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山本 冴里 大山 万容

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90

もっと貪 欲 に、いろんな言 語 に興 味を持 ちたい、知りたい、習 得 したい

―単 一 言 語 主 義 の強 い場 で、実 践 により複 言 語 教 育 の価 値 を問 う―1 山 本 冴 里 ・大 山 万 容 1. 問 いの設 定 日 本 の現 行 外 国 語 教 育 施 策 において、英 語 重 視 は圧 倒 的 である。文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 国 際 教 育 課 (2015)から算 出 すると22016 年 5 月 1 日 時 点 で英 語 以 外 の「外 国 語 」も中 学 校 で学 ぶ生 徒 数 は、比 率 にして全 体 のわずか約 0.09%にす ぎない。高 等 学 校 の場 合 にはこの数 字 は約 1.3%であり、中 学 校 に比 して大 幅 に増 加 しているものの、それでも 100 人 に一 人 程 度 でしかない3。大 学 入 試 センター試 験 でも、「外 国 語 」として選 択 できる 5 言 語 のなかで「英 語 」の占 有 率 は極 めて高 く、例 年 、98%以 上 の受 験 者 が「英 語 」を選 択 する4 学 校 外 で多 少 触 れた、という例 もあろうが、おおむね、日 本 の大 学 生 の大 多 数 は、 英 語 以 外 の外 国 語 は未 習 の状 態 で入 学 している。一 方 、大 学 入 学 以 降 においては、 留 学 や国 際 共 同 学 習 の機 会 は増 加 ・多 様 化 していくのだが、そうした機 会 もまた、必 ずしも行 き先 の現 地 言 語 に関 する教 育 に下 支 えされ ているわけではない。一 見 矛 盾 するようではあるが、留 学 や国 際 共 同 学 習 機 会 の多 様 化 や増 大 は、時 には、「多 様 化 する行 き先 すべてに対 応 することはできないから、どこに行 っても通 用 する(はずの) 英 語 教 育 (だけ)を、より充 実 させる」という論 理 のもと、教 育 制 度 上 の選 択 肢 を狭 め 1 本 稿 内 容 の一 部 は、言 語 文 化 教 育 研 究 学 会 第 三 回 年 次 大 会 (2017)での口 頭 発 表 内 容 に 基 づき、なおかつそれを発 展 させたものである。 2 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 国 際 教 育 課 (2015)第 8 項 中 の表 より算 出 した。 3 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 国 際 教 育 課 (2015)第 8 項 中 の表 より算 出 した。なお、同 文 書 に よると、2016 年 5 月 1 日 現 在 での中 学 校 在 籍 者 数 は 3,406,029 名 であり、同 日 時 点 で、英 語 以 外 の外 国 語 の科 目 を中 学 校 で学 ぶ生 徒 数 は 3,128 名 である。高 等 学 校 在 籍 者 数 は 3,309、342 名 であり、同 日 時 点 で、英 語 以 外 の外 国 語 の科 目 を高 等 学 校 で学 ぶ生 徒 数 は 44,539 名 である。 しか も、こ の 数 字 は、 全 体 の 生 徒 数 が 実 数 で あ るのに 対 して 、 英 語 以 外 の 科 目 を 学 ぶ 生 徒 数 は 延 べ数 で産 出 されている(1 人 の生 徒 が同 一 言 語 の異 なる 2 つの科 目 を履 修 した場 合 には、それ ぞれの科 目 において集 計 され、計 2 人 となる。また 1 人 の生 徒 が異 なる 2 つの言 語 を履 修 した際 にも、それぞれの言 語 において集 計 され、計 2 人 となる)。したがって、実 際 には、英 語 以 外 の外 国 語 を学 習 している生 徒 数 の割 合 はさらに下 がる。 4 実 施 団 体 である独 立 行 政 法 人 大 学 入 試 センターが、「受 験 者 数 ・平 均 点 の推 移 (本 試 験 )」と して例 年 ウェブサイト上 で公 開 しているデータより算 出 した。

