『山形県立米沢女子短期大学紀要』 第56号 2020年12月刊 別刷
特別支援教育体制の構築に関する研究
Study on Construction of Special Support Education System in Okitama Area, Yamagata Prefecture
清 水 浩
SHIMIZU Hiroshi
山形県置賜地区における
特別支援教育体制の構築に関する研究
Study on Construction of Special Support Education System in Okitama Area, Yamagata Prefecture
清 水 浩
SHIMIZU Hiroshi
要旨
山形県は、切れ目ない支援により障害のある子どもの自立と社会参加を目指すことを目的として、第3 次山形県特別支援教育推進プラン(2018年~ 2022年の具体的施策)を進めている。
このような中、山形県置賜地区においては、地域における特別支援体制を構築する目的で、置賜切れ目 ない支援連携協議会を年間2回実施し、特別支援教育に関する現状と課題の把握、今後の方向性等につい て確認をしている。主な内容は、特別な支援を必要とする子どもの切れ目ない支援体制の構築と、各関係 機関における支援の充実のための情報共有となっている。
今回は、山形県置賜地区における特別な支援を必要とする子どもの就学前から学齢期、社会参加までの 切れ目ない支援体制整備を推進するための具体的な取り組みに関する現状と課題について検討した。その 結果、特別支援教育体制を構築するためには、個別の教育支援計画等の内容及び引き継ぎの充実、また、
関係機関における連携方法の検討などが示唆された。
キーワード:山形県置賜地区 発達障害児者 特別支援教育体制 個別の教育支援計画 関係機関との連携
Ⅰ 問題の所在と目的
2017年、文部科学省(以下「文科省」)及び厚生労働省は、家庭と教育と福祉の連携であるトライアン グルプロジェクトを設置し、障害福祉サービスを利用する障害児及び学習上又は生活上特別な支援が必要 な小・中・高等学校等に在籍する発達障害など、障害の可能性のある児童生徒等とその保護者に対する教 育と福祉のより一層の連携と、地域の中における切れ目ない連携・支援の在り方について検討した。
また、発達障害者支援法の一部を改正する法律(2016)では、「個々の発達障害者の性別、年齢、障害 の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及 び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければなら ない。」とされている。
このように家庭、教育、福祉の連携の必要性が指摘されていることから、支援が必要な子どもやその保 護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目ない支援が受けられる支援体制の整備 が求められている。
一方、山形県においては、切れ目ない支援によって障害のある子どもの自立と社会参加を目指すことを 目的にして、第3次山形県特別支援教育推進プラン(2018年~ 2022年の具体的施策)を進めている。この プランは、①インクルーシブ教育システムの構築の考え方を踏まえて特別支援教育を充実させる、②障害 の有無や個々の違いを認め、障害のある人もない人も共に学び共に活躍する社会作りを目指す、③関係機
関と連携し、障害のある子どもを就学前から社会参加まで切れ目なく支援し、学習や生活を充実させる、
の三点を基本目標としている。なお、ここで挙げられた切れ目ない支援とは、「インクルーシブシステム の理念、発達障害者支援法の改正、児童福祉法の改定を踏まえ、特別支援教育の対象となる子どもたちが 希望を持って生涯を過ごすことができるよう、個々の自立と社会参加を目指し、就学前から社会参加に至 る切れ目ない支援を行う体制を整えることが求められている。」としている。
また、山形県置賜地区においては、置賜切れ目ない支援連携協議会(文科省補助金事業)を年間2回実施し、
地区の特別支援教育の推進状況や今後の方向性等について確認をしている。この協議会の主な内容として は、二点挙げられている。一点目は、特別な支援を必要とする子どもの切れ目ない支援体制の構築である。
具体的内容は、①特別な支援を必要とする子どもを含む全ての児童生徒の学びを保障する授業作りの推 進、②切れ目ない支援体制の構築に向けた関係機関の情報共有、となっている。二点目は、地域における 切れ目ない支援体制の整備である。具体的内容は、①専門性向上のための研修会の開催、②巡回相談活動
(巡回相談員の養成と研修)、③保護者・地域への理解啓発、となっている。発達障害を始め障害のある子 どもたちへの支援に当たっては、行政分野を超えた切れ目ない連携が不可欠であり、一層の推進が求めら れている。
