等の治療),化学療法とした.手術療 法と化学療法を併用した症例は複数回入院されていたた め,対象から除外され,対症療法と化学療法を併用した 症例は,原発巣に対する治療としては化学療法のみが行 われていたため,化学療法の症例として算出した.病期 については,先行文献17)に基づき,予防期,回復期, 維持期,緩和期に分類した.回復期と維持期の両内容が 含まれ,手術後に腫瘍が残存した場合と原発巣を手術し たが,転移があった場合を回復期~維持期とし,維持期 と緩和期の両内容が含まれ,対症療法が行われていたが, 全身状態が安定し,リハビリテーション処方目的にて ADLの維持向上と身体機能の維持向上が求められてい た場合を維持期~緩和期とした.リハビリテーション処 方目的とリハビリテーション内容,HOPEについては類 似した内容からカテゴリー化したうえで記述統計を行っ た. 年齢,入院期間,がんリハビリテーション実施期間, 入院からがんリハビリテーション実施までの期間,がん リハビリテーション終了時から退院までの期間,既往歴, 入院時 ・ 退院時のFIMについて平均値を求めた.各職 種のリハビリテーション内容が入院時と退院時のFIM の得点差に与える影響を検討するために,重回帰分析を 有意水準p=0.05としてSPSS Statistics ver25(IBM社 製)を用いて行った.対象者の属性,病期別,リハビリ テーション実施職種別に見た対象者の特徴,病期別のリ ハビリテーション内容を見出した.これらの作業は量的 研究と質的研究の指導経験を複数持ち,対象となる施設 の臨床に直接関わっていない研究指導教員および副研究 指導教員を含む複数名で行った.
III.結 果
対象者の属性を表1に示す.対象の109名の属性は, 女性56名,男性53名,年齢77.9 ± 6.5歳(平均±標 準偏差)であり,大腸の原発巣が多く38名,次いで胃, 肺の順であった.治療方法としては手術療法が多く,次 いで対症療法であった. 病期では緩和期が多く,次いで回復期,予防期の順で あった.PSでは2と3が多く,次いで2-3であった. Stage分類では不明を除くとⅣが多かった.TNM分類 では原発巣ごとに分類基準が異なるため,多様な結果で あった. 入院期間は38.1 ± 31.5日,がんリハビリテーション 実施期間は27.1 ± 30.5日,入院からがんリハビリテー ション開始までの期間は8.2 ± 9.8日,がんリハビリ テーション終了から退院までの期間は2.8 ± 5.1日で あった.既往歴として記録されていた疾病の数は3.2 ± 2.2であった. 入院時と退院時のFIMが得られた患者98名のうち, 92%の患者(退院時のFIMが入院時に比べ改善した26 名,変化しなかった64名)は入院時の機能が維持され ていたが,8%の患者(低下した8名)は機能が低下し ていた.家族の有無については同居76名,独居31名 であった.退院先は自宅66名,死亡31名であった. 理学療法を受けた患者が108名,作業療法36名,言 語聴覚療法22名であった(複数選択).リハビリテー ション処方目的は特になしを含め10項目,リハビリ テーション内容は14項目,HOPEは3項目にカテゴリー 化された.リハビリテーション処方目的はADLの維持 向上が71名と多く,次いで身体機能の維持向上66名, 基本動作の維持向上35名,活動性の向上31名の順で あった(複数選択).リハビリテーション内容は歩行練 習が97名と多く,次いで起居移乗練習95名,関節可 動域練習87名,筋力増強練習80名,呼吸リハビリテー ション58名の順であった(複数選択).HOPEについ ては,診療記録に記載のあった35名のうち,ADLにつ いて18名,身体機能について12名,IADLについて9 名であった(複数選択). 病期別に見た対象者の特徴を表2に示す.対象の109名では,緩和期の患者が32名と最も多く,維持期~緩 和期と緩和期の患者の平均年齢は80歳を超えた.