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 ていくことさえもある。 筆 者 らは、教 育 制 度 上 の選 択 肢 は、現 実 的 に可 能 なかぎり多 様 化 すべきであると 考 える。しかしそれができない状 況 、あるいは不 十 分 な状 況 にあるとすれば、特 定 の 個 別 的 な言 語 の能 力 ではなく、後 述 する「価 値 として・能 力 としての複 言 語 主 義 」の 伸 長 を目 的 とした実 践 を構 想 ・実 施 することが必 要 である。 本 稿 では、複 言 語 主 義 の伸 長 を念 頭 において構 想 された実 践 (山 本 2017)に参 加 した学 生 によるアンケート評 価 を分 析 対 象 として、そうした実 践 が、第 二 、第 三 の外 国 語 学 習 に対 する学 習 者 の態 度 を変 え得 るかどうか、変 えるとすればどのように変 え るのかを検 討 したい。言 い換 えれば本 研 究 は、山 本 (2017)の実 践 が、能 力 としての 複 言 語 主 義 伸 長 という点 でどのような意 義 があったのか、を問 うものである。 以 下 2.では、現 行 の日 本 の外 国 語 教 育 施 策 における英 語 偏 重 に対 する様 々な 批 判 と、打 開 策 の提 案 を先 行 研 究 ・事 例 より概 括 する。3.で、本 稿 で報 告 する実 践 の理 論 的 背 景 と概 要 を述 べ、4.で、新 たな外 語5学 習 に対 する学 生 の態 度 について、 実 践 前 後 のアンケートおよび授 業 に対 する振 り返 りのコメントから、変 化 があったのか どうか、あったとすればどのような変 化 だったのかを分 析 する。5.では、アンケート調 査 から推 断 できる範 囲 で、英 語 学 習 経 験 が新 たな外 語 学 習 意 欲 に与 える影 響 につい て記 す。最 後 に 6.で結 論 と今 後 の課 題 を述 べる。 2. 英 語 偏 重 に対 する様 々な批 判 と、打 開 策 の提 案 2.1 三 通 りの批 判 英 語 偏 重 に対 する批 判 は頻 見 されるが、その内 容 は実 際 には重 なりつつも、基 本 的 には以 下 三 種 類 の要 素 のいずれかを含 むものになっている。第 一 は、英 語 教 育 を これほどまでに重 視 する根 拠 や妥 当 性 を疑 問 視 するもの、第 二 に、他 /多 言 語 の視 点 や多 様 性 を肯 定 する観 点 が欠 如 していることを憂 うもの、第 三 には、英 語 偏 重 にと 5 現 代 日 本 語 においては、「母 国 語 」と「母 語 」が異 なる意 味 を持 つものとして使 用 されている。し かし「外 国 語 」に対 しては、「母 国 語 」にとって「母 語 」の位 置 関 係 にある用 語 がない。このことで起 こる問 題 は、「非 母 語 」だが「外 国 語 」でない言 語 を表 現 する用 語 がない、というものである。たとえ ば、現 代 日 本 人 の多 くはアイヌ語 も手 話 も理 解 しないが、それらが「外 国 語 」か、と言 われればため らうことになるのではないだろうか。そこで本 稿 で報 告 する実 践 においては、また実 践 終 了 後 のアン ケートにおいても、「外 国 語 」に対 して、「母 国 語 」にとって「母 語 」の位 置 関 係 にある用 語 として「外 語 」を用 いている。この点 に関 する議 論 の詳 細 は、山 本 ( 2010)を参 照 されたい。

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 もない、国 家 語 としての日 本 語 能 力 が低 下 することを危 惧 したものである。 第 一 の批 判 の例 としては、寺 沢 (2014)が、英 語 教 育 が「国 民 教 育 」として、すなわ ち自 明 かつ自 律 的 なものとして成 立 する歴 史 的 な過 程 を検 証 し、「国 民 教 育 」化 が、 英 語 教 育 の必 然 的 な発 展 によって達 成 されたわけではなく、入 試 制 度 の変 更 や高 校 進 学 率 の上 昇 、人 口 動 態 、教 育 言 説 の意 図 せざる作 用 、政 治 経 済 構 造 の変 化 など、「中 学 校 英 語 にとって外 在 的 な要 因 (p.246)」が複 雑 に絡 まりあった結 果 、「偶 然 の産 物 」として生 まれたことを明 らかにした。また江 利 川 (2017)は、「日 本 の異 常 な までの英 語 一 辺 倒 主 義 」を、「①英 米 など西 洋 列 強 への畏 怖 と劣 等 感 」「②教 育 予 算 の低 さ」「③米 国 の対 日 文 化 戦 略 と日 本 の迎 合 」「④米 国 主 導 のグローバリズムへ の順 応 」などによってもたらされた、と論 じる 。さらに寺 沢 (2015)は、現 代 日 本 社 会 に おいて仕 事 での英 語 使 用 の必 要 性 がある人 は実 際 にはごく一 部 に限 られることや、 「グローバル化 の進 展 により英 語 使 用 が年 々増 えている」という言 説 には根 拠 が薄 い ことを、定 量 的 なデータから検 証 している。 第 二 の種 類 の批 判 にお いては、外 国 語 の習 得 は、複 眼 的 な思 考 や多 元 的 な認 識 を導 くものであると同 時 に母 語 や母 文 化 を捉 えなおすきっかけになるものとして位 置 づけられることが多 い。近 年 の代 表 的 なものとしては、政 策 の面 から論 じた森 住 ら (2016)が挙 げられるが、他 にも、外 国 語 が孕 む他 者 性 に価 値 を認 め 、それを自 らの 内 部 に取 り込 むことを奨 め、同 時 に異 文 化 のフィールドに踏 み 込 んでいくことを奨 め る堀 (2005)、新 しい言 語 を知 ることを、「これまで知 らなかった『外 部 』と対 峙 すること、 ひいては新 しい自 分 を発 見 することでもある」とした田 口 (2015)などがこれに相 当 しよ う。岩 坂 ・吉 村 (2012)は、小 学 校 の国 際 理 解 教 育 の観 点 から、英 語 偏 重 により、子 どもがほかの言 語 を受 け入 れる態 度 を育 成 することができないことを指 摘 している。さ らに吉 村 ・ヤング(2016)は、小 学 校 教 員 養 成 に関 して、教 材 やカリキュラム開 発 だけ でなく,担 当 教 員 の養 成 ・採 用 ・研 修 も全 て英 語 の運 用 ・指 導 に関 わるものに集 中 し ていることを指 摘 し、複 言 語 主 義 に基 づく教 員 養 成 モデルを示 している。 第 三 は、とくに年 少 者 に対 する英 語 教 育 関 連 議 論 において顕 著 である。文 部 科 学 省 が 2004 年 6 月 に実 施 した調 査 (文 部 科 学 省 2004)においては、「小 学 校 で国 語 や算 数 などのように英 語 を教 科 にしたり,すべての小 学 校 で必 ず英 語 活 動 を行 うこ とにしたりすべきか」という問 いに対 して、保 護 者 9598 名 、教 員 2234 名 の回 答 者 のう ち、保 護 者 の場 合 には 21.5%が、教 員 の場 合 には 54.1%が否 定 的 な選 択 肢 を選 ん だ。こうした否 定 的 な回 答 者 のうち、その理 由 に「正 しい日 本 語 を身 に付 けることがお ろそかになると思 うから」を選 んだ者 は、保 護 者 の 38.8%、教 員 の 44%もの割 合 に上