今回の研究では、特別な支援を必要とする子どもの就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援 体制整備を推進するための具体的な取り組みに関する現状と課題を明らかにし、特別支援教育体制の構築 の在り方について検討することを目的とする。
Ⅱ 方法
1 置賜切れ目ない支援連携協議会資料の分析
山形県置賜地区においては、置賜切れ目ない支援体制整備充実事業を行っている。目的は、特別な支援 を必要とする子どもの就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制整備を推進するとともに、
関係機関の切れ目ない支援のための具体的な取り組みについて検討することとなっている。
重点目標として二点挙げられており、第一点目は、特別な支援を必要とする子どもの切れ目ない支援体 制の構築(①就学、進学時の確実な情報の引き継ぎ、②切れ目ない支援体制の構築に向けた関係機関の情 報共有)、第二点目は、地域における切れ目ない支援体制の整備(①切れ目ない支援連携協議会の設置、
②専門家チームの設置、③専門性向上のための研修会の開催、④巡回相談活動、⑤保護者・地域への理解 啓発)となっている。
事業の概要は、年間2回の切れ目ない支援連携協議会の開催となっており、構成員は、教育(小学校、
中学校、高等学校、特別支援学校、幼稚園)、医療(医師)、福祉(福祉相談センター、発達障害者支援セ ンター)、保健(市町健康福祉課)、労働(障害者就業・生活支援センター)等の関係部局及び大学、親の 会、NPO等の関係者となっている。なお、筆者は学識経験者として協議会に所属している。
(1)対象資料
置賜切れ目ない支援連携協議会資料(2018年~ 2020年)を参考資料とした。
(2)方法
① 各学校等における個別の教育支援計画、個別の指導計画の策定に関する内容。
② 高等学校の特別支援教育。
③ 巡回相談等に関する内容。
④ 支援体制の構築。
Ⅲ 結果
1 個別の教育支援計画、個別の指導計画の策定状況
個別の教育支援計画と個別の指導計画は、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導等において、
新学習指導要領により作成が義務付けられているものであり、よりよい支援や指導を行うためのツールと なっている。
具体的にみると、個別の教育支援計画は、個々の将来を見据えながら各年齢段階において支援の全体像 を把握し、関係機関との役割分担を明確にし、必要かつ適切な支援を検討する役割を担っている。記載内 容は、①本人のプロフィール、②本人・保護者の願い(生活・学習・進路等)、③支援の方針、④支援の 内容・方法(合理的配慮等)、⑤支援を行う人及び関係機関、⑥支援の評価と引き継ぎ事項等、となって いる。また、参画者は、学校関係者(特別支援教育コーディネーター、担任等)、各関係機関の担当者(福 祉、医療、労働等)、保護者(場合によっては本人)等となっている。
一方、個別の指導計画は、目標や指導の手立てを明確にし、教職員間や教職員と保護者との間で指導に 関する情報を共有すること、定期的な評価に基づき指導の改善を行う役割を担っている。記載内容は、① 児童生徒の実態、②本人や保護者の願い、③長期目標及び短期目標、④具体的な手立て、⑤指導や支援の 内容及び方法、⑥指導や支援の評価等となっている。また、参画者は、学校関係者(特別支援教育コーデ ィネーター、担任、教科担任、養護教諭等)、保護者等となっている。
このように、生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法を盛り込んだ指導計 画であり、単元や学期、学年等ごとに作成され、それに基づいた指導が行われるものとなっていることか ら、個別の指導計画に策定に関する専門性の向上が、教員一人一人に求められている。
個別の教育支援計画、個別の指導計画の策定状況等は以下のとおりである。作成が義務付けられている 特別支援学級在籍の児童生徒に対する各種計画作成率は、100%となっている。
表1に成果を示す。
表1 成果
・小学校の通級における指導を受ける児童の個別の指導計画については、通級担当者との連携 が図られ、作成が進んでいる。個別の教育支援計画の作成状況を把握し進めていく。
・通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする子ども達についても作成が進んでいる。
文科省は、2012年に全国の小中学校1,164校の52,272人の児童生徒を担当する教員を対象として、「通常 の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」を実 施した。その結果では、特別な教育的支援を必要とする児童生徒は約6.5%が該当すると報告されており、
