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数理科学的意思決定を意図する授業における教師の役割に関する一考察 -「社会科見学の経路決め」の授業を例に-

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1.研究の目的・方法 これからの算数教育では,数学の世界だけでは なく現実の世界からも問題を発見し,目的をもっ て数学的に問題を解決することができる力を育む ことが重要である.このことは,あらかじめ用意 されている唯一解を求めるだけでなく,納得解を 探求する力の育成を意味する.納得解の探求に は,問題場面に対して,各々の児童が抱く価値観 を明確にした上で,ある事柄がどうあるべきかに 関わる「価値命題」 を探求し,合意形成を図るこ とが求められる.西村ら(2016)は,このような プロセスを「数理科学的意思決定」と呼び,「意思 決定を要する現実世界の問題を数理科学的に定式 化し,処理を施し,結果を得る過程を り,複数 の選択肢を創出した上で,その中から,根拠を明 確にしながら合意形成を図り,何らかの決定を行 うこと」(p.21)と規定している. 鈴木・富樫(2016)は,小学生が社会的文脈の 問題において,判断の根拠となる「指標」を作り, それを用いて数理科学的意思決定をする様相を明 らかにした一方で,教師がどのような手立てを講 ずればよいのかを明らかにすることを課題として 挙げている. 上述したように,数理科学的意思決定力の育成 は重要であると考えるが,その授業を行う際,教 師は授業をどのように展開していけばよいのか, また,教師はどのような役割を担えばよいのかに ついては十分に明らかにされていない. 本研究の目的は,小学校において,数理科学的 意思決定を意図する授業を行う上での学習指導上 の示唆を導出することである.

数理科学的意思決定を意図する授業における教師の

役割に関する一考察

*

−「社会科見学の経路決め」の授業を例に−

石 川 大 輔

**

令和 年 月 日受付,令和 年 月 日決定 *令和 2 年 4 月20日受付,令和 2 年 5 月20日決定 荒川区立第一日暮里小学校 **荒川区立第一日暮里小学校

実 践 研 究

要 約

本研究の目的は,小学校において,数理科学的意思決定を意図する授業を行う上での学習指導上の示 唆を導出することである.本実践は,西日暮里駅から最高裁判所までの経路を考えるという問題場面の 理解と目的設定から始めた.そして,価値観をもとに情報(量的データ・質的データ)の収集と整理を 行い,経路を考えた.次に,数値情報を基に候補の経路を比較検討し,学級全体で価値観を整理した上 で,選択肢を創出した.その後,条件を表に整理したり数値化したりして選択肢の比較検討を行い,学 級全体で重視する価値観を考え,経路を決定した.このような授業過程におけるプロトコル,児童の解 決過程が記述されているワークシート,児童の学習感想を分析した.その結果,数理科学的意思決定を 意図する授業では,情報選択の理由を問うたり,目的に合ったよりよい選択肢は何かや多様な価値観の 中で何を重視するか,選択肢をどのように比べ決定するかを話し合わせたりするといった,見通しをもっ た教師の発問や指示の計画が必要であることが明らかとなった. キーワード:数理科学的意思決定,価値観,合意形成,選択肢の創出,指標