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 る。どの程 度 の時 間 を英 語 教 育 に割 くことで、どれほど国 家 語 としての日 本 語 能 力 が 低 下 する可 能 性 があるのかということについて、論 証 ないし実 証 した研 究 は管 見 のか ぎり見 当 たらないが、「英 語 の前 にまず国 語 」であるとか、「英 語 より国 語 が大 切 」とい った表 現 は、大 手 報 道 機 関 や各 種 メディアでも頻 見 され、このテーマに関 する主 流 の 言 説 のひとつとなっている。こうした第 三 の種 類 の批 判 が、第 二 の種 類 の批 判 と異 な るのは、第 二 の種 類 の批 判 が、おおむね英 語 教 育 だけでは不 足 であるとしてパイを 広 げていくことを求 めるのに対 して、第 三 の種 類 の批 判 においては、国 語 と英 語 の二 項 対 立 のなかで、いわばパイの大 きさを固 定 したゼロサムゲームのなかで議 論 が行 わ れている点 である。国 語 と英 語 のあいだでパイの奪 いあいが起 こっている後 者 におい て、さらに他 /多 言 語 が言 及 されるケースは、ほぼ見 られない。 2.2 打 開 策 として提 案 されている事 柄 と先 行 事 例 次 に、前 項 にまとめた批 判 を踏 まえ、打 開 策 として提 案 されている事 柄 について概 括 したい。こちらは、(1)政 策 レベルへの提 言 、(2)機 関 レベルでの多 言 語 教 育 の再 構 成 、(3)実 践 レベルでの改 善 という三 段 階 、これに加 え、(4)広 域 ネットワークを可 能 に するような理 論 的 枠 組 みやツールの作 成 という四 種 に分 ける。 2.2.1 政 策 レベルの提 言 日 本 の外 国 語 教 育 における多 言 語 化 への提 案 は、当 然 予 想 されることながら 2.1 項 に述 べた第 二 の批 判 と親 和 性 が高 く、第 二 の批 判 を行 う者 が同 一 文 書 中 で日 本 の外 国 語 教 育 における多 言 語 化 を 提 案 する、といった流 れはよく見 られる。しかし、 一 論 考 内 での提 案 を超 え、政 策 提 言 という形 で実 行 された多 言 語 化 への提 案 は、 現 在 までのところ、2014 年 2 月 に日 本 言 語 政 策 学 会 の多 言 語 教 育 推 進 研 究 会 が 行 ったものに限 られる。同 研 究 会 は、高 等 学 校 レベルで、英 語 に加 え、英 語 以 外 の7 つの言 語 (アラビア語 、韓 国 ・朝 鮮 語 、スペイン語 、中 国 語 、ドイツ語 、フランス語 、ロ シア語 ) から 1 科 目 以 上 の選 択 必 修 化 を関 係 諸 機 関 に提 言 した。詳 細 は森 住 ら (2016)に詳 しいが、提 言 を送 付 した機 関 数 は 140 を超 え、上 掲 7 言 語 の学 習 指 導 要 領 (案 )も送 付 された。

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 2.2.2 機 関 レベルでの多 言 語 教 育 の再 構 成 機 関 レベルにおいては、全 国 に複 数 ある外 国 語 大 学 や外 国 語 学 部 のよ うな、多 言 語 教 育 が機 関 存 立 の根 幹 にかかわる大 学 のほか、京 都 大 学 文 学 研 究 科 、武 蔵 野 大 学 人 文 学 部 なども多 言 語 教 育 に力 を入 れている。こうした機 関 は、それぞれ自 身 の機 関 における多 言 語 教 育 をまとめる出 版 物 を出 しているが、多 くは、所 属 教 員 が一 章 ずつを担 当 し、それぞれ各 言 語 の魅 力 を訴 えるという形 で、つまり個 別 的 な外 国 語 の教 育 を束 にして差 し出 したような形 になっている。 一 方 、平 高 ら(2005)による『外 国 語 教 育 のリ・デザイン――慶 應 SFC の現 場 から』 は、第 二 部 以 降 については他 例 と同 様 であるものの、第 一 部 では、慶 應 大 学 湘 南 藤 沢 キャンパス(SFC)における多 言 語 教 育 の理 念 や変 遷 について多 くのページを割 き、 「英 語 の汎 用 性 を充 分 認 識 しつつ、だからといって『右 に倣 え』式 に英 語 一 辺 倒 に流 れるようなことのない多 言 語 主 義 の方 針 」を堅 持 する6、という同 機 関 の方 針 について、 詳 細 な議 論 を行 っている。 2.2.3 実 践 レベルでの改 善 第 二 、第 三 の外 国 語 教 育 は、それ自 体 として、英 語 偏 重 への抵 抗 力 を持 つ。しか し同 時 に、そうした言 語 教 育 のほぼすべてが、カリキュラムにおける性 質 上 、「ドイツ語 」 「中 国 語 」「フランス語 」など、個 別 言 語 の能 力 の伸 長 に焦 点 化 されており、なおかつ、 そうした個 別 言 語 の大 多 数 は、それぞれ外 交 政 策 の一 部 に国 家 語 の言 語 普 及 を掲 げる強 国 のいずれかに結 びついた大 言 語 である。そのため、こうした言 語 は経 済 的 価 値 や象 徴 資 本 を産 むものとしてみなされやすく、広 く他 /多 言 語 に価 値 を認 めるとい う点 においては限 界 がある。 一 方 、特 定 の個 別 的 な言 語 に焦 点 化 していない実 践 としては、高 等 教 育 レベルで は、 本 稿 で の 分 析 対 象 と も なってい る 山 本 (2017)で描 かれた 実 践 のほ か、岩 居 ら (2017)が報 告 されている。岩 井 ら(2017)の実 践 では、学 生 たちは、デジタルデバイス を活 用 しつつ、一 学 期 に 3 言 語 を学 んでいる。また、近 隣 の台 湾 での例 としては、開 6 引 用 は平 高 ら(2005)からだが、本 稿 執 筆 時 点 で最 新 の 2017 年 版 においては、この表 現 は「英 語 の汎 用 性 に鑑 みて英 語 使 用 者 になることを促 しつつ、「右 に倣 え」式 の英 語 一 辺 倒 に流 れる浅 薄 さはあくまで排 して、多 言 語 主 義 の言 語 教 育 を是 としている」というように、少 々の変 更 が加 えら れている。

