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心臟 配糖 體 に よう蛙 心 室 の靜 止 位 に
關 す ろ 研 究
北 崎
義 明
(九 州 帝 國 大 學 醫 學部 藥 理 學 教 室 〔主 任 幅 田教 授 〕) (昭和十八年 十月一 日受付 〔特〕) 目 次 緒 論 實 驗 方 法 實 驗 成績 1. 心 室 靜 止 位 に 對 す る 季 節,温 度 及 びStrophanthin濃 度 の 影 響 a. 季 節 b. 温 度 (1) 室 温 の差 異 (2) 灌 流 液 の温 度 の差 異 c. Strophanthin濃 度 2. 蛙 の状 態 に よ る差 異 3. 實 驗 方 法 に よ る差 異 4. Ringer-液 の 組 成 並 にpHの 影 響 a. Ca/ K比 の影 響 b. pHの 影 響 5. 中枢 神經 との關 係 a. 中樞 へ の藥 液 循 環 可 能 の場 合 b. 中樞 へ の藥 液 循 環 遮 断 の場 合 c. 迷 走 神經 又 は 交 感 神 經 切 斷 の影 響 . 6. 自律 神 經 毒 の影 響 7. 心 室 靜 止 の原 因 考 察 總 括 引 用 書 目緒
論
大 量 のDigitalisを 應 用 す れ ば 蛙 心 臟 は 運 動 を 減 弱 し,遂 に は 靜 止 す る.然 し て 蛙 心 室 の 運 動 靜 止 に は 收 縮 位 靜 止tystolischer Stillstandと 擴 張 位 靜 止diastolischer Stillstandと が あ る.何 故 に か ゝる相 反 す る 靜 止 位 が 現 は れ る か に 就 い て は 夙 に 先 進 諸 家 が 注 目 し た 所 で あ る.Eohm 7) Schmiedeberg 36)等 の 如 きDigitalis研 究 の 初 期 に 於 て は,Digitalisは 常 に 蛙 心 室 の 收 縮 位 靜 止 を 來 す もの で あ る と し,そ の 原 因 は 收 縮 力 増 強 に よ つ て 無 擴 張 (Adiastolie)
を 招 來 す る 爲 め で あ る と した.
そ の 後Jacobj 25) はWilliams- 法 を 以 て 榮 養 せ る蛙 心 にHelleboreinを 内 面 よ り應 用 す る 時 は收 縮 位 靜 止 を 來 す が,之 を 外 面 よ り應 用 す る 時 は 擴 張 位 靜 止 を 來 す と報 告 し,Wybauw 48) も亦 同 一 現 象 を認 め て 其 の 擴 張 位 靜 止 を迷 走 神 經 末 端 の 興 奮 に よ る も の と し た.而 る に
Benedicenti 4)は 該 靜 比 はAtropinに よつ て 影 響 を受 けず と して 之 を 否 定 した.茲 に 於 て Schmiedeberg 36)は 心 臓 組 織 中 に全 く反樹 の 機 能 を有 す る内 外 二筋 暦 の 存 在 す る を 假想 し, Digitahsを 内 面 よ り作 用 せ しめ る時 は主 と し て 内暦 の收 縮 筋 が 興 奮 して 收 縮 位 靜 止 を呈 し, 外 面 よ り作 用 せ しめ る時 は主 と し て外 層 の擴 張 筋 が 興 奮 して擴 張 位靜 止 を來 す の で あ る と した. 其 の後werschinin 46)はDigitalisvaよ る擴 張 位 靜 止 は 應 用 方 法 の 如 何 に よ らす して其 の 濃度 に よ る もの で あ る と し,中 等 量 に 於 て は常 に收 縮 位靜 止 を來 し,少 量 又 は大 量 に於 て は擴 張 位 靜 止 を來 す と報 告 した.
Straub 39)はSehmiedeberyの 二 元論 を否 定 し,Digitaiisに よ る靜 止 は心 筋 の緊 張 上昇 に よつ て生 す る もの で あ るか ら,systolischer Stillstandと 言 ふ 言 葉 は 妥 當 で無 く緊 張 姓靜 止 tonischer Stillstandと 稱 す 可 き で あ る と張 調 し,且 收 縮 力減 弱 に 起 因 す る 擴 張 位 靜 止 の可 能 性 を説 い た. 又Clark 11), Winterberg 47), 前 田,中 澤29)は 擴 張 位靜 止の 本 態 に關 し,之 は緊 張 上 昇 が 起 る前 に刺 戟 發 生 又 は傳 導 障 碍 に よつ て 生 す る もの で あ る と報 告 した. 以上 之 を要 す る に從 來 の 學 者 はDigitahsに よ る 靜 止は 收 縮 位 靜 止 を以 て 正常型 とな し,或 特 殊 の 條 件 の 下 に於 て の み擴 張 位靜 止 を 起 し得 る とな した.術 して 收 縮 位 靜 止 の發 生 に 對 して は 收 縮 力増 強 説(Bohm, Schmiediebery) 及 び 緊 張 上昇 説 (Strad)が あ り,擴 張 位 靜 止 の發 現 に對 して は擴 張 筋 興 奮 説 (Schmiedeberg), 收 縮 力減 弱 説(Straud) 及 び 刺 戟 發 生 又 は傅 導 障 碍 説 (Clark等) が あ る こと に な る. 然 るに福 田教 授 物 は,Digitahsに よ る心 室靜 止 はそ の靜 止位 よ り見 る と きは,收 縮 位 及 び 擴 張 位 とい ふ 如 く相 反 す る靜 止 型 が あ る様 に思 はれ るが,心 臓 週 期 よ り見 れ ば す べ て 擴 張 期 靜 止 な る事 を多 數 の實 驗 例 に就 て 證 明 され,擴 張 期 靜 止の 原 因 は 常 に 房 室間-Block な る事 及 び 收縮 位 靜 止,2申 間 位靜 止並 び に擴 張 位 靜 止 を 決 定 す る もの はBlock-作 用 に對 す る緊 張 作 用 の比 較 的 強 度 で あ る事 を強 調 され た,即 ち この 論 に從 へ ば,Digitalis.に よ る心 室 靜 止 の 原 因 はBlock唯 一 元 で あ り,收 縮 位 又 は擴 張 位 とな るの は單 に緊 張 作用 の 程 度 の 差 異 に過 ぎ な い事 に な る.之 はDigitalisの 心 臓 作 用 に 關 す る概 念 を從 來 の どの學 者 よ り も 最 も端 的 に 理 論 化 した る もの で あ るが,然 らば 靜 止位 の 決 定 即 ちBlock-作 用 に對 す る 緊張 作 用 の 強 さの 比 は如 何 な る條 件 に 支 配 され るか.之 に 就 い て教 授 は2,3の 考 察 を 試 み られ て ゐ るが,特 に その 爲 に實 驗 が な さ れ て ゐ るの で は な い.又 福 田教 授 は 收 縮 位 靜 止 は 冬 期 に多 く擴 張 位 靜 止 は夏 期 に 多 い と され て ゐ るが,そ の論 明 も 未 決 定 で あ る.殊 に教 授 の 實 驗 は す べてStraub-法 に よ る摘 出 心 臟 標 本 に於 け る もの で あ るが,全 身 蛙 で も同 じ事 が 言 へ るか 如 何 か 私 は之 等 の 諸 點 を考 慮 して 實 驗 を行 ひ,Digitalisに よ る心 室靜 止位 に就 い て 檢 討 を加 へ,更 に收 縮 位靜 止 及 び 擴張 位靜 止 決 定 の眞 相 を闡 明 せ ん と考 へ た.
心 臓 配糖 體 に よ る蛙 心 室 の靜 止位 に 關 す る研 究 591
實 驗 方 法
との さま が へ るRana nigromaculataの 雌 雉 を 選 ば ず 活 撥 な る も のを 實 驗 動 物 と して使 用 した.實 驗 は す べ て 同 一季 節,同 一 温 度 の下 に 行 ひ,可 及 的 そ め影 響 に よ る差 異 を避 け た. 實 驗 方法 と して は心 臓 灌 流 法 を用 ひ た.中 枢 神經 の 影 響 を検 す る の に 好 都 合 で あ る か らで あ る.即 ち心 臓 を 露 出 し,後 大靜 脈 にKanuleを 挿 入 して 之 よ りRinger-液 (蛙 用)を 心 臓 に 灌 流 し,灌 流 液 は 動 脈 幹 よ り流 出せ しめ た.心 運 動 は 心 尖 にSerre-fineを か け,絲 を 以 て蛙 板 に固 定 し,心 基 底部 に 小釣 を 引 かけ,之 を絲にて書槓に連絡 して描記 した(南 里法).こ の法 は純粹 に心尖 及び基底 の距離 の變化 を描 記 し得 るのみな らず,心 運動 は普通 の懸垂法 に比 して6遙かに生 理的 であ る.中 枢神經 の影響 を見 るには 勿論之を保存 して置 いたが,そ の他 の多 くの實驗では先づ脊髓及び腦を破壞 して 後心臓露出を行つた. 實驗中に,實 驗方法 が心室靜止位に對 して重大 な影響 を有す る事 を感 じたので,灌 流法 の外 に靜脈注射 法 及 びStraub-法 を以 て比 較 を試 み た(596頁).藥 物 はDigitalisの 代 表 者 と してG-Strophanthin Cryst. "Merck,,を 用 ひ,0,1%の 原 液 を 拵 へ 用 時 適 宣 に 稀 釋 した,Ringer-液 の 組 成 はNaCl6, 0, KCl 0,075, CaCl2 (無水)0, 1, NaHCO3 0.1, 蒸 溜 水1000,0
で あ る. 實 驗 成 績 1. 心 室 靜 止 位 に 對 す る 季 節,温 度 及 びStrophanthin-濃 度 の 影 響 a. 季 節 福 田 教 授 22)はDigitalisに よ る蛙 心 室 の 靜 止位 は 季 節 中 よ りて 異 り,秋 冬 期 に 於 て は 春 夏 期 に 比 し收 縮 位 靜 止 の 著 し く多 い 事 を 指 摘 せ られ た.私 は 上 記 實 驗 法 に 從 ひ,各 季 節 を 通 じ て100萬, 50萬, 20萬, 10萬, 5萬 及 び1萬 倍Strophanthin に よ る 心 室 靜 止 位 を 觀 察 し た (第1表). 第1表. 季 節 と心 室 靜 止 位 の頻 度.