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この目的に対して,学校から社会科見学の行き 先である最高裁判所までの経路を考えるという教 材を開発し,授業を構想する.そして,授業を実 践し,この授業過程におけるプロトコル,児童の 解決過程が記述されているワークシート,児童の 学習感想を分析する. 2.本研究における教材とその授業構想 ⑴ 教材の開発の視点 教材を開発するに当たり,次の 3 点を重視して 検討を進めた. ① 日常事象の中でも,児童の身近である学校生 活に関連のある場面から問題を設定すること. ② 日常事象から問題発見をする過程において, 個々の多様な価値観を表出させ,その価値観を もとに問題を発見させたり,解決させたりして いくこと. ③ 表やグラフなどの既習の数学的手法だけでは なく,価値観を基に,設定した選択肢に対して 児童自ら数値化したり重み付けしたりする方法 なども扱うこと. ①,②については,児童の価値観が表出するよ うな場面をいかにつくり出すことができるかが を握る.島田(2017)は,算数・数学教育という 枠の中での価値観の意味を,「数学や社会に対し て子どもがどういう価値を認めるかという判断の 基準」(p.72)と規定している.児童の価値観が 最も出やすいのが,児童の身近である学校生活に 関する課題,つまり児童自身が当事者意識を持っ て積極的に関わりをもつことのできる課題である と考え,その課題の設定を重視した.また,その 際には,児童に当事者意識をもたせるために問題 をみんなで発見する過程を大切にする.そして, できるだけ児童が自由な発想で自らの価値観を表 出させ,その価値観に基づいて問題解決できるよ うな場面に当面させることを重視した. ③については,中学校,高等学校における問題 解決過程での質的な高まりを期待し,単に,既習 の知識・技能を活用するだけでなく,既習の手法 以外,例えば,収集したデータをレーダーチャー トなどで表したり,トレードオフやシミュレーショ ンなどを用いたりして,自ら数値化したり重み付 けしたりする活動を取り入れることを重視した. ⑵ 教材の概要 本教材では,最寄りの西日暮里駅から社会科見 学で行く最高裁判所までのよりよい経路を考えて いく.児童に提示する初めの問題は以下の通りで ある. 本教材の特徴は四つある. 一つ目は,学校生活における場面を扱っている 点である.具体的には,学校の最寄りの駅から社 会科見学の目的地までの経路を考えるという問題 場面を取り上げる.実際に社会科見学に行く児童 にとっては,必要感,切実感があるものとなって いる. 二つ目は,問題場面に対して,児童自らが価値 観を設定する点である.西日暮里駅から最高裁判 所までの電車の経路は多様であるため,児童は考 え得る経路を調べたり,様々な条件を考えたりし ながら経路を創出し納得できる経路を考える.そ の際,児童は,「より安く行きたい」といった経済 的な価値観や「周りの人に迷惑をかけず安全に行 きたい」などの社会的な価値観を働かせながら, 複数の選択肢を比較・検討して「よりよい」行き 方を考察していくと考えられる. 三つ目は,問題を解決するために児童自身が情 報を収集・整理し,考察する点である.よりよい行 き方を決定するには根拠が必要である.児童は根 拠をもって決定するために,資料を活用することが 予想される.例えば,「路線図」,「最高裁判所付近 の地図」,「運賃」,「時刻表」,「乗車時間や徒歩時 間」,「使用駅の乗降客数」,「駅の構内図」,「周辺 の写真」などが考えられる.児童は,これらの複数 の資料から取り出した質的データや量的データを もとに指標を作成して,よりよい経路を考える. 四つ目は,合意形成するために数学的な手法を 用いて考察する必要がある点である.先にも述べ たように,本教材では,実際に最高裁判所にいく 経路を決める必要がある.つまり,学級で合意形 成する必要がある.合意形成するためには,資料 から抽出した量的データや質的データを表にまと 西日暮里駅から社会科見学で行く最高裁判 所までの行き方を決めよう.