このことから、通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする子どもを対象として、作成率を上げていく ことが望まれる。
表2に課題を示す。
表2 課題
・小学校で作成した各種計画が中学校へ引継ぎされていないことが窺える。
・個別の教育支援計画については作成にあたって関係機関等と必要な情報を共有することが示 されている。
・関係機関との情報共有については、まだ意識が低い状況にある。
なお、今後、各種計画を実際の教育現場で活用していくためには、校内研修等で、作成の仕方や活用の 意義等の理解を深める必要がある。また、巡回相談事業等において、活用できることの周知も図っていく ことなども検討する必要がある。さらに、引き継ぎがうまくなされてない点が課題となって挙げられてい る。
2 高等学校の特別支援教育
(1)高等学校における特別支援教育の現状
学校教育法等の一部を改正する法律(2007)の施行に伴い、高等学校においても、特別支援教育が位置 付けられることとなった。
特別支援教育の現状として、少子化に伴い、義務教育段階の全児童生徒数の減少傾向が続く中、特別支 援学級や通級による指導の対象者は、全児童生徒数の3%以上を占めており、さらに、通常の学級におけ る支援を必要とする児童生徒の在籍率は6.5%(文科省、2012)と示されている。高等学校への進学率が 98%程度となっている現状の中で、高等学校においても、支援を必要とする生徒が多く在籍していること が推測される。
こうした在籍状況に対して、特別支援教育が開始された2007年からをみると、特別支援教育コーディネ ーターの指名や校内委員会の設置などを通して、支援を必要とする生徒についての共通理解に努めること や、実態把握に基づき、通常の授業における個に対する配慮、支援を検討するなどの取り組みが少しずつ 浸透してきている。
しかしながら、高等学校の現状として、各課程を修了するための単位修得に向けた各教科・科目の指導 をどのように充実させていくか、また、多様化する卒業後の進路に対応した進路指導をどのように進めて いくかといった課題等も抱えている。これらの課題に対しては、支援を必要とする生徒に対する指導形態 や指導内容の工夫を含めた校内体制での取組が手探りであることから、生徒の多様な教育的ニーズに対応 していくことが難しい状況にある。
一方、高等学校における特別支援教育の推進について(特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会 議高等学校ワーキンググループ、2009)では、高等学校における支援を必要とする生徒への指導支援の充 実に向けた具体的な取り組みとして、実態に即して各教科・科目の選択を行う教育課程の弾力的な編成を 示すとともに、具体的には、「特別支援教育の理念を踏まえた上で、通常の授業における支援を大切にす ることはもちろんのこと、支援を必要とする生徒の学習上又は生活上の困難を克服する視点から、教育課 程編成にも踏み込んだより適切な指導を行っていくことが必要である。」とし、通級による指導の将来の 制度化を視野に入れた特別の教育課程の編成の必要性について述べている。
また、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(初等中 等教育分科会報告、2012)では、連続性のある多様な学びの場を用意する必要性の中で、高等学校におい ても、自立活動を指導することができるように、特別の教育課程の編成について検討していくことの必要 性について言及している。
こうした流れを受け、高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について、高等学校にお ける特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議報告(2016)が取りまとめられ、2016年12月の学校 教育法施行規則の一部改正により、2018年度からの高等学校における通級による指導の制度化がなされる ことになった。
(2)高等学校における通級による指導
高等学校では、特別な配慮の必要な生徒に対して、本人や保護者と相談し、どのような支援が必要なの かを確認しながら、支援に努めている。
一方、学校教育法施行規則の改定が行われ、高等学校においても通級による指導が制度化された。これ
を受け、山形県教育委員会は、モデル校として県内8校に通級指導教室を設置した。なお、置賜地区にお いては、山形県立米沢工業高等学校に設置された。
