( 第 2 報 )
堀 込 泰 雄
1. 緒
言前報1
)I2)で,油圧イ ンパルスを発生させる一方法について報告 した.それは,容量を もつ 閉 じた回路内に,高圧側か ら急激に油を流入させ,流入する油の慣性力によって油圧源圧力 の約
3倍のピーク値をもつ圧力波を生 じさせる方法である.具体的には,回転弁の連続回転 により,油の流れの導通 と遮断を くりかえすことによって連続的に油圧イ ンパルスを発生さ せることができる.発生 した油圧イ ンパルスは打撃機械,振動機枕,加圧機枕などに利用で きると想定される.
前報では,容量の小さい出力側管路の場合について実験を行い,更に理論的検討を加えて 油圧イ ンパルス発生の機構を明 らかにした.すなわち,油中に気ほ うが分離 し,分離発生 し た気ほ うが断熱圧縮 される過程で高い圧力の油圧イ ソ′ t J レスを発生させることがわかった.
本報では, より実用に近い回路を組み立てて実験を行い,前報 と同様な理論を用いてシ ミ ュレーションを試みた.その結果,計算による圧力波は実験でえられた圧力波にかな り良 く 一致 L,設計にこの理論を用い うることを明らかに した.なお,圧力波形は前報のものより はるかに滑か とな り騒音 も著 し
く低 くなった.
2.
実 験 装 置 油圧インパルスを発生させる ため,およびその圧力波形を観 察 ・記録するために, 図 1に示 . される実験装置を作成 して用い た.前報の場合 と全 く同 じ油圧 源 と回転弁 ( SI REX 社 製 I m‑
pu l s e Ge ne r at or ) を使用 して いる.ただ出力側回路として, 前報では閉 じた管路を用いたの に引換え,本報ではより実用的 な意味を持たせるた め ,管路末
端に油圧シ リンダを 接 続 した.
図 1 実放装
政* 昭和5 4 年1 0 月 日本校枕学会
信越地方講演 会に おい
て発表* * 横桟工学科 教 授
原稿受付 昭和5 5 年
9月2 6日
48 長野工業高等専門学校紀要 ・第11号
油圧 シ リンダは ピス トソを固定 させた. ままで実験を行なった.図
1において,油圧モータに 油を流 して回転弁を一定速度で回転させれば,油圧源 と出力側回路,出力側回路 とリザーバ タンク‑の排出管の接続が交互に周期的に くり返 えされる.図に記入 されている
3点の圧力
P^,PB,Pcを半導体圧力変換器で検出 し, 増幅 して オシロスコープに波形を描かせて観 察 した.波形の記掛 ま写真投影によった.
3.
数 値 計 算 法
図
1に示す実験装置で, アキ ュムレータが圧力変動を完全に吸収するもの とす る.すなわ ち,油圧源の圧力
Psを一定 とおいて図
2に示す ような数値計算用のモデルを作成 した.こ のモデルに基づいて圧力波形を計算するに際
・; L. =:= ■ Ll‑ づ Ir'
し,管路内部の状恩についての計算は特性曲
dI
Reseryolr tqnk
図
2数値計算のモデル
A J
Ar 線法
4'によった.管末端の圧力源,バル ブ前 後,シ リンダとの連結部における流速 と圧力 はそれぞれの条件によって抱束 される式を作 り,その式 と特性曲線法による末端部の特性 式 とを連立させて流速 と圧力を求めた.この うち,圧力源 とバル ブ前後の式は前報 と同様であ る.
シ リンダ室内は集中定数系 として扱い,一つの容量 とみなす ことに した. シ リンダ室内で キ ャビテーシ ョンが発生す ることは十分考え られ る.気ほ うの一部は消滅,発生を くり返 し ていると思われ るが, ここでは圧力変動によって気ほ うが断熱変化するものとして計算する ことにす る.
特性曲線法において用いる時間増分 Ai間に, シ リンダ室内に流入す る油の質量をAml と し,油の流入速度は At間一定 とし,Al前後の流入速度 V1 0と
Vか 0との平均値にとって近 似す ると
Aml ‑P・
At
・Ab( vl 。 +V ♪1 0 ) /2
と表せる.‑ここに
pは油の密度
,Abは管路断面積である.