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めたり,項目ごとに重み付けして数値化したりし て整理・分析し,納得できる経路を考えていくこ とが必要となる. ⑶ 開発した教材を用いた授業の構想 まず,児童に「社会科見学で,西日暮里駅から 電車に乗って最高裁判所まで行きます.どのよう に行けばいいでしょうか.」と問う.資料として は,「最高裁判所の写真」と「路線図」,「最高裁判 所付近の地図」を提示する.児童は,これらの資 料をもとに最高裁判所への経路を考察し始める. 考察していくと,最高裁判所の経路は多様にある ことに気付き,路線図の路線の長さや乗り換えの 回数などに着目し,いくつかの候補を考え出すと 考えられる.その際,「より早く行きたい」,「より 安い運賃で行きたい」などの経路に対する価値観 をもつようになろう.その価値観のもと「何時ま でに最高裁判所に着けばいいのか」や「電車賃は 何円かかるのか」という疑問が表出されるととも に,経路決定に必要な「運賃」や「時刻表」,「乗 車時間や徒歩時間」,「使用駅の乗降客数」,「駅の 構内図」などの情報を要求すると考えられる.こ の段階で児童の問題は「最高裁判所までどのよう に行くか」というものから「最高裁判所までのよ りよい行き方はどのような行き方か」という問題 に変わる. 収集した情報をもとに,さらに,効率性や安全 性,公共性などにかかわる価値観のもと,「移動時 間を最短に」「徒歩の時間を短く」「運賃を安く」 「乗り換えを少なく」「迷惑をかけない」といった ような経路決定に関する前提を考える.そして, これらを組み合わせて,経路を考え,選択肢(価 値命題)を創出する.児童が創出すると考えられ る選択肢(価値命題)は,次の通りである. そして,それぞれの選択肢の長所や短所(リス ク)について検討する.短所(リスク)を基にした 検討では,それぞれ次のような意見が予想される. また,検討を重ねるうちに「安さ」「移動時間」 「楽さ」という長所や「迷うかもしれない」「遅れ るかもしれない」といった短所(リスク)を組み 合わせて決めるとよいといった考えが出ることも 予想される.そして,児童は資料から抽出した量 的データや質的データをもとに指標を作成し,表 にまとめたり項目ごとに重み付けして数値化した りして整理・分析し,納得できる経路を考えてい くと想定される. 最終的には,最も安くて,最も移動時間が短い 【選択肢 2 】の経路にするか,安くて,乗り換え がない分,迷わずに行けて,しかも国会議事堂を 見ながら歩いて行ける【選択肢 5 】の経路にする かにしぼられることが予想される.この段階で全 体に「学級のみんなが社会科見学に行く際に,ど 【選択肢 1 】 前提 1 :「乗り換えが少ない」「移動時間が最短」 「運賃が安い」 帰結 1 :西日暮里−大手町−半蔵門−最高裁判所 【選択肢 2 】 前提 2 :「乗り換えが少ない」「移動時間が最短」 「徒歩時間が最短」「運賃が安い」 帰結 2 :西日暮里−大手町−永田町−最高裁判所 【選択肢 3 】 前提 3 :「乗り換えが少ない」「徒歩時間が短い」 帰結 3 :西日暮里−有楽町−永田町−最高裁判所 【選択肢 4 】 前提 4 :「乗り換えが少ない」「移動時間が短い」 「混んでいない」 帰結 4 :西日暮里−駒込−永田町−最高裁判所 【選択肢 5 】 前提 5 :「乗り換えがない」「運賃が安い」「国会 議事堂周辺を見学できる」 帰結 5 :西日暮里−国会議事堂前−最高裁判所 選択肢 1 :「歩く時間が長い」「大手町が混んで いる」「遅れるかもしれない」「迷惑 がかかる」「迷うかもしれない」 選択肢 2 :「大手町が混んでいる」「迷惑がかか る」「迷うかもしれない」 選択肢 3 :「料金が高い」「大手町が混んでいる」 「遅れるかもしれない」「迷惑がかかる」 「迷うかもしれない」 選択肢 4 :「料金が高い」「迷惑がかかる」「迷う かもしれない」 選択肢 5 :「徒歩時間が長い」

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のようなことを大切にしなければいけないか」と 問う.そうすることで,児童は「どのような価値 観を大切にするのか,複数の項目の中で何を優先 するのか」ということを考えることになろう.そ して,納得解を創出するための重みづけがなされ た上で,学級全体で話し合い,合意形成していく. その後,学級で合意した経路で,最高裁判所まで 行き,実際に社会科見学を行う. また,社会科見学後の振り返りとして,経路の 考慮すべき条件をまとめ,来年度,社会科見学に 行く 5 年生に助言するという目的意識をもった活 動を行う.なお,この問題の解決過程で用いる「数 理科学的手法」は,問題を解決するために集めた 資料から質的データや量的データを収集すること, 各経路を項目ごとに整理するために表を用いるこ と,質的項目を数値化し,よりよい経路を判断する ための目安となる指標を作成することである. 3.授業の実際 ⑴ 授業対象・位置づけ・目標・日時 ○授業対象 都内公立小学校第 6 学年34名 〇授業の位置づけ 第 6 学年「場合の数」と「資料の調べ方」の活用 のトピックとする. 〇授業目標 自ら価値観を見いだし,よりよい経路とはどの ようなものかということを考え,多様な価値観に 着目してデータを収集し,表に整理したり数値化 したりして指標を作成し,価値観と指標をもとに 行き方を決定することができる. ○授業日時 第 1 時 平成30年11月30日(金)第 5 校時 第 2 時 平成30年12月 4 日(火)第 5 校時 第 3 時 平成30年12月 5 日(水)第 3 校時 ⑵ 授業の実際 児童が,選択肢を創出する際にどのように各自 の価値観を表出したり意識化したりするのかや, 異なる価値観に基づく選択肢に対してどのように 合意形成を図っていくのかを視点に分析する. 授業は,1 台のVTRによって記録された.以下 では,VTRの記録から作成されたプロトコルを基 に授業の実際を記述する.プロトコルの左側の数 字は,教師,児童の発話の番号を示し,Tは教師, 図1 路線図