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 南 大 学 における「多 言 語 多 文 化 同 時 学 習 支 援 」が、孫 ・和 田 ・李 ・長 友 (2015)、和 田 ・孫 ・李 ・長 友 (2015)、長 友 (2016)で報 告 されている。これは、「学 習 者 がお互 い に母 語 と母 文 化 、及 び既 習 の言 語 と文 化 を教 え合 い、学 び合 いながら、自 主 的 ・主 体 的 に 多 言 語 を 習 得 し 、 多 文 化 を 理 解 で き る よ う に な る こ と を 目 指 す ( 長 友 2016:455)」ものであるという。もっとも、教 室 での実 践 という形 に限 定 しなければ、日 本 国 内 でも、多 くの大 学 でタンデム(言 語 交 換 活 動 :希 望 者 がペアになって、互 いの 言 語 を学 びあう)が行 われている。 2.2.4 複 数 言 語 間 で広 域 ネットワークを可 能 にするような理 論 的 枠 組 み、ツールの 作 成 近 年 、様 々な言 語 教 育 のあいだに広 域 のネットワークを可 能 にした代 表 的 な概 念 が、欧 州 で提 案 された複 言 語 主 義 の概 念 (3 項 に詳 述 )であり、欧 州 評 議 会 によって 普 及 を後 押 しされた「ヨーロッパ言 語 共 通 参 照 枠 Common European Framework of Reference(以 下 、CEFR)」である。日 本 でも、CEFR の影 響 は広 範 なものとなりつつあ る 。CEFR に 言 及 した 研 究 論 文 や 発 表 は 数 多 あ る 。 公 的 機 関 に よ っ て 、 主 と し て CEFR の影 響 を受 けて作 成 されたツールとしては、国 際 交 流 基 金 ( 2010)による「JF 日 本 語 教 育 ス タ ン ダ ー ド ( 以 下 「 ス タ ン ダ ー ド 」 ) 」 、 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 (2013)による「各 中 ・高 等 学 校 の外 国 語 教 育 における「CAN-DO リスト」の形 での学 習 到 達 目 標 設 定 のための手 引 き(以 下 「手 引 き」)」が挙 げられる。ただし、CEFR が 広 く多 様 な言 語 を、その議 論 の適 用 対 象 としているのに対 して、「スタンダード」およ び「手 引 き」は、それぞれ一 言 語 (「スタンダード」は日 本 語 のみ、「手 引 き」は実 質 的 に英 語 のみ)しか適 用 対 象 としていない。その意 味 において、「スタンダード」や「手 引 き」は、多 様 な外 国 語 教 育 のあいだに広 域 ネットワークを作 るものとしての作 用 は果 た していない。 一 方 、国 際 文 化 フォーラム(2012)による「外 国 語 学 習 のめやす 2012-高 等 学 校 の中 国 語 と韓 国 語 教 育 からの提 言 」においては、中 国 語 ・韓 国 語 を「隣 語 」として学 習 の「めやす」を作 り、なおかつ、両 言 語 にとどまらず「多 様 なことばを学 べる教 育 環 境 を日 本 の学 校 に整 備 (p.3)」することを訴 えるという点 で、英 語 のみの偏 重 に対 して、 複 数 言 語 間 で広 域 のネットワークを可 能 にするようなツールの作 成 という点 から、一 石 を投 じたものとなっている。

