聲
明
の
基
礎
研
究
堀 坂 性 禪 個 人 大 の 私 が社 會 大 の 私 と な り 、 遂 に 宇 宙 大 の 私 と な る こ と が 私 達 の 要 求 で あ る 。 此 要 求 こ そ 實 に 私 達 の 宗 教 意 識 で あ つ て 。 此 理 想 を 規 定 寸 る も の は 哲 學 で あ る 。 ま た 之 を 體 験 し 味 ふ 所 は 宗 教 の 實 際 で あ る 。 私 達 が 各 時 代 に 於 て 其 時 代 に 書 いた 理 想 を 現 實 に 展 開 し た の が 藝 術 で あ る 、 今 藝 術 を 分 類 す る と 、 書 書 、 調 刻 等 は 目 に 屬 す る 藝 術 で 音 樂 一 般 は 耳 に 屬 し 、 文 章 、 詩 歌 、 劇 の 如 き は 両 部 に 屬 す る 藝 術 と 云 は ね ば な ら な い 。 廣 い 意 味 で 云 ふ な ら ば 、 大 自 然 も 亦 彼 が 展 開 し て 居 る 藝 術 と 見做 す こ と が 出 來 る 。 尤 も こ の 此 は 宇 宙 が 有 機 的 の も の と し て の こ と で あ る 。 ま た 私 達 の 智 が 果 し て 宇 宙 の 理 と 冥 合 し 得 る も の と し た な ら ば 。 私 達 の 如 く 未 達 の 徒 の み で は な く て 己 達 の 體 験 者 を 理 想 の 極 限 と し て 認 め ね ば な ら な い 。 果 し て 然 れ ば 。 理 想 論 者 の 極 限 は 實 在 論 着 と な ら な け れ ば な ら な い 。 斯 ふ な る と 塵 々 法 々 悉 く 佛 果 の 妙 徳 と し て 意 識 す る 事 が 出 來 る 。 こ の 立 場 に 住 し た 科 學 は 皆 宗 教 と 云 ふ こ と が 出 來 る 。 此 立 場 か ら 眺 めた 音 學 は 實 に 佛 の 説 法 で な く て は な ら な い 。 そ し て 我 宗 の 聲 明 は 此 見 地 か ら 眺 め た 聲 レ 音 に 他 な ら な い 然 聲 明 の 碁 礎 研 究 五 五聲 明 の 基 礎 研 究 五 六 る に 世 の 音 樂 家 が 密 教 の 聲 明 は 迷 信 の 基 礎 に な つ た 迷 信 樂 で あ る と す る の は 、 唯 彼 が 科 學 者 と し て の 見 地 か ら 眺 め て 今 一 層 深 刻 に 思 惟 せ 漁 か ら で あ る 。 解 脱 者 の 耳 を 以 て す る な ら ば ざ ん な 出 鱈 目 な 音 で も 皆 微 妙 な 音 樂 で は な か ら ふ か 、 未 達 の 凡 夫 を 濟 度 す る の が 宗 教 の 本 旨 で あ り ま た 以 て 宗 家 の 本 分 と す る な ら ば 、 こ う し て も 今 日 の 如 き 音 樂 だ け で は 寔 に 不 完 全 で あ る 。 一 刻 も 早 く 宗 教 的 奏 樂 に 改 善 し な け れ ば な ら な い 。 此 の 主 旨 の も と に 本 研 究 を 發 表 す る 次 第 で あ る 。 波 動 一 般 波 動 に 二 種 類 あ る 。 波 の 進 行 す る 方 向 に 直 角 に 振 動 す る の を 横 波 と 官 い 、 波 の 進 行 す る 向 に 振 動 す る の を 縦 波 と 云 ふ の で あ る 。 そ し て 横 波 は 一 般 に 固 體 を 打 撃 し た 場 合 に 其 表 面 に 表 は れ 。 縦 波 は 室 氣 の 如 き 氣 體 の 波 動 で あ る 。 そ し て 液 體 は 縦 横 両 波 共 に 有 し て 居 る 。 電 波 、 磁 波 、 光 波 、 熱 波 、 等 の 假 設 エ ー テ ル 波 動 は 横 波 で 、 引 力 は 縦 波 で あ つ て 光 と 同 速 度 で 傳 播 す る も の と な つ て 居 る 。 宇 宙 に 充 滿 し て 居 る エー グ ル が 固 體 と 同 種 類 の 波 動 を し な が ら 天 體 が そ の 中 を 抵 抗 を 受 け ず に 自 由 に 回 轉 し 得 る の は 不 合 理 で あ る と 云 ふ こ と 、 な り 假 設 エ ー プ ル の 否 定 せ ら れ る 理 由 の 一 と な つ た も の で あ る 左 に 之 を 波 動 別 に 分 類 す れ ば 次 表 の 如 し 。
音 響 學 一 般 發 音 體 が 振 動 し て 其 が 私 達 に 智 覺 さ れ る 迄 に は 、 發 音 體 の 振 動 、 媒 體 の 振 動 、 聴 管 の 亨 受 及 分 析 、 聴 覺 及 そ の 智 覺 等 の 順 序 を 探 る も の で あ っ て 、 發 音 體 の 振 動 、 媒 體 の 振 動 の 如 く 音 響 の 客 觀 的 部 分 は 物 理 學 に 於 て 多 く 之 を 研 究 し 主 觀 的 の 部 門 は 心 理 學 、 醫 學 、 に 屬 し て 居 る 。 詳 し く 樂 を 研 究 し た 著 書 に は 此 両 部 門 に 亘 つ て 説 い て あ る が 弦 に は 極 め て 簡 單 に そ の 一 部 を 説 明 す る に 過 ぎ な い 。 音 の 傳 達 先 づ 發 音 體 が 振 動 し 此 が 四 周 の 室 氣 中 に 縦 波 と な つ て 傳 播 し 此 空 氣 の 波 が 耳 に 當 る と 其 波 が 外 聴 道 聲 明 の 基 礎 研 究 五 七
聲 明 の 基 礎 研 究 五 八 の 中 へ 入 つ て 行 く 、 此 際 耳 穀 は 此 波 を 成 る べ く 多 く 集 め て 外 聖 道 の 中 へ 入 れ る 働 き を す る 。 期樣 に し て 外 聴 道 の 中 進 入 し た 波 は 鼓 膜 に 突 き 當 る 、 そ こ で 鼓 膜 は 張 迫 振 動 を し て 、 發 音 體 の 振 動 に 相 應 し た 振 動 を す る 。 此 振 動 が 鼓 室 中 の 耳 中 骨 に 傳 は つ て 行 く こ と は 恰 も 蓄 音 器 に 音 を 吹 込 む 際 に 振 動 板 の 蓮 動 が 針 に 傳 は る と 同 樣 で あ る 。 所 で 三 個 の 耳 中 骨 の 中 で 一 番 奥 に あ る 馬 鐙 骨 の 面 は 卵 圓 窓 を 蔽 ふ て 居 る か ら 、 此 馬 鐙 骨 が 振 動 す る と 卵 圓 窓 を 通 じ て 其 内 部 の 前 庭 内 に あ る 淋 巴 液 を 歴 し た り 引 い た り す る か ら 、 其 液 の 中 へ 此 振 動 を 傳 へ る 。 此 液 の 振 動 が 蝸 牛 殻 中 の 前 庭 道 を 經 て 、蝸 牛 殻 先 端 に あ る 螺 旋 孔 を 通 り 鼓 室 道 を 經 て 正 圓 窓 の 所 迄 及 ぶ 。 即 ち 馬 鐙 骨 面 が 卵 圓 窓 を壓 す る と 正 圓 窓 に 張 つ て あ る 膜 は 鼓 室 の 中 へ 押 し 出 さ れ る 、 又 馬 鐙 骨 面 が 卵 圓 窓 の 所 を 引 く と 正 圓 窓 の 鼓 膜 は 鼓 室 か ら 蝸 牛 殼 内 の 方 へ 押 入 れ ら れ る 。 斯 樣 に 前 庭 道 の 中 の 淋 巴 液 に壓 力 の 波 動 が 傳 は る と 、 此 壓 力 が ラ イ ス ネ ル 氏 膜 を 通 じ て 膜 樣 迷 路 中 の 蝸 牛 殼 管 の 中 に も 及 び 、 そ こ で コ ル チ の 器 官 を 動 揺 さ せ る 。 此 時 コ ル チ の 器 官 は 其 振 動 の 共 鳴 分 析 を 行 つ て 、 外 部 か ら 來 た 如 何 に 複 雜 な 音 響 で も 凡 て 之 を 各 單 純 音 に 分 析 し て し ま つ て 、 其 等 を 別 々 に 聴 神 經 で 受 け て 之 を 神 經 中樞 に 傳 へ 、 其 所 で 又 之 等 の 各 單 純 音 を 統 一 し て 一 つ の 音 の 威 覺 を 生 す る の で あ る 。 此 の 詳 細 を 研 究 じ た の は 十 九 世 の 初 期 獨 逸 の 物 理 學 者 オ ー ム 氏 で あ る 。 氏 の 研 究 に 依 る と 、 以 上 の 順 序 を 經 て 音 の 傳 は る こ と は 音 の 勢 力 を 損 す る こ と が 最 も 少 な く て 、 其 効 果 の 最 も 大 な る 方 法 で あ る 。 獨 り 聴 官 ば か り で は な い 、 人 體 構 造 の 各 部 が 悉 式 聴 覺 と 等 し い 經 濟 的 組 織 で あ る 。