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Cは児童,Csは多人数の児童が発話していること を示す.また,児童の名前は仮名である. ① 個の価値観と選択肢の創出の様相 【第 1 時 問題場面の理解と目的設定,及び考え 得る経路と情報の整理】 本実践の一つの特徴は,児童自身が問題場面に 対して価値観を見いだし,その価値観を基に目的 を設定し,解決に必要な資料を集め,数値情報から 選択肢を創出することを意図していることである. 第 1 時の導入では,西日暮里駅から最高裁判所 までの経路を自分たちで決めるという場面を提示 し,自力解決させた.配布した資料は,「最高裁判 所の写真」と「路線図」(図 1),「最高裁判所付近 の地図」である. そして,数名の児童が,経路が多様にあることに 気付いた時点で,児童同士で話し合う場を設けた. 児童は話し合う中で,「どのような行き方がよ いか」という問題意識をもち,西日暮里駅から最 高裁判所までの様々な経路を考え始めた.さら に,児童は,経路を決定するために何を重視する か,すなわち,価値観を表出し始めた.それは「料 金を安く」「移動時間(距離)を最短に」「楽しめ る景観」であった.それが表出している児童の発 話を図 2 に示す. 児童が「運賃」や「移動時間」などの価値観を もってどの経路がいいかを考え始めたので,いろい ろな経路があることを確認し,「よい行き方とは何 か」と問うた.すると,児童から「安い」「短い時 間」「景観」の他に「短い徒歩時間(道のり)」「混 雑さ」といった効率性や安全性の価値観も出され た.それが表出している児童の発話を図 3 に示す. その後,料金や移動時間等,考察に必要な情報 をもっとほしいという声があがった.それが表出 している児童の発話を図 4 に示す. そして,インターネットで収集した料金や時間 に関する情報(図 5)を提供した.すると,児童は 先に述べたような価値観をもって,図 5 のデータ をもとに,各自,よりよい経路を考察していった. 図2 初発の児童の価値観(抜粋) 図3 「よい行き方は何か」という発問から 導出された個人の価値観(抜粋) : C 99 <中略> <中略> 先生,最短ですか? : C 71 それとも一番安い運賃とか. : C 73 お金を,お金を使わない. : C 38 <中略> 下りる駅を桜田門にすれば,その後景色 を楽しみながら…. 地図に書いてないから分かんないな. : C 74 別にいいでしょ.あの,帰って来られれ ば.あの,9 時20分までに着けば. : C 72 だいたい50分以内に行けばいい. : C 84 お金とかかる時間. : C 85 最短.はい,Dさん. : T 65 …. : C 126 いい行き方. : C 122 例えば. : T 62 (略)いい行き方ってどんな行き方なの かな. : T 61 T 67 はい.Bさん. : T 64 安い. : C 123 最短. : C 125 : C 128 ごめん,ちょっと聞こえない. : T 66 8 時台だと,まだ,ちょっと通勤の人と かがいるから,大手町とか使うと,あの ぎゅうぎゅうで危ないから,そういう通 勤ラッシュの所…. : C 127 ああ,混雑.混雑さ.ぎゅうぎゅう詰め. 誰かが倒れちゃう. : はいはい.ちょっと,はいAさん. : T 63 安い. : C 124 誰かが倒れちゃう.大手町で誰かが迷子 になったりホームから落ちちゃったりする. えっ,どんな何がほしいの. : T 83 時間がわかるやつ. : C 156 時間がわかるやつがほしい. : C 155 なるほど.他にほしい資料はある? : T 85 どうして時間がわかる資料がほしいの. : T 84 安く行きたいから,かかるお金が分かる 資料が欲しい. : C 159 だって,時間までに着かないといけない じゃないですか. : C 157 早く着いたほうがいい. : C 158 図4 考察に必要な情報の要求と価値観 JR東日本】 ①西日暮里−駒込(2.4km) 70円(4 分) ②西日暮里−東京(6.3km) 80円(14分) ③西日暮里−有楽町(7.1km) 80円(16分) ④西日暮里−上野(2.7km) 70円(6 分) 東京メトロ】 ①西日暮里−大手町−永田町(10.3km) 100円(27分)