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 また、山 西 優 二 を中 心 とする「多 言 語 ・多 文 化 教 材 研 究 」のプロジェクト7は、地 域 や学 校 の現 状 を踏 まえつつ、多 言 語 ・ 多 文 化 教 材 を開 発 し、多 言 語 ・ 多 文 化 教 育 実 践 を提 案 することを志 向 して、オンラインで教 材 や実 践 例 、関 連 研 究 を紹 介 している。 3. 実 践 の理 論 的 背 景 と概 要 本 稿 では、山 本 (2017)に述 べられたものと同 一 の実 践 を分 析 対 象 とする。前 項 で の分 類 に則 ると、これは、2.2.3 の実 践 レベルでの改 革 例 にあてはまるものであり、な おかつ、特 定 の個 別 的 な言 語 の能 力 伸 長 には焦 点 化 していないという点 で特 例 的 である。この実 践 (山 本 2017 で詳 述 )は、大 きく三 部 に分 かれる。第 一 部 「言 語 学 習 /教 育 /習 得 に賭 けられているものとは?」は、言 語 (およびその学 習 /教 育 /習 得 ) が社 会 的 にどのような意 味 を持 っているのかということについての講 義 である。第 二 部 「言 語 多 様 性 の促 進 と管 理 」では、言 語 の多 様 性 促 進 と単 一 言 語 への収 斂 の動 き が ぶ つ かった 事 例 に つ い て検 討 され る 。 第 三 部 「 自 律 的 な 言 語 習 得 の 方 法 」 で は 様 々な言 語 教 授 法 およびその背 景 にある学 習 観 の変 遷 についての講 義 の後 に、言 語 の自 律 学 習 のための様 々な方 法 が紹 介 されている。実 践 の開 講 された学 部 では、 一 年 生 全 員 が履 修 する必 修 授 業 であり、人 数 が多 いため、全 体 として講 義 型 の実 践 となっている。この実 践 は、個 別 的 な言 語 能 力 の伸 長 ではなく、「価 値 として、また能 力 としての複 言 語 主 義 」の成 長 を支 えることを念 頭 に構 想 されている。 価 値 としての複 言 語 主 義 :言 語 に対 する寛 容 性 を養 い、その多 様 性 を積 極 的 に容 認 する基 礎 となる。複 言 語 の話 者 が自 らのその能 力 を意 識 することは、自 分 自 身 あるいは他 者 が使 用 する言 語 変 種 がそれぞれ同 等 の価 値 を持 つことへ の同 意 に結 びついていく(欧 州 評 議 会 言 語 政 策 局 2016/2007:19) 能 力 としての複 言 語 主 義 :すべての話 者 に内 在 する、単 独 でないし教 育 活 動 によって導 かれて 2 つ以 上 の言 語 を用 いたり、学 んだりする能 力 (欧 州 評 議 会 言 語 政 策 局 2016/2007:18-19) 山 本 (2017)によると、8 週 間 (1.5 時 間 ×8 回 )の実 践 全 体 は、次 の 3 部 に大 別 さ れる。第 一 部 は「言 語 学 習 /教 育 /習 得 に賭 けられているもの」と題 し、言 語 (および

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 その学 習 /教 育 /習 得 )が社 会 的 にどのような意 味 を持 ってきたのか、持 たされてき たのかということについて講 義 された。第 二 部 は「言 語 多 様 性 の促 進 と管 理 」をテーマ として、個 人 /共 同 体 レベルでの、言 語 多 様 性 の促 進 と管 理 について論 じられた。 第 三 部 は小 題 を「自 律 的 な言 語 習 得 のための方 略 」として、言 語 教 授 法 およびその 背 景 にある学 習 観 の変 遷 について講 義 された。その後 、言 語 の自 律 学 習 のための 様 々な方 法 が紹 介 されるとともに、欧 州 で構 想 された「言 語 への目 覚 め活 動8」を行 う 実 体 験 の場 が提 供 された。 山 本 (2017)では各 部 の内 容 について詳 述 されているが、それが履 修 者 に対 して どのような影 響 を持 ったかという点 については、触 れられていない。そこで以 下 では、 参 加 した学 生 によるアンケート評 価 を分 析 対 象 として、そうした実 践 が、第 二 、第 三 の 外 国 語 学 習 に対 する学 習 者 の態 度 を変 え得 るかどうか、変 えるとすればどのように変 えるのかを検 討 したい。 4. 新 たな外 国 語 学 習 に対 する学 生 の態 度 と変 化 4.1 調 査 方 法 8 週 間 の実 践 前 後 に、受 講 生 に対 して、紙 媒 体 でのアンケート調 査 を実 施 した。 受 講 者 数 、回 答 者 数 と回 答 率 は表 1 に示 した通 りである。 表 1 アンケート調 査 回 答 者 数 と回 答 率 年 度 授 業 登 録 者 数 実 践 前 実 践 後 2017 114 名 回 答 者 数 回 答 率 回 答 者 数 回 答 率 104 名 91.2% 102 名 89.5% アンケート調 査 で質 問 した項 目 は多 岐 にわたるが、本 稿 では、とくに新 たな外 国 語 を学 ぼうとする意 欲 と動 機 、およびそうした学 習 に関 する認 識 に関 する回 答 に注 目 す る。アンケート調 査 の結 果 は個 人 ごとに紐 づけられた形 にはなっておらず、したがって

8 Pluralistic approaches to languages and cultures の一 部 としての Awakening to languages の

活 動 ( 「 言 語 へ の 目 覚 め 活 動 」 ) を 参 照 し た 。 こ れ は 欧 州 現 代 語 セ ン タ ー の ウ ェ ブ サ イ ト <http://carap.ecml.at/Keyconcepts/tabid/2681/language/en -GB/Default.aspx>(2017 年 1 月 27 日 検 索 )に詳 しく、日 本 語 で読 める文 献 としては、大 山 (2016)が詳 細 な紹 介 を行 っている。

