発酵の世界
はじめに
発酵は食品のみならず
, 食品添加物や洗濯洗剤,
医療品もその技術の応用で作られている
.
発酵は私たちの暮らしのすぐ傍にあり
, 普段何気
なく接しているものであるが
, 今回発酵に興味を
持ち
, その歴史や働きについて調べることにした.
また家庭にある身近な材料で発酵についての実
験を試みた
.
発酵とは
定義
パスツール(仏 Pasteur 1822-1895)「空気の無い状態での生命活動」
一般的に「微生物による有機物質の変換」
腐敗との違い
発酵→人間にとって有益
腐敗→人間にとって有害
発酵に関与する微生物
細菌 1 ㎛ 以下 球状 茎状 ラセン状など 例) 乳酸菌 放線菌 酢酸菌 納豆菌 人体に害を及ぼす物も多い 酵母 5∼10 ㎛ 楕円形 球形 例)アルコール発酵 (ワイン パン ビールなど) カビ 4~8 ㎛ コロニーを形成すると肉眼観察可能 例)青カビ(ペニシリンの生成やチーズなど) 麹カビ(味噌や醤油、清酒など) 白カビ(カマンベールチーズなど)発酵の種類
• アルコール発酵 酒やパン作り
C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂ + 2エネルギー (糖) (エタノール) (二酸化炭素) (ATP)
• 乳酸発酵
乳酸菌によって乳糖などの糖分を取り込んで繁殖, そのプロセスで乳酸や酢酸が分泌される.
• 酢酸発酵
C₂H₅OH
-2
H
→ CH₃CHO+
O
→ CH₃COOH世界の発酵食品
発酵食品 発酵させたもの ホンオ・フェ 韓国 エイを発酵 キビヤック カナダ 内臓を抜き取ったアザラシにアパリアス を入れ発酵 シュール・ストレミング スウェーデン 酢漬けのニシンを缶詰で発酵 メンマ 中国 タケノコ(麻竹)を土の中で乳酸発酵 ナタ・デ・ココ フィリピン ココナツの果汁を酢酸発酵させたもの テンペ インドネシア 蒸した大豆にクモノスカビで発酵 ナムプラー タイ 魚醤 淡水魚を発酵フィリピン:ナタ・デ・ココ メキシコ:テキーラ スウェーデン : シュール・ストレミング 韓国:ホンオ・フェ 中国:メンマ タイ:ナンプラー カナダ:キビヤック
産業に使われる発酵
1 医療品 1929年 フレミング (英 Fleming 1881-1955) 世界初の抗生物質であるペニシリン
を発見した ←フレミング 医療品は放線菌が多く使われている 最も有名なのは, 抗ガン剤としてよく使われるストレプトマイセス属2 種無しブドウ ブドウの花が開花する前後の花房に ジベレリンの水溶液に浸けることによってできる 3 アミノ酸発酵 現在では, 必須アミノ酸を含む 全てのアミノ酸が発酵によって作られている 4 酵素の生産 アミラーゼやプロテアーゼやリパーゼ, セルラーゼなど の一般酵素, 医薬用酵素, 化学工業用酵素, 研究用 酵素に至るまで約200種類の酵素が作られている
実験
1
ヨーグルト発酵の実験
【目的】 乳酸菌の働きをみるため、色々な飲料で乳酸発酵を試した 【方法・材料】 各種飲料 150ml 室温 23.9℃ 湿度 31% 24時間 ①無調整生乳 ②無脂肪加工乳 ③無添加豆乳 ④生クリーム(乳脂肪分47.0%) ⑤オレンジジュース (果汁 100%) ⑥乳飲料(カフェ・オ・レ) ヨーグルト (乳酸菌 L. bulgaricus S. thermophilis ) ヨーグルト 大さじ1杯① ② ③
牛乳 無脂肪加工乳 無調整豆乳
④ ⑤ ⑥
生クリーム オレンジジュース 乳飲料
①無調整牛乳 ②無脂肪加工乳 ③無調整豆乳
④生クリーム ⑤オレンジジュース ⑤乳飲料
飲料 ヨーグルト生成 所見 ① 無調整生乳 ◎ ヨーグルトができていた 酸味は少ない ② 無脂肪加工乳 △ ヨーグルトができていた 生乳よりはドロドロしていなかった ③ 無添加豆乳 ◎ しっかりと固まっていた 外側は乳白色、内側は淡黄色であった ④ 生クリーム ○ クリーム状で、ヨーグルトができていた 表面に膜のような物が張ってあった ⑤ オレンジジュース × 特に変化は見られなかった ⑥ 乳飲料 △ ヨーグルト状のものが増えており、発酵 しかけたような変化がみられた
【考察】 *乳糖の入っているものは 全て発酵が見られた (① , ② , ③ , ④ , ⑥) *無調整豆乳でも発酵が見られた これは、豆乳の中に含まれるオリゴ糖が乳酸発酵を 起こしていると考えられた 市販のヨーグルトの乳酸菌を用いても乳酸発酵がみられた 今回用いた乳酸菌は乳糖だけでなく、オリゴ糖でも発酵させ る可能性が考えられた
実験
2-1
イースト菌の性質
(温度変化と働き)
【目的】 イースト菌の働く適切な温度を調べる 【方法・材料】 1 ホームベーカリーでパン生地をつくる 2 ① 6℃ 冷蔵庫 ② 23℃ 室内 ③ 40℃ オーブン ④ 60℃ 蒸し器 室温23.6℃、湿度38% 生地の変化を時間ごとに観察した パン生地 20g 直径35㎜① 6℃(40分後) ② 23℃(40分後)