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授業の終末では,みんなで最高裁判所までより よい行き方で行こうという目的を再確認し,振り 返りとして,この時点で自分が最もよいと考えた 経路とその理由,及び考察に必要な情報をワーク シートに記述させた. 【第 2 時 選択肢(価値命題)の創出】 第 2 時では,まず,第 1 時に表出された価値観 を振り返り,第 1 時の終末で児童がワークシート に書いた次のア∼オの 5 経路を提示した. そして,第 1 時の終末で児童がワークシートに 書いた考察に必要な情報(図 6)をもとに,新たに 「駅別一日平均乗降者数ランキング(2017年度 JR,東京メトロ)」(図 7),「首都圏の鉄道混雑率 ランキング(国土交通,2017)」(図 8),「大手町駅 構内立体図」,「各最寄り駅から最高裁判所までの 徒歩経路図」(図 9),「平日の永田町 4 番出口写真」 を児童に配付した. ②西日暮里−大手町−半蔵門(9.3km) 100円(25分) ③西日暮里−国会議事堂前(8.9km) 100円(19分) ④駒込−永田町(8.4km) 100円(16分) ④大手町−赤坂見附(4.3km) 90円(10分) ⑤有楽町−桜田門(1.0km) 90円(1 分) ⑥上野−銀座国会議事堂前(6.6km) 100円(25分) 乗換】 ①大手町 7分 ②有楽町 11分 ③駒込 11分 ④上野 16分 徒歩】 ①永田町−最高裁判所 5分+5分 ②半蔵門−最高裁判所 10分+10分 ③国会議事堂前−最高裁判所 2 番出口なら15分 1 番出口なら20分 ④赤坂見附−最高裁判所 15分+5分 ⑤桜田門−最高裁判所 15分+5 分 1 .永田町駅 【地下鉄半蔵門線・有楽町線・南北線】 南門・西門まで徒歩約 5 分 (4 番出口から青山通りを三宅坂交差点 (東)方向へ,2 番出口も同程度) 2 .半蔵門駅【地下鉄半蔵門線】 西門・南門まで徒歩約10分 (1 番出口から半蔵門駅前通りを国立劇 場(南)方向へ) 3 .国会議事堂前駅 【地下鉄丸ノ内線・千代田線】 南門・西門まで徒歩約15分 (1 番出口から国会裏側の通りを国会 図書館(北)方向へ) 正門・東門まで徒歩約15分 (2 番出口から国会正面側の通りを国会 図書館(北)方向へ) 4 .その他 赤坂見附駅(地下鉄丸ノ内線・銀座線)や 桜田門駅(地下鉄有楽町線)からでも徒歩 約15分で到着できます。 ※正門・東門と南門・西門とは南側外周を徒歩 で約10分です。ただし、永田町駅から正門ま では約10分程度です。 図5 インターネットで収集した料金や時間に 関する情報 ・どれくらいの混み具合かのグラフ. ・最安値を調べる資料. ・駅から最高裁判所までの道のり,時間,事故 発生率など. ・大手町の混み具合が分かれば大手町を通るか 決められるから資料がほしい. ・平日の千代田線の写真. ・混み具合を示す資料がほしい. ・ 1 日や時間帯別の利用者数の表. ・ 8:30∼ 8:40あたりの各駅の人数. ・各駅の 7 時から 9 時までの写真. ・最高裁周辺の景色. ・混み具合の資料がほしい.駅の混み具合によ ってかかる時間が変わるから. ・混雑の有無が分かるもの. 図6 第1時の終末に児童が書いた考察に 必要な情報 経路ア 西日暮里−大手町−永田町−最高裁判所 経路イ 西日暮里−大手町−半蔵門−最高裁判所 経路ウ 西日暮里−国会議事堂−最高裁判所 経路エ 西日暮里−駒込−永田町−最高裁判所 経路オ 西日暮里−池袋−永田町−最高裁判所 駅別乗降者数ランキング JR(2017年度 一日平均) 3 位 東京 452549人 14位 有楽町 169943人

