現代陶芸の造化について
一東洋美の表現法‑
木 津 良 治 *
C o n t e m p o r a r y C e r a m i c C r e a t i o n
R y o j i Kizawa
要 旨 粘土のもたらす可能性は,造形の側面からみて造形表現材料のなかでも可塑性の高い点鉱物としての熱 によって変成される点は,ほかに類をみない素材である。工芸分野で陶芸の最大の利点で,当たり前のことですが,
これが現代の陶芸に自由な表現をもたらし 創作面に無限の表現性を最大に可能にしてくれるところが大きな魅力で 在ると思う。
近年の大幅な科学の発達により作品の制作手段も大きく変選をとげ陶芸界の指向も科学の発展に伴い追従するかた ちで多面の研究者によってデーター化され分析 或いは相当数値化されている。過去の幾多の名品から現代へ陶芸が 伝統として受け継れた部分を技術的,また精神的風土的な発展を多面的な観方から見た東洋の美を確たる変遷の部分 を創作側の観点でさぐることにした。その造化部分を観ることで現代陶芸に至る点を過去の歴史的作品と現代陶芸を 比較しながら新たに展開できる可能の部分を見いだせればと考えている。
は じ め に
この思案による考察は,現代陶芸を創作する 創作以前のコントラポストを成立させるための コンセプトがより明確に計画されていることが 重要であるD 大方の場合は不確実のうちになさ れる傾向があるが創作上の訓練と習慣によって 相当満たすことが出来,また美術的観点の面で も感性を補うことが後天的に満たし得る努力の 面に通じるであろう。以下,最低限の知識とし 項目別に述べることにする。
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本 学 助 教 授 陶 芸1 .
原始美術から観た現代美術丸とか三角・点・線などのいくつかの文様様 式があるが基本的にはその存在の生命感の溢れ る,どうしてもそのようなものになる土俗的な 力強さ,これは自然発生的に手短な道具によっ て本来もっている素材の性質を彼岸的な活用で 装飾化している点にその内在する造形としての 役割をもっているからだと考えられる。
現代美術の新鮮さも単純化された文様が時と してその役割をするが自然界のフラクタルな 原理より幾何学的文様を必然的に生み出してい ると言える。
必然性の生命的な面が原始美術の力強さで現
図
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自然界より観察的に応用代美術の新鮮な手法と共通する点が強い。陶芸 ではこのあたりの魅力は,なんといっても材質 のもつ素材感に大地こそが陶芸の基であるスケ ールの雄大さで,この質量に直に及んでいるの だと考えられる。例えば,縄文式土器の美とす る発見の観方文明への今日の人間の精神的側面 が原始人の残したものと今日の人間の精神的,
形而上学的な不確実さは 原始信仰の所産に共 感を覚えさまざまな形で原始の美を掘り起こし てきたことにある。
図
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原始模様の発展の一例図
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金属器の原始模様具体的なものから発展の一例2 .
工芸美の様式面とアール・ヌーボー現代陶芸の先駆者である板谷波山の偉業はす でにご承知のとおりで 明治大正昭和の陶芸意 匠の概観から日本の現代意匠変遷の中で中心核 を成し,同時期の意匠の流れそして美術界の指 向をみることが出来る。幸いに昨年出光美術館 にである機関を通し,念願の貴重な資料に触れ ることが出来文献のみの資料に加え創作上の細 かな技術面に大変参考になる実物を前に幾多の 確認が得られた。
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図
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板谷波山の花果粉本の例図5波山のマジョリカ焼とヨーロッパの様式関係 (ウィリアム・モリスの図)
これらの作品を制作にあたって意匠面の作品化 する点に最も注目すべき情報と社会的動向,創 作の関係に大きな意味合いがあり当時の西洋と の意識がどのように影響を与えたのか興味深い ものがある。意匠の面でも当然この時期ではア ール・ヌーボーの情報が勤勉な波山に及んだこ とは当然と思う。しかしこの点については色彩
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質感からくるイメージくだものが熟し,美味しそうに見えるのは色 合また肌合いの質感によるもので,陶芸は,伝 統的に土あじ焼きあじを重んじ,特に,茶道を 中心とする陶芸界では趣のある素材があってこ そ表現が成り立つわけで重要な役割をしめてい る。伝統の伝承の上では勿論,現代陶芸の上で もこの質感を重視している。善し悪しの一つの 目安になる肌一分の解釈もここのところを指し 創作イメージをかきたてる要因であり,陶芸の 生命とも言えるD
技術的には幾多の手法があるが,もとの土自 体の性質が焼成結果(何々焼などの特徴となり) が及びての表現に及ぶものは産地の永年の歴史 を物語る。近代以前の創作法では生産地から土