指導内容は、大部分の授業を通常の学級で受けながら、一部、障害に応じた特別の指導を特別な場で受 ける指導形態となっており、障害による学習上又は生活上の困難の改善、克服を目的とした指導となって いる。
3 特別な支援を必要とする子どもの切れ目ない支援体制の構築
(1)教育と福祉との連携
表3に教育と福祉との連携について示す。
表3 教育と福祉との連携
内容 割合 ・学校、放課後等デイサービスなど通所支援事業所の関係構築の場
を設けている。 75%
・それぞれ別のハンドブックを作成し配布している。 38%
・福祉制度について周知する場を設けている。 25%
・就学支援に関する内容と福祉制度に関する内容が一つにまとまっ
ている保護者向けハンドブックを作成・配布している。 25%
就学前から学齢期、社会参加まで切れ目なく支援していく体制を構築することを踏まえ、教育委員会と 福祉部局、学校と障害児通所支援事業所等との関係構築の場を設けているが75%となっている。
一方で、教育委員会と福祉部局が連携し、放課後等デイサービスや保育所等訪問支援事業を含む障害の ある子どもに係る福祉制度について、学校の教職員等に対して制度の周知を図ることが一層求められる。
なお、周知を図る目的のハンドブック作成は、25%~ 38%となっている。
(2)巡回相談等の活用
特別支援巡回相談事業は、専門の巡回相談員(特別支援学校教員、小・中学校教員)が、幼稚園・保育 所、小・中学校、高等学校等で特別支援教育を推進するための支援をするものである。具体的には、①子 どもの実態把握や支援方法等についての相談、②特別支援学級の学級経営や教育課程編成についての相談、
③授業研究会への指導・助言、④個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成についての助言、⑤幼稚園・
保育所等、学校の特別支援教育体制作りに関する助言、⑥市町村教育研究会や学校・幼稚園・保育所等で、
特別支援教育の研究会を行う際の講師派遣、⑦発達障害のある生徒の就労支援に関する相談、等の内容と なっている。
表4に巡回相談の活用について示す。
表4 巡回相談の活用
機関・学校等 回数 1 幼稚園・保育所 11 2 小学校 10 3 中学校 5 4 高等学校 3 5 特別支援学校 1 6 研究会、研修所、教育委員会 1
幼稚園・保育園、小学校が、それぞれ10回以上と高くなっている。
成果としては、様々な障害種別に対する幼児児童生徒の個別の事例への相談や研修会での講師依頼等の 数が増加した。また、相談内容からは、各学校・園の先生方の個々の困難さに対する関心や意識が一層高 くなっていることが窺える。その中でも特に、幼稚園や高校からの相談依頼が近年増加してきている。
課題としては、児童生徒の困り感が大きくなってからの相談もあり、早期の支援が求められることが挙 げられる。また、特別支援学校(山形県立米沢養護学校)における巡回相談では、巡回相談が18件で、特 に、通常の学級に在籍するケースや、高等学校への支援が増加している。一方、利用者側からは、相談事 業のシステムが分からないといった意見が挙げられている。
(3)教育委員会におけるその他の相談事業
表5に地域教育相談窓口(幼児ことばの教室)の活用について示す。
地域教育相談窓口(幼児ことばの教室)は、小学校入学前のお子さんのための相談・指導を行うもので ある。内容は、保護者のお子さんに対する心配事(①まだことばがでない、②赤ちゃんことばが残ってい る、③話し方や発音がはっきりしない、④話の内容がよくわかっていないようだ等)に対して、専門の教 員等が相談や指導に当たるとなっている。
山形県内には、5カ所会場が設置されており、置賜地区は、米沢市立万世小学校、長井市立致芳小学校 の2カ所となっている。近年は、ことばの指導に加えて、発達が気になる幼児の相談も増加傾向にあり、
利用回数は、各200回前後となっている。
表5 地域教育相談窓口(幼児ことばの教室)
会場 回数 ・米沢会場(万世小) 176 ・長井会場(致芳小) 208
表6に、にこにこ相談の活用について示す。
にこにこ相談は、山形県教育委員会主催の事業であり、対象を幼児、児童としている。内容は、発達や 成長のことと、育て方、園や学校のことの二点となっている。一点目の発達や成長のことでは、①見え方、
聞こえ方が心配、②言葉が遅れている、③発音や話し方がはっきりしない、④手足や身体を自由に動かせ ない、⑤知的な面の発達が心配、⑥園や学校生活を送る上で、医療面での不安がある、⑦絶えず動き回り、
言われていることが理解できない、⑧乱暴な言葉遣いや危険な行動が多い、となっている。
また、二点目の育て方、園や学校のことでは、①どのように関わって育てたらいいか分からない、②子 育てに不安を感じている、③友達との関わり方をどう伝えたらいいか相談したい、④学校教育について心 配なことがある、⑤就学に向けて、何を大切に育てたらいいか相談したい、⑥どういう学びの場があるの か情報が知りたい、となっている。