また特性曲線法に よるシ リンダ側末端部の式は,前報
2)(3)式に より vL , 1 0 ‑CI
‑C2H L , m
ただ し
cl
‑V9
・C2H9‑% V9lv9JC
2‑g/a(1)
(2)
ここに
V9 ,H
9図
2の点
9における流速 と圧力水頭
vl O ,H" 点
10における流速 と圧力水頭,添字
Pは At後の流速 または圧力水頭を
表す.
d
2管路内径 f ダルシワイズ/くッ‑の摩擦係数 g 重力の加速度 a 波動伝ば速度
更に
,At間におけ るシ リンダ室内の質量増加分を
Am2とすれば
Am2‑P(VG‑Yob)+
Ap(VcIVa)ただ し
VG
,Yap
dt前後におけ るシ リンダ室内気ほ う容箭
Vcシ リンダ容
積気ほ うの状態は断熱変化の式に したが うとL
vab‑(孟 )I′一
C
定数 応 比熱比
Hb川^ HJMOを絶対圧力水頭で表 した値 また,油の体桁弾性係数を
K, シ リンダ室内の圧力変化分を
APcとす ると
40‑
芸
APc‑普 (Hp"‑HID)( 5)
(6)
( 7) ( 1 ) 〜( 7) 式において,
Aml‑
Am2とおき
V♪10と
HblOを求める.直接求めることが困難 なの で ニュー トソ法を用いて計算 した.
4.
実験結 果お よび考 察
前報は,出力側に管路を接続 しただけの油圧 イ ソ/ミルス発生装置に関す るものである.今 r n l は管路の末端に シ リソダを取 り付け, より実用に近 い実験装置を作成 して検討 した.各部
L ・ . . ̲ . ir : 、
」10ms」図
3 圧ノ」波形の例
の寸法 と容量は次の とうりである.
/ミル プ上流側管掩 内径
21.6mm(3/4)長 さ 1430mm出プ 」側管路 内径
16.1mm(1/2)長 さ 1360mmシ リンダ
50C140NIOO容潰
196cm350
長野工業高等専門学校紀要 ・第
11号図
3は,本実験装置で回転弁の回転速度 をそれぞれ
172rpmお よび224rpmと した場合に生 じた
P^
,PBお よび
Pcの圧力 波形である.全体の容量が大 きくなってい るため,前報の場合に表れた細い凹凸の圧 力変動が取れ,イ ンパルス発生時に発す る 騒音 も著 しく減少 してい る.
図
4は,図
3の圧力波形の うち
,Pc の 最大値
Pcmaェの 油圧源圧力
Psに対す る 比 ( 圧力 ピー ク値 と名付ける) とイ ソ′ 1ル ス周波数 との関係を表 した ものである
.Tはイ l /パルスの周期であ り,回転バル
ブ 1回転が
4周期に相当す る.図か ら明 らかな ように
,Ps‑1
0barにおいては
Pcm8Ⅹ/Psはせい ぜ い
2程度が限度であ り,高圧の油圧 イ ンパルスは期待で きない.前報で述べたよ うに,高 い圧力の油圧 イ ンパルスが発生す る仕組は,油中に発生 した気ほ うが断熱圧縮 され る際に流 入す る油の慣性力の効果に よるもの で あ る.Ps ‑1
0bar程度で は, シ リ. /ダ内に発生す る
02 0 4 0
60(8Rs( a )
r‑114ms(C)T‑67ms
図5 圧力波形の計算値
0 10 20 3040 50 60 tms (b)T‑87ms
気ほ うが少いため と考え られ る.
P
sが2
0barと3
0barの場合について比較す ると,周波数が
17Hz以下ではほ とん ど同程度であ る.ただ
17Hz以上 の 周波数で
Ps‑20barの場 合の圧力 ピーク値が降下 している.Ps
‑30barの 場合,周波数の広い範囲にわた って, ピー ク値が
3
以上の油圧イ ンパルスがえ られ ることがわか る.