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日本特有の紬肌(長石の溶融による)的また文様の様式的には概観は正倉院の古代裂 に見るような引用にも見える。東洋美の表現法 (中国)に六法があるが犬家板谷先生も気韻生 動の創作引用のあとが窺え伝統と創意と完全な 造形として結論に試行錯誤のあとが見え隠れす る点は少し安心できる。
自体を運びだす必要性がなくその地域の関連に よって(特殊な材料を除いては)概ね成り立っ ている,この点がかえって地域の伝統となり様 式として伝播に繋がることとなったD
唯この点は,陶業地においても近代の社会的 動向と共に産業界の生産システムの変化と一連 になって遥々他国より運ばれることが近年容易 で,生産各地で産業に繋がるものはあらゆると ころから輸入されている。この点が近代産業と 共に大きな変化が創作上の広がりを持たせる要 因となった点は事実である。生産手段の上で重 要な窯業材料の研究成果と開発によって今迄不 可能だ、った面も可能性が高くなった点は事実で ある。これらの係わりが密接となり創作性の自 由な面が現代陶芸の一面での引導となった点も 変革を鷲らした点である。
現代陶芸の変遷の上で 前衛陶芸またオブジ ェ焼が高まった時期が在るが,表現方法の存在 も表面では美術の多面的指向と工業の生産に対 して美術的造形存在のオブジェクトな創作指向 もこのへんの素材に対する自由な考えが可能に なった要因であろう。
図7‑1・2・3・4 粘土の可塑性を特性に印花技法による表現効果の一例
安定したところばかりでなく,窮まるところも
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成形面と素材 ある。但し,この点は産業としてより陶芸とし て試作的なプロトタイプの美術的創作を行う点 現実にイメージより作品化を行う場合。例えば,自然界の生命体であったら生物進化の上で 仮に,植物なら美しい花の咲く遺伝子を持った 生物上の形成根拠によって虫を呼び寄せ匂いを もち,更に互いに繁殖の都合のよい時期に開花 する仕組みをもちミクロ的にもパーフェクトの 生態形成がなされる。これらの点とほぼ等しい 事象が制作の上でコンセプトに含まれる。創作 側の制作プロセスも実際上では自然界の摂理に 沿ったシステムを考えに入れ重要視して計画を 結論まで導かなければならないのである。唯,
にあてはまる。
科学が近年目覚しく進歩を遂げているが先端 的な造形素材を創作に取入れるにはなかなか諸 問題があり困難な所が在るが企画的には多いに 実験的要素を含み挑戦しなければならない。し かし伝統に対し破壊的挑戦的指向であるため目 新しいのみで行うと軽薄すぎるだけに留まり,
悪い結果となってしまう。はやりで一時社会的 に騒がれ注目を浴びることになるが,本道的に はなれず亜流的要素で神髄を変革に刻むには永 年の歴史と対等の柱にたたねばならない。
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装飾と機能工芸に於いては,この役割は誠に大きな役割 で,形態のもつ機能と素材のもつ機能とこの装 飾による機能と三つの分野より基本的に成り立 ち,この三つが関連しあい素材より技術より意 匠ということになる。ここで,昆虫や動植物な どの色模様など生物進化的なものからくるカム フラージ、ユの装飾法,外壁タイルや食器などの 胡麻の多い素地などの利用例はこれにあたる。
フラットな面の場合,心理的に積極的なものを 探そうとする恐怖心理が働き,マチエールの粗 から密また機能と形態のイメージによるこれら
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連弁より作成図
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植物の表皮が作り出す面白い文様にの視覚的触感的な印象を伴う物理面では潜在 的に個々にある個人的指向の差はあるが,この 点は素材の持つ質感とも関連し,心理的な疲労 感をなくし物理的な汚れをカムフラージュする 機能がある。工芸の装飾機能は本来外観美化作 用が主な役割で工芸の模様範囲では多面的重要 な機能を持っているが以下のような分類が出来 ると思われる。材質のもつ自然的材質組織文 様・加工工程痕文様・紬薬など焼成による焼成 痕文様・創作的、デザイン的模様・装飾手段と して模様は空白恐怖などの機能を持ち,工芸の 模様は一般に表面付加により外観美化作用とこ の作用によって性格化・様式化することができ る。その機能によっては模様に特別の意味を有 し,模様自体が決定的に正確づけ心的に機能す る模様の使い方もある。呪物・精霊崇拝的模様 象 徴 的 文 様 宗 教 的 模 様 吉 祥 的 模 様 文 学 的 模様などの装飾機能がそれである。
その表し方は,輪郭だけの図式的,シルエッ ト的に示されるもの,彩色によるもの,次元的 には平面的,レリーフ的,立体的,空間的,時 空空間的なものがある。
美術的表現手段の一部としてこれらの装飾化 の有効性は何よりも重要な位置を占めるが,実 際的には現代以前のものとそれ以降のものと工 芸の意識で解釈する場合と大きな時代的変遷が ある。創作側として新たな方向を見いだして作 品とするにはその辺がモチーフの参考基準にな
り得るであろう。
図
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風による造形のー要素6 .