Strophanthinの 各 濃 度 を通 じ て 收 縮 位 靜 止 の 最 も 多 き は9, 10月 に し て5,6月,3, 4月, 7, 8月, 11, 12月 が 之 に次 ぎ,1,2月 に於 て最 も少 い.即 ち室 温20℃ 前 後 の秋 及 び 春 の 快 適 な る季 節 に於 て收 縮 位 靜 止 最 も多 く,30℃ 前 後 の 盛 夏 及 び10℃ 前 後 の 嚴 冬 に 於 て 減 少 し, 反 對 に擴 張 位 靜 止 が 増 加 す る.心 臟 運 動 曲線 を見 るに,冬 期 に於 て は緊 張 上 昇 開 始 時 間 が 著 し く遲 延 し,未 だ緊 張 上 昇 を見 な い うちに 靜 止 が 現 れ て,擴 張 位 とな る もの が 非 常 に 多 い. 夏 期 に於 て は緊 張 上 昇 開 始 時 間 は短 縮 す るがBlockを 來 し易 く,中 間 位 及 び 擴 張 位 に靜 止 す る ものが 壓 倒 的 に多 い. 又5,6月 の 春 期 と9,10月 の秋 期 を比較 すれ ば,秋 期 に於 て少 し く收 縮 位 靜 止 が 多 い様 で あ るが,甚 だ し き差 は認 め得 な い.尚Strophanthinの 濃度 を5萬 倍,1萬 倍 に増 高 す る と,之 よ り稀 薄 溶 液 に於 て は擴 張 位 静 止 を 多 く 惹 起 す る 冬 蛙 の 心 臓 も收 縮 位 靜 止 を起 す 事 が 多 くな り,之 に反 して 夏 蛙 の心 臓 は 濃度 を増 高 して も,矢 張 擴 張位 静 止 が 多 く 見 られ る. 又春 秋 の 両 季 節 に等 温 (20 ∼24℃)の 下 に於 て な され た る 結 果 を見 るに(第2表),秋 期 に. 於 て は100萬 倍50萬 倍 共 に殆 ど大 多 數 に 於 て收 縮 位 靜 止 が 見 られ,中 間位 靜 止は 少 く擴 張 位 靜 止 は1例 も無 い.之 に 反 し 春 期 に 於 て は擴 張 位 並 に中 間 位 靜 止 が 比 較 的 多 い 。效 に 福 田教 授 が 云 はれ る如 く,Digitalisに よ る心 室靜 止位 に は温 度 差 に よ らざ る季 節的 影 響 も存 す るで あ ら う. 即 ちStrophanthinに よ る心 室靜 止位 は各 濃 度 を通 じて 秋 期 に於 て 收 縮 位靜 止 最 も多 く,春 期 之 に次 ぎ,夏 期 及 び冬 期 に於 て 最 も少 い.併 し冬 蛙 は 甚 だ しき高 濃 度 に於 て は例 外 的 に 收縮 位 靜 止 が 多 くな る.又 春 期 及 び秋 期 の 等 温 の下 に て は 秋 期 に於 て 收 縮 位 靜 止 が 稍 々多 い. b. 温 度 Digitalisに よ る蛙 心臓 運 動 が 温 度 に よつ て影 響 せ られ る事 實 は,既 に 多數 の 學 者 に よ つ て觀 察 され て ゐ るが,心 室 靜 止 位 に關 して論 及 して ゐ る 者 は無 い 様 で あ る 。私 は前 項 に 於 て 秋 期 及 び春 期 に 於 て は收 縮 位 靜 止 最 も多 く,盛 夏 及 び 嚴 冬 に於 て は少 い事 實 を認 め た が,か ゝる季 節 的 差異 に對 して は温 度 の影 響 が 重 大 な る もの ゝ如 く考 へ られ る.故 に 私 は 第2表. 5, 6月 及 び9, 10月 の20∼24℃ に 於 け る 心 室 靜 止 位 の 頻 度.
心 臓 配 糖 體 に よ る蛙 心 室 の 靜 止 位 に關 す る研 究 593 自然 の 室温 の 下に 心 室靜 止 位 を 檢 す る外,人 工 的 に 温 度 の 變 化 を 起 さ しめ その 影 響 を檢 した. (1) 室 温 の 差 異 各 季 節 に 實驗 せ る結 果 を,實 驗 時 の 室 温 よ り分 類 して 心 室靜 止 位 を 見 るに 第3表 の如 き結 果 が 得 られ る. 之 に よれ ば各 濃 度 と も20∼24℃ に 於 て は收 縮 位 静 止 が 著 しく 多 く,中 間 位 及 び擴 張 位 靜 止 は 少 い.之 を頂 點 と して 温 度 が 上 昇 叉 は下 降 すれ ば 收 縮 位 靜 止 は減 少 し,中 間 位 及 び 擴 張 位 靜 止の頻 度 を増 加 す る.特 に 温 度 の 下 降 時 に は この 傾 向 が 著 明 で あ る.併 し この場 合 に も亦Strophanthinの 濃度 の 影 響 が 現 は れ10∼20萬 倍 の 高 濃 度 に 於 て は,温 度 下 降 時 に擴 張 位 静 止 が 現 はれ 難 い. 次 に同 一季 節(11月 下 旬)に 室 温(14∼18℃)を 人工 的 に20∼24℃ に上 昇 せ しめ て50 萬 倍Strophanthinに よ る心 室静 止 位 に就 て觀 察 した が,室 温上 昇 例 に於 て は收 縮 位7例, 中間 位2例,擴 張 位1例 に して,封 照 の收 縮 位2例,中 間 位3例,擴 張 位5例 に 比 し明 らか に收 縮 位靜 止の頻 度 を増 加 して ゐ る. (2) 灌流液 の温度の差異 灌 流 液 の温 度 が 蛙 心 臓 運 動 に大 な る影 響 を及 ぼ す事 は安 藤3),田 中43)そ の他 の 學 者 に よ つ て 認 め られ て ゐ る.私 は灌 流 液 の加 温 叉 は 冷 却 が 心 室 靜 止 位 に如 何 な る影 響 を 及 ぼ す か を觀 察 した.實 驗 は10月 下 旬 に 室温15∼18℃ の 下 に行 ひ,榮 養 液 の 温 度 は最 高30℃ 最 低11℃ に變 化 せ しめ た.而 して 榮 養 液 の 澀 度 は榮 養 液 を 流 入せ しむ るKanule内 で 測 定 第 3 表. 室 温 と心 室靜 止 位 の 頻 度.