よ り実用的な意味において,更に高い油圧源で実
験すべ きであるが,高圧 の油圧源がなか ったため,
今回は
30bar以下の実験に止 どめた.圧力 ピーク値 と周波数 との関係について,一般に次の ことがいえる.周波数を低 くす ると バルブ開 口速度が低 くなるため,流体を十分加速することがで きず,当然圧力 ピー ク値は低 下する.逆に周波数をある値 より高 くすると,液体が十分加速 しきらない うちに弁が閉 じて しまうことにな り,この場合 も圧力が上昇 しない.図
4が示す ように
,Ps‑30barの場合に は,周波数が約
7Hz(T‑140ms)か ら
20Hz(T‑50ms)にわた ってピーク値は
3.0‑3.3程度を示 し,ほ とん ど変化がない.
シ リンダ容積や管路の寸法を変えることによって系の固有振動数は変化す るが,圧力 ピー ク値に与える影響は少い.ただ固有振動数が変化すると,当然圧力 ピーク値がある値 ( た と えば
3)以上になる周波数の範囲は変化する. したがって,実際には配管の寸法, シ リンダ容積によって回転弁の回転速度を選択する必要が生 じる.
図
5は
,3.に述べた数値計算法によって計算 した圧力波形を実験値 と比較 したものである.
回路の寸法は
4で示 した とうりである.なお,気ほ うの容積
yqは1
2cm8(負荷回路容積の
2.5%)として計算 した.油中に生 じた気ほ うの量を求めることは, 本実験の場合, 極めて 困難であるので, ここでは圧力波形が実験値 と良 く合 う
Vaの値を用いた.実際には
Vaは 一定でな く実験のたびに異なると思われ,現に圧力波形は実験のたびにわずかなが ら異な っ
て来 る.
図
5より,計算結果は突放値 とかな り良 く一致 し,波形 も頬似 していることがわかる. こ のことは,図2 のモデルを用いた数値計算法で,油圧イ ソパルス波形のシ ミュレーションが 十分可能であ り,設計に利用 しうることを示 している.
t ‑0は回転弁が開 き始める瞬間であるが,その直後は ほ とん ど圧力上昇をせず, tが
10 ms以上経過 してか ら急 しゅんに圧力が上昇 している. 前報で も述べたが,油中に気ほ うが 分離 して存在するため,油が流入 しても気体が圧縮 され る最初の段階ではほ とん ど圧力が上 昇 しない.そ してその間に油が加速 され 後での圧力上昇が急 しゅんで高い値を示す ことに なる. したが って,本原理に よる油圧イ ンパルスの発生では,分離 した気体の存在が圧力上 昇に有効に働いている. しか しなが ら,そのために もどり油に気ほ うが多量に含 まれ,油の 劣化を促進 させ ることが懸念 され る.
6.
K
.I回転弁を用いて油圧イ ンパルスを発生させる方法について,その実用的可能性を検討す る ため,本実験を行なった.また油圧イ ン′ くルスの圧力波形を計罪で求める数値計算の方法を 確立 した.その結果
(1)本方法で条件を選べば,PcmAZ/Ps
を
3以上にす ることが可能である.
(2)
油圧源の圧力は,少 くとも
20bar以上ない と,PcmAz/Psを3以上にで きない.
(3)
出力側回路内において,気ほ うの発生,消減が くりかえされていることは,圧力波形 より明 らかである.
(4)
ある程度大容量の回路を用いることにより,圧力波形が沿かにな り,騒音 も減少 させ ることができる.
(5)
図
2のモデルを用いて数値計算 した結果,計第倍は実験値 とかな り良 く一致 し,実用
的に本モデルでシ ミュレーシ ョンが可能である.
52
長野工業高等専門学校紀要 ・第
11号本研究は,昭和
53年度文部省内地研究員 として東京工業大学 で行な った ものである.御指 導 いただいた竹中俊夫教授,有益な御助言をいただいた東京都立高専北川能講師な らびに回 転弁 を提供 していただいた 日東工琉 ( 秩)馬上光治氏に深 く感謝致 します. また実験 に協力
して くれた志村和紀君に も感謝の意を表 します.
参 考 文 献
1)
堀込 ・竹中,日本機械学会講演論文集
,790‑7('
7計‑
4,56期通常総会)
,168.2)
堀込,長野工業高専紀要
,10(昭54),1.3)
堀込 ・竹中,日本機枕学会講演論文集
,797‑2('79‑1 0,信越地方講演会)
,70.4)