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 個 々人 の実 践 前 後 での<変 化 >を問 うことはできないが、全 体 的 な傾 向 として、実 践 前 後 に明 らかな違 いがあった場 合 にはそれを明 示 する。なお、次 項 のグラフは、回 答 者 の中 での選 択 肢 別 回 答 率 を示 すものとなっている。 4.2 調 査 結 果 まず、新 たな外 国 語 への学 習 意 欲 と学 習 能 力 へ の自 信 について述 べる。新 たな 外 国 語 の学 習 意 欲 は、実 践 の前 後 を通 して非 常 に高 い。「とても学 びたい」から「全 く 学 びたくない」まで 6 段 階 のスケールで、「学 びたい」とする肯 定 的 な回 答 は、実 践 前 後 を通 して約 99%となっている(図 1)。一 方 、新 たに外 国 語 を学 ぶ際 の自 信 につい ては、受 講 を通 して大 幅 に向 上 したことがうかがえる(図 2)。 図 1 質 問 「これから新 しく第 二 言 語 ・外 語 を学 びたいですか?」への回 答 。 0% 20% 40% 60% 80% 100% 授業後 授業前 とても学びたい 学びたい どちらかといえば学びたい 学びたくない 全く学びたくない

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 図 2 質 問 「あなたは新 しい第 二 言 語 ・外 語 をうまく学 べると思 いますか?」への回 答 。 このような変 化 の原 因 として想 定 されうる事 柄 は、1) 実 践 への参 加 によって、新 た な個 別 的 な外 国 語 ではなく、外 国 語 学 習 そのものについての知 識 が増 えたこと、2) 短 時 間 であれ、学 べたという実 感 が自 信 に結 びついた、ということである。 図2 で示 した回 答 への理 由 を記 した自 由 記 述 部 分 (肯 定 的 な回 答 )には、「この授 業 で様 々な方 法 を学 んだから」「(授 業 で)やってみて合 うと思 ったから」など、実 践 へ の言 及 が相 次 いだ。裏 付 けになるのが、実 践 後 には、実 践 前 に比 して、自 分 にあっ た言 語 学 習 の方 法 を「持 っている」と考 える者 が増 加 していたことである(図 3)。「とく に持 っていない」という回 答 者 もやや増 加 しているものの、「どんな方 法 が自 分 にあう のか、まったくわからない」とした者 が大 幅 に減 ったことと考 え合 わせると(図 3)、全 体 としては、自 分 自 身 に向 いた学 習 方 法 を把 握 していると考 える者 が増 えたと言 えよう。 外 国 語 学 習 に困 難 を感 じる割 合 は、実 践 後 には、実 践 前 ほどは高 くない(図 4)。 以 上 をまとめると、新 たな外 国 語 学 習 に対 して、受 講 生 たちは受 講 前 の時 点 です でに高 い意 欲 を持 っていたが、同 時 に、非 常 な困 難 も感 じていたということになる。彼 らは、実 践 を通 して、どのように学 べばよいかという方 法 の部 分 で自 信 を得 て、新 たな 外 国 語 の学 習 について、受 講 前 ほどには困 難 だとは感 じなくなっていった。こうした 点 において、実 践 は当 初 の目 的 をある程 度 は達 成 するものだったことが明 らかである。 しかし、そのあとの第 二 、第 三 外 国 語 学 習 に自 信 を持 てない学 生 (「どちらかといえば、 うまく学 べないと思 う」以 下 を選 んだ学 生 )は、30%近 く残 っている(図 2)。図 2 で示 し 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 授業後 授業前 とてもうまく学べると思う うまく学べると思う どちらかといえば、うまく学べると思う どちらかといえば、うまく学べないと思う うまく学べないと思う まったくうまく学べないと思う

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 たアンケ―ト結 果 は、実 践 の成 果 を示 すと同 時 に不 十 分 さを表 している。すなわち、 一 部 の学 生 にとっては、前 項 で述 べた実 践 への参 加 経 験 は、必 ずしも外 国 語 学 習 についての意 識 を塗 り替 えるものではなかったことをも示 している。そこで次 項 では、 そもそも外 国 語 学 習 に対 する苦 手 意 識 は、何 に由 来 するものなのかという点 と、実 践 の受 講 経 験 を経 てなお苦 手 意 識 を持 ち続 けた場 合 の理 由 を検 討 する。 図 3 質 問 「自 分 にあった第 二 言 語 ・外 語 学 習 の方 法 を持 っていますか?」への回 答 。 図 4 質 問 「第 二 言 語 ・外 語 を学 ぶのは難 しいという考 えに同 意 しますか?」への回 答 。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 授業後 授業前 持っている。その方法が自分にあっている、ということに自信がある。 持っている。だが、その方法が自分にあっているかどうか、あまり自信はない とくに持っていない どんな方法が自分にあうのか、まったくわからない。見当もつかない 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 授業後 授業前 つよく同意する 同意する どちらかといえば同意する どちらかといえば同意しない 同意しない まったく同意しない