病期 の進行につれて,治療方法が手術療法から対症療法に移 行し,PSとStage分類が重く,FIMの点数が低くなり, 入院期間とがんリハビリテーション実施期間,入院から がんリハビリテーション開始までの期間が長くなる傾向 を示した.全ての病期において家族と同居されている患 者が多く,予防期から維持期では自宅退院,維持期~緩 和期と緩和期では死亡退院の割合が多くなる傾向を示し た. 表1 対象者の属性 対象 109(100) 性別 女性 男性 56(51) 53(49) 年齢(歳) 77.9 ± 6.5 原発巣 大腸 胃 肺 肝臓 肉腫 膵臓 乳房 胆嚢 食道 舌 不明 38(35) 18(17) 16(15) 8(7) 7(6) 6(6) 5(5) 2(2) 2(2) 1(1) 6(6) 治療方法 手術療法 対症療法 化学療法 61(56) 43(39) 5(5) 病期 予防期 回復期 回復期~維持期 維持期 維持期~緩和期 緩和期 24(22) 27(25) 12(11) 9(8) 5(5) 32(29) PS 1 1–2 2 2–3 3 3–4 4 10(9) 6(6) 30(28) 15(14) 30(28) 9(8) 9(8) Stage 分類 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 不明 15(14) 17(16) 17(16) 34(31) 26(24) TNM 分類 cT1N0M0 cT1bN0M0 cT2N0M0 cT3N0M0 cT3N1M0 T3N1M0 他(38 分類に1名ずつ) 不明 2(2) 2(2) 7(6) 7(6) 3(3) 2(2) 38(35) 48(44) 入院期間(日) 38.1 ± 31.5 がんリハビリテーション実施期間(日) 27.1 ± 30.5 入院からがんリハビリテーション開始までの期間(日) 8.2 ± 9.8 対象 109(100) がんリハビリテーション終了から退院までの期間(日) 2.8 ± 5.1 既往歴として記録されていた疾病の数 3.2 ± 2.2 FIM(点) 入院時 退院時 88.9 ± 25.6 90.2 ± 28.2 家族の有無 同居 独居 不明 76(70) 31(28) 2(2) 退院先 自宅 死亡 転院 施設 家族の家 66(61) 31(28) 7(6) 3(3) 2(2) リハビリテーション実施職種 (複数選択) 理学療法 作業療法 言語聴覚療法 108(99) 36(33) 22(20) リハビリテーション処方目的 (複数選択) ADL の維持向上 身体機能の維持向上 基本動作の維持向上 活動性の向上 全身調整 嚥下機能の向上 心理的サポート 筋力強化 認知機能の維持向上 特になし 71(65) 66(61) 35(32) 31(28) 12(11) 12(11) 9(8) 8(7) 1(1) 19(17) リハビリテーション内容 (複数選択) 歩行練習 起居移乗練習 関節可動域練習 筋力増強練習 呼吸リハビリテーション リラクゼーション ADL 練習 有酸素運動 全身調整 摂食嚥下練習 コミュニケーション練習 認知機能練習 制作活動 上肢機能練習 97(88) 95(86) 87(79) 80(73) 58(53) 37(37) 37(34) 29(26) 27(25) 27(25) 22(20) 11(10) 5(3) 5(3) HOPE (複数選択) ADL について 身体機能について IADL について 18(51) 12(34) 9(26) 名(%)または平均値 ± 標準偏差.PS:performance status, FIM:Functional Independence Measure,ADL:activities of daily living,IADL:instrumental activities of daily living.
