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シートベルトによる体幹部損傷の検討

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Academic year: 2021

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(1)

1.背景と目的

わが国では自動車乗車時、運転手だけでなく同乗 者にもシートベルト着用が義務化されてからその着用 率は向上し、2017年には一般道路における着用率が 運転席で98.6%、助手席で95.2%、後部座席で36.4% となった1)。その結果、事故時の車外放出による重症 外傷が減少している。 一方で、シートベルトによる胸腹部を中心とした体 幹部外傷が増加するようになってきた。シートベルト による腹腔内臓器損傷に関しては、事故の衝撃など でシートベルトが腸骨稜から腹部へ移動することで、 シートベルトと椎体に挟まれた腹腔内臓器が損傷さ れる、いわゆるサブマリン現象が知られている2)。また、 腹腔内臓器以外の体幹部損傷では肋骨骨折、胸骨骨 折、鎖骨骨折、椎体骨折の合併を起こしやすいとさ れている3)。しかし、これら損傷の発生する頻度や発 生時の具体的状況について体系的に調べられた報告 はない。昨今の自動車の高性能化によって重症外傷 が減少している一方で、衝突時にシートベルトの圧 迫を受ける重症外傷が増加していると予想されるこ とから、その実態を調査することは車両の安全対策 を検討するうえで不可欠である。また、医療現場に おいても、その損傷形態を明らかにすることは、今後 の治療戦略を検討するうえで有用である。そこで、 要 旨  自動車乗車中のシートベルト着用が義務化されてから、シートベルトによる胸腹部損傷が顕著になってき た。シートベルトによる損傷の形態と受傷機転を明らかにするために後方視的検討を行った。2013 年 4 月 〜 2018 年 3 月に京都第二赤十字病院(以下、当院)に入院した外傷患者の中で、シートベルト痕がありシー トベルトに起因したと考えられる体幹部外傷例 14 症例を対象とした。各例で受傷機転、損傷、病院搬入時 のバイタルサイン、治療法などを比較した。平均年齢は 49 歳で 10 例が運転者、3 例が助手席乗員であった。 胸腹部のシートベルト損傷のみを認めるのが 8 例、四肢や頭頸部に合併損傷を認めるのが 6 例であった。こ れらの間で平均 ISS(Injury Severity Score)に有意差はなかった。また、明らかにシートベルトの着用位 置が不適切であったのが 4 例あり、シートベルトが腹部にかかることで生じた小腸腸間膜損傷、腹壁筋膜下 血腫、肩ベルトが頸部にかかることで生じた頸部の皮下血腫などが生じていた。  自動車乗員の交通外傷診療では、シートベルト着用の有無を確認することがまず重要である。そして、シー トベルトが正しい位置に着用されているかを確認する必要もある。シートベルト痕を認める症例では、経過 とともに症状が現れて重症化することがあり、慎重な管理が必要と考える。 キーワード:自動車事故、シートベルト損傷、損傷重症度、救急医療

シートベルトによる体幹部損傷の検討

[原著論文]

石井  亘

(1)

  飯塚 亮二

(1)

  一杉 正仁

(2) 受付:2019 年 12 月 20 日  受理:2020 年 3 月 5 日 (1)京都第二赤十字病院救命救急センター救急科  (2)滋賀医科大学社会医学講座法医学部門 著者連絡先:石井亘 [email protected]

(2)

当院での症例を検討し、文献的考察を含めて報告す る。

2.対象と方法

2013年4月〜2018年3月に当院救命救急センターを 受診した患者の中で、シートベルト損傷の記載のあ る症例を診療録から後方視的に検討した。 当院は京都市の中心部に位置し、人口約36万人 をカバーする三次救命救急センターであり、年間 の救急車搬入台数は約8,000台で、救急車搬入以外 も含めると年間総受診者は約28,000例である。AIS (Abbreviated Injury Score)3以上の重症外傷は年