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その後,資料にある数値情報から,5 つの経路の うち,どの経路がよいかをグループごとに考察し た.児童は各経路のメリットやデメリットを考える ことを通して,それぞれの経路で重視されている 価値観を明確にし,問題場面に内在する数値情報 を用いて次のような観点の指標を作成していた. そして,各自が重要と考える指標に基づき経路 を調べた.その後,検討を重ねるうちに,図10に 示すような「安さ」「移動時間」「楽さ」を組み合 わせて決めるとよいという発言も生まれた.さら に,「迷うかもしれない」「遅れるかもしれない」 といったリスクも考慮して経路を決定する案も出 てきた. 40位 西日暮里 100917人 98位 駒込 48964人 東京メトロ(2017年度 一日平均) 2 位 大手町 338955人 10位 東京 211558人 16位 有楽町 174378人 17位 西日暮里 170756人 20位 国会議事堂前・溜池山王 150373人 25位 赤坂見附 127252人 47位 半蔵門 89961人 54位 永田町 82091人 92位 駒込 40095人 128位 桜田門 13114人 図7 駅別一日平均乗降者数ランキング (2017年度JR,東京メトロ) 首都圏の鉄道混雑率ランキング(国土交通,2017) 35位 東京メトロ南北線 駒込−本駒込 156% 39位 JR山手線 上野−御徒町 153% 図8 首都圏の鉄道混雑率ランキング (国土交通,2017) 図9 各最寄り駅から最高裁判所までの徒歩経路図 ・安い行き方(運賃を優先) ・早い行き方(移動時間を優先) ・疲れない行き方(徒歩時間を優先) ・リスクが少ない行き方(乗換回数を優先) ・迷惑がかからない行き方(乗降者数を優先) ・景色を楽しめる行き方(徒歩時の景観を優先 危険がない. : C 263 楽.危険がない.安全って事. : T 200 早く安く. : C 249 早く. : C 250 (略)例えば,じゃあさ,行き方アだっ たら,どう行きたかったらアなの. : T 190 C 260 歩かず. : C 253 えっとね,楽. : C 261 危険がない. : C 262 安く,歩かず. : C 251 歩かず,歩かずっていうのはどういう良 さがあるの. : T 194 : T 198 乗換えがない. : C 259 乗換えがない良さって何. : T 199 楽. : え,安くはほら,ウだって同じだから早 くじゃない. : C 252 早く安く,何. : T 193 景色が良い. : C 266 <中略> あと時間も結構短いんですよ,時間も. : C 272 疲れない. C 254 <中略> あ,ウか.ウは. <中略> 歩く楽しさ.まあ,満足さ,じゃあ行き 方エだと. : T208 <中略> 時間かかるし値段も高い. : C 285 あー,安全. : C 264 でも圧迫される. : C 265 : C 289 えっ,でも指示している人 5 人いるんで しょ. : T 212 <中略> 満足さ,早さ,えー,安さ,楽,安全,歩 く楽しさ.歩く満足さ. : C 276 長い,高い. : C 286 あまり歩かなくていい. : C 287 最悪だな. : C 288 えっ,でも全部の距離.