し た. 實驗 成 績 は第4表 の如 くで,Ringer液 の 温 度 を上 昇 せ しめ る に件 つ て心 搏 數 は増 加 し, 緊 張 上 昇 開 始 時 間 及 び心 室靜 止 時 間 は共 に短 縮 す る.靜 止 位 は21∼25℃ に上 昇 せ しめ た る 場 合 に は收 縮 位 靜 止が 多 く見 られ,30℃ に 於 て は却 つ て減 少 し,擴 張 位 は な い が 中間 位 が 多 くな る.30℃ の 高 温 に於 て は緊 張 上昇 は早 期 に 來 す が,又Blockを 來 し易 いた めで あ る. 逆 に 温 度 を11∼14℃ に下 降 せ しむ る時 はに心 搏 數 減 少 し,緊 張 上昇 開 始時 間 は 遲 延 し緊 張 の未 だ上 昇 しな い内 に心 室靜 止 を起 す もの が 多 く,15∼18℃ の 室温 に於 け る 對 照 に比 す れ ば 擴 張 位 静 止 が 増 加 して ゐ る. 即 ちStrophanthimに よ る心 室 靜 止位 は 温度 よ り見 れ ば20∼24℃ に於 て收 縮 位靜 止 最 も多 く,之 よ り温 度 の 上 昇 又 は 下 降 何 れ に於 て もそ の 頻 度 の減 少 し,殊 に 低 温 時 に 於 て 着 明 で あ る.併 して これ は 室 温 を變 化 せ しめ て も,灌 流 液 の 温 度 を變 化 せ しめて も 結 果 は 略 々同 一 で あ る. c. Strophanthin-濃 度 Werschinin 46)はDigitalisに よ る 心 室 靜 止 位 に は そ の 濃 度 が 關 係 し,高 濃 度 に 於 て は收 縮 位,低 濃 位 に 於 て は 擴 張 位 を 來 す と報 告 し,Straub 39), Trendelenburg 44),天 津1), Gros 19), Gottlieb 18),前 田,中 澤29)等 は 同 樣 な る事 實 を 認 め て ゐ る.福 田 教 授22)はDigitalis-濃 度 は 心 室 靜 止 位 を 決 定 す る 一 つ の 要 因 で は あ る が 絶 對 な もの で な く,蛙 心 のDigitalis-感 度 の 個 別 的 差 異 も重 大 な 役 割 を 演ず る と報 告 さ れ た 。 私 は 春 蛙 を 用 ひ100萬, 50萬, 20萬, 10萬 倍 のStroPhanthln-灌 流 實 驗 に 於 て100萬 倍 の 低 濃 度 よ り20萬 乃 至10萬 倍 の 高 濃 度 の 方 が收 縮 位 靜 止 の 多 い 事 を觀 察 し た.併 し 心 室 静 止 位 に は 前 述 の 如 く季 節 並 に 温 度 が 影 響 す る の で,春 期 に 於 け る 實 驗 成 績 か ら總 て を 律 す る 事 は 出 來 な い.茲 にに於 て 各 季 節,各 温 度 に よ りて 檢 せ る 前 の 實 驗(第1表; 第2表,第 3表 及 び 第4表)に よ り同 季 節 又 は 同 温 度 に 於 け る 濃 度 の 影 響 を 觀 察 す る に,一 般 に 高 濃 度 第 4 表. 灌 流 液 の 温 度 と心 室靜 止 位 の 頻 度 靜 止 時 間 及 び 心 搏 數 (10月).
心 臓 配 糖 體 に よ る蛙 心 室 の 靜 止 位 に關 す る硯 究 595 ほ ど收 縮 位 靜 止の頻 度 の増 加 す るの が 認 め られ る.併 し乍 ら同 季 節,同 温 度 の 實驗 で100萬 倍 の 低 濃度 に て收 縮 位静止 を來 す もの もあれ ば,10萬 倍 の高 濃度 に て擴 張 位 に静 止 す る も の もあ る.故 に 濃 度 と收 縮 位 靜 止 との 關 係 はWereehinin等 の 強調 す るが 如 く絶 對 的 な もの で は な く,寧 ろ福 田教 授 の 強調 せ らる ゝ如 く蛙 心 のStroplmthin一 感 度 の 個 別 的 差異 が 相 當 に影 響 す る もの ゝ如 く考 へ られ る。 又 季 節 及 び温 度 が 異 れ ば 靜 止 位 も之 に 影 響 され る事 は 前 述 せ る通 りで,今 茲 で 再 び 之 等 と濃度 との 關 係 を觀 察 す る に,9,10月 の季 節 及 び20∼24℃ の 温 度 に於 て は100萬 倍 の濃 度 に て大部 分枚 縮 位 靜 止 を來 し,冬 期 及 び10℃ 以 下 の 温 度 に於 て は10萬 倍 の 高 濃 度 に於 て も殆 ん ど總 てが 擴 張 位 靜 止 を來 して ゐ る. 即 ちStrophanthinに よ る心 室 の收 縮 位 諍止 に は そ の濃 度 が 關 係 し,低 濃 度 よ り高 濃度 に於 て そ の頻 度 は増 加 す る.併 し乍 ら之 は絶 對 的 な もの で な く,蛙 心 のStrophanthinに 對 す る感 変 の個 別 的 差 異,季 篩 差 及 び 温 度 差 に よ る影 響 も受 け る. 2. 蛙 の状 態 に よ る差 異
Clark11)は 摘 出 蛙 心 臓 をRinger-液 に て 長 時 間 灌 流 し て 衰 弱 せ し む る 時 は, Strophan -thinに よ り擴 張 位1鞍 止 を 來 し 易 い 事 を 認 め,こ の 結 果 よ り夏 期 に 籠 に 入 れ た る 蛙 は 衰 弱 す る 爲 同 樣 に 搬 張 位 錚 止 を 起 し易 くな る で あ ら う と推 論 し て ゐ る 。 私 は 夏(7月,29∼31℃),秋(9,10月,19∼25℃)及 び 冬(11月,12∼17℃)の 衰 弱 蛙 に 就 て 實 驗 を試 み た.夏 蛙 は 實 驗 室 の 蛙 池 の 中 に 長 期 聞 放 置 し,秋 蛙 及 び 冬 蛙 は 籠 の 中 に 6∼8日 間 放 置 し て衰 弱 せ し め た.こ れ に 捕 獲 直 後 の 健 常 蛙 を對 照 と し て 比 較 し た.Stro -phanthinは 夏 は400萬 倍,秋 に 於 て は50萬 倍,冬 に 於 て は20萬 倍 を 用 ひ た. 以 上 の衰 弱 蛙 は外 觀 上/は痩 削,不 活〓 な る 事 に よ り健 常 蛙 と 區 別 が 出來 るが,心 運動 に は殆 ど認 む べ き差異 が 無 い.收 縮 高,心 搏 數 何 れ も健 常蛙 の夫 に 類 似 して ゐ る.併 し乍 ら Strophanthinを 應 用 す る と,衰 弱 蛙 に於 て は還 動 振 幅 は 正 常 蛙 に 比 し明 に増 強が 著 しい. 第 5 表. 衰 弱 蛙 と健 常 蛙 に於 け る心 室靜 止 位 の頻 度,Block發 現 時 間 及 び靜 止 時 間 の差 異.
殊 に 目立 つ の は脚 點 下 降 で,收 縮 高 も 正常蛙 に 比 し稍 々増 高 す る.更 にBlockも 亦 早期 に現 れ,緊 張 の 未 だ 上 昇 し な い うちにBlock靜 止 を來 す ものが 多 い(第5表).斯 の 如 く衰 弱 蛙 .に於 て はStrophanthinの 作 用 が 強 く現 れ 叉靜 止時 間 も短 縮 す るが,併 しBlockが 早期 に起 り緊 張 上 昇 の現 れ ない う ちに 心 臓 靜 止 が 起 る爲 攘 張 位 靜 止を來 す 窓の が 多 い. 以上 は夏 期 の衰 弱 蛙 に 就 ての 實 驗 で あ るが,秋 冬 期 の 衰 翡 蛙 に於 て も類 似 の結 果 が 得 られ る(第5表 參 照).Blockは 夏 に於 け る如 く著 明 で は な いが 早 期 に 發 現 し,緊 張 上 昇 を 見 な い うち に よ くBlock-靜 止 を招 來 す る.又 靜 止 時 間 も正 常蛙 に比 し甚 し く短(縮す る. 以上 の 如 く衰 弱 蛙 は 夏,秋,冬 の 季 節 の如 何 を問 はす 心 運 動 に は外 槻 上薯 變 は ない が, Strophanthinに 對 す る感 受性 は増 高 し,頂 點 上昇 及 び脚 點 下 降 著 明 に して,Blockも 早 期 に 發 現 し,靜 止 時 間 も短 縮 す る.併 して 心 室 靜 止 位 は收 縮 位 少 く,擴 張 位 が 著 し く増 加 す る. 3. 實 驗 方 法 に よ る差 異 前 田,中 澤29)は 八 木 法 どStrub-法 とに よ りStrophanthin作 用 を觀 察 し,後 法 に於 て は前 法 に 比 し收 縮 位 翻 止 を來 す ものが 比 較 的 多 い と報 告 して ゐ る.又Digitalis效 力檢 定 に 於 て は收 縮 位 靜 止が 口標 と され,事 實Focke-法,4h法 等 に於 て は殆 ど毎 常收 縮 位瀚 止 が 目 撃 され る様 で あ る.斯 の如 く實 驗 方 法 に よ りて收 縮 位 靜 止の 現 れ る率 が 異 る如 く考 へ られ る の で,私 は心 臟 灌 流 法 とStrub-法 及 び生 體 に 於 け る靜 脈 内注 射 法 と を同 時 に並 行 して行 ひ,比 較 を試 み た. 靜 脈 注 射 法 はSondeを 眼 よ り挿 入 し て,殆 ど無 血 的 に腦 脊 髓 を 破 壊 せ る蛙 の心 臟 を露 出 して心 還 動 を描 記 し,StroPhantinは1萬 倍 溶 液0,15∼0,2ccを 腹 壁 靜 脈 よ り徐 々 に 注射 した.心 臓 灌 流 法 及 びStraub-法 に於 て は,50萬 倍Strophmthinを 用 ひた.こ の用 量 及 び 濃 度 に 於 て は,各 法 の心 臓 靜 止 時 間 は略 々近 似 す る. 12月(11∼13℃)に 行 つ た;實驗 成績 は第6表 に 示 す如 くで あ る.靜 脈 注射法 に於 ては 收 縮 高 檜 大 は毎 常現 はれ るが,心 臓 灌流 法 及 びStravb-法 程 著 明 で は な い.併 し 振 幅 増 大 は 脚 點 上 昇 の現 は る ゝ爲 半數 に於 て しか見 られ な い.脚 點 上 昇 は 大 多數 全 例 に 於 て 起 り,下降 第 6 表. 實 驗 方 法 の差 異 と心 室 靜 止 位 の頻 度,緊 張 上 昇 開 始 時 問 及 び靜 止 時 間(12月,11∼13 ℃).
