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浸炭焼入れに及ぼす熱処理の影響

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Academic year: 2021

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長野工業高等専門学校紀要 ・第18号(1987) 59

浸炭焼入れ に及ぼす熱処理 の影響

森山実 小林義一 堀内富雄

Effects of Heat Treatment on Carburized Structure

Minoru MORIYAMA Yoshikazu KOBAYASHI Tomio HORIUCHI

Carburizingwhichistypicalmethodofsurface hardening Improvesmarkedlyon wear・resistanceandfatiguestrength.Thispaperreportstheeffectsofheattreatment oncarburized structure and hardness.Thelow carbonsteel(S15CK)Carburizedby packcarburizingwasquenchedintooilbath,andwasquenchedunderthecondition ofthreedifferentcoolingrates,further.Intheseprocessesthevariationsofstructure andllardnesswereobservedbyopticalmicroscope,scanningelectronmicroscopeand microlardness tester. The low carbon steelwascarburized tothe depthofabout 2mm fromsurfacebycarburizingprocessof950oCx5hr. Thefinemixedstructureof Widmanstatten ferriteandmartensitewasobservedincenterbyprimaryquenching.

Followingstructureswereobservedbysecondaryquenching;martensite,martensite andtroostite,丘ne pearlite undertlle COnditionsofwaterquenching,oilquenching andaircooling,respectively.Further,theconstanthardnessofmaximum wasmeal suredinthedepthof0.2mm to1.Omm from surface.Themaximum hardnessinollter sideandtheaveragehardnessincenterincreasedinproportiontocoolingrates.

1.

浸炭焼入れ処理は表面硬化法 の代表的な方法であ り,機械構造用部品等 の耐摩耗性及び疲 労強度を著 しく向上 させ ることが知 られている.筆者 らは,炭素鋼 の機械的性質に及ぼす熱 処理 の影響,特に熱処理組織 と機械的性質 の関連について一連 の研究(1)(2)を進めてい る.今 回は機械構造用炭素鋼 (S15CK)を浸炭 し,その後1次焼入れ及び冷却速度の異なる3種煩 2次焼入れを行い, これ らの過程 でその熱処理組織 と硬 さが どの ように変化す るかについ て調べかつ検討を加 えたので,その結果について報告す る.

2. 2‑1試料 と熱処理

試料は,市販の機械構造用炭素鋼 (S15CK)を用い,外径19mm の素材か ら旋削で外径

* 機枕工学科 講師 料 機械工学科 教授

** 横枕工学科 技官

原稿受付 昭和62928

(2)

60 森山 実 ・小林義一 ・堀内富雄

9.9mmに仕上げた後,長 さ10mmに切断 した.S15CKJIS規格値(JISG4051)はC : 0.13‑0.18,Si:0.15‑0.35,Mn:0.30‑0.60,P:0.025以下,S:0.025以下 (wt.%) である.浸炭処理 には一般に固体,液体,気体が用い られているが,比較的簡単であ り,学 生実験でも行っている固体浸炭法 とし,鋼製 の内径40mm,高 さ95mmの筒形浸炭箱に試料 と浸炭剤を入れて蓋を し,950oC5時間加熱保持 した後,炉中冷却 した.1次 焼入 れは 900oC1時間加熱保持 した後,29oCのなたね油中で冷却 した.2次焼入れは780oC・1 間加熱保持 した後,25oPの水,29oCの油 (なたね)及び空中の3種類の焼入れを行 った・

これ らの熱処理方法を図1に示す.またここで用いた市販の固体浸炭剤の性質は次の とお り である.原料木炭 :硬質自炭,見掛比重 :0.4‑0.5,水分:4‑9%,固定炭素 :48‑93%, 硫黄分 :0.18%以下,灰分 :1‑2%,粒度 :1‑2mm.

2丁2組織勧嚢 と硬 さ試験

得 られた試料を端面か ら3‑4mmの位置で切断 し,浸炭部がだれ るのを防 ぐために鋼製 の リングを用いて早メ リーベ ーパ及びバ フ研摩 した.腐食は主 として5%ピク リン酸 アル コ ール溶液を用い,結晶粒界が現われに くい場合には5%硝酸アル コール溶液を補助的 に用い, 数秒γ約10秒間腐食 して水洗 い ・乾晩の後,光学顕微鏡組織観察を行 った. さらに微細組織 を観察するために この試料をノミフ研摩 し,5%硝酸アル コール溶液で約1分間腐食した後, 日本電子製T‑200型走査型電子顕微鏡 (以下走査電顕 と略す)により組織観察 した.硬さ試 験はバ フ研摩 した後 JIS規格(3)に基づ き,明石製作所製 MVK塑微小硬度計を用いて荷重

2.94N(0.3kgf)で,試料の表面か ら0.1mmおきに半径方向に中心 まで測定 した. ま た結 晶粒度は線分法(4)により求めた.