表6 にこにこ相談
会場 回数 ・米沢会場(米沢養護学校) 16 ・長井会場(平野コミュニティセンター) 10
にこにこ相談については、年間3回(6月、9月、12月)実施している。第1回目の相談以降、継続した相 談につながるケースがみられるなど、第2回目での相談件数が多くなっている。具体的には、就学に関す る内容など、育て方、園や学校のことでの相談が多くみられるのが現状である。その他、就学児対象に限 る回は設けないことをリーフレット活用しながら周知を図っていく必要がある。
(4)切れ目ない支援体制の構築に向けての各学校における取り組み 各学校における取り組みとしては、大きく二点挙げられる。
第一点目は、校内委員会の設置と機能強化である。具体的には、①発達障害を含む障害のある幼児児童 生徒の支援を行うための校長(園長)、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教員、その他必要と 思われる者で構成する校内委員会の設置、②特別な支援が必要な幼児児童生徒への支援について、全教職 員による情報の共有と、計画的・組織的な支援の検討、③特別支援教育コーディネーターを校内体制に応 じて複数名指名し、校内委員会の推進や関係機関・保護者との連絡調整等と校内委員会の推進、本人及び 関係者との合意形成の調整、一人一人の必要かつ提供可能な合理的配慮についての検討と、十分な教育が 受けられるようにするための適切な指導又は支援、となっている。
第二点目は、実態把握の促進である。具体的には、①特別な支援が必要な幼児児童生徒についての各種 チェックリストや巡回相談等の活用、②一人一人の教育的ニーズについて、複数の目による的確な把握、
となっている。現状では、年2回の研修が実施されているが、十分ではないという意見が挙げられている。
(5)置賜地区にける母子保健を中心とした親と子の支援
置賜地区の3市5町における置賜地区の発達障害幼児及び保護者への支援状況を表7に示す。
表7 置賜地区の発達障害幼児及び保護者への支援
米沢市 長井市 南陽市 高畠市
・発達に関する個別相 談
・5歳児発達相談
・幼稚園・保育園への 巡回相談
・ことばの相談
・幼稚園・保育園への 巡回相談
・そだちとこころの相談
・ことばの相談会
・幼稚園・保育園への 巡回相談
川西市 小国町 白鷹町 飯豊町
・子育て相談 ・保育園への巡回相談 ・すくすく発達相談
・幼稚園・保育園への 巡回相談
・幼稚園・保育園への 巡回相談
置賜地区の3市5町における置賜地区の発達障害幼児及び保護者への支援状況の割合を表8に示す。
表8 置賜地区の発達障害幼児及び保護者への支援の割合 内容 割合
1 幼稚園・保育園への巡回相談 75%
2 ことばの相談 25%
3 発達に関する個別相談 13%
4 5歳児発達相談 13%
5 そだちとこころの相談 13%
6 子育て相談 13%
7 すくすく発達相談 13%
第1位は、幼稚園・保育園への巡回相談で75%、第2位は、ことばの相談で25%となっている。なお、5 歳児発達相談は13%で、米沢市は実施しており、他の7自治体は未実施となっている。5歳児発達相談の実 施については、発達遅滞の発見を中心とした現行の乳幼児健康診断の実施方法では、発達の遅れはないが 落ち着きがない、あるいは発達の遅れはないが集団行動はできない、対人関係に問題がある子どもたちの 早期発見は困難であることや、早期発見しても対処方法や支援をする地域資源が不十分なままでは、療育 者に不安を与えるだけになることなどの課題改善が主な理由となっている。
(6)成果
表9に成果を示す。
表9 成果 内容
・各学校・園において、特別な支援が必要な子どもの教育的ニーズを確認し、
実態把握をもとに早期からの指導・支援体制整備が進んでいる。
・それぞれの市町が切れ目ない支援実現に向けて、具体的な取り組みを工夫して 行っている。
・特別支援教育に関する各種研修会を通して、教育・福祉・労働等の関係機関と 連携し、一貫した支援体制の構築の必要性の周知が図られた。
各学校・園において、特別な支援が必要な子どもの実態把握やニーズの確認等、支援体制を整備し、支 援を行っていることが分かった。また、関係する機関との役割分担や連携の在り方等についても意義や内 容等を再確認し、地域における支援体制の構築に向けて進んでいることが分かった。
(7)課題
表10に課題を示す。
表10 課題 内容
・個別の教育支援計画等を活用し、確実に引き継ぐこと、関係機関との連携を進 めていくこと。
・障害のある子どもが地域で切れ目なく支援を受けられる体制作りが求められる。
・引き継いできた支援をつなぐ場を設定すること。保護者が相談しやすい関係作り や体制作りを行っていくとともに、保護者支援も行っていく。