即 ち 廣 く 此 を 力 説 し た の は へ ルム ホ ル ツ で あ る 彼 れ の 云 ふ 所 に 依 る と 現 象 の 經 路 は 尤 も 經 濟 的 道 程 を 辿 る も の で あ る と 、 之 れ 實 に 彼 の 最 小 作 用 作 律 で あ る 。 要 す る に 昔 と い ふ 現 象 が起 る に は そ こ に 五 つ の 作 用 が あ る 。 先 づ 第 一 に 外 部 に 振 動 す る 所 の 物 體 即 ち 發 音 體 が あ る 。 第 二 に 之 を と り ま く 所 の 弾 性 體 ( 通 常 は 室 氣 ) が あ つ て 其 中 に 音 の 波 が 起 つ て 之 れ が 四 方 に 傳 は つ て 行 く 。 第 三 に 耳 と い ふ 装 置 が め つ て 之 が 言 波 の 働 き を 受 け て 其 運 動 を 物 理 的 の 働 き で 傳 へ て 行 く 。 第 四 に 聴神 經 と い ふ も の が あ つ て 、 之 が 耳 と 連 絡 を し て 居 て 、 耳 の 中 に 起 つ て 居 る 物 理 的 の 働 き を 受 け て 共 中 に 化 學 的 の 作 用 が 起 つ て 、 そ れ で 神 經 中 樞 即 ち 脳 髄 に 傳 つ て 行 く 。 第 五 に 心 の 働 き が 此 神 經 中 樞 即 ち 脳 髄 の 中 の 變 化 と 相 伴 つ て 起 る の で 、 そ こ で 始 め て 音 の 威 覺 と い ふ も の が 起 る の で あ る 。 (a)音 の 要 素 音 に は 長 短 、 高 低 、 張 弱 、 音 色 の 四 つ の 要 素 が あ る 。 第 一 音 の 長 短 、 工 場 の 笛 、 汽 車 汽 船 の 笛 な と は 長 音 で あ る が 、 柏 子 木 、 鐵 砲 な と の 音 は 短 か い 、 之 は 振 動 時 間 の 長 短 に 依 る の で あ る 。 第 二 音 の 高 低 は 一 秒 間 に 多 敷 振 動 す る も の は 、 そ の 調 子 高 く 、 振 動 敷 の 少 な い も の は 調 子 が 低 い の で あ る 。 調 子 の 高 低 は 音 樂 に 尤 も 大 切 な 要 素 で あ る か ら 今 少 し 詳 し く 述 べ る 、 聲 明 の 基 礎 、研 究 五 九
聲 明 の 基 礎 研 究 六 〇 調 子 は (I) 式 で 與 へ ら れ る か ら 絃 樂 に 於 て は 絃 の 長 さ を 長 く す る 程 調 子 は 低く な る 、 笛 樂 に 於 て は 笛 の 長 く な る 程 調 子 が 低 く な る 。 ま た 粒 を 張 る 力 が 大 に な れ ば な る 程 調 子 は 高 く な り 、 緩 に す れ ば 低 く な る 。 ま た 粒 の 太 い ほ と 調 子 低 く な り 粒 の 細 い ほ と 高 く な る 。 此 事 は 三 味 線 の 如 き 絃 樂 に 就 て 試 み る な ら ば 明 瞭 で あ る 。 即 ち 同 じ 力 で 張 つ て あ る 場 合 に は 一 番 太 い 一 の 糸 が 最 低 で 、 二 の 糸 が 中 で 三 の 糸 が 最 高 調 で あ る 。 ま た 同 じ 糸 で も 其 の 中 途 を 押 さ え て 弾 ず る と 調 子 が 高 く な る 。 そ れ ば 張 る 力 や 系 の 太 さ は 同 じ で あ る け れ と も 長 さ が 短 か く な る か ら で あ る 。 次 に 調 子 の 取 り 方 を 三 味 線 を 例 に と り 説 明 し て 見 よ う 。 三 味 線 の 調 子 の 取 り 方 ( 一) 本 調 子 で は 一 の 糸 の 高 さ を 適 當 に 定 め 、 次 に 一 の 糸 を 其 半 分 の鮎 で 押 さ へ て 出 し た 音 と 同 じ 高 さ の 音 を 三 の 糸 で 出 さ せ 、 次 に 一 の 糸 の 四 分 の 三 の 點 (但 し 上 駒 の 所 か ら 四 分 の ) の 所 を 押 さ へ て 出 し た 音 と 同 じ 高 さ の 音 を 二 の 糸 で 出 さ す の で あ る 。 だ か ら 本 調 子 の と き は 三 つ の 糸 の 調 子 の 割 合 は と な る 。 ( 二) 二 上 り で は 一 の 糸 と 三 の 糸 と は 本 調 子 の 時 と 同 じ く 、 二 の 糸 丈 け 違 ふ 、 即 一 の 糸 の 三 分 の 二 の 點 (即 上 駒 の 所 か ら は 三 分 の 一 の 所 ) を 押 さ へ て 出 し だ 音 と 同 じ 高 さ の 音 を 二 の 糸 で 出 す の で あ る 。 だ か ら 、 二 上 り 、 で は 三 つ の 糸 の 調 子 の 割 合 は
( 三) 三 下 り で は 一 の 糸 と 二 の 糸 と は 本 調 子 の 時 と 同 じ く 三 の 糸 丈 け 違 ふ 、 即 二 の 糸 を 定 め て か ら 後 に 二 の 糸 の 四 分 の 三 の 點 (即 上 駒 か ら 四 分 の 一 の 所 )を 押 さ え て 出 し た 音 と 同 じ 高 さ の 音 を 三 の 糸 で 出 せ ば よ い 。 從 て 三 つ の 糸 の 調 子 の 割 合 は 、 で あ る 音 の 張 弱 。 は 振 動 振 幅 の 大 小 に よ る の で あ つ て 、 即 ち 波 の 大 き い ほ ど 音 は 強 く 、 波 の 小 さ い ほ こ 音 は 弱 い 、 大 砲 など の 音 波 は 大 き く て 蚊 の 聲 な ど は 小 さ い 。 音 色 、 は 音 波 の 形状 に 依 る の で あ る 。 同 調 で 張 さ も 同 じ で も 、 そ の 波 の 形 の 相 異 に 依 つ て 、 音 色 は 異 な る 。 そ し て 波 の 相 異 は 結 極 複 合 波 の 干 渉 の 相 異 で あ る か ら 分 析 し た 純 音 の 同數 同 形 な ら ざ る 事 を 示 し 之 實 に 物 質 組 織 の 相 異 に 他 な ら な い 。 從 て 竹 笛 の 音 色 と 梵 鐘 の 音 色 、 粒 樂 の 音 色 が 各 異 な る 所 以 で あ る 。 (b)音 の 速 度 一 般 に 固 體 、 液 體 、 氣 體 の 三 つ に 通 じ て 用 い ら れ る 音 の 速 度 を 示 す 公 式 は 次 の 式( Ⅱ) で あ る 。 聲 明 の 基 礎 研 究 六 一
聲 明 の 基 礎 研 究 六 二
氣
體
の
場
合
に
は
で あ る か ら と な る 、 ま た 氣 體 の 場 合 に は 温 度 が攝 氏 の 一 度 上 昇 す る 毎 に 速 度 は 一 秒 に ○ ・六 米 突 づ つ 増 加 す る の で あ る 。 而 し て 温 度 が 攝 氏 零 度 の 時 は 毎 秒 三 百 三 十 一 米 突 で あ る か ら 、 任 意 温 度 の 時 の 昔 の 速 度 は 次 の 如 く な る 。液
體
中
の
看
の
速
度
温
度
が
攝
氏
の
零
度
で
氣
壓
が
一
氣壓
の
と
き
は
次
表
の
如
し
。
ま た 温 度 が 攝 氏 の 八 度 で 一 氣 壓 の と き は固
體
中
の
音
の
速
度
ま た 春 秋 の平 均 温 度 に 於 て 空 氣 中 の 昔 の 速 さ は 、 一 秒 間 に 三 町 、 一 時 間 に 約 三 百 里 で あ る 。 種 々 な 調 子 の 合 奏 を 可 成 遠 方 で 開 い て も 同 時 に き く 事 が 出 來 る 點 か ら し て も 、 音 の 速 さ は 調 子 の 高 低 に 關 係 し な い 事 が 明 瞭 で あ る 。 此 事 は 音 波 ば か り で な く 、 電 波 や 光 波 に 就 い て も 言 へ る 。 即 ち 太 陽 か ら 出 た 種 々 な 色 の 光 が ( 七 色 )合 一 し て 來 る か ら 、 い つ も ( 白 色 )合 色 を 見 る 事 が 出 來 る の で あ る 。 ま た 、 音 は 一 秒 毎 に 一 波 宛 つ 進 む か ら 、 一 秒 間 に 一 千 回 振 動 す る 調 子 の 音 の 速 さ は 一 秒 毎 に 波 の 長 さ の 一 千 倍 進 行 す る 故 次 の 如 き 關 係 が 成 立 つ (v) 式 か ら 私 達 は 調 子 の 高 い 音 の 波 長 は 反 比 し て 、 短 か い 事 が 判 る 。 聲 明 の 墓 礎 研 究 六 三