L図1 各熱処理方法

3.結 果 及び 考 察 3‑1浸炭及び1次焼入れ組織

固体浸炭 したままの浸炭部付近の光学顕微鏡組織を写真1に示す. これに よると,試料は 950oC ・5時間の浸炭処理に より,表面か ら約1.5‑2.0mm の深 さまで 浸炭 されている.

浸炭部の組織は表面付近では過共析組織であ り,内部に入 る忙 したがい炭素濃度が低下 して 共析組織 とな り,表面か ら1.p‑1.5mm の深 さでは亜共析組織 となっている. また亜共析 部では ウーイ ドマソステ ーツテレ ・'フェライ トが観察 され る.‑

写真2は浸炭前後及び1次焼入れ後 の結晶粒の変化を比較 した ものである.素材の粒度は 10.0であるが,浸炭処理に より中心部の組織は粒度6.8に粗大化 し,900oCか ら1次焼入 れす ることにより,措晶粒がほぼ粒度8.0に微細化 している.

(3)

浸炭焼入れに及ぼす熱処和の形珊

F 1:T 一撃

t

00 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 12 1.4 1.6 l.8 2.0 2.2 2.4

鏑 からの琵さ (mm)

写真l 浸炭部付近の光'学細微鈍飢餓 ' "I(b) . (C)

;: :i; i ] LrJl,r

,.: .J

I:・j i̲ l't 一

2 tl)R及び 1次批人JLによるt.I,Ihl1.II.の変化 (光一Ti:新教位による) (a):日 (b):以映 したまま (C):1次焼入れ後

61

真‑3はtl以処判りこおけ る令熱処JlLl.に よる光学 顕微鏡組織 の変化を示す.写巽 中,(1),(2) hZ炭 したまま及 び 1次焼入れ組織 であ る.泣伏 した ままの組織(1)は外周部 か ら内部 に入 る に したが い通常 よ く見 られ る遇共析,共析,亜共析組織 を示 してい る. 1次焼入れ した組織 (2)紘,過 火析 部因 においてマル チ ソサ イ ト (i,ソズ状)(5)と 粒界 に析 出 した 結節状 トル ース

タイ ト及 び球状化 され たセ メソタイ トの組織 か ら成 ってい る.共析部(C)〜亜共析部(E)漢では マル テ ンサ イ トと トル ースタイ トの混合組織 であ る.粒界 に析 出 した トル ース タイ トは,過 共析〜共析部(B)で一旦減少す るが,共析部(C)付近 よ り再 び加 し,亜共析部(D),(軸 こおいて その折 出立 は最大 とな り,これ よ り内部に入 る と急減す る. 中心部肘)では,ウ ィ ドマ ソスチ ッ テ ソ ・フ ェライ トとマルチ ソサ イ ト (ラス状)(5)

の細 かな組織 が観察 され る.亜 共析部 の組織 を 詳 細 に調 べ るために 走査電顕 に よ り拡大組織

(写真4)を観察 した.(a)は全休 の組織 を示 し, (也)は(a)を拡大 した ものであ る. このマルチ ソサ

イ トと トル ース タイ トか ら成 る組織 は写貞 3の (2)の光学顕微鏡組織 と対応 してお り,7tLJ<い結節 状 の析 山物 は微細 な層状 のパ ー ライ トであ るこ

とがわ か る.

2は素材 と浸炭及 び 1次焼入れ した ままの 試料 の放 き 推移 曲線 であ る. 素材 の 政 さは 約 HMV 125であ るが, 浸炭 に よ り浸炭部 の最高 硬 さは H M V245に上昇 してい る. 中心部 の平

00 1.0 2.0 3,0 4.0 5.0 貞面からQ)さ くmm) 2 素材と浸炭及び1次焼入れによる

硬 さの変化

(4)

鹿 llJ 実 ・小林題一 ・JR内宕雌

.I.::丁 (3) 竿 薄I 一・′ 'Lt・^ ‑

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二.

写真3 泣伏 におけ る各熱処理後の光学顕微鏡組織 (1):泣伏 のまま (2):1次焼入れ (3):2次水焼 入れ (4) 2次油焼入れ (5) 2次空冷

表面か らの深さ

糾:

0.1mm 個 :0.4mm (C):0.8mm

(D):1.2mm (功 :1,6mm (P):5.0mm

201

.....