表2 病期別に見た対象者の特徴 予防期 回復期 回復期~維持期 維持期 維持期~緩和期 緩和期 対象(名) 24 27 12 9 5 32 性別(%) 女性 男性 3367 5644 4258 7822 4060 5941 年齢(歳) 76.1 ± 5.7 77.3 ± 5.8 74.3 ± 6.6 77.1 ± 5.3 82.8 ± 8.8 80.8 ± 5.7 原発巣(%) 大腸 胃 肺 肝臓 肉腫 膵臓 乳房 胆嚢 食道 舌 不明 63 13 13 8 0 0 0 4 0 0 0 44 30 0 7 11 0 4 0 4 0 0 42 17 8 8 25 0 0 0 0 0 0 11 0 44 0 0 22 0 0 0 0 22 0 0 40 20 0 0 20 0 0 0 20 16 16 19 6 3 13 9 3 3 3 9 治療方法(%) 手術療法 対症療法 化学療法 96 0 4 93 7 0 92 0 8 11 67 22 0 80 20 3 97 0 PS(%) 1 1–2 2 2–3 3 3–4 4 17 0 54 4 21 0 4 15 15 41 11 19 0 0 0 17 8 50 17 8 0 11 0 22 11 33 11 11 0 0 0 20 20 40 20 3 0 9 9 44 16 19 Stage分類(%) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 不明 25 25 25 21 4 19 30 33 11 7 0 25 8 25 42 11 0 0 44 44 20 0 0 20 60 6 0 3 56 34 入院期間(日) 30.5 ± 19.0 32.0 ± 32.0 36.6 ± 16.6 49.9 ± 66.1 37.0 ± 9.9 46.2 ± 26.8 がんリハビリテーション実施期間(日) 24.2 ± 18.7 22.3 ± 31.0 23.3 ± 14.8 31.7 ± 66.1 25.4 ± 12.9 33.6 ± 26.1 入院からがんリハビリテーション開始までの期間(日) 4.5 ± 3.7 7.4 ± 6.8 9.5 ± 8.0 14.4 ± 23.8 10.0 ± 6.4 9.2 ± 8.1 がんリハビリテーション終了から退院までの期間(日) 1.8 ± 1.0 2.2 ± 2.1 3.8 ± 8.8 3.8 ± 5.6 1.6 ± 0.8 3.5 ± 6.6 既往歴として記録されていた疾病の数 3.0 ± 1.9 3.3 ± 2.1 2.5 ± 1.8 3.4 ± 1.9 2.6 ± 1.4 3.5 ± 2.7 FIM(点) 入院時 退院時 97.3 ± 24.594.6 ± 28.6 95.7 ± 17.896.9 ± 23.4 102.1 ± 16.193.0 ± 22.3 87.3 ± 29.795.8 ± 24.0 68.8 ± 29.472.8 ± 31.7 81.8 ± 27.877.3 ± 30.0 家族の有無(%) 同居 独居 不明 75 25 0 74 26 0 75 25 0 67 33 0 40 40 20 66 31 3 退院先(%) 自宅 死亡 転院 施設 家族の家 79 8 8 0 4 93 7 0 0 0 83 0 8 8 0 55 22 11 0 11 20 60 20 0 0 19 69 6 6 0 リハビリテーション実施職種 (複数選択,%) 理学療法作業療法 言語聴覚療法 100 17 21 100 19 7 100 33 33 100 67 33 100 20 0 97 50 25 リハビリテーション処方目的 (複数選択,%) ADL身体機能の維持向上の維持向上 基本動作の維持向上 活動性の向上 全身調整 嚥下機能の向上 心理的サポート 筋力強化 認知機能の維持向上 特になし 46 67 33 33 4 4 0 4 0 29 56 52 30 52 7 0 0 4 4 30 58 58 25 33 8 17 0 8 0 17 78 67 44 0 11 33 0 0 0 11 80 60 0 40 60 0 0 0 0 20 84 63 38 9 13 19 28 16 0 0 リハビリテーション内容 (複数選択,%) 歩行練習起居移乗練習 関節可動域練習 筋力増強練習 呼吸リハビリテーション リラクゼーション ADL練習 有酸素運動 全身調整 摂食嚥下練習 コミュニケーション練習 認知機能練習 制作活動 上肢機能練習 96 83 71 79 67 25 17 