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 5. 英 語 学 習 経 験 が、新 たな外 国 語 学 習 意 欲 に与 える影 響 図 5 が示 すように、実 践 前 後 の調 査 を通 して、英 語 は重 要 なものとして認 識 され続 けている。つまり受 講 経 験 を通 しての新 たな言 語 学 習 への自 信 の向 上 は、英 語 学 習 への否 定 を引 き起 こすものではなかったということになる。その一 方 で、過 去 の英 語 の 学 習 経 験 は、新 たな言 語 の学 習 意 欲 に対 して大 きく係 わっていることも、調 査 から明 らかになった。 一 方 、図 6 は実 践 前 の段 階 で、「あなたは新 しい第 二 言 語 ・外 語 をうまく学 べると 思 いますか?」という問 いに否 定 的 な回 答 を行 った学 生 の理 由 づけ(文 単 位 にして 全78 コメント)を、KH コーダー9を用 いて解 析 し、共 起 語 のネットワークを描 いたもので ある。頻 出 語 ほど大 きな円 で、共 起 関 係 が強 いほど太 い線 で示 してある。頻 出 するの は「英 語 」「する」「ない」であり、過 去 の英 語 学 習 経 験 が、新 たな言 語 学 習 における 自 信 の有 無 に大 きな影 響 を与 えていることがわかる。 図 5 質 問 「ご自 分 の将 来 において、英 語 の能 力 は重 要 だと思 いますか?」への回 答 。 9 KH コーダー< http://khc.sourceforge.net/>(2017.1.31 検 索 )は、テキストデータを統 計 的 に分 析 するためのフリーソフトウェアであり、使 い方 は、開 発 者 による樋 口 ( 2014)に詳 しい。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 授業後 授業前 きわめて重要だと思う 重要だと思う どちらかといえば重要だと思う どちらかといえば重要ではないと思う 重要ではないと思う まったく重要ではないと思う

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 図 6 なぜ新 しい第 二 言 語 ・外 語 をうまく学 べると思 えないのか? 実 践 前 自 由 記 述 欄 コメントにおける共 起 語 のネットワーク 共 起 ネットワーク図 からもわかるように、英 語 以 外 の具 体 的 な言 語 名 は、ほとんど 挙 げられることがない。言 語 名 を限 定 せず、漠 然 と「難 しそうだから」としたコメントも見 られたが、具 体 的 な言 語 名 を挙 げて、どのように難 しいかを説 明 したものは1 件 しかな かった(「中 国 語 は発 音 が難 しいと聞 いたことがあるから」)。一 方 、英 語 学 習 の苦 手 ・ 失 敗 意 識 への言 及 を行 ったコメントは、過 半 数 (全 78 件 中 40 件 : 51.2%)にのぼる。 典 型 的 なコメントは、「英 語 も十 分 にマスターできていないから」「小 学 校 の時 から英 語 を勉 強 しているが、身 についている気 がしないから」といったものである。 受 講 後 アンケート結 果 は、しかし、やや異 なる。図 7 は、爾 後 の第 二 、第 三 外 国 語

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 学 習 をうまく進 められるだろうと感 じることのできない学 生 による自 由 記 述 のコメントを、 実 践 の受 講 前 ・後 に分 け、なぜそのように感 じられないのかという理 由 ごとに分 類 し、 割 合 を示 したものである。英 語 学 習 における失 敗 経 験 を挙 げたコメントは、全 体 の1/3 以 下 にまで減 少 している(全 36 件 中 10 件 : 27.7%)。 図 7 なぜ新 しい第 二 言 語 ・外 語 をうまく学 べると思 えないのか? 自 由 記 述 欄 コメントの実 践 前 後 での比 較 人 は一 般 に、過 去 の類 似 する経 験 をもとに、達 成 可 能 性 を判 断 する。したがって、 外 国 語 といえば英 語 しか学 習 経 験 のない状 況 においては、英 語 学 習 に苦 手 ・失 敗 意 識 を持 つ者 が、新 たな外 国 語 学 習 にしりごみを感 じるのはもっともなことである。本 稿 で示 してきた結 果 は、しかし、週 に 1 度 、8 週 間 程 度 の実 践 であっても――むろん 全 員 というわけではないにせよ――そうした苦 手 ・失 敗 意 識 を、ある程 度 払 拭 できたこ とを示 している。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 実践前 実践後

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 6. 結 論 と今 後 の課 題 調 査 結 果 より、以 下 3 点 が示 された。 1) 従 来 のような言 語 ごとに分 かれた授 業 の代 替 ないし補 填 するものとして、あらゆ る言 語 のための複 言 語 能 力 を伸 ばす実 践 を構 想 することは可 能 である。実 践 への参 加 を通 して、学 生 たちの多 くは、新 たな外 国 語 学 習 に対 して、より強 い 自 信 を持 った。 2) 複 言 語 能 力 を伸 ばす実 践 の受 講 経 験 は、英 語 学 習 の重 要 性 についての考 え に影 響 しない。その点 で 1) はプラスサムの成 果 であって、ゼロサムゲームには ならない。 3) 過 去 の外 国 語 学 習 経 験 が、その後 の外 国 語 学 習 への意 欲 ・意 志 ・実 現 可 能 性 の判 断 において、きわめて大 きな影 響 力 を持 つ。日 本 の大 多 数 の大 学 生 の 場 合 には、これは、英 語 学 習 経 験 が第 二 、第 三 外 国 語 学 習 経 験 に影 響 する、 と い う 意 味 に なる 。 しか し 、 英 語 学 習 を 通 して 持 っ た 外 国 語 学 習 に 対 す る 苦 手 ・失 敗 意 識 は、不 変 のものではない。本 稿 に報 告 したような実 践 への参 加 経 験 は、ある程 度 、そうした苦 手 ・失 敗 意 識 を塗 り替 えることができる。 1)、2)より、教 育 制 度 上 の選 択 肢 を多 様 化 できない、あるいは不 十 分 な状 況 にある 高 等 教 育 機 関 においては、複 言 語 能 力 の伸 長 を目 的 とした実 践 を促 進 していくこと に、一 定 の妥 当 性 が認 められる。たとえ大 規 模 校 であって、外 国 語 教 育 が充 実 して いる場 合 にも、多 様 化 する留 学 や国 際 共 同 学 習 プログラムにおける行 き先 や、学 生 の興 味 関 心 の対 象 となるすべての言 語 について教 育 を行 うことは困 難 である。 しかし、複 言 語 能 力 の伸 長 を主 眼 とした実 践 は、高 等 教 育 レベルでは、まだほとん ど実 施 されておらず、こうした授 業 の構 成 や実 施 方 法 、教 員 の役 割 については、今 後 の十 全 な検 討 が必 要 となるだろう。 また、3)より、英 語 教 師 には、英 語 の教 育 に留 まらない特 有 の役 割 があることが推 察 される。このことは、「もっとも教 えられている言 語 を担 当 する教 員 は、複 言 語 教 育 に対 して際 立 った責 任 を持 」つ、という欧 州 評 議 会 (2016/2007、 p.75)の主 張 に合 致 する。英 語 学 習 経 験 における失 敗 や困 難 の意 識 が、第 二 ・第 三 外 国 語 の学 習 、さ らには学 生 が将 来 であう可 能 性 のある数 多 くの言 語 へのアクセスを困 難 にする。ゆえ に多 くの場 合 において、外 国 語 の唯 一 の入 り口 となっている英 語 教 育 には、第 二 、