聲 明 の 基 礎 研 究 六 四 一 般 に 如 何 な る 宗 教 に 於 て も 或 は 所 願 、 念 佛 、 念誦 を せぬ も の は な い 我 が 眞 言 宗 で は 名 が 眞 言 宗 と 言 は れ る ほ ど に 、 言 葉 が 大 切 に な つ て 居 る 。 聲 字 が 宇 宙 の 本 體 で あ る と ま で 高 調 し て あ る 。 然 る に 聲 字 は 波 動 に 於 い て 傅 播 し 、 音 波 は 室 氣 の 波 動 で あ る か ら 空 氣 の な い 處 へ は 傅 は る 由 も な い 。 そ し て 空 氣 は 地 球 の 表 面 上 三 十 里 以 内 に し か 存 在 し な い の で あ る か ら 、 私 達 の 盲 葉 は ど ん な 大 遠 度 で 傅 達 す る に し て も 、 地 球 の 表 面 三 十 里 以 内 の 事 で 其 以 外 に は 達 し な い 。 一 眞 言 を 誦 じ て 三 世 十 方 の 諸 佛 に 感 應 す る と は 科 學 的 に は 考 へ ら れ な い 。 と の 否 難 が あ る が 、 夫 は 他 宗 の 樣 に 念 誦 を 眞 言 、 言 葉 の み に 制 限 す る時 は 或 は 否 ら む も 、 密 教 で は 念 誦 に 、 蓮 花 念 誦 、 金 剛 念 誦 、 三 摩 地 念 誦 、 聲 生 念 誦 、 光 明 念 誦 等 の 五 種 が あ る 。 ( 秘 藏 記 第 六 卷 十 一 章 ) か ら 普 遍 的 の 念 誦 で あ る 。 言 葉 と 吉 つ て も 唯 單 に 私 達 の 息 の み で な く 、 先 き に 掲 げ た 縦 横 の 波 動 を 総 稱 す る と 見 て よ い 、 如 何 な れ ば 、 固 液 氣 の 三 態 を 立 て る け れ ど 決 し て 絶 對 の 差 で は な い 。 固 體 は 臆 て 液 體 と な り 氣 體 と な る の で あ る か ら 、 氣 體 を 中 心 に し て 考 へ た な ら ば 萬 物 皆 氣 體 の 發 展 と し て も 決 し て 矛 盾 で は な い 。 此 立 ち 場 か ら 言 ふ な ら ば 、 宇 宙 活 動 は み な 如 來 の 樂 音 、 微 妙 な 説 法 と 見做 す 事 が 出 來 る 。 ク ル ッ ク ス 、 レ ソ ト ヒ エ ン 、 等 の 眞 室 管 に 關 す る 研 究 か ら す る と 、 空 氣 が 次 第 に 稀 薄 に な り 遂 に 眞 空 に 迫 近 す る と 音 波 は軈 て 電 磯 波 に 轉 換 し て く る 。 そ し て そ の 速 度 は 三 十 萬 粁 の 大 速 度 と な る 。 此 等 の 事 實 を 能 く 究 明 す る な ら ば 音 波 そ の ま ゝ 宇 宙 の 普 遍 活 力 で は な か ら ふ か 。 ま た 萬 物 が 必 ず や 何 等 か
の 調 子 を 以 て 居 る 因 果 關 係 を 、 逆 に 見 る な ら ば 調 子 は 萬 物 を 展 開 し て 居 る も の と 言 ふ 事 が 出 來 る で は な い か 。 此 事 は 高 野 時 報 の 三 百 二 十 二 號 に 詳 細 に 論 じ て あ る 。 に 書 の 極 限 ど ん な 調 子 の 音 で も み な 私 達 に 聴 け る も の で は な い 、 其 調 子 が 一 秒 間 に 二 十 回 振 動 す る 低 調 子 の も の か ら 一 秒 間 に 四 萬 回 振 動 す る 高 調 子 の も の に 至 る 範 園 の 音 響 で あ る 。 各 種 の 音 に 關 す る 極 限 を 列 記 す る と 次 の 如 く で あ る 。 (4) 、 (5) の 男 女 の 音 調 は 西 洋 人 に 就 い て 云 ふ の で あ る か ら 日 本 人 は 西 洋 入 よ り 餘 程 高 調 子 で あ る 爲 に 初 重 の 徴 日 回 振 動 が 音 聲 の 最 低 に 當 る の で あ る 。( d) 樂音 と 噪 音 聲 明 の 基 礎 研 究 六 五
聲 明 の 基 礎 研 究 六 六 樂 音 は 吾 人 に 快 感 を 與 へ 噪 音 は 不 快 な 感 を 與 へ る 即 樂 音 は 週 期 的 に 振 動 す る 發 音 髄 か ら 發 す る 音 響 で あ つ て 、 其 波 形 も 亦 週 期 的 で あ る に 反 し、 噪 音 は 不 規 則 に 振 動 す る 發 音 體 か ら 發 し 、 其 波 形 は 週 期 で な い 。 例 へ ば 車 輪 の 轟 き は 噪 で あ つ て 、 樂 器 の 發 す る 音 や 人 の 聲 等 は 凡 て 樂 音 で あ る 。 左 に 之 を 分 類 す る と (注 意 ) フ ー リ ェ ー の 研 究 に 依 る と ど ん な 曲 線 で も 皆 な 正 弦 曲 線 の み に 分 解 す る 事 が 出 來 る の で あ る 從 て 噪 音 と 言 つ て も 絶 對 的 な も の で は な く て 大 極 か ら 眺 め た な ら げ 矢 張 の 樂 音 で あ る 現 今 の 音 樂 の 發 展 は 噪 音を 幾 分 か づ つ 使 用 す る 傾 向 に な つ て 居 る點 に 實 に茲 に 存 す る の で あ る 。 音 程 と 音 階 音 程 、 甲 、 乙 二 音 の 振 動 数 を 夫 々n 、m と す れ ば を 甲 と 乙 と の 音 程 と 云 ふ の で あ つ て 此 の 値 が 簡單 な 場 合 に は 甲 、 乙 二 音 は 協 和 す る 。 音 の 協 和 は 二 音 が 相 混 合 し 溶 解 し た も の で あ つ て 、 不 協 和 音 は そ の 二 音 が 混 合 し な い の で あ る 。
音 階 音 樂 に 於 て 一 定 の 樂 音 を 基 礎 と し 之 に 對 し て 協 和 し 得 る 種 々 の 音 程 を 有 す る 樂 音 を 調 子 の 順 に 排 列 し た る も の を 用 ひ 之 を 音 階 と 云 ふ の で あ る 。 例 へ ば 宮 と 商 と の 振 動 敷 は 夫 々 二 九 二 、 七 三 二 六 ・ 二 で あ る か ら 宮 と 商 と の 音 程 は で あ る 。 ま た 宮 を 基 音 に と れ ば 上 の 如 く 宮 即 十 二 律 の 一 越 調 を 基 音 即單 位 に と り て 商 以 下 の 各 音 を 表 し た る 比 数 ( 音 程 ) の 列 を 一 越 調 の 音 階 と 言 ふ の で あ る 。 また 商 を 基 音 と し て 表 は た る 音 程 列 は 十 二 律 の平 調 を 基 音 に と り た る 音 階 で あ る か ら 之 を平 調 律 と 言 ふ の で あ る 。 以 下 同 様 に 双 調 、 黄 鐘 調 、 盤 渉 調 も 夫 々 十 二 律 の 双 調 、 黄 鐘 、 盤 渉 を 基 音 宮 に と り 、 他 の 音 は 循 環 の 順 序 に 宮 、 商 、 角 、 徴 、 羽 を 置 換 し た る も の で あ る 。
五
音
、
五
調
子
の
事
は
後
に
詳
し
く
述
べ
る
今
は
唯
音
階
の
説
明
に
採
用
し
た
の
み
で
あ
る 。 音 の 調 和 表 (表 中 音 程 値 は 八 度を 六 と し 八 度 値 は 二 と し て 計 算 せ り ) 聲 明 の 基 礎 研 究 六 七聲 明 の 基 礎 研 究 六 八 音 程 音 程 比 音 程 値 入 度 値 音 の 協 和 に 關 す る 研 究 は ギ リ シ ヤ の ピ タ ゴ ラ ス が 埃 及 に 留 學 した 際 で あ る 。 之 を繼 承 し て 最 も 深 く 研 究 し た の が ギ リ シ ヤ 人 ユ ー ク リ ッ ド で あ つ て 、 紀 元 一 千 年 頃 オ ラ ン ダ の 僧 フ ク バ ル ト が 樂 上 に 協 和 の 意 を 数 字 的 に 使 用 し た の が 西 洋 で の 蒿 矢 で あ る 。 支 那 に 於 て は 黄 帝 の 頃 か ら 十 二 律 な ど の 協 和 に 關 す る 数 理 的 研 究 が 發 見 せ ら れ た 其 蒿 矢 は 實 に 四 千 年 前 の 事 で あ る 。 日 本 在 來 の 音 樂 は 極 め て 感 情 的 な 柏 子 式 な も の で あ つ た が 、 隋 唐 時 代 の 盛 ん な 和 聲