③ 40℃(40分後) ④ 60℃(40分後)
①パン生地の温度変化 条件 開始 20分後 40分後 ① 6℃ 20.6 13.2 5.8 ②23℃ 20.7 26.4 27.3 ③40℃ 21.5 33.9 43.6 ④60℃ 20.4 58.2 48.6 (単位 ℃) 条件 生地の直径(cm) 所見 ① 6℃ 3.5 冷たく、大きさはほとんど変化なし ②23℃ 5.0 生地はふくらみ、発酵がみられた ③40℃ 6.5 一番よく膨らんだ。 生地には気泡が見られ良くのび、温かかった ④60℃ 4.0 表面は乾燥して硬く、膨らみはみられなかった ②パンの膨らみの変化
実験
2-2 イースト菌の性質
(砂糖の量と働き)
【目的】 イースト菌が働くのに適切な砂糖の分量を調べた 砂糖以外の物質で, 発酵がおこるかためしてみた 【方法・材料】 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 水 30ml なし 砂糖 5g 10g 15g 20g 塩 5g 15g 室温に放置し, 泡の盛り上がった高さを時間ごとに測った 室温23.6℃ 湿度36%① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦
時間経過(分) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 ① なし 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ②砂糖 5g 0 0.4 0.9 1.0 1.1 1.1 1.1 1.1 0.8 0.6 0.5 0.4 ③砂糖 10g 0 0.4 0.4 0.9 1.0 1.3 1.3 1.4 1.6 1.0 1.0 0.7 ④砂糖 15g 0 0.4 1.3 1.8 1.8 1.9 2.0 2.1 2.3 1.8 0.8 0.6 ⑤砂糖 20g 0 0.4 0.7 0.7 0.7 1.0 1.1 1.4 1.7 2.0 1.6 1.4 ⑥塩 5g 0 0 0 0.1 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2 0.1 0.1 0.1 ⑦塩 15g 0 0 0 0.1 0.1 0.2 0.2 0.3 0.1 0 0 0 単位 ㎝
・砂糖を15g加えたものが一番多く泡が発生し, 発酵が活発に行われたと思われた ・時間経過とともに泡が減る傾向がみられた ・塩を加えたものは発酵がみられなかった 0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 ①なし ②砂糖 5g ③砂糖 10g ④砂糖 15g ⑤砂糖 20g ⑥塩 5g ⑦塩 15g (分) 泡の高さ(㎝) 水面の高さの変化
【考察】
イースト菌の発酵を化学式で表すと
C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂ + 2エネルギー
(糖) (エタノール) (二酸化炭素) (ATP) 実験2-1 より *40℃で一番パン生地が膨らみ, イースト菌の働きが よかった *発酵がみられた生地は温かみがあり, 熱の発生も みられた *パン生地にみられた気泡は発生した二酸化炭素だと 思われた
実験2-2 より *砂糖を15 g 加えたものが一番さかんに発酵した *砂糖の量が多くなるにつれて発酵がさかんであった が, 砂糖量が多すぎると逆に妨げになると思われた パン作りにおける発酵は適切な温度, 適切な時間, 適切な糖分といった条件が必要だと思われた
実験
3
イースト菌発酵で二酸化炭素の発
生を見る
【目的】 イースト菌で二酸化炭素が生成されることを調べた 【方法・材料】 ぶどうジュース 200ml + 砂糖 17g (濃度約20%) イースト菌 室温22.6℃ 湿度36% 24時間【結果】
ペットボトルはパンパンに膨らんでいた.
蓋を開けると, 勢いよく一気にガスの噴出がみられた. 香りはきついアルコールの匂いであった.
【考察】 アルコールの風味がする炭酸水だった. これは, イースト菌の発酵では二酸化炭素と エタノールが発生するためと思われた. この方法は家庭でできるサイダー水を作る 方法であるが, あまり美味しいものではなかった.
考察 -発酵の未来は
発酵を用いた新しい技術 ・バイオエタノールを作り、自動車を走らせる技術 ・グリーンプラスチックと呼ばれるプラスチックを作る技術 ・石油を作る技術 微生物を使って発酵の技術を応用するメリット→ 自然界のものであるから, 微生物によって環境浄化も可能 発酵を応用した技術は, 処理に困る廃棄物が増えたり 環境破壊をする心配が少ない私が考える発酵の未来とは 発酵で元素を作り出すことも可能ではないか? 例えば・・水素 → 水を分解して水素を作り出す微生物があれば 科学技術を大幅に発展させることが出来るのでは?