間約700例である。 今回入院となった全外傷症例のうち、体幹部外傷 例848例につき、下記の除外基準により残った14例に ついて検討した。除外基準としては、外傷性心肺機 能停止例、狭圧損傷例(乗車位置の変形などにより 身体が圧迫された障害)および胸腹部を他の車室内 構造物を打撲した例(ハンドル外傷、ダッシュボード 外傷など)とした(Fig. 1)。シートベルトによる損傷 とした症例は、外表に明らかなシートベルト痕がある 例とした。シートベルトの装着部の損傷については慣 性力によるシートベルトの損傷であり、合併損傷は体 幹部以外が車室内構造物との衝突によって生じた損 傷である。検討項目は、年齢、乗車位置、エアバッ ク展開状況、受傷機転、受傷から搬入までの時間、 病院搬入時のバイタルサイン、CT検査、損傷部位、 シートベルトの不適切な着用位置による損傷、体幹 部以外の合併損傷、治療法である。シートベルト損 傷が、適切なベルト装着部以外の頸部および腹部に 認めるものを衝突時のシートベルトの位置不適切症 例とした。また、搬入時のバイタルサインおよび損傷 状況をもとにshock indexとInjury Severity Score(以 下、ISS)を算出した。 本検討は当院における倫理審査委員会の承認を得 て行われた。

3.結 果

3-1.背景 対象例は14例で、男性が8例、女性が6例であった。 平均年齢は48.9±24.0歳で8〜83歳に分布していた。 乗車位置では運転席10例、助手席3例、後部座席1例 であった。そして、全症例で3点式のシートベルトを 着用していた。エアバックが展開したのは6例(42.9%) で、3例(21.4%)が非展開、5例(35.7%)が不明であっ た。他車との衝突を伴わず、何らかの物体に衝突し た単独事故が13例(92.9%)で対向車との正面衝突 が1例(7.1%)であった。衝突速度に関しては不明な ことが多く、判明している速度も運転者の証言による ことが多いため正確には把握できなかった。治療で は緊急手術を行ったのが3例、待機的手術を行ったの が3例であり、そのほかは保存的治療であった。なお、 死亡例はなかった。 受傷から当院へ搬入までの平均時間は46.3±20.4分

Fig. 1 Flow chart of patient selection for the study: Cases of seatbelt injury 入院となった全外傷症例(2013.4-2018.3) n=5,140 シートベルト痕を認める症例 n=14 非自動車乗員 搬入時心肺停止 狭圧外傷 他の車室内構造物と接触した外傷 シートベルト損傷の記載なし n=834 体幹部外傷症例(頸部、胸部、腹部) n=848 非体幹部外傷(頭部、四肢) n=4,292

(3)

(転院の2症例は除く)であった。 3-2.損傷 損傷について、シートベルトの走行部に生じている シートベルト損傷と、それ以外の合併損傷に分けて 表に記す(Table 1)。シートベルト損傷の損傷部位 では、腹部損傷9例(64.3%)、胸部損傷7例(50.0%)、 頸部損傷2例(14.3%)であった(Fig. 2-A)。胸部損 傷では肋骨骨折5例、胸骨骨折3例、肺損傷2例と多く、 腹部損傷では消化管損傷、脾損傷、腰椎骨折が多かっ た(Fig. 2-B、2-C)。 次にシートベルトの走行と生じた損傷を対比し、明 らかにシートベルトの着用位置が不適切であった例 には、Case 1、3、4、13が該当し、腰ベルトが腹部に かかることで生じた小腸または小腸腸間膜損傷が2 例、腹壁筋膜下血腫が1例、肩ベルトが頸部にかかる ことで生じた頸部皮下血腫が1例であった(Table 1)。 3-3.治療

搬入時の身体所見をTable 2に示す。Shock index が1.0以上の症例は1症例(7.1%)であった。転院例2 症例を除いて搬入時CT検査は全例にされており、造 影CT検査は8症例(57.1%)に施行されていた。

治療では、搬入同日に緊急手術を施行した症例

Table 1 Seatbelt injuried cases during 5 years in our hospital

Age Seatbelt injuries Complicating injyuries Operation ISS Seat position Air back

両側肋骨骨折(右4本、左4本、左気胸) 左大腿骨遠位端骨折 小腸損傷、胸椎破裂骨折(2カ所) 左脛骨近位端骨折 胸骨骨折、左肋骨骨折(5本)、左肺挫傷 腰椎横突起骨折(2カ所) Case 3 20 右頸部皮下血腫、右鎖骨部皮下血腫 左右下肢擦過傷、顔面挫傷 ー 1 運転席 不明 Case 4 72 前腹壁筋膜下血腫 左手指打撲 ー 1 運転席 あり Case 5 21 肺挫傷、腹腔内出血 左上顎洞骨折 ー 6 運転席 なし Case 6 53 左肋骨骨折(1本) 外傷性くも膜下出血 ー 17 運転席 あり