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 第 三 の外 国 語 への窓 を大 きく開 いておくという役 割 が課 されるはずだ。 ただし、いったん新 たな外 国 語 学 習 への意 欲 を失 ってしまった場 合 にも、それは時 に、本 稿 で述 べてきたような実 践 を通 して復 活 する。最 後 に、学 生 の授 業 後 リフレクシ ョンからの文 を引 きたい。 「この講 義 で、自 分 の考 えを一 新 できた。今 は、英 語 だけに執 着 せず、もっと貪 欲 に、 いろんな言 語 に興 味 を持 ちたい、知 りたい、習 得 したいと思 っている」 (山 口 大 学 ・京 都 大 学 ) 参 考 文 献 岩 居 弘 樹 ・田 川 千 尋 ・神 田 麻 衣 子 (2017)「ネイティブスピーカーとデジタルデバイス を活 用 した多 言 語 演 習 の取 り組 み」『日 本 デジタル教 育 学 会 発 表 予 稿 集 』6(0), pp.71-72. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdtpr/6/0/6_71/_pdf/ -char/ja [accessed 12 December 2018] 岩 坂 泰 子 ・吉 村 雅 仁 (2012).「小 学 校 と大 学 との協 働 による国 際 理 解 教 育 としての 外 国 語 活 動 」『奈 良 教 育 大 学 教 育 実 践 開 発 研 究 センター研 究 紀 要 』 21,pp. 37-43. 江 利 川 春 雄 (2017)「日 本 はどうして英 語 一 辺 倒 主 義 になってしまったのか」(鳥 飼 玖 美 子 ・大 津 由 紀 雄 ・江 利 川 春 雄 ・斎 藤 兆 史 (著 ))『英 語 だけの外 国 語 教 育 は失 敗 する:複 言 語 主 義 のすすめ』ひつじ書 房,pp.29-50. 欧 州 評 議 会 言 語 政 策 局 (2016)山 本 冴 里 (訳 )『言 語 の多 様 性 から複 言 語 教 育 へ: ヨーロッパ言 語 教 育 政 策 策 定 ガイド』くろしお出 版.(Council of Europe

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http://www.coe.int/t/dg4/linguistic/Source/Guide_Main_Beacco2007_EN.doc [accessed 31 January 2017] 大 山 万 容 (2016)『言 語 への目 覚 め活 動 :複 言 語 主 義 に基 づく教 授 法 』くろしお出 版. 国 際 交 流 基 金 (2010)「JF 日 本 語 教 育 スタンダード 2010」. http://jfstandard.jp/top/ja/render.do;jsessionid=4D9EE0EC76238FAA0AC5 1B0E7182E634[accessed 20 October 2017] 国 際 文 化 フォーラム(2012)「外 国 語 学 習 のめやす 2012:高 等 学 校 の中 国 語 と韓 国

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90 の 提 案 ― フラン ス語 の langue étrangère 概 念 を足 場 として 」『リテラシー ズ』 7, 21-29. http://literacies.9640.jp/dat/litera07-21-29.pdf[accessed 12 December 2018] 山 本 冴 里 (2017)「山 口 大 学 国 際 総 合 科 学 部 『言 語 学 習 の理 論 と実 践 Ⅰ』の背 景 と 構 成 :「価 値 として、また能 力 としての複 言 語 主 義 」促 進 を念 頭 に」『複 言 語 ・多 言 語 教 育 研 究 』日 本 外 国 語 教 育 推 進 機 構 No.5, pp.88-99. 吉 村 雅 仁 ・アンドレア・ヤング (2016). 「小 学 校 外 国 語 に関 わる教 員 研 修 への複 言 語 主 義 の導 入 -その意 義 と研 修 モデルの構 想 」『次 世 代 教 員 養 成 センター研 究 紀 要 』 2 巻 , pp.87-96.

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『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.6 (2018) pp.72-90

Hungry to acquire, know, and have more languages:

Where one language is dominant, finding the value of additional

languages

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