(即 協 和 ) 的 音 樂 が 日 本 に 入 り平 安 朝 の 理 性 的 雅 樂 と な つ た の で あ る 。 然 る に 日 本 人 の 個 性 が 感 情 的 で あ る か ら平 安 朝 の 末 期 か ら 以 後 は 支 那 か ら 輸 入 さ れ た 、 和 聲 法 は 行 は れ な く な つ た 。 (e)音 樂 の 心 理 關 係 元 來 聲 の 昇 降 は 感 情 に 依 つ て 起 る も の で あ つ て 、 嬉 し い 時 に は 聲 が 高 ま り 、 悲 し い 時 に は 聲 が 低 く な り 愉 快 な 時 に は 聲 が 飛 び ぐ に 大 き く 昇 降 し 、 愛 情 と か戀 と か い ふ 情 を 表 は す 時 に は 聲 が 紬 か く 滑 ら か に 昇 降 す る 如 く 、 凡 て 聲 音 の 抑 揚 は 感 情 の 結 果 に 外 な ら な い が 、 精 細 に 分 析 す る 時 は 感 情 、 理 性 の 二 部 門 に な る 。 和 漢 三 才 圖 會 十 八 の 一 に 次 の 様 な 事 が あ る 。 廣 博 物 志 曰 夫 樂 者 先 王 之 所 二 以 飾一レ 喜 也 軍 族 鐵 鍼 所 以 二飾 一 怒 也 故 先 王 之 喜 怒 皆 得 二 其 齊 一 焉 喜 則 天 下 和 レ之 怒 則 暴亂 者 畏 レ 之 先 王 之 道 禮 樂 可 レ 謂 レ 盛矣 聞 二 角 聲 一莫下シ 不 二 側 隠 而 慈 一者 上 聞 二徴 聲 莫 下 不 二 喜 養 好 レ施 一者 上 聞 二 商 聲 莫 下 不 二 剛 斷 メ 而 メ立一レ 事 者 上 聞 二 弱 聾 一 莫 下 不 二 温 潤 而 寛 和 一者 上 也祝 融 氏 聴 二合州鳥鳴一 以 爲 二 樂 歌 一作 レ樂屬レ 俗 以通二 倫 類 一 諧二神 明 一而 和 二 人 聲 一 感 情 が 昂 ま つ て 來 れ ば獨 り で に 手 を 舞 ひ 足 を 踏 ん で 踊 り 出 し 、 そ こ に 拍 子 と い ふ も の が 現 は れ て 來 る の で あ る 、 そ れ 故 理 性 に 乏 し く 感 情 に 依 つ て 事 を な し て 居 る 所 の 未 開 人 や 原 始 人 に は 拍 子 的 音 樂 が 最 も 遺 憾 な く 發 揮 さ れ て 居 る 。 世 界 に 於 て 此 方 向 の 發 達 を 能 く し て 居 る の は 佛 國 で あ る 。 フ ラ ン ス の 音 樂 は 實 に そ の 拍 子 の變 化 に 面 白 味 を 持 つ て 居 る 。 第 一 フ ラ ン ス の 國 歌 ﹁ マ ル セ ー ユ ﹂ を 見 て も さ う で あ つ て 、 あ の 曲 の 値 打 は 感 傷 的 な 拍 子 に あ る の で あ る 。 そ し て 此 拍 子 が 樂 と し て 表 は れ た の は 。 音 の 強 弱 を 順 次 に 組 合 せ た も の で あ る 。 次 第 に 音 樂 的 情 緒 と そ の 智 識 が 發 達 す る と 唯 拍 子 の み の 聲 明 の 基 礎 研 究 六 九
聲 明 の 基 礎 研 究 七 〇 簡 單 な 聲 樂 に 満 足 す る 事 は 出 來 な く な り 先 き に 述 べ た 音 の 協 和 (或 は 調 和 或 は 和 聲 ) に 關 す る 工 夫 が 發 達 し て 二 音 の 協 和 を し て 音 程 と 言 ふ 事 が 行 は れ 。 斯 く し て 調 和 の と れ た 數 多 の 音 を そ の 調 子 の 順 に 排 列 し て 。 所 謂 階 音 な る も の が 表 は れ た 、 廣 い 意 味 の 音 階 は 即 ち 旋 律 で あ る 從 つ て 旋 律 は 調 子 の 順 次 組 合 せ で あ つ て 、 感 情 的 部 分 と 理 性 的 部 分 と の 調 和 し た る も の と 云 ふ 事 が 出 來 る 。 此 他 に 種 々 の 調 子 の 音 樂 を 同 時 に 組 合 せ 合 奏 し て 一 種 の 調 音 た ら し む る 法 即 和 聲 の 法 が あ る 和 聲 は 全 く 理 性 的 の 調 音 法 で あ る 。 之 を 分 解 す れ ば 音 の 強 弱 、 調 子 の 高 低 は 計 量 す る 事 の 出 來 る 量 で あ る が 音 色 は 音 の 味 で あ つ て 、 之 を 昧 ふ 事 は 出 來 る が 計 量 す る 事 の 出 來 な い も の で あ る 。 即 ち 音 の 性 質 を 分 析 す る な ら ば 音 の 強 弱 と 調 子 の 高 低 は 音 の 量 的 部 分 で あ つ て 音 色 は 音 の 質 的 部 分 に 屬 し て 居 る 。 之 を 表 解 す れ ば 次 の 如 く で あ る 。
斯 く の 如 く 音 樂 と 心 理 關 係 が 濃 厚 で あ る か ら 、 音 樂 上 か ら 國 民 性 を 分 類 す る 事 が 出 來 る 。 音 樂 ば か り で な く 一 般 に 感 覺 は 刺 戟 の 封 數 で あ つ て 刺 戟 の 量 R が 10 、100 、1000 ⋮ の 割 合 に 増 加 す れ ば 感 覺 の 量 E は 1 . 2 . 3 . ⋮ の 割 合 に 増 加 す る と 言 ふ 事 は 、 彼 の 有 名 な る フ エ ヒ ネ ル の 説 で あ る 。 彼 の 説 は 其 元 を 獨 の ウ エ ー ベ ル の 法 則 に 基 因 し て 居 る 。 ウ エ ー ベ ル の 法 則 、 茲 に 既 存 の 刺 戟 が あ る 時 に 、 之 を 變 化 す る と 其 際 に 起 る 感 覺 の 強 さ の 變 化 は 刺 聲 明 の 基 礎 研 究 七 一
聲 明 の 基 礎 研 究 七 二 戟 の 變 化 に 正 比 例 し 且 っ 既 存 の 刺 戟 の 量 に 反 比 例 す る 。 今 既 存 の 刺 戟 の 量 を R と し 、 其 變 化 の 量 を ΔR と し 、 之 に 對 應 す る 感 覺 の 強 を ΔE と す れ ば フ ェ ヒ ネ ル は 次 の 如 き 假 定 を し た 。 第 一 假 定 、 刺 戟 の 量 の 變 化 を 限 り な く 小 に す る と き に 感 覺 の 強 さ も 亦 共 に 限 り な く 小 と な り 、 而 も 感 覺 の 強 さ の 變 化 が 連 續 的 で あ る と し た 。 す る と ΔR を 無 限 小 dR と す れ ぱ 面 も 亦 無 限 小dE と な る 。 茲 に 於 て ゥ エ ー ベ ル の 法 則 は の 法 則 で あ る 。 フ エ ヒ ネ ル の 第 二 假 定 感 覺 の 量 は 吾 人 の 數 理 を 適 用 し 得 べ き も の で あ る と 考 へ た 。 然 る に 此 事 は 後 の 學 者 に 依 つ て 否 定 さ れ た 、 刺 戟 の 量 を 連 續 的 に 變 化 し て も 其 に 應 じ て 感 覺 上 の 量 は 連 續 的 に 變 化 し な い 。 或 る 瞬 間 に 於 け る 強 さ と 次 の 瞬 間 に 於 け る 強 さ と を 比 較 し て 、 後 の 強 さ が 前 の 強 さ よ り も 小 で あ る と い ふ こ と を 感 ず
る 爲 め に は 其 の 間 に 有 限 な る 刺 戟 の 差 が な く て は な ら な い 。 此 最 小 差 違 の 感 覺 即 ち 辨 別 閾 と い ふ も の は 種 々 の 感 覺 に 依 っ て 異 な る が 、 決 し て 度 外 視 し 得 る 程 に 小 な る も の で は な い 。 此 事 は 音 に 就 て も 同 様 で あ る 。 音 に 關 す る 辨 別 閾 と 刺 戟 閾 に 就 て ウ ヰ ン 氏 の 測 定 し た る も の を 左 に 掲 げ ん 。 で あ る 。 斯 く フ エ ヒ ネ ル の 假 定 は 理 論 的 に は 成 立 せ ぬ 様 に な つ た け れ ど も 、 大 略 に 於 て は 術 フ エ ヒ ネ ル 氏 の 法 則 は 適 用 せ ら れ て 居 る 。 要 す る に 音 、 光 等 の 量 に 就 て は 大 略 フ エ ヒ ネ ル の 法 則 に 適 す る も の と 見 て も 差 支 は な い の で あ る 。
(
f)
洋
樂
に
就
て
洋 樂 に は 和 樂 の 呂 、 律 二 つ の 音 階 に 相 當 す る 長 音 階 と 短 音 と の 二 種 が あ つ る 。 先 づ 長 音 階 に 當 る 絃 長 の 計 算 法 を 述 ぶ れ ば 聲 明 の 基 礎 研 究 七 三聲 明 の 基 礎 研 究 七 四
洋
樂
十
二
律
に
就
き
て