Age Seatbelt injuries Complicating injyuries Operation ISS Seat position Air back 胸骨骨折、縦隔血腫、鈍的心損傷 両側肋骨骨折(右3本,左5本)、頸椎脱臼骨折(C5/6) Case 8 53 右鎖骨骨折、腰椎骨折(2カ所) ー 腰椎後方固定術、鎖骨整復固定術 17 運転席 あり Case 9 73 右肋骨骨折(7本,血胸)、胸骨骨折、腹腔動脈周囲血腫 ー ー 17 助手席 あり Case 10 8 膵損傷 ー ー 4 助手席 不明 Case 11 58 頸椎脱臼(C6/7) ー 頸椎後方固定術 16 助手席 あり Case 12 32 脾損傷 ー 脾臓摘出術、ダメージコントロール手術 16 運転席 不明 小腸腸間膜損傷、小腸損傷、結腸腸間膜損傷 小腸切除術 後腹膜血腫 腸間膜縫合術 Case 14 66 右胸壁皮下血腫、脾損傷 ー 脾動脈選択的塞栓術 10 運転席 なし Case 1 運転席 29 右大腿骨骨頭骨折(右股関節脱臼あり) 9 後部座席 42 Case 2 ー Case 13 28 ー あり 不明 不明 なし

Seatbelt injury cases with comlicating

Cases of simple seatbelt injury

Case 7 83 ー 頸椎後方固定術 32 運転席

運転席 43 小腸切除術

76

Summary of all cases including age, seatbelt injury, complicated injury, seating position, injury severity score, types of the operation of the patient and airbag deployment of the vehicle were shown.

Fig. 2 The number of cases in each parts

The number of cases in each injured body region (A), number of cases in detail injuries of the chest (B) and abdomen (C) were shown.

(4)

Table 2  Average vital signs on admission and shock index of the study participants

Values are represented as mean ± SD 搬入時現症 収縮期血圧 142.2±35.4 mmHg(n=12) 拡張期血圧 86.3±20.8 mmHg(n=12) 心拍数 91.0±17.6 /min(n=12) 呼吸数 22.9±8.8 /min(n=8) 体温 36.5±0.6 ℃(n=11)

Grasgow Coma Scale 14.1±1.7(n=12)

Shock Index 0.73±0.40 /min・mmHg(n=12)

は4例(Case 1、12、13、14)(28.6%)であり、こ の中でdamage control surgery(以下、DCS)に至っ た症例は1例(7.1%)であった。外傷性脾損傷を認 めた1例は血管内治療にて塞栓術を行った。 待機的手術に至った3例(Case 7、8、11)では、 脊椎および四肢の手術が施行された(Table 1)。 保存加療を行った7例(Case 2、3、4、5、6、9、 10)では、胸部損傷としては肋骨骨折3例、胸骨骨折 2例、肺損傷2例であった(Table 1)。腹部損傷とし ては、膵損傷であった。