心 臓 配 糖 體 に よ る蛙 心 室 の靜 止 位 に關 す る研 究 597 は 殆 ど之 を槻 察 し得 な い.静 止 位 は10例 に於 て總 て收 縮 位 靜 止 で あ つ た.緊 張 上 昇 が 非 常 に早 期 に現 はれ,Blockを 見 る事 が 非 常 に 少 い,夏 期 に 於 け る實 驗 に よ る も,靜 脈 注 射 法 で は收 縮 位 靜 止 が 非 常 に 多 い。併 し 夏 期 に は 念 にBlockを 來 して,擴 張 位 に靜 止 す る事 も稀 に は觀 察 され た. 心 臓 灌流 法 に 於 て は收 縮 高 及 び振 幅 の増 大 は 極 め て著 明 で,又 緊 張 上 昇 開始 時 間 が 遲 延 し早期 にBlockを 來 すた め 擴 張 位靜 止が 非 常 に多 く,收 縮 位 靜 止は1例 も無 か つ た。 こ の點 は 第1表 の50萬 倍 の11,12月 及び1,2月 の成 績 と一致 す る. 8traub-法 は收 縮 高 及 び 振 幅 の 増 大 を來 すが,心 臓 灌 流 法 の 樣 に 著 明 で は な い.緊 張 上 昇 開 始 時 間 は之 よ り も 早期 に起 る,收 縮 位 靜 止 及 び 中 間 位 靜 止 が 大 多 數 を 占 め,擴 張 位 靜 止 は10例 中1例 に 過 ぎ なか つ た.徇 ほ静 止時 間 は 心 臓 灌 流 法 に 比 し稍 々延 長 して ゐ る. 以 上 之 を要 す る に心 室 靜 止位 は實 驗 方 法 に よ りて 大 差 が あ る.靜 脈 注射 法 で は,冬 期 並 び に夏 期 を問 は す常 に 殆 ど す べ てが 收 縮 位 静 止 で あ つ た.Bohm, Schmiedebeberg以 來 全 身蛙 を主 と した 實驗 に於 て,Digitalisに よる收 継 位靜 止 が 強調 され た所 以 で あ る 。Straub-ひ法 に 於 て は,冬 期 に收 縮 位 靜 出が 斷 然 多 か つ た.之 の點 は 幅 田教 授 の 點 と一致 す る。而 る に心 臓 灌 流 法 を用 ひ る時 に は,收 縮 位 靜 止 は皆 無 で あ り,中 間 位靜 止 も少 く殆 ん ど全 部 が 農 張 位 に靜 止 す る を見 た.私 の前 に述 べた心 室静 止 位 が,冬 期 に於 て も收 縮 位 靜 止 を見 な いか 或 は極 め て稀 で あ つ た 點 が 福 田教 授 の點 と一致 しなか つ たが.之 は 明 か に教 授 はStraub-法 を用 ひ 私 は 灌 流 法 を用 ひた る實 驗 方 法 の相 違 に よ る もの で あ る. 私 の 實驗 に よれ ば,灌 流 法 で はStraophanthinの 緊 張 作 用 が弱 くして 反對 にBlockの 起 り易 い の を 見 た.之 が 拡 張 位静 止 の 傾 向 を 大 き く した 原 因 で な けれ ば な ら ぬ.蛙 心 臓 標 本 に 於 て,Straub-法 の 如 く同 一 溶 液 を 長 く應 用 す る 場 合 に は,心 臓 興 奮 的 に 作 用 す るSinusstoff (Haberlandt20))を 發 生 す るが,液 を度 々 交 換 す る 時 は この 物 質 を 運 び 去 る 爲 に 心 臓 の 生 活 力 を 減 す る 事 は,貫34)の 自 然 恢 復 の 實 驗 に 於 て も明 白 で あ る,灌 流 法 に 於 てDigitalisの 緊 張 上昇 作 用 が 遲 延 し,Block一 作 用 が 促 進 さ れ る の は こ の 生 括 力 の 減 弱 に 原 因 す る で あ ら う.全 身 蛙 に 於 て は,之 と正反 對 たStraphanthinの 緊 壁長作 用 が 促 進 遷 れ,Block一 作 用 は 逆 に 抑 止 され る.之 は心 臓 が 生理 的 な 状 態 に あ りて 充分 な る生 活 力 を有 す る 爲 で あ る事 は疑 が な い. 4. Ringer-液 の 組 成 並 にpHの 影 響 a. Ca/K比 の 影 響 榮 養 液 中 の塩 類 含 最 が 心 室 靜 止位 に 甚 大 な る影 響 を有 す る事 は,既 に幾 多の 學 者 に よ つ て研 究 され て ゐ る 收 縮 位靜 止發 現 の 爲 の 必 須 條 件 と してCaの 存 在 を 強調 す る 學 者 に,Wirschinin46),
Clark 10), Thwi 28), Junkmann 26), Schlossmann 35) 等 が あ る が,殊 にWerschinin及 びLowiは そ の
頻 度 はCa量 に 正 比 例 す る と 迄 言 つ て ゐ る.併 し乍 らJunkmann 26),Straub40)はCaの 過 量 は 收 縮 位 靜 止 の 發 現 率 を 必 し も増 加 せ し め な い と言 つ て 居 り,又 Konschegg27),Weizacker 45), Geiger17),Junkmann26),Bulbring),Selewiegk37),竹 崎42)等 は 寧 ろCa不 足Ringer液 に 於 て Digitalis作 用 が 著 明 に 現 は れ る と 云 ひ,Handovsky21)は 正常Ringer-液 に 於 て 最 も早 く收 縮 位 靜 止 が 起 る と 報 告 し,Schgossmann 35)はCaの 増 減 何 れ の 時 に も 收 縮 位 靜 止 の 頻 度 を 増 加 す る と言 づ て ゐ る.Fischer12)はKが 又 收 縮 位 静 止 發 現 に 對 し必 要 な る 條 件 と し て 擧 げ て 居 る.併 しJrmkmann26)はKの 過 量 は 刺 戟 傳 導 障 碍 を 招 來 し 易 い と 云 つ て ゐ る.
以 上 の 文 献 を 綜 合 す れ ば,收 縮 位 靜 止 發 現 の 爲 に はCa及 びKの 存 在 が 必 要 な る樣 に 考 へ られ る が,そ の 量 的 關 係 に 就 て は 未 だ 明 で な い.
私 は 第7表 に 示 す 如 くCa/K比 を 變 化 せ し め た る 諸 種 のRittiger-液 を調 製 し,之 にStro-phanthinを50萬 倍 に 溶 解 し,そ の 心 室 靜 止位 を 觀 察 した.實 驗 は6月(21∼25℃)に 行 つ た. 第7表 の1,2,3に示 す 如 くCa量 が 比 較 的 に 多 い場 合 に は,緊 張上 昇 開 始時 間 及 び靜 止 時 間 短 縮 し,す べ て收 縮 位 靜 止を起 し中 間 位 擴 張 位 は1例 も見 な い.逆 に5,6の 如 くKの 量 を増 加 す る際 に は,緊 張 上 昇 開 始時 間 及び 靜 止 時 間 は 著 し く延 長 し,收 縮 位 に靜 止 す る も の もあ るが,中 間 位 又 は擴 張 位 靜 止 が 多 い.然 る に7の 如 くCa量 を1/2と してK量 が 比 較 的 に増 加 す る場 合 に は收 縮 位 靜 止 は増 加 す る. 次 に4の 如 くKを 全 く缺 如 す る場 合 に は,早 期 に緊 張 上昇 を來 す が,Blockを 來 し易 く, 中間 位 に靜 止 す る ものが 多 い,又8の 如 くCaを 全 く缺 除 せ るRiner液 で は,緊 張 上昇 は全 く見 られ す す べ て擴 張 位 に靜 止 し,Ca及 びKを 全 く缺 如 せ る9の 場 合 で は 中間 位 が 多 い, 第7表.Ringer-液 のCa/K比 と心 室靜 止 位 の 頻 度,緊 張 上昇 開始 時 間 及 び靜 止 時 間 (6月,21∼25℃).