( g) 支 那 樂 に 就 て 洋 樂 器 は 其 基 を 絃 樂 に と り し を 以 て 、 音 調 は 直 接 絃 長 に 反 比 例 し 比 較 的 に 容 易 に 算 出 、 測 定 す る 事 を 得 た る も 、 支 那 樂 は そ の 基 を 横 笛 に と り た る を 以 て 、 絃 樂 の 如 く 算 出 法 容 易 な ら す 、 且 又 支 那 の 度 量 衡 は 時 代 と 共 に 變 遷 し 來 り た る を 以 て 、 吾 人 は 支 那 樂 の 前 提 と し て 先 す 、 支 那 の 度 量 衡 の 關 係 を 述 聲 明 の 基 礎 研 究 七 五聲 明 の 基 礎 研 究 七 六 べ 、 次 に 横 笛 に 關 す る 性 質 を 記 し な く て は な ら な い 。 支 那 尺 黄 帝 の時 代 に 使 用 し て 居 つ た 尺 は 黍 の 長 さ を 一 分 と し 九 分 を 一 寸 、 九 寸 を 一 尺 と し た も の で あ る 。 此 を 縦 黍 尺 、 ま た 夏 の 時 代 の 尺 は 一 黍 の 幅 を 一 分 と し 十 分 を 一 寸 、 十 寸 を 一 尺 と す る 。 其 他 殷 の 時 代 に は 商 尺 を 使 用 し 、 周 尺 は 夏 尺 の 八 寸 に 相 當 す 、 漢 の 園 の 一 尺 は 縦 黍 尺 の 十 寸 即 ち 一 尺 一 寸 に 等 し く 、 唐 國 の 一 尺 は 商 の 一 尺 に 等 し く 宋 の 國 の 一 尺 は 縦 黍 の 十 一 寸 一 分 に 等 し く 、 明 の 國 の 曲 尺 は 商 の 尺 に 等 し い 。 之 等 の 尺 の 關 係 を 示 す と 次 の 如 く な る 。 十 二 律 管 の 基 原 黄 帝 が 十 二 律 管 を 作 つ た の は 十 二 律 を 十 二 ヶ 月 に 配 し て 、 氣 の 應 す る を 候 ふ と 言 ふ 作 法 が あ つ た 。
圖
の
室
製
管
律
二
十
聲 明 の 基 礎 研 究 七 七聲 明 の 基 礎 研 究 七 八 そ れ に は 圖 に 示 す 様 な 三 重 の 壁 を 持 ち 、 入 ロ が 各 々 反 對 の 向 き に 附 い て 居 る 所 の 室 を 作 つ て 、 そ の 中 央 に 十 二 律 管 を 圖 の 様 に 安 置 す る 。 こ の 室 の 戸 は 堅 く 閉 ぢ て 置 き 、 室 内 に 経 縵 を 布 い て 其 上 に 木 で 、 按 を つ く り そ れ で 各 律 管 を 戴 せ て 置 く 。 管 の 内 端 に 葭 箏 灰 を 置 く と 、 そ の 月 の 節 の 至 る 時 に 管 中 の 灰 が 散 す る と 云 ふ の で あ る 。 例 へ ぱ 黄 鐘 の 律 管 を 子 の 方 角 に 向 け て 置 け ば 十 一 月 の 節 の 日 に 其 灰 が 自 分 で 散 る と い ふ の で あ る 。 次 圖 は 實 に 十 二 律 管 の 製 室 の 横 斷 面 で あ る 。 十 二 律 の 基 音 は 黄 鐘 律 管 で あ つ て 其 の 長 さ は 縦 黍 尺 の 一 尺 即 ち 9 寸 で あ る 。 ま た 室 園 九 分 で あ る か ら 、 其 切 口 の 直 經 は 三 分 三 厘 八 毛 で あ る 。 尤 も 空 園 を 周 園 と 解 す る 説 も あ れ ど 、 そ れ は 實 際 に 適 合 し な い か ら 今 日 で は 、 切 口 の 面 積 と 譯 す る の を 正 當 と し て 居 る 。 斯 く し て 得 た る 黄 鐘 律 管 を 基 と し こ の 律 管 長 に 三 分 の 二 を 乗 じ た る も の を 第 八 階 の 林 鐘 律 と し 、 こ れ に 三 分 の 四 を 乗 じ た る も の を 第 三 階 の 太 簇 と し 、 太 簇 の 三 分 二 を 第 十 階 南 呂 と し 、 南 呂 に 三 分 の 四 を 乗 じ た る も の を 第 五 階 の 姑 洗 と し 、 姑 洗 に 三 分 の 二 を 乗 じ た る も の を 第 十 二 階 の 應 鐘 と し 、 應 鐘 に 三 分 の 四 を 乗 じ た る も の を 第 七 階 の 莚 賓 と し 。莚 賓 に 更 に 三 分 の 四 を 乗 じ た る も の を 第 二 階 の 大 呂 と
し 、 こ れ に 三 分 の 二 を 乗 じ た る も の を 第 九 階 の 夷 則 と し 夷 則 に 三 分 四 を 乗 じ た る も の を 第 四 階 の 爽 鐘 と す 、 爽 鍾 に 三 分 の 二 を 乗 じ た る の は 第 十 一 階 の 無 射 に し て 之 に 三 分 の 四 を 乗 じ た る の は 第 六 階 の 仲 呂 な り 斯 く し 十 二 律 管 長 を 決 定 し た の で あ る 。 左 に 十 二 律 管 長 を 記 載 す れ ば 次 の 通 り で あ る 。 絃 樂 と 笛 樂 と の 相 違 聲 明 の 基 礎 研 究 七 九
聲 明 の 基 礎 研 究 八 ○ 絃 樂 に 於 て は 同 一 の 絃 で あ る な ら ば 其絃 長 に 反 比 例 し て 音 調 は 變 は る 即 ち 絃 が 二 倍 に な れ ば 調 子 は 半 分 に な る の で あ る が 。 笛 樂 に 於 て は 絃 樂 の 如 く 正 確 に 反 比 例 は し な い 。 先 づ 大 略 の 處 反 比 例 す る と 見 て も 差 支 は な い 。 然 し な が ら 此 事 は 決 し て 正 確 な 事 で は な く 、 同 じ 太 さ の 管 を 半 分 の 長 さ に 切 る と 其 音 は 初 め の 音 の 倍 ( 八 度 ) の 調 子 よ り は 少 し 低 い 。 律 管 を 以 て 研 究 し て 見 る に 、 初 め の 長 さ の 三 十 分 の 十 三 凡 そ 百 分 の 四 十 三 の 長 さ の 管 を 作 る と 頂 度 初 め の 振 動 數 の 二 倍 の 音 が 得 ら れ る と い ふ 。 之 を 以 て 見 る と 即 ち 十 五 分 の 一 丈 け の 誤 差 が 之 は 同 じ 管 に 就 て 述 べ た の で あ る が 管 の 太 さ 又 は 管 端 の 口 の 大 さ が 違 ふ と 其 音 は 又 違 ひ 、 概 し て 其 開 き が 大 き け れ ば 其 晋 は 高 く な る 。 最 近 物 理 學 者 の 研 究 に 依 る と 一 般 に 次 の 如 き 關 係 が あ る 。 即 r が 一 定 な れ ばar も 亦 一 定 に し て 総 て に 補 正 す べ き 長 さ 也 式 中 L は 音 の 波 長 を 表 は し 、 l は 笛 の 長 さ を 表 は し 、 a は 笛 に 特 有 な る 常 數 に し て、r は 笛 の 切 口 の 半 經 で あ る 。 今 黄 鐘 律 管 に 於 て はr は 三 分 三 厘 八 毛 に て 既 知 且 つ l は 9 寸 な る や 明 か な り ま た 實 験 に 依 る と 、 黄 鐘 律 管 の 二 倍 の 調 子 の 律 管 の 長 さ は 三 寸 九 分 な る 事 を 知 る 。
(1) 、 (2) の 聯 立 方 程 を 解 け ば 、 黄 鐘 即 一 越 調 宮 の 調 子 の 音 波 の 波 長 L は 當 に 二 尺 四 分 に し て 、ar な る 補 正 長 の 値 は 一 寸 二 分 な る 事 を 知 る 。 從 て 十 二 律 管 の 長 さ は 唯 管 長 を 三 分 の 二 倍 し た り 或 は 三 分 の 四 倍 し て も 調 子 は 其 の 通 り に な つ て 居 な い 事 が 知 れ た の で あ る 。 音 調 を 倍 に す る に は 波 長 を 半 分 に せ な け れ ば な ら な い か ら で あ る 換 言 す れ ば 音 波 の 調 子 は 其 の 音 の 長 さ に 反 比 例 す る か ら 音 の 調 子 を 三 分 の 二 倍 に す る に は 其 波 長 を 二 分 の 三 倍 に な る 樣 に 笛 の 長 さ を 定 め ね ば な ら ぬ 從 つ て 一 般 に 次 の 如 き 計 算 を せ な け れ ば な ら な い 事 と な る 。 の 律 管 長 に 相 當 す 斯 く し て 十 二 律 管 の 正 し き も の を 定 む る 事 次 の 如 し 聲 明 の 基 礎 研 究 八 一
聲 明 の 基 礎 研 究 八 二 と な る 。 前 表 は 余 の 算 出 し た も の で あ る が 。 田 邊 尚 雄 氏 著 最 近 科 學 上 か ら 見 た る 音 樂 の 原 理 中 第 三 五 五 頁 に は 十 三 律 管 の 長 さ と し て 唯 結 果 の み 次 の 樣 に 出 て 居 る 。 竹 聲 十 三 律 の 管 長 余 の 算 出 値 誤 差