(5)

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(6)

64 森 山 実 ・小林ぷ一 ・JR内富雄 均硬 さHMV120は素材の硬 さよ りわずか低 く

な ってい るが, その原田 として浸炭 に よる結 晶 粒 の粗大化が考 え られ る.1次焼入れ後 の試料 の浸炭部 の硬 さは 潜 しく上 界 し,炎而付近 の硬 さは約 HMV650,滋面 よ り約0.5‑0.6rnmの火 析部 で最前硬 さHMV800を示 し,ムl(li.)0.8 mmを越 える と急激 に低 下している。rJj両の馳

さの低下 の原関はrlj1't3の(2)で示 した .とうに,

写真4 1次焼入れ (共析〜亜共析部 ・ 11L何より1.2mm)における走査型 +顕微鏡組織

トル ースタイ トと残部 オース・7ナイ トに .T.るも

の と推定 され る. この試料 の J倣化脚稚さla)llMV5501よ人面か ら約1.2mmの深 さであ り, また表面か ら約2.4mmの深 さで全敬化111YT''N V190/iJ′トLている.

3‑2 2次焼入れ組織

写真3(3),(4),(5)はそれぞれ冷却速比 のyろ 2次統 入れ なりった▲試料 の表面付近か ら 中心部 までの光学顕微鏡組織 の変化を示 した ものであ r).(3)は水焼 入れ.(I)nll焼入れ,(5) は空冷 した ものであ る.水焼入れ した組織(3)は,州Jfl.lW仙 Tlはいてけ鮒かなマルチソサ イ

トと球状 セ メソタイ トの組織 であ る.球状 セ メソクイ ト什)lr"'か r)FJl.L.;1iQこ入 るに したがいそ の折 出立は減少 し,共析 部(C)ではほ とん ど観察 されザ は JL)./サイ ト机織 のみであ る.

さ らに内部に入 ると粒界 に フェ ライ トが析 出 し,覗対 斤.L'qi(ll:)では,/ェライ ト(l他 ) とマル チ ソサイ ト (灰色) の混合組織 であ る. またrIl心 榔(F)の別紙仏 t'l伏 したままの小心部の組 織 (第3(1)(F))と比較す る と著 しく微細化 され ている.机入れ した組織(I)紘,過英析

叫 においてはマルチ ソサ イ ト,球状セ メソタイ ト及び粒糾 、多Il.lL.こ析 目 した トルースタイ トの混命組織 となってい る.共析部(C)の組織はマルチ ソサ イ トと トルースタイ トか ら成 って いる. さ らに内部に入 る とフェライ トが析 出 しは じめ,非共析 珊(E))てはマルチ ソ・リイ ト,フェ ライ ト及び粒界に析 出 した トル ースタイ ト

が観察 され る. トル ースタイ トは表面か ら 内部に入 るに したがい一旦減少す るが,共 析部(C)で再 び加 し, さらに共析〜亜共析 那(D)Kおいて急減 し,並火析部(E)及び中心 那 (F)では結晶粒界 にわずかに析 出 してい る のが観察 され る.亜共析部(T3)におけ る トル ースタイ トの析 出丑は, 1次焼入れ した組 織(2)と比較 し著 しく少 ない. トルースタイ

トの析 出丑が表面 か らの深 さに よって変化 す る原因 としては炭素濃度,焼入れ温度及 び冷却速度な どが考 え られ るが,詳細は今 後 に委ね る.空冷 した組織(5)は,過共析部 仏)においては細かいパ ーライ トと一様 に分 布 した球状 セ メソタイ トが観察 され る.共 析部(qではやや粗 くなったパーライ トのみ

;hiT:A: ■て ・'̲I̲;::過

±=

写真5 2次水焼入れと2次油焼入れの走査 型電子顕微鏡組織

(a):2次水焼入れ過共析部 (b):2次水焼入れ中心部 (G):2次油焼入れ過共析部 (也):2次油焼入れ中心部

(7)

浸炭焼入れに及ぼす熱処理の影響 65 の組織であ り,さらに内部に入 るとフェライ トが粒射 ち析出しはじめ,亜共析部(E)はパーライ

トとフェライ トか ら成 っている・中心部の結晶粒皮は素材 とほぼ同 じである (写真2参照). 写真52次水焼入れ と2次油焼入れ した試料の過共析部及び中心部の走査電顕組織であ ・2次水焼入れ した試料の過共析部(a)は一様に分布 した自L.,つぶ状の球状セメソ̲ダイ トと 細かい木の葉状のマルテンサイ ト組織が観察され,中心部(b)ではフェライ ト (黒色) とマル ソサイ ト (灰色)か ら成 っている・ 2次油焼入れ した試料の過共析部(C)では白いつぶ状の 球状セメンタイ トがマルチソサイ ト中に一様に分布 し, さらに粒界には トルースタイ トが析 出 している・ また中心部(d)の組織ではフェライ ト,,マルテソサイ ト及び粒界に析出 した トル

‑スタイ トが観察 され る.