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そして,児童は先の 5 つの経路から,次のよう に 3 つの選択肢を創出した. 第 2 時の振り返りでは,図11のような児童の記 述も見られた. ② 指標作成と価値命題,納得解の創出における 児童の様相 【第 3 時 指標作成と納得解の創出】 第 3 時では,まず,第 2 時のCa,Cbなどの感想 (図11)を用いて前時の学習を振り返り,納得解 を求めること,前提によって帰結が変わること, また,その前提は価値観によって変わるので合意 形成をするには何を重視するかを全体でそろえる 必要があることをおさえた.その上で,第 2 時に おける児童Ccの考えをもとにした表を配布した (図12). 図12にあるように,児童が決定の根拠にした データは質的データと量的データが混在したもの であったが,個人,グループの解決を経て,児童 からは各項目を○△×で評価し,それを3 ,2 ,1 と数値化しその合計(経路アは15,経路ウは20, 経路エは13.5)を,行き方を決定するための指標 とする方法が提案された.多くの児童は,この方 法を「わかりやすい」「比べやすい」と評価したが, 中には「価値観が違うのだから,この数で計算し ていいのか」という意見もあった.また,「安さ」 に重きをおく数名の児童は経路アを選んでいた. そこで,安全性や公共性,効率性等の多様な価 値観のうち,何を最も重視するかについても話し 合った.その後、多数決をとった結果,最も重視 する価値観としては,安全(危険)が30名,迷惑 さが 1 名,安心が 1 名,安さが 1 名,無回答が 1 名であった. 以上のことを踏まえて,児童らは「安全で安心, そして迷惑がかからず安く行くことがよいから経 路ウで最高裁判所に行く」という行き方で合意形 成した. 実際に経路ウで最高裁判所に行き見学した.そ の後,決定した行き方と決定した過程を振り返る とともに,5 年生に伝える方法を考えた.図13は 見学後の振り返りの一部である. 4.考察 本授業では,問題発見及び解決の過程で,多様 図10 児童の価値観に基づく検討 いや,永田町に行ける位ですかね. : C 290 人の迷惑になりにくい. : C 291 駅が混んでない. : C 292 経路ア…早く,安く,疲れずに行ける. 経路ウ…早く,安く,楽で,危険がなく,よい景 色を見て行ける. 経路エ…あまり歩かず,迷惑をかけず行ける. ∼の場合は○.∼の場合は×という考え 方が大切だと思った. : Ca みんなが何を求めているのかが違うから ア,イ,ウ,エ,オと変わる.多分,みん なの価値観が違うからそろえることは無 理だ.もしそろえるなら,価値観をそろえ る,ようするに何を重視するかによる. : Cb (表にまとめ,比較し)私はウがいいと思う. : Cc 図11 第2時の児童の振り返り 図12 児童Ccの考えをもとに作成した表 項目をつくり表にして記号や数字で表す. : Cd 5 年生には感想や選び方などをあらかじめ 書き,話し合って,自己決定してほしい. : Ce ルートを全て出して,よさと悪さを書い て,今回使ったウについては詳しく書きた いです. : Ce 図13 見学後の児童の振り返り

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な価値観を顕在化しながら,よりよい行き方を決 めるための指標を作成し,合意形成することを意 図した.授業時の児童の様相から,小学校におい て,数理科学的意思決定を意図する授業を行う上 での学習指導に関して,次の示唆が得られた. 第一に,児童が解決に向けて必要と考える情報 を選択する際に,どうしてそう考えたのかを問う ことである. 第 1 時の導入で,「最高裁判所の写真」と「路線 図」,「最高裁判所付近の地図」といった数値情報 がない資料を配布し,価値観を明示せず「どのよ うに行くとよいか」と問うた.児童は,これらの 資料をもとに経路を調べ目的地まで多様な経路が あることに気が付いたが,その経路の正確な移動 距離や移動時間,混み具合や必要な運賃などは分 からなかった.その後,C38やC71,C73,C85, C99(図 2)のように,経路を決定するために何を 重視するか,すなわち価値観を表出し始めた児童 が見られた.そして,ある児童は運賃情報を欲し, またある児童は時間を知ることができる情報を欲 したのである.そこで,教師が「どうしてその資 料をほしいのか」と問うと,経済的に効率よく行 きたい児童は運賃情報を欲し,できるだけ早く行 きたい児童は時間に関する情報を欲していること がわかった. このことから,児童が必要としている情報選択 の理由を問うことにより,児童に,考えの背後にあ る価値観を意識化させることができると考える. 第二に,目的に合ったよりよい選択肢とは何か について話し合わせることである. 多様な経路があることを確認した後,児童に「い い行き方ってどんな行き方なのかな」と問うた. この発問から,C123,C125,C127,C128(図 3) のような,効率性や安全性,娯楽性に関わる価値 観を児童から導出することができた.そして,こ のような価値観を全体で共有すると,児童は,自 身の価値観をもって経路を決定するために必要な 情報を欲した.その後,それぞれの価値観をもと によりよい経路を決定すべく,児童は複数の資料 からデータを収集しそのデータを根拠にして 5 つ の選択肢を創出した. このことから,目的に合ったよりよい選択肢と は何かについて話し合わせることにより,児童は 個人では気が付かなかった新たな価値観やデータ をもとにした根拠に気付き,自分なりの選択肢を つくることができると考える. 第三に,創出された選択肢についてのメリット やデメリットを問い,多面的に考察させ,学級全 体でどのような価値観を重視するか,また,どの ように比べ決定するかということを話し合わせる ことである. 第 2 時に,資料にある数値情報から,5 つの経 路のうちどの経路がよいか,各経路のメリットや デメリットを考えさせた.すると,児童は,それ ぞれの経路で重視されている価値観を明確にし, 児童は問題場面に内在する数値情報を用いて様々 な指標を作成した.そして,終末,価値観をもと に 3 つの経路に絞りこんだ.しかし,Cbの振り返 り(図11)にもあるように,一つの経路を決定す ることは難しかった.そこで,第 3 時で,異なる 価値観からなる複数のデータを組み合わせて比べ る方法についても話し合わせた.考えのもとにし たのはCcの表である.Ccは問題を解決するため に集めた資料から質的データや量的データを収集 し,それらを,各経路の項目ごとに表に整理して いた.このCcの表をもとに図12の表を作成し,児 童に配布した.この表には,「移動時間」や「運賃」, 「徒歩時間」,「乗り換え回数」といった量的デー タと「迷惑度」や「景色のよさ」といった質的デー タが混在しているため,経路を比較することが難 しい.そこで,どのように比べるか話し合わせた ところ,児童からは各項目を○△×で評価し,そ れを 3 ,2 ,1 と数値化しその合計を,行き方を決 定するための指標とする方法が提案された.ま た,多様な価値観のうち,何を最も重視するかに ついても問い,最も重視する価値観について話し 合わせた.その結果,多くの児童が安全(危険) を重視していることが分かった.そして,児童は 「安全で安心,そして迷惑がかからず安く行くこ とがよいから経路ウで最高裁判所に行く」という ことで合意形成した. このことから,創出された選択肢についてのメ リットやデメリットを問い,多面的に考察させ,学 級全体でどのような価値観を重視するか,また,ど