4.考 察

当院でのシートベルトが関与したと考えられる損傷 を有する症例は、5年間で14例認めた。今回の検討対 象は、外表に明らかなシートベルト痕がある例で、か つ体幹部にシートベルト損傷以外の外傷を認めない 例とした。したがって、シートベルトによる損傷であ るが、明らかな外表損傷がない例、シートベルトによ る体幹部損傷とその後に車室内構造物との打撲に よって生じた損傷を合併している例は検討対象外と した。したがって、シートベルト損傷の発生頻度を述 べるには、明らかに過小評価となる。しかし、シート ベルト損傷についての詳細な検討を行ううえでは信 頼性が高いと考える。 ISS 9点未満の4症例は、入院にて経過観察を行い 軽快退院となった。しかし、シートベルトのみによる 損傷例でもISS 9点以上が7例あり、うち6例で手術が 行われていた。したがって、シートベルト損傷でも重 症損傷例があることが改めて明らかにされた。もちろ ん、シートベルトを着用していなければさらに重症の 損傷を負い、致命的な状態になった可能性も否定で きない。したがって、シートベルト着用による一定の 効果があったことは疑う余地がない。 4-1.シートベルト損傷について シートベルト損傷の発生機序であるが、衝突時に おけるシートベルトによる骨格や体幹臓器への圧迫 や衝撃時の加速度変化により起こる。 腹腔内臓器損傷に関しては、腸管損傷の頻度が多 いとされている4,5)が、その原因としては以下があげ られる。すなわち、①衝突時の衝撃で体幹が潜り込 むことで腹腔内臓器がシートベルトと脊柱の間に挟ま れ、直接外力が加わり圧迫損傷を受ける。いわゆる サブマリン現象と呼ばれるものであり、衝突時の衝撃 でシートが変形し骨盤部を保護していたシートベルト が上方に移動することにより起こるとされる。②機能 的な閉鎖腔を形成した腸管に外圧が加わり、内圧が 上昇することで破裂が生じる。③腸管を固定する腸 間膜や血管等が衝撃時の外力によって牽引され、腸 管漿膜の剝離をきたし腸管損傷が起こる。本検討で も腹部損傷が64.3%ともっとも多く、とくに小腸腸間 膜損傷などがみられた。 胸部損傷に関してはシートベルトによる衝撃時の 外力により起こると考えられる。すなわち、肋骨骨折、 胸骨骨折、肺損傷、心損傷、大血管損傷等である。 これらは、3点式シートベルトによる直接の圧迫によ り起こることが多いと考えられるが、ハンドル、エア バックなどにより損傷する可能性もあり、受傷時の状 況を詳細に確認する必要がある6)。また、胸骨骨折な どは、発見が困難という報告もあり、詳細な問診や初 期診断および画像による評価が必要である3)。そのほ かのシートベルト損傷に関しては、椎体の損傷などが あるとされている3) シートベルトは正しく着用することで衝突時におけ る乗員の前方移動を抑制し、車室内構造物との打撲 を防ぐ。この有効性は科学的に証明されているが、 当然、衝突速度が大きな場合はシートベルトによる圧 迫などで骨格や臓器損傷をきたす。したがって、本 検討でみられた肋骨骨折、胸骨骨折、脾損傷、腰椎

(5)