3は 2次焼入れにおいて水焼入れ,油焼入 れ及び空冷 した時の硬 さ推移曲線である.2 水焼入れ した 試料は 表面 より0.1mm の深さ でHMV950を示 し,内部に入る忙したがい硬さ を増 し,表面 より0.4‑0.5mm の深 さで最高 硬 さHMV990を示す.そ して表面 よ'bLl.Orhm を越えると硬 さは急激に低下す る.有効硬化層 深 さHMV550は表面 より1.7mmの深 さであ り, 表面 より2.5‑2.6mmで全硬化屑深 さHMV270

となっている.表面付近の硬さはやや内側 より 低いが, これは脱炭及び残留オーステナイ トの ためであると考 えられ る.2次油焼入れ した試 料は表面 より0.1mm の深 さで HMV800の硬 さであ り, これ より内部に入ると急敦に上昇し HMV900の硬 さが深 さ1.0mmまで続 く. さら

(JcJO)6.叫

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

裏面からQ) (m皿) 図3 各種2次焼入れによる硬さの変化 に内部に入ると硬 さは急故に低下す る.約2.0mmの深 さで全酸化層深さHMV218を示 し,

また有効硬化層深 さHMV550は表面 より1.4mmの深 さである.2次油焼入れ した場合 も2 次水焼入れ した場合 と同様に表面付近の硬 さはやや内側 より低いが, これは残留オーステナ

イ トの他に粒界に生 じる トル‑スタイ トに よる影響が大 きい と考えられる. 2次空冷 した試 料の梗 さは表面か ら1.0mmの深 さまではHMV320か らHMV280に緩やかに低下す る. これ より深 さ2.1mmまではやや急に低下 し,深さ2.2mmで全硬化層深さHMV145を示す.2 次焼入れで冷却速度を変えた時の最高硬 さは水焼入れ,油焼入れ,空冷の順に低 くなる. 2 次油焼入れ した試料は1次焼入れ した試料 (2参照) より殺高硬 さがHMVで約100高いが,

これは トルースタイ トの析 出畳が1次焼入れした試料 より少ないため と考え られる. また2 次空冷 した試料は浸炭 したままの試料 (2参照) よりも全体的にやや硬いが, これは1 及び2次焼入れに より組織が微細化 したためと考えられる.

4.

機械構造用炭素鋼 (S15CK)に固体浸炭 し, 1次焼入れ した後,冷却速度の異なる3種塀 2次焼入れを行った試料について,光学頗徴鏡及び走査型電子顕微鏡組織観察 と硬 さ測定

(8)

66 森山 実 ・小林義一 ・堀内富雄

を行い,浸炭組織及び硬 さに及ぼす各熱処理の影響を検討 した ところ,次 の こ とが わ かっ た.

(1) 950oC5時間の浸炭処理に より,表面 より約2.0mmの深 さまで浸炭 された.

(2)浸炭された過共析部か ら亜共析部 の組織は過共析鋼,共析鋼,亜共析鋼を水焼入れ,油 焼入れ,空冷 した組織 とほぼ同 じであった. しか し, 1次焼入れ と2次焼入れ した組織を 比較すると, 2次油焼入れ した場合は全体的に トルースタイ トの析出量は少な く,特に亜 共析部において顕著であった.

(3)浸炭処理によ り表面か らわずか入 った0.2‑1.0mmの範囲で政 さは最大 とな り,素材 : 125,浸炭 したまま :245, 1次焼入れ;800, 2次水焼入れ :990, 2次油焼入れ :900,2 次空冷 :300の ビッカース微小硬度を示 した.

(4) 1次焼入れ, 2次水焼入れ及び2次油焼入れの場合,表面か ら0.1mmまでの硬 さは最 高政 さより低い値を示 したが, これは脱炭, トル‑スタイ ト及び残留オーステナイ トなど によるもの と推定され る.

(1)森山 実,小林義一,日本産業技術教育学会誌,γol.28,No.2,JUNE (1986),p.13.

( 2

) 森山 実,小林義一,長野工業高等専門学校紀要,第16(1986),p.15. (3) JISG 0557:鋼の浸炭硬化層深さ測定方法」

(4)砂田久書,演習 ・材料試故入門,大河出版,1987,p.20.

(5)須藤 一,田村今男,西浮泰二,金属組織学,丸善,1982,p.170.

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