33 17 25 17 4 0 0 100 89 70 63 41 11 26 41 7 15 7 11 0 4 100 92 83 75 67 25 42 17 0 33 25 8 0 8 89 67 78 89 22 33 33 22 22 33 33 22 0 0 100 100 100 80 40 0 60 20 20 20 0 20 40 0 69 91 91 72 59 69 47 16 56 28 31 9 9 3 HOPE (複数選択,%) ADL身体機能についてについて IADLについて 75 25 0 50 33 33 67 33 17 0 50 50 33 0 67 50 43 21
平均値 ± 標準偏差.PS:performance status,FIM:Functional Independence Measure,ADL:activities of daily living,IADL:instrumental
理学療法では全ての病期でほぼ全員に介入し,作業療 法では維持期と緩和期の患者への介入が多かった.リハ ビリテーション処方目的では全ての病期においてADL の維持向上と身体機能の維持向上が多かった.リハビリ テーション内容においては全ての病期で歩行練習,起居 移乗練習,関節可動域練習,筋力増強練習が60%以上 の患者に行われ,リラクゼーションと全身調整は緩和期 で多く行われていた.病期の進行につれて有酸素運動の 割合が減り,ADL練習やコミュニケーション練習,制 作活動の割合が増える傾向を示した.HOPEについては, 予防期から維持期にかけてADLについて,維持期~緩 和期ではIADLについてが多かった. リハビリテーション実施職種別に見た対象者の特徴を 表3に示す.対象の109名において,理学療法実施者 が108名,次いで作業療法36名,言語聴覚療法22名 であった.原発巣は理学療法と言語聴覚療法では大腸と 胃,肺の順に多く,作業療法ではこれらに加え膵臓が多 かった.全職種ともに患者の病期が緩和期,StageがⅣ, PSが3,退院先が自宅あるいは死亡が多かった.理学 療法と言語聴覚療法の対象では手術療法が多く,作業療 法では対症療法が多かった.入院期間においては理学療 法の対象では38.3 ± 31.6日であったが,作業療法では 54.8 ± 44.5日,言語聴覚療法では56.0 ± 47.5日であっ た.がんリハビリテーション実施期間では理学療法の対 象が27.3 ± 30.6日,作業療法40.3 ± 45.3日,言語聴 覚療法41.9 ± 49.5日であった.理学療法はがんリハビ リテーション開始まで8.3 ± 9.9日であったが,作業療 法では12.1 ± 14.6日,言語聴覚士療法では11.0 ± 16.6日であった.入院時FIMは言語聴覚療法が71.5 ± 28.1点で低く,作業療法84.5 ± 24.1点,理学療法89.9 ± 25.6点であった.理学療法では歩行練習,起居移乗 練習,関節可動域練習,筋力増強練習,呼吸リハビリ テーションが半数以上の患者に行われ,作業療法ではこ れらのうち,呼吸リハビリテーションに代わりADL練 習が半数以上の患者に行われ,言語聴覚療法では摂食嚥 下練習,コミュニケーション練習が80%以上の患者に 行われていた. 病期別のリハビリテーション内容を表4に示す.理学 療法では全ての病期において歩行練習,起居移乗練習, 関節可動域練習,筋力増強練習,予防期と回復期~維持 期,緩和期において呼吸リハビリテーションが半数以上 の患者に行われていた.作業療法では全ての病期の全て の患者に対して関節可動域練習が行われ,全ての病期に おいて起居移乗練習,筋力増強練習, ADL練習が半数 以上の患者に対して行われていた.言語聴覚療法では情 報を得られた全ての病期において摂食嚥下練習とコミュ ニケーション練習が70%以上の患者に対して行われて いた. 入院時と退院時のFIMの得点差を従属変数として, 各職種のリハビリテーション内容を強制投入した結果, 重相関係数R=0.72,決定係数R2=0.52であり,F検 定の分散分析の結果,F=2.44,p=0.00であった.標 準化係数 β と各t検定の結果,理学療法によるADL練 習(β=0.29,p=0.01)と言語聴覚療法による関節可動 域練習(β=-0.62,p=0.00)が入院時と退院時のFIM の得点差に対して有意に説明された.他のリハビリテー ション内容からは入院時と退院時のFIMの得点差に対 して有意に説明されなかった.