心 臓 配糖 體 に よる蛙 心室 の靜 止 位 に 關 す る研 究 599 以 上 を要 約 表 示 す れ ば,第8表 の 通 りで あ る.即 ちStrophantl通 の收 縮 位 靜 止 發現 の 爲 に は,Ca及 びKが 共 に 一定 の濃 度 に存 在 す る事 が 缺 く可 らざ る條 件 で あ る.併 し大體 に於 てCa1K 比 が 大 な る と き收 縮 位 が 多 く,Ca/K比 が 小 な る と き擴 張 位 が 多 い. b. pHの 影 響 Ringer-液 のpHが 心 室 靜 止 位 又 は 心 筋 緊 張 に 及 ぼ す 影 響 に 就 て は,既 にGaskegll6), Burdige9),09ark11),Mines31),南 里30)等 の 研 究 が あ り一般 に 弱 酸 性 の 時 は 緊 張 低 下,擴 張 位 靜 止 を 見 る が,強 酸 性 に て は 強Alkali-性 と 同 樣 緊 張 上 昇 を 來 し て 收 縮 位 靜 止 に 至 る と 云 ふ.又Cark11)は 酸 性 はBlockを 來 し 易 い と述 べ て ゐ る. 私 は 水 素Ion濃 度 試 驗 紙 を 使 用 し てpHを 測 定 し,重 曹 を 加 へ ざ るRinger-液 及 び 重 曹 を 加 へ てPHを 大 な ら し め た るRinger一 液 を 用 ひ て 實 驗 し た.重 曹 を 加 へ ざ るRinger-液 のpHは5,6で(斯 の 如 く酸 性 を 呈 す る の は 恐 ら く 空 氣 中 のCO2の 溶 解 せ る に よ る も の で あ ら う)之 に 適 宜 の 重 曹 を 加 へpHを7, 0, 8, 2, 8, 4な ら し め た,實 驗 は6月(24∼25℃)に 行 つ た. この 各 種pH Ringer-液 にStrophanthinを 加 へ100萬 倍 溶 液 を作 り,そ の 心 臓 作 用 並 に 心 室 静 止 位 に 就 き實 驗 した(第9表 參 照). 正 常Ringer-液 をStfOphanthin力11pH5,pHRinger-液 に 切 り換 へ る と,收 縮 高 は 直 ち に 減 少 し,振 幅 は 約2/3大 に 減 す る.そ の 後 振 幅 は 漸 次 増 大 す るが,始 め の 大 さ に は 達 し な い. 然 し て 緊 張 上 昇 は殆 ど 現 れ ず,常 にBlockを 來 し て 擴 張 位 に 靜 止 す る.又 靜 止時 間 は 延 長 す る. pH 7, 0, 7, 4, 8, 2, 8, 4 とAlkali度 を 上 昇 す れ ば,之 に 拌 つ てStrophanthinに よ る收 縮 第8表. Ringer-液 内のCa/K含 有 比 と心 室靜 止 位 との 關 係. 第9表. Ringer-液 のpHと 心 室 靜 止 位 の 頻 度,緊 張 上 昇 開 始 時 間 及 び靜 止 時 間(6月,24∼25℃).
高 及 び 振 幅 の増 大 は 著 明 とな り,且 緊張 上昇 開 始 時 闇 も 短 縮 す る。又 よ く所 謂Luciani の rhythmische Tonug, schwankung の 状 態 が 現 れ る.併 しpH 8,4で は,收 縮 高 及 び 振 幅 増 大 は pH 8,2に 比 し却 つ て減 弱 し,緊 張 上 昇 窓同様 減 弱 の 感 が あ る.靜 止位 よ り見 れ ば,Alkali- 度 を上 昇 す る程 牧 縮 位 靜 止 の 頻 度 を増 加 し,且 靜 止 時 間 の短 縮 も著 明 で あ る. 以 上 要 約 すれ ば,pH 5,6∼8,4の 範 圍 に於 て 酸 性 はStrophanthin に よ る心 臟 緊 張 上昇 を 抑 制 し,緊 張 上 昇 開 始 時 間 を 延 長 せ しめ,且 容 易 にBlock を起 さ しめ,擴 張 位 靜 止 の 頻 度 を増 加 す る.之 に 反 してAlkali- 度 を高 む れ ば,緊 張 上 昇 作 用 は 糟 強 し,そ の 開 始 時 間 も早 くな り,收 縮 位 靜 止が 多 くな る. 5. 中 樞 神 經 との 關 係 中樞 神 經 が心 臓 と密 切 な る關 係 を有 す る事 は,解 剖 學 的 に も亦 藥 理 學 的 に も既 に 多 數 の 學 者 に よつ て闡 明 せ られ て ゐ る と ころで あ る 而 し心 室 靜 止位 に對 す る 中樞 神 經 の影 響 に就 い て は,唯 僅 か に 最 近 新 田 33)の 報 告 が あ る,そ の 研 究 に よれ ば,Strophanthin は 中樞 保 存 蛙 に對 し振 幅 を殆 ど堰 大 せ す,早 期 に 緊 張 上昇 を來 し,中樞 を破 壞 せ る對 照 蛙 の心 臓 と 異 り擴 張 位 靜 止を 起 さす 總 てが 收 縮 位靜 止 を惹 起 し,且 靜 止時 間 も短 縮 す る と. 併 し この 場 合,中 樞 神 經 の健 存 な る事 それ 自身 が 影 響 し て ゐ る の か,或 はStrophanthin の 中樞 作 用 に よ るの か 私 は この 點 を究 明 せ ん と して,12月 ∼5月(11∼17℃)に 亘 り,20萬 倍 のStrophanthin- 溶 液 を用 ひ,灌 流 法 に よ り實 驗 を行 つ た. a. 中樞へ の藥液 循環 可能の場合 との 實驗 は新 田 の追 試 の 目的 で 行 つ た もの で,中 樞 へ も藥 液 を循 環 せ しめ る 爲 動 脈 幹 切 断 を行 は す,灌 流 液 は 下 行 大動 脈 を 切 斷 して こ ゝよ り流 出 せ しむ る様 に した 。か くして Methylenblau- 溶 液 を灌 流 液 内 に加 へ る と,中 樞 神 經 組 織 は 青染 され,青 色 のRinger- 液 は下 行 大 動 脈 切 斷 端 よ り流 出 す る. 實 驗 成績 は第10表 に示 す如 くで あ る.中 樞保 存 蛙 心 臟 は對 照 と比 較 して最 も特 異 な る 第10表. 中 樞神 經 と心 室靜 止 位 の 頻 度,緊 張 上 昇 開 始 時 間 及 び 心室 靜 止時 間.
心臓配糖體 に よる蛙心室 の靜止位 に關す る研究 601 點 は,Strophanthin に よ り緊 張 上昇 の 早 期 に 現 はれ る事 で あ る.收 縮 高 は對 照 同 樣 増 高 す る が,緊 張(下 行 脚)の 上 昇 の爲 に振 幅 は餘 り増 大 しな い.靜 止 時 間 は短 縮 して ゐ る もの と延 長 して ゐ る もの とが あ り 一定 しない.又Block に 比 し緊 張 が 早 期 に 上 昇 す る爲 殆 ど總 てが 中間 位 に靜 止す る.之 は新 田 の觀 察 と略 々一致 し中樞 保 存 蛙 で は收 縮 位 靜 止 の 傾 向が 大 き い事 實 で あ るが,靜 止 時 間 の短 縮 は認 め得 な か つ た. b. 中桓への藥液循理遮斷の場合 中樞 神經 へ の 藥 液 移 行 を遮 斷 す る 目的 に は,心 臓 よ り出 て ゐ る 動 脈 幹 を兩側 共 に 切 斷 した.こ れ に よ り藥 液 は後 大 靜 脈 よ り心 臓 内 に入 り,動 脈 幹 よ り直 ちに 流 畠 し 中 樞 に移 行 しな い 。Methylenblau- 溶 液 を灌 流 す る も腦 髓 に着 色 を見 ない.中 樞 へ の 循 環 を遮 斷 して も, 約90m は角 膜 反 射 並に 自發 蓮 動 は殘 存 す る. 靜 止 位 は收 縮 位 又 は 中間 位 の み で,擴 張 位 靜 止 は1例 も無い(第10表). 中 樞 保 存 蛙 に於 て迷 走 交 感神 經 を 切 斷 せ る後Strophanthin の 作 用 を槻 察 したが,結 果 は 中樞 破 壞 時 と略 々同 じで あ つ た.又 腦 髓 を破 壊 して 脊 髓 の み 保 存 せ る 場 合 も同樣 で す べ て が 擴 張 位 に 靜 止 した. c. 迷走憩經又 は交感 紳經切斷 の影 響 迷 走紳 經 切 斷 は延 髓 と頸 靜 脈 神 經 節 の 中 間 に於 て,交 感 神 經 切 斷 は 第2交 感 神 經 節 と 頸 靜 脈 神 經 節 の 中 間,及 び 總 前 耳神 經 節Gaglion prooticum commune と第2交 感 紳 經 節
