国語科学習指導案 指導者 福山北特別支援学校 教諭 田中 ひとみ(T1) 教諭 若松 亮太 (T2) 1 日時・場所 平成 26 年 10 月 17 日(金) 3校時 10:55~11:40 小学部4年2組教室 2 学年・学級 小学部第4学年2組(6名) 3 単元名 「どんなきもちかな」(こくご☆☆ 文部科学省) 4 単元設定の理由 ○ 児童観 本学級は,単一障害学級であり,男子児童4名,女子児童2名,計6名で編制している。全員知的 障害があり,自閉症を併せ有する児童もいる。 コミュニケーションに関しては,簡単な日常会話が成立する児童,単語や2語文で意思を伝えられ る児童,発音が不明瞭であるためマカトン法なども用いて意思を伝える児童など,様々である。また, 「手伝って・・・?」などと途中まで指導者がヒントを提示すると,その続きを考えて,「手伝って ください。」と言葉で要求する力がついてきた児童もいる。その他にも,発音の不明瞭な児童が何か を伝えたくて,ツンツンと触られたときに,大きな声で「嫌な気持ちがするからやめて。」と言う児 童もいる。このように,自分の気持ちは伝えることができるが言い方が強くなり過ぎたり,相手の気 持ちを汲み取ることが難しかったりするために,トラブルになる場合もある。 国語科の授業,劇遊び「はなすもんか」では,複数の台詞例の中から自分の言いたい台詞を選び, 全員が決められた場面で自分の台詞を言う活動をした。文字を見て言うことが難しい児童も,指導者 が目の前で身振りを付けて手本を見せることで,身振りを模倣しながら言うことができた。一方,自 分の台詞を覚えて言えるようになった児童は,「分からない気持ち」や,「気持ちを奮い立たせる言い 方」が表現できるように,声の明るさや抑揚を考えて言うことができた。 本校の今年度の研究テーマである「自己肯定感をもち主体的に活動できる力」については,日常生 活の中で係の仕事を行った際に,指導者からハイタッチをすることで,指導者と共に達成感を味わう ことができ,係の仕事を,毎日,欠かさずに行う責任感が芽生え始めた児童もいる。また,3人で協 力して係を担当している児童たちは,「係,するよ。」と友だちに言葉掛けをしたり,係の仕事が終わ ったことを3人で確認し合ってからその場を離れたりするなどの姿も見られるようになってきた。自 分の係を忘れた場合は,係表を自分で見に行き,指導者と共に指差しをして確認することで,全員が 係表を手掛かりに係の仕事を思い出すことができている。しかし,係の仕事の途中で他のことが気に なり,その場を離れてしまう児童,指示を待つ児童,周りの状況を考えずにふざけながら係の仕事を してしまう児童もいる。
○ 単元観 本単元は,特別支援学校小学部学習指導要領の知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援 学校における国語科の内容「話す」の観点の1段階(2)「教師などの話し掛けに応じ,表情,身振 り,音声や簡単な言葉で表現する。」,「読む」の観点の2段階(3)「文字などに関心をもち,読もう とする。」を踏まえて設定したものである。 本単元では,気持ちの言葉や表情カードを見て,言葉を使わずに気持ちを伝える活動をすることで, その気持ちに付随する表情や身振りの習得をねらうことができる。さらに,児童の身近で起こる事象 (ゲームに負けたとき,ゲームに勝ったとき,大事に作ったブロックを壊されたとき,鬼がいきなり 登場したときなど)をロールプレイや写真で提示することで,授業中だけではなく日常生活の中で般 化しやすいと考える。また,一つのロールプレイや写真の場面を提示した際にも,児童の思考力や判 断力の実態に合わせた質問が可能になると考える。例えば,自分の思いが先行して,友だちが一生懸 命作ったブロックを壊してしまう児童には,この単元の学習を通して,友だちの気持ちを考えて自分 の行動を抑制する体験を増やすことが期待される。 ○ 指導観 (1)国語科の観点 指導に当たっては,気持ちを表す言葉を学ぶだけではなく,気持ちと表情(身振りも含む)との関 連に気付くようにしたい。そのためにも,実生活の中でよく目にする場面を取り上げて,経験した状 況を思い出して,そのときの気持ちを表す言葉に置き換える指導を行いたい。その際,「口がにっこ り笑っている。」「目とまゆげが下がっている。」などの表情に注目させてから,「楽しい」「悲しい」 などの気持ちを表す言葉につなげる指導をしたい。さらに,表情以外にも「肩が落ちているから悲し い。」「両手を上に挙げているから楽しい。」などの身振りにも気付かせ,表現を豊かにしたい。その 他にも,気持ちを表す言葉は,「楽しい」などの言い切りの形ではなく,「楽しいね。」「楽しかったね。」 などのように助詞を付けて語尾を変化させ,日常的に使いやすくなるように心掛けたい。 (2)本校の今年度の研究テーマである「キャリア教育の視点に立った教育実践~自己肯定感をも ち主体的に活動できる力を育てる授業づくり~」の観点から 本研究テーマを踏まえて,①教材の工夫②役割をもたせる工夫③褒める場面の設定④友だちとのか かわりをもたせる工夫の四つの視点を重点に置いて指導したい。 