損傷などは正しい着用でも衝突速度が大きい場合に は生じ得る。 一方で、シートベルトの着用法が正しくないかある いは正しい位置にかかっていないことによる損傷もみ られる。一般にシートベルトの走行は肩ベルトが鎖骨 中央、胸骨中央を、腰ベルトが左右の上前腸骨棘上 を通過する。したがって正しい位置に着用していれ ば、骨格が固定されるので頸部や腹部を圧迫するこ とはない。本検討では少なくとも4例でシートベルト の位置が適切でなく、結果的に小腸損傷、小腸腸間 膜損傷といった腹部内臓器損傷や頸部の皮下血腫を 生じていた。Mizunoら7)は乗用車に乗車してシート ベルトを着用した男性のベルト走行部を詳細に検討 した。その結果、本人が正しく着用したつもりでも腰 ベルトが左右上前腸骨棘部から外れている例が多く みられると報告している。また、Hitosugiら8,9)は、後 部座席に乗車した低身長の妊婦では肩ベルトが頸部 に接触していることがあり、衝突試験によって頸部が 強く圧迫されることを明らかにした。このように、シー トベルトの走行が適切でないことによって生じる損傷 もあり、本検討ではその損傷が具体的に明らかにさ れた。 2012年7月1日から後部座席の中央部を含めた全席 で3点式シートベルトの着用が義務づけられた。した がって、今後はシートベルトによる損傷が交通外傷 の一つの形態として増加していくと予想される。自動 車に乗車する人に対しては、シートベルトを着用する ように指導することはもちろんであるが、シートベル トを正しく着用しているかを確認するように促すこと も必要である。また、ほとんどの前面衝突でエアバッ クが展開するが、あくまでエアバックはシートベルト を正しく着用していた場合に効果を発揮する。シート ベルトを着用していないときにエアバックが展開した 場合には、その損傷の重症度が上がることも啓発す べきであろう10) 4-2.診断について まず、詳細な受傷時の状況と自動車の損傷形態の 把握と聴取が必要である。これは受傷時にどのよう な外力を受けたかが外傷の診断に役立つからである。 場合によっては、搬入救急隊に現場の写真を撮って きてもらうことが一助になると考える。 搬入後は、『外傷初期診療ガイドライン』(改訂第5 版、へるす出版)に準じて初期診療から行っていく ことになるが、シートベルト損傷を疑う外表の打撲痕 などを確認した場合には、注意が必要である。 シートベルト損傷では、体表からのアプローチでは 診断が困難なことも多く、CT検査が必要である。CT 検査では、胸腹部だけでなく椎体などの評価もでき るので、非常に有用である。腹部外傷に特化すれば、 その診断能は感度81〜94%、特異度80〜99%との報 告がある11〜14)。消化管損傷に関しては穿孔を示唆す るような腸管壁の途絶所見などに関して、特異度は 高いものの感度は低く、受傷直後に診断されないこと も多い15)。しかしながら、受傷後のCT検査で診断で きなくても4〜6時間後のフォローCT検査で感度およ び特異度が100%になるとの報告もある16)。本検討で は、搬入同日に体幹部手術となった症例は4症例で あったが、保存加療を選択したものの消化管穿孔や 出血により手術に移行した体幹部損傷症例は認めな かった。しかし、遅発性に腸管損傷が判明すること もあり、腹部にシートベルト痕を認めるような症例で は、初診時に消化管穿孔が疑われなくても、少なくと も1日は、注意深い厳重な全身状態の観察が必要であ ると考えられる。したがって、当院ではシートベルト 損傷を認める腹部鈍的損傷に対して保存加療を選択 した場合は、入院のうえ全身状態の慎重な観察と損 傷部の評価を行い、症状に変化がなくても初回CT検 査から6〜12時間後にフォローCT検査を行っている。 4-3.治療について 外傷の初期診療にて重要なのは、出血と汚染のコ ントロールであり、外傷手術の優先順位は、出血の コントロール→損傷部位の確認→汚染のコントロール →全身状態が許せば根治術に向かうとされている17) 保存加療を選択する場合でも、身体所見の慎重な フォローと手術や血管内治療を迅速に行える準備を しておくべきである。

(6)

ISSが9点以上の10症例において、頸部、胸部、腹 部のシートベルト損傷を単独部位で認めたのは4例 (40.0%)であり、6例では多部位の損傷であった。3 点式シートベルトを着用している場合で、シートベル ト痕を認めるときには、単独の部位だけでなく他部位 の損傷を考慮して診療を行う必要があると考えられ る。

5.結 語

自動車乗員の交通外傷診療において、シートベル ト着用の有無をまず確認することは診断および治療 において重要である。そして、着用時には3点式シー トベルトの走行を念頭に置き、走行位置が適切でな い場合には頸部や腹部にも損傷が及ぶことがあるた め、一見、軽微な損傷と考えられても経過とともに症 状が現れ重症化することがあるので、シートベルト痕 を認めるような症例では、慎重なフォローが必要と考 えられる。 本検討に関しての利益相反はありません。 【参考文献】 1) 警察庁 / 日本自動車連盟(JAF):シートベルト着用状況全国 調査(2017). https://jaf.or.jp/-/media/1/2590/2610/2639/ 2653/sb2017.pdf?la=ja-JP 2) 斎藤大蔵,三村一夫,牧野明男,他:シートベルトによる消 化管損傷の実験的研究.日本外傷研究会雑誌,1992;6: 25-33. 3) 大谷勲,武内康雄,蒋秀妍:シートベルト損傷―自験例 2 例 と文献的考察.法医学の実際と研究,1990;33:227-235. 4) Towne JB, Coe JD: Seat belt trauma of the colon. Am J Surg, 1971; 122: 683-685. 5) 本宮嘉弘,山内春夫:衝突時のシートベルト座面変形による シ ー ト ベ ル ト 損 傷. 日 本 交 通 科 学 協 議 会 誌,2006;6: 40-45. 6) 太田智之,加納宣康,草薙洋,他:シートベルトによる腹腔 内臓器損傷に対する治療戦略.日本腹部救急医学会雑誌, 2012;32:1201-1207. 7) Mizuno K, Yoshida R, Nakajima Y, et al.: The effect of inboard shoulder belt and lap belt loadings on chest deflection. Stapp Car Crash J, 2018; 62: 67-91. 8) Hitosugi M, Koseki T, Hariya T, et al.: Shorter

pregnant women restrained in the rear seat of a car are at risk for serious neck injuries: Biomechanical analysis using a pregnant crash test dummy. Forensic Sci Int, 2018; 291: 133-137.