IV.考 察
本研究において得られた高齢がん患者109名の原発 巣では大腸,胃,肝臓等の消化器と肺の呼吸器が多く, 治療方法では手術療法が多かった.病期では緩和期, PSでは2と3,Stage分類ではⅣの患者が多く,末期に 近い高齢がん患者の割合が多いことも示された.また, 家族と同居していた患者が多く,自宅退院が多いことも 当院の特徴である.高齢がん患者の入院リハビリテー ションの特徴としては,手術療法と化学療法の割合に比 べ予防期への介入が少ないことと,全職種が緩和期へ最 も介入していること,FIMを指標とした入院時の機能 が退院時に保たれていること,退院直前までリハビリ テーションが行われていたことが挙げられる.以上のこ とから,高齢がん患者の入院リハビリテーションにおい ては,緩和期の患者が多いなかで,入院時の機能の維持 と退院後の生活を見据えた介入が退院直前まで求められ る. 手術療法と化学療法は109名中66名に行われていた. しかし,予防期のリハビリテーションの対象は24名で あり,手術療法と化学療法を受けた患者の半数以上は各 治療前にリハビリテーションが開始されていないことが 示された.高齢がん患者は,合併症や体力低下が潜在し, 術後の廃用症候群等を起こしやすく,手術療法や化学療 法の施行頻度が低く,死亡率の高さに結びついている可 能性があると言われている8,9).そのため,周術期にリ ハビリテーションが行われることでこれらを防止できる 可能性がある.予防期のリハビリテーションの取り組み は,院内での連携や地域へのがんのリハビリテーション の普及といったシステム作りをより重要視する必要があ ると言われている18).当院では,月1回開催される勉 強会や年数回実施される院内研修会があるため,その場 において予防期のリハビリテーションの重要性を伝える ことで多職種に周知できる可能性がある. 理学療法,作業療法,言語聴覚療法の全ての職種にお いて,緩和期への介入が最も多く,どの職種においても 他の病期に比べ全身調整が多く行われていた.当院は高 齢化率が高い地域に所在するため,高齢の入院患者の割 合が多い.そのため,急性期病院にもかかわらず,地域表3 リハビリテーション実施職種別に見た対象者の特徴 理学療法 作業療法 言語聴覚療法 対象(名) 108 36 22 性別(%) 女性 男性 5248 6436 3664 年齢(歳) 77.9 ± 6.5 78.6 ± 6.9 80.9 ± 6.3 原発巣(%) 大腸 胃 肺 肝臓 肉腫 膵臓 乳房 胆嚢 食道 舌 不明 35 17 14 7 6 6 5 2 2 1 6 25 14 25 6 0 14 6 0 3 0 8 41 27 23 0 0 0 0 0 0 5 5 治療方法(%) 手術療法 対症療法 化学療法 56 39 5 36 56 8 50 41 9 病期(%) 予防期 回復期 回復期~維持期 維持期 維持期~緩和期 緩和期 22 25 11 8 5 29 11 14 11 17 3 44 23 9 18 14 0 36 PS(%) 1 1-2 2 2-3 3 3-4 4 9 6 28 14 28 7 8 8 0 19 17 33 8 14 5 0 5 23 27 23 18 Stage 分類(%) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 不明 14 16 16 31 23 11 3 17 50 19 18 9 18 36 18 入院期間(日) 38.3 ± 31.6 54.8 ± 44.5 56.0 ± 47.5 がんリハビリテーション実施期間(日) 27.3 ± 30.6 40.3 ± 45.3 41.9 ± 49.5 入院からがんリハビリテーション開始までの期間(日) 8.3 ± 9.9 12.1 ± 14.6 11.0 ± 16.6 がんリハビリテーション終了から退院までの期間(日) 2.8 ± 5.1 2.5 ± 5.3 3.0 ± 6.6 既往歴として記録されていた疾病の数 3.2 ± 2.2 3.8 ± 2.6 4.0 ± 1.9 FIM(点) 入院時 退院時 89.9 ± 25.690.7 ± 27.8 84.5 ± 24.184.1 ± 27.8 71.5 ± 28.165.6 ± 30.0 家族の有無(%) 同居 独居 不明 69 29 2 67 31 3 73 27 0 退院先(%) 自宅 死亡 転院 施設 家族の家 61 28 6 3 2 47 36 8 6 3 32 41 14 9 5 リハビリテーション内容 (複数選択,%) 歩行練習起居移乗練習 関節可動域練習 筋力増強練習 呼吸リハビリテーション リラクゼーション ADL 練習 有酸素運動 全身調整 摂食嚥下練習 コミュニケーション練習 認知機能練習 制作活動 上肢機能練習 90 82 79 70 54 23 14 27 14 1 1 0 3 0 56 97 100 78 0 36 64 0 31 19 14 6 8 8 9 14 5 0 27 45 9 0 18 100 82 9 0 0 HOPE (複数選択,%) ADL について身体機能について IADL について 50 35 26 53 27 27 63 25 25 平均値 ± 標準偏差.PS:performance status,FIM:Functional Independence Measure,ADL:activities of daily living,IADL:instrumental activities of daily living.