現代陶芸の位置創作側からみた現代陶芸はもちろん永遠の厚 い歴史の上の極一部であろうが,現実にその歴 史を未来から過去へ創る一員として現代陶芸は 何を指すものなのか予め社会定義にそって現在 位置を確認しておかなければ説明のことばにす らなり得ない。陶芸に関して時間を現代とし,
例えば戦後というような一般的な陶芸を解く と,神話的な社会現象つまり概念形態が論理に
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自然界の計り知れない偉大な力を持っている図
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制作のためのモチーフとなる迫力の植物先立つて生まれてくるもので,社会の動向と共 に個人意識が発達し集合表象の現象として原始 的にそれぞれの時代に即した神話がある。
これは理性的な性格のものではなく,感情的 な確信と行動による過ぎた事柄や分析データー 以外のことである。直感的な現代陶芸も進歩す るということはこれらの神話に包まれ,よって 未知の未来が現実とされていくかであると思
つ。
戦後の混乱の中から美術としていち早く伝統 的な技術の保護に取り組んだのが文化財保護法 でその施行により重要無形文化財の保護が生ま れ人間国宝のかたちで経済的な手助けを寄与で
きるようになった。
伝統とは何か伝統技術とは何か方法目的は実 生活の中で密着したところから自明的に暗黙に 諒解されているのでパターン的に繰り返されて いることが多い。ある意味では伝統ではなく因 習的な面も含まれるので 本当の伝統技術は真 の意味で過去の経験と集積によって技術のみで なく創造的な意識から目的に達するようなもの となった。伝承の段階を踏みながら伝統技法は 継ぎの世代へ伝習するがそれによって芸術性や 美的創造力は天賦のもので,芸術を生む起因は 技術の習得に他ならない。古陶磁の研究も必須 で模索とか写しも研究の一段階であろうD
また,工芸の現代陶芸の流れの中で「工芸に 於いて用の法則は美の法則である」と称えた民 芸運動者もいるがこの革命的なものは大きな反 響を与えその効力も偉大だったことは確かであ る。しかし,時の変化の段階では確かではあっ たが技術面でマニュファクチアーから産業化が
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これらのまとめ的な作例主流の今となった今日あれは何であったのだろ うとも思える。確かに確認の上では時代として 理にかなったものと思えるが哀愁的また土産も のと同義的要素になっている。発性的には衆人 の集まるところからでる冥加的な発生による美 の他力道でもある。
この他,美術工芸的な主張によるものだが工 芸固有の美の探求が含まれ,これは外面では工 芸の道具的な解釈を広め,多角度の視野によっ て素材,技術の駆使による効果を造形としてい かに独自の美の表現をなすかによることであ る。高度なテクニックをいかに独創的個性的に 尊重する方向に導くかである。ただ表現上の本 物はなかなか難しく,アイデアのなかにも借り
もののヒントが時として含まれ工芸の場合剰窃 などの重要が黙認されているので創作を重視す る美術工芸の領域も難解の部分があることも事 実である。
また,社会的精神的指向を材質の特性を媒に して表現体とするアパンギァルド的な芸術指 向,つまり前衛陶芸で,内在する心象を触発す るような陶芸スタイルも一つの方法である。
む す び
永年にわたって創作に関する資料,そして,
実際に実験を含み美術としての陶芸を手掛けて きた訳であるが,ここで確実に申せることは創 作のスタートは過去のデーターと創作手段の立 脚によるものであると言う事である。
しかし,陶芸は細部的には化学であり,化学 に関しては今回は触れないが,またこれ以上に 大切なもので現実は化学に頼ることになるが魅 力は未知で,まだまだ人聞が造化する接点が楽 しめそうである。このことは私どもはそこにこ とばよりも,ものがなければ意味がないと言う ことで,この発表も誇称の話になりかねないが お許し願いたい。また この研究に関係された 方々に心より御礼申し上げる。
参考・引用文献