黄 鐘 九 寸 同 上 ○ 大 呂 八 寸 三 分 五 厘 一 毛 強 同 上 ○ 太 簇 七 寸 八 分 六 厘 六 毛 強 同 上 ○ 夾 鐘 七 寸 二 分 九 厘 四 毛 強 七 寸 、 二 九 一 三 毛 姑 洗 六 寸 八 分 五 厘 九 毛 強 同 上 ○ 仲 呂 六 寸 三 分 五 厘 強 六 寸 、 三 四 八 二 毛 莚 賓 五 寸 九 分 六 厘 三 毛 強 同 上 ○ 林 鐘 五 寸 六 分 同 上 夷 則 五 寸 一 分 七 厘 一 毛 強 五 寸 、 一 六 八 三 毛 南 呂 四 寸 八 分 四 厘 四 毛 強 同 上 ○ 無 射 四 寸 四 分 六 厘 、 三 毛 強 四 寸 、 四 六 一 二 毛 應 鐘 四 寸 一 分 七 厘 、 二 毛 強 同 上 ○ 黄 鐘 半 律 三 寸 九 分 田 邊 先 生 の 計 算 は 間 違 ふ 筈 は な い が 萬 一 印 版 の 際 活 字 が 間 違 ふ た の で は な か ら ふ か 。 余 は 種 々 の 法 方 で 計 算 し た が 前 記 の 通 り に な る か ら 一 應 右 に 掲 載 し て 置 く 。 專 門 の 方 は 今 一 度 御 験 算 を 乞 ふ 。 乍 併 聲 明 の 基礎 研 究 八 三
聲 明 の 基 礎 研 究 八 四 田 邊 先 生 の 結 果 と 相 異 な る も の は 十 二 律 管 中 四 に し て 且 つ 其 の 誤 差 が 就 れ も 、 三 毛 以 内 で あ る か ら 計 算 の 結 果 は 兎 も 角 、 田 邊 先 生 の 結 果 を 採 用 す る こ と に し た 。 支 那 の 律 は 十 二 律 を 中 心 と し て 、 五 聲 、 七 聲 、 十 三 律 、 十 八 律 、 六 十 律 、 三 百 六 十 律 、 等 の 諸 種 の 音 律 が 展 開 さ れ た の で あ る 。 今 各 別 に 其 の 概 要 を 述 べ て 見 よ う 。 支 那 樂 と 三 分 損 益 ( 順 八 逆 六 ) 先 に 十 二 律 管 長 を 算 出 す る 最 初 の と き 黄 鐘 律 管 に 三 分 の 二 を 乗 じ て 林 鐘 管 長 を 得 次 に 林 鐘 管 長 に 三 分 の 四 を 乗 じ て 太 簇 律 管 長 と し 以 下 次 第 に 三 分 の 二 、 三 分 の 四 を 交 番 に 乗 じ て 十 二 律 管 の 長 さ を 求 め た の で あ る 。 獨 十 二 律 ば か り で な い 先 に 擧 げ た 支 那 の 律 管 は 悉 く 此 方 法 に 依 つ て 製 し た も の で あ る 。 三 分 の 二 を 掛 け た 時 は 元 の 長 さ よ り 、 そ の 三 分 の 一 を 損 減 し 。 三 分 の 四 を 掛 け た 場 合 に は 、 そ の 三 分 の 一 を 増 益 す る か ら 、 笛 の 長 さ の 點 か ら し て 、 此 方 法 を﹁三 分 損 益 ﹂ 法 と 官 ふ の で め る 。 ま た 十 二 律 の 場 合 に は 管 長 が 三 分 の 一 減 す れ ば 調 子 は 八 番 目 ま で 順 に 高 く な り 。 三 分 の 一 増 長 す る と 調 子 は 六 番 目 ま で 逆 に 低 く な る か ら 、 此 方 法 を ﹁ 順 八 逆 六 ﹂ と も 言 ふ の で あ る 。 即 ち 順 八 逆 六 は 調 子 の 點 か ら 言 ふ 名稱 で あ つ て 、 三 分 損 益 は 笛 管 の 長 さ か ら 云 ふ 名 稱 で あ る 。 十 八 律 に 就 て
宋 の 蔡 元 定 と い ふ 人 は 秦 樂 の 實 際 か ら 考 へ て 十 二 律 の 外 に 變 律 と し て 六 つ の 新 音 を 増 し て 十 八 律 と い ふ の を 作 つ た 。 之 は 氏 の 著 ﹁ 律 呂 新 書 ﹂ の 中 に 記 載 し て あ る 。 ( 三 分 損 益 ) 即 順 八 逆 六 の 法 に 依 つ て 十 二 律 を 先 つ も と め 、 第 一 黄 鐘 律 管 か ら 八 、 三 、 十 、 五 、 十 二 、 七 、 二 、 九 、 四 、 十 一 、 等 を 得 て 第 六 律 仲 呂 に 至 り 更 ら に 仲 呂 の 下 四 度 (逆 六 ) の 音 を 變 黄 鐘 と い ひ 、 變 黄 鐘 の 上 五 度 (順 八 ) の 音 を 變 林 鐘 と い ひ 、 變 林 鐘 の 下 四 度 (逆 六 ) の 音 を 變 太 簇 と い ひ 、 變 大 簇 の 上 五 度 (順 八 )を 變 南 呂 と い ひ 、 變 南 呂 の 下 四 度 ( 逆 六 ) の 音 を 變 姑 洗 と い ひ 、 變 姑 洗 の 上 五 度 (順 八 ) の 音 を 變 應 鐘 と い ふ 、 そ の 作 り 方 は 次 の 如 し 聲 明 の 基 礎 研 究 八 五
聲 明 の 基 礎 研 究 八 六
六 十 律 前 に 述 べ た 樣 に 黄 鐘 か ら 初 め て 順 八 逆 六 を 十 一 回 重 ね て 行 ふ と 仲 呂 が 得 ら れ る 。 そ れ で 十 二 律 が 終 完 成 す る 。 然 る に 仲 呂 の 上 に 順 八 を 行 ふ と 黄 鐘 と な ら な い で 、 之 れ よ り も ○ ・ 一 二 丈 け 高 い 音 が 得 ら れ る 。 そ れ か ら 上 に 幾 回 順 八 逆 六 を 繰 返 へ し て も 凡 て 十 二 律 と は 少 し く 蓮 つ た 音 が 得 ら れ る 。 之 に 依 つ て 前 記 の 宋 の 蔡 元 定 よ り も 遙 か に 昔 に 於 て 漢 の 京 房 と い ふ 人 は 十 二 律 を 補 な は う と し て 黄 鐘 か ら 初 め て 順 に 順 八 逆 六 を 繰 返 す こ と 五 十 九 回 に し て 六 十 律 を 得 た 。 之 を 次 の や う に 名 付 け た 。 順 八 の 時 は ← 、 逆 六 の 時 は → な る 記 號 を 使 用 す れ ば 六 十 律 は 次 の 如 く に し て 得 ら れ る 。 (1) 黄 鐘↓ (2) 林 鐘↑ (3) 太 簇↓ (4) 南 呂↑ (5) 姑 洗↓ (6) 應 鐘↑ (7) 莚 賓↑ (8) 大 呂↓ (9) 夷 則↑( 10) 夾 鐘↓( 11) 無 射↑( 12) 聲 明 の 基 礎 研 究 八 七
聾 明 の 基 礎 研 究 八 八
六 十 は 十 二 の 五 倍 で あ つ て 、 十 二 律 を 五 聲 に 配 し て 、 六 十 調 を 得 る が 如 く 、 六 十 と 云 ふ 數 は 支 那 樂 律 の 方 で は 大 切 な 數 と な つ て 居 る 。 三 百 六 十 律 ﹁ 階 書 律 暦 者 ﹂ と い ふ 書 の 中 に 宋 の 銭 樂 之 と い ふ 人 が 京 房 の 六 十 律 を繼 い で 案 出 し た 三 百 六 十 律 の 名 掲 げ て あ る 。 今 次 に 高 さ の 順 に そ の 名 稱 丈 け を 掲 げ て 見 よ う 。 銭 樂 之 三 百 六 十 律 の 名 黄 鐘 、 安 蓮 、 色 育 、 含 微 、 帝 徳 、 廣 運 、 下 濟 、 剋 終 、 執 始 、 握 鑒 、 持 樞 、 黄 中 、 通 聖 、 潜 升 、 殷 普 、 丙 盛 、 滋 萠 、 光 被 、 咸 亨 、 廼 丈 、 廼 聖 、 徴 陽 、 分 動 、 生 氣 、 雲 繁 、 鬱 湮 、 升 引 、 屯 結 、 開 元 、 質 末 、 優 昧 、逋 建 、 立 中 ・ 玉 燭 ・ 調 風 、 大 呂 、 菱 動 、 始 贊 、 大 有、 坤 元 、 輔 時、 匡 弼 、 分 否 、 又 繁 、 唯 微 、 棄 望 、 庶 幾 、 執 義 、 乗 強 ・ 凌 陰 、 侶 陽 、 識 沈 、緝 煕 、 知 道 ・ 適 時 、 權 變、 少 出 、 阿 衡 、 同 雲 、 承 明 、 善 述 、 休 光 、 太 簇 、 未 知 、 其 巳 、 義 建 、 亭 毒 、 條 風 、 湊 始 、 時 息 、 達 生 、匏 奏 、 初 角 、 少 陽 、 柔撓 、 商 音 、 屈 齊 、 扶 弱 、 承 齊、 動 植 、 威 擢 、 兼 聲 明 の 基 礎 研 究 八 九