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のように比べ決定するかということを話し合わせる ことにより,児童は表を用いて指標を条件ごとに整 理したり数値化したりする等の数学的手法を創出 し,納得のいく選択肢を決定できると考える. 5.おわりに 本教材「最高裁判所に行こう」では,様々な価 値観にもとづく選択肢が考えられる問題場面に対 して,児童自らで選択肢を作成し,その背後にあ る価値観を顕在化しながら,最終的に学級全体の 合意形成を図った.これには,教師の舵取り役と しての役割が重要となることが明らかとなった. すなわち,児童が解決に向けて必要と考える情報 を選択する際に,どうしてそう考えたのかを問う ことで児童に考えの背後にある価値観を意識化さ せることや,「よりよい行き方とは何か」を問い, 効率性や安全性などといった多様な価値観を顕在 化すること,そして,創出された選択肢について のメリットやデメリットを問い,多面的に考察さ せ,多様な価値観について何を重視するかや,ど のように比べるかということを話し合わせたりす ることを通して指標化のアイディアにつなげるこ となどである. 数理科学的意思決定を意図した授業では,この ような教師の具体的な発問や指示などの指導の準 備が になると言えよう. 今後も,授業実践を重ね,カリキュラム化でき るよう研究を重ねていきたいと考える. 付記:本研究は,平成28−令和元年度科学研究費 補助金基盤研究 「学校教育における設計科学的 視座に基づく 数理科学教育の構築に関する総合 的研究」(研究代表:西村圭一)の補助のもと進め たものである. 注 1)「∼である(is…)」と表現される事実命題に対 して,価値命題は「∼したい (wish…)」,「∼が よい(better than…)」などと表現される命題の ことである. 引用・参考文献 鈴木侑・冨樫奈緒子(2016).小学生の数理科学意 思決定の様相に関する一考察−割合の「指標」 としての利用を例に−.日本数学教育学会誌 算数教育,98⑹,3-11. 西村圭一編著(2016).真の問題解決能力を育て る算数授業−資質・能力の育成を目指して−. 明治図書. 島田功(2017).算数・数学教育と多様な価値観− 社会的オープンエンドな問題による取組み−. 東洋館出版社.

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