の 中間 に於 て 兩 側 共 に施 行 した. 迷 走神 經 を切 斷 すれ ば 心 搏 數 は不 變 か,又 は増 加 す る.又 そ の末 悄 切斷 端 を電 氣 的 に刺 戟 す る と,心 搏 數 は緩 徐 と な り,遂に擴 張 位靜 止 を起 す.又 交 感 紳 經 を切 斷 すれ ば 心 搏 數 は 減 少(正 常 時 の約20%)す る.そ の 末 梢切 斷 端 を電 氣 刺 戟 す る と,心 搏 動 は活 溌 と な り,搏 數 は不 變 で あ るか 少 し く増 加 す るの が 常 で あ る.尚 ほ頭 蓋 を破 壞 して中 腦 部 を 電 氣 刺 戟 す る と,中 樞 保 存 蛙 に於 て は心 搏 緩 徐 とな り遂 に擴 張 位 に靜 止す るが,刺 戟 を 止むれ ば 直 ち に搏 動 し始 め,刺 戟前 の 心 搏數 よ り多 くな る.之 は 刺 戟 中 は迷 走 紳經 作 用 が 交 感 神 經 作 用 を抑 へ,刺 戟 中止 後 は後 作 用 長 き交 感 神 經 作 用 が 出 る爲 で あ る.兩 側迷 走 神 經 を切 斷 して 中 腦 部 を 刺 戟 す る と,擴 張 位 静 止 を來 さす 心 搏 數 は む しろ 増 加 す る.両 側 交 感神 經 の み を切 斷 し て中 腦 部 を刺 戟 すれ ば,心 搏 數 は減 少 す るの み な らす 擴 張 位 靜 止 を起 す.而 して刺 戟 を 止 め て も心 搏 數 の 増 加 は な い.頸 髓 上 部 を刺 戟 して も 同 様 で あ る.以 上 の電 氣 刺 戟 に よ り て迷 走神 經 及 び 交 感 神經 を 正 し く切 斷 す るや 否 や を確 認 す る事 が 出 來 る. 實 驗 成績 は第10表 に 示 す如 く,迷 走神 經 切 斷 時 に對 照 と同 樣 早期 に緊 張 を上 昇 し,牧 縮 高 も増 大 す るが,振 幅 は 緊 張 上昇 の 爲 に 交 感 神 經 切斷 時 に比 すれ ば 幾 分 小 さい 又 早 晩 Block も起 るが,緊 張 上昇 が 早期 に 現 はれ る爲 静 止位 は 殆 ど す べ て 牧 縮 位 で あ る.靜止 時
間 は對 照 と殆 ど差 が な い. 交 感 神 經 切 斷 時 は收 縮 高 及 び脚 點 の 下 降 著 し く,緊張 上 昇 は遲 れ 未 だ 緊 張 を しな い前 にBlock を起 し靜 止 す る.從 つ て 殆 ど總 てが 中間 位 又 は 擴 張 位 に 靜 止 し,收 縮 位 靜 止 を起 す もの は1例 も無い.又 靜 止 時 間 もお くれ る.恰 も中樞 破壞 に等 し い. 尚 興味 あ る事 は 迷 走 神 經 切 斷 時 に眞 性-Halbierung 4例 を見,交 感 神 經切 斷時 に1例 も 之 を見 な い事 で あ る.竹 崎 42)は 所 謂眞 性-Halbierubg は交 感 神 經 緊張 時 に よ ぐ發 現 す る と 報 告 して ゐ るが,私 は この 竹 崎 の觀 察 を神 經 切 斷 實驗 に よ りて確 認 し得 た. 以 上要 約 すれ ば 迷 走 神 經 切 斷 時 に は,中 樞 保 存 蛙 と同樣Strophantllin に よ り緊 張 の 早 期 上 昇,振 幅 増 大 度 の 減 少,收 縮 位 静 止 の 頻 度 増 加 を 起 し,交 感 神 經 切 斷 時 に は 反 封 に 中 樞 破 壞 時 と 同 樣 の 結 果 と な る.即 ち 中 樞 保 存 に よ り收 縮 位 靜 止 が 多 い の は,交 感 神 經 の 中 腦 中 樞 の 健 存 が 意 義 を有 す る の で あ る. 6. 自律 神 經 毒 の 影 響
Bohm 6)はDigitalis に よ り收 縮 位 靜 止 を 來 せ る 蛙 心 臓 がMuskarin に よ り薄 動 し始 め る 事 を 認 め,Htelaschinski 23)はHelleborein とMuskarin の 併 用 に よ り擴 張 位 靜 止 を 來 し, At-ropinに よ り之 を 除 外 し得 る と報 告 した.
Frohlich & Picki 14)及 び.Amsler & Pick 2)はPhysostiglnin 又 はMuskarin の 前 處 置 に よ り大 量 のStrophanthi に て も擴 張 位 靜 止 を 來 し,Atropi に よ つ て も この 静 止 を 除 き 得 な い 事 を見 た.Rerk 5)はPhysostigmin, Acetylcholin 及 びLentin の 前 處 置 はStrophanthin に よ り擴 張 位 靜 止 を 來 す が,之 は 冬 蛙 に 限 ら れ 夏 蛙 で は收 縮 位 靜 止 を 來 し,又Prostigmin, Pilokarpin 及 びArecolin は 季 節 の 如 何 を 問 は す,Strophanthin の收 縮 位 靜 止 を 効 げ る 事 は 出 來 な い と 報 告 し て ゐ る.Frohlioh & Zak 15)は そ の 後Physostigmin の 前 處 置 は 夏 蛙 に 於 て
も擴 張 位 靜 止 を 來 す と して,Berk の 読 を 反 駁 し て ゐ る.
又Firohliich & Pick 13)及 びAmsler & Pick 2)はAdrenalin の 前 處 置 がStrophanthin に よ る雌 縮 位 靜 止 を 促 進 す る 事 を 見,南 里 30)は 蛙 心 電 氣 刺 戟 標 本 に てStrophanthin とAdrena- lin と の 併 用 はStrophanthin とAcetylcholin 同 樣 緊 張 上 昇 を 促 進 す る と 云 つ て ゐ る.
私 はStrophanthin にAcetylcholin 又 はAdrenaiin を 併 用 し,夏 蛙 (6, 7月 室 温24∼27 ℃)及 び 秋 蛙(11月 室 温14∼17℃)に 就 て 之 が 心 室 靜 止 位 に 及 ぼ す 影 響 を 觀 察 し た.Ace- tylcholin は"Roche"の 製 品 を 用 ひ,豫 め0,1% 溶 液 を 調 製 し,之 を 原 液 と し 用 時 稀 釋 し た.
Adrenalin は 三 共 製 品 を 使 用 し た,Acetylcholin は1∼10億 倍 を 用 ひ,Adrenalin は1000萬 倍 を 用 ひ た.之 等 の 濃 度 に 於 て は 蛙 心 に 對 し 殆 ど 抑 制 又 は 興 奮 を 來 さ な い.何 れ も稀 釋 後 30m以 上 を 經 た る もの は 使 用 ,しな か つ た.
心臓配糖體 による蛙心室の静 止位 に關す る研究 603 振 幅 増 大 度 は 對 照 に 比 し稍 々減 弱 を示 す が,脚 點 下 降 は む し ろ 増 強 す る.緊 張 上 昇 開 始 時 間 は 著 し く短 縮 す る が,Block一 作 用 も 著 明 な る 爲 め,收 縮 位 静 止 の 頻 度 は 對 照 と 比 べ 殆 ど 差 が な い.併 し静 止 時 間 は 短 縮 す る を 常 と す る. Adrenalin加Strophanthinに 於 て は,頂 點 上 昇 及 び 脚 點 下 降 を 増 強 し,振 幅 壇 大 も著 明 で あ る.緊 張 上 昇 開 始 時 間 は 遅 延 す る が,Blockを 來 し難 く收 縮 位 静 止 の 頻 度 は 對 照 と殆 ど 差 が な い.又 所 謂Lucianiのrhythmische Tollusschwankung見 る 事 が 多 く,静 止 時 間 は 稍 々 遅 延 す る .以 上 の 現 象 はStrophanthin 50萬 倍 及 び100萬 倍 の 濃 度 に 於 て は 同 様 に して, た ゞ時 間 的 の 差 異 を 示 す 丈 で あ る. 秋 蛙 に 於 て も夏 蛙 と 略 々 同 様 な る 成 績 を示 し,Acetylcholin加Strophanthinは 静 止 位 に 於 て 對 照 と 殆 ど 大 差 な く,Adrenalin加Strophanthinに 於 て も同 様 で あ る.
以 上 の 如 くAcetylcholin は Strophanthinの 緊 張 上 昇 開 始 時 間 を短 縮 しBlockを 來 し 易 くす る が,收 縮 位 静 止 に 對 し て は 殆 ど 影 響 し な い.Adrenalin は Strophanthinの 緊 張 上 昇 開 始 時 間 を延 長 し,Blockを 來 し難 くす る.收 縮 位 静 止 の 頻 度 は 始 ど變 ら な い. 7. 心 室 静 止 の 原 因 實 験 方 法 は清 水38)法 を改 良 して新 し く考 察 せ る次 の如 き方 法 を 用 ひ て,静 脈 竇,心 房 及 び 心 室 の 運 動 を 同時 に 描 記 して静 止期 を判 定 せ ん と試 み た.蛙 の後 大静 脈 に,Kanuleを 挿 入 し,心 臓 を肝 臓 を附 着 しだ る ま ゝ摘 出 し,小 護謨 板 上 に置 く.榮 養 液 はKanuleよ り心 臓 を經 て動 脈 幹 よ り流 出 す る如 くす る.次 で 後 大静 脈 の基 部,竇 房 間,房 室 間 境 界 の 兩 側 に 夫 々小 昆 蟲 針 で 固 定 し,竇 及 び 心 房 の 中央 並に 心 尖 に 夫 々細 い鉤 をか け,書 槙 に連 絡 して 三 部 分 の 連 動 を分 離 して描 記 せ しめた.實 験 は9,10月(22 ∼ 24℃)に 行 っ た. 第12表 に示 す如 く,擴張 期 静 止9例,静 止期 不 明1例 で 收 縮 期 静 止は1例 も無 い.擴 張 期 静 止9例 の 中,竇房 室が 同時 に運 動 を停 止 し竇 麻 痺 が心 室静 止 の本 態 と 認 む べ き もの が 6例,竇 房 は 術 ほ運 動 を な し 室 の み 停 止せ る功 室 Blockと 認 む べ ぎ もの3例 で,竇 房 間-第11表. 自律 紳 經 の與奮 と心 室 静 止位 の 頻 度,緊 張 上 昇 開 始 時 間 及 び 静 止 時 間(6,7月,24 ∼ 27℃).