聲 明 の 基 礎 研 究 九 〇 山 、 止 速 、隋 期 、 龍 躍 、 句 芒 、 調 序 、 青 要 、 結萼、 延 敷、 形 晋 、 辨 秩 、 東 作 、 賛 揚 、 顯 滞 、俶 落 、 夾 鐘 ・ 明 庶 、 協 侶 、 陰 賛 、 風 從 、 布 政 、 萬 化 、 開 時 、 震 徳 、 乗 條 、 芬 芳 、 散 朗 、 淑 氣 、 風 馳 、 族 嘉 、 藁 黨 、 四 隙 、 種 生 、 恣 性 、 逍 遙 、 仁 威 、 争 南 、 旭 且 、 晨 朝 、 生 遂 、 群 分 、絜 新 、 姑 洗 、 南 授 、 懐 來 、 考 神 、 方 顯 、 携 角 、 洗 陳 、 變 虞 、 擢 頴 、 嘉 氣 、 始 升 、 卿 雲 、 媚 嶺 、流 道 、 路 時 、 日 旅 ・ 實 沈 、 炎 風 、 首 節 、 柔 條 、 方 結 、 形 始 、 方 齊 、 物 華 、 革 葵 、 茂 實 、 登 明 、 壮 進 、 依 行 、 少 選 、 道 從 、 朱黻 、 揚 延 、 含 貞 、 仲 呂 、 朱 明 、 啓 運 、 景 風 、 初 緩 、 羽 物 、 斯 奮 、 南 中 、 離 春 ・ 率 農 、 有 程 、 南 訛 、 敬 致 、 相 趣 、 丙 員 、 朱 草 、 含 輝 、 屈 秩 、 曜 疇 、 巳 氣 、 清 和 、 物 應 ・ 戒 麩 、 荒 落 、 貞 診 、 天 庭 、 詐 周 、 莚 賓 、 南 事 、 諸 静 、 則 選 、 布 萼 、 満贏 、 潜 動 、 盛 變 、 賓 安 、 懐 遠 、 聲 既 、 執 同 、 海 水 . 息 診 、 離 宮 、 安 壮、 崇 明 、 遠 眺 、 升 中、 鳳 翁、 朝 陽 、 制 時 、 瑞 通 、 鶉 火 、 又 次 、 高 談 、 其 煌 、 林 鐘 、 謙 待 、 崇 徳 、 循 道 、 方 壮 、 陰 升 、 靡 屋 、 去 滅 、 華 銷 、 明 慶 、 雲 布 、 均 任 、 仰 成 、 寛 中 ・ 安 度 、 徳 均 、 無 蹇、 禮 溢 、 智 深 、 任 粛 、 純 恪 、 歸 嘉 、 美 音 、 温 風 、 候 節 、 糞 華 、 繕 嶺 ・ 物 無 、 否 與 、 景 口 、 曜 井 、 日 換 、 重 輪 、 財 華 、 夷 則 、 升 商 、 清 爽 、 氣 精 、 陰 徳 、 白 藏 、 御 叙 、 解 形 、 貞 剋 、 金 天 、 劉 禰 、 會 道 、 歸 仁 、 陰 侶 、 去 南 、 陽 消 、 柔 辛 、 延 乙 、 和 庚 、 靡 卉 、 葵 晋 、 分 積 、 孔 脩 、 九 徳 、 咸 釜 僉 、 惟 俾 又 、 南 呂、 白 呂 、 捐 秀 、 敦 實 、 素 風 、 勁 物 、 曾 稔 、 結 躬 、 肥 遯 、 贏 中 、 晟 陰 、 抗 節 、 威 遠 、 有 截 、 歸 期 、 中 徳 、 玉 猷、 允 塞 、 蓐 収 、 樽 轡 、 揺 落 、 末 卯 、 質 随 、 分 満 、 道 心 、 貞 堅 、 畜 止、 歸 藏 、 惟 汗 、 均 義 、 悦 使 、 亡 勞 、 九 有 、 光 責、 無 射 、 思 沖 、 懐 謙 、 恭 倹 、 休 老 、恤 農 、 鎖 祥 、 閉 掩 、 降 婁 、 藏 邃 、 日 在 、 旋 春 ・ 闇 藏 、 明 奎 、 都 齊 、 軌 衆 、 大 蓄 、 嗇 歛 、 下 濟 、 息 肩 、 無 邊 、 期 保 、 延 年 、 秋 深 、 野 分 、 玄 月 、 澄 天 、
應 鐘 、 分 鳥 、 祖 徴 、 據 始 、 功 成 、 又 定 、 静 謐 、 遲 内 、 無 爲 、 而 又 、 姑 射 、 凝 晦 、 動 寂 、 應 徴 、 末 育 、 萬 機 、 萬 壽 、 無 彊 、 地 久 、 天 長 、 脩 復 、 遲 時 、 方 制 、 無 休 、 九 野 、 八 荒 、 億 兆 、 以 上 の 三 百 六 十 律 で あ る 。 右 表 中 ◎ を 添 附 し た も の は 十 二 律 中 の も の に し て 、 ︱ 線 を 附 し た る は 六 十 律 に 屬 し た も の で あ る 。 銭 樂 之 は 三 百 六 十 律 を 以 て 一 年 間 毎 日 の 氣 に 一 律 づ ゝ 割 り 當 て ゝ 、 氣 を 候 ひ 、 京 房 は 六 十 律 を 以 て 一 年 六 十 節 を 候 ひ 、 黄 帝 は 十 二 律 を 以 て 一 年 十 二 ヶ 月 に 配 し 、孰 れ も 大 氣 の 共 鳴 的 季 節 を 候 ふ た も の で あ る 。 樂 と し て 考 ふ る 場 合 に は 京 房 の 六 十 律 は 五 十 三 律 で よ く 、 銭 樂 之 の 三 百 六 十 律 は 三 百 七 律 で よ い の で あ る 。 十 三 律 は 、 十 二 律 に 最 初 の 黄 鐘 の 半 律 な る 調 子 二 倍 の も の を 加 へ て 十 三 と し た も の で あ る 。 上 來 述 べ た 十 二 律 か ら 三 百 六 十 律 の 樂 律 は 一 種 の 旋 律 と し て 連 續 的 に 弾 す る な ら ば 協 和 す る も 、 同 時 に 若 し く は 自 由 に轉 々 弾 ず る 場 合 に は 音 程 が 複 雑 な 分 數 で あ る か ら 協 和 し な い の で あ る 。 次 に 説 く 處 の 五 聲 、 ヒ 聲 な ど は 、 如 何 に 之 を 弾 す る も 常 に 協 和 す る 樣 な 、 簡 單 な 音 程 比 を 保 っ て 居 る の で あ る 。 之 が 爲 め に 五 聲 、 七 聲 、 は 非 常 に 發 達 し 、 種 々 な 音 樂 に 使 用 さ れ て 居 る 。 此 れ 全 く 昔 程 が 樂 音 に 通 じ 、孰 れ を 基 音 に 採 つ て も 其 音 階 が 樂 律 に 適 ふ か ら で あ る 。 五 聲 聲 明 の 基 礎 研 究 九 一
聲 明 の 基 礎 研 究 九 二 十 二 律 中 で 基 音 一 越 ( 黄 鐘 ) と 簡單 な 音 程 を な し て 居 る も の は平 調 ( 太 籏 )、 下 無 (姑 洗 )、 黄 鐘 (林 鍾 ) 、 盤 渉 (南 呂 ) と 一 越 (黄 鐘 ) 半 律 で あ る 今 一 越 調 を 宮 音 程 と し 、平 調 下 無 ( 下 無 の こ と を 聲 明 家 は 双 調 と 言 つ て 居 る ) 黄 鐘 、 盤 渉 を 夫 々 商 、 角 、 徴 、 羽 と し た も の を 五 聲 の 本 調 子 と し 此 音 階 名 を 一 越 調 と 官 つ て 居 る 。 ま た 、 李 調 音 を 宮 と し 、 双 調 、 黄 鐘 、 盤 渉 、 一 越 を 夫 々 商 、 角 、 徴 、羽 と し た る 音 階 名 を平 調 と 言 つ て 居 る 。 以 下 双 調 、 黄 鐘 、 盤 渉 、 の 各 音 階 は 夫 々 基 音 宮 に 双 、 黄 盤 の 音 を と り 他 の 音 は 前 と 同 様 に 循 環 の 順 席 に 配 當 し た る も の で あ る 。 要 す る に 一 越 、平 調 、 双 調 、 黄 鐘 、 盤 渉 は 音 階 で あ つ て 宮 、 商 、 角 、 徴 、 羽 は 音 程 名 で あ る 。 左 に 五 聾 音 階 の 表 音 程 名 宮 商 角 徴 羽 宮 洋 樂 と の 概 略 關 係 ヒ フ ミ イ ム ヒ
洋 樂 と の 概 略 關 係 フ ミ イ ム ヒ フ 洋 樂 と の 概 略關 係 ミ イ ム ヒ フ ミ 聲 明 の 墓 礎 研 究 九 三
聲 明 の 基 礎 研 究 九 四 洋 樂 と の 概 略 關 係 ム ヒ フ ミ イ ム 洋 樂 と の 概 略 關 係 ム ヒ フ ミ イ ム 五 聲 の 呂 、 律 の 形 式 は 次 の 如 く で あ る 。 だ か ら 律 旋 は 呂 旋 よ り も 角 の 調 子 が 一 律 だ け 高 い の で あ る 。
初
二
三
重
の
表
聲 明 樂 音 の 限 界 初 重 徴 二 一 八 、 五 乃 至 三 重 角 七 三 一 、 四 七 聲 音 階 の 表 先 き の 十 八 律 の 表 に 於 て 、 黄 鐘 を 宮 と し 、 林 鐘 を 徴 太簇 を 商 と し 、 南 呂 を羽 と し 、 姑 洗 を 角 と し で 聲 明 の 基 礎 研 究 九 五
聲 明 の 基 礎 研 究 九 六 五 聲 を 得 た る 引續 き 二 回 順 、 逆 六 法 を 適 用 し て 應 鐘 を 變 宮 と し 、 莚 宥 を 變 徴 と し て 音 階 を な し た も の を 呂 の 七 聲 音 階 と言 ふ て 居 る 。
理
學
博
士
中
村
精
二
氏
は
﹁
東
洋
學
藝
雜
誌
第
一
九
五
號
﹂
に
西
洋
の
長
音
階
と
短
音
階
と
の
關
係
が
支
那
の
呂
旋
、
律
旋
の
關
係
と
同
一
で
あ
る
と
云
ふ
見
解
の
下
に
呂
旋
の羽
と
律
旋
の
宮
と
が
同
調
と
し
て
前
記
之
通
り
七
聲
の
計
算
聲
明
の
基礎
研
究
九
七
