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東医大誌 77(2): 83
-84, 2019
巻 頭 言
医学教育におけるジェンダー平等教育
早稲田大学文学学術院 教授
村 田 晶 子 Akiko MURATA
今年度、東京医科大学より依頼を受け、学生たちにジェンダーの視点で自分や社会をとらえる力を育てる ための授業をお引き受けしました。2018年度に発覚した入試問題を契機として、東京医科大学がジェンダー 平等や公正の視点で入試や教育を見直すことに、明確な方針を定められたことは大変重要な転換であると思 います。
私の専門は、成人教育・社会教育です。社会の形成主体を育てるという課題、生涯にわたって人の成長を 支える仕組みや教育のあり方を問うという課題に取り組み、中でもジェンダー平等実現の視点から教育のあ り方を考えることを主たるテーマとしてきました。この主題は、従来の教育・学習観、教育方法からの大き な転換を必要としています。すなわち、これまでの「男性/女性」の関係をジェンダー平等の視点やセクシュ アリティの視点からとらえ直して新しい関係性を構築し、社会を構成する原理として新たな知を創出するの ですから、知識伝達型の教育・学習の認識論そのものが革新されなければならないのです。それは初めから 答えが見えているわけではない問題に人と人とのかかわりの中で問いを立て、協働で探究し自らが抱えるア ンコンシャスネス・バイアスを意識化し、互いに人間らしい人生を切り拓き、新たな関係を創造していくと いう挑戦であります。その取り組みを省察し、次の展望を切り拓く判断主体として生きていく力をつけると いうのがジェンダー平等教育だと考えています。
それは今日、医学教育をはじめ、教員、法律家等々の専門職教育が直面している課題と相似形を成してい るのではないでしょうか。正解が与えられていない混沌とした状況の中で、まだ見ぬ答えを求めて問いを立 てていく力、協働して探究する力、患者、生徒・学生、クライアント等々が自らの判断力や生きる力を育て ていくことをチームで支援する力、そして所属するコミュニティを豊かにしていく力、そうした専門職とし ての力を育てることが大変重要だからです。
学生は私たちの未来です。
今ここから医師を目指して日々学ぶ学生たちが、性別役割分業や旧来の制約の中に自分を閉じ込めること なく、新しい医師像を創造しつつ伸びやかに育っていくことが大切だと考えています。
東 京 医 科 大 学 雑 誌
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巻 第2
号( )
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略 歴村田晶子(むらたあきこ) MURATA, Akiko
1987
年早稲田大学文学研究科博士後期課程修了、2000年早稲田大学第一・二文学部助教授就任。2005年よ り文学学術院教授。学内では2000年より早稲田大学ジェンダー研究所研究員、 2010年より所長を務めるほか、
大学内のハラスメント防止、男女共同参画・ダイバーシティ推進、女性研究者支援、全学共通副専攻「ジェ ンダー研究」の運営責任などを務める。学外では、新宿区男女共同参画推進会議委員、日本女性学習財団評 議員、社会福祉法人慈愛会監事を務めている。