「①教材の工夫」に関して,文字の理解が難しい児童には,表情イラスト付きの文字カードを使用 するなど,児童の実態に合わせて教材のパターンをいくつか用意しておく。また,ロールプレイの動 画を使用することで,実際に経験したことを想起して,そのときの自分の気持ちや相手の気持ちを振 り返ることができるようにさせたい。そうすることで,より生活の中で,友だちの気持ちになって物 事を考えることができる力を育成したい。 「②役割をもたせる工夫」に関して,いつもペアで活動する二人でテレビを運ぶ係,学習に見通し をもって取り組むためのスケジュール取り係,クイズで使用する箱を定位置に置く係,二人で分担し てプリントに書かれた名前を読んでプリントを配る係を設定する。他の授業でも機会を見つけて同じ ような仕事分担をし,繰り返し同じ係をさせて達成感を味わうことができるようにさせたい。また, 箱を机の上に置く係の児童には,毎回箱を置く位置や返す位置を固定して,必要最低限の言葉掛けで 主体的に行動できるようにしたい。
「③褒める場面の設定」に関して,できたことを振り返って思い出すことが難しい児童には,「で きた」と感じた直後にハイタッチをすることで自己肯定感をもちやすくする。褒める場面として,活 動した直後と,授業の終わりの振り返りの時間の2回を設けることで,個別場面だけではなく全体の 場で褒められて友だちから拍手を受け,より一層達成感を味わうことができるようにさせたい。 「④友だちとのかかわりをもたせる工夫」に関しては,②の役割をする場面で,二人で協力してテ レビを運ぶ活動を設定する。その際,ただ同時に運ぶだけではなく,床の印に合わせて置くことがで きたか二人で確かめるなど,常に「二人でする意識」がもてるような言葉掛けをしたい。また,「9 学習過程」で示した「5」のプリントをする際に,隣同士で一つののりを使うようにし,物の貸し借 りを通して,「貸して」や「どうぞ」の言葉のやり取りができるようにさせたい。 5 単元の目標 ・ 身近な場面や経験の話を聞いたり,絵を見たりして,そこにある気持ちを表現することに興味を もつことができる。 ・ 表情を表すカードと,気持ちを表す動作をマッチングさせたり,その動作をやってみたりするこ とができる。 6 指導計画〔全5時間〕 第1次 どんなきもちかな・・・・2時間 第2次 きもちをつたえよう・・・3時間(本時1/3) 7 本時の目標 ○ 全体の目標 ・ 友だちの演技やロールプレイ,写真を見て,「気持ちを表す言葉」と「表情カード」を一致さ せながら,どんな気持ちか答えることができる。 ・ 係の仕事に主体的に取り組むことができる。 ○ 個々の目標 児童 これまでの様子 目標 A (男) ・ 文字の理解に関しては,「りんご」の並べ替えで「ご りん」のように順序を間違えてしまうこともあった が,1動作1音声で練習を繰り返すうちに,数種類の 単語は一文字ずつ正しく並べることができるように なった。表情に関しては,「楽しい」「美味しい」「怖 い」などを言葉とジェスチャーで自ら指導者に伝える ことができる。しかし,感情が高ぶると,友だちの表 情を気にせずに,友だちに嫌な思いをさせてしまうこ とがある。 ・ いつもペアになっているB児とは,1学期の中頃か ら適度な力で手をつなぐことができてきた。しかし, 床の印を見て自分の机の位置を合わせるなどの微調 ・ 4種類の文字カードを読ん だりロールプレイを見たりし て,嫌なことをされた人の「お こっている」気持ちを,4種 類の表情カードの中から選ぶ ことができる。 ・ B児とともに床の印に合わ せてテレビを設置し,教室の 電気を消すことができる。
整が難しい。日頃から,教室を出るときには電気を消 す,戻ってきたときには付ける係をし,自分から気付 いてできたときに,できたことをジェスチャーで指導 者に知らせることがある。 B (男) ・ 休暇のときにあった「うれしかったこと」「楽しか ったこと」を指導者に伝えたり,「○○くんやめて。 嫌な気持ちがする。」と友だちに注意をしたりするな ど,正の感情だけではなく負の感情も相手にその場で 伝えることができる。また,自分の思いが通らなかっ たり叱られたりすると,悔しくて泣いてしまうことが ある。しかし,今までの生活経験上,うれしくて泣い た経験はないと思われる。 ・ 普段一人遊び中心で,自ら友だちと関わることは少 ない。ペアの活動では,嫌なことがあると「やめて。」 と大きな声で伝えることがある。係の仕事に関しては 給食当番で,長机を廊下に運ぶ係を担当している。自 信がもてるまでは,「ねえ,ここに置くの?」と指導 者に何度も聞いて確かめようとするが,印があるとそ の印を手掛かりに置くことができる。 ・ ロールプレイや写真,友だ ちの表情から,うれしいとき にも涙が出ることが分かり, どうしてそのように思ったか について説明することができ る。 ・ A児と共に床の印に合わせ てテレビを設置し,四つのキ ャスターを固定することがで きる。 C (女) ・ 周りに人が多いときにはあまり話さないが,指導者 と二人になると,「○○したね。」と前の授業でした内 容を嬉しそうな表情で伝えることがある。平仮名を1 文字ずつ読むことは難しいが,イラストをヒントに指 導者と一緒に1文字ずつ指差しながら読むことがで きる単語が増えてきた。また,選択肢が三つ以上ある 場合は,適当に選んでしまうが,二つに絞ると正しい 方を選べる確率が高い。 ・ 新しい活動で見通しをもつことができないとき,教 室を出ようとしたり,集中できずに机の下に入ろうと したりすることがある。しかし,活動が終わる毎にス ケジュールカードを袋に入れることで見通しがもて, 授業の最後まで参加することができる。 ・ 指導者が読んだ文字カード や写真を見て,「うれしい」「お こっている」の表情カードを 二 者 択 一 で 選 ぶ こ と が で き る。 ・ 指導者の「おしまい。」の言 葉掛けを聞いて,一番上のス ケジュールカードをとって, 袋 の 中 に 入 れ る こ と が で き る。 D (女) ・ 人前に立つと萎縮して何もできなくなるときもある が,指導者が言葉や身振りでヒントを出すと,今日あ った授業などのことについて話すことができる。発音 は不明瞭である。また,人から何かしてもらうと,「あ りがとう。」とお礼を言うことができるが,ふざけて 意地を張ると,相手の気持ちを考えずに,相手が嫌が ることしばらく続けてしまうこともある。しかし,指 導者が痛がったり悲しんだりしていると,その表情や ・ 文字カードと表情カードを 見て,それに合った表情や態 度をしたり,ロールプレイを 見て,「かなしい」気持ちカー ドを選んだりすることができ る。
声色を読み取り,「ごめんなさい。」と自分から謝るこ ともできる。 ・ 「○○をしてください。」と頼まれても,頑固に拒 むことがあるが,「お当番」「係」と言う言葉に反応し, 自分の係を責任をもって行うことができる。 ・ 文字カードが入った箱を前 の 机 の 上 に 置 く こ と が で き る。 E (男) ・ 劇遊びの際には,疑問の台詞と意思の台詞の言い方 を変えることができた。しかし,自分の思い通りにな らないと机を倒したり,物を投げたりすることがあ る。また,自分の思いが先行して,相手の気持ちを考 えずにブロックを倒してしまうこともある。 ・ 平仮名や小学校第2学年程度の漢字を読むことがで き,6人全員の名前を呼んで出席表を配ることができ る。早く配り終えたい気持ちから,向きを変えずにそ のまま配ることもあるが,指導者の言葉掛けで向きを 変えて配ることができる。 ・ 文字カードを見て,それに 合った表情や態度をしたり, ロールプレイや写真から両者 の気持ちを考えて書いたりす ることができる。 ・ プリントに書いてある名前 を見て,プリントの向きを変 えて友だちに渡すことができ る。 F (男) ・ あ行・か行・さ行の平仮名は1文字ずつでも読むこ とができるようになってきた。その他の文字について も,二者択一にすれば指導者が言った1文字目に注目 して,文字カードを選べることが多い。また,感情に 関しては,「楽しい」「美味しい」などの正の感情は適 切に使うことができる。しかし,友だちに抱きつかれ たときに,どうしてよいか分からず固まることがあ る。このように,「嫌」「びっくりした」などの負の感 情を言葉で表すことが少ない。 ・ 出席表を配るときに,指導者が「○○さん,どうぞ。」 と1度例を見せると,その後は全て同じように言いな がら配ることができる。 ・ 友だちの演技やロールプレ イ,写真を見て,「びっくりし た」気持ちを言葉や表情カー ドで答えることができる。 ・ プリントに貼ってある文字 を見て,「○○さん,どうぞ。」 と言ってプリントを渡すこと ができる。 8 準備物 移動式ホワイトボード,スケジュールカード(数字・イラスト付き文字),袋(スケジュールカー ド入れ用)係分担表,表情カード,気持ちの文字カード,箱(気持ちの文字カード入れ用),テレビ, 写真,プリント,5段階評価シート,授業の活動イラスト 9 学習過程 後掲
10 評価の観点 ○ 友だちの演技やロールプレイ,写真を見て,「気持ちを表す言葉」と「表情カード」を一致させ ながら,どんな気持ちか答えることができたか。また,そのための指導・支援方法は適切であった か。 ○ 自分の係の仕事が分かり,目印などを見ながら自分から仕事に取り組むことができたか。また, そのための指導・支援方法は適切であったか。 11 教室内配置図 注1) は,学習課程2・6の際に,指導者が教室前方の中央に移動させる。 注2) は,学習課程3で,児童 が教室中央の机の上に移動させる。 注3) は,学習課程4で,児童 が教室前方の中央に移動させる。 A B C D E T1 T2 ホワイトボード1 入 口 ホ ワ イ ト ボ ー ド 2 F テレビ A B 教員机 カード 入りの箱 カード 入りの箱 D テ レ ビ ホワイトボード2