個別の教育支援計画を中心とした引き継ぎに関する課題が挙げられている。
Ⅳ 考察
1 個別の教育支援計画と個別の指導計画
個別の教育支援計画と個別の指導計画との策定状況は、100%という結果となっている。このことから、
特別支援教育コーディネーターの指名や校内委員会の設置等、校内等で特別支援教育を推進するための体 制は構築できていることが理解できる。
なお、個別の教育支援計画、個別の指導計画等に関しては、児童生徒の実態把握、目標設定、支援の手 立て、評価等、丁寧に作成され、充実が図られてきているが、今後さらに内容の充実を図るために、以下 の四点が重要であると考える。
一点目は、合理的配慮の部分の内容に関する内容である。幼児期からの合理的配慮に関する部分を、個 別支援計画、個別の指導計画、教育支援計画へ位置付けする必要がある。またこの際に、本人の成長や、
環境調整等で合理的配慮が不必要となった部分についても確認をする必要がある。
二点目は、学校卒業後の大学生活や就労生活で多くみられる課題への支援である。具体的には、大学生 活面における課題として、①履修計画が組めない、②アクティブラーニング、グループワーク等、他学生 と関われない、③勧誘を断れない、ヘルプスキル、援助要請スキルの積み重ね等、また、就労面では、仕 事内容そのものより、コミュニケーション、対人関係面でのスキルが求められる割合が多くなっている。
このようなことから、コミュニケーション面、対人関係面での支援の積み重ねを把握することが必要であ る。
三点目は、余暇生活面に関する内容である。余暇の時間や休日はどのような過ごし方をしているのか、
また、誰とつながっているのか等の確認をする事が大切である。
四点目は、一貫した支援と支援内容の引き継ぎである。教育上特別な支援を必要とする児童生徒は、学 習上や生活上の困難さが一人一人異なるために支援の内容も異なる。また、特別な支援を必要とする児童 生徒は、就学や進学等に伴う環境の変化に自ら合わせることが容易ではない。そのため、環境への不適応 を最小限に抑えるためにも、対象児童生徒の学びやすく過ごしやすい学習環境について、引き継ぐ必要が ある。また、学校卒業後の地域社会に主体的に参加できるように、従前の支援内容を着実に引き継ぎ、一 貫した教育支援を行うことが求められている。
以上のことから、切れ目ない支援のための連携の最強のツールとして、個別の教育支援計画、個別の指 導計画、個別支援計画、個別移行支援計画等、ツールの内容充実を図りながら、コミュニケーション、対 人関係面を中心としたソフトスキルへの指導を大切にして、そこに参画する関係機関が、自分の役割と、
子どもたちの成長や発達に関して何ができるかということを考えていくことが重要である。
2 高等学校における通級による指導
(1)特別支援教育に対する専門性の担保
高等学校教員の特別支援教育に関わる専門的な知識とスキルをどのように向上させるか、また、指導体 制では、人事異動による転出、転入も想定されるので、どのようにその専門性を引き継いでいくかについ ても検討していく必要がある。
(2)学力上位生徒への学習指導と進学指導
高等学校には、一定の学力を有し、リーダーシップに富む生徒も在籍する。このような生徒には、特別 支援教育とは別の観点から学びの場を提供し、進路指導を充実させることが重要である。このことから学 力上位生徒に対しては、各種検定に積極的にチャレンジさせるなど、高い目標を持って学習に取り組むよ う意欲付けを図っていく必要がある。また、4年生大学等の進学を目指す生徒に対しては、進路指導部、
学年担当、教科担当等のそれぞれの教員が連携して、小集団や個別の指導体制を組むなど、組織的に対応 していくことが必要である。
(3)対象者の進路指導
通級による指導の対象者が自己理解を深めるとともに、進学先や企業側から理解が得られないと継続的 な就業は困難である。充実した進路指導を行ってもらいたいという願いが生徒及び保護者にはある。今後、
出口指導を考えた時に、公共職業安定所や障害者就業・生活支援センター等との連携を図りながら、地域 の企業に対して丁寧な説明を行い、理解を求めていくことが大切である。
(4)校内支援体制の構築
今後も特別な配慮の必要な生徒が多く在籍することが予想される中で、特別支援教育を全教員で実践し ていく校内体制が必要となってくる。このためにも、山形県教育委員会と連携しながら校内組織体制を充 実させていく必要がある。
(5)関係機関との連携
今後、様々な支援を必要とする多様な生徒の入学が見込まれる中で、支援や指導が適切なものであるか どうか、適宜検証していかなければならないと考える。今後も引き続き、外部機関や専門家等による指導 助言を得ることができるような体制作りや連携が必要である。