とから,病院で最期を迎える患者に対するリハビリテー ションのあり方を検討していく必要がある. 入院時と退院時のFIMの比較では入院時から改善し た例は26名,変化しなかった例は64名,低下した例 は8名であり,90名については入院時の機能を維持で 特性上,高齢がん患者のなかでも緩和期の患者が多かっ たことが推測される.また,がん患者を対象としたリハ ビリテーションでは,生命予後も予測しながら個々に 合った多様なリハビリテーションを実施していく必要が ある19).緩和期の死亡退院が半数以上を占めていたこ 表4 病期別のリハビリテーション内容 予防期 回復期 回復期~維持期 維持期 維持期~緩和期 緩和期 対象 24名 27名 12名 9名 5名 32名 理学療法 (複数選択,%) 対象歩行練習 24名 27名 12名 9名 5名 31名 起居移乗練習 関節可動域練習 筋力増強練習 呼吸リハビリテーション リラクゼーション ADL練習 有酸素運動 全身調整 摂食嚥下練習 コミュニケーション練習 認知機能練習 制作活動 上肢機能練習 96 83 71 79 67 21 8 33 13 0 0 0 0 0 100 85 67 63 41 7 11 41 4 0 0 0 0 0 100 83 83 75 67 25 25 17 0 0 0 0 0 0 89 56 67 67 22 0 0 22 0 0 0 0 0 0 100 100 100 80 40 0 40 20 20 20 0 0 20 0 71 84 94 68 61 48 16 16 32 0 3 0 6 0 作業療法 (複数選択,%) 対象歩行練習 4名 5名 4名 6名 1名 16名 起居移乗練習 関節可動域練習 筋力増強練習 呼吸リハビリテーション リラクゼーション ADL練習 有酸素運動 全身調整 摂食嚥下練習 コミュニケーション練習 認知機能練習 制作活動 上肢機能練習 75 100 100 75 0 0 50 0 25 50 0 25 0 0 60 100 100 80 0 20 80 0 20 60 0 0 0 20 75 100 100 75 0 25 50 0 0 0 0 0 0 25 67 100 100 83 0 17 50 0 33 0 17 17 0 0 100 100 100 100 0 0 100 0 0 0 0 0 100 0 38 94 100 75 0 63 69 0 44 13 25 0 13 6 言語聴覚療法 (複数選択,%) 対象歩行練習 5名 2名 4名 3名 0名 8名 起居移乗練習 関節可動域練習 筋力増強練習 呼吸リハビリテーション リラクゼーション ADL練習 有酸素運動 全身調整 摂食嚥下練習 コミュニケーション練習 認知機能練習 制作活動 上肢機能練習 20 20 0 0 0 40 0 0 0 100 80 0 0 0 0 0 50 0 50 50 0 0 0 100 100 0 0 0 0 0 0 0 25 0 25 0 0 100 75 25 0 0 0 0 0 0 33 100 0 0 0 100 100 33 0 0 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 13 25 0 0 38 50 13 0 50 100 75 0 0 0 ADL:activities of daily living.
引用文献 1) 内閣府:高齢社会白書—令和元年版—.日経印刷,東京, 2019,pp2-6. 2) 静岡県健康福祉部福祉長寿局長寿政策課:令和元年度静岡 県高齢者福祉行政の基礎調査—高齢化率の公表—.https:// www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-210/chouju/documents/31k-oureikaritsu.pdf(閲覧日2020年3月10日). 3) 辻 哲也,里宇明元,木村彰男:癌のリハビリテーション, 第1版.金原出版,東京,2006. 4) 公益社団法人日本リハビリテーション医学会がんのリハビ リテーションガイドライン策定委員会:がんのリハビリテー ションガイドライン.金原出版,東京,2013. 5) 公益社団法人日本リハビリテーション医学会がんのリハビ リテーション診療ガイドライン改訂委員会:がんのリハビ リテーション診療ガイドライン,第2版.金原出版,東京, 2019. 6) 西本 寛:高齢がんの統計.Aging Health, 2016, 78: 10-13. 7) 宇田和晃,松居宏樹,百崎 良・他:わが国のがん患者リ ハビリテーションの現況—DPCデータベースを用いた集計—. 総合リハビリテーション,2016, 44: 1107-1114. 8) 野崎江里子,前野聡子,長島文夫・他:高齢がん患者のリ スクアセスメント—高齢者のがん治療に影響を及ぼす背景 因子—.癌と化学療法,2018, 45: 8-11. 9) 髙田明子:高齢者のがんにおける作業療法と今後の展望. 作業療法ジャーナル,2018, 54: 326-329. 10) 石井陽史,佐藤美穂,鶴間奈津子・他:当院における“が ん患者”に対するリハビリテーション介入実態に関する検討. 市立札幌病院医誌,2011, 70: 231-238. 11) 錦古里美和,路川実代子,立山清美・他:わが国におけ るがんに対する作業療法アンケート調査.J Rehabil Health Sci, 2011, 9: 19-25. 12) 平井良太,國友淳子,平田樹伸・他:埼玉医科大学総合医 療センターにおけるがん患者に対する作業療法の実態.埼 玉県包括的リハビリテーション研究会雑誌,2013, 13: 10-13. 13) 金橋知世,石井陽史,小山昭人:地域がん診療拠点病院で ある当院におけるがん患者リハビリテーションの現状と課題. 市立札幌病院医誌,2016, 75: 225-232. 14) 池知良昭,小野恭裕,本田 透・他:血液がん患者に対 する作業療法に関する後方視的検討.作業療法,2016, 35: 180-190. 15) 池知良昭,本田 透,小野恭裕・他:当院における血液が ん患者に対する作業療法の役割.総合リハビリテーション, 2016, 44: 239-243.