9) Hitosugi M, Koseki T, Kinugasa Y, et al.: Seatbelt paths of the pregnant women sitting in the rear seat of a motor vehicle. Chin J Traumatol, 2017; 20: 343-346.

10) Renson A, Musser B, Schubert FD, et al.: Seatbelt use is associated with lower risk of high-grade hepatic injury in motor vehicle crashes in a national sample. J Epidemiol Community Health, 2018; 72: 746-751.

11) Molhotra AK, Fabian TC, Katsis SB, et al.: Blunt bowel and mesenteric injuries: the role of screening computed tomography. J Trauma, 2000; 48: 991-998.

12) Stuhlfaut JW, Soto JA, Lucey BC, et al.: Blunt abdominal trauma: performance of CT without oral contrast material. Radiology, 2004; 233: 689-694. 13) Killeen KL, Shanmuganathan K, Poletti PA, et al.:

H e l i c a l c o m p u t e d t o m o g r a p h y o f b o w e l a n d mesenteric injuries. J Trauma, 2001; 51: 26-36. 14) Kopelman TR, Jamshidi R, Pieri PG, et al.: Computed

tomographic imaging in the pediatric patient with a seatbelt sign: still not good enough. J Pediatr Surg, 2018; 53: 357-361.

15) Brofman N, Atri M, Hanson JM, et al.: Evaluation of b o w e l a n d m e s e n t e r i c b l u n t t r a u m a w i t h multidetector CT. Radiographics, 2006; 26: 1119-1131.

16) Hagiwara A, Takasu A: Transcatheter arterial embolization is effective for mesenteric arterial hemorrhage in trauma. Emerg Radial, 2009; 16: 403-406.

17) Jacobs LM, Luk SS: Advanced Trauma Operative Management: Surgical Strategies for Penetrating Trauma. 2nd Edition, Cine-Med, Inc., Woodbury, Connecticut, 2010, p143-202.

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The trunk injury of the body due to seatbelt:

A case series analysis

Wataru ISHII

(1)

  Ryoji IIDUKA

(1)

  Masahito HITOSUGI

(2)

Abstract

【Introduction】The incidence of severe injuries caused by the extensive vehicle collisions has decreased owing to the legislation of wearing a seatbelt for all vehicle passengers and improvement of vehicle safety equipment. However, body injuries due to seatbelt itself have been increased.

【Objective】To clarify the patterns and severities of body injuries due to seatbelt compression, retrospective analysis was performed.

【Material & Methods】A total of 14 cases of trunk injuries due to a seatbelt compression in our critical care center from April 2013 to May 2018 were reviewed.

【Results】The average age of all patients was 49 years old. Ten patients were vehicle drivers and 3 were front seat passengers. Among 10 patients with injury severity score of 9 or more, 4 patients had severe injury in the neck, thorax, or abdomen, and 6 patients suffered from multiple severe injuries in the neck, thorax, and/or abdomen. For 4 patients, because the seatbelt was considered as inappropriately positioned, they suffered from mesenteric injury and fascial hemorrhage in the abdominal wall owing to the compression of the abdomen by lap belt or subcutaneous hemorrhage of the neck owing to the compression of the neck by shoulder belt. 【Conclusion】To check the seatbelt using situation is important for a correct diagnosis of traffic injurie of

motor vehicle passengers. Even if the injury severity is considered as minor, patients should be carefully followed for a while after admission.

Key words:motor vehicle accident, Seat belt injury, Injury seventy, Emergency medicine

(1)Kyoto Daini Red Cross Hospital, Critical Care Center, Emergency of Medicine (2)Shiga University of Medical Science, Legal Medicine

Fig. 2 The number of cases in each parts
Table 2  Average  vital  signs  on  admission  and  shock  index of the study participants

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