Block は1例 も認 め 得 なか つ た. 尚 ほStrophanthinの 傳 導麻 痺 作 用 に就 い て は嘗 て之 を否 定 せ ん とす る論 者 もあつ た が (船 田24),森 田32),高 木41))之 は 今 日で は 問 題 に な らな い,私 の 實 験 も,心 筋 よ りも刺 戟 發 生 及 び傅 導 性 特 殊 筋 系 が 先 づ 侵 され る事 を示 して ゐ る.
考
察
心 臓 週 期 に於 け る心 室 静 止 期 に就 い て 上記 の各 種 要 約 の もとに實 験 せ る531例 に つ い て統 計 的 に觀 察 す る と(第13表 参 照),全 實験 例 の90%は 擴 張 期 に静 止 し,残 りの10%が 不 明 の静 止 期 を示 し,收 縮 期 に静 止 せ る もの は1例 も無 い.そ の 中 で收 縮 位 静 止 を とれ る も の ゝみ に 就 い て見 て も,静 止 期 が 擴 張 期 に相 當 せ る もの が83%あ る.即 ち收 縮 位 静 止,中 間位静 止,擴 張 位静 止 を問 はす 大 多數 に 於 て擴 張 期 に静 止す る. これ らの 例 は静 止 前 既 に 心 搏 緩 徐,搏 動 缺 如 の 如 き刺 戟 發 生 又 は 傳 導 系 の 麻 痺 の兆 を 呈 す る.肉 眼 的 觀 察 に よれ ば,大 體 高 温 時 に は房 室間-Block,低 温 時 に は 竇麻 痺 が 多 い様 で あ る.竇 房 室 の運 動 を分 離 描 記 ぜ る實 験 に 於 て も,こ の 兩 者 が 心 室 静 止 の主 因 な る事 を示 して ゐ る. この 擴 張 期 静 止 の 中 に は,Straubの 強 調 す る如 き緊 張上 昇 に よ りて 外 觀 島静 止せる も の が,や が て福 田教 授 の 言 ばれ る如 く 緊 張 寛 解 を來 して 明か に 遮 張 期 に静止 した もの が 第12表. 清 水 法 改 良 法 に よ る 實 験 成 績 (9,10月, 22 ∼ 24℃). 第13表. 心 臓 週 期 に於 け る心室 静 止 期.心臓 配糖 體 に よ る蛙 心室 の静 止 位 に關 す る研 究 605 あ る. 不 明 の静 止 期 を示 す もの ゝ中収 縮 位 に於 て静 止期 不 明 な る もの は,静 脈 内注 射 例 に 於 て 割合 多 く之 を認 めた.緊 張h昇 が 高 度 で 極 端 な る収 縮 位 に あ り,しか も搏 数 の緩 徐 又 は缺 如 の 如 き刺 戟性 發 生 又 は傳 導 障 碍 の 前 羅 せ る の を 認 め なhの で,81rauゐ の 所 謂 緊 張 性 静 止 と認 め られ る もの で あ ら う.中 間 位 に て 不 明 の静 止 期 を示 す 巻の は,Binger-液 中 のCa及 び Kを缺 如 せ る際 に 見、られ る もの で,一"旦 緊張 が収 縮 位 に 迄 上昇 し,次 に寛 解 を來 して 中問 位 に下 降 せ る も,搏 動 は増 大 せ ず,非 常 に微 弱 に して静 止 期 が 不 明 とな れ る もの で あ る,之 はBlockを 認 め得 す 明 らか に編 田教 授 が 強 調 して居 られ る緊 張 上 昇 と収 縮 力減 弱 に基 づ く 運 動 浩 失 と認 む べ き もの で あつ た. 擴 張 位静 止に て 不 明 の静 止 期 を示 す もの はRinger液 中 のCaを缺 如 せ る際 に見 られ る もの で 》収 縮 力 の 減 退 で あ り,Strophanthinvaよ つ て も振 幅 の 増 大 を來 す事 な く線 状 と なつ て静 止す る もの で あ る。これ こそStrazebの 所 謂 収 縮 力減 退 に よ る擴 張 位静 止 に 相 當 す る. 之 を要 す るに,Strophanthinに よ る心 臓 静 止 は種 々 な る要 約 を加 ふ る も約90%は 擴 張 期 に静 止 し,収 縮 期}鞍1上は1例 もな い,即 ちDigitalisは 静 止位 の 如 何 に關 せ ず 総 べ て 擴 張 期 静 止 で あ る と言 ひ得 る.併 して静止 の原 因 は 竇麻 痺 又 は房 室 間 分 離 に よ る 心 室収 縮 の 缺 落 で あ る. 次 に 静 止 位 に 就 い て は,實 験 方 法 を 考 へ す し て 之 を 一 概 に 論 す る 事 は 出 來 な い.Digi-talis及 びStiophanthingcよ る 心 室 翻 止 は,全 身 蛙(皮 下 注 射 又 は 静 脈 注 射 法)に 於 け る 實 験 に 關 す る 限 りに 於 て は 収 縮 位 を 以 て 典 型 的 な る齢 止 位 と 認 め 得 る.即 ちBohm,Schmiedeberg 以 來Digitalis作 用 の 特 徴 と し て 認 め られ るsystolischer Stillstandは 全 身 蛙 の 寛 験 に 於 て は 眞 で あ る. 然 し摘 出心 臓 を用 ひ た るStraub-法 に な る と,収 縮 位静 止 は冬 期 で は壓 倒 的 に 多 数 な る も夏 期 に於 て は 寧 ろ擴 張 位 又 は 中間 位 の 多 い 事 は,輻 田教 授 の 指 摘 され た る通 りで あ る.又 心 臓 灌流 實験(準 摘 出)に 於 て は 寧 ろ擴 張 位 静 止 が 夏 期 に も多 い が,冬 期 に於 て 更 に多 い事 は,私 の 實 験 に於 て明 らか で あ る.故 に摘 出或 は 準 摘 出心 臓 に關 す る限 り,systolischer Stil-lstandをDigitalis-作 用 の特 徴 と認 む る事 は 要 當 で な い. 全 身 蛙 の心 臓 と摘 出心 臓 との 間 に於 け る斯 の如 き差 異 は,第1に 心 臓 の 生 活 力 の 強 弱 に支 配 され る.正 常血 液 を以 て 榮 養 され る場 合 の如 く,収 縮 力,緊 張 並に刺 戟 發 生 又 は傳 導 の諸 機 能 が 充 分 で あ る間 はDigitalisに よ つ て 収 縮 位 静 止 が 起 り易 いが,緊 張 と収 縮 力が 低 下 し刺 戟 發生 父 は傳 導 が 減 弱 した 場 合 に は擴 張 位 或 は 中間 位 が 起 り易 い.第2に 中樞 神 經 の 影 響 で あ る。交 感 神經 の 中脳 中樞 の 支 配 が 健 存 して居 れ ば,心 臓 は緊 張,収 縮,刺 戟 發 生 又 は傳 導 共 に 旺 盛 で あ り収 縮 位静 止 が 起 るが,こ の 中樞 との連 絡 が 絶 たれ る と,擴 張 位静 止 が 断然 多 くな る.蛙 に 於 て交 感 神 經 が 心臓 に樹 して緊 張 性支 配 を有 す る事 は,そ の切断 に よ
りて搏 敷 減 少 を起 す事 實 に よ りて 明 白で あ る.故 に この 交感 神經 の 存否がDigitalisの 収 縮 位 に影 響 を有 す る事 は 寧 ろ 當 然 で あ ら う.第3に 温度 は 交感 神 經 興 奮 を起 す限 りに 於 て適 度 の温 度 上 昇(20∼24℃)が 収 縮 位静 止 を促 進 す る理 由 を理 解 し得 る.併 し この 温 度 以 上及 び 以下 で は却 つ て擴 張 位静 止を 助 長 す る の は,こ の 兩 者 共に心 臓 の 生活 力 を 減 弱 せ しめ る 爲 め で あ ら うか. 心 室静 止 の 原 因 は前 述 の 如 く刺 戟發 生 及 び 導 系 の 麻 痺 で あ る か ら,静 止二位 を決 定 す る もの は,と の 心 室 静 止 の起 る迄 に 緊 張 上 昇 が 十分 に現 はれ るか 否 か で あ る.即 ち福 田教 授 が 弧調 され て ゐ る通 りBlock作 用 に對 す る緊 張 作用 の比 較 的 強度 で あ る.故 に これ を増 大 す る如 き處 置即 ち交 感 神 經 との 連絡 残 存,正 常 血 液 に よ る榮 養,温 度 の 適 度 上昇,Alkali-添 加,Ca増 量 は収 縮 位 静 止 を 促 進 し,反 對 に之 を減 少 す る 如 き もの 即 ち交 感 神 經 切 断,心 臓 灌 流,温 度 の 高 度 上 昇 又 は下 降,酸 添 加,Kの 増 量,衰 弱 蛙 は収 縮 位 静 止 を抑 制 す る.又 Acetylcholin及 びAdrenalinは 共 にStrophanthinに よ る収 縮 位 静 止を増 加 せ しめ な い が,こ れ はAcetylcholinは 緊 張 作用 及 びBlock-作 用 を増 強 し,Adrenalinは 何 れ を も 減 弱 せ しめ
る爲 め で あ る.