16) Hamaguchi T, Okamura H, Nakaya N, et al.: Survey of the current status of cancer rehabilitation in Japan. Disabil Reha-bil, 2008, 30: 559-564. 17) 辻 哲也:がんリハビリテーションマニュアル—周術期から 緩和ケアまで—.医学書院,東京,2011. 18) 相良亜木子,川上寿一,中馬孝容・他:がん診療連携拠点 病院からみるがんのリハビリテーションの課題.Jpn J Re-habil Med, 2012, 49: 313-320. 19) 宮越浩一:急性期病院におけるがんのリハビリテーション の現状と今後の課題. Jpn J Rehabil Med, 2012, 49: 294-298. きていた.高齢がん患者は合併症を有することが多く8), 全身状態が不良であること9)等が示されるなか,機能 を維持すること自体が高齢がん患者のリハビリテーショ ンの効果の一つであったと考えられる.入院時と退院時 のFIMの得点差に対して,理学療法でのADL練習と言 語聴覚療法での関節可動域練習が影響を及ぼしているこ とが示された.これらのリハビリテーション内容が入院 時と退院時のFIMの得点差に影響を及ぼした理由を本 研究からは示すことはできないが,今後これらの項目を 含め,高齢がん患者の入院リハビリテーションのどのよ うな因子が入院時と退院時のFIMの得点差に与えるか について検討したい. 本研究とリハビリテーション内容が示された先行文 献11,12)では,対象患者の年齢層や原発巣,病期等,異 なる部分が複数あり,作業療法の内容に限られるため一 概に比較できないものの,本研究において作業療法では 関節可動域が100%,起居移乗が97%,筋力増強が 78%,ADLが64%,歩行が56%の患者に行われ,こ れらの傾向は先行文献11,12)と一致した.そのため,高 齢がん患者へのリハビリテーション内容は高齢というこ とで決められるものではないと示唆される.先行文 献11,12)では精神・心理面へのケアや高次脳機能に対す る作業療法の介入割合が高い.これは原発巣や患者の状 況や処方目的等も影響していると考えられる. 本調査の患者は家族と同居している割合が70%,退 院先が自宅の割合が61%,がんリハビリテーション終 了から退院までの期間は2.8 ± 5.1日であり,退院直前 までがんリハビリテーションが行われ,退院直前までリ ハビリテーションの職種が関わっていた.そのため,入 院中から退院後の生活,特に家族と同居している自宅に 戻る点を見据えた介入の必要性が示唆された.本調査の みでは具体的な退院後の生活を見据えた介入の内容まで は把握できなかったが,今後各事例を詳細に検討する必 要があると考えられる. 本結果から,リハビリテーション内容には職種間で重 複した内容が確認された.今後,職種間において複数の 職種で介入するべき内容と特定の職種で介入するべき内 容を再考していく必要がある.本研究は一施設での検討 であり,高齢がん患者の入院リハビリテーションのみを 調査しているため,他施設との比較等はできていない. 今後は,調査項目を加えながら他施設を含めた検討を行 う必要がある.また,患者本人に対して,どのようなリ ハビリテーションが効果的であったと感じたか等を聴取 することや,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が具 体的にどのようにリハビリテーションの目標や内容を設 定していたのかについてアンケートやインタビューを行 い,抽出していくことが求められる. 利益相反 本研究において開示すべき利益相反はない.