以上のことから、年間指導計画を参考に対象生徒の実態を把握し、アセスメント等に基づいた個別の指 導計画の充実を図る必要がある。具体的には、①できている内容、②指導すれば獲得できる内容、③現段 階では身に付けることが難しい内容に分け、指導すれば獲得できる内容を個別の指導目標にする必要があ る。そして獲得が難しい内容は、他者の援助を受けることへの指導も検討する必要がある。また、小・中 学校での通級による指導との学習内容や指導方法等に関する系統性の検討、さらには、就労支援や生活支 援等の関係機関との連携の充実が求められる。
3 巡回相談
巡回相談等の活用では、幼稚園・保育園において多くの活用がみられる。巡回相談を希望した理由につ いては、対象児に対する具体的な支援方法や、支援方法への評価と保護者への関わり方等に対する助言を 求めていることが挙げられる。また、障害幼児への支援が園等で蓄積された経験や専門性では難しいとい う意見も多く、発達障害幼児への対応や具体的な支援に関する限界性を感じている職員が多いということ も理解できた。
また、その他として、市町保健師との連携に関する内容が多くみられる。具体的には、保育士との情報
共有や連携について期待している職員が多くみられることから、巡回相談の機会を連携の場の一つとする など、連携の在り方について検討する必要がある。
4 支援体制の構築
支援体制の構築に関しては、連携ツールとして、サポートカード、個別支援計画、個別の教育支援計画、
個別の指導計画等がそれぞれ作成、活用されているが、これらを確認し、十分に活用する必要がある。
特に、個別の教育支援計画は、障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点 から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して 的確な教育的支援を行うことを目的としている。また、この教育的支援は、教育のみならず、福祉、医療、
労働等の様々な側面からの取り組みが必要であり、関係機関、関係部局の密接な連携協力を確保すること が不可欠である。他分野で同様の視点から個別の支援計画が作成される場合は、教育的支援を行うに当た り同計画を活用することを含め教育と他分野との一体となった対応が確保されることが重要である。
Ⅴ まとめと今後の課題
置賜地域における関係機関の連携を考えた時に、機関毎に整備されている支援ツール等を確認し、それ をもとに、仕事内容の共通理解と業務の精選等を図ることが大切である。
そのためには、幼稚園・保育所と小学校間、小学校と中学校間、中学校と高等学校間、それぞれの移行 期において、個別の教育支援計画及び個別の指導計画等が十分に引き継ぎに活用されるような体制作りが 求められる。また、各機関間の連携、引き継ぎのみではなく、就学前の様子や支援の在り方を、中学校や 高等学校の教員が確認をする必要が出てくる場合も考えられる。具体的には、発達障害児が、どのような 実態があり、各発達段階において、どのような支援を受けて、どのようなスキルが現在身に付いて、獲得 できているのかなどの、確認をするためにも、個別の教育支援計画、個別の指導計画を策定し、支援を行 うこと、また、その内容をどのように引き継いでいくかがとても重要である。
今後は、山形県置賜地区の置賜切れ目ない支援連携協議会を構成する学校や関係機関が中心となり、第 3次山形県特別支援教育推進プラン(2018年~ 2022年の具体的施策)の事業内容と関連性を検討しながら、
特別支援教育体制の整備と地域が一体となり対応できるような体制作りを進めていくことが重要である。
引用文献
1)学校教育法等の一部を改正する法律(2007)
2)発達障害者支援法の一部を改正する法律(2016)
3)高等学校における特別支援教育の推進について(特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高 等学校ワーキンググループ、2009)
4)高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議報告(2016)
5)共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(初等中等教 育分科会報告、2012)
6)文部科学省(2012)通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児 童生徒に関する調査.
7)文部科学省、厚生労働省(2018)教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知).
8)清水浩(2018)保育相談支援の在り方に関する研究-スーパーバーザーとしての自己評価を中心に-.
白鷗大学論集.第11巻.第4号.