総
括
1. 心 臓 配 糖 體 に よ りて惹 起 され る蛙 心 室静 止の静 止位,静止 期並に 静 止の 原 因 を闡 明 せ ん と し,Strophanthinを 用 ひ 各種 の實 験 方 法 に よ りて 研 究 した. 2. 準 摘 出 灌 流 心 臓 標 本 に於 て は,擴 張 位 並 に 中間 位静 止が 收 縮 位 よ りも寧 ろ 高 い頻 度 に 於 て現 はれ る,収 縮 位 静 止は秋 期 に最 も多 く,春 期 之 に次 ぎ,夏 期 及び 冬 期 に於 て最 も 少 い. 3 . 収縮位静 止の頻 度 に上 の如 き季 節的差異が あるのは,主 に温度 の影響 に よる.20∼ 21℃ に於 て收 縮 位静 止 最 も多 く,之 よ り濃 度 が上 昇 又 は下 降 すれ ば 共 に そ の 頻度 を減 す る. 4. Strophanthinの 濃 度 が 高 けれ ば 収縮 位 静 止 の 頻 度 は増 加 し,濃 度 が 低 けれ ば 減 少 す る. 5。 数 日間 實 験 室 又 は 蛙 池 に 飼 育 し衰 弱 した る蛇 は,健 常 蛙 に比 しBlockを 來 し易 く, 從 つ て擴 張 位 静止 を起 す ものが 多 い. 6. 生 體 蛙 に 對 す るStrophanthin-注 射(静 脈 内 注 射)に 於 て は,殆 ど 常 に 収 縮 位 静 止 を 見 る.こ の 實 験 法 に 於 て は,収 縮 位 静 止 を 以 てDigitalis-作 用 の 特 徴 と認 め る 事 が 出 來 る. 實 験 法 を 無 視 し てDigitalisに よ る 心 室 静 止 位 を論 す る 事 は 出 來 な い.7. Ringer液 の組 成 が 又心 室静 止 位 に影 響 を及 ぼ す,Ringeger-液のCaのKに 對 す る比 較 的 増 加 は収 縮 位静 止 の 頻 度 を高 め,K量 のCaに 對 す比 較 的 増 加 は そ の 頻 度 を低 くす る.し
心 臓 配 糖 體 に よ る蛙 心 室 の静 止 位 に關 す る研 究 607 か し収 縮 位 靜 止 を 起 す に はCa及 びK共 に 一 定 量 存 在 す る事 を 要 す る. 8. Ringer-液 のPH5,6∼8,4の 問 で はAlkali一 度 を増 す に つ れ,収 縮 位 静 止 の 頻 度 を 増 加 す る.Alkaliは 緊 張 作 用 を 強 め,酸 はBlock-作 用 を 増 強 す る. 9. 脳 髄 保 存 蛙 に 於 て は 収 縮 位 静 止の 頻 度 を 増 加 す る.こ れ はStrophanthinの 中 樞 移 行 を遮 断 して も同様 で あ るか ら,そ の 中 樞 作 用 に よ る もの で は な い.又 交 感 神 經 を 起 始 部 に於 て切 断 す る と擴 張 位静 止止が 多 く,迷 走 神 經 を起 始 部 に 於 て 切 断 す る と収 縮 位 静 止が 多 い.故 に 心 臓 に 對 す る交 感 神 經 中樞 の 緊 張 性 支 配 が 心 室 の収 縮 位 静 止 を促 進 す る. 10. Adrenalinを 加 へ る とBlockが 起 り難 く な つ て,.静 止 時 間 は 延 長 す る.収 縮 位 の 頻 度 に は 殆 ど變 化 が な い.Acetylcholinを 加 へ る と緊 張 作 用 もBlock-作 用 も 共 に 強 くな り 静 止時 間 は 短 縮 す る.収 縮 位 静 止 の 頻 度 に は 殆 ど 變 化 が な い., 11. Strophanthinに よ る心 臓 静 止 は 心 臓 週 期 よ り見 る と 殆 ど 總 べ て(全 例 の90%)は 搬 張 期 静 止 で あ り,静 止 原 因 は,竇 麻 痺 又 は 房 室 間-Blockに 因 る 心 室 の 無 収 縮 と で あ る.緊 張 性 静 止 と 見 做 し 得 る の は 全 例 の 約10%で あ る.s 稿 を終 る に臨 み,終 始御 懇 篤 な る御 指 導 と御 鞭 撻 とを賜 は り且 つ 本 文 の 御 校 閲 を 辱 ふ した る 編 田教授 に満 腔 の謝 意 を捧 げ,併 せ て種 々 御 教 示 を賜 は りし貫 助 教授,田 中 講 師 及 び 教 室 員諸 氏 に衷 心 感 謝 の意 を表 す. 引 用 書 目 1) 天 津: 京 都 醫 學 雑 誌 11, 215 (大 正3年).
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46* BREVIARIA
Studien fiber the Stillstandslage des Froschherzens durch Herzglykoside.
Von Dr. Y. Kitazaki.
Aus dem Pharmakol. Institut der Kaiserl. Kyusyu-Universitat zu Hukuoka, Japan. (Vorstand : Prof. Dr. T. Hukuda.)
Eingegangen am 1. Oktober 1943 〔SP.〕.
Prof. Hukuda vertiffentlichte kiirzlich, dass der durch Digitalis hervorge-rufene Herzstillstand nur durch atrioventicularen Block verursacht wird, und
dass der systolische oder diastolische Stillstand auf der relativen Intensitat zwischen Block- und Tonuswirkung ,der Digitalis beruht. Er sagte wei ter, dass der systolische Stillstand im Winter und der diastolische im Sommer haufig erscheint. Seine Schlussfolgerung fusst aber ausschliesslich auf Grund der an nach Straub isulierten Eroschherzen angestellten Versuche. Urn den
jahreszeitli-chen Unterschied der Stillstandslage und die eigentliche Ursache des Stillstandes klaqumachen, fiihrte Verf. mit Strophanthin an durchstrOmenden Herzen in situ und am ganzen Frosch verschiedene Untersuchungen aus. 1) Beim
Dur-chstrOmungsversuch ist das Herz im allgemeinen in halbsystolischer oder diastoIis-cher Lage im Stillstand. Nur in geringen Fallen wird es zum systolischen
Stillstand gebracht. Der systolische Stillstand ist jahreszeitlich im Herbst am haufigsten, danach im Fruhling und im Sommer und Winter ausserst gering. 2) Er wird durch Zimmertemperatur bedeutend beeinflusst. In der Temperatur von 20-24•Ž findet sich der systolische Stillstand viel haufiger al dariiber oder darunter. 3) Das Herz wird in starkeren Konzentrationen des Strophanthins
auch haufiger als in schwacheren zum systolischen Stillstand gebracht. 4) An abgeschwachten FrOschen wird Herzblock durch Strophanthin leicht hervorgerufen, wobei haufig diastolischer Stillstand eintritt. 5) Die Zusammensetzung der Ringerlosung beeinflusst auch die Stillstandslage. Relative Zunahme des Ca-Gehalts gegen K verursacht haufigeren systolischen Stillstand. Dagegen ruft relative Zunahme des K-Gehalts gegen Ca haufiger diastolischen Stillstand hervor.
6) Neigt pH der RingerlOsung mehr zu alkalisch, so tritt haufig systolischer Stillstand des Herzens ein, und mehr zu sauer, umgekehrt diastolischer. 7) An Hirn und Riickenmark nicht zerstOrten FrOschen wird systolischer Stillstand viel haufiger gesehen, sogar bei der Verhinderung des Ubergehens von
Stro-phanthin zum Him und Riickenmark bekommt man die gleichen Resultate. Bei Durchschneidung des Sympathikus am Ursprungsteil vermehrt sich der diastolische Stillstand, und Durchschneidung des Parasympathikus am Wurzelteil ruft noch haufiger systolischen Stillstand hervor. 8) Am ganzen Frosch steht
das Herz viel haufiger in der systolischen Lage als am durchstrOmten Praparate.
Von der Stillstandslage durch Herzglykoside kann man ohne Berucksichtigung der Untersuchungsmethode nicht viel sagen. [ Vgl. Original (japanisch.) S. 589.]