聲 明 の 基 礎 研 究 九 八 を せ ら れ た の で あ る 。 即 ち 呂 律 の 關 係 は 次 の 如 く で あ る 。 然 る に 我 が 聲 明 家 の 五 音 五 調 子 の 表 を 見 て も 呂 旋 の羽 と 律 旋 の 宮 と が 同 調 な る は 明 瞭 で あ る 。 即 ち 今 日 我 國 に 行 は れ て 居 る 十 二 律 や 五 聲 は 、 我 宗 の 聲 明 家 の 相 傅 と 相 一 致 し て 居 つ た 事 が 明 瞭 に な つ た の で あ る 。 轉 回 和 音 と 順 八 逆 六 と の 關 係 左 圖 の 如 く 初 重 の 宮 の 順 八 音 徴 聲 は 二 重 の 宮 の 逆 六 で あ る 。 だ か ら 初 重 の 徴 聲 は 初 重 の 宮 と も 調 和 音 で あ れ ば ま た 、 二 重 の 宮 と も 調 和 音 で あ る 。 初 重 の 宮 を 二 重 の 宮 へ 轉 回 す る 爲 め に 後 の 關 係 を 互 に 轉 回 和 音 を な す と い ひ 。 又畧 し て 互 に 反 音 を な す と も 言 ふ の で あ る 。 要 す る に 一 階 の 或 る 音 の 順 八 音 は 此 音 を 二 階 へ 轉 回 し た る も の 、 逆 六 音 と な り 又 互 に 調和 を す る 。 二 重 の羽 は 三 重 の 商 と 互 に 反 音 で あ る 。 二 重 の 商 の 順 八 音 は羽 で あ つ て 二 重 の 商 を 三 重 へ 轉 回 し た る も
の ゝ 逆 六 に な る か ら で あ る 。 樂 曲 の 調 に 就 て 我 國 の 律 名 は 一 部 分 支 那 の 唐 の 俗 樂 四 十 八 調 の 名 に 依 つ て 居 る か ら 、 今 唐 の 俗 樂 四 十 八 調 に 就 て 述 べ る 必 要 が あ る 。 一 體 支 那 の 古 樂 で も 又 我 が 國 の 雅 樂 で も 、 そ の 曲 の 始 め の 音 と 終 り の 音 と は 同 じ 高 さ の も の で な け れ ば な ら な い と い ふ 規 則 が あ る 。 此 の 終 始 の 昔 を そ の 曲 の 調 と い ふ の で あ る 。 こ の 人 を 例 説 す る 爲 に 日 本 國 歌 ﹁ 君 が 代 ﹂ に 就 て 述 べ ん 。 世 間 に は ﹁ 君 が 代 ﹂ を 西 洋 流 の 唱 歌 と 誤 解 し て 居 る 事 が あ る が 之 は 雅 樂 の 作 曲 法 に 依 っ た も の で あ る 。 即 ち 譜 壹 神 壹 平 双 平 壹 。 平 双 黄 双 黄 壹 盤 黄 双 。 詞 キ ミ ガ ー ヨ ー ハ 。 チ ヨ ニーー ヤ チ ヨ ニ 。 双 黄 壹 神 壹 。 平 双 黄 双 平 双 壹 。 サ ザ レ イ シ ノ 。 イ ハ ホト ナ リ テ 。 聲 明 の 基 礎 研 究 九 九
聾 明 の 基 礎 研 究 一 〇 〇 黄 神 壹 神 壹 黄 双 黄 双 平 壹 。 コ ケ ノ ム ー ス ー マ ー ー デ 。 即 ち 一 越 か ら 始 ま つ て 一 越 に 終 つ て 居 る 。 だ か ら ﹁ 君 が 代 ﹂ は 一 越 調 と 言 ふ の で あ る 。 所 が ﹁ 君 が 代 ﹂ の 音 階 を 五 聲 に 當 て 嵌 め る と 次 の よ う に な る 。 神 仙 (宮 ) 、 壹 越 (商 )、 平 調 (角 ) 、 双 徴 (徴 ) 、 黄 鐘 ( 羽 ) 、 斯樣 に そ の 曲 の 音 階 の 宮 と な つ て 居 る 音 を 均 と い ふ 。 即 ち ﹁ 君 が 代 ﹂ は 神 仙 の 均 に 於 け る 壹 越 の 調 で あ つ て 、 此 の 際神 仙 を 宮 と す れ ば 壹 越 は 商 と な る か ら 、 又神 仙 均 の 商 調 と も 言 ふ の で あ る 。 支 那 で も 之 と 同 じ こ と で あ る 。 例 令 ば 黄 鐘 均 の 商 と 言 へ ば そ の 樂 曲 は 黄 鐘 を 宮 と し て 、 そ の 商 が 太 簇 で あ る か ら 、 太 簇 か ら 曲 が 始 ま つ て 、 や は り 太 簇 で 曲 が 終 る の で あ る 。 斯 樣 に 十 二 律 の 各 々 を 均 と し て 之 れ に 五 聲 を 配 す る と 、 各 々 五 調 づ ゝ あ る か ら 凡 そ 六 十 調 に な る 。 之 等 の 六 十 調 に は 各 々 特 別 な 俗 名 が 附 い て あ る。 明 の 時 代 に 出 來 た ﹁ 唐 荊 州 稗 編 ﹂ と い ふ 書 に は そ の 内 で 徴 調 の 十 二 個 を 除 い て 残 り 四 十 八 個 の 名 稱 が 掲 て あ る 。 俗 樂 で は 琵 琶 を 用 ひ る が 爲 徴 調 を 除 い た の で あ る 。 唐 の 俗 樂 四 十 八 調 名
此 の 中 で 盤 渉 調 と い ふ の を 見 る に 之 は 黄 鐘 均 の羽 調 で あ る か ら 黄 鐘 を 宮 と し て そ の羽 を 求 め る と 南 呂 に な る 即 (五 聲 ) 宮 商 角 徴羽 (十 二 律 ) 黄 大 太夾 姑 仲 莚 林 夷 南 無 應 即 ち 盤 渉 は 南 呂 に 當 る 。 又 双 調 と 言 ふ の を 見 る に 之 は夾 鐘 均 の 商 調 で あ る か ら 、夾 商 を 宮 と し て 、 そ 聲 明 の 基 礎 研 究 一 〇 一
聲 明 の 基 礎 研 究 一 〇 二 の 商 を 求 め る と 、 仲 呂 に な る 。 即 ち 我 國 の 双 調 は 仲 呂 に 當 る 。 又 正 平 調 と 言 ふ の を 見 る に 之 は 仲 呂 均 の羽 調 で あ る か ら 、 仲 呂 を 宮 と し て そ の羽 を 求 め る と 太 簇 に な る 。 そ こ で 我 國 の 平 調 が 正 平 調 か ら 轉 化 し た も の と す れ ば 平 調 は 太 簇 に 當 る 。尚 又 越 調 は 無 射 均 の 商 調 で あ る か ら 無 射 を 宮 と し て そ の 商 を 求 め る と 黄 鐘 に な る 。 そ こ で 。 我 國 の 一 越 調 が 越 調 か ら 轉 化 し た も の と す る と 。 一 越 は 黄 鐘 に 當 る の で あ る 。 か く す れ ば 能 當 て 嵌 ま る こ と に な る 。 此 等 の 理 由 に 依 り 支 那 の 十 二 律 が 日 本 名 に 左 の 如 く 相 應 す る と 言 ふ の で あ る 。 ( 支 那 名 ) 黄 大 太 夾 姑 仲 莚 林 夷 南 無 應 (日 本 名 ) 壹 斷 手 勝 下 双 鳧 黄 鶯 盤 神 上 で あ る 之 は 孰 れ も 唐 の 俗 樂 四 十 八 調 の 中 に あ る も の で あ る 。 即 ち
即 ち 呂 調 は 孰 れ も 商 調 ( 即 ち 商 の 音 階 で 起 止 す る 音 階 で 、 律 調 は 孰 れ も 羽 調 ) 即 ち 羽 の 音 を 以 て 起 止 す る 音 階 で あ る 。 然 る に 我 國 で は 樂 曲 の 起 止 す る 音 を 以 て そ の 音 階 の 宮 音 と 誤 解 し た 爲 め に 、 商 調 に 於 て は 商 の 音 を 誤 つ て 宮 と し 、 羽 調 に 於 て は 羽 の 音 を 誤 つ て 宮 と し た も の で あ る 。 我 宗 の 聲 明 家 も 同 樣 に 相 誤 つ て 來 た 爲 め に 現 今 の 我 聲 明 は 日 本 の 雅 樂 と 一 致 し た 次 第 で あ る 。 吾 人 は そ の 幸 な る 謂 以 を 知 ら な い 。 次 に (支 那 の 音 階 を 誤 傅 し 來 つ た 日 本 の 音 階 と の 關 係 は 次 の 通 り で あ る )。 聲 明 の 基 礎 研 究 一 〇 三
聲 明 の 基 礎 研 究 一 〇 四 聲 明 の 基 礎 研 究 と し て は 余 り に 長 く な り ま し た か ら 限 り な き 筆 を 止 め て 又 の 機 に 讓 り ま す 。 終 り に 余 の 希 望 を 一 言 す る な ら ば 、 將 來 我 が 野 山 金 剛 峯 寺 に は 、 是 非 共 聲 明 家 と 樂 家 及 樂 隊 を 置 き 常 に は 教 會 本 部 に 奏 樂 隊 を 設 置 し 。 兼 て は 野 山 の 大 中 學 の 聲 明 を 正 科 と し 、 聲 明 音 樂 を 並 び 教 授 す る こ と に せ な く て は な ら な い と 思 ふ の で あ る 。 之 を 以 て 此 研 究 を 擱 筆 す 。